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最後の駅の向こう

何でもすぐ忘れる人の特に記憶に残しておきたいライブの簡易レポートと趣味のレビューの予定。あくまで予定。

KEYTALK「PARADISE」 2017/03/15

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KEYTALKがオリコンウィークリーチャート2位を獲得した

 


4枚目のフルアルバムで勝ち獲った快挙である

 




ここ数年のKEYTALK人気は重々承知していたけれど、ここまではっきりとした数字で提示されるとやはり驚嘆の一言に尽きる。

メンバーの皆様、KEYTALKに携わる全ての皆様、本当におめでとうございます。

 


ところで、「KEYTALK」についてどんなイメージをお持ちですか?

 



以下、ディスりではなく事実として淡々と書いてしまうがここ数年で爆発的に若いファンが増え、ファン層にかなりの偏りがあるのは否定できない点、また良く言えば賑やかな雰囲気のPVや各媒体での取り上げられ方(何処とは言いませんけれども…)から、曲は知らないが何となく聴く気が起きない、といった偏見を持たれて避けられている面があるのも否定できません。

勿論、そんな目で見ている人がばかりではない事、たまたま自分がそういう声を耳にする機会が少なからずあった事、どのバンドにもイメージ云々の話は付き物だという事は承知しています。

しかし若いファンが増えるのはこれから長く聴き続けてくれる存在として非常に有難いこと。
目を引くPVや各媒体でのキャッチーな取り上げられ方は強い印象を与えることで記憶に残りやすいし、知名度を上げるには充分すぎる効果があったのは今回の結果が証明している。
たとえ良い曲を量産しようが、まず存在を知って貰わないと意味が無いのだから。


そんな状況の中、リリースされた「PARADISE」は、各メンバーで曲数に差はあれどメンバー全員が作詞作曲を手掛けた全17曲を収録。

思えば1年前にリリースされた2枚のシングル「HELLO WONDERLAND」と「MATSURI BAYASHI」が大変素晴らしかった。それぞれにメンバー4人の手掛けた曲を1曲ずつ、計4曲ずつ収録したこの2枚は自由に伸び伸びと制作されたことが窺えるような多彩な曲で構成され、この2枚を合わせて1枚のアルバムにしてしまってもいいくらいの作品だった。

(「HELLO WONDERLANDでは歌詞に意表を突かれる巨匠作のただひたすらにかっこいいパンクナンバー「One side grilled meat」、「MATSURI BAYASHI」では初期KEYTALKを彷彿とさせるようなフュージョンサウンドが筆舌に尽くしがたいほど素晴らしい八木氏作の「wasted」が、アルバムの選曲に漏れたことが惜しいくらいの名曲です、こちらも是非に)



結果的にその流れを汲んだ今作はKEYTALKがこれまでで一番知名度が高い状況、かつ良くも悪くも、ある固定のイメージが付いてしまった今、そのイメージをひっくり返す為にもこのタイミングで出したことに大きな意味があり、きっと良い影響をもたらすと勝手ながら信じている。

KEYTALKのファンとして、「売れた」昨今の状況は素直に喜ばしいし誇らしいことである。
ただ固定のイメージが生まれつつある現状に於いては、それはKEYTALKというバンドのほんの僅かな一面に過ぎないのだと声を上げずにはいられないし、そういう姿を知っている人達が微力ながら声を上げるべきだと思う。
ある一定のイメージが定着して、彼らの本当の姿が伝わらないのが悔しくて堪らない。

 

収録曲を全て聴いてみれば、大袈裟ではなく「この曲とこの曲本当に同じ人が作ったの!?」と思わされる程なので、KEYTALKに馴染みがなくてもひとつくらいは気になる曲があるのではないか、だから先入観を捨てて聴いて欲しいアルバムだと思っている。

 

また今作はアルバム全体の流れも秀逸で、前半にパンチのある曲が並び、後半に向かう程に従ってメロディーに深みのある曲へと移ってゆく。
序盤でしっかりと掴み、そのまま飽きさせずに引きずり込んでいくような感覚。

良いメロディーにじっくりと聴き浸りながら終わると、最初の目まぐるしい展開がまた聴きたくなって最初に…と繰り返し聴きたくなるような構成。
そんな大まかな流れがありつつも曲から曲への繋がりにはいい塩梅で緩急があり、中弛みしてしまうこともない。

曲数は多いですが4分を超える曲は一つもなく、ほとんどが3分台か2分台、何と1分余りの曲すらある。このおかげで大ボリュームでありながらもあっという間に終わってしまうような感覚もある。

 


以下、主観で聴きどころをつらつらと書いていこうと思います。現状、メンバーのインタビュー等をほとんど読んでいないのでそれ違うし、とかそれもうメンバーが言ってた、とかあるかもしれないですがあくまで個人の感想です。

 



1.Summer Venus   

詞・曲:首藤義勝

アルバムの1曲目は大体テンション高いナンバーを持ってくるという恒例のパターンだな、と聴き進めいくといきなり流れるEDM、一聴目はそりゃ大いに驚きましたよ。うわぁパリピじゃん…と。笑 (ディスってないですよ)
しかし音的には何の違和感もなくEDMパートをぶっ込んでくるあたりがKEYTALKのセンスの良さ。そしてEDMパートから繋がるサビの一気に広がるような開放感!!これを狙ってやったのか?

最初はただ驚かされるばかりだったけど何度も聴くとこれが癖になる。
初っ端はこれだけインパクトがある方が良いでしょう、間違いなく記憶に残るし。にしてもはっちゃけましたね義勝さん!
ただこういうノリが苦手な人が1曲目で聴くのを止めてしまうことだけが心配ではあります。
このノリが次で早くもひっくり返るので、とりあえず次の曲に進んで頂きたい。それだけを祈る。


2.ASTRO(10thシングル 2017/01/25リリース)

詞・曲:首藤義勝

Summer Venusで意表を突いたかと思えば、次の曲は勢いのあるバンドサウンドを前面に出したナンバー。ふたりの歌声は力強く、ギターは歌と並んで遠慮なくリフを弾きまくり、いい所で入ってくるタム回しも高揚感を煽る。これ!KEYTALKってこんなにかっこいいんですよ!いきなり雰囲気を変えてくるこの流れ良過ぎませんか?だから次の曲まで進んでくれって言ったじゃないですか。

何だか夢のような歌詞のSummer Venusから一転、現実に引き戻しつつも一度は夢破れた人物が再び希望を掴もうとするような歌詞も良いです。Summer Venusの最後の歌詞が「※青春に賞味期限はございません」、続くASTRO最初の歌詞が「夢終えた深夜の岐路に」と曲調だけでなく歌詞にもかなりの落差があるけど、そのお陰で詞の切実さが強調されているようにも感じられる。「息をするように願い続ける」という一節がとても好きなのですが、それなりに年齢と経験を重ねたからこそ出た詞ではないかと。それゆえにKEYTALKと同世代くらいのリスナーには刺さるところもあるのではないかと思います。(KEYTALKメンバーと同年齢の人間の感想です)

 

PVもとても良いので貼っておきます

www.youtube.com




3.ダウンロードディスコ   

詞・曲:小野武正

 

武正さんお得意の裏打ちのリズム。個人的にいつもの裏打ちナンバーより強く惹かれるのは何故か考えると、いつもと違ってマイナーコードだからか。

独特の語感で畳み掛け展開が目まぐるしく変わるメリハリのある曲なのでこれで2分以下なのが信じられない。

2番でボーカルのメロディーをなぞるようにギターが同じメロディーを重ねているところがいいです。KEYTALKではよくあるアレンジで、ボーカルが3人いるようで聴いててワクワクするところ。

「制約と閃きの瞬間に決意して僕は僕を刺す」という詞に武正さんのセンスを感じる。

 

 

4.MATSURI BAYASHI(8thシングル 2016/05/18リリース)

詞・曲:寺中友将

 

こちらも恒例の“祭り”ナンバー。シングルだった時はずば抜けてハイテンションな感じでしたがここまでのパンチのある曲たちに並ぶと変に飛び出ることもなくいい感じにおさまっている印象。

曲中に何度も出てくるベースのスラップが全体を盛り上げ、しっかりと長さを取っているギターソロの炸裂具合がありつつうっすらと哀愁を感じさせるメロディーが存在感を放っているところが巨匠らしい。

PVだとテンションの高さがフィーチャーされているけど、曲だけだとまた印象が違って上手く言えないけど祭りの日の夕方みたいないい雰囲気というか。

“テンションの高い夏の曲”というひとつの括りでも、義勝さん(Summer Venus)と巨匠(MATSURI BAYASHI)だとメロディーの作り方がこんなに違う、と考えながら聴くとまた面白い気がします。

 

 

5.パラサイト   

詞・曲:小野武正

 

ここでアルバムの空気が一旦変わる。

巨匠の声で勢いよくザクザクと畳み掛けてくると思えばいきなり小気味よいベースのメロディーで更に空気を変え、次いで義勝さんが細かく刻むように早口で畳み掛ける。まるで巨匠の声がハムバッカーで、義勝さんの声がシングルコイルみたいだな、と前々から思っていたのですが、そんな各々の声質に合うパートを振ることで曲調の変化を際立たせているように思えます。

ふわっとした歌い方で声を重ねる「パラサイト パラサイト」の部分が不穏な空気を出していてぞわぞわする。

武正さんはギタリストとしてもコンポーザーとしても、もっと世間から評価されるべきだと常々思っています…こういう曲を聴くと改めて。

 

 

6.HELLO WONDERLAND(7thシングル 2016/04/13リリース)

詞・曲:首藤義勝

 

心なしか、この曲が一番義勝さんの歌声が伸び伸びとしているような気がします。音域的に歌いやすいのでしょうか?

KEYTALKの真骨頂とも言えるさらっと転調を入れた人懐っこい4つ打ちナンバー。なので決して単純な構成ではないのですがこのバンドとしては王道、と言うべき安心感のあるアレンジで、ひとつ前のストレンジなアレンジのパラサイトと並ぶとこちらも対比されてお互いの特長を引き立たせています。

 

 

7.秘密   

詞・曲:八木優樹

 

ここで満を持して八木曲の登場です。

終始思いつめているような詞とどことなくダークな曲調は新境地と言っていいと思うのですが多用される「パラリラリーラーパーラッパー」というミスマッチなフレーズで肝心なところがはぐらかされるという非常にもどかしい歌詞…狙ってやってますか八木氏??おかげでダークさが良い具合に緩和されているとも思えるけれども。

3年前から曲を手掛け始めた八木氏ですが、出す曲が毎回メロディーが良いんだ…天才肌?今後もたくさん曲を作ってくれることに期待しています。

 

 

8.森羅万象   

詞・曲:小野武正

 

分かり易いメッセージではなく韻を踏んだり言葉の響きを重視するようで、やろうと思えばいくらでも深読みできてしまうような武正さん独特の歌詞の羅列が聴いていて心地よい。歌うのはとても大変そうだけど。それで言うと中盤のラップのような歌い方が良いですね。

爽やかさとお洒落コード(語彙力が足りない)のこの感じは初期KEYTALKを思い起こさせるようでもあります。

もしもこの曲でタイアップ取れたら、KEYTALKのイメージが変わっただろうか。

 

 

9.HOROBIRO   

詞・曲:八木優樹

 

勢い!痛快!以上。こういう曲も出来るんですよKEYTALK。

お、インストか?と思わせるようで途中からシャウトがなだれ込んでくる。

アルバムの中盤でこういう意表を突くような曲が入ると流れにメリハリがついていいですよね!ライブでもセトリの良いアクセントというか、強力な起爆剤になるのではないかと。フェスでやればKEYTALK知らない客をびっくりさせられるかも。

たった1分で終わるのが惜しいような、その潔さがまた良いような。

 

 

10.Love me(9thシングル 2016/11/23リリース)

詞・曲:首藤義勝

 

アルバムに入ることで良い意味で一番化けたのがこの曲だと思いました。

カオスなHOROBIROの後だから余計にイントロのあたたかいメロディーが目立っているのかもしれません。

歯切れの良いリフのおかげで甘ったるすぎない雰囲気、でもある願望に期待感を抱きつつも若干の遣る瀬の無さもあり切なげな歌詞、の絶妙さがとても良いです。やけにリアリティを感じるのですが…。

 

 

11.STAY   

詞・曲:寺中友将

 

Love meからこの曲へ、癖のないポップミュージックが繫がる流れ。序盤の曲調とあまりにも違いすぎていてこの部分だけで比べるとまるで別のアルバムであるかのよう。

奇を衒うアレンジもなく、素直に聴きやすい曲だと思うのですが内に秘めた熱さというか、そんな感じの独特のエモみがあります。エバーグリーンなポップスを彷彿とさせるような雰囲気と、英詞が混ざっているせいか洋楽っぽさがあるなという印象もあります。

転調や派手な曲展開が苦手、と言う人にお薦めしたい曲ですね。

 

 

12.Combat Song(7thシングル 2016/04/13リリース)

詞・曲:八木優樹

 

好きです。

 

 

 

 

すいませんもっとちゃんと書きます。

 

前2曲の流れでこのまま落ち着いて終わるのかと思いきや、ここでもうひと盛り上がりです。

ドラマーである八木氏が書いただけあってどっしりとしたドラムがぐいぐいと引っ張る、士気を鼓舞するかのようなメロディーにテンションが上がります。このまま突っ走るのかと思っていると途中で軽快なパートが繰り広げられる。これがまた高揚感を更に煽ります。本当に八木ちゃん天才なんじゃないか…

 

 

13.boys&girls(8thシングル 2016/05/18リリース)

詞・曲:首藤義勝

 

某朝の情報番組のテーマソングに半年間起用される、というバカでかいタイアップがついた曲。

と言う訳でどこまでも爽やかで、如何にも休日の朝にテレビから流れてくるような普遍的な優しいポップソング。

アレンジを詰め込むだけではなくて引き算も出来るバンドで、こういうタイアップにも対応できるバンドなんですよKEYTALKは。この曲やSTAYのような“普遍的な良い曲”があることでアルバムに奥行きというか、深みが出ているような気がします。

 

 

14.story   

詞・曲:寺中友将

 

こちらも恒例の、巨匠がひとりで歌うミディアムナンバー。

ツインボーカルは大きな魅力ですが、ソロで歌う曲があるのもそれぞれの歌声をじっくり楽しめて嬉しいです。巨匠の歌声は、この曲のようにゆったりしたテンポで丁寧に歌い上げるような曲調の時が一番美しい。完全に歌を引き立たせるような演奏、儚げなピアノのメロディーが寂寞感を際立たせる。

間違いなく、今作の大きな聴きどころです。こんなに落ち着いた、歌を響かせる曲もKEYTALKにはあるのだと知って欲しい。名曲。

 

 

15.ミルクティーは恋の味   

詞・曲:首藤義勝

 

イントロから可愛らしさが炸裂しています。ふわりとした歌い方も、歌詞の言葉遣いも可愛らしい。

本当にASTRO作ったのと同じ人の曲なんですか?と言いたくなるくらい、この曲が入ることで義勝曲の振り幅が大きいことに驚かされる。

そしてこの曲も心情の描写がやけにリアル…聴いてるこっちが何だか照れてしまうような。「切ない 一瞬のどきどき 嫌いになりたい 会いたい」とか。

この曲は義勝さんがソロで歌っています。繊細な歌声が軽やかな曲調にぴったりです。

 

 

16.スターリングスター(6thシングル 2015/10/14リリース)

詞・曲:首藤義勝

 

KEYTALK初の武道館ワンマンの直前にリリースされたんですよね。そのためか、煌びやかなアレンジで曲全体がきらきらと輝くような空気で溢れている。この曲もASTRO同様、色々な経験を積み重ねて長い道のりを歩んできたからこそ書けるような歌詞。バンドのこれまでのこととKEYTALKが多くの人に受け入れられている現状を思い起こしながら聴くととても感慨深い気持ちになります。

story、ミルクティーは恋の味と続いてじっくりと浸るように聴くような流れからまた少し変わって、この曲でキリッと締まるような感じがしてメリハリがついて良い流れだと思います。

 

 

17.Oh!En!Ka!

詞・曲:寺中友将

 

アルバムの締めくくりとして、元気な曲調でリスナーに向けてはっきりとしたメッセージを送るこの曲を持ってくることで最後まで聴く者を引き込んで離さない。スカッとした気分で終わることが出来ます。

スターリングスターもOh!En!Ka!も、もの凄いエネルギーを持った曲なので聴いているだけで励まされるような、前向きな力をもらえているような、月並みな言葉だけれどそんな気がします。

 

 

 

全部聴き終わると、どれだけ自由度が高く「何でもあり」なアルバムなのかがよく分かると思います。

この「何でもあり」がKEYTALKなんです。

 

インディーズから現在まで、KEYTALKが細かいジャンルに囚われずに様々な要素を取り込んで曲を作ってきたことはずっと変わっていません。所謂ギターロック、4つ打ち、ダンスロックからJ-POP、パンク、ハードコア、ジャズ、スカ、フュージョン、そしてEDMまで。

でも根底にあるのはメンバーの人柄通りの人懐っこさで、良い意味で馴染みやすい曲にまとめ上げている。

 

これがKEYTALKの本当の魅力だと、知ってもらいたいです。

 

 

少しでも興味を持ってもらえたら、もし購入に踏み切れなくてもレンタルでも試聴でもPVだけでも、少しでも聴いてみようと思ってもらえたら幸いです。