最後の駅の向こう

何でもすぐ忘れる人の特に記憶に残しておきたいライブの簡易レポートと趣味のレビューの予定。あくまで予定。

20190414/9mm Parabellum Bullet“東西フリーライブ”@日比谷野外大音楽堂 2部

                f:id:sleet_fog:20190415235210j:plain

 

 

 

9mmの結成15周年を記念して東京と大阪にて開催される「東西フリーライブ」 まずは「東」公演から。

当初は1回の公演予定だったはずが、応募が殺到し急遽東京のみ2部制に変更された。普段から9mmのライブによく来ている人だけでなく、折角無料なら観てみたい、久々に観てみるか、という人達も多くいただろうから、そういう人達も観に来てくれているのはとても嬉しいこと。

 

この公演は2016年、2018年の野音公演と合わせて「野音三部作」と位置付けられた。6月にリリースされる映像作品にもまとめて収録される。

結果的に滝さんの休止の大きなきっかけとなってしまった2016年、そのリベンジ、いやそんな言葉を軽く飛び越えるほどの素晴らしいライブで伝説の一夜を作り上げた2018年。そしてそこから更に1年。滝さんもライブを休むことがなくなり、ステージに全員揃った状態で迎えられる15周年記念のライブ。あの素晴らしい光景をまた軽く飛び越えるだろうな、という期待。

 

しかし天気予報は1週間前から雨、と思ったら曇りになったり晴れマークが付いたり。前日には18時頃から降水確率60%の予報が出てしまった。果たしてこの予報をひっくり返すことができるのか。

当日、朝には薄日が射していたが段々と雲が厚くなる。1部の公演中は何とか持ち堪えた。どうか、2部が終わるまで降りませんように…と願い続けた。

 

場内に入ると目に入ってくる、バックドロップのないステージ。今回は自由席ということで、Aブロック前方がまだ空いていたこともあり下手で観ることにした。和彦さんとかみじょうさんは斜めから、卓郎さん、滝さん、サポート陣は横から観るような角度。

開演が近付くと各々の楽器が運ばれてくる。和彦さんは最近お披露目された透明ピックガード付のベース、滝さんは最近のお馴染み、薄いギター。卓郎さんはサンバーストのジャガー?のような見慣れないギター。そして赤いレスポールが運ばれてくる、ということはサポートは為川さんだと分かる。この時僅かに雨粒が落ちてくる瞬間があった。あと1時間あまり耐えてくれ、と祈りながら開演を待つ。

 

定刻になると暗転し、Digital Hardcoreが鳴り響くと15周年仕様のバックドロップが下からゆっくりと上がってくる。和彦さんは黒シャツに黒っぽいデニム、かみじょうさんはスタッフ用と思しきALLAROUNDのTシャツ。為川さんは黒の干支Tか、滝さんは野音Tの黒、卓郎さんは白いシャツに黒ジャケットを羽織っていた。

 

 

Living Dying Message

Survive

Cold Edge

キャリーオン

Everyone is fighting on stage of lonely

モーニングベル

カモメ

名もなきヒーロー

Discommunication

Termination

新しい光

 

(teenage)Disaster

 

 

まずはLiving Dying Message、赤と白の照明がステージ後ろの壁に大きな水玉を描くようで、この晴れ舞台にふさわしいめでたい配色。滝さんはイントロなどはお立ち台の上で一本釣りのようにネックを上げる。和彦さんは控えめに動きながら、左足を軽く前に出してちょっと蹴るように足を動かす。かつて定番曲だったこの曲も、ライブで聴くのは久々だった。今日のセトリどうなってるんだ…といきなり驚かされる選曲。

フリーライブだから定番曲が多めなのだろうか、という予想を完全に裏切ったのは次の曲、Survive!!何年振りに聴けただろうか…。オレンジの照明がステージを熱く照らす。この時だったか、アウトロではお立ち台の上にいた滝さんが途中でぴょんと降りてきて、ステージ前方まで出てきていた。

真っ青なステージに変わったCold Edge、間奏では「日比谷ー!!!」と思いっきり叫ぶ和彦さん。自分の視界には左からバックドロップ、和彦さん、かみじょうさん、卓郎さん、滝さん、その少し奥に為川さん、の順番でちょうど横並びに見えていて、15周年のバックドロップを従えた5人、という並び方が堪らなくかっこよかった。

去年の野音で初披露された曲であるキャリーオン、「声を聞かせておくれ」で卓郎さんが客席を指すような仕草を見せると隣で滝さんが客席をギターのネックで指す。この辺りから和彦さんの動きが段々と派手になってきていた。

 

MCを挟んでEveryone is fighting on stage of lonely、Aメロのカッティングは為川さんが弾いていた。最後のコーラスは滝さんと為川さんの2人で。滝さん不在の間は、かみじょうさんがコーラスをしていたがこの時にはコーラスはせず、大きく頭を振りながら叩いていた。滝さんがいるから、この役目も滝さんに戻ったようだ。

これも久々のセトリ入りとなったモーニングベルもコーラスは滝さんと為川さんが2人で。4人編成の時には滝さんがひとりで歌っていたから、こういうところも今の5人編成だからこそ聴ける部分。間奏のタッピングは滝さん!

 

卓郎さんがアコギに、滝さんがエクリプスに持ち替えて始まった、カモメ。野外の開放的な空間にアコギを入れた特別な編成の演奏と、卓郎さんと滝さんの歌声が広がってゆくのが本当に気持ちよく、それだけに野音で聴けたことが嬉しかった。和彦さんは優しい曲調に合わせるように柔らかな手つきでベースを弾く。滝さんは時折後ろを向き、かみじょうさんの方を見ているようだった。歌詞に合わせるかのようにずっと青い照明だったが、最後のサビに入ると柔らかなオレンジの照明に変わり、まるで海の朝焼けを表すかのようでその変化に驚き、また美しい光景に息を呑んだ。この時に数滴、顔に雨粒が落ちてきたがまだ持ち堪えている。まだ大丈夫だ。

 

また話し始める卓郎さん。15年バンド続けて、色々な人に頼りっぱなしだったけど、やっと真っ直ぐに返せてると思います、と。

その言葉からの、名もなきヒーロー。MVやCDのジャケットの配色に合わせるようにステージがピンクに染まり、優しげな表情と歌声で語りかけるように歌う卓郎さん。

自分が卓郎さんを真横から見るような位置にいたので気付いたが、「守りたいものにいつも守られているんだね」と歌う瞬間に、卓郎さんがぱっと視線を上げていた。まるで、客席全体を見渡すかのように。卓郎さんが「守りたいもの」の中に間違いなく、今卓郎さんの目に映っているものも入っているんだな…と実感して、込み上げるものを止めることが出来なかった。

 

Discommunication、卓郎さんがステージ前方ギリギリまで出てきてオフマイクで「Discommunication!!」と叫ぶ。かみじょうさんは序盤から軽快にスティックを回していた。アウトロで叩きつけられたカオスパートは野外でも凄まじい迫力だった。

Termination、最初のサビで大合唱が帰ってくると卓郎さんがサビ終わりで「最高ー!!!」と言ってくれた!間奏の入りで卓郎さんが「ギター!」と叫ぶと上手で滝さんが思いっきりソロを弾く。その反対側では和彦さんはモニターに腰掛けて弾いていた。座った分客席に近い高さになって、より近くで和彦さんの手元が観られるのがまた嬉しかった。「体に隠した~」の直後には和彦さんと為川さんが完璧なシンクロ具合でジャンプ!

クリーンなギターから入りそこから音がどんどん重なってゆく、という年末から披露されている新しいアレンジから入った新しい光、2回目のサビでは前の方に出てきた和彦さんが、客席から大合唱が返ってくると嬉しそうに笑っていたのがこちらも嬉しくなる瞬間だった。その直後のリフで普段フロント4人が一斉にネックを上げる部分、和彦さんは上手に近付いて行って卓郎さん、滝さん、為川さんが同時にネックを上げる瞬間を楽しそうに見ていた。間奏後の「暴かれてくれ」で和彦さんがベースを置いて琴のように弾き、そのままマイクに向かうとマイクを両手で掴んで思いっきりシャウト!アウトロでは卓郎さん、滝さん、和彦さん、為川さんがステージ中央寄りに集まりかみじょうさんの方を向いていた。(ように斜めからだと見えた)そして一斉にネックを掲げる!

演奏が終わると滝さんがまず退場。為川さんもそれに続き、袖に入る前に下手で丁寧に一礼。かみじょうさんは頭の上で手を合わせながらゆっくりと退場。卓郎さんと和彦さんは上手下手と順番に挨拶をし、退場。

 

アンコール、ステージに登場したのは卓郎さん、滝さん、かみじょうさん、和彦さん…の4人。そして滝さんのギターは本編には登場しなかったSuffer…!4人の演奏で(teenage)Disaster!!正直あまりにも嬉しくて、細かいところの記憶がない。野音のステージで、4人で演奏する9mmがまた観られた…!!

 

演奏が終わると滝さんはいつものように早々と退場。和彦さんと卓郎さんが上手下手と挨拶する間にかみじょうさんは穏やかな表情で客席を見続けながらゆっくりと上手から下手へ歩き、ステージを去る。卓郎さんの挨拶は時間の関係か普段より短めではあったけれど、袖に消える直前まで客席に笑顔を向けていた。

客電が点いてもアンコールの手拍子はずっと鳴り止まなかった。終演のアナウンスが流れるまで長いこと鳴り止まなかった。アナウンスが流れると大きな拍手に変わった。

 

 

どこで入ったか忘れてしまったMCについて。

雨降らなかったね!おれたちの勝ちです!!と卓郎さんが嬉しそうにひと言。そうだ、勝った!あの雨予報をひっくり返した!!かつてはよく雨を降らせていた9mmが!

2部が始まる頃にはすっかり暗くなっていたから、昼もいいけど、夜もいいよね、的なひと言もあった気がする。

また、今回のライブはDVDに収録されるから、「みんなくれぐれもいい顔をするように!」とも。

 

それから、どの曲か失念してしまったが記憶に焼き付いている各メンバーの様子。

本編最後か、アンコールか。後ろを向きバックドロップと向かい合うように最後の音を鳴らした卓郎さん。卓郎さんと為川さんが笑顔で向かい合って弾く場面もあった。為川さんは上手端から大きく移動してくることは無かったが、ステージ端っこまで行って弾いたり、遠くからでも分かるほどはっきり歌詞を口ずさんでいたり、モニターに足をかけてとても絵になる様子でギターを弾いていた。

 

滝さんは1部も合わせ長丁場だったからか、全体的に動きが控えめだった気がする。ギターソロではお立ち台を存分に活用したり、ギターを片手で軽々と掲げている様子もあったけれども。それでも最後まで無事に弾ききった。安全に、最後まで何事もなく終わった、良かった。

その代わり、という訳では無いと思うけれど、和彦さんが演奏中何度も派手に大回転したり、ステージ前方まで出てきたりと動き回っていた。自分から一番近かったのが和彦さんだったので、細かい表情もよく見えた。視線を下に向け丁寧に弾いていたり、口元にきゅっと力を込めていたり、自分の頭を拳で小突いたり、客を煽ったり、その後に僅かに笑顔を見せていたり。髪が短くなって目元が露わになっていることもあり、よく変わる和彦さんの表情も大きな見所だった。どこかの曲の元々シャウトが入っていない部分で、ステージ前方に出てきてオフマイクで思いっきり叫んでいた時があってその叫声がこちらにまであまりにもよく届いていて、びっくりしながら観ていた。

 

色々なことがあったから野音で観る9mmには特別な思いがあるが、それを抜きにしてもここで観るライブは好きだ。野外ならではの開放感。ステージの背後を木々とビルが囲むという、他にはなかなかないような景色。曇っていたから、ビルのてっぺんにある赤色灯の影響か空が薄っすら赤く染まっていて、それとステージの照明が合わさって不思議な光景が出来ていた。

 

 

今や多くのところで語られているが、滝さんの不調が出た後に9mmは活動休止を考えた瞬間もあった。結果的にバンド自体は止まることは無かったが、滝さんが9mmのライブにいなかった期間があった。

だからこうしてステージに全員揃った状態で15周年を迎えられたことは、決して当たり前のことではない。

色々な困難に勝って、ついでに雨にも勝って、15周年を祝うこの日を無事に迎えられたことがどんなに嬉しいことか。

この先まだまだ、15周年を祝うためのステージがたくさんある。またその日まで、

生きのびて会いましょう。