最後の駅の向こう

何でもすぐ忘れる人の特に記憶に残しておきたいライブの簡易レポートと趣味のレビューの予定。あくまで予定。

20190421/9mm Parabellum Bullet“東西フリーライブ”@大阪城野外音楽堂

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9mmの結成15周年を記念して東京と大阪にて開催される「東西フリーライブ」 の「西」公演。

この1週間前に開催された「東」日比谷公演では雨予報はひっくり返したものの終始分厚い雲に覆われた空模様だったが、この日はとても良い天気で風が心地よいとはいえ昼間は暑いくらいだった。ライブが近付くとまだ明るいとはいえ徐々に日が落ち始め、気温もいい感じに落ち着いてきた。

 

今回は日比谷とは真逆、上手側の真ん中あたりの席で。ステージには日比谷と同様黒い鉄パイプのようなものを組んだものにライトが付いている機材。開演が近付くと運ばれてくる楽器、和彦さんは透明ピックガード付のベース、滝さんは薄いギター。卓郎さんはやはり新しいギターだというサンバーストのジャガーェイプのギター。この時点でサポーターズの割り振りは分からなかったが、赤いレスポールが運ばれてきたので最初は為川さんの出番らしい。

 

定刻を10分ほど過ぎると(明るい野外で暗転などないため)突然Digital Hardcoreが流れ、15周年仕様のバックドロップが下からゆっくりと上がってくる。各メンバーの衣装も日比谷と同じか、和彦さんは黒シャツ、かみじょうさんはALLAROUNDコラボのスタッフ用Tシャツ。為川さんは干支Tに黒い羽織物、滝さんは野音Tの黒、卓郎さんは白いシャツに黒ジャケットを羽織っていた。

 

 

Living Dying Message

Mr.Suicide

Lost!!

カルマの花環

キャリーオン

Everyone is fighting on stage of lonely

We are Innocent

モーニングベル

名もなきヒーロー

Getting Better(新曲)

The World

カモメ

太陽が欲しいだけ

Black Market Blues

Scenes

新しい光

 

Lovecall From The World

(teenage)Disaster

 

 

1曲目はLiving Dying Message、イントロやサビ後にはお立ち台の上で弾く滝さんは最初は控えめな動きだったけれど曲が進むにつれネックの振り方が徐々に大きくなっていた。まだまだ空が明るい為、照明がステージを包む、というような感じにはならなかったがキラキラと点滅する様子がステージを輝かせていて、アウトロのツーバス連打の時にはそれに合わせるように点滅が早くなったりしていた。

そのまま止まらないドラム、その間滝さんは手拍子を煽っていた。聴き馴染みのあるライブアレンジのイントロから始まったMr.Suicide!最新曲である名もなきヒーローとは対極にあるようなこの曲がセトリに入ったことが少し意外に思えたがその理由は後で察することとなる。「流星群の雨になって~」のファルセットとそれに続くタッピングのパートが野外に響くあの瞬間は純粋に気持ち良さがあった。

そこから間髪入れずにLost!!へ、この2曲の流れ、去年の野音ワンマンと全く同じ。やはりイントロやアウトロではお立ち台の上にいる滝さん、その横には勢いよく飛び出してきた為川さんが客席を視線で撃ち抜きながら生き生きと弾きまくる。

一呼吸置いてカルマの花環。2番のサビ「底なしの泥沼で渦巻くカルマ~」の部分は滝さんも丸ごと歌っていた。音源だと滝さんが歌っているのは「花は咲くのか」の部分だけなので聴きながら驚いたところ。滝さん、最近は多めに歌うことが多くなってきた気がする(カオスツアーのキャンドルなど)ので、元気いっぱいに歌声を響かせる滝さんの姿が嬉しい。「絡まるカルマ 花は咲くのか」の時だったか、和彦さんが大回転しているのが見えた。アウトロでは、かみじょうさんが前のめりにシンバルを掴みミュートする個人的に大好きな瞬間をしっかりと視界におさめる。

 

9mm Parabellum Bulletです、よ!!」と楽しそうに言う卓郎さん。

「雲ひとつない…って言おうと思ったけど結構あるね笑 でもおれたちの完全勝利です!!」と卓郎さんが話す。また会場について「α波出てそう」と言うと客席に無数の「?」が浮かんでいるように見えた。卓郎さん、もしかしてマイナスイオンと言いたかったのか…?

 

次の曲はキャリーオン、滝さんは卓郎さんの歌声を越えそうなくらいの声量でコーラス。2番で卓郎さんが「声を聞かせてくれー!!」と叫ぶと滝さんはギターを軽々と片手で掲げ、客席からは卓郎さんに応えるように大歓声が帰ってくる。ステージもフロアも関係なく卓郎さんに応えるこの曲のこの瞬間は何度観ても無敵感があり、大好きなところ。

Everyone is fighting on stage of lonely、最後のサビでは滝さんと為川さんが揃ってコーラス。この時、下手の袖にギターを持った武田さんがいてライブを観ていた。しかもEveryone~の時にはAメロのカッティングを弾きながら、また弾かない時には拳を上げたりして楽しそうにしていたのでついそちらに目が行く。

We are Innocent、かつてはイントロで和彦さん、卓郎さん、滝さんが揃って頭を振っていることが多かったが今回は振っていなかった。堅実に音を刻んでゆく。かなりのレア曲でありこの東西フリーライブで久々のセトリ入り。こういうレア曲を再び、今の9mmの演奏で、しかもギター3本で聴ける嬉しさ!昔からかっこいい曲だったことは言わずもがなだけど、今の9mmの演奏だと桁違いの威力で、それこそ野外で聴いているとは思えないような音圧だったほど。

その次はモーニングベル、と元気な曲が続く。タッピングは滝さん!この忙しく元気な曲をのんびりとした空気が流れる野外で聴いているというなんとも言えない組み合わせが面白かった。普段のライブでは絶対に観られない光景。

 

ここで卓郎さんが為川さんを紹介、これよりサポートが武田さんに替わることを告げる。滝さんが為川さんに拍手を送り、出てきた武田さんと為川さんがハイタッチをしてから交代。15周年ですから、サポートの贅沢使いを!なんて言っていた。9回表の攻撃は裕也で、9回裏は武田くん。そんな風に例えながら。

 

名もなきヒーローについて。「生きのびて会いましょう、と歌っていてこれはみんなを元気付けられる歌詞かなと思って…でも昔の曲を聴いてみたら今と歌ってること変わらないな、って!」

その言葉から名もなきヒーロー、照明があまり目立たない状況ではあったがMVやジャケットに合わせるようにピンクが使われていた。「たおれたらそのまま空を見上げて」の部分では歌詞に引っ張られて空を見上げると、淡い色の晴天が広がっていた。これも普段のライブハウス公演では絶対に観られない光景。「守りたいものにいつも守られているんだね」の部分では今回も客席を見渡すように視線を遠くに向け、優しげに歌っていた。

「勝ち目が見当たらなくたって 逃げたくないから笑ってんだろ」という歌詞は聴けば聴くほどに9mm自身のことを歌っているように聴こえてならなかった。だって困難な状況の中で、勝ち目が見当たらない時にもステージの上で逃げずに笑っていたのは他ならぬ卓郎さんだったのだから。

 

続いて卓郎さんが新曲をやることを告げると歓喜と驚愕の歓声!ベース始まりでイントロからいきなり滝さんがタッピング、かみじょうさんはAメロでチャイナ?を連打するような華やかな叩きっぷり、和彦さんはサビ前からシャウトを入れるなど個々の武器というか特徴をこれでもかというくらい入れててそうきたか!と(卓郎さんの様子は場所的にあまり窺えなかった)歌詞はサビだけ聴き取れたが「まだ良くなる もっと良くなる きっと良くなるさ」という感じのフレーズが入っていた。名もなきヒーローと同じく多くの人が受け入れられるような応援の言葉にも聞こえたし、何となく卓郎さんが滝さんに歌っているような気もした。ライブ中にはただ新曲だという以外に情報は何も明かされなかったが、終演後に公式が上げたセトリからタイトルが「Getting Better」であることが判明。

ライブアレンジの儚げなイントロが鳴り響き始まったThe World、1番のサビでは和彦さんがオフマイクでシャウト、上手にいるこちらにも微かに聞こえるほどの声量だった。曲の最後にはかみじょうさんが、叩いた左右のシンバルに上からスッと手を落として音を止める。

滝さんがエクリプスに持ち替え、カモメ。曲が始まると遠くの方を数羽の鳥が飛んで行くのが見え、それさえも演出のようだった。青い照明が歌詞を表現するかのよう。間奏でソロを弾く滝さんの鬼気迫る様子が目に焼き付いている。

 

この時のMCだったと思うが、卓郎さんが「私事ですが……」と言い出すものだからどうした?と思いながら聴いていると、新しいギターを作りました、と。滝さんのギターもそうだし、和彦さんのベースも新しい、と。日比谷で自慢し忘れたからこの日は話題に出したらしい。結成直後は2万のギターを使っていたが、ESPの方に助けてもらって以来、ESPのギターを使っていると。2万のギターはバキバキ折れるが、ESPのギターは全然壊れないというさらっとすごい話も出つつ、楽器やってる皆さんよろしく、というひと言が続き、ということはもしかしてシグネチャー出るのでは…とひとりざわついていた。(こういう話が出て、的な言葉)ごめんね、でも大阪は商人(あきんど)の街だからいいよね?と。

 

「まだまだ太陽が足りない」という煽りが入ってからの太陽が欲しいだけ、「さあ両手を広げて~」で客席からたくさんの手が一斉に上がった光景は圧巻だった。いい天気の下で聴くのが最高に気持ちが良いし、改めてこの曲のものすごいエネルギーと頼もしさを真正面から受けたら何だか無性に安心した気持ちになり泣いてるんだか笑ってるんだか自分でもよく分からない状態で聴いていた。

曲が終わるとすかさずBlack Market Bluesへ。ライブ定番曲であるBMBを、何だか久し振りに聴いた気がしたが(3月のLIVE HOLICに行けなかったため)BMBが久し振りという状況が、今年の9mmのセトリがどれだけ特殊であるかを物語る。

「また会おう かならず」という、「生きのびて会いましょう」に通じるような歌詞があるScenes「燃えるように赤く舞い散る花びら」では照明が赤くなり歌詞通りの光景を作り出す。「雪のように白く舞い散る花びら」では純白の照明がステージに光の花びらを散らす。

最後の曲です、と卓郎さんが言ってから始まった、新しい光。ここ最近披露されている新しいアレンジのイントロは何度聴いても何となく希望のイメージを感じさせるようで。サビ後の間奏、ギター・ベースの4人が一斉にネックを上げる部分では卓郎さんと滝さんが前へ、和彦さんと武田さんはかみじょうさんの前で向かい合うような位置に移動していた。ライブ開始時よりも少しだけ暗くなってきていたから照明も若干ステージに映えるようになり、歌詞を表すかのように2種類の白い光がステージを輝かせる様子がただ美しかった。

 

演奏が終わると滝さんが真っ先に退場、続いて武田さん。下手から上手までやってきて客席に軽くお辞儀をする和彦さん。卓郎さんはいつもより短めに挨拶。かみじょうさんはドラムセットの方からゆっくり上手に出てくると拳を上げながら下手へ歩いていき、ひらりと軽く手を振って退場。

 

 

アンコール、順番に出てくる卓郎さん、かみじょうさん、和彦さん、滝さん。位置に着くと滝さんが手にしたのは黒Suffer。ここまで軽いギターを使っていて、その倍近い重さのSufferをこの日初めて使うからか、肩にかける時によいしょ、という感じで少し勢いをつけていて、滝さんの表情からも重さが伝わってくる。

4人でやりますと卓郎さんが言って…先週のフリーライブ日比谷と同じくDisasterが来ると思っていたらカウントから違うぞ、から曲が分かって驚愕…Lovecall From The World!!アウトロでは和彦さんがシャウト中に「大阪ーー!!!!」と思いっきり叫んでいた!

最後の曲で(teenage)Disaster、アウトロの滝さんのソロはこれまでのライブでよくやっているようにカオス音を叩きつけるのではなく、メロディーに新しいアレンジを加えて弾いていた。このアレンジで聴いたのは今まで記憶にない。9mm結成初期からの曲であるDisasterも、15年経った今でもまだまだ進化してゆくのを目の当たりにできたのが、嬉しかった。

 

演奏が終わると最初に退場する滝さん。袖に消える背中がどこかやりきったように見えた。丁寧に挨拶をする卓郎さんと和彦さん。かみじょうさんは両手の拳を握り両肘を曲げ交互に動かす謎の動きをしながら上手から下手へ。最後に軽く手を振るかみじょうさんの背中が袖に消えるまで見続けているといつの間にか卓郎さんによる万歳三唱が始まっていた。それも終わると退場直前にもう一度笑顔を客席に向け、袖に消えていった。

 

 

これで東西フリーライブがどちらも終わった。

 

ステージをビルと木々に囲まれた不思議な空間の日比谷野音に対し大阪城野音は周りを木々が囲み、穏やかでのんびりとした雰囲気だった。卓郎さんが「α波…」と言っていたのも何となく分かる。

大阪も日比谷と同じ曲数だと思っていたら何とアンコール含め18曲、最近の9mmワンマンとほぼ変わらない尺で、これだけレア曲をたくさん詰め込んで、新曲初披露まで、それをフリーライブで!!これが無料で良いのだろうか…とつい思ってしまった。

セトリは日比谷の1部と2部と、それから2018年の野音、更に2016年の野音のセトリを混ぜたような感じだった。それを狙ったセトリだったのだろうか。Living Dying Messageで始まりEveryone~が入るのは日比谷の1部2部と同じ、キャリーオンとカルマの花環、We are Innocentとモーニングベルは1部と2部に割り振られていた曲。カモメも日比谷2部で披露されていた。Mr.SuicideからLost!!に間髪入れずに繋がる流れは2018年の野音と同じ。また2018年にはThe WorldとScenesも演奏された。

そして2016年の野音滝さんの腕の不調が出てしまい中断を余儀なくされたあの状況でも9mmはアンコールに応え、そこで演奏されたのがLovecall From The Worldだった。あの時に動けない滝さんに代わり、アウトロで和彦さんがアンプの上に登ったりするほど、滝さんの分まで動いてるんじゃないかと思うほどの暴れっぷりで鬼気迫る演奏を見せていた曲。それを滝さんが帰ってきた4人の9mmで演奏するのを観られた…もしかしたらLovecallがセトリに入れられたのは偶然なのかもしれない。でもあの時のリベンジをこれで遂に果たしたのではないかと、思ってしまった。

 

9mm4人での演奏が観られるのは嬉しい。ただひたすらに嬉しい。これを観られるまで何年だって待つつもりだった。だから今、4人での演奏を観られるのが最高に嬉しい。

でも、5人編成の9mmだって大好きで、この編成になったおかげでトリプルギターならではの音源を再現した演奏や音源にもなかったような新しいアレンジなど今や「サポート」にとどまらず何倍もプラスになっているから。武田さんと為川さんには感謝してもしきれない。この日は結果的に9mm4人+為川さん、9mm4人+武田さん、そして9mm4人 の3つの編成をいっぺんに観られた。卓郎さんの言う通り、贅沢、のひと言に尽きる。

 

卓郎さんがMCで昔の曲を聴いてみたら今と歌ってること変わらないと言っていたが本当にその通りで、名もなきヒーローの「生きのびて会いましょう」、Scenesの「また会おう かならず」といった歌詞の中だけにとどまらず、卓郎さんはライブ中によく「また会おう」と言っている。2016年の野音でも本編で「また会おう」と言って、アンコールでも「また会おうというのはアンコールで、って事じゃなくてまたどこかのライブ会場で会おうってこと。約束したぜ?」と言っていた。卓郎さんたちが言いたいことはずっとぶれていない。

だからこちらからも言わせてください。

また会おう、かならず。

生きのびて会いましょう。