最後の駅の向こう

何でもすぐ忘れる人の特に記憶に残しておきたいライブの簡易レポートと趣味のレビューの予定。あくまで予定。

20180609/AC 9mm“ほたるの里ロックフェスティバル”@辰野町民会館

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長野県・辰野町にてこの時期開催される辰野ほたる祭り。 その70周年記念イベントとして開催されたライブ。

辰野町出身であり、「たつのふるさとパートナー」を務めるかみじょうさんの凱旋公演にして、先日の野音公演で初御披露目されたAC 9mmの初めてのワンマン公演。

かみじょうさんの地元ということで、2年前に長野でアコースティックライブをやった時のように、かみじょうさんがたくさん喋るのではという期待も大いにあり、また新プロジェクト・AC 9mmへの期待や、近くの公園ではホタルも見られる!ということでチケットを早々に取っていたのでいよいよ当日、意気揚々と辰野へ向かいました。(終電の関係でホタルは見られず、それだけが残念でした。)

 

 

会場である辰野町民会館、キャパ700席ほどのホールでありながら天井が高く、広々とした座席とかなり座り心地の良い椅子で最後までゆったり快適に観られました。

入り口やロビーにはAC 9mmのフライヤーがいくつもの「9」をかたどるように貼られていました。

広いステージには野音の時と同じようにアコギ(アンプはジャズコ)、ベース、真ん中には球体がいくつか集まったようなドラムセット。終演後にステージを覗いてみるとそれぞれのスペースにラグが敷かれていた。

野音と違うのは、タムの右側あたりに辰野町のキャラクター・ぴっかりちゃんが鎮座していること。

開演直前に辰野町の方(町長さんでしょうか?)より挨拶があり、それが終わってしばらくすると客電が落ちる。今回も客席では誰も立たず、全員着席のままライブが始まる。

 

 

Answer And Answer

ハートに火をつけて

Psychopolis

Battle March

黒い森の旅人

星に願いを

どうにもとまらない

Heart-Shaped Gear

荒地

太陽が欲しいだけ

The Revolutionary

 

カモメ

Black Market Blues

 

 

登場SEは無く、薄暗いステージにまずはかみじょうさんが登場。ドラムセットに到着し、いざドラムを叩くぞというその瞬間に、球体が鮮やかに黄色く光り、その瞬間に客席からは大歓声。野音ではまだ明るかったため、球体が光る様がよく分からず、この暗い室内でどのように光るかとても楽しみだった。同じ気持ちの人がたくさんいて、一斉に歓声が上がった時のあの高揚感!!野音に行っていなかった人はもっと衝撃だっただろうし。この後は曲に合わせて赤、青、緑にも光っていて、目まぐるしくカラーチェンジしているような時もあった。

続いて和彦さんが登場、ベースを弾き始め、最後に卓郎さん。椅子に座ると歌い始める。3人とも野音の時と同じフォーマルな衣装。心なしか卓郎さんの襟元は野音の時よりきっちりしているように見えた。

 

野音でも1曲目だったジャズっぽいアレンジのAnswerは、歌い出しの部分がベースとドラムのみで始まるところが卓郎さんの歌声を引き立たせているし、とてもシャープなアレンジでとにかくかっこいい。サビ直前など、随所に入ってくるドラムの三連符が良いアクセントでこれがまたかっこいい。個人的にとびきり好きなところ。

続いては和彦さんによるアレンジだと野音で明かされた、ダークでどことなく不穏な空気のアレンジのハー火。控えめな赤い照明と相俟って良い雰囲気。

 

このあたりで早くもMCが入った気がする。どの話題だったかは失念してしまったが、途中でかみじょうさんがマイクを手に取り「やっほー辰野!」と挨拶をされたのは確かこの辺りだったか。

 

原曲離れしたイントロから始まるPsychopolisはシンプルなアレンジになると意外とストレートな歌詞が目立ってくるのが面白い。

軽快なドラムから始まるBattle Marchではサビの一番高い音で卓郎さんがファルセット交じりに歌っていて、これがとても美しかった。間奏ではベースにリバーブを掛け、ギターも思いっきり歪ませる。アコギならではの弦の音、アコギ本来の音がしっかりと鳴っているのを歪んだ音が包み込んでいるような不思議な感覚。アコースティック編成らしからぬ音の広がり。

 

諏訪湖を囲む森のことを歌った…訳ではありませんが(笑)と卓郎さんが前置きを入れてから演奏された黒い森の旅人。卓郎さんがよく弾き語りで歌われている時のアレンジをベースにしたような、優しい演奏。アウトロのルルル~というコーラスが美しく、また物寂しさも感じさせるよう。この時にはドラムセットはずっと緑一色に光っていて、森をイメージしていたのかな、と。赤と青を入れつつ、下から白い光がステージを包むような照明がさながら朝焼けの陽光のようだった。

 

辰野は星が綺麗に見えるという話、卓郎さんの地元も星が綺麗に見えるが、辰野は標高が高いから星が近く、「星降り度」が高いという話の後に演奏されたのは星に願いを。その話を聞いた後だとこの曲のようなロマンチックな歌詞が卓郎さんから出てくるのも頷ける。

続いてはこの日一番予想外だったどうにもとまらない!2番では「辰野で誰かに声かけて~」としっかり歌詞に辰野を入れてくる卓郎さん。語感もぴったりでかなり盛り上がったところ。(「誰か」を「ちひろ」に換えたらもっと面白かったな、などと考えてしまった)

原曲に近いアレンジのHeart-Shaped Gearでは、イントロや間奏の入りで一小節だけ和彦さんが原曲の滝さんパートと同じメロディーを弾いてから入る。和彦さんの大きな見せ場のひとつだと思っているし、この一節がきちんと入ってくるのが大好きです。

前半のPsychopolisもそうだけれど、アコースティック編成で削ぎ落とされたアレンジになるととてもいわゆるJ-POP的と言うか、歌詞も良い意味で分かり易く、過度に刺激の強い表現ではないので実は幅広い層に受け入れられるかもしれないな…なんて聴きながら思っていました。

 

荒地はアコースティックになるとこんなにも繊細な印象になるのか、という驚きがあり、

「枯れた花のために ささやかな祈りの雨を」という一節が引き立つような儚さもある。アウトロでは一転、卓郎さんが思いっきり音を歪ませ長いソロを弾ききる。

 

軽快かつ陽気な印象さえ受けるような太陽が欲しいだけ、穏やかなあたたかさのあるアレンジが「もうひとりにはしない」という優しい一節を目立たせる。

最後はThe Revolutionary、こちらも軽快なアレンジ。2曲続けてとても前向きなエネルギーのある曲でカラッと締める。ここでは卓郎さんのハーモニカが登場。アウトロで徐に唇をぺろっと舐めていた卓郎さん、あれはハーモニカを吹く準備だったのかな。この少し前のMCで帽子を取り、ハーモニカを首から下げ始めた卓郎さん。しかしすぐ「まだいいや」、なんて言いながらハーモニカを戻してしまっていたが、それはこの曲の3曲ほど前のタイミングだった。準備が早すぎたのか。笑

その時にハーモニカを先に掛ける=「さきがけ」と言い出し、一文字で書ける(おそらく「魁」)などと言いながら徐々に脱線し始める場面も。

 

 

本編終了、しばらく続いたアンコールの拍手に呼ばれ再び出てきた3人。

フォーマルなシャツ姿ではなく、ロビーのスタッフさんが着用していたものと同じ、ホタルのいる風景が描かれたTシャツを揃って着て出てくる。

和彦さんは何かを齧りながら出てくるという…笑 おやきかな?と思っていたらあたりで、座ってからもしばらくもぐもぐと食べ続けていた。卓郎さんに「町長に怒られるよー」などと言われると、食べかけのおやきを傍らにあったタオルで挟んで隠す。この様子には客席から爆笑。何種類かおやきが用意されていて、卓郎さんはきのこを食べたらしい。和彦さんが食べていたのは大根だそう。ただ、和彦さんは既に大体食べていて、あとはあんこを食べていないと。そこから、辰野で売っているおいしいどら焼きの話へ。かみじょうさんのご家族が差し入れをしてくれたりするそうです。

 

アンコールの1曲目はカモメ。9mm曲の中で最もこの編成が似合うのではないだろうか。長野でこの曲を演奏したのは少し意外だったけれど。卓郎さんのしなやかな歌い方に女性口調の歌詞がとても似合うのだと改めて実感。

 

そして最後はBlack Market Blues、今日は滝さんがいないからと客にコーラスを求める、という卓郎さんの弾き語りなどではお馴染みの流れ。(卓郎さんが、おれが弾けばいいってのは無しだよ?というような事を言っていたような気がする)

しかしここで卓郎さんがBMBの声出しのためにとこれまた長野でのライブでは定番の流れになっている、客に長野県歌「信濃の国」を歌わせる。この流れはあらかじめ決まっていたのか、卓郎さんに向かってかみじょうさんが「よく覚えてたねー、俺忘れてた」というようなことを言っていた。

かみじょうさんがそれに合わせてドラムを叩いていたが、途中からスティックの片方をマイクに持ち替え、ドラムを叩きながらオンマイクで歌い出す!!途中から歌詞があやふやになっていたが、1番を最後まで歌いきる。かみじょうさん曰く、マーチングドラムは片手では無理、とのこと。歌詞が飛んだのではなく、叩きながら歌うのが難しかったのか。それにしてもまさか、かみじょうさんがオンマイクで信濃の国歌うとは…卓郎さんがこの日MCでよく喋っていたり、普段以上に表情豊かだったかみじょうさんに本編で言っていたが、本当にこの日は大サービスだった。(MCについては後述)

信濃の国大合唱が終わり、BMBのコーラス練習もしっかり済ませいよいよ演奏へ。結局最後まで着席しながら観ることになったけれど、この曲は練習したコーラスあり、いつもの手拍子もあり、やはり着席でもこの日一番の大盛り上がりだった。

 

これで全曲終了し、3人が客席に向かって挨拶をし始め…ると、スタッフさん3名がそれぞれ大きな花束を持って登場するというサプライズが!どう受け取ればいいのか?で若干ぐだぐだになりかけるステージを卓郎さんが仕切って整列し、揃って花束を受け取る。かみじょうさんも満面の笑みで花束を受け取り、真っ先にスタッフさんに自ら手を差し伸べて握手。大きな花束を受け取り、改めて客席に笑顔を向ける3人。そのまま順番に退場してゆく。

 

まだやれる曲が少ない、と卓郎さんも言っていたが、それでもこの曲数。更にMCでは3人で喋りまくっていたため、90分余りにわたるライブ。MCが長い分ゆったりしていたような、それでもあっという間に終わったような気もする。

今後ACのライブが決まっていないのがとても残念だけれど、9mmや卓郎さんの活動がこれから増えるから、ACはそれらの活動が少し落ち着いたら再開するのだろうか。ライブだけでなくどうか音源化も…という気持ちも大いにある。

 

 

以下、思い出せるだけ箇条書きでMCを書き出していこうかと思いますが、何しろもの凄い量だったこと、筆者の記憶力が残念なため、どのタイミングでどの話が出てきたのかをほとんど失念してしまっていて、このような形での文字起こしにて失礼します。

 

 

卓郎さんがかみじょうさんについて「バンド始めた頃は頼れるリーダーだったけど、パーソナリティーがおかしい」と言うような話を出してきて、その時に「あらー」と言いたげにおどけてみたり、頬に手をやって驚いたような顔をしてみたり、思いっきり舌を出して本気のてへぺろ顔を披露するかみじょうさん。

 

(きっかけは忘れた)卓郎さんがかみじょうさんに「町長の座を狙っているんだよね?」という振り。かみじょうさんも「玉座を空けて頂いて」的な事を言いながら話に乗っかる。しかし卓郎さん、「この男を町長にしてはいけない!」

 

かみじょうさんと和彦さんはライブ前日にホタルを観に行っていて、和彦さん曰く「宇宙みたいだった、宇宙行ったこと無いけど」とのこと。 昨日は雨だったのにそんな感じなら、晴れたらどうなるんだろうね、と卓郎さんに聴かれた和彦さん、「分かんねっす」

 

(何かのタイミングで)かみじょうさんが喋ると黙る卓郎さん。かみじょうさんが「そんなに拾いにくいこと言った?」と尋ねると卓郎さんが「あとで反省会しようね」

 

各メンバーの実家に泊まると受ける「地獄のもてなし」について。2006年あたり?かみじょう家に着くと早朝だったのに御馳走が用意されていて、かみじょうさんがきゅうりに明太子のっけて食べ始めた話。きゅうり一本に明太子を一房?一卵巣…?と謎の数え方をするかみじょうさん。(正解は一腹、ひとはら)

 

これもかつて辰野に来た時、卓郎さんと和彦さんがコンビニに行こうとしたが寒かったのでジャージの上にジーンズを重ね履きして行って、とてもぱつぱつ(うろ覚え)な状態になってしまったのを「もこみち」と呼び始めて笑い転げて道端で凍死しそうになった、という話。卓郎さんはその話するつもりなかったらしいが、ぶっこんできたのは和彦さん。

また、和彦さんが車に水の入ったペットボトルを置き忘れ、翌日取りに行ったら水がバキバキに凍っていた、という寒さにまつわる話。

それからその頃、卓郎さんと滝さんは卒業するのに単位が足りないかもしれない、もし卒業できなかったら追試受けに行くから3人でライブして、と言った滝さんの話。から、今日滝がいないのは追試を受けに行ってる、と。(本当は上海にいるらしい。)追試のくだりは2年前の長野アコースティック公演でも出てきた話でした。

 

辰野の名物であるホタルは、元々一人の先生が始めた取り組みらしいよ、と卓郎さん。(かみじょうさんは知らなかったらしい。)沢の水は寒くて、ホタルの餌となるカワニナが棲めないから、諏訪湖の水を引いてきて混ぜているのだそう。諏訪湖の水は栄養もあるのだと。

卓郎「諏訪湖の川の水…川じゃないや海だ」

和彦「海じゃねーし」

つっこみが鋭い&素早い和彦さん。

 

辰野には「夜明け前」という美味しい酒がある。卓郎さんも美味しいと言っていた。諏訪湖の水は入っていない。

もう一つ酒の話で、かみじょう家ではスズメバチを漬けた酒を作っていたという話。卓郎さんがあの時は味が分からなかったと言う一方、和彦さんは美味しかったと。かみじょうさんのお父様?おじい様?が作っていたらしいがお酒に弱いらしく、かみじょう家は代々酒に弱いのではと。そこで強がるかみじょうさん。

 

かみじょう「辰野の人口が現在1万9000人程で、2万数千人をピークに減少の一途を辿っている…その一端を担っているのが、この俺!!」(親指を立て自分を指しながらどや顔で)

「俺が戦うには辰野はフィールドが狭すぎた」とも。

 

アンコールにて。前述のように3人揃ってホタルTで登場し、卓郎さんが「ホタT(ホタティー)」と言い出し、和彦さんが「ホタテ」と聞き間違えたのを皮切りに

卓郎「ホタテ」「SHISHAMOの妹分みたいだね」「妹分なのにホタテの方が大きい」と散々膨らませた挙句「今のは無かったことにしてください。」

 

これもアンコールか、ぴっかりちゃんの話から派生したんだったか…?ドラムセットがホタルみたいだという話を卓郎さんがすると何故か音頭的なリズムを叩き始めるかみじょうさん。その後卓郎さんに向かって真顔、と言うか虚無の表情を向ける。卓郎さん、「フォローしないよ。」

 

 

恐らくこれでも拾いきれていないはず…とにかく3人で喋り倒していました。

ゆるすぎて楽屋みたいな空気をステージ上で出していた時もあった、それだけ和やかなひとときでした。

 

MCの端々に、かみじょうさんの地元愛が垣間見える発言もあった。

途中でドラムセットの傍らにいるぴっかりちゃんの頭を撫でていたり、なんにもないけど良いところがあると、うろ覚えですが仰っていたり。好物である辰野の食べ物(ローメン?)の話も出てきていました。

MC中に終始穏やかな笑顔を浮かべられていて、普段のライブよりも心なしか楽しそうに見えた。

最後にはふわっと、でもしっかりとマイクを通して「愛してるよ、辰野」と仰っていた。

一番愛を感じたのは、最後にスタッフさんから花束を受け取った時。おどけた顔など、散々百面相を見せていたかみじょうさんがこの時に完全に素の表情で、満面の笑みを浮かべていたこと。今までに観たことがないような笑顔だった。本当に辰野が好きなんだな、と。

 

この町を出て全国区で活躍するようになったかみじょうさんが、丸くて光る、まるでホタルのようなドラムセットを携えて、ホタルが美しく飛ぶ季節に凱旋する、こんなに粋な帰郷の仕方他にないですよ、素敵過ぎる。

 

今度は9mmとして辰野に来たい、という話も出ていたし、またここでライブをやる機会が近いうちにあるかもしれません。その時にはきっとまた来たいと思いました。ホタルのリベンジも兼ねて。