最後の駅の向こう

何でもすぐ忘れる人の特に記憶に残しておきたいライブの簡易レポートと趣味のレビューの予定。あくまで予定。

20180924/9mm Parabellum Bullet“カオスの百年TOUR 2018”@Zepp Nagoya

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カオスツアー4本目。今できる限りの範囲で“セトリが全く予想できない”という、かつての9mmツアーのワクワク感が帰ってきているようなセトリ。

Zepp Nagoyaにも初めて来たが、大箱とはいえ予想よりは小さい会場だった。そのため、ステージとフロアの距離が近いように感じられ、とても観やすい大きさの会場だと思って場内を見回していた。花道やバックドロップの無いステージなど、会場の様子はこれまでと全く同じ。ほぼ定刻に暗転、Digital Hardcoreが鳴り響き、バックドロップが上がってくる。

 

順番に登場する5人。全身黒っぽい衣装、裾の長い黒のシャツを羽織る為川さん、カオス黒Tにキャップの滝さん。卓郎さんはこの日は真っ黒いTシャツ。お馴染みの黒シャツ姿の和彦さん。かみじょうさんはこれまで着ていたタイダイTではなく、卓郎さん同様真っ黒いTシャツ。

 

 

荒地

Mr.Suicide

Wildpitch

Sleepwalk

カルマの花環

Vampiregirl

インフェルノ

21g

Sundome

光の雨が降る夜に

キャンドルの灯を

ホワイトアウト

Termination

marvelous

Talking Machine

太陽が欲しいだけ

sector

 

キャリーオン

Punishment

 

 

今回のツアー、1曲目が日替わりだということに薄々気付いていたので何が来るのか、と構えていると9mmとしては久々のセトリ入りなのではないか?という、荒地。最近だとAC 9mmで披露されていたけれども。この時に卓郎さんはおそらく2階席のあたりを真っ直ぐに観ながら、眉間に力を入れたような鋭い目をしていた。それが、「ああ 誰にも信じてもらえなくてもいいさ」のところで少し目元を緩ませ、表情を和らげていた。

次はMr.Suicide、滝さんが台に乗って威勢良くイントロを弾き始める。ここでも卓郎さんは鋭い眼差しと眼に込めた力を和らげる瞬間、曲の展開に合わせて僅かな表情の違いを見せていて、荒地と同じく卓郎さんの目ばかり見ていた。

 

和彦さんがマイクに向かった時点で何の曲か分かる。シャウトが轟く、Wildpitch!アウトロでは和彦さんが勢いをつけて派手に回っていた。和彦さんの暴れ姿はとても絵になる美しさであるし、この様子を下から観るような角度で目の当たりにしたが、改めてその迫力に目を見張る。

Sleepwalkでは2番に入る前に和彦さんが花道へ。スポットライトを浴びる和彦さん、少し下を向くような姿勢で数秒の間を挟み、ベースを弾き始める。その時の和彦さんを背後から観るような位置にいたので、背中をずっと観ているというのもなかなか貴重な光景だったし、やはり背後から観ていても非常に絵になる。

 

ここで卓郎さんが、CDは終演後に渡します、という案内を。みんな1枚ずつあるから略奪しないように!笑 といった感じのひと言もあった。そして次の曲はそのCDから、カルマの花環。

滝さんが台の上に乗り、イントロを弾き始める。イントロやアウトロのメインのリフが鳴る裏など何度か出てくるが、かみじょうさんが左右のシンバルを順番に叩いていくような箇所があってその時の大きな腕の動き方にとても目を奪われる。間違いなくこの曲の大きな見所のひとつ。

 

Vampiregirlの間奏では滝さんが花道に出てきてソロを弾いていたが、この時の滝さんの暴れっぷりが凄かった!花道を囲む柵にはステージ側に人が乗れるくらいの踏み台みたいな鉄の板が付いていて、そこに上がって上半身を乗り出して、その辺りにいた客に寄りかかってギターを弾くような感じ。それを2回も!その時の滝さんの気迫!!生き生きと動き回る滝さん、この光景を目の当たりにできたのがもう嬉しくて!

滝さんが前屈みになって構える、かみじょうさんの方を見ながらカウントに合わせると炸裂するタッピング、インフェルノ。この曲でタッピングに入る前に必ず同じような姿勢で構えてタイミングを計る、そんな瞬間でさえ、滝さんはかっこいい。

 

またここでMCを。配布されるCDに収録される21gは2006年頃には既に滝さんが作っていたという話や、2007年にDiscommunicationでメジャーデビューした頃(卓郎さんがちょっと戯けて、メイジャーデビュー、という感じで大袈裟に発音していた)にレコーディングしたのに日の目を見なかった、今披露するのが一番喜んでもらえるのではないかというような内容の話を挟み、「21g  2018年ver.」を聴いてくださいという流れで曲に入る。

ここまで早い曲が多い分、ゆったりと歌うような曲調である21gでは卓郎さんの伸び伸びとした歌い方がより目立っていた気がする。サビで一気に明るくなるところでは、為川さんが曲調にぴったりの晴れ晴れとした笑顔全開で弾いていて、更に歌詞を口ずさみながら楽しそうにしていた。

 

僅かな間を空けてかみじょうさんがハットを刻み始める。仙台や大阪と同じ流れでSundome、間奏のソロは滝さんと為川さんがユニゾン状態で弾いているらしく、終盤の2拍だけは音源通りに弾く為川さんの裏で滝さんが若干変えて弾いているため、この部分だけ音がハモる、ライブならではの瞬間。

 

ツアー開催にあたりリクエストを募った話で、仙台と大阪では新しい光は2票しか入っていなかったと言ってきた卓郎さん。しかし前日の夜に“文献”を見返したところ何と…新しい光は3票だったという事実が発表される。Black Market Bluesは2票で合っていたようだ。BMBについては「MステのBMBを観てファンになったという声も聴いているのに、2票!」とのこと。

その流れで次の曲はリクエストでぶっちぎりの1位だったこの曲、光の雨が降る夜に!「光の雨が降る“名古屋の”夜に!!」と卓郎さんが叫び、一際明るく照らされたかみじょうさんが繰り出す音から曲が始まる。「スローモーション 目を伏せたら~」の部分では、カッティングを為川さんに任せている滝さんが飛び道具のような不思議な音を鳴らして演奏に煌めきを足していた。アウトロでは滝さんと卓郎さんが一緒に花道に出てきて、背中合わせのような配置でツインリードを弾いていた。花道の先で背中合わせに立ってスポットライトを浴びるおふたりの勇姿…!!

 

和彦さんがアップライトを手にするとすかさず大歓声が起こる、キャンドルの灯を。やはりここは和彦さんをずっと観ていた。軽快に弦を弾いてゆく美しい手元、最後にアップライトを回す見せ場まで。

ホワイトアウトのイントロやアウトロ、あの流麗なソロを弾く滝さんは完全に曲に入り込んでいるような、文字通り“顔で弾いている”というくらいの、“熱演”と表したくなるような表情だった。この日もフロア天井にミラーボールがあったので、壁に控えめな雪景色を描く。

 

Termination、1サビで言わずもがなの大合唱が巻き起こり、サビが終わると卓郎さんがフロアに向かって「美しい!!」と叫んだのがフロアにいたこちらにとって嬉しい限り。間奏、名古屋では為川さんに任せていたがこの日は滝さんのソロが復活!!その代わりに為川さんは終盤で和彦さんと共に息の合った大ジャンプを披露!

 

marvelousで轟音爆音をこれでもかと叩きつけ、Talking Machineでは卓郎さんがマラカスを振り出すと滝さんも持っていたペットボトルを振り始め、卓郎さんが客をジャンプさせる瞬間には滝さんがペットボトルを宙に投げる。惜しくもキャッチは失敗、でも楽しそうな滝さん!卓郎さんと笑顔で向かい合う場面もあった。marvelousからのトーキンという大好きな流れで、自分のテンションがかなり上がっていたためこの辺りの記憶は曖昧ではあるけれど、「何べんやっても」の後に和彦さんと滝さんが高く跳んだ瞬間はしっかりと目に焼き付けた。

 

次の曲は今回のツアーで初のセトリ入りとなった、太陽が欲しいだけ!サビではコーラスのためにマイクから離れられない滝さんの横で、為川さんが生き生きと動き回っていたが、本当に楽しそうにギターを弾いていたので、ステージ端の方だけでなくもっと真ん中まで来てくれたらいいのにと本気で思った。曲の途中で両腕を目一杯広げる卓郎さんの笑顔が、さながら太陽のようだった。

 

本編最後の曲、sectorはこの日もライブアレンジのイントロはなく、音源通りに始まる。 フロントの4人が一斉にネックを上げてそのまま三連符を叩きつける。この瞬間の圧倒的なかっこよさ!!

アウトロではここまでで一番の激暴れといった感じの和彦さん、滝さん、為川さん。片や対照的に冷静な表情のままにも見えたかみじょうさん。この対比が9mmらしいな、と安心したような、嬉しい気持ちになりながら観ていた。

 

sectorが終わると滝さんはフロアに向かって手を振るように、被っていたキャップを大きく振りながら退場。それに為川さんが続く。卓郎さんと和彦さんはステージの端まで、また花道にふたりで出てきて長めに挨拶をしてから退場。卓郎さんと和彦さんが花道でお手振りをしている間、ステージ上ではかみじょうさんが何故か卓郎さんの水を手に取り、勝手に飲んでいた。結構飲んでた。

 

 

しばしの間を挟み、アンコールで再び5人が登場。全員本編と同じ服装。

話の流れで卓郎さんが為川さんを「スーパーサポーター為川裕也!」と紹介すると為川さんは腕を広げて素敵な笑顔で挨拶。

続いて「スーパーギタリスト滝善充!」と、隣の滝さんを紹介、瞬間、大歓声。

次は…?と思っていると左を見て「うちのベーシスト!中村和彦」と紹介、ゆるい紹介につい笑ってしまう和彦さん。からの、派手なスラップを披露!

と来れば最後は…しかし段々雑になり、「ドラムスちひろかみじょう!」一番さらっと紹介されてしまうかみじょうさん。 冷静な表情でここまでの流れを見ていたかみじょうさん、表情を崩さぬまま少しだけドラムを叩いてみせる。最後にもっとさらっと「ボーカル、おれ!」と言って自身が挨拶。

 

アンコール1曲目、キャリーオンでは卓郎さんが「声を聞かせてくれ名古屋!!」と叫ぶと、しっかりと大歓声が返ってくる。卓郎さんがこのパターンの煽りを入れてきたのはこの日が初めてだった。今後はこの卓郎さんの呼び掛けが、ツアーが終わった後も色々な場所で聴けるかもしれない。

 

そして最後の曲、Punishmentでは間奏でフロント4人が花道へ!!自分の観ていた場所の近くには為川さんが来てくれて、その時の為川さんは周りの客としっかり目を合わせるようにフロアを見、とびきりの笑顔を振り撒いていた。為川さんの魅力は驚くべき演奏力の高さだけでなく、こんなにも表情豊かなところ。本当にいいギタリストが入ってくれた。滝さんも最後の最後まで元気そうに動き回っていて、普段なら演奏中に落としたキャップをすぐ拾って被り直すが、花道に出る直前にキャップを振り落しても構わず弾き続け、ステージに戻った時にスタッフさんに被せてもらっていた。

 

演奏がすべて終わると、先程と同じように滝さんはキャップを取って大きく振りながら退場。為川さんも早めに退場してしまう。卓郎さんと和彦さんはまずステージ前方ギリギリまで出てきて客をしっかり見るようにフロアのあちこちに目を遣り、卓郎さんは前の客を順番に指差してみたりも。それが終わると花道に出てきて2階席にも視線を向けたりお手振りをしてゆく。

その途中でスティックを2本持ったかみじょうさんが花道に出てきて、フロアに向かって投げる。仙台と大阪ではフロアまで届かず投げ直していたが、この日は2本とも一発でフロアへ。その後気が付いたら花道で戯けた仕草のかみじょうさんのお尻を卓郎さんが叩いてみせる、というよく分からないがおふたりとも楽しそう、という状況になっていた。かみじょうさんは退場直前、マイク通して何か言っていたようだけれどよく聞き取れず…。

最後の最後まで笑顔を振り撒く卓郎さんが退場し、終演。

 

 

どこで入っていたか失念してしまったが記憶に残っている場面で、卓郎さんが花道に出る際、自らスマートな仕草でシールドをさばきながら出てきて、ステージに戻った時にまたシールドを一振りして整えていたのを、綺麗な所作だと思わず見惚れていた。

また別の曲では、花道に出ていった滝さんを目で追いながら、滝さんに合わせるようにそちらに笑顔を向けて弾く為川さんの様子がとても記憶に残っている。

 

序盤でも同じことを書いているが、自分のいた位置は卓郎さん達が花道の先端まで出ていくと、それを後ろから観るような角度の場所だった。卓郎さんや滝さん、和彦さんが弾いている様子を割と長めに後ろから観ていられるというのはなかなか珍しいのでとても面白かった。それ以上に、卓郎さんも滝さんも和彦さんも、スポットライトを浴びて花道に立っていた姿、その背中があまりにも頼もしくて、この光景を目の当たりにし記憶に焼き付けることができた喜びを噛みしめている。何年もずっと憧れ続けている人達の背中なのだから。

 

この日は滝さんがものすごい運動量を叩き出していた。スイッチが入ったように花道で暴れ回り客の上に乗り出していたVampiregirlもそうだったし、ライブ中何度も勢いよく一回転してみせたり、ネックを大きく振りかぶってみたり。

2日連続のワンマン公演だったにも関わらず元気いっぱいの滝さんの姿が、本当に本当に、嬉しかった。

 

終盤のMCだったか、卓郎さんが9mmが来年で結成15年になること、「もちろん15年ずっと同じ人が観に来ている訳でもないと思うし、おれたちも同じ人間ではないかもしれない…何言ってんだろ笑」と自分の発言に自分でつっこみを入れつつ、違う人間=細胞が入れ替わっているから、と続けていた。フィジカル面だけでなく本当は15年間で考え方や物の見方といった内面も変わっているというようなことを言いたかったのかな、と勝手に想像しながら聞いていると、卓郎さんがこれからもよろしく!と。来年また名古屋に来る、ようなことも匂わせていたし、きっと来年も何らかの形でツアーが開催されるのかもしれない。9mmは引き続き進むことだけを考えているんだなと思うと堪らなく嬉しくて、むしろよろしくお願いしますと言いたいのはこちらの方です、卓郎さん。

 

セトリに関してはやはり大枠は同じで、日替わり曲を挟むという流れのようで。Wildpitch確定セトリなんて夢のようなセトリ…!

そして1曲目を毎公演変えていること、そこに入っている曲が仙台では「生命のワルツ」、大阪では「Psychopolis」、そして名古屋では「荒地」だった。つまり全て“アルバムの1曲目に収録されている曲”ということになる。名古屋で気付いてはっとしたが、この規則性は狙ってやっているのか、それとも偶然なのか。となると残る3公演の1曲目は…と想像が膨らむ。もしかしたらそう見せかけて斜め上の選曲があるかもしれない。

 

大枠が同じセトリでもこのように予測不能の選曲が含まれている。単純極まりない感想だけれども、この一言に尽きる。このツアー、本当に楽し過ぎる!!

20180923/9mm Parabellum Bullet“カオスの百年TOUR 2018”@Zepp Osaka Bayside

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カオスツアー、配信・仙台に次ぐツアー3本目。

公式が毎公演、終演後に即セトリを公開することから、だとすると毎公演ガラッとセトリを変えてくるのか?流れは大体同じで日替わり曲があるのか?というのがとても気になるところ。

 

初めて来たZepp Osaka Bayside、予想よりも広い会場で、感覚的にはZepp Tokyoより少し小さいくらい?この日も入るとステージにバックドロップは無く、フロア前方には花道。花道が毎回あるというのも、既に公式から発信されている通り。

定刻を僅かに過ぎた頃に暗転。Digital Hardcoreが鳴り響く中、バックドロップが下からゆっくり上がってくる。

真っ黒な衣装の為川さん黒地に白で“9”と描かれているシャツ。仙台と同じく青のタイダイTのかみじょうさん、黒いカオスT、黒キャップの滝さん。和彦さんは色がよく分からなかったけれど暗めの色のシャツ。赤いTシャツに黒いジャケットを羽織る卓郎さん。

 

 

Psychopolis

Mr.Suicide

Wildpitch

Sleepwalk

カルマの花環

Vampiregirl

インフェルノ

21g

Sundome

光の雨が降る夜に

キャンドルの灯を

ホワイトアウト

Termination

marvelous

Talking Machine

Answer And Answer

sector

 

キャリーオン

Punishment

 

 

曲が始まる前からかみじょうさんのシンバル乱れ打ち、カウントと共に始まったのはPsychopolis!仙台と同じく生命のワルツで始まると予想していて、しかもPsychopolisはランク外だったのでかなり驚いた。間奏のタッピングは滝さんと為川さんがおふたりで。タッピングと同時に炸裂する和彦さんのシャウト!

次の曲は最初の一音で何の曲か分かって驚愕の声を上げてしまった、Mr.Suicide!野音でもセトリに入っていたが、これもランク外だったのでまさか入るとは…。よく観ているとPsychopolisもMr.Suicideも、滝さんは半分くらいは卓郎さんと同じところを弾いているように見えたけれど、この曲もタッピングは滝さんが弾いていた。

 

カウント、和彦さんのシャウト、と来たらこの曲!Wildpitch、これは確定曲なのだろうか。ずっと聴けなかったWildpitchがこの頻度で聴けるなんで嬉し過ぎる!!曲が進むにつれギター陣の動きがだんだん激しくなっていて、最後には滝さんと為川さんが背中合わせで接触しそうになっている程だった。和彦さんはピックで力強く弦を掻き鳴らし、最後のシャウトはステージの前まで来てオフマイクで叫んでいた。

 

Sleepwalk、和彦さんの見せ場!2番に入る前に花道に出て来て右手を高く挙げるとベースを弾き始める。ずっと和彦さんを観ていたが、上手に目を移すと最後のサビでコーラスがあるためマイク前から動けない滝さんの隣で、為川さんが思いっきり前に出てきて弾いていた。

これはもちろん良い意味としてこのように表現させて頂きますが、この時の為川さんが相変わらず上手の端に居ながらもまるで「俺のギターを聴け!」と言わんばかりの動きでぐいぐいとステージの前の方まで出てきて、生き生きとした表情で弾いていてそれがとても楽しそうで、前に出るタイプである本来のギタリスト・為川裕也の姿が出ていて観ているこちらも楽しかった!

 

「大阪…めっちゃええやん」という感じだったか、卓郎さんが関西弁を出すと沸き上がるフロア。

会場に設置された花道について「おれたち花道に関しては…結構な腕前ですから」だそう。花道があるといつも以上に楽しそうに見える卓郎さん達、そこに関しては自分たちでも自覚はあったんですね。

今日渡されるCDが終演後に渡されると説明、次の曲はその秘密のCD(もはや秘密じゃなくなってるね、というようなことも言っていた)から1曲…という流れでライブが進む。

 

カルマの花環、ギター3本とベースで同じメロディーを重ねるイントロがやっぱりかっこいい。イントロやアウトロではドラムのリズムとシンクロして点滅する照明が双頭の鷲を染めていて、その演出がまた曲の勢いと相俟って非常にかっこよかった。

サビで大合唱が返ってくるVampiregirl、イントロやアウトロのツインギターは恐らく為川さんが、滝さんのメロディーの更に上をハモっていて、トリプルギターならではのアレンジがここでも入っていた。

 

インフェルノ、ここでも威勢のいいタッピングを弾いたのは滝さん。また今更かもしれないけれど、「決して折れない剣を取れ」の前にかみじょうさんがスティックでカウントを入れているのを今まで全く気付いておらずここで初めて認識した。9mmのライブはあまりにも見所が多いから、何度観ても未だに この曲のこの部分、こんなことしてたのか!という発見がたくさんあって楽しい。

 

滝さんが2006年頃には既に作っていて、その後レコーディングまでしたのにずっと表に出なかったという話がお馴染みになりつつある21g、一気に明るくなるサビで曲に合わせパッと明るくなるステージ、という光景がまるで曲の中に飛び込んだような気分にさせる。

 

かみじょうさんがハットを刻み始める。ピリピリとした空気が広がる。Sundome、ここも緩急はっきりした曲に合わせて点滅する照明が展開を引き立たせる様子が見事で、つい照明ばかり観てしまった。

仙台の時もそうだったけれど、この曲を叩く時のかみじょうさんの真剣な表情にはやはり目を奪われるものがある。

 

このあたりだったか、今回募ったリクエストの話をする卓郎さん。新しい光やBlack Market Bluesが2票ずつしか入らなかったことを受け、この結果について「逆に信用できるよね!」と言いつつも、それでも聴きたいと新しい光やBMBに投票した人にありがとう!とひと言告げる卓郎さんらしい優しい気遣い。

 

次の曲はランキングで1位だった、といえばこの曲、光の雨が降る夜に!

光の雨が降る “大阪の”夜に!!」と卓郎さんが叫ぶ。トリプルリードのイントロは何度聴いてもかっこいい!!全体的にスラップ多めの和彦さん。アウトロでは卓郎さんと滝さんが花道で向かい合ってソロを弾き、そのすぐ後ろでは和彦さんと為川さんがかみじょうさんの前までやってきて、向かい合って弾いていた。

 

和彦さんがアップライトに持ち替え、赤いあたたかい照明に包まれながら始まったキャンドルの灯を、軽快な手捌きでアップライトを弾き、最後に一回転してみせるまでずっと和彦さんを観ていた。あとはこの曲と、ひとつ前の光の雨では曲が終わる時にかみじょうさんが、よくやるようながっつりシンバルを掴むのとは違い、シンバルの上から手を落とし、静かな手付きでスッと音を止めていた。

ホワイトアウトでは曲に合わせ真っ白い照明がステージを染める。赤くてあたたかな印象だったキャンドルとの対比で、より雪景色のような白さが際立っているように見えた。天井の真ん中あたりにミラーボールがあり、回さない状態のミラーボールが光を浴びて壁に控えめな雪景色を描いていた。

 

Termination、1サビで大合唱が起こると和彦さんがもっともっと!と言わんばかりに両手を大きく下から上へと動かして煽る。その後上手を見ると、滝さんが花道の方を指しながら為川さんと何か話していた。不思議に思いながら観ていると間奏に入る前に卓郎さんが「ギター為川裕也!!」と叫び、何と為川さんが花道に飛び出してきた!直前の滝さんの仕草は、「裕也、行ってこい!!」の意味だったんだ!即興でアレンジも加えながら花道の真ん中で生き生きと弾きまくる為川さん、更にそれをニコニコしながら後ろで見守る卓郎さんと滝さん!3人のあまりにも素晴らし過ぎる連携。

 

marvelous、中盤以降静かな手拍子からだんだん音を重ねて一気に炸裂するアウトロに合わせて、和彦さんが勢いよく前に出てきたりいつも以上にぐるぐると回ったりと大暴れの無双状態でここでも和彦さんから目が離せなかった。

Talking Machine、イントロで卓郎さんがいつものようにマラカスを手にし、ここのギターを為川さんに任せている滝さんは仙台ではペットボトルを振っていたがこの日は特に何も持っておらず、少し手持ち無沙汰な様子。「1,2,3,4!!」からイントロが始まると天井のミラーボールが高速で回り出す。ホワイトアウトじゃなくてそこで回すのか!笑 とついつっこみたくもなったが、とてもいい演出だった。2回目の「何べんやっても」では和彦さんと滝さんが同時にジャンプ!

 

Answer And Answerは曲が始まる前に卓郎さんが花道に出てきてそのままイントロへ。イントロと大サビ前、アウトロのリードギターは卓郎さんが弾いていたが、1サビ後のリードギターは滝さんが弾いていたように見えた気がする。滝さんが休んでいる間に卓郎さんがこの曲のリードギターを代わりに弾いていたが、やはり卓郎さんの見せ場としてそのまま引き継いだのか。最後のサビ前に卓郎さんがひとりでギターを弾く部分では、滝さんが被っていたキャップを取りそれで卓郎さんを指すように掲げていた。

 

ライブアレンジの迫りくるようなイントロがなく、いきなり始まったので不意を突かれたsector、滝さんはここまでずっとボディが薄いギターだったがこの曲だけレスポールシェイプのセミホロウギター・エクリプスに持ち替えていた。どちらかと言うと鋭い音がする印象の薄いギターではなく、ドスの効いた音を叩きつけるためにはこっちの方が合っているのか?トリプルギターならではの凄まじい音圧を叩きつける。

 

演奏が終わると滝さん、為川さんはすぐに退場。卓郎さんと和彦さんは長めにステージや花道に残り、いつものようにフロアに向かって挨拶。

退場時に和彦さんの機材に躓いてしまう卓郎さん。

 

 

アンコールで再び5人が出てくる。卓郎さんだけ本編とは違い、白のカオスTに着替えてきていた。

キャリーオン、曲の中盤で卓郎さんがひとりでギターを弾く部分では滝さんがまるで「みんな卓郎を観て!!」と言わんばかりに卓郎さんを指す。

Punishmentでは間奏で卓郎さん滝さん和彦さん為川さんが花道へ!さすがに4人並ぶと花道も少し狭そうに見えるけれど、あの4人が花道に並ぶのは圧巻の光景。

 

アンコールが終わり滝さんが退場、次いで為川さんも軽くフロアに挨拶をし、退場。

卓郎さんと和彦さんはフロアにピックを投げながらステージ前方や花道まで出てきて挨拶、そしてお手振り。

その後ろではかみじょうさんがまだドラムのところに座っていて、スティックを何本も手に取りじっと品定めをしていた。この後に投げるスティックを選んでいたようで、最終的に1本手にしたまま前へと出てくる。ステージ前方まで来て投げるが、フロアまで届かず花道に落ちてしまったらしい。それを拾うために花道まで出てきていたが、この時に「やっちまった!」という感じの、ごく自然な笑みが溢れていてそれが本当に良い笑顔だったのをよく覚えている。

最後に美しいお辞儀で締めくくった卓郎さんが和彦さんの機材横を通る時に、もう躓かないよ?というような仕草を見せながら退場していった。

 

 

どこの曲だったか忘れてしまった場面として、和彦さんがモニターに腰掛けてベースを弾いていたところがあって、その座り姿も良いなぁ…と思いながら観ていたのに曲を失念してしまったので、ここに書いておきます。

それともうひとつ、花道に出てきた滝さんがスポットライトを浴びながら大きく両手を広げていた光景、これも滝さんの姿はしっかりと記憶に残っている。

 

またこれは完全に余談になるが、開演までのBGMが仙台とは違う選曲だったかと思う。今回もメンバーセレクトだったのだろうか?この日は途中で凛として時雨の「Mirror Frustration」が流れたため時雨好きとして大喜びで聴いていたがリード曲でもない、こんなにコアな選曲を…?あくまで想像しただけではあるがこれが本当にメンバーセレクトだとすると、何となく誰の選曲か予想がつく。

 

 

卓郎さんが為川さんの事を紹介した時だったか、「これからも周りの人の力を惜しみなく借りてロックンロールしていこうと思います」と仰っていて、大変な2年間を乗り越えて 自分が頑張り過ぎないで信頼できる人を頼る ことができるようになって、卓郎さんもきっと肩の荷が少し降りたのでは、と思うと心の底から安心した。

 

この日、ライブ中盤以降ステージ上手が何やらざわついていた。滝さんの機材トラブルか、もしくは滝さん自身に何かあったのか…。しかし滝さんはアンコールまで出ていたし、また滝さんのアンプの様子を窺うような場面もあり、結局何があったのかは全く分からなかった。

ただ、Terminationのソロを急遽為川さんが弾いていたのは恐らくここに関係があるのだろう。事情が分からないだけにこちらが過剰に心配するのも良くないし、とりあえずライブが最後まで無事終わったことに只々ほっとしていた。

それに、この出来事があったから滝さん・為川さん・卓郎さんによる素晴らしい連携プレーを観ることができた。為川さんが9mmのライブに参加し始めてからまだ1年と少し、為川さんは滝さんと共に卓郎さんのソロにも参加しているとはいえ、9mmとして卓郎・滝・為川のトリプルギター編成でライブをするのは回数としてはまだそんなに多くない。それでもこの出来事から、卓郎さんと滝さんの為川さんに対する絶大な信頼がよく伝わってきた。花道に出る為川さんを見守っていた時の卓郎さんと滝さんの笑顔がそれを物語っていた。

20180915/9mm Parabellum Bullet“カオスの百年TOUR 2018”@仙台PIT

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“カオスの百年”というタイトルを冠したツアーは2015年以来、3年振り2度目の開催。

初めから告知されていた通り、来場者にCDが配布されること。また後々情報が解禁になっていったように、CDは新曲に加え各地で異なるライブ音源が収録されること。それが、5月に開催された野音ワンマン“カオスの百年 Vol.12”の音源であること。更に、ツアー開催にあたってリクエストを募ったこと。

こんなに特別なことだらけのツアーなんて、過剰に期待するしかないじゃないですか!

 

初日は地震の影響で2019年3月17日(9mmの結成記念日であり、15周年に突入する非常にめでたい日である)に延期。しかし急遽行われたスタジオライブがリクエスト曲上位5曲全て演奏されるという驚愕のセトリだったため、結果的に今ツアーのセトリに更なる期待が膨らむ。和彦さんの地元である仙台から、本格的にツアーが始まる。

 

 

会場に入ると、何とフロアの真ん中には花道が!これを見た瞬間に、楽しそうにここまで出てくるメンバーの様子が頭に浮かんできて、絶対にここで見るしか…!!と、花道の前で待機。

ステージにいつものバックドロップは無い。開演時刻を少し過ぎて、客電が落ち、普段通りDigital Hardcoreが流れると大箱用の巨大なバックドロップが派手に点滅するライトを浴びながらゆっくりと上がってくる。何度見ても大好きな演出、緊張が高揚感に変わる、遂に、始まる。

 

 

生命のワルツ

Wildpitch

Discommunication

Sleepwalk

カルマの花環

Vampiregirl

インフェルノ

21g

Sundome

光の雨が降る夜に

キャンドルの灯を

ホワイトアウト

Termination

marvelous

Talking Machine

Answer And Answer

sector

 

キャリーオン

Punishment

 

 

順番に出てくるメンバー。黒いカオスTを着た滝さんは曲が始まる前から花道に出てくる。真っ黒なTシャツ、笑顔の卓郎さん。和彦さんは珍しくワインレッドのような色のシャツ。気付くと既にドラムセットに到着していたかみじょうさんは青のタイダイTシャツ。(為川さんは黒い衣装、しかし残念ながらよく見えず)

 

メンバーが揃うと生命のワルツの音源版のイントロが流れる。もう最初からよく動く滝さん、和彦さんはネックを叩いてみたり、最後にはオフマイクで叫ぶ。少し離れているこちらにも僅かに聞こえるくらいの気合の入った叫び。滝さんは花道に出てきて、ステージと向かい合ってギターを弾く。巨大な双頭の鷲と対峙する滝さんの立ち姿、頼もしい背中。

 

次はWildpitch、まさか2曲目で入って来るとは、という驚き。リクエストした曲だったこともあり、嬉しさのあまり和彦さんのシャウトを聴いた瞬間、大歓声を上げてしまった。

数年振りに目の前で聴けたWildpitch、今の9mmの演奏で聴いたWildpitchは本当にキレがとんでもないことになっていた。Aメロではあんなに早い曲なのにかみじょうさんがスティックを回しながらハットを叩いていた。「答え以外は何でも」の、“何でも”の部分、卓郎さんが音源よりも少し抑揚を長くして歌っていた。序盤のタッピングは為川さんが見事に決め、サビの卓郎さん滝さんによるツインボーカルと間奏のツインリード、これが聴きたかった!!これを今の9mmの演奏で聴きたかった!!!ありがとう!!!

そういえばこの曲は和彦さん、ピック弾きだった。昔の曲はピック弾きが多めな気がする…?

 

ディスコミュを挟んでここでリクエストのTOP10には入っていなかったSleepwalk!卓郎さんの「む だ づ か い……」がもちろん聴きどころで、これも聴きたかった。それ以上のハイライトは1サビ後、花道に出てきた和彦さんがベースだけになるパートを弾き、卓郎さんがその後ろで「む だ づ か い……」を歌う。

花道の先のあたりにいたのでこの時の和彦さんを下から見上げるように観ていて、長い手足のすらっとした長身でベースを構える和彦さんの立ち姿、そのままサビまで花道でベースを弾く和彦さんの姿があまりにも美しくて目を奪われ、ずっと和彦さんを観ていた。

 

ここでMC。卓郎さんが「イントロクイズ状態のセトリ」と表現していたが、序盤にしてもうレア曲を連発という出し惜しみ一切なしのセトリ。終わったら忘れずにCDを受け取って帰ってね、忘れないように最初と最後に言うから!(笑)という優しい忠告の後に続くのはその新曲に入っている、カルマの花環。

キャリーオンや21gは割と明るい印象の曲で、それとは逆にカルマの花環は結構重たい印象。メロ隊とベースがユニゾンで弾くイントロが不穏な雰囲気を出していてかっこいい。まだやり始めたばかりの曲だからか、メンバーの動きは控えめな気がした。

 

次はVampiregirl、この曲すらしばらくの間、あまりセトリに入っていなかった。久々でもフロアからは大合唱が返ってくる。

インフェルノ、あっという間に終わってしまったが、最近はよく穏やかだったり楽しそうな笑みを浮かべる卓郎さんがこの曲では鋭い眼差しで真っ直ぐ前を向き、「命を燃やし尽くせ」と歌っていた、その瞬間がはっきりと記憶に焼き付いている。

 

次の新曲、21gは滝さんによると2006年ぐらいに作った曲で、Terminationリリースの時にちゃんとレコーディングまでしたが日の目を見なかった曲。それをこうして2018年に届けられることができた、と。卓郎さんは「曲は宝だね」と言っていたが、この言葉には共感しかなくて、10年以上の時を経て素晴らしい新曲として、日の目を見るなんて素敵な話じゃないですか。古いバージョンの21gもそのうち聴けるようにしたいと話していたので、今後Termination期の21gが聴けることにも期待。

 

かみじょうさんが小刻みにハットを叩く、もうそれだけでどの曲か分かる。一点を見つめながら黙々と叩くかみじょうさん、この時の真剣な表情にはかなり見惚れるというか、惹かれるものがあり、目が離せなくなった。そこに緩やかに重なるギター、卓郎さんの高速カッティング、溜めて溜めて炸裂する音、Sundome。

この緊張感を、今の9mmの演奏で、聴きたかった。配信で観ていただけでもそれが伝わってきていた。それを目の前で演奏された時、何か圧倒的なものと向き合っているような気分になり、聴いているだけなのに全く気を抜けないような緊張感に包まれて曲が終わるまで動けなかった。

これも本当はリクエストしたかったけれど泣く泣く諦めた曲だったので嬉し過ぎるセトリ入り。

 

リクエストでぶっちぎりの1位だった光の雨が降る夜に、イントロはトリプルリードになったことで音が分厚く、妖しげな雰囲気が更に増していて、ギターが3人いるこの編成だからこそできる贅沢なアレンジ。

間奏では上手を観れば滝さんが台の上でソロを弾きまくり、下手を観れば和彦さんが派手なスラップを披露、後ろを観ればかみじょうさんがシンバルをミュートする(個人的にかみじょうさんがシンバルを掴むところがとても好きなので)という、どこを向いても眼福、目が2つでは足りないような光景。アウトロのツインリードは卓郎さんと滝さんが花道まで出てきて、本当に楽しそうな笑顔で向かい合って弾いていた。

 

暗転、和彦さん側から歓声が上がる。アップライトに持ち替えた和彦さん。と来れば次の曲はもちろん、キャンドルの灯を。仙台だから和彦さんの見せ場が多い曲として選ばれたのだろうか。アウトロではお馴染み、アップライトを華麗に回して魅せる。

 

キャンドルからホワイトアウト ステージが真っ白い照明で雪景色のように染まる。滝さんが弾くホワイトアウトをライブで聴けたの、よく考えたらこれが初めてなんじゃないか?それまではどっしりと構えて力強くベースを弾いていた和彦さんが、この時にはすらっと真っ直ぐに立ち、柔らかい手つきで優しげに弾いていた。

 

Termination、イントロで高くネックを掲げる和彦さんと卓郎さん。卓郎さんに煽られると返ってくる大合唱、間奏では生き生きと花道に出てきてソロを弾き、弾ききると勢いよくフロアに向かって腕を伸ばし指をさす滝さん!真っ直ぐ前を見据える滝さんの強い目力と勇ましい表情!!

 

marvelousからTalking Machine、かつてはライブ終盤のど定番の流れだったこの2曲。

marvelousのアウトロのカオスパートに久々に飲み込まれる嬉しさ、トーキンではふと滝さんに視線を移すと卓郎さんがマラカスを振る横でペットボトル振ってた!!そういえば野音の時にはマラカスを一つもらって一緒に振っていた。ここのギターを為川さんに任せたことで滝さんが何かしら振れるようになったのか、と終わった後に気付く。2サビ前の「何べんやっても」では和彦さんが飛び上がる。後から聞いた話によると、滝さんも同時に飛んでいたらしい。この両翼のジャンプが復活したことがたまらなく嬉しい。

 

Answer And Answer、イントロのギターは滝さんが復帰した今でも卓郎さんがそのまま引き継いでいているようで、花道まで出てきて弾き始める。これを弾く卓郎さんの姿を真横から観られたのは大変貴重な光景だった。

 

最後の曲、sector、あのイントロの三連符がもの凄い音圧で叩きつけられた瞬間、大袈裟かもしれないけれど、「凱旋」のイメージが浮かんできて、sectorをよくライブで演奏していたあの時の9mmが、巨大なバックドロップを背負って暴れまわる無敵のギタリスト滝善充が遂に「9mmのワンマンライブ」に、帰ってきた!いや、ただ帰ってきただけではなくて当たり前かもしれないけれどあの時の何倍もかっこいいバンドになって、帰ってきたのだと実感した。単純にsectorで終わるライブがあまりにも久し振りで、ここ最近の状況を考えるとこんなにも早くsector締めのライブがまた観られるなんて思っていなかった。とにかく嬉しかった。

 

 

アンコールで再びメンバーが登場。

卓郎さんが嬉しそうに「今日は滝も最後までいるよ」「目撃者多数ってことでよろしく」と話す。2年前のツアー(太陽が欲しいだけ)では、滝さんはアンコールに出られなかった。だからその時のことを指していたのだろうか。

 

「みんなを連れて行く」という言葉からのキャリーオン 卓郎さんが「声を聞かせておくれ」と歌った後にそれに返事をするようにかみじょうさん、和彦さん、滝さん、為川さんが音を返すこの部分が大好きで、来るぞ…来るぞ…と楽しみにしていた瞬間。ここに完全に予想外だったが、更に客席からも卓郎さんの呼びかけに返事をするように無数の拳と大歓声が上がった。ステージもフロアも関係なくあの場にいた皆が卓郎さんの呼びかけに応えた!!驚きつつもこの一体感に胸を打たれながら観ていた。

 

この日最後の曲、Punishmentでは卓郎さん滝さん和彦さん、そして為川さんも遂に花道へ!花道に4人並んで間奏のソロを弾く!元気に客を煽る滝さん!ありがとう花道…!!

 

本編終わりでもそうだったけれど、滝さんは普段通り早々とステージを去る。為川さんも少しこちらに挨拶をして、すぐに去ってゆく。和彦さんと卓郎さんは花道まで出てきて丁寧に挨拶。卓郎さんのあのお辞儀を、真横から眺めるというこれまた貴重なものを観られた。頭を深々と下げる様子、しなやかな長い腕は指先までとても美しかった。

そんな中でステージの方を見てみると、スティックを投げ入れていたはずのかみじょうさんが何故かステージの下に降りていて、何やってるのかなと不思議に思っていると、どうやら投げたスティックがステージ前の通路に入ってしまったようで、それを自ら取りに行き、ステージに上がって投げ直していた。かなりの高さのあるステージに軽々と飛び乗るかみじょうさん、すごい…。

和彦さんがピックを大量に投げ込み、笑顔でステージを去る。

 

 

仙台は和彦さんの地元、ということで普段9mmではマイクを通して話さない和彦さんも喋る。中盤、スタンドからマイクを取ると下手から大歓声。

みんな気付かなかったかもしれないけれど今日から和彦さんのマイクが変わった、という話から入る。四角いフォルムのマイクに変わっており、和彦さんマイク変えたのか、と何となく気付いてはいたけれども。

スタンドに刺さっている時は良いけれど「手に持つと車掌さんみたいになってしまう」という絶妙な例えで笑いが巻き起こる。

また、ワインレッドのシャツを着ている理由について「楽天カラーです」とのこと。なるほど。

そんな感じでのんびりと和彦さんが喋っていると卓郎さんがドラムセットの台に座ってニコニコしながら和彦さんの話を聞いていて、そのうち滝さんが卓郎さんの横に座り、更に為川さんも滝さんの隣に座る。3人揃ってちょこんと座っていた様子が大変微笑ましくて、(年上の男性にこんなことを言うのは失礼にあたるかもしれないが)佇まいが可愛らしくて。かみじょうさんも徐にドラムセットに足を乗せて寛ぐような姿勢で和彦さんを見守るという、和やかな場面があった。この時だったか?和彦さんと話す卓郎さんがいきなり訛ってみせ、つい東北訛りが出る…という流れもあった。

 

どこかで入ったMCにて、卓郎さんがリクエストの結果について話し、

「シングル曲…シングリー(笑)な曲は2票ずつぐらいしか入ってなかった。Black Market Blues、2票!新しい光、2票…」と話していた。

先日9月9日のスタジオライブについて、公演が中止になるかもしれないと聞いた時に、卓郎さんもスタッフさんも同じ気持ちで、配信をやりたいと思ったこと。延期にはなったけれどあれがツアー初日だった、と卓郎さん。あの素晴らしいセトリの配信が、まぎれもなくツアー初日だと思っていたけれど、それは9mmチームも同じ気持ちだった。

 

また来年について、札幌公演の振替日が3月17日で9mm結成日の「疑いがある」日です、と。やはり狙ってこの日にしたのかなと思ったのと、疑いとは?と思ったが初めて4人でスタジオに入った日だから、「結成日の疑い」ということらしい。そろそろ新しいアルバム聴きたいでしょ?年内に仕込みたい、と。「出す出す詐欺にならないように」しないと、というようなことを少し表現が違うかもしれないが仰っていた。

仙台という事でARABAKIの話題も出していて、来年おれたち15周年で出ない訳ないよね、今年も6、8?(ステージ)出てるから…と何かを匂わすようなことを言っていた。この日の夜に解禁されたARABAKIのロゴには二丁の銃と弾丸。何かあるのだろうか。

 

 

全部で2時間足らずとはいえ、アンコールも含め全19曲。滝さんがフル出場し、更にこのセトリ。

振り返ると、何より為川さんがこの初期曲連発セトリを弾き切ったことへの驚き。凄腕のギタリストであることは去年十分に思い知らされたけれど、本当に化け物みたいなギタリストだなと改めて。

 

花道があるなんて想像もつかなくて、入場してかなり驚いた。9mmの皆様は花道があると普段以上にテンションが上がって楽しそうにするから、よくぞ作ってくれた!!と。更に花道を囲むように柵が出来ているので、結果的に柵の距離が増えていて、最前列状態で観られる人数が通常の倍くらいに増えてとても観やすくなっているという有難さもあり。メンバーが近くで演奏して下さるのを真横から見られるのがもの凄く面白い。

 

今回は花道先端のすぐ近くで観ていて、上手に背を向けるような体勢だったのでギター陣はあまり見えず。その代わり、リズム隊はとてもよく見えた。かみじょうさんもちょうど卓郎さんが被らない位置だったため、こまかいところまでしっかりと観ることが出来た。どの曲だったかすっかり失念してしまったが、セッションからイントロに入る直前、卓郎さんがかみじょうさんとアイコンタクトを取っていた。そんなところまでよく見えた。かみじょうさんがその一瞬、ほんの僅かに表情を緩めていた、気がした。

滝さんがその暴れっぷりでキャップを吹っ飛ばすも、すぐさま拾ってかぶり直したり空中でキャッチするのが昨年末からのお馴染みになりつつあるが、この日はよく見えなかったもののキャップが上手くギターのヘッドに引っかかっているようだったり、落ちたキャップを卓郎さんが拾ったり、というような場面もあった。

滝さんはMC中に相槌を打つようにギターを鳴らしていた。気の抜けたようなフワフワなメロディーを弾いたり、運指練習みたいなフレーズを鳴らしてみたり。休養する少し前はあまりやらなくなってしまっていた気もするが、復帰後はまたこのような相槌が聴けるようになった。

髪がまた伸びてきた和彦さん、演奏中は目元が髪の毛ですっぽりと覆われていることが多かったけれどMC中には髪をかき分けて顔がよく見えるようになっていた。ずっと笑顔だった。

それから今更かもしれないけれど、演奏中の和彦さんをずっと見ていて佇まいの美しい人だな、と実感した。勢いのある曲では長い脚を広げてどっしりと構え力強く弾く姿。緩急のある曲では頭から足まで真っ直ぐにして立つ、すらっとした立ち姿。ステージギリギリ前まで出てきてはフロアを煽り、曲が盛り上がるところでは思いっきりベースをぶん回したり自らがぐるぐると回転する。どれもとても絵になる。セトリ入りを期待していた和彦さんの曲は入らなかったけれど、Sleepwalkやキャンドルは和彦さんの見せ場が長くて、もしかして仙台だからそういう曲を入れてきたのかな、とも思った。地元という事でMCも聴けたし、地元ならではの特別感をここで味わうことが出来た。

 

あと5公演はセトリをガラッと変えてくるのか、ランキングに入った曲はどの程度採用されるのか?久し振りの「セトリが全く予想できないツアー」、期待以上にとんでもないツアーが、始まった!!

 

20180909/9mm Parabellum Bullet “カオスの百年TOUR 2018”@スペシャアプリ(スタジオライブ生配信)

2018年の“9mmの日”、本来であればZepp Sapporoにて「カオスの百年TOUR」初日公演が開催されるはずだった。

ほんの数日前に北海道を襲った地震により、当然の判断ではあるがこの公演は延期が決定。

しかし、すぐさま公式から告知されたのは「9月9日にスタジオライブを生配信する」という、嬉しい報せ。

被災地のために、アーカイブを長めに残すという配慮付きで。

 

この日の公演は特別に、メンバーが正装でライブをすること、そして客は携帯であればライブの模様を撮影することが許可されているという企画「フォーマル&モバイル」が予定されていた。

配信でも正装なのか、そもそも何曲ぐらいやるのか、事前に募ったリクエストからはどの程度反映されるのか…などとあれこれ考えながら、まるで本当のライブの開演前のような気持ちで配信開始を待つ。

 

 

ライブの開演時刻に合わせた17:30、いよいよ配信が始まるとぼやけたバックドロップの一部、続いてバスドラに描かれたロゴが映る。いつものSEもなく(版権の関係か)、メンバーを映し、ライブが始まる。

 

やはりメンバーは正装。スーツに蝶ネクタイ姿の卓郎さん、ハットに黒スーツの滝さん、見慣れた黒シャツの和彦さん、端に映るため様子がよく分からないが暗めのスーツを着た為川さん。

ここまでは何となく予想していた通りの、とても素敵なフォーマル衣装。しかしただ一人、かみじょうさんは袖にフリルの付いたシャツに青いジャケット、まるで貴族のような衣装でこれは流石に予想外だった!確かにフォーマルですけどかみじょうさん!笑 ドラム叩きづらそうな衣装なのでそこにも驚き。

 

 

  1. Discommunication
  2. ハートに火をつけて
  3. Sundome
  4. Wildpitch
  5. 21g
  6. カルマの花環
  7. The Silence
  8. Sector
  9. キャリーオン
  10. 光の雨が降る夜に

 

 

最初は定番曲から。序盤から滝さんも生き生きと動き回り、本当のライブの様子を観ているかのよう。

どちらの曲でもソロでは滝さんが同じ音を使っていた。先日のLINE LIVEで滝さんが最近作って気に入っていると仰っていたオルガンのような音がきっとこれなんだろう。確かに不思議で面白い音。

この流れで、定番曲を多めに入れてくるのかと一瞬思ったが、そのつまらない予想を一瞬でぶっ飛ばすかのような一言が卓郎さんから告げられる。

 

「カオスの百年TOURではリクエストを募りまして…そのTOP5をこれから演奏します」

 

文字にすると伝わり辛いが、この一言にどれだけ驚いたか!上位曲をごっそりセトリに入れる、と。

リクエストは募ったが、ランク入りしたから必ずやるとはっきり言及されていた訳ではないので、いきなりここで聴けてしまうという大盤振る舞いである。

 

まずは5位のSundomeから。ライブではハットの速い刻みから入り、徐々に音が重なっていくというアレンジ。かつてのライブでは度々聴いていて、とても好きだったアレンジ。

シリアスな空気、心地いい緊張感の中でギターのメロウなフレーズが重なる。卓郎さんの高速カッティング、そして溜めて溜めて一気に爆発するようなイントロ。今の体制、今の機材、今の演奏力で繰り出したSundomeは、やはりキレがとんでもないことになっていた。滝さんは前述のオルガンのような音をここでも駆使。

 

続いて4位。事前にランキングを聞いていたので次の曲を知っていた。

いよいよ聴ける、と身構えた。リクエストを募る、と聞いた際に頭の中に真っ先に浮かんできた1曲。早々と願いが叶った。画面越しとかもうそんなのは関係ない。

 

Wildpitch!!!4年振りのWildpitchだ!!!

 

カウントから和彦さんのシャウトが炸裂した瞬間に腹の底から喜びが湧き上がってきた。ギター3本の重さは想像を遥かに越えていた。滝さんが思いっきり弦を掻き鳴らす。タッピングは映らなかったけれどきっと為川さんだ!間奏のツインリードは最高にかっこよかった、もう余計な表現など要らないくらいにかっこよかった。やっとこのツインリードを聴けた…という実感が込み上げてきてじわじわと視界が滲んだ。思いっきり頭を振ったりネックを振り下ろす和彦さん、そして渾身のシャウトを叩きつける和彦さんの姿に思わず歓声を上げそうになった。嬉しかった、ただひたすら嬉しかった。

 

次は3位の曲…と思いきやここで、来場者に配られるCDに収録される新曲が。

既に解禁されている21gから。イントロが始まったと思ったら一旦演奏が止まり、卓郎さんが何事もなかったかのようにもう一度曲紹介を始める。笑 こんなところも本当のライブを観ているよう。

まだ聴いて日が浅いのでざっくりした印象だけれど、サビの開放感と明るさはこのバンドにしては意外な程だけれど、新しい一面がまた観られたようで楽しい。(とはいえこの曲はTermination期に作られた曲というのがまた驚き)

続いて何の説明もなく、聴いたこともないリフが演奏される。ギターとベースの若干不穏なユニゾンがかっこいい。

まだ解禁されていなかった、カルマの花環!21gとは打って変わってマイナー調の威勢の良い曲。これもざっくりした印象になってしまうが、個人的にはかなり好みで、間奏で拍子が変わるのもワクワクする。まだ解禁されていないから、もしかしたら配信では演奏しないのでは、とも思っていたが、そんな出し惜しみをするようなバンドではなかった。

 

新曲の説明と、かみじょうさんの貴族のような衣装にほんの少しだけ触れ、また為川さんが着ている正装が卓郎さんのソロの際の衣装だと説明される。暗くてよく分からなかったが、よく見ると確かにあの青いスーツ。素敵に着こなしているのはやはり卓郎さんと似ているから当然なのか…細身だから、というのもあるとは思うけれど。

 

ランキングに戻り、3位のThe Silence

嵐の前の静けさ、のようなイントロから、滝さんの爆速カッティングへとなだれ込む。この曲も随分久々に聴けた!壮絶なイントロはこれもギター3本で聴きたかった!今や滝さんはすっかり元気になっているご様子とはいえ、滝さんによるあの爆速カッティングがまた聴けたと心から嬉しくなる。大サビ前の和彦さんのシャウトの裏では3本のギターが凶悪な音を出している。実際に目の前で聴いて、この部分の音圧を体感したかった。

 

2位はSector、これもいつ振りだろうか。卓郎さんと滝さんの元気なツインボーカル、威勢のいい演奏に嬉しさが止まらない。アウトロでぐるぐると動く和彦さん、ドラム乱れ撃ち状態のかみじょうさん。自宅で観ていることを忘れて、拳を振り上げそうになった。

 

「本当にシングル曲が一曲も出てこないという。素晴らしいですね」と卓郎さん。

圧倒的な人気で1位となった曲…の前にキャリーオンを演奏。

スカッとしたメロディー、ひとつひとつがとんでもないエネルギーを発する言葉。解釈は色々あると思うが私はこの歌詞が卓郎さんから滝さんへのメッセージにしか聴こえなくて、また「声を聴かせておくれ」という卓郎さんの呼びかけに答えるようなフレーズを全員が弾いている、この部分が堪らなく好きで、また不安の多い現状でこの歌が流れてくることへの頼もしさを噛みしめながら聴いていた。

 

この曲が主題歌となっている映画「ニートニートニート」は北海道が舞台らしい。

振替公演を必ずやるから、待っていてくださいと北海道の人たちに告げた、卓郎さんの優しさ。

 

そして最後に、満を持して1位、光の雨が降る夜に

イントロのツインリードはトリプルリードの贅沢なアレンジに!これも、今の編成で聴きたいと思っていた部分のひとつ。サビで一緒に歌う卓郎さんと滝さん、そしてその向こうにいる和彦さんが並んだ光景を時折カメラが抜く。最強の並び。かっこよすぎる画。どんどん高揚感を煽りいよいよアウトロのツインリード、卓郎さんと滝さんが向かい合ってギターを弾く!滝さんが復帰して、こんなにも早くこの光景を観られるなんて正直思っていなかった。それだけに本当に本当に嬉しかった。最後に和彦さんがベースを高く掲げた、その瞬間にまた思わず大歓声を上げそうになった。

 

 

約1時間、全10曲、とても濃い10曲。

今年の新曲3曲を全て、そしてランキング上位5曲も。配信だからと言って、全く出し惜しみのないセトリ。

本当に目の前でライブを観ているような気持に何度もさせられた、迫力と熱のこもった演奏。

いつもフロアを見渡す時と全く同じ眼差しで画面のこちら側を見てくるかのような卓郎さんの目。安全第一とはいえよく動く滝さん。以前は曲の中でも休み休みギターを弾いていたが、今回はほとんど弾いているようにも聴こえた。安全第一の滝さんに代わるかのように、思いっきり動いていた和彦さん。カメラにあまり抜かれなかったが、本当は為川さんの様子ももっと観たかった。そして衣装は奇抜ながらいつも通り冷静な表情のかみじょうさん。

 

本来であれば、札幌の会場に居る人達だけが目の当たりにできるはずのライブだった。それが配信になったお陰で、結果的に日本全国、リアルタイムでは難しい方もいたとはいえアーカイブを含めれば「この日のライブを観たいと思う全ての人が観られるライブ」となった。

本来のライブ通りメンバーは全員正装。更に配信という形だからライブの模様をスクショできる、つまり本来のライブと同じく携帯であれば撮影しても良いという状況。曲数の制限と配信であることを除けば、予定通りの「フォーマル&モバイル」だった。

しかもカメラを何台も駆使しメンバーを映すことで、客は全員特等席状態でライブを観覧できたことになる。

「フォーマル&モバイル」を、全国の9mmファンが参加できた。結果的に余りにも粋な計らいだった。

さながら“カオスの百年TOUR初日公演@日本全土”だったな、と。

確かに今日がツアー初日だった、最高のツアー初日だった!

 

卓郎さんはいつものように「ありがとう!」と言ってスタジオライブを締めくくっていたけれど、今年の9mmの日を今できる限りのことで最高の一日に変えて下さった、その配慮にこちらがありがとう、と言わせてください。

20180609/AC 9mm“ほたるの里ロックフェスティバル”@辰野町民会館

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長野県・辰野町にてこの時期開催される辰野ほたる祭り。 その70周年記念イベントとして開催されたライブ。

辰野町出身であり、「たつのふるさとパートナー」を務めるかみじょうさんの凱旋公演にして、先日の野音公演で初御披露目されたAC 9mmの初めてのワンマン公演。

かみじょうさんの地元ということで、2年前に長野でアコースティックライブをやった時のように、かみじょうさんがたくさん喋るのではという期待も大いにあり、また新プロジェクト・AC 9mmへの期待や、近くの公園ではホタルも見られる!ということでチケットを早々に取っていたのでいよいよ当日、意気揚々と辰野へ向かいました。(終電の関係でホタルは見られず、それだけが残念でした。)

 

 

会場である辰野町民会館、キャパ700席ほどのホールでありながら天井が高く、広々とした座席とかなり座り心地の良い椅子で最後までゆったり快適に観られました。

入り口やロビーにはAC 9mmのフライヤーがいくつもの「9」をかたどるように貼られていました。

広いステージには野音の時と同じようにアコギ(アンプはジャズコ)、ベース、真ん中には球体がいくつか集まったようなドラムセット。終演後にステージを覗いてみるとそれぞれのスペースにラグが敷かれていた。

野音と違うのは、タムの右側あたりに辰野町のキャラクター・ぴっかりちゃんが鎮座していること。

開演直前に辰野町の方(町長さんでしょうか?)より挨拶があり、それが終わってしばらくすると客電が落ちる。今回も客席では誰も立たず、全員着席のままライブが始まる。

 

 

Answer And Answer

ハートに火をつけて

Psychopolis

Battle March

黒い森の旅人

星に願いを

どうにもとまらない

Heart-Shaped Gear

荒地

太陽が欲しいだけ

The Revolutionary

 

カモメ

Black Market Blues

 

 

登場SEは無く、薄暗いステージにまずはかみじょうさんが登場。ドラムセットに到着し、いざドラムを叩くぞというその瞬間に、球体が鮮やかに黄色く光り、その瞬間に客席からは大歓声。野音ではまだ明るかったため、球体が光る様がよく分からず、この暗い室内でどのように光るかとても楽しみだった。同じ気持ちの人がたくさんいて、一斉に歓声が上がった時のあの高揚感!!野音に行っていなかった人はもっと衝撃だっただろうし。この後は曲に合わせて赤、青、緑にも光っていて、目まぐるしくカラーチェンジしているような時もあった。

続いて和彦さんが登場、ベースを弾き始め、最後に卓郎さん。椅子に座ると歌い始める。3人とも野音の時と同じフォーマルな衣装。心なしか卓郎さんの襟元は野音の時よりきっちりしているように見えた。

 

野音でも1曲目だったジャズっぽいアレンジのAnswerは、歌い出しの部分がベースとドラムのみで始まるところが卓郎さんの歌声を引き立たせているし、とてもシャープなアレンジでとにかくかっこいい。サビ直前など、随所に入ってくるドラムの三連符が良いアクセントでこれがまたかっこいい。個人的にとびきり好きなところ。

続いては和彦さんによるアレンジだと野音で明かされた、ダークでどことなく不穏な空気のアレンジのハー火。控えめな赤い照明と相俟って良い雰囲気。

 

このあたりで早くもMCが入った気がする。どの話題だったかは失念してしまったが、途中でかみじょうさんがマイクを手に取り「やっほー辰野!」と挨拶をされたのは確かこの辺りだったか。

 

原曲離れしたイントロから始まるPsychopolisはシンプルなアレンジになると意外とストレートな歌詞が目立ってくるのが面白い。

軽快なドラムから始まるBattle Marchではサビの一番高い音で卓郎さんがファルセット交じりに歌っていて、これがとても美しかった。間奏ではベースにリバーブを掛け、ギターも思いっきり歪ませる。アコギならではの弦の音、アコギ本来の音がしっかりと鳴っているのを歪んだ音が包み込んでいるような不思議な感覚。アコースティック編成らしからぬ音の広がり。

 

諏訪湖を囲む森のことを歌った…訳ではありませんが(笑)と卓郎さんが前置きを入れてから演奏された黒い森の旅人。卓郎さんがよく弾き語りで歌われている時のアレンジをベースにしたような、優しい演奏。アウトロのルルル~というコーラスが美しく、また物寂しさも感じさせるよう。この時にはドラムセットはずっと緑一色に光っていて、森をイメージしていたのかな、と。赤と青を入れつつ、下から白い光がステージを包むような照明がさながら朝焼けの陽光のようだった。

 

辰野は星が綺麗に見えるという話、卓郎さんの地元も星が綺麗に見えるが、辰野は標高が高いから星が近く、「星降り度」が高いという話の後に演奏されたのは星に願いを。その話を聞いた後だとこの曲のようなロマンチックな歌詞が卓郎さんから出てくるのも頷ける。

続いてはこの日一番予想外だったどうにもとまらない!2番では「辰野で誰かに声かけて~」としっかり歌詞に辰野を入れてくる卓郎さん。語感もぴったりでかなり盛り上がったところ。(「誰か」を「ちひろ」に換えたらもっと面白かったな、などと考えてしまった)

原曲に近いアレンジのHeart-Shaped Gearでは、イントロや間奏の入りで一小節だけ和彦さんが原曲の滝さんパートと同じメロディーを弾いてから入る。和彦さんの大きな見せ場のひとつだと思っているし、この一節がきちんと入ってくるのが大好きです。

前半のPsychopolisもそうだけれど、アコースティック編成で削ぎ落とされたアレンジになるととてもいわゆるJ-POP的と言うか、歌詞も良い意味で分かり易く、過度に刺激の強い表現ではないので実は幅広い層に受け入れられるかもしれないな…なんて聴きながら思っていました。

 

荒地はアコースティックになるとこんなにも繊細な印象になるのか、という驚きがあり、

「枯れた花のために ささやかな祈りの雨を」という一節が引き立つような儚さもある。アウトロでは一転、卓郎さんが思いっきり音を歪ませ長いソロを弾ききる。

 

軽快かつ陽気な印象さえ受けるような太陽が欲しいだけ、穏やかなあたたかさのあるアレンジが「もうひとりにはしない」という優しい一節を目立たせる。

最後はThe Revolutionary、こちらも軽快なアレンジ。2曲続けてとても前向きなエネルギーのある曲でカラッと締める。ここでは卓郎さんのハーモニカが登場。アウトロで徐に唇をぺろっと舐めていた卓郎さん、あれはハーモニカを吹く準備だったのかな。この少し前のMCで帽子を取り、ハーモニカを首から下げ始めた卓郎さん。しかしすぐ「まだいいや」、なんて言いながらハーモニカを戻してしまっていたが、それはこの曲の3曲ほど前のタイミングだった。準備が早すぎたのか。笑

その時にハーモニカを先に掛ける=「さきがけ」と言い出し、一文字で書ける(おそらく「魁」)などと言いながら徐々に脱線し始める場面も。

 

 

本編終了、しばらく続いたアンコールの拍手に呼ばれ再び出てきた3人。

フォーマルなシャツ姿ではなく、ロビーのスタッフさんが着用していたものと同じ、ホタルのいる風景が描かれたTシャツを揃って着て出てくる。

和彦さんは何かを齧りながら出てくるという…笑 おやきかな?と思っていたらあたりで、座ってからもしばらくもぐもぐと食べ続けていた。卓郎さんに「町長に怒られるよー」などと言われると、食べかけのおやきを傍らにあったタオルで挟んで隠す。この様子には客席から爆笑。何種類かおやきが用意されていて、卓郎さんはきのこを食べたらしい。和彦さんが食べていたのは大根だそう。ただ、和彦さんは既に大体食べていて、あとはあんこを食べていないと。そこから、辰野で売っているおいしいどら焼きの話へ。かみじょうさんのご家族が差し入れをしてくれたりするそうです。

 

アンコールの1曲目はカモメ。9mm曲の中で最もこの編成が似合うのではないだろうか。長野でこの曲を演奏したのは少し意外だったけれど。卓郎さんのしなやかな歌い方に女性口調の歌詞がとても似合うのだと改めて実感。

 

そして最後はBlack Market Blues、今日は滝さんがいないからと客にコーラスを求める、という卓郎さんの弾き語りなどではお馴染みの流れ。(卓郎さんが、おれが弾けばいいってのは無しだよ?というような事を言っていたような気がする)

しかしここで卓郎さんがBMBの声出しのためにとこれまた長野でのライブでは定番の流れになっている、客に長野県歌「信濃の国」を歌わせる。この流れはあらかじめ決まっていたのか、卓郎さんに向かってかみじょうさんが「よく覚えてたねー、俺忘れてた」というようなことを言っていた。

かみじょうさんがそれに合わせてドラムを叩いていたが、途中からスティックの片方をマイクに持ち替え、ドラムを叩きながらオンマイクで歌い出す!!途中から歌詞があやふやになっていたが、1番を最後まで歌いきる。かみじょうさん曰く、マーチングドラムは片手では無理、とのこと。歌詞が飛んだのではなく、叩きながら歌うのが難しかったのか。それにしてもまさか、かみじょうさんがオンマイクで信濃の国歌うとは…卓郎さんがこの日MCでよく喋っていたり、普段以上に表情豊かだったかみじょうさんに本編で言っていたが、本当にこの日は大サービスだった。(MCについては後述)

信濃の国大合唱が終わり、BMBのコーラス練習もしっかり済ませいよいよ演奏へ。結局最後まで着席しながら観ることになったけれど、この曲は練習したコーラスあり、いつもの手拍子もあり、やはり着席でもこの日一番の大盛り上がりだった。

 

これで全曲終了し、3人が客席に向かって挨拶をし始め…ると、スタッフさん3名がそれぞれ大きな花束を持って登場するというサプライズが!どう受け取ればいいのか?で若干ぐだぐだになりかけるステージを卓郎さんが仕切って整列し、揃って花束を受け取る。かみじょうさんも満面の笑みで花束を受け取り、真っ先にスタッフさんに自ら手を差し伸べて握手。大きな花束を受け取り、改めて客席に笑顔を向ける3人。そのまま順番に退場してゆく。

 

まだやれる曲が少ない、と卓郎さんも言っていたが、それでもこの曲数。更にMCでは3人で喋りまくっていたため、90分余りにわたるライブ。MCが長い分ゆったりしていたような、それでもあっという間に終わったような気もする。

今後ACのライブが決まっていないのがとても残念だけれど、9mmや卓郎さんの活動がこれから増えるから、ACはそれらの活動が少し落ち着いたら再開するのだろうか。ライブだけでなくどうか音源化も…という気持ちも大いにある。

 

 

以下、思い出せるだけ箇条書きでMCを書き出していこうかと思いますが、何しろもの凄い量だったこと、筆者の記憶力が残念なため、どのタイミングでどの話が出てきたのかをほとんど失念してしまっていて、このような形での文字起こしにて失礼します。

 

 

卓郎さんがかみじょうさんについて「バンド始めた頃は頼れるリーダーだったけど、パーソナリティーがおかしい」と言うような話を出してきて、その時に「あらー」と言いたげにおどけてみたり、頬に手をやって驚いたような顔をしてみたり、思いっきり舌を出して本気のてへぺろ顔を披露するかみじょうさん。

 

(きっかけは忘れた)卓郎さんがかみじょうさんに「町長の座を狙っているんだよね?」という振り。かみじょうさんも「玉座を空けて頂いて」的な事を言いながら話に乗っかる。しかし卓郎さん、「この男を町長にしてはいけない!」

 

かみじょうさんと和彦さんはライブ前日にホタルを観に行っていて、和彦さん曰く「宇宙みたいだった、宇宙行ったこと無いけど」とのこと。 昨日は雨だったのにそんな感じなら、晴れたらどうなるんだろうね、と卓郎さんに聴かれた和彦さん、「分かんねっす」

 

(何かのタイミングで)かみじょうさんが喋ると黙る卓郎さん。かみじょうさんが「そんなに拾いにくいこと言った?」と尋ねると卓郎さんが「あとで反省会しようね」

 

各メンバーの実家に泊まると受ける「地獄のもてなし」について。2006年あたり?かみじょう家に着くと早朝だったのに御馳走が用意されていて、かみじょうさんがきゅうりに明太子のっけて食べ始めた話。きゅうり一本に明太子を一房?一卵巣…?と謎の数え方をするかみじょうさん。(正解は一腹、ひとはら)

 

これもかつて辰野に来た時、卓郎さんと和彦さんがコンビニに行こうとしたが寒かったのでジャージの上にジーンズを重ね履きして行って、とてもぱつぱつ(うろ覚え)な状態になってしまったのを「もこみち」と呼び始めて笑い転げて道端で凍死しそうになった、という話。卓郎さんはその話するつもりなかったらしいが、ぶっこんできたのは和彦さん。

また、和彦さんが車に水の入ったペットボトルを置き忘れ、翌日取りに行ったら水がバキバキに凍っていた、という寒さにまつわる話。

それからその頃、卓郎さんと滝さんは卒業するのに単位が足りないかもしれない、もし卒業できなかったら追試受けに行くから3人でライブして、と言った滝さんの話。から、今日滝がいないのは追試を受けに行ってる、と。(本当は上海にいるらしい。)追試のくだりは2年前の長野アコースティック公演でも出てきた話でした。

 

辰野の名物であるホタルは、元々一人の先生が始めた取り組みらしいよ、と卓郎さん。(かみじょうさんは知らなかったらしい。)沢の水は寒くて、ホタルの餌となるカワニナが棲めないから、諏訪湖の水を引いてきて混ぜているのだそう。諏訪湖の水は栄養もあるのだと。

卓郎「諏訪湖の川の水…川じゃないや海だ」

和彦「海じゃねーし」

つっこみが鋭い&素早い和彦さん。

 

辰野には「夜明け前」という美味しい酒がある。卓郎さんも美味しいと言っていた。諏訪湖の水は入っていない。

もう一つ酒の話で、かみじょう家ではスズメバチを漬けた酒を作っていたという話。卓郎さんがあの時は味が分からなかったと言う一方、和彦さんは美味しかったと。かみじょうさんのお父様?おじい様?が作っていたらしいがお酒に弱いらしく、かみじょう家は代々酒に弱いのではと。そこで強がるかみじょうさん。

 

かみじょう「辰野の人口が現在1万9000人程で、2万数千人をピークに減少の一途を辿っている…その一端を担っているのが、この俺!!」(親指を立て自分を指しながらどや顔で)

「俺が戦うには辰野はフィールドが狭すぎた」とも。

 

アンコールにて。前述のように3人揃ってホタルTで登場し、卓郎さんが「ホタT(ホタティー)」と言い出し、和彦さんが「ホタテ」と聞き間違えたのを皮切りに

卓郎「ホタテ」「SHISHAMOの妹分みたいだね」「妹分なのにホタテの方が大きい」と散々膨らませた挙句「今のは無かったことにしてください。」

 

これもアンコールか、ぴっかりちゃんの話から派生したんだったか…?ドラムセットがホタルみたいだという話を卓郎さんがすると何故か音頭的なリズムを叩き始めるかみじょうさん。その後卓郎さんに向かって真顔、と言うか虚無の表情を向ける。卓郎さん、「フォローしないよ。」

 

 

恐らくこれでも拾いきれていないはず…とにかく3人で喋り倒していました。

ゆるすぎて楽屋みたいな空気をステージ上で出していた時もあった、それだけ和やかなひとときでした。

 

MCの端々に、かみじょうさんの地元愛が垣間見える発言もあった。

途中でドラムセットの傍らにいるぴっかりちゃんの頭を撫でていたり、なんにもないけど良いところがあると、うろ覚えですが仰っていたり。好物である辰野の食べ物(ローメン?)の話も出てきていました。

MC中に終始穏やかな笑顔を浮かべられていて、普段のライブよりも心なしか楽しそうに見えた。

最後にはふわっと、でもしっかりとマイクを通して「愛してるよ、辰野」と仰っていた。

一番愛を感じたのは、最後にスタッフさんから花束を受け取った時。おどけた顔など、散々百面相を見せていたかみじょうさんがこの時に完全に素の表情で、満面の笑みを浮かべていたこと。今までに観たことがないような笑顔だった。本当に辰野が好きなんだな、と。

 

この町を出て全国区で活躍するようになったかみじょうさんが、丸くて光る、まるでホタルのようなドラムセットを携えて、ホタルが美しく飛ぶ季節に凱旋する、こんなに粋な帰郷の仕方他にないですよ、素敵過ぎる。

 

今度は9mmとして辰野に来たい、という話も出ていたし、またここでライブをやる機会が近いうちにあるかもしれません。その時にはきっとまた来たいと思いました。ホタルのリベンジも兼ねて。

20180527/9mm Parabellum Bullet“カオスの百年vol.12”@日比谷野外大音楽堂

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9mmが2年振りに野音のステージに戻ってきた。

野音の地で初めて開催する“カオスの百年”であり、野音のライブが告知されたのと同時にその存在が発表されたAC 9mm御披露目公演でもあり、サポートの武田さんも為川さんも出演、そして滝さんはフル出演するという盛りだくさんの公演。激しい期待と少しの不安。

 

思えば2年前のあのライブから、9mmの苦難とバンドを続ける為の試行錯誤が始まった。

これまで当たり前だったことが当たり前ではなくなってしまった。

 

それでもメンバーそれぞれが滝さんの代わりにできることを増やし、様々な人たちの協力を得ながら、9mmを続けてきた。少しずつ滝さんも帰ってきて、その試行錯誤が報われ始めた。

卓郎さん達は過度な気負いは持たずにこの公演に臨むようだった。だからこちらもなるべく感傷的にならないように、ただ楽しみに待つようにしていた。それでも数日前からどうしようもない緊張感に襲われたりもしたけれど。

 

 

当日の天気は朝から晴れ。割と雨を降らすバンドである9mmの野外公演でこんなにいい天気だと、もう既にライブの成功に対しての良い予感がする。5月らしく風が気持ちよく、絶好のライブ日和。

 

会場内に入るとステージにはお馴染みのバックドロップ、その下には“CHAOS  IN 100 YEARS”と書かれた幕。ステージ左右の床には大きなミラーボールがひとつずつ。

そしてステージのど真ん中には白い大きな球体がいくつか集まっているような不思議な物体。よく見れば随分変わった形のドラムセットだと気付く。

開演が近付き運び込まれたのはアコギと、それからセミアコタイプのように見えるベース。

 

野外なので客電落ちもなく、メンバーどうやって登場するの?と思っていると開演時刻になり、何の合図もなくまずはかみじょうさんが登場。黒っぽいシャツをきっちりと着こなし、更にこれまたきっちりとネクタイを締めている。

かみじょうさんがドラムを叩き始め、続いて和彦さんがステージへ。同じく黒シャツに、首元にはバンダナ。最後に白シャツ、黒いネクタイ、黒いハットを被った卓郎さんが出てくる。

普段からモノトーンの衣装が多いけれど、ここまでシックな服装でのライブは数少ないだけにまずはそれぞれの装いに目を奪われる。

突然メンバーが登場したため、立てばいいのか座ったままで良いのか、それすら分からないで辺りをきょろきょろと見回していると全体的にそんな感じ(に見えた)で、結局座ったままスタート。

 

 

AC 9mm

 

Answer And Answer

Heart-Shaped Gear

Psychopolis

Battle March

荒地

星に願いを

ハートに火をつけて

太陽が欲しいだけ

 

 

1曲目のAnswer、全く予想外だった、ジャズのような軽やかさのある、とびきりお洒落なアレンジ。ドラムの三連符が何故かとても印象に残っている。

まだ明るい野音のステージと森の中に、そのサウンドと卓郎さんのしなやかな歌声が広がってゆく。

これまで、4人編成、卓郎・和彦・かみじょう の3人編成、卓郎・和彦の2人で、そして卓郎さんの弾き語り と様々な編成のアコースティックで9mmの曲を聴いてきた。そのどれとも全く違うアレンジ。全く違う音。想像と期待をいきなり軽く越えてきて、早くもこの編成がとんでもないことに驚くばかり。

 

続いて「1stゾーン(Termination収録曲だから)」と名付けられたHeart-Shaped Gear、Psychopolis、Battle March、(アコースティックと言えども、やはりかみじょうさんの仕事量は多め)

またその後には「Movementゾーン」として荒地と星に願いを、と9mm本体でも今やほとんど聴けないような曲を惜しげもなく披露。

荒地では卓郎さんがしっかりとソロをきめ、“最遅”のアレンジと卓郎さんが表した星に願いを では、音数を減らしのんびりと繰り広げられる演奏が心地よい。

 

情熱的な原曲と大きく変わり、ダウナーでどこかダークで不穏さのあるような曲調に生まれ変わったハートに火をつけて がまた意外なアレンジ。歌のメロディーがとにかく目立つことで、少し歌謡曲っぽさが強まったようにも感じる。後から卓郎さんが語っていたが、このアレンジは和彦さんによるものらしい。そんな紹介を受けると、いやいやいや…と言いたげなリアクションを取る謙虚な和彦さん。

 

そして最後の太陽が欲しいだけ 原曲では凄まじいエネルギーを放っているこの曲、跳ねたリズムとカラッと明るい曲調がとても多幸感があり、穏やかな楽しさで会場を包む…

という空気だったのでしょうか、全体的には。私もそのつもりで楽しく聴き始めていたのですが、この曲、このアレンジ。2年前にツアー“太陽が欲しいだけ”の、中止になった長野公演 その代わりのアコースティックライブで披露されたアレンジとほぼ同じだったんですよね。

その公演は、2年前の野音の直後だった。

あの時に、あの状況で出来る限りの事をして楽しませてくれた、そんなライブで披露されたアレンジを、この晴れ舞台でまた聴けたという嬉しさと感慨深さに、少し視界を滲ませながら聴いていました。こんなに粋な選曲してくれるなんて…と。

 

ライブ中の雰囲気と同様にMC中も非常に穏やかで、卓郎さんがうっかり喋りすぎそうになって自分で止めていた場面もあった。

「かみじょうくんが登場して、みんな立ち上がるかと」思ったらしい卓郎さん。結果は全員着席のまま、という事で、これには驚きだったようだ。

よくある「新人バンド」設定(何せこれがAC 9mmの初ライブである)で「9mmさんに曲と胸をお借りして…」なんて卓郎さんが言ってみせたり。

 

白い球体がいくつか集まったような不思議なドラムセット、かみじょうさん登場の後に球体の色が微妙に変わったのが見えたので、もしや…と思っていたらやはり球体が光るドラムセットだった!日が落ちる前だったので、分かり辛かったのが惜しかったけれど、MCの途中で話を振られて光らせてみたり、激しくカラーチェンジさせたりしていました。その時にかみじょうさんが思いっきりどや顔をしていて卓郎さんにつっこまれたり、驚いたようなおどけた表情をされていて、演奏中は淡々とした表情なのにこういう時に思いっきり表情豊かになるかみじょうさんを観てこちらも思わず頬を緩めてしまう。

 

アコースティックだけれどこのような編成で、時に卓郎さんはアコギを歪ませソロを弾いたり、和彦さんもベースでコードを弾くような感じだったのが3人とは思えないようなどっしりとした音を生み出していたり(MC中に和彦さんが手首をばたばたと振っていた時があったので、それなりに負担はあったんだろうか) 去年あたりにかみじょうさんが「ジャズドラムを学んだ」と仰っていたが、もしかしてこのアレンジに繫がったのか…と途中で気付いて喜び。

アコースティックだけれども穏やかなだけはなく、長年慣れ親しんだ9mmの曲たちの新たな一面を見ることとなった。5月の爽やかな陽気がぴったりで、この時期に野外で聴けた贅沢さ。まだまだ知らない一面がたくさんある、観ながらそんな事を思っていたらより嬉しくなった。

 

 

AC 9mmが終わるとすかさず転換へ。

何と“CHAOS  IN 100 YEARS”の幕の後ろにいつもの機材が隠れており、次々とお馴染みの機材が登場するという早業。

ひと通りの準備が終わり、だんだん暗くなってきた野音に「Digital Hardcore」が鳴り響く。いよいよ9mm!!

順番に出てくるメンバー、最後に滝さん…滝さんだ…大歓声が爆発する。

 

 

9mm Parabellum Bullet

 

The World

Mr.Suicide

Lost!!

Supernova

Story of glory

I.C.R.A

Vampiregirl

キャリーオン

Everyone is fighting on this stage of lonely

生命のワルツ

Scenes

Termination

Talking Machine

新しい光

 

Black Market Blues

Punishment

 

 

ど頭からThe Worldという初期曲を入れてきたこの時点で、もう既に「特別感」が出ていたような気もするし、「あの頃の9mm」が帰ってきたようでもあった。滝さんは今まで見たことのない、黒いレスポールタイプのようなギターを弾き始める。

続いてはもう本当に久々のこの曲、でもライブアレンジのイントロが何一つ変わっていない!Mr.Suicide!!

初期らしい爆裂っぷりと儚い美しさが混じったこの2曲を野外の開放感の中で聴けた、過度な感慨深さのせいではなく、ただただ曲が美しかった、それだけでもう目頭が熱くなった。

 

Mr.Suicideから間髪入れずにLost!!へ、という繋ぎ、熱すぎる展開に大いに熱狂し、

その次は先日ビバラでも披露されたSupernova ギターが3人いるので、印象的なリフはトリプルリードのアレンジという贅沢さ。この時既に薄暗くなり、「満月」ではなかったけれど、下手側の上空には月が輝いていた。まさか本物の月を眺めながらSupernova聴けるとは…と感激していたので最後はステージもあまり観ず、

“満月の向こうで 満月の向こうで

満月の向こうで神は見ていたの?”

の一節を聴きながら月を眺めていた。その後は薄曇りといった空模様だったため月も隠れてしまい、Supernovaの時だけこんなにもよく月が見えていたことが奇跡的にも感じられた。

 

続いてStory of glory この1年間にあった出来事に思いを馳せながら聴くと、余計に今の9mm自身を歌っているように聴こえる。

“わけなんてなくて笑っていた

おれたちは今夜無敵なんだ”

と、絶叫するように歌ったのは滝さん!!!

滝さんがこんなに力強く、無敵なんだ!!!と叫んだ、それが言葉にならないくらい嬉しかった。

 

次もBABELからI.C.R.A  ここでやらないでどうする、と言いたくなるくらい、会場の規模が大きければ大きい程映える曲、だから嬉しいセトリ入り。間奏のタッピングは為川さんが見事に弾ききる。滝さんはここでライター奏法を披露。

同じくこの大人数で圧巻の大合唱を巻き起こしたVampiregirl かつて定番曲としてたくさん聴いてきたこの曲も久々に聴いた気がする。ギターが3人いるから最後のサビでは音源を再現するかのように演奏。

 

 

ここで卓郎さんが武田さんを呼び込むと、登場した武田さんが為川さんとステージ上でハイタッチして交代。

数日前のLINE LIVEにて予告されていた通り、新曲をここで披露。

BABELの選曲から漏れた、という話も何となく分かるような、相変わらず重たいけどそれ以上に爽やかさもある曲。

“キャリーオン やぶれた夢をつないで”

というサビの一節がまるで今の9mmをそのまま歌っているようだった。

 

Everyone is fighting on this stage of lonely  去年この曲を演奏していた時には、最後のコーラスをかみじょうさんが担当していた。しかしこの日はドラムセットにコーラス用のマイクは無かった。その代わりに頼もしい歌声を響かせたのは武田さんと、滝さん。

かみじょうさん、やはり去年は滝さんの代わりを担っていたんだ。かみじょうさんのコーラスがなくなったのは少しだけ寂しくもあるが、滝さんが帰ってきた実感がまたここで湧いてきて嬉しくなった。

 

原曲のアコギのイントロが音源で流れてから演奏に入った生命のワルツ、これは2年前の野音と同じ。その時は1曲目だった。アウトロでは和彦さんが思いっきり勢いをつけぐるぐると回る。キャリーオンからこの生命のワルツまで、「前に進む」姿勢や生命力に溢れた曲を並べてきた、これが今の9mmの意志を表しているように聴こえてならなかった。

 

そんな前向きな流れから次はかなりのレア曲、Scenes

“また会おう かならず”   の一節が頼もしい。

“燃えるように赤く舞い散る花びら”

の歌詞通り、温かみのある赤い照明、幾つもの四角が花のような模様を描き出す。それが一転、

“雪のように白く舞い散る花びら”

からは真っ白く変わり、ステージの壁に水玉を描く様が見事だった。

 

Terminationではサビの大合唱、間奏でソロを弾きながら最終的にステージを元気いっぱいに転げ回る滝さんの姿。ステージの上で思いっきり動き回る滝さんが、遂に、帰ってきた!

この曲の

“最後の駅の向こう 何から始めよう”

という一節が大好きで、それは退廃的な雰囲気があるこの曲に、最後の最後に少しの希望を持たせるような言葉だから。

この日に聴いたこの一節はこれからの9mmが見据える確かな希望を表しているかのように聴こえた。

 

Talking Machineのいつものイントロ、いつも通りマラカスを手にする卓郎さん。いつも通りの光景…かと思いきや、滝さんが卓郎さんからマラカスの片方をもらい、ふたり一緒にひとつのマイクの前で一緒にマラカスを振るというまさかの展開!細かい表情は見えないものの、卓郎さんと滝さんの楽しそうな様子はよく伝わってきた。

トーキンでの照明、細かな光の粒が上へ上へと上がっていくような。ステージ床に置かれたミラーボールはこの為のものだった。光の粒がステージいっぱいに広がる美しさ。ミラーボールをこんな風に使うんだ!!という驚き。

トーキン2サビの前、“何べんやっても”で和彦さんと滝さんがぴったりのタイミングで飛び上がる。かつてはこれもお馴染みの光景だった。しかししばらく、この光景すら観ることは叶わなかった。ようやく、ようやく観られた…これが観たかった!!

 

本編ラストの新しい光では卓郎さんに煽られるとこの日一番の大合唱が巻き起こる。最後にはまるで祝砲のように放たれた金テープがすっかり暗くなった夜空を彩った。

 

 

 

アンコール、メンバー4人と武田さん、為川さんと全員ステージに出てくる。事前に「6人では演奏しない」と告知されていたが、6人で演奏が始まる。

BMB、卓郎さんが「日比谷野外大音楽堂にたどり着いたなら!!!」と歌詞を変えて歌う。武田さんも為川さんも隣に並んで楽しそうにギターを弾き、時には滝さんがそれに加わる。

 

そしてこの無敵の6人編成でのラスト…静かなイントロが鳴り響き、滝さんの爆速カッティングが炸裂する!間違いなく9mm史上最強の、6人でのPunishment!!

曲に入る直前、滝さんが卓郎さんと何やら確認を取るように顔を見合わせていた。もちろん声も聴こえず、細かい表情も分からない。でも「いけるよ」と言っているように、見えた。ほんの僅かな瞬間で、もしかしたら思い違いかもしれないけれど、こんな瞬間でさえ嬉しかった。

間奏ではかみじょうさん以外の5人がステージ前方に並んで弾く圧巻のほぼBABELスタイル、また滝さんがソロを弾いた時だったか、無数のスポットライトが一気に滝さんを照らす。この時の滝さんのギターヒーローっぷり…暴れ回りスポットライトが大体外れる滝さんだから、これは貴重な光景だったかもしれない。

 

 

曲が終わると卓郎さんが

武田将幸!為川裕也!中村和彦!かみじょうちひろ!(「かみじょう」で噛んでしまって痛恨のやり直し)菅原卓郎!滝善充!!とメンバーの名前を順番に呼ぶ。言わずもがなではあるが、今やサポートの武田さん、為川さんも大事な9mmメンバーであり、全員でこの歓喜の公演を締めくくった。また割れんばかりの大歓声が巻き起こった。

 

滝さんはいつものように真っ先にステージから消えていったが、どこかやりきった表情に見えた。卓郎さんは上手、下手、真ん中、前も後ろもまんべんなく、丁寧に客席に向かって手を振ったり、笑顔を向ける。和彦さんもピックを投げまくりながら同様にゆっくりと挨拶をしてゆく。かみじょうさんはスティックを何本も客席に投げ入れ、Tシャツの両端をつまみながらバレリーナのようにエレガントな挨拶をし、ステージを後にする。

 

 

終わった。無事に、野音公演が終わった。

 

滝さんが全16曲を完走した。

まだ大変そうなところはサポートのおふたりに任せ、それでもここぞというところは台の上に立ったり、前に出てきたり、動きまくり転げまわりながら全部、弾き切った。

昨年の7月にはわずか2曲、それが12月には9曲を弾き、そして今回16曲も。正直、予想よりも遥かに早く、滝さんが復帰してきている。まず、それにとても安心した。無事に終わった。終わった後に安心して完全に力が抜けてしまった。じわじわと嬉しさがこみ上げてきた。滝さんが、帰ってきた。

 

卓郎さんはMCで「新しい伝説作ろうか!」と言っていた。野音の少し前には「リベンジではない」とも言っていた。本当に「リベンジ」なんかじゃなかった。因縁のステージを、あの時の何倍も素晴らしい景色にすっかり塗り替えてしまった。

 

セトリ全体を見てみると、どこまでも前向きなメッセージが込められているようにしか見えなかった。

去年から卓郎さんが言い続けていた通り、9mmはもう前に進むことしか考えていない。

何せAC 9mmの1曲目から

“はじまったんだ 何言ってんだ 終わりじゃないのさ”と宣言して始まったのだ。

 

ここ2年間で聴けなかった曲がたくさん演奏された。間違いなく、BABEL曲まで弾きこなすサポートのおふたりのお陰だ。ギター3本の5人編成は、結果的に原曲を再現するようなツインリードやそれ以上のアレンジが可能になり、単純に既存曲の表現方法が増えた。これまでのアコースティック編成の経験から、AC 9mmという新しい表現方法を手にして、更に演奏できる曲が激増した。

大変な2年間だったことは間違いないけれど、9mmがこの2年間で得たものはこんなにも多かった。それを実感できたライブでもあった。

 

最後に、卓郎さんが中盤で言ったこと。

「もうダメかもしれない。やめようと思った。その度にライブで見てきたみんなの顔が浮かんできて、考えるのをやめた。」

言葉は多少違うかもしれないが、卓郎さんはこんな言葉を客席に投げかけてきた。

 

2016年、満身創痍の状態で客席に向かって「助けてくれ」と言いながらステージに立ち続けた卓郎さん。

2017年、9mmを止める可能性があったことを明かしながらも、「9mmを続けるんだ」と言いながらステージに立ち続けた卓郎さん。

そして2018年。以前のように弱音を隠すことがなくなった。それはもう人前で言えるくらい、今は「大丈夫」だということ。卓郎さんがすっきりしたような笑顔で、この言葉を言った瞬間が、強く目に焼き付いている。

 

卓郎さん、2年前のあの時から、客席に向かって、ファンに向かって、何度も何度も感謝の気持ちと優しい言葉を投げかけてくれた。自分たちがどんなに大変な時にも、こちら側への気遣いの言葉を口にしてくれた。

(ちなみにこの公演、チケットのとあるトラブルが発生してしまった。それが発覚した時にも卓郎さんはすぐに、「だいじょうぶ」「一緒に楽しもう」と気遣いの言葉を下さっていた。)

 

野音公演の後からこの日に披露される新曲が9mmからの「プレゼント」として無料ダウンロードできるようになることが発表されていた。嬉し過ぎるプレゼントを、ライブと同じくらい楽しみにしていた。

ところがライブ中盤、何とこの新曲を来場者へのお土産に、CDとしてプレゼントするという更なるサプライズが発表された。形は何であれ新曲を聴けるだけで嬉しい、でもやはりCDとして手元に来ることはもっと嬉しい。

 

本当は、感謝の気持ちを表したいのはいつだってこちらの方なのに。でも、ただのファンなので何ができるわけでもない。それが当たり前で、ただ9mmの曲を聴きライブを観続けることが唯一できることだと思っていた。

それだけに、卓郎さんのこの言葉は、ただライブを観続けていたことがほんの僅かでも力になれたのか、とおこがましいことは分かっていながらも嬉しかった。本当に優しい、卓郎さん。優しいバンドだ、9mmは。

 

 

卓郎さんの言葉通り、間違いなく伝説の一夜になった。

その瞬間が目の前で繰り広げられていたこと、その瞬間に立ち会えたことが感無量です。

 

でもこの公演も、やがてこれからの9mmの中で輝かしい出来事のひとつ、あくまで“歴史のひとつ”として記憶に残るライブとなるのでしょう。だって、9mmはこれからもっと「最高」と「無敵」を更新し続けるのだから。

9mm Parabellum Bullet「BABEL」2017/05/10

 

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2016年11月5日、豊洲PIT

ツアー“太陽が欲しいだけ”追加公演終演直後に突然告知されたアルバム

それが9mm7枚目の、後に「BABEL」と名付けられることとなるアルバムである

 

 

収録曲全10曲、すべてが新曲。最近のアルバムではメンバー全員が作詞作曲に携わっていたが、今作は全曲作詞を卓郎さん、作曲を滝さんが担当。しかも滝さんがかなり作り込んだほぼ完璧なデモを作り、それを元に制作されていること、歌詞も滝さんが卓郎さんにイメージを伝えてから書かれた、というだけにアルバム全体の統一感はこれまでの音源の中で一番だと言っても過言ではない。

 

収録曲がまだ解禁される前、卓郎さんは今作について「岩の塊」と表現したり、リリースが近づくにつれてライブで毎回のように「きっと初めて9mmを聴いた時のように驚く」と仰っていた。

初期9mmが“速い、暗い、日本語”というコンセプトだった、などと聞いた覚えがあるのを思い出し、これまでの曲を超えるような激しくて分厚い音のアルバムなのだろう、と期待をしていた。

実際、豊洲で観たアルバム告知映像で流れていた新曲と思しき一節はかなり激しそうなサウンドであった。

 

ところが、今作の中で最初に解禁されたのが5曲目の「眠り姫」で、卓郎さんが今作を言い表した言葉“岩の塊”というイメージが全く浮かばず、次いで解禁された4曲目の「ガラスの街のアリス」も激しいところはあれどイメージ的には岩というよりもそれこそ繊細な工芸のような美しさもあり、どういうことか…と思っていたがいざ全曲聴いてみると実はその他の曲が激しかった、という。それを狙ってこの順番での解禁になったのかは分からないが、リスナーを驚かせるには最も効果的だったのではないだろうか。

 

音についての第一印象は予想通り、いやそれ以上にやはり分厚い音であったこと、特にギターについてはアルバムの1曲目のイントロからけたたましいタッピングで幕を開け、その後もタッピングが多用されていたり、ギターに関しては前作「Waltz on Life Line(以下WoLL)」の「火祭り」で登場した“ライター奏法”や新たに出てきた“ガムテープ奏法(後述)”などのぶっ飛んだサウンドが多々あり、滝さんが現在腕に不調を抱え9mmのライブをお休みしている状況だなんてとても信じられないような完成度である。ライブで観ると、これまでもただでさえ手数の多かったドラムが更に複雑になっているように感じられるあたりにもこのアルバムのエクストリームさが出ている。

 

歌詞について。最近の9mm曲は力強い言葉、前向きな表現が多くなってきた印象だったが、今作はその系統の歌詞もありつつ迷いや苦悩を連想させる言葉が多く、じっくりと読んでみると、若者のやりきれなさが滲み出ているようだった「Termination」あたりの詞に近いような、そんな気がした。

ただ今作の歌詞は読めば読むほど、ライブで実際に聴けば聴くほど多くの箇所について、これは9mm自身について歌っているのではないか、としか思えない言葉が多く、どちらかというと抽象的な表現の多かった初期とはこの辺りで違いがある。

 

そのような特長があり、アルバム全体から烈々たるエネルギーを感じさせる今作を卓郎さんは自信をもって「初めて9mmを聴いた時のように驚く」と表現されたのでしょう。

9mmと出会った時から一度も離れず聴き続けているファンにはもちろん、初期に9mmと出会い、何らかの考えがあって現在は9mmと距離を置いている人が聴いても少なからず驚きや衝撃があるようなアルバムなのではないかと信じている。そういった人達が音源か、それともどこかのライブか、フェスか、とにかく何らかのきっかけで今作を耳にする機会を持ってもらう事ができたら、と願って止まない。

 

 

リリースから既に半年以上が経ち、もう何度もライブで聴いてきたので今では冷静に聴くことが出来るようになったが、実はリリース直後、今作を聴いて真っ先に受けた印象は

「怖い。何だか分からないが怖い。」

というものだった。

 

自分でも理由はよく分からなかったが、曲たちを構成している音の一つ一つは確かに慣れ親しんだ「9mmの音」なのに、何だか得体の知れないものを覗き込んでいるかのような、体の中をじわじわとどす黒い何かに侵食されるような、思い出してはいけない何かを引っ張り出されるような。

聴き始めて最初の一週間は完全にアルバムの雰囲気に呑まれ、普段のように歌詞やパート毎の細かいところに集中することもできなかった。

それと同時に、もう10年近く聴き続けているバンドの新譜で「怖い」と思える程の衝撃を受けるなんて凄いことだ、本当にとんでもないバンドだと実感しそれが素直に嬉しくもあった。

 

理由が分からないままリリース1ヶ月後からツアーが始まり、実際にアルバムの世界観を耳からだけでなく視覚からも受け取ることで得体の知れない怖さの正体が何となく掴めてきた。

それは卓郎さんがツアーのMCで、今作について

「BABELはおれたちの喜びや迷いや苦しみもすべて入っている」

と仰っていたから。

 

やはり卓郎さん自身や恐らく9mmが置かれた現状についての苦悩が少なからず取り込まれていて、9mmを観続けてきた身として昨今の9mmから感じていた僅かな不安と、元々の自分の思考がかなりそれに影響を受け、漠然とした怖さを感じていたのだろう、と結論付けた。

この怖さは9mmが困難な中でこんなに素晴らしいアルバムを作れた、という卓郎さんの言葉や、聴き続けるうちに不安の中にも僅かな希望を感じられるようにもなった。

 

 

アルバム全体については以上です。

以下、主観とライブで聴いた感想も交えて1曲ずつ。

 

  1. ロング・グッドバイ

いきなりけたたましいタッピングから始まり、一聴目から驚かされた曲。また、別れを連想させることから聴く前には若干動揺しかけましたが聴いてみるとむしろ始まりを想起させる曲だった。

「旅に出かけよう」の部分で入ってくるベースのスラップと最後のサビに入る前のだんだん大きくなり突き抜けるようなスネアの音から(9mmの曲ではしばしば登場する)ギターのナットとペグの間の弦を鳴らす「キーン」という音、更に畳み掛けるように入ってくるドラム、の流れがとても好きなところ。

「TOUR OF BABEL Ⅱ」で滝さんが9mmライブに一時復帰した時に演奏された曲で、滝さんがギターを弾く隣で卓郎さんが「僕には君がいれば何もいらなかった」と歌った時には言葉にならないくらいの嬉しさがありました。また、毎回最後のサビで一際力を込めて卓郎さんが「すべて壊してやるのさ」と歌うのがまるでこの困難な状況だって打破してやる、と言っているように聴こえてならない。

 

  1. Story of Glory       

これは聴いた瞬間に今の9mm自身のことだ、と思った曲のひとつ。ただ、「さえない栄光」という部分は決して当てはまらないけれど。その「さえない栄光の日々に」の部分で鳴るファンファーレのようなギター、「僕らは確かめた 風の中で」の部分での、パンク的なリズムにゆったりしたメロディーが乗っているあたりに貫録のようなものを感じる。

ライブで聴く「おれたちは今夜無敵なんだ」の部分では本当に9mmが無敵に見えるし、「ステージに刻まれたいくつもの奇跡を 思い出して 終われないって」の一節は今作に怖さを感じていた時にも9mmはきっとまだまだ終わらないんだ、と思わせてくれた。

(余談ですが一聴目はサウンド的にはjammingに近いなとつい思ってしまって、面白いな、と。)

 

3.I.C.R.A

全体的にシリアスな今作において、一番コミカルさのある曲。タイトルもサビの「愛し合え」から取っていて。この「愛し合え」がライブだと大合唱になって、あれだけの大人数で「愛し合え」って叫ぶ痛快さ。

間奏では凄まじいタッピング、Cメロでは前作WoLL収録の「火祭り」で異彩を放っていた、100円ライターをスライドバーのように使う「ライター奏法」、更にアウトロの和彦さんのシャウトの裏では弦の上にガムテープを張り、それを引っ剥がしてノイズを出した「ガムテープ奏法」によるユニークな音が詰まっているあたりが面白いところ。

個人的に好きなのはサビの「おやりなさい」の「さい」の部分の卓郎さんの伸び伸びとした歌い方。

 

  1. ガラスの街のアリス

近未来的というか、無駄のないシャープさがあり、歪んでいるのに透明感のようなものを感じる。4つ打ちに近いリズムがとっつきやすさもあり、フェスやイベントでもとても盛り上がっていました。

イントロ、タイトなギターのスタッカートとシンバルミュートから始まりツーバス連打へ、からしなやかなメロディーに続く。ライブではかみじょうさんがシンバルをミュートするところが大好きで、このイントロは決まってドラムに目を向けがち。個人的には是非そこに注目して頂きたいです。

最低限の登場人物と物寂しさや儚さを感じさせる言葉が並ぶ歌詞がさながらショートフィルムのよう。

「君」が「砂」になっても愛し続ける「ぼく」も、「最後の砂」になっても愛される「君」も、なんて美しいのだろうか。。

 

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  1. 眠り姫

今作で最初に解禁され、事前情報からのイメージとあまりにかけ離れたサウンドに驚かされた曲。

ゆったりとしたテンポと、9mmにしては激しい起伏があまりないリフ。その中でも太い音が目立つ、これまたゆったりとしたベースラインがうねる。

淡々と進んでゆくような前半。しかしライブでかみじょうさんの手元を見ると(ドラムは詳しくないので見たままの感想ですが)実は複雑な動きをしていたことに驚きました。間奏は夢現のような、鬱蒼とした場所に迷い込んだような深いリバーブが重なり、ホールツアーではリバーブのサウンドが会場全体を包み込むようだったのが幻想的にも思えた。その直後、現実を叩きつけるかのようにだんだん音が盛り上がってゆき、何かが迫りくるかのようなドラムの怒涛の3連符へ繫がる曲展開。ここが個人的には好きなところ。

 

この曲は初めて、歌詞を先に書いた曲とのこと。

寓話のような歌詞に込められたテーマは「原子力発電」だという。かつて9mmは「NO NUKES」にも出ていたので、この話題についてどういう思いを持っているのかは察するに難くない。

ただ、やわらかい表現を使って遣る瀬無さや行き場のない思いを感じさせるところ、特に「眠りたい 君を抱いて」という一節が単純に“排除”や“拒絶”で片付けるのではなく根本的にどう向き合えばいいのか、に目を向けているような気がしてその視点がとても卓郎さんらしいな、と思った。

 

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  1. 火の鳥

眩い、神秘的、荘厳。

曲が始まってしばらくは大空を舞うような悠々としたイメージ、続くツーバス、チャイナシンバル連打とギターのタッピングの音が煌めく。サビの凄まじい開放感は雲間から差し込む強い陽光のよう。2番の歌の裏で鳴る異国風の響きのリフも荘厳さがあり、まるで人の力ではないようなものを感じさせるような神秘的な曲。そんなことを初めて聴いた時に思いました。

サビ前の4小節、“ダッ、、ダダッ、、ダダダッ、ダダダダッ”と八分音符ひとつ分ずつ増やしながら、卓郎さんギター、ベース、ドラムが同じリズムを刻むところ、あの高揚感が堪りません。

ライブでも終始キレのある演奏で、最後の一音をスパッと止めた後の一瞬の余韻と静寂がまたとても良い。

ちなみに「TOUR OF BABEL」の神奈川と神戸では原曲通りのキーで演奏されましたが、名古屋公演以降は全て半音下げのキーで演奏されています。ボーカルのキーが高かったからなのか…。「眠り姫」も半音下げチューニングなので、ライブでは続けて演奏されることが多い。

ロッキンにて、晴天の野外で聴いた時の突き抜けるような開放感は今でも鮮烈に思い出せるくらい、素晴らしかったです。

「奈落に生まれ落ちた火の鳥よはばたけ」という一節につい9mmを当てはめて聴いてしまう。「輝かしい日々へと」もの凄いエネルギーを放ちながら活動を続けた今年の9mmを。

 

  1. Everyone is fighting on this stage of lonely

「太陽が欲しいだけ」豊洲PIT公演終了直後に会場で公開されたアルバムリリース告知の映像で流れていたのがこの曲のイントロだったので、厳密には最初に解禁されたのはこの曲。(YouTubeで公開されている映像は「太陽が欲しいだけ」に差し替えられているので、会場で観た人だけがいち早く聴けたということになる)

全体的に重たいパンチを繰り出すかのようなアレンジが9mmらしい。Aメロでの壮絶なカッティングが切羽詰っている感を出し、サビでたっぷりと音を伸ばしながら歌う「戦え」の一言が強大な何かに立ち向かう時に気持ちを鼓舞する。既発曲の「ラストラウンド」を彷彿とさせるがあの曲の歌詞よりも更に追い詰められた状況を歌っているかのよう。

間奏のツインリードからは若干哀愁のような感じもあり、挫折を乗り越えて最後のサビに向かうようなドラマチックな展開。壮大さのある最後のコーラス、ライブでは何とかみじょうさんも歌っています!間違いなく2017年の9mmにおける重大な出来事です。

「君の勝利を誰も望まなくても 生き残れよ」と、ただ戦うのではなく“ただひとりで”戦う事を肯定してくれることが、どれだけ嬉しく、どれだけ頼もしく思えたことか。

 

  1. バベルのこどもたち

事実上の表題曲。今作を聴き始めた頃に「怖い」と思っていたのは恐らくこの曲の影響が一番大きい。

イントロから不穏な空気が漂い、音の壁が迫りくる、Aメロでまた不穏な空気に戻る。

Bメロで、ドラムが複雑なリズムを繰り出し次いでギターとベースが揃って同じフレーズを弾く部分の、ドスの利いた低音が音源でもライブでも毎度聴き惚れるところ。

積み上げたものがいとも簡単に崩れ、路頭に迷い、見放された哀しみ、そんな感情に徐々に引っ張られていって間奏へ。間奏の音圧は音源でも充分迫力がありますが、ライブでこの曲と対峙した時には思わず立ち竦む程に圧倒されました。この部分の凄まじい音圧とここで入ってくる和彦さんの渾身のシャウトに絶望感を叩きつけられたような気分になってものすごい力で曲の中に一気に引き込まれるような感覚。

最後のサビからは何もかも崩れ去った後の僅かな希望を感じさせるようにも思えます。

詞も音もとにかく重く、間違いなく今作の核を担うこの曲、今年フェスやイベントでも何度もセトリに入りました。勿論ファンとしては嬉しいけれど、ライト層のリスナーにとっては初見で聴くのは重た過ぎることも想像できるはず。勝手な憶測ですがそれでも何度もセトリ入りしていたのは、出来る限り多くの人にこの曲を、「BABEL」という素晴らしいアルバムを届けたかったのではないか、と思っています。

 

  1. ホワイトアウト

重厚な「バベルのこどもたち」から一転して優しげな歌声、エレガントでノスタルジックなギターソロ。

前曲との対比で一層繊細さが際立っています。

寂寞感のある歌詞は読んだまま受け取ると別れや過日を惜しむ曲、しかし演奏する本人たちのことを思い浮かべると全く違う意味にも捉えることが出来る気もします。

最後のサビの前、「どれだけ昨日が」の部分、優しげな歌声と繊細なクリーンパートの掛け合いが美しい。

ライブでは真っ白な照明や、会場によってはミラーボールを使いさながら雪景色のようになり、ホールの大きな空間がこのエレガントなメロディーと雪景色で包まれた際には息を呑む程の美しさでした。

 

10.それから                         

土砂降りのように音が降りそそぐイントロ、邪悪なリフと終始モノローグのような歌詞で綴られる。

ライブではまた独特な空気が流れ、「悪魔のささやきは自分の声でした」で切れかけた電球が点滅するようなスポットライトを浴びながら、その後も歌詞を手振りで表現しながら歌劇のように歌う卓郎さんに、えもいわれぬ迫力を感じるようでした。心の「上澄み」だけで「浮かれた世界を沈めていく」程の陰鬱さを抱えた歌詞と中盤の語り口調のモノローグから、最初は気が狂う寸前の人のイメージすら思い浮かんでいた程。

様々な解釈の余地があるとは思いますが、聴き進めてゆくうちに救いの曲のように聴こえるようになった。

それは

「何が降ろうが逃げられないなら わたしはあなたと濡れていたいのさ」

「どんな未来が待ち受けていても わたしはあなたと苦しみたいのさ」

「どんな未来が待ち受けていても わたしはあなたと乗り越えたいのさ」

これが、今の9mmに完全に重なって聴こえるから。

 

 

 

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2016年後半、9mmは満身創痍だった。

 

 

周知の通り、滝さんの腕の不調により9mmは“いつも通り”のライブができなくなった。

ツアー前半は中止(結局アコースティックという形式で全箇所廻ったが) 、またツアー後半はサポートギタリストやゲストバンドを迎えて何とか開催できた。

ツアーが終わったら、2017年になったら、9mmは活動を休止してしまうのではないかという不安を抱えながら迎えた追加公演にて、まさかのアルバムリリースが発表された。

その時のあまりの驚きと嬉しさは、1年以上経った今でも忘れることはできない。

 

その数日後、滝さんが当面9mmのライブ活動を休止すると発表された。

アルバム告知で吹っ飛んだはずの不安がまた帰ってきた。

 

2017年に入り、出演するライブの告知がどんどん増え、9mmの活動は例年と変わらないペースで続いていた。他バンドのツアーにも積極的に出演しているようだった。滝さんがお休みしていても、今できる限りの活動をしていくんだな、とまた少しずつ安心できるようになった。

サポートギタリストを迎えてライブを続け、TOUR OF BABELからは各所で盟友ギタリストを2人ずつ迎え、ステージ上手前方にドラムセットを移動させた編成、通称「BABELスタイル」で多くのライブに出演した。

今年、最もサポートを務めた武田将幸さん、為川裕也さんを始め三橋隼人さん、そして石毛輝さん、辻友貴さん、西堀貴裕さんといったスーパーギタリスト達のサポートもなくてはならない存在だった。

 

 

その一方で3月、イベントに出演した卓郎さんがMCで突然話し始めた「去年活動休止も考えた」という話で、頭が真っ白になった。

それから卓郎さんは、時折同じような話をすることがあり、TOUR OF BABELの名古屋公演では、「(ツアー“太陽が欲しいだけ”名古屋公演の)ライブ中に“もうダメなんじゃないか”と思ってしまって」という話まで出てきた。

あの野音以降、私の記憶にある卓郎さんは、サポートしてくれる多くの仲間たちに「力を貸してくれ」と言うだけで、弱音は吐かず、フロントマンとしてステージに立つ頼もしい姿だけだった。もちろん、状況から考えると当然と言えば当然、だが2016年の9mmが予想を遥かに越える深刻な状態だったことを、知ることとなった。

 

 

一時期はそんな状態だったにも関わらず、9mmは立ち止まることを選ばなかった。

滝さんは9mmメンバーで居続けることを選んだ。

 

 

滝さんの代わりに卓郎さんがソロを弾き、和彦さんもベースで滝さんパートを弾き、かみじょうさんはコーラスを始めた。メンバー・チーム一丸となって「BABEL」の世界観を出来る限りの方法で表現し続け、滝さんの帰ってくる場所を守りながら戦い続けた。

 滝さんは9mmのライブは休んでも、それ以外のできることは何でもやっている、そのようにしか思えないほど積極的に活動を続け、7月には9mmライブへの一時復帰を果たした。

 

2017年を思い返すと、9mmはこれからも9mmを続けるのだと、今年完成した「BABEL」という素晴らしいアルバムで、また各地のライブで、宣言し続けた1年だったように思えてならない。

Story of Gloryで「ちょっとだけほっとして吐いた弱音」という一節が出てくるが、

9mmが活動を続けることしか考えていないからこそ、今になって活休も考えたと話せるようになったのだろうなと思うたびにこの一節を思い出す。

 

7月に9mmに一時復帰した滝さんが、年末に再び帰ってくる。

新年を迎えたらすぐ、何やらお知らせがあるらしい。

 

ただ活動を続けてくれることが、どれだけありがたいことか。

「来年の悪巧みを考えている」と、すぐ先の未来の話が出てくることが、どれだけ嬉しいことか。

 

思い返せば本当に苦難の道程だった。それでも9mmは乗り越えた。

乗り越えた先に「BABEL」という最高傑作があった。

もう9mmは大丈夫だ。

 

 

 

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