最後の駅の向こう

何でもすぐ忘れる人の特に記憶に残しておきたいライブの簡易レポートと趣味のレビューの予定。あくまで予定。

9mm Parabellum Bullet「Waltz on Life Line」2016/04/27

                                    f:id:sleet_fog:20160531135706j:plain

6枚目のアルバム。前作「Dawning」からおよそ3年振りということで、その間にベスト1枚とシングル2枚を挟んでいるけどかなり久々のオリジナルアルバムです。シングル曲が多いこともあり15曲入り・55分と9mm史上最多曲数。

色々なインタビューでメンバーの皆様も仰っている通り、今作は半年くらいにわたる楽曲制作期間を経たことにより、従来はメインコンポーザーである滝さんの楽曲が大半を占めていたのに対し、和彦さん4曲、かみじょうさん3曲、卓郎さん2曲(滝さんは6曲と多めではある)と各メンバー曲の割合が増えています。

 

また、9mmは昨年まで在籍したEMIレコーズを離れ、今作は自主レーベル「Sazanga Records」と日本コロムビア内の名門レーベル「TRIAD」(かつてイエモンやミッシェルが在籍し、現在は吉井和哉さんなどが在籍)とタッグを組んでのリリースとなりました。

移籍でどうなることか…と思ったけど蓋を開けてみれば怒涛の宣伝・販促の数々。各CD店での大規模展開・大看板、黄色いCD屋とのコラボキャンペーン、地上波テレビ番組やラジオ番組に出まくり、発売週には渋谷の大型ビジョンで(30分に1回程度15秒のCMが)放映されたり宣伝トラックまで駆り出されたりと、コロムビアの本気を見た気がします。コロムビア様ありがとうございます。

 

以上が基本的な情報でしょうか。

以下、感想など。

 

 

1「生命のワルツ」(6thシングル 2014/09/10配信、2014/12/10 CDリリース)

詞:菅原卓郎 曲:滝善充

アコギの流麗な音から9mmらしい轟音が炸裂する、幕開けに相応しい曲。某スラッシュメタル四天王の名曲みたいですね。そういえば6/8拍子のスラッシュメタルはとても珍しいのだと、いつぞやのインタビューにて。

「でたらめな時代に立ち向かえ」「いつかのどこかじゃなくて聞いてくれここで命の声を」と、曲の持つエネルギー感に比例するように力強い、説得力のあるような詞。最近はライブの終盤でやることが多いですね。堂々たる風格ある曲なのでライブがかっこよく締まる。

アウトロのまくし立てるようなギターの速弾きフレーズが圧巻。フルピッキングで弾いてるのかあれ…?


9mm Parabellum Bullet - 生命のワルツ

 

2「Lost!!」

詞:菅原卓郎 曲:滝善充

力強いメッセージソング的な「生命のワルツ」から一転、挫折を思い起こさせる詞が並び途中では前を向いて進んでゆく姿勢を見せつつ、「今度こそは 今度こそは ここはどこだ」と辿り着けずに終わるまったく救いようがない展開。跳ねたリズムは「キャンドルの灯を」に近いけどこの詞が乗ることで、翻弄されてる感が出ているように感じます。

言葉は抽象的じゃなくなってるけど苦悩に満ちた内面を書いた詞は初期の頃に近いかな、とはライブで初めて聴いた時の印象。ここまで救いようがないと逆に気持ちの良い展開で好きです。音だけ聴くととてもノリが良いけどじっくり歌詞見ると…悲しくなりますね…

曲中の「今度こそは」と歌う部分のメロディがゆったりめなので切実さが強調されているように聴こえる。

「片手間で愛さないで」…で3連譜が唐突に出てくるのがなんか面白いと思いました。


9mm Parabellum Bullet - Lost!!

 

3「湖」

詞:菅原卓郎 曲:中村和彦

3月のカオスで聴いた時はとりあえず「湖っぽくない」と。

イントロのギターがいつもよりシャキッとした音だと思ったらジャガー弾いてるのね卓郎さん。

絶望に叩きのめされた「Lost!!」からの流れで、過去を美しいと思いつつもう後ろは振り返らないと言いたげな感傷的な所もあるけど、「おれたちの何かが今 変わろうとしてる」と漠然と前向きな予感が入ってるのがとても良いです。「波ひとつない穏やかな」…あたりから一瞬スローになるところは靄のかかった湖畔が想像できなくもないです。

第一印象はそんなに強烈ではなかったけど、キリッとした曲調と、全体的にゆったり伸びやかなメロディーのバランスが絶妙で段々と頭から離れなくなります。

 

4「Mad Pierrot」(7thシングル 2015/09/09リリース)

詞・曲:かみじょうちひろ

御洒落な雰囲気すらある跳ねたリズムに浮き浮きするけど、ファニーな悪夢のような詞がじわじわと狂気に誘い込んでいくような曲。間奏の手数の多いドラムと速いフレーズのギターが怪しいサーカス感出てますね。

2番の「彼は知ったんだ 悲鳴の味を」の部分のクリーンギターのフレーズがジャジーでとても小粋な感じで素敵です。

「湖」もそうだけど、卓郎さんの語尾の伸ばし方が伸び伸びとしていてとても好きです。


9mm Parabellum Bullet「反逆のマーチ/ダークホース/誰も知らない/Mad Pierrot」トレーラー

※4番目に流れます

 

5「反逆のマーチ」(7thシングル 2015/09/09リリース)

詞:菅原卓郎 曲:滝善充

初めて聴いた時に、不思議な音でインパクトのあるイントロにまずびっくりさせられたあたりがとても9mmらしいなと。全体を通してとても勇ましいけど前述のイントロとか、間奏でカウベルが入ってくる所とかのコミカルさが面白い。

「笑えないリアルも笑いとばしてやるよ」「でっかい壁にぶつかってんだ 絶体絶命も上等さ 失敗糧にしてやったりだ」という詞が、心細い時にどれだけ頼もしかったことか…。


9mm Parabellum Bullet - 反逆のマーチ

 

6「ロンリーボーイ」

詞:菅原卓郎 曲:中村和彦

CDJ15/16でやった新曲ってこれじゃないかな?孤独感を歌ったような詞が、すごい勝手な解釈だけどインディーズ期の曲に出てくるような鬱々とした詞を客観視してみたような印象。

心なしか他の曲に比べて卓郎さんの歌声が明るい気がするのもあり、全体的にはすっきりさっぱりした曲でアグレッシブなギターソロがその分際立っています。

 

7「Kaleidoscope」

詞・曲:かみじょうちひろ

5拍子!個人的にとても好きな5拍子!5拍子になったり6拍子になったりするとても複雑な曲。何回か聴いてやっと全体の拍を把握しました。

詞に使われている言葉が綺麗で、和風なメロディーと相まって、とても華やかです。ギターソロがまた良いんだ…ツインリードっぽくて。

ライブでは色をたくさん使った派手なライティングでやるんだろうか…などと考えるととても楽しみです。

 

8「Lady Rainy」

詞・曲:菅原卓郎

9mmにしては珍しいゆったりしたメロディーとアルペジオ、言葉を噛みしめるようにじっくりと溜めるように歌うボーカル。優しく響くギターの音色がさめざめと降る雨を思い起こさせる。激しさは無くひとつひとつの音の美しさが前面に出ています。

卓郎さん、この曲弾き語りでもやってくれないかなー…

 

9「ダークホース」(7thシングル 2015/09/09リリース)

詞:菅原卓郎 曲:中村和彦

ザクザクとしたリフで突っ走るかっこよさ。そんなメロディーに合わせるように詞も勇ましい。「負けられない理由があるんだろ」…いいですね。ここ一番、という時に聴きたくなる。

和彦さんの曲はよくストレートだと評されてますが、どの曲も決して一本調子な訳ではなくて、所謂Cメロでちょっと展開を変えるところがいつも秀逸です。


9mm Parabellum Bullet「反逆のマーチ/ダークホース/誰も知らない/Mad Pierrot」トレーラー

※2番目に流れます

 

10「誰も知らない」(7thシングル 2015/09/09リリース)

詞・曲:菅原卓郎

ゆったりとした3拍子で、普段ギターをたくさん重ねることが多い9mmの曲と比べると非常にシンプルなアレンジで歌のメロディが目立っています。

鬱々と悩むような詞がこれもやはり初期に近いですね。この曲と「Lost!!」をライブで聴いて今作は初期に近いアルバムになるのかと予想しましたがそうでもなかった。


9mm Parabellum Bullet「反逆のマーチ/ダークホース/誰も知らない/Mad Pierrot」トレーラー

※3番目に流れます

 

11「火祭り」

詞・曲:かみじょうちひろ

イントロのドラムが和太鼓みたいで、せかせかした曲調が如何にもお祭りといった曲。和風「Living Dying Message」みたいにも聴こえます。

曲中に何度か出てくるけどギターとベースのトリプルユニゾンになる部分がかっこいいんですよね。

間奏の凄まじいギターソロはピック代わりに100円ライターを使った「ライター奏法」これ実際にやってみたけど、弦にライターの曲面がこすれてピヨピヨとした音が出るんですね。それにたくさんエフェクトかけるとああなる、と。かみじょうさんがイメージしたという地元のお祭り「どんぶや」は燃え盛る藁をぶん回すというものらしく(YouTubeに動画有り)ピロピロしたギターの音は、パチパチ燃える藁と飛び散る火の粉を表しているのでしょうか。

 

12「モーニングベル」

詞:菅原卓郎 曲:滝善充

これだよこれ!この破壊力!これが9mmです!と言わんばかりの曲。哀愁あるオクターブ使いのフレーズ、元気なブリッジミュート。信頼と安定の9mmサウンド。本当に心の底から安心する。タイトルだけ見た時には、爽やかな曲なのかな?と思ってましたけど。笑

重厚なコーラス(ライブどうするのか?)、けたたましい目覚ましを模したであろう長いタッピング、「目覚ましのベルが鳴りました」の部分で9mmの詞では非常に珍しい丁寧語口調、と新しい試みもたくさんあります。

ざっくり詞をまとめるともう少し寝てたい的な、共感するしかないどこか可愛らしいものですがストレートに寝起きの歌なのか、何かの比喩が入ってるのか…は まだわかりません。

 

13「迷宮のリビングデッド」

詞・曲:中村和彦

和彦さん初作詞の曲です!ぐいぐい進んでゆくような、なかなか不穏な曲です。

聴きどころは言わずもがな、間奏のベースソロ!あと最近ではめっきり減ってしまったシャウト!ベースソロ後の全パート同じリズムで弾いているところはよからぬものが迫りくるような感じで、まるで追い詰められているような詞の雰囲気にぴったりでとても良いです。

あとはアウトロのツーバス連打も是非とも聴きどころに挙げたい。

 

14「スタンドバイミー」

詞:菅原卓郎 曲:滝善充

爽やかで儚げで優しく美しい、とにかく美しい曲。語りかけるような口調の詞もとてもあたたかい印象です。

柔らかい日差しが降り注ぐ野外(草原だと尚可)で聴きたい。歌詞には八月とあるけど、初夏の陽気ぐらいの時がいいです。

クリーンの多い曲は前にもあったけど、ここまで明るくてあたたかい雰囲気の曲は今までなかったんじゃないか?(これまでだと「Monday」が若干明るかったかな?)なので今作の中で一番意表を突かれた曲です。

滝さんのアンプは確かによく歪むパワーのあるものだけど、クリーンの音はとても澄んでいて綺麗な音がするんです。

9mmの曲はうるさくて嫌い、苦手だという人にこそ聴いてもらいたいです。

 

15「太陽が欲しいだけ」

詞:菅原卓郎 曲:滝善充

リリース前に、この曲はエンドロールのような位置にある曲と聞いたのでそのイメージが強い。

展開がくるくる変わるけどわずか3分足らずで、余韻も残さずスパッと終わる後味の良さ。エクストリーム4つ打ちといった印象もあり、とてもノリが良いのでこれからライブ定番曲入りすることに期待しています。

滝さんがこの曲はとても速くて難しいと仰っていましたが…9mmはこの曲より速い曲なんてたくさんあるのにそこまで言わせる曲、スコアが出たら早く見てみたいです。

 

 

今作について最初はアルバムとしてのまとまり方がよく分からない、もはやまとめるのではなくて詰め合わせとして完成したのか?とか正直大変失礼なことを考えていました。

歌詞に統一感がないので…。ポジティブなものとネガティブなものが雑然と入っているようで15曲ぶっ通しで歌詞を見ると感情の起伏が激し過ぎるという、勝手な見解からなのですが。「生命のワルツ」から「Lost!!」への流れだけでも、最初あんなに前向きなのに次もう絶望的みたいな。

 

でも何周も聴いているうちに、最初の「生命のワルツ」と最後の「太陽が欲しいだけ」が今作の大枠をがっちりと担っていて、 (これまた勝手な解釈ですが)個人的には特に「太陽が欲しいだけ」がなかったらまとまってなかったんじゃないかな、なんて思う訳です。

 

「こわれかけの心でもどこにでもいける」

「ツキに見放されて 流れ星は消えた それでも最後には笑え」

「さあ両手を広げて すべてを受け止めろ」

 

この3行が、この曲の懐の深さが出ているというか、ここに至るまでのネガティブな詞も受け止めつつ最終的にはポジティブでカラッとした流れに変えてアルバムを気持ちよく締めくくっているような気がするのです。考え過ぎかもしれませんけど。

特に「スタンドバイミー」から「太陽が欲しいだけ」への流れは大変に素晴らしいと思います。何度聴いても感極まってしまいます。

内容的にも雨上がりの情景→精神面の比喩表現として「雨雲を晴らして」「太陽が欲しいだけ」とつながっていますし。

 

とりあえず1ヶ月聴き続けてみた感想としてはここまでです。

 

 

あと1ヶ月もするとツアーが始まります。現状、収録曲の半分くらいはまだライブで聴いていないのでツアー中にどう化けるのかが素直に楽しみです。それと野音雨降らないといいですね。