最後の駅の向こう

何でもすぐ忘れる人の特に記憶に残しておきたいライブの簡易レポートと趣味のレビューの予定。あくまで予定。

20180609/AC 9mm“ほたるの里ロックフェスティバル”@辰野町民会館

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長野県・辰野町にてこの時期開催される辰野ほたる祭り。 その70周年記念イベントとして開催されたライブ。

辰野町出身であり、「たつのふるさとパートナー」を務めるかみじょうさんの凱旋公演にして、先日の野音公演で初御披露目されたAC 9mmの初めてのワンマン公演。

かみじょうさんの地元ということで、2年前に長野でアコースティックライブをやった時のように、かみじょうさんがたくさん喋るのではという期待も大いにあり、また新プロジェクト・AC 9mmへの期待や、近くの公園ではホタルも見られる!ということでチケットを早々に取っていたのでいよいよ当日、意気揚々と辰野へ向かいました。(終電の関係でホタルは見られず、それだけが残念でした。)

 

 

会場である辰野町民会館、キャパ700席ほどのホールでありながら天井が高く、広々とした座席とかなり座り心地の良い椅子で最後までゆったり快適に観られました。

入り口やロビーにはAC 9mmのフライヤーがいくつもの「9」をかたどるように貼られていました。

広いステージには野音の時と同じようにアコギ(アンプはジャズコ)、ベース、真ん中には球体がいくつか集まったようなドラムセット。終演後にステージを覗いてみるとそれぞれのスペースにラグが敷かれていた。

野音と違うのは、タムの右側あたりに辰野町のキャラクター・ぴっかりちゃんが鎮座していること。

開演直前に辰野町の方(町長さんでしょうか?)より挨拶があり、それが終わってしばらくすると客電が落ちる。今回も客席では誰も立たず、全員着席のままライブが始まる。

 

 

Answer And Answer

ハートに火をつけて

Psychopolis

Battle March

黒い森の旅人

星に願いを

どうにもとまらない

Heart-Shaped Gear

荒地

太陽が欲しいだけ

The Revolutionary

 

カモメ

Black Market Blues

 

 

登場SEは無く、薄暗いステージにまずはかみじょうさんが登場。ドラムセットに到着し、いざドラムを叩くぞというその瞬間に、球体が鮮やかに黄色く光り、その瞬間に客席からは大歓声。野音ではまだ明るかったため、球体が光る様がよく分からず、この暗い室内でどのように光るかとても楽しみだった。同じ気持ちの人がたくさんいて、一斉に歓声が上がった時のあの高揚感!!野音に行っていなかった人はもっと衝撃だっただろうし。この後は曲に合わせて赤、青、緑にも光っていて、目まぐるしくカラーチェンジしているような時もあった。

続いて和彦さんが登場、ベースを弾き始め、最後に卓郎さん。椅子に座ると歌い始める。3人とも野音の時と同じフォーマルな衣装。心なしか卓郎さんの襟元は野音の時よりきっちりしているように見えた。

 

野音でも1曲目だったジャズっぽいアレンジのAnswerは、歌い出しの部分がベースとドラムのみで始まるところが卓郎さんの歌声を引き立たせているし、とてもシャープなアレンジでとにかくかっこいい。サビ直前など、随所に入ってくるドラムの三連符が良いアクセントでこれがまたかっこいい。個人的にとびきり好きなところ。

続いては和彦さんによるアレンジだと野音で明かされた、ダークでどことなく不穏な空気のアレンジのハー火。控えめな赤い照明と相俟って良い雰囲気。

 

このあたりで早くもMCが入った気がする。どの話題だったかは失念してしまったが、途中でかみじょうさんがマイクを手に取り「やっほー辰野!」と挨拶をされたのは確かこの辺りだったか。

 

原曲離れしたイントロから始まるPsychopolisはシンプルなアレンジになると意外とストレートな歌詞が目立ってくるのが面白い。

軽快なドラムから始まるBattle Marchではサビの一番高い音で卓郎さんがファルセット交じりに歌っていて、これがとても美しかった。間奏ではベースにリバーブを掛け、ギターも思いっきり歪ませる。アコギならではの弦の音、アコギ本来の音がしっかりと鳴っているのを歪んだ音が包み込んでいるような不思議な感覚。アコースティック編成らしからぬ音の広がり。

 

諏訪湖を囲む森のことを歌った…訳ではありませんが(笑)と卓郎さんが前置きを入れてから演奏された黒い森の旅人。卓郎さんがよく弾き語りで歌われている時のアレンジをベースにしたような、優しい演奏。アウトロのルルル~というコーラスが美しく、また物寂しさも感じさせるよう。この時にはドラムセットはずっと緑一色に光っていて、森をイメージしていたのかな、と。赤と青を入れつつ、下から白い光がステージを包むような照明がさながら朝焼けの陽光のようだった。

 

辰野は星が綺麗に見えるという話、卓郎さんの地元も星が綺麗に見えるが、辰野は標高が高いから星が近く、「星降り度」が高いという話の後に演奏されたのは星に願いを。その話を聞いた後だとこの曲のようなロマンチックな歌詞が卓郎さんから出てくるのも頷ける。

続いてはこの日一番予想外だったどうにもとまらない!2番では「辰野で誰かに声かけて~」としっかり歌詞に辰野を入れてくる卓郎さん。語感もぴったりでかなり盛り上がったところ。(「誰か」を「ちひろ」に換えたらもっと面白かったな、などと考えてしまった)

原曲に近いアレンジのHeart-Shaped Gearでは、イントロや間奏の入りで一小節だけ和彦さんが原曲の滝さんパートと同じメロディーを弾いてから入る。和彦さんの大きな見せ場のひとつだと思っているし、この一節がきちんと入ってくるのが大好きです。

前半のPsychopolisもそうだけれど、アコースティック編成で削ぎ落とされたアレンジになるととてもいわゆるJ-POP的と言うか、歌詞も良い意味で分かり易く、過度に刺激の強い表現ではないので実は幅広い層に受け入れられるかもしれないな…なんて聴きながら思っていました。

 

荒地はアコースティックになるとこんなにも繊細な印象になるのか、という驚きがあり、

「枯れた花のために ささやかな祈りの雨を」という一節が引き立つような儚さもある。アウトロでは一転、卓郎さんが思いっきり音を歪ませ長いソロを弾ききる。

 

軽快かつ陽気な印象さえ受けるような太陽が欲しいだけ、穏やかなあたたかさのあるアレンジが「もうひとりにはしない」という優しい一節を目立たせる。

最後はThe Revolutionary、こちらも軽快なアレンジ。2曲続けてとても前向きなエネルギーのある曲でカラッと締める。ここでは卓郎さんのハーモニカが登場。アウトロで徐に唇をぺろっと舐めていた卓郎さん、あれはハーモニカを吹く準備だったのかな。この少し前のMCで帽子を取り、ハーモニカを首から下げ始めた卓郎さん。しかしすぐ「まだいいや」、なんて言いながらハーモニカを戻してしまっていたが、それはこの曲の3曲ほど前のタイミングだった。準備が早すぎたのか。笑

その時にハーモニカを先に掛ける=「さきがけ」と言い出し、一文字で書ける(おそらく「魁」)などと言いながら徐々に脱線し始める場面も。

 

 

本編終了、しばらく続いたアンコールの拍手に呼ばれ再び出てきた3人。

フォーマルなシャツ姿ではなく、ロビーのスタッフさんが着用していたものと同じ、ホタルのいる風景が描かれたTシャツを揃って着て出てくる。

和彦さんは何かを齧りながら出てくるという…笑 おやきかな?と思っていたらあたりで、座ってからもしばらくもぐもぐと食べ続けていた。卓郎さんに「町長に怒られるよー」などと言われると、食べかけのおやきを傍らにあったタオルで挟んで隠す。この様子には客席から爆笑。何種類かおやきが用意されていて、卓郎さんはきのこを食べたらしい。和彦さんが食べていたのは大根だそう。ただ、和彦さんは既に大体食べていて、あとはあんこを食べていないと。そこから、辰野で売っているおいしいどら焼きの話へ。かみじょうさんのご家族が差し入れをしてくれたりするそうです。

 

アンコールの1曲目はカモメ。9mm曲の中で最もこの編成が似合うのではないだろうか。長野でこの曲を演奏したのは少し意外だったけれど。卓郎さんのしなやかな歌い方に女性口調の歌詞がとても似合うのだと改めて実感。

 

そして最後はBlack Market Blues、今日は滝さんがいないからと客にコーラスを求める、という卓郎さんの弾き語りなどではお馴染みの流れ。(卓郎さんが、おれが弾けばいいってのは無しだよ?というような事を言っていたような気がする)

しかしここで卓郎さんがBMBの声出しのためにとこれまた長野でのライブでは定番の流れになっている、客に長野県歌「信濃の国」を歌わせる。この流れはあらかじめ決まっていたのか、卓郎さんに向かってかみじょうさんが「よく覚えてたねー、俺忘れてた」というようなことを言っていた。

かみじょうさんがそれに合わせてドラムを叩いていたが、途中からスティックの片方をマイクに持ち替え、ドラムを叩きながらオンマイクで歌い出す!!途中から歌詞があやふやになっていたが、1番を最後まで歌いきる。かみじょうさん曰く、マーチングドラムは片手では無理、とのこと。歌詞が飛んだのではなく、叩きながら歌うのが難しかったのか。それにしてもまさか、かみじょうさんがオンマイクで信濃の国歌うとは…卓郎さんがこの日MCでよく喋っていたり、普段以上に表情豊かだったかみじょうさんに本編で言っていたが、本当にこの日は大サービスだった。(MCについては後述)

信濃の国大合唱が終わり、BMBのコーラス練習もしっかり済ませいよいよ演奏へ。結局最後まで着席しながら観ることになったけれど、この曲は練習したコーラスあり、いつもの手拍子もあり、やはり着席でもこの日一番の大盛り上がりだった。

 

これで全曲終了し、3人が客席に向かって挨拶をし始め…ると、スタッフさん3名がそれぞれ大きな花束を持って登場するというサプライズが!どう受け取ればいいのか?で若干ぐだぐだになりかけるステージを卓郎さんが仕切って整列し、揃って花束を受け取る。かみじょうさんも満面の笑みで花束を受け取り、真っ先にスタッフさんに自ら手を差し伸べて握手。大きな花束を受け取り、改めて客席に笑顔を向ける3人。そのまま順番に退場してゆく。

 

まだやれる曲が少ない、と卓郎さんも言っていたが、それでもこの曲数。更にMCでは3人で喋りまくっていたため、90分余りにわたるライブ。MCが長い分ゆったりしていたような、それでもあっという間に終わったような気もする。

今後ACのライブが決まっていないのがとても残念だけれど、9mmや卓郎さんの活動がこれから増えるから、ACはそれらの活動が少し落ち着いたら再開するのだろうか。ライブだけでなくどうか音源化も…という気持ちも大いにある。

 

 

以下、思い出せるだけ箇条書きでMCを書き出していこうかと思いますが、何しろもの凄い量だったこと、筆者の記憶力が残念なため、どのタイミングでどの話が出てきたのかをほとんど失念してしまっていて、このような形での文字起こしにて失礼します。

 

 

卓郎さんがかみじょうさんについて「バンド始めた頃は頼れるリーダーだったけど、パーソナリティーがおかしい」と言うような話を出してきて、その時に「あらー」と言いたげにおどけてみたり、頬に手をやって驚いたような顔をしてみたり、思いっきり舌を出して本気のてへぺろ顔を披露するかみじょうさん。

 

(きっかけは忘れた)卓郎さんがかみじょうさんに「町長の座を狙っているんだよね?」という振り。かみじょうさんも「玉座を空けて頂いて」的な事を言いながら話に乗っかる。しかし卓郎さん、「この男を町長にしてはいけない!」

 

かみじょうさんと和彦さんはライブ前日にホタルを観に行っていて、和彦さん曰く「宇宙みたいだった、宇宙行ったこと無いけど」とのこと。 昨日は雨だったのにそんな感じなら、晴れたらどうなるんだろうね、と卓郎さんに聴かれた和彦さん、「分かんねっす」

 

(何かのタイミングで)かみじょうさんが喋ると黙る卓郎さん。かみじょうさんが「そんなに拾いにくいこと言った?」と尋ねると卓郎さんが「あとで反省会しようね」

 

各メンバーの実家に泊まると受ける「地獄のもてなし」について。2006年あたり?かみじょう家に着くと早朝だったのに御馳走が用意されていて、かみじょうさんがきゅうりに明太子のっけて食べ始めた話。きゅうり一本に明太子を一房?一卵巣…?と謎の数え方をするかみじょうさん。(正解は一腹、ひとはら)

 

これもかつて辰野に来た時、卓郎さんと和彦さんがコンビニに行こうとしたが寒かったのでジャージの上にジーンズを重ね履きして行って、とてもぱつぱつ(うろ覚え)な状態になってしまったのを「もこみち」と呼び始めて笑い転げて道端で凍死しそうになった、という話。卓郎さんはその話するつもりなかったらしいが、ぶっこんできたのは和彦さん。

また、和彦さんが車に水の入ったペットボトルを置き忘れ、翌日取りに行ったら水がバキバキに凍っていた、という寒さにまつわる話。

それからその頃、卓郎さんと滝さんは卒業するのに単位が足りないかもしれない、もし卒業できなかったら追試受けに行くから3人でライブして、と言った滝さんの話。から、今日滝がいないのは追試を受けに行ってる、と。(本当は上海にいるらしい。)追試のくだりは2年前の長野アコースティック公演でも出てきた話でした。

 

辰野の名物であるホタルは、元々一人の先生が始めた取り組みらしいよ、と卓郎さん。(かみじょうさんは知らなかったらしい。)沢の水は寒くて、ホタルの餌となるカワニナが棲めないから、諏訪湖の水を引いてきて混ぜているのだそう。諏訪湖の水は栄養もあるのだと。

卓郎「諏訪湖の川の水…川じゃないや海だ」

和彦「海じゃねーし」

つっこみが鋭い&素早い和彦さん。

 

辰野には「夜明け前」という美味しい酒がある。卓郎さんも美味しいと言っていた。諏訪湖の水は入っていない。

もう一つ酒の話で、かみじょう家ではスズメバチを漬けた酒を作っていたという話。卓郎さんがあの時は味が分からなかったと言う一方、和彦さんは美味しかったと。かみじょうさんのお父様?おじい様?が作っていたらしいがお酒に弱いらしく、かみじょう家は代々酒に弱いのではと。そこで強がるかみじょうさん。

 

かみじょう「辰野の人口が現在1万9000人程で、2万数千人をピークに減少の一途を辿っている…その一端を担っているのが、この俺!!」(親指を立て自分を指しながらどや顔で)

「俺が戦うには辰野はフィールドが狭すぎた」とも。

 

アンコールにて。前述のように3人揃ってホタルTで登場し、卓郎さんが「ホタT(ホタティー)」と言い出し、和彦さんが「ホタテ」と聞き間違えたのを皮切りに

卓郎「ホタテ」「SHISHAMOの妹分みたいだね」「妹分なのにホタテの方が大きい」と散々膨らませた挙句「今のは無かったことにしてください。」

 

これもアンコールか、ぴっかりちゃんの話から派生したんだったか…?ドラムセットがホタルみたいだという話を卓郎さんがすると何故か音頭的なリズムを叩き始めるかみじょうさん。その後卓郎さんに向かって真顔、と言うか虚無の表情を向ける。卓郎さん、「フォローしないよ。」

 

 

恐らくこれでも拾いきれていないはず…とにかく3人で喋り倒していました。

ゆるすぎて楽屋みたいな空気をステージ上で出していた時もあった、それだけ和やかなひとときでした。

 

MCの端々に、かみじょうさんの地元愛が垣間見える発言もあった。

途中でドラムセットの傍らにいるぴっかりちゃんの頭を撫でていたり、なんにもないけど良いところがあると、うろ覚えですが仰っていたり。好物である辰野の食べ物(ローメン?)の話も出てきていました。

MC中に終始穏やかな笑顔を浮かべられていて、普段のライブよりも心なしか楽しそうに見えた。

最後にはふわっと、でもしっかりとマイクを通して「愛してるよ、辰野」と仰っていた。

一番愛を感じたのは、最後にスタッフさんから花束を受け取った時。おどけた顔など、散々百面相を見せていたかみじょうさんがこの時に完全に素の表情で、満面の笑みを浮かべていたこと。今までに観たことがないような笑顔だった。本当に辰野が好きなんだな、と。

 

この町を出て全国区で活躍するようになったかみじょうさんが、丸くて光る、まるでホタルのようなドラムセットを携えて、ホタルが美しく飛ぶ季節に凱旋する、こんなに粋な帰郷の仕方他にないですよ、素敵過ぎる。

 

今度は9mmとして辰野に来たい、という話も出ていたし、またここでライブをやる機会が近いうちにあるかもしれません。その時にはきっとまた来たいと思いました。ホタルのリベンジも兼ねて。

20180527/9mm Parabellum Bullet“カオスの百年vol.12”@日比谷野外大音楽堂

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9mmが2年振りに野音のステージに戻ってきた。

野音の地で初めて開催する“カオスの百年”であり、野音のライブが告知されたのと同時にその存在が発表されたAC 9mm御披露目公演でもあり、サポートの武田さんも為川さんも出演、そして滝さんはフル出演するという盛りだくさんの公演。激しい期待と少しの不安。

 

思えば2年前のあのライブから、9mmの苦難とバンドを続ける為の試行錯誤が始まった。

これまで当たり前だったことが当たり前ではなくなってしまった。

 

それでもメンバーそれぞれが滝さんの代わりにできることを増やし、様々な人たちの協力を得ながら、9mmを続けてきた。少しずつ滝さんも帰ってきて、その試行錯誤が報われ始めた。

卓郎さん達は過度な気負いは持たずにこの公演に臨むようだった。だからこちらもなるべく感傷的にならないように、ただ楽しみに待つようにしていた。それでも数日前からどうしようもない緊張感に襲われたりもしたけれど。

 

 

当日の天気は朝から晴れ。割と雨を降らすバンドである9mmの野外公演でこんなにいい天気だと、もう既にライブの成功に対しての良い予感がする。5月らしく風が気持ちよく、絶好のライブ日和。

 

会場内に入るとステージにはお馴染みのバックドロップ、その下には“CHAOS  IN 100 YEARS”と書かれた幕。ステージ左右の床には大きなミラーボールがひとつずつ。

そしてステージのど真ん中には白い大きな球体がいくつか集まっているような不思議な物体。よく見れば随分変わった形のドラムセットだと気付く。

開演が近付き運び込まれたのはアコギと、それからセミアコタイプのように見えるベース。

 

野外なので客電落ちもなく、メンバーどうやって登場するの?と思っていると開演時刻になり、何の合図もなくまずはかみじょうさんが登場。黒っぽいシャツをきっちりと着こなし、更にこれまたきっちりとネクタイを締めている。

かみじょうさんがドラムを叩き始め、続いて和彦さんがステージへ。同じく黒シャツに、首元にはバンダナ。最後に白シャツ、黒いネクタイ、黒いハットを被った卓郎さんが出てくる。

普段からモノトーンの衣装が多いけれど、ここまでシックな服装でのライブは数少ないだけにまずはそれぞれの装いに目を奪われる。

突然メンバーが登場したため、立てばいいのか座ったままで良いのか、それすら分からないで辺りをきょろきょろと見回していると全体的にそんな感じ(に見えた)で、結局座ったままスタート。

 

 

AC 9mm

 

Answer And Answer

Heart-Shaped Gear

Psychopolis

Battle March

荒地

星に願いを

ハートに火をつけて

太陽が欲しいだけ

 

 

1曲目のAnswer、全く予想外だった、ジャズのような軽やかさのある、とびきりお洒落なアレンジ。ドラムの三連符が何故かとても印象に残っている。

まだ明るい野音のステージと森の中に、そのサウンドと卓郎さんのしなやかな歌声が広がってゆく。

これまで、4人編成、卓郎・和彦・かみじょう の3人編成、卓郎・和彦の2人で、そして卓郎さんの弾き語り と様々な編成のアコースティックで9mmの曲を聴いてきた。そのどれとも全く違うアレンジ。全く違う音。想像と期待をいきなり軽く越えてきて、早くもこの編成がとんでもないことに驚くばかり。

 

続いて「1stゾーン(Termination収録曲だから)」と名付けられたHeart-Shaped Gear、Psychopolis、Battle March、(アコースティックと言えども、やはりかみじょうさんの仕事量は多め)

またその後には「Movementゾーン」として荒地と星に願いを、と9mm本体でも今やほとんど聴けないような曲を惜しげもなく披露。

荒地では卓郎さんがしっかりとソロをきめ、“最遅”のアレンジと卓郎さんが表した星に願いを では、音数を減らしのんびりと繰り広げられる演奏が心地よい。

 

情熱的な原曲と大きく変わり、ダウナーでどこかダークで不穏さのあるような曲調に生まれ変わったハートに火をつけて がまた意外なアレンジ。歌のメロディーがとにかく目立つことで、少し歌謡曲っぽさが強まったようにも感じる。後から卓郎さんが語っていたが、このアレンジは和彦さんによるものらしい。そんな紹介を受けると、いやいやいや…と言いたげなリアクションを取る謙虚な和彦さん。

 

そして最後の太陽が欲しいだけ 原曲では凄まじいエネルギーを放っているこの曲、跳ねたリズムとカラッと明るい曲調がとても多幸感があり、穏やかな楽しさで会場を包む…

という空気だったのでしょうか、全体的には。私もそのつもりで楽しく聴き始めていたのですが、この曲、このアレンジ。2年前にツアー“太陽が欲しいだけ”の、中止になった長野公演 その代わりのアコースティックライブで披露されたアレンジとほぼ同じだったんですよね。

その公演は、2年前の野音の直後だった。

あの時に、あの状況で出来る限りの事をして楽しませてくれた、そんなライブで披露されたアレンジを、この晴れ舞台でまた聴けたという嬉しさと感慨深さに、少し視界を滲ませながら聴いていました。こんなに粋な選曲してくれるなんて…と。

 

ライブ中の雰囲気と同様にMC中も非常に穏やかで、卓郎さんがうっかり喋りすぎそうになって自分で止めていた場面もあった。

「かみじょうくんが登場して、みんな立ち上がるかと」思ったらしい卓郎さん。結果は全員着席のまま、という事で、これには驚きだったようだ。

よくある「新人バンド」設定(何せこれがAC 9mmの初ライブである)で「9mmさんに曲と胸をお借りして…」なんて卓郎さんが言ってみせたり。

 

白い球体がいくつか集まったような不思議なドラムセット、かみじょうさん登場の後に球体の色が微妙に変わったのが見えたので、もしや…と思っていたらやはり球体が光るドラムセットだった!日が落ちる前だったので、分かり辛かったのが惜しかったけれど、MCの途中で話を振られて光らせてみたり、激しくカラーチェンジさせたりしていました。その時にかみじょうさんが思いっきりどや顔をしていて卓郎さんにつっこまれたり、驚いたようなおどけた表情をされていて、演奏中は淡々とした表情なのにこういう時に思いっきり表情豊かになるかみじょうさんを観てこちらも思わず頬を緩めてしまう。

 

アコースティックだけれどこのような編成で、時に卓郎さんはアコギを歪ませソロを弾いたり、和彦さんもベースでコードを弾くような感じだったのが3人とは思えないようなどっしりとした音を生み出していたり(MC中に和彦さんが手首をばたばたと振っていた時があったので、それなりに負担はあったんだろうか) 去年あたりにかみじょうさんが「ジャズドラムを学んだ」と仰っていたが、もしかしてこのアレンジに繫がったのか…と途中で気付いて喜び。

アコースティックだけれども穏やかなだけはなく、長年慣れ親しんだ9mmの曲たちの新たな一面を見ることとなった。5月の爽やかな陽気がぴったりで、この時期に野外で聴けた贅沢さ。まだまだ知らない一面がたくさんある、観ながらそんな事を思っていたらより嬉しくなった。

 

 

AC 9mmが終わるとすかさず転換へ。

何と“CHAOS  IN 100 YEARS”の幕の後ろにいつもの機材が隠れており、次々とお馴染みの機材が登場するという早業。

ひと通りの準備が終わり、だんだん暗くなってきた野音に「Digital Hardcore」が鳴り響く。いよいよ9mm!!

順番に出てくるメンバー、最後に滝さん…滝さんだ…大歓声が爆発する。

 

 

9mm Parabellum Bullet

 

The World

Mr.Suicide

Lost!!

Supernova

Story of glory

I.C.R.A

Vampiregirl

キャリーオン

Everyone is fighting on this stage of lonely

生命のワルツ

Scenes

Termination

Talking Machine

新しい光

 

Black Market Blues

Punishment

 

 

ど頭からThe Worldという初期曲を入れてきたこの時点で、もう既に「特別感」が出ていたような気もするし、「あの頃の9mm」が帰ってきたようでもあった。滝さんは今まで見たことのない、黒いレスポールタイプのようなギターを弾き始める。

続いてはもう本当に久々のこの曲、でもライブアレンジのイントロが何一つ変わっていない!Mr.Suicide!!

初期らしい爆裂っぷりと儚い美しさが混じったこの2曲を野外の開放感の中で聴けた、過度な感慨深さのせいではなく、ただただ曲が美しかった、それだけでもう目頭が熱くなった。

 

Mr.Suicideから間髪入れずにLost!!へ、という繋ぎ、熱すぎる展開に大いに熱狂し、

その次は先日ビバラでも披露されたSupernova ギターが3人いるので、印象的なリフはトリプルリードのアレンジという贅沢さ。この時既に薄暗くなり、「満月」ではなかったけれど、下手側の上空には月が輝いていた。まさか本物の月を眺めながらSupernova聴けるとは…と感激していたので最後はステージもあまり観ず、

“満月の向こうで 満月の向こうで

満月の向こうで神は見ていたの?”

の一節を聴きながら月を眺めていた。その後は薄曇りといった空模様だったため月も隠れてしまい、Supernovaの時だけこんなにもよく月が見えていたことが奇跡的にも感じられた。

 

続いてStory of glory この1年間にあった出来事に思いを馳せながら聴くと、余計に今の9mm自身を歌っているように聴こえる。

“わけなんてなくて笑っていた

おれたちは今夜無敵なんだ”

と、絶叫するように歌ったのは滝さん!!!

滝さんがこんなに力強く、無敵なんだ!!!と叫んだ、それが言葉にならないくらい嬉しかった。

 

次もBABELからI.C.R.A  ここでやらないでどうする、と言いたくなるくらい、会場の規模が大きければ大きい程映える曲、だから嬉しいセトリ入り。間奏のタッピングは為川さんが見事に弾ききる。滝さんはここでライター奏法を披露。

同じくこの大人数で圧巻の大合唱を巻き起こしたVampiregirl かつて定番曲としてたくさん聴いてきたこの曲も久々に聴いた気がする。ギターが3人いるから最後のサビでは音源を再現するかのように演奏。

 

 

ここで卓郎さんが武田さんを呼び込むと、登場した武田さんが為川さんとステージ上でハイタッチして交代。

数日前のLINE LIVEにて予告されていた通り、新曲をここで披露。

BABELの選曲から漏れた、という話も何となく分かるような、相変わらず重たいけどそれ以上に爽やかさもある曲。

“キャリーオン やぶれた夢をつないで”

というサビの一節がまるで今の9mmをそのまま歌っているようだった。

 

Everyone is fighting on this stage of lonely  去年この曲を演奏していた時には、最後のコーラスをかみじょうさんが担当していた。しかしこの日はドラムセットにコーラス用のマイクは無かった。その代わりに頼もしい歌声を響かせたのは武田さんと、滝さん。

かみじょうさん、やはり去年は滝さんの代わりを担っていたんだ。かみじょうさんのコーラスがなくなったのは少しだけ寂しくもあるが、滝さんが帰ってきた実感がまたここで湧いてきて嬉しくなった。

 

原曲のアコギのイントロが音源で流れてから演奏に入った生命のワルツ、これは2年前の野音と同じ。その時は1曲目だった。アウトロでは和彦さんが思いっきり勢いをつけぐるぐると回る。キャリーオンからこの生命のワルツまで、「前に進む」姿勢や生命力に溢れた曲を並べてきた、これが今の9mmの意志を表しているように聴こえてならなかった。

 

そんな前向きな流れから次はかなりのレア曲、Scenes

“また会おう かならず”   の一節が頼もしい。

“燃えるように赤く舞い散る花びら”

の歌詞通り、温かみのある赤い照明、幾つもの四角が花のような模様を描き出す。それが一転、

“雪のように白く舞い散る花びら”

からは真っ白く変わり、ステージの壁に水玉を描く様が見事だった。

 

Terminationではサビの大合唱、間奏でソロを弾きながら最終的にステージを元気いっぱいに転げ回る滝さんの姿。ステージの上で思いっきり動き回る滝さんが、遂に、帰ってきた!

この曲の

“最後の駅の向こう 何から始めよう”

という一節が大好きで、それは退廃的な雰囲気があるこの曲に、最後の最後に少しの希望を持たせるような言葉だから。

この日に聴いたこの一節はこれからの9mmが見据える確かな希望を表しているかのように聴こえた。

 

Talking Machineのいつものイントロ、いつも通りマラカスを手にする卓郎さん。いつも通りの光景…かと思いきや、滝さんが卓郎さんからマラカスの片方をもらい、ふたり一緒にひとつのマイクの前で一緒にマラカスを振るというまさかの展開!細かい表情は見えないものの、卓郎さんと滝さんの楽しそうな様子はよく伝わってきた。

トーキンでの照明、細かな光の粒が上へ上へと上がっていくような。ステージ床に置かれたミラーボールはこの為のものだった。光の粒がステージいっぱいに広がる美しさ。ミラーボールをこんな風に使うんだ!!という驚き。

トーキン2サビの前、“何べんやっても”で和彦さんと滝さんがぴったりのタイミングで飛び上がる。かつてはこれもお馴染みの光景だった。しかししばらく、この光景すら観ることは叶わなかった。ようやく、ようやく観られた…これが観たかった!!

 

本編ラストの新しい光では卓郎さんに煽られるとこの日一番の大合唱が巻き起こる。最後にはまるで祝砲のように放たれた金テープがすっかり暗くなった夜空を彩った。

 

 

 

アンコール、メンバー4人と武田さん、為川さんと全員ステージに出てくる。事前に「6人では演奏しない」と告知されていたが、6人で演奏が始まる。

BMB、卓郎さんが「日比谷野外大音楽堂にたどり着いたなら!!!」と歌詞を変えて歌う。武田さんも為川さんも隣に並んで楽しそうにギターを弾き、時には滝さんがそれに加わる。

 

そしてこの無敵の6人編成でのラスト…静かなイントロが鳴り響き、滝さんの爆速カッティングが炸裂する!間違いなく9mm史上最強の、6人でのPunishment!!

曲に入る直前、滝さんが卓郎さんと何やら確認を取るように顔を見合わせていた。もちろん声も聴こえず、細かい表情も分からない。でも「いけるよ」と言っているように、見えた。ほんの僅かな瞬間で、もしかしたら思い違いかもしれないけれど、こんな瞬間でさえ嬉しかった。

間奏ではかみじょうさん以外の5人がステージ前方に並んで弾く圧巻のほぼBABELスタイル、また滝さんがソロを弾いた時だったか、無数のスポットライトが一気に滝さんを照らす。この時の滝さんのギターヒーローっぷり…暴れ回りスポットライトが大体外れる滝さんだから、これは貴重な光景だったかもしれない。

 

 

曲が終わると卓郎さんが

武田将幸!為川裕也!中村和彦!かみじょうちひろ!(「かみじょう」で噛んでしまって痛恨のやり直し)菅原卓郎!滝善充!!とメンバーの名前を順番に呼ぶ。言わずもがなではあるが、今やサポートの武田さん、為川さんも大事な9mmメンバーであり、全員でこの歓喜の公演を締めくくった。また割れんばかりの大歓声が巻き起こった。

 

滝さんはいつものように真っ先にステージから消えていったが、どこかやりきった表情に見えた。卓郎さんは上手、下手、真ん中、前も後ろもまんべんなく、丁寧に客席に向かって手を振ったり、笑顔を向ける。和彦さんもピックを投げまくりながら同様にゆっくりと挨拶をしてゆく。かみじょうさんはスティックを何本も客席に投げ入れ、Tシャツの両端をつまみながらバレリーナのようにエレガントな挨拶をし、ステージを後にする。

 

 

終わった。無事に、野音公演が終わった。

 

滝さんが全16曲を完走した。

まだ大変そうなところはサポートのおふたりに任せ、それでもここぞというところは台の上に立ったり、前に出てきたり、動きまくり転げまわりながら全部、弾き切った。

昨年の7月にはわずか2曲、それが12月には9曲を弾き、そして今回16曲も。正直、予想よりも遥かに早く、滝さんが復帰してきている。まず、それにとても安心した。無事に終わった。終わった後に安心して完全に力が抜けてしまった。じわじわと嬉しさがこみ上げてきた。滝さんが、帰ってきた。

 

卓郎さんはMCで「新しい伝説作ろうか!」と言っていた。野音の少し前には「リベンジではない」とも言っていた。本当に「リベンジ」なんかじゃなかった。因縁のステージを、あの時の何倍も素晴らしい景色にすっかり塗り替えてしまった。

 

セトリ全体を見てみると、どこまでも前向きなメッセージが込められているようにしか見えなかった。

去年から卓郎さんが言い続けていた通り、9mmはもう前に進むことしか考えていない。

何せAC 9mmの1曲目から

“はじまったんだ 何言ってんだ 終わりじゃないのさ”と宣言して始まったのだ。

 

ここ2年間で聴けなかった曲がたくさん演奏された。間違いなく、BABEL曲まで弾きこなすサポートのおふたりのお陰だ。ギター3本の5人編成は、結果的に原曲を再現するようなツインリードやそれ以上のアレンジが可能になり、単純に既存曲の表現方法が増えた。これまでのアコースティック編成の経験から、AC 9mmという新しい表現方法を手にして、更に演奏できる曲が激増した。

大変な2年間だったことは間違いないけれど、9mmがこの2年間で得たものはこんなにも多かった。それを実感できたライブでもあった。

 

最後に、卓郎さんが中盤で言ったこと。

「もうダメかもしれない。やめようと思った。その度にライブで見てきたみんなの顔が浮かんできて、考えるのをやめた。」

言葉は多少違うかもしれないが、卓郎さんはこんな言葉を客席に投げかけてきた。

 

2016年、満身創痍の状態で客席に向かって「助けてくれ」と言いながらステージに立ち続けた卓郎さん。

2017年、9mmを止める可能性があったことを明かしながらも、「9mmを続けるんだ」と言いながらステージに立ち続けた卓郎さん。

そして2018年。以前のように弱音を隠すことがなくなった。それはもう人前で言えるくらい、今は「大丈夫」だということ。卓郎さんがすっきりしたような笑顔で、この言葉を言った瞬間が、強く目に焼き付いている。

 

卓郎さん、2年前のあの時から、客席に向かって、ファンに向かって、何度も何度も感謝の気持ちと優しい言葉を投げかけてくれた。自分たちがどんなに大変な時にも、こちら側への気遣いの言葉を口にしてくれた。

(ちなみにこの公演、チケットのとあるトラブルが発生してしまった。それが発覚した時にも卓郎さんはすぐに、「だいじょうぶ」「一緒に楽しもう」と気遣いの言葉を下さっていた。)

 

野音公演の後からこの日に披露される新曲が9mmからの「プレゼント」として無料ダウンロードできるようになることが発表されていた。嬉し過ぎるプレゼントを、ライブと同じくらい楽しみにしていた。

ところがライブ中盤、何とこの新曲を来場者へのお土産に、CDとしてプレゼントするという更なるサプライズが発表された。形は何であれ新曲を聴けるだけで嬉しい、でもやはりCDとして手元に来ることはもっと嬉しい。

 

本当は、感謝の気持ちを表したいのはいつだってこちらの方なのに。でも、ただのファンなので何ができるわけでもない。それが当たり前で、ただ9mmの曲を聴きライブを観続けることが唯一できることだと思っていた。

それだけに、卓郎さんのこの言葉は、ただライブを観続けていたことがほんの僅かでも力になれたのか、とおこがましいことは分かっていながらも嬉しかった。本当に優しい、卓郎さん。優しいバンドだ、9mmは。

 

 

卓郎さんの言葉通り、間違いなく伝説の一夜になった。

その瞬間が目の前で繰り広げられていたこと、その瞬間に立ち会えたことが感無量です。

 

でもこの公演も、やがてこれからの9mmの中で輝かしい出来事のひとつ、あくまで“歴史のひとつ”として記憶に残るライブとなるのでしょう。だって、9mmはこれからもっと「最高」と「無敵」を更新し続けるのだから。

9mm Parabellum Bullet「BABEL」2017/05/10

 

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2016年11月5日、豊洲PIT

ツアー“太陽が欲しいだけ”追加公演終演直後に突然告知されたアルバム

それが9mm7枚目の、後に「BABEL」と名付けられることとなるアルバムである

 

 

収録曲全10曲、すべてが新曲。最近のアルバムではメンバー全員が作詞作曲に携わっていたが、今作は全曲作詞を卓郎さん、作曲を滝さんが担当。しかも滝さんがかなり作り込んだほぼ完璧なデモを作り、それを元に制作されていること、歌詞も滝さんが卓郎さんにイメージを伝えてから書かれた、というだけにアルバム全体の統一感はこれまでの音源の中で一番だと言っても過言ではない。

 

収録曲がまだ解禁される前、卓郎さんは今作について「岩の塊」と表現したり、リリースが近づくにつれてライブで毎回のように「きっと初めて9mmを聴いた時のように驚く」と仰っていた。

初期9mmが“速い、暗い、日本語”というコンセプトだった、などと聞いた覚えがあるのを思い出し、これまでの曲を超えるような激しくて分厚い音のアルバムなのだろう、と期待をしていた。

実際、豊洲で観たアルバム告知映像で流れていた新曲と思しき一節はかなり激しそうなサウンドであった。

 

ところが、今作の中で最初に解禁されたのが5曲目の「眠り姫」で、卓郎さんが今作を言い表した言葉“岩の塊”というイメージが全く浮かばず、次いで解禁された4曲目の「ガラスの街のアリス」も激しいところはあれどイメージ的には岩というよりもそれこそ繊細な工芸のような美しさもあり、どういうことか…と思っていたがいざ全曲聴いてみると実はその他の曲が激しかった、という。それを狙ってこの順番での解禁になったのかは分からないが、リスナーを驚かせるには最も効果的だったのではないだろうか。

 

音についての第一印象は予想通り、いやそれ以上にやはり分厚い音であったこと、特にギターについてはアルバムの1曲目のイントロからけたたましいタッピングで幕を開け、その後もタッピングが多用されていたり、ギターに関しては前作「Waltz on Life Line(以下WoLL)」の「火祭り」で登場した“ライター奏法”や新たに出てきた“ガムテープ奏法(後述)”などのぶっ飛んだサウンドが多々あり、滝さんが現在腕に不調を抱え9mmのライブをお休みしている状況だなんてとても信じられないような完成度である。ライブで観ると、これまでもただでさえ手数の多かったドラムが更に複雑になっているように感じられるあたりにもこのアルバムのエクストリームさが出ている。

 

歌詞について。最近の9mm曲は力強い言葉、前向きな表現が多くなってきた印象だったが、今作はその系統の歌詞もありつつ迷いや苦悩を連想させる言葉が多く、じっくりと読んでみると、若者のやりきれなさが滲み出ているようだった「Termination」あたりの詞に近いような、そんな気がした。

ただ今作の歌詞は読めば読むほど、ライブで実際に聴けば聴くほど多くの箇所について、これは9mm自身について歌っているのではないか、としか思えない言葉が多く、どちらかというと抽象的な表現の多かった初期とはこの辺りで違いがある。

 

そのような特長があり、アルバム全体から烈々たるエネルギーを感じさせる今作を卓郎さんは自信をもって「初めて9mmを聴いた時のように驚く」と表現されたのでしょう。

9mmと出会った時から一度も離れず聴き続けているファンにはもちろん、初期に9mmと出会い、何らかの考えがあって現在は9mmと距離を置いている人が聴いても少なからず驚きや衝撃があるようなアルバムなのではないかと信じている。そういった人達が音源か、それともどこかのライブか、フェスか、とにかく何らかのきっかけで今作を耳にする機会を持ってもらう事ができたら、と願って止まない。

 

 

リリースから既に半年以上が経ち、もう何度もライブで聴いてきたので今では冷静に聴くことが出来るようになったが、実はリリース直後、今作を聴いて真っ先に受けた印象は

「怖い。何だか分からないが怖い。」

というものだった。

 

自分でも理由はよく分からなかったが、曲たちを構成している音の一つ一つは確かに慣れ親しんだ「9mmの音」なのに、何だか得体の知れないものを覗き込んでいるかのような、体の中をじわじわとどす黒い何かに侵食されるような、思い出してはいけない何かを引っ張り出されるような。

聴き始めて最初の一週間は完全にアルバムの雰囲気に呑まれ、普段のように歌詞やパート毎の細かいところに集中することもできなかった。

それと同時に、もう10年近く聴き続けているバンドの新譜で「怖い」と思える程の衝撃を受けるなんて凄いことだ、本当にとんでもないバンドだと実感しそれが素直に嬉しくもあった。

 

理由が分からないままリリース1ヶ月後からツアーが始まり、実際にアルバムの世界観を耳からだけでなく視覚からも受け取ることで得体の知れない怖さの正体が何となく掴めてきた。

それは卓郎さんがツアーのMCで、今作について

「BABELはおれたちの喜びや迷いや苦しみもすべて入っている」

と仰っていたから。

 

やはり卓郎さん自身や恐らく9mmが置かれた現状についての苦悩が少なからず取り込まれていて、9mmを観続けてきた身として昨今の9mmから感じていた僅かな不安と、元々の自分の思考がかなりそれに影響を受け、漠然とした怖さを感じていたのだろう、と結論付けた。

この怖さは9mmが困難な中でこんなに素晴らしいアルバムを作れた、という卓郎さんの言葉や、聴き続けるうちに不安の中にも僅かな希望を感じられるようにもなった。

 

 

アルバム全体については以上です。

以下、主観とライブで聴いた感想も交えて1曲ずつ。

 

  1. ロング・グッドバイ

いきなりけたたましいタッピングから始まり、一聴目から驚かされた曲。また、別れを連想させることから聴く前には若干動揺しかけましたが聴いてみるとむしろ始まりを想起させる曲だった。

「旅に出かけよう」の部分で入ってくるベースのスラップと最後のサビに入る前のだんだん大きくなり突き抜けるようなスネアの音から(9mmの曲ではしばしば登場する)ギターのナットとペグの間の弦を鳴らす「キーン」という音、更に畳み掛けるように入ってくるドラム、の流れがとても好きなところ。

「TOUR OF BABEL Ⅱ」で滝さんが9mmライブに一時復帰した時に演奏された曲で、滝さんがギターを弾く隣で卓郎さんが「僕には君がいれば何もいらなかった」と歌った時には言葉にならないくらいの嬉しさがありました。また、毎回最後のサビで一際力を込めて卓郎さんが「すべて壊してやるのさ」と歌うのがまるでこの困難な状況だって打破してやる、と言っているように聴こえてならない。

 

  1. Story of Glory       

これは聴いた瞬間に今の9mm自身のことだ、と思った曲のひとつ。ただ、「さえない栄光」という部分は決して当てはまらないけれど。その「さえない栄光の日々に」の部分で鳴るファンファーレのようなギター、「僕らは確かめた 風の中で」の部分での、パンク的なリズムにゆったりしたメロディーが乗っているあたりに貫録のようなものを感じる。

ライブで聴く「おれたちは今夜無敵なんだ」の部分では本当に9mmが無敵に見えるし、「ステージに刻まれたいくつもの奇跡を 思い出して 終われないって」の一節は今作に怖さを感じていた時にも9mmはきっとまだまだ終わらないんだ、と思わせてくれた。

(余談ですが一聴目はサウンド的にはjammingに近いなとつい思ってしまって、面白いな、と。)

 

3.I.C.R.A

全体的にシリアスな今作において、一番コミカルさのある曲。タイトルもサビの「愛し合え」から取っていて。この「愛し合え」がライブだと大合唱になって、あれだけの大人数で「愛し合え」って叫ぶ痛快さ。

間奏では凄まじいタッピング、Cメロでは前作WoLL収録の「火祭り」で異彩を放っていた、100円ライターをスライドバーのように使う「ライター奏法」、更にアウトロの和彦さんのシャウトの裏では弦の上にガムテープを張り、それを引っ剥がしてノイズを出した「ガムテープ奏法」によるユニークな音が詰まっているあたりが面白いところ。

個人的に好きなのはサビの「おやりなさい」の「さい」の部分の卓郎さんの伸び伸びとした歌い方。

 

  1. ガラスの街のアリス

近未来的というか、無駄のないシャープさがあり、歪んでいるのに透明感のようなものを感じる。4つ打ちに近いリズムがとっつきやすさもあり、フェスやイベントでもとても盛り上がっていました。

イントロ、タイトなギターのスタッカートとシンバルミュートから始まりツーバス連打へ、からしなやかなメロディーに続く。ライブではかみじょうさんがシンバルをミュートするところが大好きで、このイントロは決まってドラムに目を向けがち。個人的には是非そこに注目して頂きたいです。

最低限の登場人物と物寂しさや儚さを感じさせる言葉が並ぶ歌詞がさながらショートフィルムのよう。

「君」が「砂」になっても愛し続ける「ぼく」も、「最後の砂」になっても愛される「君」も、なんて美しいのだろうか。。

 

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  1. 眠り姫

今作で最初に解禁され、事前情報からのイメージとあまりにかけ離れたサウンドに驚かされた曲。

ゆったりとしたテンポと、9mmにしては激しい起伏があまりないリフ。その中でも太い音が目立つ、これまたゆったりとしたベースラインがうねる。

淡々と進んでゆくような前半。しかしライブでかみじょうさんの手元を見ると(ドラムは詳しくないので見たままの感想ですが)実は複雑な動きをしていたことに驚きました。間奏は夢現のような、鬱蒼とした場所に迷い込んだような深いリバーブが重なり、ホールツアーではリバーブのサウンドが会場全体を包み込むようだったのが幻想的にも思えた。その直後、現実を叩きつけるかのようにだんだん音が盛り上がってゆき、何かが迫りくるかのようなドラムの怒涛の3連符へ繫がる曲展開。ここが個人的には好きなところ。

 

この曲は初めて、歌詞を先に書いた曲とのこと。

寓話のような歌詞に込められたテーマは「原子力発電」だという。かつて9mmは「NO NUKES」にも出ていたので、この話題についてどういう思いを持っているのかは察するに難くない。

ただ、やわらかい表現を使って遣る瀬無さや行き場のない思いを感じさせるところ、特に「眠りたい 君を抱いて」という一節が単純に“排除”や“拒絶”で片付けるのではなく根本的にどう向き合えばいいのか、に目を向けているような気がしてその視点がとても卓郎さんらしいな、と思った。

 

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  1. 火の鳥

眩い、神秘的、荘厳。

曲が始まってしばらくは大空を舞うような悠々としたイメージ、続くツーバス、チャイナシンバル連打とギターのタッピングの音が煌めく。サビの凄まじい開放感は雲間から差し込む強い陽光のよう。2番の歌の裏で鳴る異国風の響きのリフも荘厳さがあり、まるで人の力ではないようなものを感じさせるような神秘的な曲。そんなことを初めて聴いた時に思いました。

サビ前の4小節、“ダッ、、ダダッ、、ダダダッ、ダダダダッ”と八分音符ひとつ分ずつ増やしながら、卓郎さんギター、ベース、ドラムが同じリズムを刻むところ、あの高揚感が堪りません。

ライブでも終始キレのある演奏で、最後の一音をスパッと止めた後の一瞬の余韻と静寂がまたとても良い。

ちなみに「TOUR OF BABEL」の神奈川と神戸では原曲通りのキーで演奏されましたが、名古屋公演以降は全て半音下げのキーで演奏されています。ボーカルのキーが高かったからなのか…。「眠り姫」も半音下げチューニングなので、ライブでは続けて演奏されることが多い。

ロッキンにて、晴天の野外で聴いた時の突き抜けるような開放感は今でも鮮烈に思い出せるくらい、素晴らしかったです。

「奈落に生まれ落ちた火の鳥よはばたけ」という一節につい9mmを当てはめて聴いてしまう。「輝かしい日々へと」もの凄いエネルギーを放ちながら活動を続けた今年の9mmを。

 

  1. Everyone is fighting on this stage of lonely

「太陽が欲しいだけ」豊洲PIT公演終了直後に会場で公開されたアルバムリリース告知の映像で流れていたのがこの曲のイントロだったので、厳密には最初に解禁されたのはこの曲。(YouTubeで公開されている映像は「太陽が欲しいだけ」に差し替えられているので、会場で観た人だけがいち早く聴けたということになる)

全体的に重たいパンチを繰り出すかのようなアレンジが9mmらしい。Aメロでの壮絶なカッティングが切羽詰っている感を出し、サビでたっぷりと音を伸ばしながら歌う「戦え」の一言が強大な何かに立ち向かう時に気持ちを鼓舞する。既発曲の「ラストラウンド」を彷彿とさせるがあの曲の歌詞よりも更に追い詰められた状況を歌っているかのよう。

間奏のツインリードからは若干哀愁のような感じもあり、挫折を乗り越えて最後のサビに向かうようなドラマチックな展開。壮大さのある最後のコーラス、ライブでは何とかみじょうさんも歌っています!間違いなく2017年の9mmにおける重大な出来事です。

「君の勝利を誰も望まなくても 生き残れよ」と、ただ戦うのではなく“ただひとりで”戦う事を肯定してくれることが、どれだけ嬉しく、どれだけ頼もしく思えたことか。

 

  1. バベルのこどもたち

事実上の表題曲。今作を聴き始めた頃に「怖い」と思っていたのは恐らくこの曲の影響が一番大きい。

イントロから不穏な空気が漂い、音の壁が迫りくる、Aメロでまた不穏な空気に戻る。

Bメロで、ドラムが複雑なリズムを繰り出し次いでギターとベースが揃って同じフレーズを弾く部分の、ドスの利いた低音が音源でもライブでも毎度聴き惚れるところ。

積み上げたものがいとも簡単に崩れ、路頭に迷い、見放された哀しみ、そんな感情に徐々に引っ張られていって間奏へ。間奏の音圧は音源でも充分迫力がありますが、ライブでこの曲と対峙した時には思わず立ち竦む程に圧倒されました。この部分の凄まじい音圧とここで入ってくる和彦さんの渾身のシャウトに絶望感を叩きつけられたような気分になってものすごい力で曲の中に一気に引き込まれるような感覚。

最後のサビからは何もかも崩れ去った後の僅かな希望を感じさせるようにも思えます。

詞も音もとにかく重く、間違いなく今作の核を担うこの曲、今年フェスやイベントでも何度もセトリに入りました。勿論ファンとしては嬉しいけれど、ライト層のリスナーにとっては初見で聴くのは重た過ぎることも想像できるはず。勝手な憶測ですがそれでも何度もセトリ入りしていたのは、出来る限り多くの人にこの曲を、「BABEL」という素晴らしいアルバムを届けたかったのではないか、と思っています。

 

  1. ホワイトアウト

重厚な「バベルのこどもたち」から一転して優しげな歌声、エレガントでノスタルジックなギターソロ。

前曲との対比で一層繊細さが際立っています。

寂寞感のある歌詞は読んだまま受け取ると別れや過日を惜しむ曲、しかし演奏する本人たちのことを思い浮かべると全く違う意味にも捉えることが出来る気もします。

最後のサビの前、「どれだけ昨日が」の部分、優しげな歌声と繊細なクリーンパートの掛け合いが美しい。

ライブでは真っ白な照明や、会場によってはミラーボールを使いさながら雪景色のようになり、ホールの大きな空間がこのエレガントなメロディーと雪景色で包まれた際には息を呑む程の美しさでした。

 

10.それから                         

土砂降りのように音が降りそそぐイントロ、邪悪なリフと終始モノローグのような歌詞で綴られる。

ライブではまた独特な空気が流れ、「悪魔のささやきは自分の声でした」で切れかけた電球が点滅するようなスポットライトを浴びながら、その後も歌詞を手振りで表現しながら歌劇のように歌う卓郎さんに、えもいわれぬ迫力を感じるようでした。心の「上澄み」だけで「浮かれた世界を沈めていく」程の陰鬱さを抱えた歌詞と中盤の語り口調のモノローグから、最初は気が狂う寸前の人のイメージすら思い浮かんでいた程。

様々な解釈の余地があるとは思いますが、聴き進めてゆくうちに救いの曲のように聴こえるようになった。

それは

「何が降ろうが逃げられないなら わたしはあなたと濡れていたいのさ」

「どんな未来が待ち受けていても わたしはあなたと苦しみたいのさ」

「どんな未来が待ち受けていても わたしはあなたと乗り越えたいのさ」

これが、今の9mmに完全に重なって聴こえるから。

 

 

 

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2016年後半、9mmは満身創痍だった。

 

 

周知の通り、滝さんの腕の不調により9mmは“いつも通り”のライブができなくなった。

ツアー前半は中止(結局アコースティックという形式で全箇所廻ったが) 、またツアー後半はサポートギタリストやゲストバンドを迎えて何とか開催できた。

ツアーが終わったら、2017年になったら、9mmは活動を休止してしまうのではないかという不安を抱えながら迎えた追加公演にて、まさかのアルバムリリースが発表された。

その時のあまりの驚きと嬉しさは、1年以上経った今でも忘れることはできない。

 

その数日後、滝さんが当面9mmのライブ活動を休止すると発表された。

アルバム告知で吹っ飛んだはずの不安がまた帰ってきた。

 

2017年に入り、出演するライブの告知がどんどん増え、9mmの活動は例年と変わらないペースで続いていた。他バンドのツアーにも積極的に出演しているようだった。滝さんがお休みしていても、今できる限りの活動をしていくんだな、とまた少しずつ安心できるようになった。

サポートギタリストを迎えてライブを続け、TOUR OF BABELからは各所で盟友ギタリストを2人ずつ迎え、ステージ上手前方にドラムセットを移動させた編成、通称「BABELスタイル」で多くのライブに出演した。

今年、最もサポートを務めた武田将幸さん、為川裕也さんを始め三橋隼人さん、そして石毛輝さん、辻友貴さん、西堀貴裕さんといったスーパーギタリスト達のサポートもなくてはならない存在だった。

 

 

その一方で3月、イベントに出演した卓郎さんがMCで突然話し始めた「去年活動休止も考えた」という話で、頭が真っ白になった。

それから卓郎さんは、時折同じような話をすることがあり、TOUR OF BABELの名古屋公演では、「(ツアー“太陽が欲しいだけ”名古屋公演の)ライブ中に“もうダメなんじゃないか”と思ってしまって」という話まで出てきた。

あの野音以降、私の記憶にある卓郎さんは、サポートしてくれる多くの仲間たちに「力を貸してくれ」と言うだけで、弱音は吐かず、フロントマンとしてステージに立つ頼もしい姿だけだった。もちろん、状況から考えると当然と言えば当然、だが2016年の9mmが予想を遥かに越える深刻な状態だったことを、知ることとなった。

 

 

一時期はそんな状態だったにも関わらず、9mmは立ち止まることを選ばなかった。

滝さんは9mmメンバーで居続けることを選んだ。

 

 

滝さんの代わりに卓郎さんがソロを弾き、和彦さんもベースで滝さんパートを弾き、かみじょうさんはコーラスを始めた。メンバー・チーム一丸となって「BABEL」の世界観を出来る限りの方法で表現し続け、滝さんの帰ってくる場所を守りながら戦い続けた。

 滝さんは9mmのライブは休んでも、それ以外のできることは何でもやっている、そのようにしか思えないほど積極的に活動を続け、7月には9mmライブへの一時復帰を果たした。

 

2017年を思い返すと、9mmはこれからも9mmを続けるのだと、今年完成した「BABEL」という素晴らしいアルバムで、また各地のライブで、宣言し続けた1年だったように思えてならない。

Story of Gloryで「ちょっとだけほっとして吐いた弱音」という一節が出てくるが、

9mmが活動を続けることしか考えていないからこそ、今になって活休も考えたと話せるようになったのだろうなと思うたびにこの一節を思い出す。

 

7月に9mmに一時復帰した滝さんが、年末に再び帰ってくる。

新年を迎えたらすぐ、何やらお知らせがあるらしい。

 

ただ活動を続けてくれることが、どれだけありがたいことか。

「来年の悪巧みを考えている」と、すぐ先の未来の話が出てくることが、どれだけ嬉しいことか。

 

思い返せば本当に苦難の道程だった。それでも9mmは乗り越えた。

乗り越えた先に「BABEL」という最高傑作があった。

もう9mmは大丈夫だ。

 

 

 

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20171126/THE BAWDIES“EXPLOSION OF MUSIC MONSTERS”@新木場STUDIO COAST

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初めてBAWDIESのツアーを観に行きました。

対バンが9mm、そしてドレスコーズという、同年代に登場し活躍していて、お互いが仲の良いバンド同士だったことが決め手でした。更に、DJとして石毛さんとノブさんも出演、と。これはただの対バンでは終わらないだろうなという大いに期待しながら当日を迎える。

 

 

開場直後、まだ外で入場待機している間にもう中から音漏れが聴こえてくる。きっともうDJ石毛&ノブ始まってるんだな、と思いながら入場するも、普段サブステージとして使われる下手側のスペースには誰もいない。

周りを見渡すと、入り口の真上のスペースに石毛&ノブ!これは気付かなかった人もいたのではないだろうか…

おふたりで楽しそうに、しかしあまり目立たずDJに徹している。まさかこのまま開演まで淡々とDJを務めるつもりか?と思っていると、17:30頃にマイクを手にした石毛さんが喋り始める。

フロアに向かって、遠い!とか、ここでやると思わなかった、下手側のスペースだと思っていたというようなことを仰っていた。

バカになって踊ろうぜ!という石毛さんの一言からの「A.B.C.Disco」や、運動会シーズンだね、という一言からのYMO(何故運動会?)など、淡々とダンスミュージックを流していた前半から一転、アグレッシブな選曲に。

前半は大人しく卓の前にいたノブさんも、YMOの曲に合わせエアキーボード(腕や持っていたタオルをキーボードに見立てていた。タオルはその後フロアにぶん投げた)をしたり、DJブースを飛び出し、柵をよじ登り、普段関係者がよくいる2階のバルコニーへ移動して踊った後に今度は柵を引っ剥がして持ち上げたりするなどのやりたい放題っぷり。

かつてBAWDIESやtelephonesも参加していた“KINGS”のメンバーであるPILLS EMPIERの曲、という盟友ぞろいのライブならではの選曲もあり。

18時になると、石毛さん自ら「ドレスコーズ!with B!!」とあのハイトーンボイスで呼び込み、ライブが始まった。

 

 

 

the dresscodes with B

 

この時には自分の位置からはステージがあまり見えなかったため、メンバーの登場の瞬間や演奏中の様子などははっきりと捉えられなかった。

黒いスーツのBAWDIESと、揃えたようなデザインのスーツで登場した志磨さん。

ドレスコーズの曲はもちろん、BAWDIESの曲で、志磨さんが好きだという「LEMONADE」のカバー、更に毛皮のマリーズの曲や共作してSMAPに提供されたという曲も入れられたセトリ。

マリーズの曲もドレスコーズの曲も少しだけ知っていたし、あまり観る機会のないバンドのライブは敢えて予習をせずに観るのが好きなため今回もそのように臨んだのですが、今回ばかりは予習をしなかったことを悔やむこととなりました。

それは、BAWDIESの演奏があまりにもそれぞれの曲にぴったりで、まるで元からそういうアレンジだったかのように思えたから。それぞれ原曲を知っておいた上で聴き比べをしたかった。

 

久し振りに観た志磨さん、物腰柔らかな佇まいなのにオーラが半端ないのは相変わらずで、人だかりの中から時折姿が見えた時には目を離すことが出来なかった。

立ち位置は志磨さんがセンターということで、普段センターにいるROY君は立ち位置に慣れておらず、しかも「“ベーシスト”としてステージに立つのは初めて」なので自分のキャラが定まらず、何故か志磨さんを「兄貴」呼ばわりするという迷走ぶりを見せる。また、ベーシストとして初めてステージに…という発言を受け、じゃあTAXMANが歌ってる時はどうなんだとつっこまれる。

 

志磨さんとBAWDIESは2003年頃からの付き合いで、出会った当初はマリーズのことを怖がっていたらしい(便所サンダル履いている人がいたり、やたらセクシーな恰好をしている人がいたから、だそう)

また、ある日のライブで富士山さんがリハ中に自分のスネアを壊してしまった時に、まだ話したことのないMARCYが自分のスネアを貸したが、本番が終わった後にMARCYのスネアもぶっ壊れて帰ってきたという思い出話もありつつ、この時にMARCYが使用していたドラムセットは富士山さんのものであることが紹介された。

 

最後の曲「愛に気をつけてね」では曲に入る前に志磨さんが客を前方に集め、そのままダイブ。

ちらっと見えた志磨さんの足が靴下しか履いていない!どうやら靴を脱いでからダイブしたようで、今までそんな紳士的なダイブした人観たことがない…!と最後まで志磨さんの独特な佇まいが素敵でした。

 

曲が全部終わり、5人で挨拶をし、何やらひそひそと話をしていると思ったら

 

志磨「ドレスコーズ!」

BAWDIES「with!B!!」

 

と掛け声もポーズもバッチリと決め、退場。

最後まで素敵な5人でした。これが初ライブだったそうです。一度で終わるのは勿体ない。またどこかで是非に。

 

 

 

ドレスコーズが終わると再びDJ石毛&ノブが登場。自分がしばし中座してしまったため、あまり観ることはできなかった。転換中にもDJの時間があって、待ってる間も楽しい、というのはとても嬉しい!

ここでも石毛さんが次の出番である9mmを呼び込む。

 

 

 

9mm Parabellum Bullet

 

サクリファイス

ガラスの街のアリス

Cold Edge

ハートに火をつけて

Black Market Blues

バベルのこどもたち

Discommunication

ロング・グッドバイ

新しい光

太陽が欲しいだけ

 

今回のサポートギターはHERE・武田将幸さん

 

定番曲多めのセトリの中に、今年リリースのアルバム「BABEL」からバベルのこどもたちとロング・グッドバイがしっかり入っている。フェスやイベントでもよくセトリ入りしているが、曲調的に何というか、初見の人にとっては色々な意味で攻めたセトリに思われてしまうかもしれない。それでもセトリに入れ続けるのは普段9mmを聴かない人たちにも、今年BABELという素晴らしいアルバムが出来て、その曲を少しでも味わって欲しいという事なのかな、と勝手に思っています。

 

 

ここ最近1曲目にやることの多いサクリファイスで始まり、Cold Edgeではアウトロで和彦さんがいつの間にかベースを置いてハンドマイクでシャウト、というテンションの上がりよう。

 

MCで卓郎さんが突然「イエーイ新木場!!コード引っかかったー!!(ギターのシールドを直しながら)」とハイテンション気味に言いだしたり、

突然ROY君の真似を始めたり(声色も口調も激似過ぎて爆笑を巻き起こしていた。ちなみに袖でROY君が観ていたらしい)

やっぱり友達ばかりで普段よりテンション上がっていたのだろうか卓郎さん。

 

どこのMCで入ったか忘れてしまったのでまとめて書いてしまうと、先程のwith Bが羨ましかったのか、「おれたちBulletまでいかないとBがないから…」と言うものだからこっちはもの凄く期待をして聴いていたのに結局やってくれなかった。和彦さんと武田さんならやってくれそうな気もしたのですが…残念。

BAWDIESとの出会いは2008年?2009年ぐらい?でおれたちにとっては2009年の方がいいよね!正確な情報は求めてないからね!というワンダーな発言も飛び出す。

そんなBAWDIESとの思い出話として、いつぞや9mmとBAWDIESが一緒に新幹線に乗った際、乗車している間ずっと「英語禁止」というルールで会話を繰り広げたことがあるという。(ニルヴァーナを“涅槃”と言ったりしてたそう)

 

しかし中盤のMCだったか、 「みんな色々あると思うけど…」「何かのお祝いでまたこうやって集まれたらいいよね」というようなことを仰る卓郎さん。

一度自身のバンドの解散を経験した志磨さん、現在活動休止中であるtelephonesのメンバーである石毛さんとノブさん、そして滝さんがライブ活動休止中という状況の9mm…と、自分や同世代の仲間達を取り巻く状況から自然と出てきた言葉だったのではないだろうか。そしてあの場にいた人の多くが、彼らと同じく同世代のバンドであるチャットモンチーが先日突然告げたバンドの「完結」を思い浮かべたでしょう。自分もその一人ですが。

 

 

新しい光では2番に入る前に和彦さんがかみじょうさんと向かい合せになるような位置に移動、そのままいつものキメ、という光景。9mmの時、幸運にも下手後方にぽっかりとちょうどいいスペースができていて、ステージ全体を良い感じで見渡せたから見えた光景でした。間奏の手拍子のところで、ふとDJブースを見上げると、ノブさんも一緒に手拍子しているのが見えて、これまた嬉しい光景。

最後は何となく予想がついて、両手を広げて待っていたらその通りだった、太陽が欲しいだけ

ここ最近、カラッとした明るさのあるこの曲が最後に来ることも増え、Punishmentや生命のワルツのようにライブの最後を飾る曲として定着していくのかもしれない、と思うと嬉しい。今年の夏ごろからセトリにまた入るようになってきたけれど、昨年の秋頃から今年の前半までは確かほとんどセトリ入りしてなかったはずなので。

 

 

 

9mmが終わり、DJ石毛&ノブがもう一度登場。

BAWDIESと俺達と言えば、という前置きからかつてBAWDIESがカバーした、telephonesの「sick rocks」(BAWDIESではなくtelephonesの方)を流したり、同じくtelephonesの「Love&Disco」ではフロアも大盛り上がりで、ノブさんがDJブースを飛び出したかと思ったら、いつの間にかフロアの段差のあたりに乱入していて客を煽るというこの日最大のやりたい放題っぷりを見せる。

これでもかという程フロアを盛り上げ、BAWDIESを呼び込む。

 

 

 

THE BAWDIES

 

ドレスコーズの時の黒スーツから一転、全員白いスーツに着替えて登場。

演奏が始まったと思ったら、とても聞き覚えのあるメロディー…何と9mmの「ハートに火をつけて」のイントロ!!!!まさか歌ってくれるのか!?とワクワクしているとそのままアウトロに突入し、あっさり終了という。

そのままIT’S TOO LATEに突入。

個人的にBAWDIESのライブを観たのが久々で、普段のセトリを知らないため今回のセトリが普段とどう違っていたのか、とても気になるところ。YOU GOTTA DANCEやEMOTION POTION、ROCK ME BABYやTHE SEVEN SEASなど、知っている曲が多かったので。

密かに期待していた、BAWDIES曲の中でも特に好きなB.P.Bも聴けて本当に嬉しかった!のですが、この曲も実はよくやる曲なのか、それともレア曲寄りなのか、気になるところです。

 

ドレスコーズの際に富士山さんの話が暴露されたが、実はこの日、富士山さんが観に来ていて…という裏話もあった。まさか観にいらしていたとは。笑

また、ドレスコーズの時のMCの続きで、“ベーシスト”としての立ち位置に慣れていないROY君の話で

 

ROY「ねえカズ、ベース弾いてる時ってどんな気持ちなの?」

和彦「えっ??」

という会話が繰り広げられていたことも暴露される。和彦さんの反応、すごい想像できる…

 

今回のツアーの対バンについて、「モンスターを召喚しようとして間違えて悪魔を召喚してしまった」SiM、

同じく「間違えて破壊神を召喚してしまった」マキシマムザホルモン と紹介

そして今回は「完全に友達」という、何とも平和なツアーファイナル。

 

EMOTHIN POTIONではシャウトするように振られたMARCYの、渾身のシャウトが「モンスターの生贄となる妖精」呼ばわりされていたり、(その後のフロアからのシャウトは圧巻だった)、MCでも大いに笑ったが

「ずっと一緒にいる仲間とライブしていると、馴れ合いって言われるかもしれないけど、こんなに楽しいのなら馴れ合いも悪くないよね!!」というJIMのひと言には、今まさにその楽しい空間に居る身としては、共感しかなかった。

 

 

好きな曲はもちろん、知っている曲、知らなかった曲でも自然と体が動き、最後まであの底抜けの楽しさに巻き込まれてあっという間にBAWDIESのライブも終わってしまった。

 

本編が終わり、アンコールでメンバーが登場するとTAXMANが缶ビールをマイクの前で開け…そうで開けない、という焦らしを入れると、フロアから「早くしてー!笑」という声が飛ぶ。その瞬間他のメンバーがフロアに向かって、ナイス!と言わんばかりに親指を立てるという素晴らしい連携プレー!

そのまま美味しそうにビールを飲むTAXMAN、いきなりROY君にビールを吹きかけるという謎の行動。仕返し?当然怒ったROY君、「仕事中だぞ!とんでもねえ奴だな!!」と返す。

 

JIMが、今日使っているギターはしばらく前にライブから引退させていたが、久し振りに登場させたという話を嬉しそうに話すとTAXMANが「今日ライブ後に飲むビールは絶対美味しいだろうから、昨日珍しく休肝日を作った」という話で割り込んで、またROY君を怒らせる(ROY君が、TAXMANには厳しくてJIMには優しいのって通常営業なんでしょうか?)そんなやり取りの後で1曲演奏。

 

 

もうライブが終わろうとしているが、個人的に一番期待していたものが、まだない。今日は無いのか?と思っているとステージが暗くなり、それが、漸く始まった。

 

 

ざっくり要約すると、青髭番長(相手が中学生以上だと柔道やってそうだからと怖がる)に、甥っ子(8歳)が泣かされたという「平凡番長(志磨遼平)」と、弟(10歳)の背中にセミを入れられたという「東北連合 9mm Parabellum 番長 うねり髪の卓郎(菅原卓郎)」から11月26日21時に新木場に来い、という果たし状が届く。うっかり新木場に来てしまった青髭番長が平凡番長と東北連合、更には「北浦和連合」の石毛と「踊るノブ」まで参戦し、三者に“挟まれ”…からのHOT DOGという流れ。

番長、という言葉が似つかわしくないような(良い意味で)佇まいの志磨さん、そして革ジャンを着て睨みをきかせる卓郎さん。しかも卓郎さんは舎弟感満載でメンチ切ってる和彦さんを従えて登場!!という気合の入れよう。

(追記:ライブ後にBAWDIESインスタの投稿で判明したが、和彦さんの役名が「ジャックナイフ中村」だったそうで。ジャックナイフって…笑)

これ本当に最高でした…2日経った今でも忘れられない!志磨さんは自分の位置からはあまり見えなかったけれど(残念…)ただでさえ普段から眼光鋭い卓郎さんが見せたあの睨み。ROY君のビビりっぷり。笑

演出も、前録りのナレーションをROY君、志磨さん、卓郎さんの3人分用意しておくというこだわりようで本当に…語彙力が吹っ飛ぶくらい、最高!

(1年間ラジオで経験を積み演技力が上がった?卓郎さんがHOT DOG劇場に参加することを期待していたので、期待通り、いやそれ以上のものを観られてしまってもう最高です。ありがとうございます)

 

3人が交互にボーカルを取り、和彦さんもベースで参加したHOT DOGがそれ以上に楽しかったのは言うまでもなく。マラカスを手に踊っていたノブさんが、マラカスを高く投げ上げ、見事キャッチしているのも運よく観られました。

曲が終わるとHOT DOGに参加しなかった武田さんとかみじょうさんもステージへ。

武田さんはTシャツ着てたけれど、かみじょうさんはアウターまで着て、口を僅かにもぐもぐと動かしながら(ガムでも噛んでいたのでしょうか)の登場だったので、本当はステージに上がる予定ではなかったのでしょうか?

真顔に近い表情で端の方に立っていたかみじょうさんでしたが、もっと端にいた武田さんをステージの前方に行くよう促したり、わっしょい待ちの最中に近くにいたMARCYにちょっかいを出していたりという優しさを見せていた。

 

TAXMANのわっしょいの説明の際には後ろで楽しそうにわいわいとやっている(談笑したり勝手にビールを飲み始めたり)他メンバーがどうしても目についてしまって、それはフロアの多くの人がそうだったようで、TAXMANが途中で「俺を見て!」と言ってしまう場面も。

 

「わっしょい!!」で締め、出演者全員が並んで挨拶。そしてメンバーが退場…せず、ピックをばら撒きまくりながらいつまでもステージに居て、何だか名残惜しそうな様子にも見えた。メンバーも退場したくなかったくらい、楽しかったのだろうな。

 

 

17時の開場から21時半頃まで、どこから振り返ったらいいか分からないくらい、あまりにも楽しいことが盛りだくさん過ぎて。

ドレスコーズと9mmの出演が発表されてからチケットを取ったのですが、出演者全員が友達同士、という対バンで楽しくない訳がない!!と行くことを即決して正解だった。BAWDIESはこれまであまり観る機会が無かったことを後悔するくらい楽しかった。楽し過ぎて気の利いた言葉が出てこないのですが、本当に、観に行ってよかった!

20171103/9mm Parabellum Bullet TOUR 2017 “BABEL on Life Line”@Zepp Tokyo

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9mmの今年2本目のワンマンツアーのファイナル公演。

去年のツアー「太陽が欲しいだけ」でZepp Tokyo公演は予定通り開催されているので、“去年のツアーで中止になった場所のリベンジ公演”という括りからは外れている?とも思いましたが、当初ワンマンだったはずがゲストバンド(HEREでした)を迎えたツーマンライブでの開催になったので、ワンマン公演としてのリベンジという意味ではやはり東京も“リベンジ公演”なのでしょう。

 

 

京都~長野公演では各メンバーセレクトの曲を開演までのBGMとして流していましたが、この日は自分のいた場所からはあまり曲が聴き取れず。途中でHEREやGRAPEVINEの曲がうっすら聴こえてきたのは認識できたので、東京はメンバーセレクトとはまた違った選曲だったのでしょうか?

 

 

生命のワルツ

サクリファイス

Lost!!

モーニングベル

Black Market Blues

ロンリーボーイ

Kaleidoscope

眠り姫

火の鳥

バベルのこどもたち

ホワイトアウト

それから

スタンドバイミー

キャンドルの灯を

Discommunication

ロング・グッドバイ

火祭り

Cold Edge

太陽が欲しいだけ

 

Mad Pierrot

Punishment

 

 

先に書いてしまうと、この日のセトリはひとつ前の長野公演とほとんど同じ。3曲目が違うだけ、というこれまでの9mmの、ツアーでも公演ごとにセトリをガラッと変えるスタイルを考えるとあまりにも意外。

ライブの途中で、セトリがほとんど変わらないことに気付いてはいたのですが、箱の規模が全く違うので照明や演出は大幅に変わっていて、その違いを重点的に楽しむことができたので、このようなセトリのツアーも面白い。

 

 

SE「Digital Hardcore」が鳴り響くと、開演前にはステージに掲げられていなかったいつものバックドロップがゆっくりと下から上がってくる。大きな会場だと時折ある演出ですが、何度観てもとても好きな演出。

メンバーが登場し、位置に着くと流れてきたのは生命のワルツのCD音源のイントロ。そこに演奏が被さる。

生命のワルツで、為川さんが見せた一瞬の不敵な笑みが素敵で、ここから為川さんの表情に何度も目を奪われることとなる。

 サクリファイス、今年はイベントやフェスでもかなりの頻度でセトリ入りしていたのでしょっちゅうライブで聴いてきた曲ですが、リリースから僅か5ヶ月程しか経っていないのにライブを重ねる度になくてはならない切り込み隊長のようであり、どんどん存在感を増すような曲になっている。

 

長野とほとんど同じセトリ、という中で唯一変わっていた曲が3曲目のLost!!

 

 Kaleidoscopeではとても淡い色合いのまだら模様のような照明が、バックドロップの白い双頭の鷲をうっすらと染める。控えめな色合いが万華鏡を連想させつつ流麗なメロディーを際立たせるかのよう。

 

眠り姫、「TOUR OF BABEL」での照明とは違い、間奏で複数の円のような模様がステージに映る。あの時と同じような規模の会場だから同じ演出でやることもできただろうに、こういう細かいところを変えてくるのが素晴らしい。

 

火の鳥 ではイントロのタッピングの同期とツーバス連打の部分で、ステージ後方に設置された小さな黒い箱から炎が噴き出る演出が!その後も何度も、メロディーに合わせて炎が上がる。

これまで9mmはホールや武道館公演でも照明や音玉、金テープ以外の特別な演出はほとんどやらなかっただけに、この派手な特効には本当に予想外。

この日自分は上手の前の方にいたのですが、それでも炎からはかなり離れた距離だったのにとにかく熱い。フロアにいた自分がこれだけ熱気を感じる程だったので、ただでさえ熱いであろう照明を浴びながら動き、更に近くで炎の熱気を感じていたメンバー(特に炎と横並びに当たるような位置にいらしたかみじょうさん)はさぞ大変だっただろう…などとつい考えてしまった。

 

ホワイトアウトではやはり白を基調とした照明。序盤は普通にライトを当てているだけでしたが2回目のサビでステージ天井の左右にあるミラーボールが使用されさながら雪が舞うような照明に。ミラーボール2個使いをすることでZeppの大きな空間が一気に雪景色になる。曲とぴったりでただただ美しかった。思わず上を見上げてしばらく見惚れてしまうほどに。

 

それから で、独特の重苦しさと僅かな希望で空間を圧倒した後。

スタンドバイミーに入る前のMCで卓郎さんが「曲を聴いて浮かんだ景色をそのまま歌詞にした」「空に虹がかかるようなイメージ」と一連の説明を入れる。

そのMC中、穏やかな表情を浮かべ、時には目を閉じて話に聞き入っていた為川さん。

為川さんは演奏中も感慨深げな柔らかい表情を浮かべていて、曲の雰囲気に浸りながら弾いているようだったのがまた良かった。

 

 

火祭り では再びステージに火が噴き上がる。ここも間違いなく今回の大きなハイライトだと思うが、長野公演で卓郎さんが歌った「激しい火に煽られるちひろかみじょう」をまさかの完全再現!!という。長野でのアレはこの為の伏線だったのか…?この日は「ちひろかみじょう」ではなく、「激しい火に煽られるZepp Tokyo」と歌われていましたが。

 

本編ラスト、太陽が欲しいだけ に入る前に卓郎さんが客の上げた手をそのままで、と上げさせて歌詞通り「さあ両手を広げて」状態から曲に入る。去年の豊洲を境に、しばらくライブで披露されることのなかったこの曲が、今夏から再びセトリに入るようになった。正直、滝さんが復帰するまで聴けない曲だと思っていたところもあり、また聴けるようになって嬉しい限り。

 

本編が終わると、フロアに挨拶する卓郎さん、和彦さん。そして、徐にステージ真ん中に出てきて両手を組んで下におろすポーズ(元ネタをど忘れしてしまった)をした後に去っていくかみじょうさん。

 

アンコール1曲目のMad Pierrot、この日カメラマンを務めていらした橋本塁さんが、ドラムセットのところで写真を撮りまくっていた。上から覗き込むようなアングルや、かみじょうさんの後ろからも撮っていたが、途中でかみじょうさんが後ろを向き、塁さんのカメラに顔を向けていて、あれ絶対何かやってるな、普通にカメラ目線なのか、おどけた顔でもしていたのか…というのが気になってしまって。(ざっと各媒体のレポを見た限りではそれらしき写真は上がってなかったと思う)

いつか、どこかであの時の写真を観られる時が来るのを楽しみにしていますよ。

そして為川さんの華麗なソロ…で、卓郎さんと和彦さんが為川さんの近くに寄ってきて正座しながら、時にはもっと近づいて覗き込みながら、ソロを弾く為川さんを見守るという(こんな場面今年どこかで観たことあるぞ…という感じの)微笑ましい場面があり、流石の為川さんもこれには笑いをこらえきれず、ソロをミスってしまう。これは卓郎さんたちが悪いです。笑

しかし、9mmのライブに出るようになってまだ半年ほどの為川さんがもうすっかり馴染んでいて、卓郎さんたちとの和やかな様子が繰り広げられていてここは本当に良い場面を見ました…

 

最後は本当に今年はライブでたくさん聴けた、イントロの爆速カッティングを卓郎さんが弾くのもすっかりお馴染みになったPunishmentで。ステージに並んだフロント3人によるトリプルユニゾンが決まる瞬間の無敵感。

もう語彙力を失いひたすら「かっこいい!!」としか言えない。

 

アンコールも終わり、かみじょうさんは何かコミカルな動きを入れながら退場、和彦さんはいつも通りピックを投げまくったり長々とフロアに挨拶、また卓郎さんも下手に行ったり、上手に来たりしながら長々とフロアに挨拶。

卓郎さんは時折、ライブ中にみんなのこと見てるよ、と仰る時がありますが、確かにライブ中はフロアのあちこちを見ているし、この最後の挨拶の時にはまるで自分の視界に入る一人ひとりとしっかりと目を合わせるようにこちらを見てくる。(だから自意識過剰、という訳ではなく本当に卓郎さんの視界に入るとこちらが動揺してしまうくらいバッチリと目が合う事もある)

卓郎さんがお辞儀で締め、メンバー全員が退場するが再びアンコールを求める手拍子が発生し、鳴り止まない。

だいぶ長く続いたような気もする。まだ観ていたい、もっと見せてくれ、そんな空気に包まれていた。私だってそうだ。結局ダブルアンコールは行われなかったけれども。

 

 

 

どこで入ってきたか完全に忘れてしまったMCを以下まとめて。

 

序盤のMCの際、フロアからメンバーの名前が呼ばれ、為川さんだけ裕也“さん”と呼ばれていたことに触れ

裕也だけ「為川さん」なんだろう?じゃあ東京のみんなも「東京さん」だよね、と相変わらずのワンダー発言を序盤からぶっこむ。

 

また、MCで迷子になりかけたか何かの拍子に客から「頑張れ!」と声を掛けられ、それに「みんな知ってるだろ、おれがMCで頑張らないこと」と返したり、“MC”の意味は各自で調べて下さいとも言っていた気がする。

 

中盤?為川さんの所属バンド・folcaの11月22日に開催されるワンマンの話になり、

日付を11月2日…?と言ってしまう卓郎さん、「さっき裕也から、いい夫婦の日(11/22)で覚えて下さいって言われてたんだった」だそうです。

MC中に正しい日付を卓郎さんに教えた和彦さん?はその後卓郎さんから「ありがとう!」と言われるもよく聞こえなかったらしく聞き返すような仕草。

和彦さん、ライブ中に卓郎さんから声を掛けられても聞き取れずにえっ、何?というような仕草で聞き返すことが多いような気がする。ただ単に卓郎さんが話している間は気が抜けているのか、演奏中の轟音で聞こえづらくなっているのか?

 

 

序盤に書いたこと、前回の長野公演のレポとも重複しますが、今回のツアーの大きな見どころとして、為川さんのギタリストとしての魅力を思い知るという。

ライブですし、難易度の高い曲ばかりのセトリなのでもちろん細かいミスはあったりもするのですが、それをもう次の音で軌道修正してしまうほどの技術の高さ。

そして東京公演で、目の前で為川さんを見ていて素晴らしいと思ったのが、表情の豊かさ。

暴れる、という程ではないものの軽やかな動きでステージを動き回る様子。

ふと表情を変えたり、それ以外は基本的に笑顔で弾いていたり、客の顔を見ながらニッコリと満面の笑みを浮かべていたり。

弾き方も9mmの曲に合っていて、いつまでも観ていたいと思えるようなギタリストだった。

表情豊かでよく動くギタリストを観ているのはとても楽しい。

 

 

今回の本編のセトリはWOLLの最初の曲「生命のワルツ」で始まり、WOLLの最後の曲「太陽が欲しいだけ」で終わった。その中でツアータイトル通り、WOLLの曲とBABELの曲が混ざって並んでいた。

メンバー全員が作詞・作曲を手掛けたことで正に「多彩」だったWOLL曲と、全曲を卓郎さん&滝さんで手掛け徹頭徹尾「統一」されたBABEL曲という、それぞれのアルバムがまるで正反対のようにも思えるかもしれないが、実際混ざってみると何ら違和感がなく、それどころか何だか不思議な繫がりを感じるようだと、聴いていて思った。

 

特に中盤、それから とスタンドバイミーの2曲を続けて聴いていた時にふと勝手に考えてしまったことがあって

制作された時系列的にはスタンドバイミーの方が先だけれど、続けて聴くと綺麗に繫がっている気がして。

それから では「やけに大きな嵐が近づいて」いる中で、苦しみや戸惑いも見せつつ最後に「わたしはあなたと乗り越えたいのさ」と歌い切り、

続くスタンドバイミーで「嵐が終わったあと」の情景の中で「ただ近くに」「未来は分からないから」と歌い上げる。

「私」と「あなた」、それが例えば“9mm”と“滝さん”なのか、“9mm”と“リスナー”なのか、当てはまるものは色々あると思うが、今この状況を「乗り越えたい」から、「未来は分からない」けれど「ただ近くに」いること。

これが卓郎さんの仰っていた、“どうやって9mmを続けていくか”の答えのように聴こえた。

                                                                                                                         

 

別のタイミングでのMCで、9mmの身近なバンドであり、つい最近、状況は違えどのメンバーをそれぞれ欠くことになってしまったアルカラとHEREの件にも触れ、(たいすけさんにメールを送ったら「ありがとうニャ!続けることを選んだバンド同士これからもよろしくニャ!」という文章が返ってきたという話だった)

そのアルカラのサポートも為川さんが担っているということで、9mmとアルカラとHEREがとても近いところでバンドを回しているという話もあり。

そして9mmがメジャーデビューから今年で10年経ち、こんな変なバンドが10年も活動するなんてみんな思ってなかったでしょ?などとおどけながらもこうして続けてこれて嬉しい、と話していた卓郎さん。

 

終盤では「9mmはもう来年の悪巧みを考えている」とまで仰っていて、その言葉で来年も9mmが当たり前のように活動を続け、何か面白いことをやってくれるんだ!と、もう嬉しくてたまらない気持ちに。

9mmとして活動を続けてくれることがどれだけありがたいことかを痛いほど実感した1年間だったので、卓郎さんによるこの一連の言葉が、どれだけ嬉しいことで、どれだけ安心したか。どんな面白いことをやってくれるのか、大いに期待を込めて、来年を楽しみにしています。

                                                                                                         

20171028/9mm Parabellum Bullet TOUR 2017 “BABEL on Life Line”@長野CLUB JUNK BOX

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去年、残念ながら前半戦が中止となってしまったツアー「太陽が欲しいだけ」のリベンジ公演として、中止になった6会場に加えツアーファイナルとしてZepp Tokyoを追加した計7公演にわたる、9mmの今年2本目となるワンマンツアーの長野公演です。

去年も長野公演のチケットを取っていたこともあり、とはいえ去年、代わりに開催されたアコースティックライブも観に行きましたが、今回の長野公演にも参加しました。

(その際の様子がこちらです。http://sleetfog.hatenablog.com/entry/2016/07/12/230406 )

 

かみじょうさんの出身県という事もあり、貴重な地元ネタを含めMCで喋りまくっていた去年と同様今年も地元トークが聴けるのか?という期待もありました。

セトリはBABELとWaltz on Life Line(以下WOLL)の曲を混ぜるのか?二部構成でやるのか?2枚のアルバム合わせて25曲もあるので、定番曲とどの程度の割合で混ぜるのだろうか、とセトリ自体も全く予想できない状況。

 

個人的には久々に小箱で観る9mmワンマン。最初フロアの真ん中あたりにいたら見事にステージの様子が何も見えず、序盤で後方まで移動したのですがその方がお立ち台に乗ったメンバーくらいは見える、ということでずっと後方にいました。なのでメンバーの様子はほとんど書けません。

 

今回のツアーでは、開演までの間、各会場でメンバーセレクトのBGMが流されると事前に聴いていたため、楽しみにしていましたが場所柄かみじょうさんだろうなと思いながら聴いていると、大体聴いても分からなかったのですが途中でKalafinaの曲(まどマギの主題歌)やヒゲダンスのテーマソング(事前に公式がかみじょう選曲の中に入っていることをネタバレしていた)が流れ、やはり予想通りだったことが判明。ヒゲダンスのテーマソングが流れた瞬間の、フロアの何とも言えないざわついた空気が面白かった。

 

 

 

生命のワルツ

サクリファイス

ガラスの街のアリス

モーニングベル

Black Market Blues

ロンリーボーイ

Kaleidoscope

眠り姫

火の鳥

バベルのこどもたち

ホワイトアウト

それから

スタンドバイミー

キャンドルの灯を

Discommunication

ロング・グッドバイ

火祭り

Cold Edge

太陽が欲しいだけ

 

Mad Pierrot

Punishment

 

 

メンバーが登場すると、流れたのは生命のワルツの音源のイントロ。いつものライブアレンジのイントロではなく、野音と同じく、音源に演奏を被せるスタイル。

 

サクリファイスやガラスの街のアリスといった定番曲で盛り上げ、次はなかなかのレア曲、湖。途中でBMBを挟むものの、ここからKaleidoscopeまでWOLL曲が続く。

 

 間奏のタッピングも完璧だったモーニングベルは元気な曲調でやっぱり理屈抜きに楽しい気分になる(歌詞はそんなこと無いけれど)WOLLの中でも特に好きな曲だけれど、ほとんどセトリ入りしてこなかっただけに嬉しい!

 

ここで早くもBMBが投入されるとパンパンだったフロア後方にスペースができるくらい、前に人が殺到する程の盛り上がり。

 

続いてはロンリーボーイ、これも嬉しい選曲…でしたがここまでかみじょうさんの曲が無く、むしろ和彦祭?という印象。

この曲もソロはかなりの難所だと思うけれど難なく弾きこなす為川さん、流石です。

 

 ここで遂にかみじょうさんの曲が!Kaleidoscopeは久し振り(もしかしたら昨年のツアー以来?)でしたが5拍子の流麗なリズムとメロディーは毎度聴き惚れてしまうところ。間奏のツインリードも卓郎さんと為川さん、息ぴったり。

 

 

ここまではほぼWOLLからの選曲でしたがここから、眠り姫〜それから までは、(Everyone is fighting on this stage of lonelyは抜けていたものの)まるでTOUR OF BABELからごっそり持ってきたような流れ。

 バベルのこどもたち では赤を基調に、次のホワイトアウトでは白を基調にした照明で、それぞれTOUR OF BABELでの演出を思い起こさせる。

 

あの時よりメンバーひとり少ない(ギター1本少ない)とはいえ、特に間奏ではかなりの音圧を誇るバベル、後方で見ていたにも関わらずやはり小箱ということで迫力が段違いで、すっかり聴き慣れた曲なのにその迫力に圧倒され立ち竦む。

それから もやはり同じく、あの重苦しい曲調を小箱で、となるとここまで迫力があるのか…といったところ。

 

 

スタンドバイミーに入る前のMCでは、卓郎さんが去年のツアーでも仰っていた、デモテープを聴いて浮かんだ景色を歌詞にした、というような話を。

 うろ覚えなので表現はちょっと違うかもしれませんが要約すると、卓郎さんと同郷のお客さんは(同じ景色を知っているため)曲を聴いた時に卓郎さんが思い浮かんだ景色を共有できるね、と。

ここでだったか、Kaleidoscopeの後だったか失念しましたが(Kaleidoscopeについて、長野の大自然を歌った曲です というMCがあったため)

長野の人には長野の景色が思い浮かぶだろうし、なんて話もあり。

そんな話をしつつ、この曲については聴いた人みんなが卓郎さんが思い浮かべたのと同じ景色が見えると思う、と。

今回のツアー、各地のファンに卓郎さんが一番届けたかったのはこの“同じ景色”だったのだろうなと、今ツアーを振り返りながら改めて思っています。

こんなMCがあった後のスタンドバイミー、当然感極まる事を抑えきれませんでした。

 

続くキャンドルの灯を ではステージの様子は見えないものの、アウトロで和彦さんがアップライトを一回転させた、その時のヘッドの様子だけは見えて、ああいつものやってるな、と。スタンドバイミーと続いて演奏されることで曲のあたたかさが際立つ。

 

 

そして、この日最大のハイライトは間違いなくこの曲でしょう、かみじょうさん曲である火祭り かなりテンション高い曲ですし、浮き浮きとした気持ちで聴いていると最初のサビで卓郎さんが

 

 

 

「激しい火に煽られるー

 

 

ちひろーかみじょうー!!!」

 

 

と歌い出すものだからびっくり、つい爆笑!!

 

元の歌詞が“ぼくのかんじょう”だから“ちひろかみじょう”と語感がぴったり!!発音だけだとあまりにも自然で、空耳かと思ってしまったほど。

 

また間奏のライター奏法は為川さんがやるものだと思っていると卓郎さんがライターを取り出す!音源のようなトリッキーなエフェクトではなく激歪みサウンドでのライター奏法。

 それが終わると舌をペロッと出し、フロアにライターを投げ入れる。この一連の流れもかっこよくて、後から思い出してもこの日の見所はこの曲だったなと。

 

(後に配信された“BABEL on LINE LIVE”にて、「ちひろかみじょう」のくだりが卓郎さんがライブ前日に考えたいたずらであったこと、「ちひろかみじょう」を強調するように歌っていたこと、ライブ映像も公開され、ライブ中ほとんど表情を変えないかみじょうさんがこの時明らかに笑っていたことを知る。あまりにも微笑ましいいたずらでした…)

 

 

火祭りから次のCold Edgeへの繋ぎ方、いつもハートに火をつけて→Cold Edgeでやってる、ドラムを2小節挟んで次の曲へ繋げる方式で、これがまた良くて。ノンストップで次に繋がる流れに余計テンションが上がる。

 

 

本編ラスト、去年この場所で、アコースティックで演奏された太陽が欲しいだけ では去年のことも思い出しながら、同じ場所で今度はバンド演奏で聴ける喜びを噛み締めながら、聴いていました。

 

 

アンコール1曲目は本編に入っていなくて諦めかけていたMad Pierrot これでようやく3曲目のかみじょう曲が!

ここまでの照明と違い赤、青、紫などと目まぐるしく変わる派手な色合いがサーカス感出ていました。この曲も久々で、だけどサビの「待っている」とか「呼んでいる」の部分でのフロア大合唱はほぼ完璧。

 

ラストは今年はすっかりよく聴くようになったPunishment 何度聴いてもライブの締めにこの曲が聴ける嬉しさは変わらない。

 

 

 

 

以下MC覚えてるだけ どのタイミングで出てきたか忘れてしまったので順不同です。

 

 

湖の後、最初のMCで

「今最後にやったのは湖という曲ですが、諏訪湖のことを歌った曲です」といきなりご当地ネタを。

 (この時にレペゼンがどうとかって話があったと思うのですが終演直後に速攻忘れてしまい、どんな話だったか分からなくなってしまった。思い出したら追記します) 

 

 

 

どこかのMCで今回のサポートギタリスト、為川さんを紹介する時に

「スーパーギタリストの紹介…をする前に、

おやきって、カレー入れればいいよね。ナンみたいじゃん。

…という事を思ったので忘れないうちに言っておきます笑」

といきなり思いついた話をぶっ込む。その時のフロアから漏れた、本当に納得してしまった時のような声まで含めて何だか可笑しかった。

 

そこからまた為川さんの話に戻り、いつもの2人の顔が似ている、というくだりで 

先日卓郎さんが為川さんの叔父さんと会ったらしいが、叔父さんよりも卓郎さんの方が似ていたらしく、為川さんは兵庫で卓郎さんは山形だけどどこかに同じルーツがあるんじゃないか、十代ぐらい遡ったらどこかで生き別れた…とか。

 

ひたすらに喋ってて、誰も止めてくれない…みたいなこと仰ってた気もしますが。

ワンマンという長尺ならでは?の大暴走っぷりを見せてくれました。

 

 

 

アンコールで卓郎さんが出てくると、徐に「信濃の国」を歌い出し、すかさず客が大合唱、という去年も見た流れ。

 

その後、卓郎さんが「毎回歌わせてごめんね!」「国を讃える歌が…4番ぐらいまであるんだよね?」とフロアに話しかけると、「6番!!」と返事があり、それを聞いて「6ばn…!!?」とリアルに驚いてしまう卓郎さん。

 

フロアからかみじょうさんに「歌って!」とリクエストが飛ぶとすかさず卓郎さんがフォロー

「歌に伴奏でドラム叩いてくれるだけでもすごいよ?」「ね、ちーちゃん?」

と、かみじょうさんに話しかけると

かみじょうさんが「なー?」とひと言。

 

この日、かみじょうさんが発した言葉は結局これだけ。もう少し喋ってくださるかと期待してましたが。

信濃の国」のくだりがひと通り終わるとすっかり満足したのか、曲をやらずにご機嫌で帰ろうとする卓郎さん。アンコールまでやりたい放題で楽しそうで何よりでした。笑

 

 去年も思ったが、ほとんどの人が長野県歌を歌えるってすごいな…ちゃんと信濃の国、予習しておけばよかった。次回があれば必ず。

 

 

前半はWOLL、後半はBABELの曲を中心に定番曲も入れつつ…という、何となく二部構成のようなセトリでした。

折角長野での公演だから、唯一かみじょうさんのコーラスが入る曲であるEveryone〜が入ったらもっとかみじょう祭みたいになって良かったのでは、とつい思ってしまったけれど、Kaleidoscope、火祭り、Mad Pierrotがいっぺんに聴けて期待通りでとても嬉しかった。

 

そして、もちろん既に分かってはいたけれど、改めて為川さんのポテンシャルの高さをまざまざと見せつけられた、そんなセトリでもありました。 

サポートして下さってから半年足らずで、ワンマン丸ごと、しかもこの難解な曲も多いセトリを弾ききるという。本当にとんでもない人だとライブ中何度も思わされた。

 

 

 

この日卓郎さんは去年の長野アコースティックライブで、わずか6曲で70分もライブをやったという話をしながら、集まった客に去年も来てくれた人ー?と尋ね(結構いたように思う)、10年後に長野であんなことがあったと言えるように、これからも9mmを続けていくと、一緒に行こう、とフロアに向かって話しかけた。

 

また、BABELについて、アルバムを聴いた時にみんなを不安にさせちゃいけない、と気合を入れて作った結果、凄い作品ができたんだと仰っていた。

あの状況で、9mmがどんな気持ちであの凄まじいアルバムを作ったのか。そしてこれからも立ち止まらずに9mmを続けていくという気持ちしかないこと。これも、今回のツアーで9mmが各地のファンに直接伝えたかったことなのでしょう。

20170702/9mm Parabellum Bullet “TOUR OF BABEL Ⅱ”@昭和女子大学 人見記念講堂

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神奈川、神戸、名古屋を回った短いツアーを経て、モバイル会員限定ライブという位置付けで開催された公演。
9mmモバイル会員と、非会員でも「BABEL」購入者のみが申し込めた、すなわち「9mmが好き」という人たちの中でも特にその思いが強い人たちだけが集まる公演という事でセトリや演出にはツアー以上に期待していました。
また、この公演だけサポートに9mmの盟友・石毛輝さん(the telephoneslovefilm)が参加、更に昨年11月の豊洲PITで行われた公演を最後に9mmとしてのライブ活動のみお休みしていた滝さんが久々に9mmのライブに出演することが事前に発表され、特別なライブになることは間違いなしの公演。
 
 
 余談ですがツアー3公演に続きこの日の座席も上手。結局全て上手のしかも端の方から観ることとなりました。
なのでステージの詳しい構造がよく見えず、後方のサポート陣のスペースが一段高くなっているだけではなくてその真ん中に階段が設置されていたことを、全公演終了後に知るという。(ドラムセットに隠れて見えなかった)ステージ床部分がどうなっていたのかも、後々写真で知りました。
 
 
 
ステージに幕は無く、BABEL仕様のバックドロップが掲げられている。
ベルセルク」ガッツ役・岩永さんが担当する、ツアーと同様のアナウンスが流れ、しばらくして会場が暗転。
 
 
 
The Revolutionary
Story of Glory
The Lightning
眠り姫
Lost!!
光の雨が降る夜に
キャンドルの灯を
バベルのこどもたち
I.C.R.A(サポート:為川・石毛)
Supernova(サポート:石毛)
Monkey Discooooooo(サポート:石毛)
それから
カモメ
ガラスの街のアリス
Everyone is fighting on this stage of lonely
ハートに火をつけて
Talking Machine
Punishment
 
 
新しい光
 
 
※本編セットリストで特記の無い曲はサポート:武田将幸さん・為川裕也さん
 
 
 
 
客電が落ちると、これまでの公演とは違い、普段通りのSE「Digital Hardcore」が流れ始め、もうここから“TOUR OF BABEL”とは全く違う公演なのだという事が分かる。
 
全員定位置に着き、卓郎さんが弾き始めたのはサクリファイス…?だけど何だか様子が違う。と、演奏を止める卓郎さん。どうやらいきなりミスしてしまった様子。
 
すぐさま仕切り直してサクリファイス、続いてインフェルノ。ベルセルクメドレーですね。次のThe Revolutionaryまではツアーの“OUTSIDE OF BABEL”から切り取ってきたような流れ。The Revolutionary間奏でまた和彦さんがかみじょうさんのところに駆け寄って、顔を見合わせて演奏する。
 
 
次、ここでStory of Gloryが入る。ツアーを回り、各地で今の9mmの頼もしさを目の当たりにしたあとだけに、歌詞通りの“無敵”感が増していた。
 
The Lightningの間奏では武田さんと為川さんがリフを4小節ずつ交互に弾く。
 
火の鳥はやはり原曲の半音下げで演奏され、次いで眠り姫というBABELとは逆の曲順。チューニング同じだから火の鳥の次眠り姫かな、と思ったら当たり。
 
Lost!!では予告通り、ステージにMVに出演されているダンサーのおふたりが登場。途中からいきなり他のダンサーさん達が勢いよく客席の通路を駆け抜け登場。通路が近かったこと、完全に意識がステージに向いていたので何事か!?とびっくりしてしまいました。ここではメンバーをほとんど観ず、ずっとダンサーさん達を観ていた。
 
(この後のMCで和彦さんがダンサーさんたちのことを「Lost!!ガールズ」と名付けたと卓郎さんが言うと思い切り首を横に振る和彦さん、「Lost!!ダンサーズ」だったっけ…?と言い直す卓郎さん、というやりとりがどこかであった)
 
 
あまりにも久し振りで思わずイントロで歓声、を通り越して悲鳴を上げてしまった光の雨が降る夜に、イントロや曲間のツインリードはギター3人ということでトリプルリードのアレンジに。こんな贅沢なアレンジが聴けたの、今回限りかもしれません。
 
和彦さんがアップライトに持ち替えてキャンドル。暗転の中、楽器を持ち換える和彦さんの姿だけでちらほらと歓声が上がる。
 
キャンドル からバベルのこどもたち  への流れ、あんなに優しい言葉のあたたかい曲からいきなり地獄に突き落とされたかのような落差が衝撃的で イントロの数小節で場の空気を一気に塗り替えるあの曲の凄さと存在感を、セトリがBABELの曲順でなくなったからこそまざまざと思い知らされた。
 
 
ここでMCの間にいつの間にか退場していた武田さん。
武田さんに代わり、「バベルのおともだち」こと石毛さんが登場。
石毛さんが登場すると武田さんが立っていた場所へ。
 
I.C.R.Aでは間奏で卓郎さんの隣にやってきた石毛さん、今までは音源で流していたタッピングを演奏!!卓郎さんの横あたりに出てきて弾いてらしたのでこれ生演奏で合ってますよね?石毛さん、あれを完コピとは…すごい…!!
 
為川さんも退場し、4人編成で演奏されたのは石毛さん曰く「思い出の曲」だというSupernova 
石毛さんが参加するなら、レコーディングでテレフォンズメンバーが参加していた「Grasshopper」でもやってくれるのではと勝手に予想をしていたのでこの選曲は意外だった。今思えばテレフォンズ、VAMPIRE EMPIREツアーでも対バンしてましたね。
 
ミラーボールが徐に降りてきたので、まさか石毛さんとホワイトアウトやらないだろうし、何やるんだろう、もしや…と思っているとまさかのMonkey Discooooooo!!
本当にまさか、ここで聴けてしまうとは。
9mmがテレフォンズのトリビュートでカバーしていた曲ですが、ボーカルが石毛さんということで原曲キーでの演奏。
石毛さんがソロを弾くところは残念ながら見えませんでした…
折角のホール公演だし、BABELの曲はじっくりと聴きたいものが多いため、そんなに手も上げず体も余り動かすことなくここまで観ていましたが、この曲が来てしまってはもう踊るしかない。
 
石毛さんの出番はここまで。
やはり9mmの曲は難しいようで「テンポを50くらい落として練習していた」という。
Monkey Discooooooo演奏前に卓郎さんから振られ、石毛さんが
「いけるかーーーー!!!!」と叫んで客を煽る場面もあった(石毛さんらしい良い声の、流石のハイトーンボイスだった)
 
9mmの曲を弾く石毛さんも、そんな石毛さんと一緒に演奏する9mmメンバーも、本当に楽しそうだった。石毛さん、また9mmのサポートやってくれないだろうか。あの楽しそうな様を、また観たい。
 
 
ツアーで、各会場での照明の違いが一番はっきりと出ていたホワイトアウト、最初は無数の細い線が放射状に伸びてゆく照明、途中からはミラーボールがまた降りてきて雪景色のような照明に。
 
ホワイトアウト からのそれから もツアーと同じ流れ。美しい真っ白な世界から重苦しい空気へ、一瞬で変わる様が見事。そして今回の公演でも歌劇のような仕草を見せながら歌う卓郎さん
 
 
ダンサーさんの出演が発表されたことでセトリ入りがほぼ確定していたカモメでは、女性のダンサーさんがひとりで再度登場しMVのように踊る。ダンスに関しては全く知識がないのですが、ひとのからだ一つであんなに美しいものを作り出せるなんて、本当に素晴らしいな、と。この曲もLost!!同様、ほぼダンサーさんを食い入るように観ていました。
 
 
ハートに火をつけて では卓郎さんがギターを置いてハンドマイクに持ち替え楽しそうにステップを踏みながら歌い、間奏でメンバー紹介に入る。
 
ここで武田さん、為川さんが順番に紹介され(武田さんには「モバイル会員の人~?」と呼びかけて手を上げさせる、為川さんのことは「最近モバイル会員に入った」などと紹介)、ソロ回しを披露。するとここで石毛さんもステージに呼ばれると和彦さんの真似?カニ歩きをしながら登場、そして石毛さんもソロを披露。
 
和彦さんの紹介では和彦の紙はどこまで伸びるのか、ベースの弦くらい伸ばすそうです!というような事を言い、ここ最近また伸びてきた髪をいじる。
 
かみじょうさんの紹介中、まだ紹介が続いているのにソロに入ろうとするかみじょうさんを「勝手に始めちゃダメ」と止める卓郎さん。いつもよりスティック回しを多めに…などとちょうど言われている時にスティックを落としてしまう場面も。
 
かみじょうさんのソロの時に、他のメンバー全員(?自分のところからは卓郎さんと和彦さんしか見えず)がドラムセットの横に正座してかみじょうさんを見守り、卓郎さんに至っては手拍子までしながら観ていて、微笑ましいというか、さっきまで見せていた空間を支配する程の存在感を放っていたボカリストの姿とはまるで別人のような可愛らしさを見せていて、観ているこちらの頬が思わず緩む。
 
最後、卓郎さんを紹介するのはもちろん和彦さん。卓郎さんが1曲目、サクリファイスのイントロでやらかしてしまったことをいじるが、自分も危ないところがあったから許す、と笑いをとりつつ卓郎さんをフォローするような優しさを見せる。
 
 
終盤、卓郎さんがマラカスを手に取り…といえばもちろんTalking Machine!!
ツアーでは3ヶ所どこのセトリにも入っていませんでした。しかし今年のツアー以外のライブではほぼセトリ入りしていただけに、サポート陣も思い思いに動き回る。
 
今回の公演でも本編ラストを飾った5人編成での圧巻のPunishmentでは金テープが舞う。実は座っていた場所柄、発射台らしき筒が置いてあることに開演前から気付いてしまったのでいつ発射されるんだろ…と思っていたらこのタイミングだったという。
トーキン→Punishmentという、少し前まで9mmライブ終盤の大定番だった流れで観られる嬉しさ
 
 
 
 
 
結局、滝さんが出ないまま本編が終わり、アンコール待ち。
いつもより長く感じられたのは自分がそわそわしていたからか。
 
滝さんの機材が卓郎さんとかみじょうさんの間に置かれ、いつものようにサウンドチェックが始まる。それだけで、ああ、滝さんの音だ…と慣れ親しんだ音に安心する。
 
 
客電が落ち、メンバー登場か…と思いきやここでSE「Digital Hardcore」が再び流れる。
 
卓郎さん、和彦さん、かみじょうさんが登場…そして最後に滝さん。
 
ものすごい大歓声の中、4人が横一列に並ぶ。
 
 
どの曲をやるのか…と息を呑んでステージを観ていると奏でられたのは、「ロング・グッドバイ」のけたたましいタッピングの音。生き生きとタッピングを始めた滝さんにいきなり驚かされる。
 
 
新しい光 の方だったと思うが、滝さんがステージの下手から上手まで走っていたり、ステージの前まで出てきて両手を上げて煽ったり、壇の上?からジャンプしたり、ギターのネックを思い切り振り回していたり…とこれまた生き生きとした暴れっぷりで、去年の半分はあまり動けない状態だったし、それでなくてもここしばらくは暴れるよりもお立ち台の上でソロを弾いていることが多い、というような印象の方が強かったのでここまでひたすら暴れまくる滝さんは何だか久し振りな気がして、それがまた嬉しかった。
 
 
この日最後の曲にして間違いなくこの公演のハイライトをかっさらっていったであろう場面は、新しい光 のラスト、アウトロの最後の一音を出した瞬間、BABEL仕様のバックドロップに被さるようにいつものバックドロップが勢いよく落ちてきたこと。
まるで「おれたちが9mm Parabellum Bulletだ!!!」と言わんばかりの光景に見えた。完璧、の一言に尽きる演出だった。
 
 
この瞬間、この光景に胸を打たれなかった人が、果たしてその場にいただろうか。
 
 
 
 
曲が終わってしまうと、いつものように、真っ先にステージから退場する滝さん。すぐ引っ込んでしまったのが少し寂しくもあり、でもこれが普段通りの滝さんだよなぁ、と嬉しくもあり。
すまし顔で、スティックでジャグリングしつつ客席に投げ入れ、退場するかみじょうさん。
下手、上手、真ん中と、客席全体を見渡し挨拶をする和彦さんと卓郎さん。これも普段通りの9mm。
 
 
 
滝さんの出番は2曲。正直、予想よりも少なかった。
でも、ステージに立っている時間が少ない分、その短い中で全力を出し切った、そんな暴れっぷりだった。
 
 
満を持して久々にステージ上に揃った9mmメンバーが、ステージ前列に4人で並んだ瞬間にあまりの嬉しさに感極まることを抑えきれなかった。
かみじょうさんが前列へ出てくるという、今回のツアーの編成はこの為の伏線だったのではないか、とさえ思う。
 
 
 
9mm Parabellum Bulletの4人がステージ上で横一列に並んでいるだけで、
 
「僕には君がいれば何もいらなかった」と歌う卓郎さんの横で滝さんがギターを弾いているだけで、もうそれだけでよかった。
 
横一列に並んだ9mmの4人の姿は正に「おれたちは今夜無敵なんだ」を体現していた。
 
 
 
 
この日のライブの途中で、昨年のツアーで中止になってしまった公演の場所にZepp Tokyoを加えた“BABEL on Life Line”というツアーを開催することが発表されました。
完全に予想外だった、今年2本目のツアーの発表。
今の形の編成になってからも、上半期は他バンドのツアーや各種イベント・フェスに出まくり、短いながらもツアー1本を完遂した9mmが、引き続き下半期もフェスやイベントに出ながらまたツアーをやるという(しかもTOUR OF BABELより長い)ことで、つまり9mmの活動はこのままペースを一切緩めることなく続くのだということで。
 
 
滝さんが一瞬でも9mmのメンバーとして、ステージに帰ってきたことが言葉ではとても言い表せないほど、嬉しかった。
 
それ以上に卓郎さんが言っていた「どんな形でも9mmを感じられるようなバンドとして」これからもやっていく、という言葉が何よりも嬉しかった。
 
 
“TOUR OF BABEL”と“TOUR OF BABEL Ⅱ”で、9mmは終わらない、これからもバンドを続けてゆく、という9mmの意志を改めて目の当たりにすることとなりました。
9mmがどんな形であれ、9mmを続けるのならば、こちらも全力で9mmを応援するまでです。
 
9mmがこれからもずっと、ステージに奇跡を刻み続けることを願って。