9mmの今年2本目のワンマンツアーのファイナル公演。
去年のツアー「太陽が欲しいだけ」でZepp Tokyo公演は予定通り開催されているので、“去年のツアーで中止になった場所のリベンジ公演”という括りからは外れている?とも思いましたが、当初ワンマンだったはずがゲストバンド(HEREでした)を迎えたツーマンライブでの開催になったので、ワンマン公演としてのリベンジという意味ではやはり東京も“リベンジ公演”なのでしょう。
京都~長野公演では各メンバーセレクトの曲を開演までのBGMとして流していましたが、この日は自分のいた場所からはあまり曲が聴き取れず。途中でHEREやGRAPEVINEの曲がうっすら聴こえてきたのは認識できたので、東京はメンバーセレクトとはまた違った選曲だったのでしょうか?
Lost!!
湖
モーニングベル
Black Market Blues
ロンリーボーイ
Kaleidoscope
眠り姫
バベルのこどもたち
それから
スタンドバイミー
キャンドルの灯を
Discommunication
火祭り
Cold Edge
太陽が欲しいだけ
Punishment
先に書いてしまうと、この日のセトリはひとつ前の長野公演とほとんど同じ。3曲目が違うだけ、というこれまでの9mmの、ツアーでも公演ごとにセトリをガラッと変えるスタイルを考えるとあまりにも意外。
ライブの途中で、セトリがほとんど変わらないことに気付いてはいたのですが、箱の規模が全く違うので照明や演出は大幅に変わっていて、その違いを重点的に楽しむことができたので、このようなセトリのツアーも面白い。
SE「Digital Hardcore」が鳴り響くと、開演前にはステージに掲げられていなかったいつものバックドロップがゆっくりと下から上がってくる。大きな会場だと時折ある演出ですが、何度観てもとても好きな演出。
メンバーが登場し、位置に着くと流れてきたのは生命のワルツのCD音源のイントロ。そこに演奏が被さる。
生命のワルツで、為川さんが見せた一瞬の不敵な笑みが素敵で、ここから為川さんの表情に何度も目を奪われることとなる。
サクリファイス、今年はイベントやフェスでもかなりの頻度でセトリ入りしていたのでしょっちゅうライブで聴いてきた曲ですが、リリースから僅か5ヶ月程しか経っていないのにライブを重ねる度になくてはならない切り込み隊長のようであり、どんどん存在感を増すような曲になっている。
長野とほとんど同じセトリ、という中で唯一変わっていた曲が3曲目のLost!!
Kaleidoscopeではとても淡い色合いのまだら模様のような照明が、バックドロップの白い双頭の鷲をうっすらと染める。控えめな色合いが万華鏡を連想させつつ流麗なメロディーを際立たせるかのよう。
眠り姫、「TOUR OF BABEL」での照明とは違い、間奏で複数の円のような模様がステージに映る。あの時と同じような規模の会場だから同じ演出でやることもできただろうに、こういう細かいところを変えてくるのが素晴らしい。
火の鳥 ではイントロのタッピングの同期とツーバス連打の部分で、ステージ後方に設置された小さな黒い箱から炎が噴き出る演出が!その後も何度も、メロディーに合わせて炎が上がる。
これまで9mmはホールや武道館公演でも照明や音玉、金テープ以外の特別な演出はほとんどやらなかっただけに、この派手な特効には本当に予想外。
この日自分は上手の前の方にいたのですが、それでも炎からはかなり離れた距離だったのにとにかく熱い。フロアにいた自分がこれだけ熱気を感じる程だったので、ただでさえ熱いであろう照明を浴びながら動き、更に近くで炎の熱気を感じていたメンバー(特に炎と横並びに当たるような位置にいらしたかみじょうさん)はさぞ大変だっただろう…などとつい考えてしまった。
ホワイトアウトではやはり白を基調とした照明。序盤は普通にライトを当てているだけでしたが2回目のサビでステージ天井の左右にあるミラーボールが使用されさながら雪が舞うような照明に。ミラーボール2個使いをすることでZeppの大きな空間が一気に雪景色になる。曲とぴったりでただただ美しかった。思わず上を見上げてしばらく見惚れてしまうほどに。
それから で、独特の重苦しさと僅かな希望で空間を圧倒した後。
スタンドバイミーに入る前のMCで卓郎さんが「曲を聴いて浮かんだ景色をそのまま歌詞にした」「空に虹がかかるようなイメージ」と一連の説明を入れる。
そのMC中、穏やかな表情を浮かべ、時には目を閉じて話に聞き入っていた為川さん。
為川さんは演奏中も感慨深げな柔らかい表情を浮かべていて、曲の雰囲気に浸りながら弾いているようだったのがまた良かった。
火祭り では再びステージに火が噴き上がる。ここも間違いなく今回の大きなハイライトだと思うが、長野公演で卓郎さんが歌った「激しい火に煽られるちひろかみじょう」をまさかの完全再現!!という。長野でのアレはこの為の伏線だったのか…?この日は「ちひろかみじょう」ではなく、「激しい火に煽られるZepp Tokyo」と歌われていましたが。
本編ラスト、太陽が欲しいだけ に入る前に卓郎さんが客の上げた手をそのままで、と上げさせて歌詞通り「さあ両手を広げて」状態から曲に入る。去年の豊洲を境に、しばらくライブで披露されることのなかったこの曲が、今夏から再びセトリに入るようになった。正直、滝さんが復帰するまで聴けない曲だと思っていたところもあり、また聴けるようになって嬉しい限り。
本編が終わると、フロアに挨拶する卓郎さん、和彦さん。そして、徐にステージ真ん中に出てきて両手を組んで下におろすポーズ(元ネタをど忘れしてしまった)をした後に去っていくかみじょうさん。
アンコール1曲目のMad Pierrot、この日カメラマンを務めていらした橋本塁さんが、ドラムセットのところで写真を撮りまくっていた。上から覗き込むようなアングルや、かみじょうさんの後ろからも撮っていたが、途中でかみじょうさんが後ろを向き、塁さんのカメラに顔を向けていて、あれ絶対何かやってるな、普通にカメラ目線なのか、おどけた顔でもしていたのか…というのが気になってしまって。(ざっと各媒体のレポを見た限りではそれらしき写真は上がってなかったと思う)
いつか、どこかであの時の写真を観られる時が来るのを楽しみにしていますよ。
そして為川さんの華麗なソロ…で、卓郎さんと和彦さんが為川さんの近くに寄ってきて正座しながら、時にはもっと近づいて覗き込みながら、ソロを弾く為川さんを見守るという(こんな場面今年どこかで観たことあるぞ…という感じの)微笑ましい場面があり、流石の為川さんもこれには笑いをこらえきれず、ソロをミスってしまう。これは卓郎さんたちが悪いです。笑
しかし、9mmのライブに出るようになってまだ半年ほどの為川さんがもうすっかり馴染んでいて、卓郎さんたちとの和やかな様子が繰り広げられていてここは本当に良い場面を見ました…
最後は本当に今年はライブでたくさん聴けた、イントロの爆速カッティングを卓郎さんが弾くのもすっかりお馴染みになったPunishmentで。ステージに並んだフロント3人によるトリプルユニゾンが決まる瞬間の無敵感。
もう語彙力を失いひたすら「かっこいい!!」としか言えない。
アンコールも終わり、かみじょうさんは何かコミカルな動きを入れながら退場、和彦さんはいつも通りピックを投げまくったり長々とフロアに挨拶、また卓郎さんも下手に行ったり、上手に来たりしながら長々とフロアに挨拶。
卓郎さんは時折、ライブ中にみんなのこと見てるよ、と仰る時がありますが、確かにライブ中はフロアのあちこちを見ているし、この最後の挨拶の時にはまるで自分の視界に入る一人ひとりとしっかりと目を合わせるようにこちらを見てくる。(だから自意識過剰、という訳ではなく本当に卓郎さんの視界に入るとこちらが動揺してしまうくらいバッチリと目が合う事もある)
卓郎さんがお辞儀で締め、メンバー全員が退場するが再びアンコールを求める手拍子が発生し、鳴り止まない。
だいぶ長く続いたような気もする。まだ観ていたい、もっと見せてくれ、そんな空気に包まれていた。私だってそうだ。結局ダブルアンコールは行われなかったけれども。
どこで入ってきたか完全に忘れてしまったMCを以下まとめて。
序盤のMCの際、フロアからメンバーの名前が呼ばれ、為川さんだけ裕也“さん”と呼ばれていたことに触れ
裕也だけ「為川さん」なんだろう?じゃあ東京のみんなも「東京さん」だよね、と相変わらずのワンダー発言を序盤からぶっこむ。
また、MCで迷子になりかけたか何かの拍子に客から「頑張れ!」と声を掛けられ、それに「みんな知ってるだろ、おれがMCで頑張らないこと」と返したり、“MC”の意味は各自で調べて下さいとも言っていた気がする。
中盤?為川さんの所属バンド・folcaの11月22日に開催されるワンマンの話になり、
日付を11月2日…?と言ってしまう卓郎さん、「さっき裕也から、いい夫婦の日(11/22)で覚えて下さいって言われてたんだった」だそうです。
MC中に正しい日付を卓郎さんに教えた和彦さん?はその後卓郎さんから「ありがとう!」と言われるもよく聞こえなかったらしく聞き返すような仕草。
和彦さん、ライブ中に卓郎さんから声を掛けられても聞き取れずにえっ、何?というような仕草で聞き返すことが多いような気がする。ただ単に卓郎さんが話している間は気が抜けているのか、演奏中の轟音で聞こえづらくなっているのか?
序盤に書いたこと、前回の長野公演のレポとも重複しますが、今回のツアーの大きな見どころとして、為川さんのギタリストとしての魅力を思い知るという。
ライブですし、難易度の高い曲ばかりのセトリなのでもちろん細かいミスはあったりもするのですが、それをもう次の音で軌道修正してしまうほどの技術の高さ。
そして東京公演で、目の前で為川さんを見ていて素晴らしいと思ったのが、表情の豊かさ。
暴れる、という程ではないものの軽やかな動きでステージを動き回る様子。
ふと表情を変えたり、それ以外は基本的に笑顔で弾いていたり、客の顔を見ながらニッコリと満面の笑みを浮かべていたり。
弾き方も9mmの曲に合っていて、いつまでも観ていたいと思えるようなギタリストだった。
表情豊かでよく動くギタリストを観ているのはとても楽しい。
今回の本編のセトリはWOLLの最初の曲「生命のワルツ」で始まり、WOLLの最後の曲「太陽が欲しいだけ」で終わった。その中でツアータイトル通り、WOLLの曲とBABELの曲が混ざって並んでいた。
メンバー全員が作詞・作曲を手掛けたことで正に「多彩」だったWOLL曲と、全曲を卓郎さん&滝さんで手掛け徹頭徹尾「統一」されたBABEL曲という、それぞれのアルバムがまるで正反対のようにも思えるかもしれないが、実際混ざってみると何ら違和感がなく、それどころか何だか不思議な繫がりを感じるようだと、聴いていて思った。
特に中盤、それから とスタンドバイミーの2曲を続けて聴いていた時にふと勝手に考えてしまったことがあって
制作された時系列的にはスタンドバイミーの方が先だけれど、続けて聴くと綺麗に繫がっている気がして。
それから では「やけに大きな嵐が近づいて」いる中で、苦しみや戸惑いも見せつつ最後に「わたしはあなたと乗り越えたいのさ」と歌い切り、
続くスタンドバイミーで「嵐が終わったあと」の情景の中で「ただ近くに」「未来は分からないから」と歌い上げる。
「私」と「あなた」、それが例えば“9mm”と“滝さん”なのか、“9mm”と“リスナー”なのか、当てはまるものは色々あると思うが、今この状況を「乗り越えたい」から、「未来は分からない」けれど「ただ近くに」いること。
これが卓郎さんの仰っていた、“どうやって9mmを続けていくか”の答えのように聴こえた。
別のタイミングでのMCで、9mmの身近なバンドであり、つい最近、状況は違えどのメンバーをそれぞれ欠くことになってしまったアルカラとHEREの件にも触れ、(たいすけさんにメールを送ったら「ありがとうニャ!続けることを選んだバンド同士これからもよろしくニャ!」という文章が返ってきたという話だった)
そのアルカラのサポートも為川さんが担っているということで、9mmとアルカラとHEREがとても近いところでバンドを回しているという話もあり。
そして9mmがメジャーデビューから今年で10年経ち、こんな変なバンドが10年も活動するなんてみんな思ってなかったでしょ?などとおどけながらもこうして続けてこれて嬉しい、と話していた卓郎さん。
終盤では「9mmはもう来年の悪巧みを考えている」とまで仰っていて、その言葉で来年も9mmが当たり前のように活動を続け、何か面白いことをやってくれるんだ!と、もう嬉しくてたまらない気持ちに。
9mmとして活動を続けてくれることがどれだけありがたいことかを痛いほど実感した1年間だったので、卓郎さんによるこの一連の言葉が、どれだけ嬉しいことで、どれだけ安心したか。どんな面白いことをやってくれるのか、大いに期待を込めて、来年を楽しみにしています。