最後の駅の向こう

何でもすぐ忘れる人の特に記憶に残しておきたいライブの簡易レポートと趣味のレビューの予定。あくまで予定。

20180527/9mm Parabellum Bullet“カオスの百年vol.12”@日比谷野外大音楽堂

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9mmが2年振りに野音のステージに戻ってきた。

野音の地で初めて開催する“カオスの百年”であり、野音のライブが告知されたのと同時にその存在が発表されたAC 9mm御披露目公演でもあり、サポートの武田さんも為川さんも出演、そして滝さんはフル出演するという盛りだくさんの公演。激しい期待と少しの不安。

 

思えば2年前のあのライブから、9mmの苦難とバンドを続ける為の試行錯誤が始まった。

これまで当たり前だったことが当たり前ではなくなってしまった。

 

それでもメンバーそれぞれが滝さんの代わりにできることを増やし、様々な人たちの協力を得ながら、9mmを続けてきた。少しずつ滝さんも帰ってきて、その試行錯誤が報われ始めた。

卓郎さん達は過度な気負いは持たずにこの公演に臨むようだった。だからこちらもなるべく感傷的にならないように、ただ楽しみに待つようにしていた。それでも数日前からどうしようもない緊張感に襲われたりもしたけれど。

 

 

当日の天気は朝から晴れ。割と雨を降らすバンドである9mmの野外公演でこんなにいい天気だと、もう既にライブの成功に対しての良い予感がする。5月らしく風が気持ちよく、絶好のライブ日和。

 

会場内に入るとステージにはお馴染みのバックドロップ、その下には“CHAOS  IN 100 YEARS”と書かれた幕。ステージ左右の床には大きなミラーボールがひとつずつ。

そしてステージのど真ん中には白い大きな球体がいくつか集まっているような不思議な物体。よく見れば随分変わった形のドラムセットだと気付く。

開演が近付き運び込まれたのはアコギと、それからセミアコタイプのように見えるベース。

 

野外なので客電落ちもなく、メンバーどうやって登場するの?と思っていると開演時刻になり、何の合図もなくまずはかみじょうさんが登場。黒っぽいシャツをきっちりと着こなし、更にこれまたきっちりとネクタイを締めている。

かみじょうさんがドラムを叩き始め、続いて和彦さんがステージへ。同じく黒シャツに、首元にはバンダナ。最後に白シャツ、黒いネクタイ、黒いハットを被った卓郎さんが出てくる。

普段からモノトーンの衣装が多いけれど、ここまでシックな服装でのライブは数少ないだけにまずはそれぞれの装いに目を奪われる。

突然メンバーが登場したため、立てばいいのか座ったままで良いのか、それすら分からないで辺りをきょろきょろと見回していると全体的にそんな感じ(に見えた)で、結局座ったままスタート。

 

 

AC 9mm

 

Answer And Answer

Heart-Shaped Gear

Psychopolis

Battle March

荒地

星に願いを

ハートに火をつけて

太陽が欲しいだけ

 

 

1曲目のAnswer、全く予想外だった、ジャズのような軽やかさのある、とびきりお洒落なアレンジ。ドラムの三連符が何故かとても印象に残っている。

まだ明るい野音のステージと森の中に、そのサウンドと卓郎さんのしなやかな歌声が広がってゆく。

これまで、4人編成、卓郎・和彦・かみじょう の3人編成、卓郎・和彦の2人で、そして卓郎さんの弾き語り と様々な編成のアコースティックで9mmの曲を聴いてきた。そのどれとも全く違うアレンジ。全く違う音。想像と期待をいきなり軽く越えてきて、早くもこの編成がとんでもないことに驚くばかり。

 

続いて「1stゾーン(Termination収録曲だから)」と名付けられたHeart-Shaped Gear、Psychopolis、Battle March、(アコースティックと言えども、やはりかみじょうさんの仕事量は多め)

またその後には「Movementゾーン」として荒地と星に願いを、と9mm本体でも今やほとんど聴けないような曲を惜しげもなく披露。

荒地では卓郎さんがしっかりとソロをきめ、“最遅”のアレンジと卓郎さんが表した星に願いを では、音数を減らしのんびりと繰り広げられる演奏が心地よい。

 

情熱的な原曲と大きく変わり、ダウナーでどこかダークで不穏さのあるような曲調に生まれ変わったハートに火をつけて がまた意外なアレンジ。歌のメロディーがとにかく目立つことで、少し歌謡曲っぽさが強まったようにも感じる。後から卓郎さんが語っていたが、このアレンジは和彦さんによるものらしい。そんな紹介を受けると、いやいやいや…と言いたげなリアクションを取る謙虚な和彦さん。

 

そして最後の太陽が欲しいだけ 原曲では凄まじいエネルギーを放っているこの曲、跳ねたリズムとカラッと明るい曲調がとても多幸感があり、穏やかな楽しさで会場を包む…

という空気だったのでしょうか、全体的には。私もそのつもりで楽しく聴き始めていたのですが、この曲、このアレンジ。2年前にツアー“太陽が欲しいだけ”の、中止になった長野公演 その代わりのアコースティックライブで披露されたアレンジとほぼ同じだったんですよね。

その公演は、2年前の野音の直後だった。

あの時に、あの状況で出来る限りの事をして楽しませてくれた、そんなライブで披露されたアレンジを、この晴れ舞台でまた聴けたという嬉しさと感慨深さに、少し視界を滲ませながら聴いていました。こんなに粋な選曲してくれるなんて…と。

 

ライブ中の雰囲気と同様にMC中も非常に穏やかで、卓郎さんがうっかり喋りすぎそうになって自分で止めていた場面もあった。

「かみじょうくんが登場して、みんな立ち上がるかと」思ったらしい卓郎さん。結果は全員着席のまま、という事で、これには驚きだったようだ。

よくある「新人バンド」設定(何せこれがAC 9mmの初ライブである)で「9mmさんに曲と胸をお借りして…」なんて卓郎さんが言ってみせたり。

 

白い球体がいくつか集まったような不思議なドラムセット、かみじょうさん登場の後に球体の色が微妙に変わったのが見えたので、もしや…と思っていたらやはり球体が光るドラムセットだった!日が落ちる前だったので、分かり辛かったのが惜しかったけれど、MCの途中で話を振られて光らせてみたり、激しくカラーチェンジさせたりしていました。その時にかみじょうさんが思いっきりどや顔をしていて卓郎さんにつっこまれたり、驚いたようなおどけた表情をされていて、演奏中は淡々とした表情なのにこういう時に思いっきり表情豊かになるかみじょうさんを観てこちらも思わず頬を緩めてしまう。

 

アコースティックだけれどこのような編成で、時に卓郎さんはアコギを歪ませソロを弾いたり、和彦さんもベースでコードを弾くような感じだったのが3人とは思えないようなどっしりとした音を生み出していたり(MC中に和彦さんが手首をばたばたと振っていた時があったので、それなりに負担はあったんだろうか) 去年あたりにかみじょうさんが「ジャズドラムを学んだ」と仰っていたが、もしかしてこのアレンジに繫がったのか…と途中で気付いて喜び。

アコースティックだけれども穏やかなだけはなく、長年慣れ親しんだ9mmの曲たちの新たな一面を見ることとなった。5月の爽やかな陽気がぴったりで、この時期に野外で聴けた贅沢さ。まだまだ知らない一面がたくさんある、観ながらそんな事を思っていたらより嬉しくなった。

 

 

AC 9mmが終わるとすかさず転換へ。

何と“CHAOS  IN 100 YEARS”の幕の後ろにいつもの機材が隠れており、次々とお馴染みの機材が登場するという早業。

ひと通りの準備が終わり、だんだん暗くなってきた野音に「Digital Hardcore」が鳴り響く。いよいよ9mm!!

順番に出てくるメンバー、最後に滝さん…滝さんだ…大歓声が爆発する。

 

 

9mm Parabellum Bullet

 

The World

Mr.Suicide

Lost!!

Supernova

Story of glory

I.C.R.A

Vampiregirl

キャリーオン

Everyone is fighting on this stage of lonely

生命のワルツ

Scenes

Termination

Talking Machine

新しい光

 

Black Market Blues

Punishment

 

 

ど頭からThe Worldという初期曲を入れてきたこの時点で、もう既に「特別感」が出ていたような気もするし、「あの頃の9mm」が帰ってきたようでもあった。滝さんは今まで見たことのない、黒いレスポールタイプのようなギターを弾き始める。

続いてはもう本当に久々のこの曲、でもライブアレンジのイントロが何一つ変わっていない!Mr.Suicide!!

初期らしい爆裂っぷりと儚い美しさが混じったこの2曲を野外の開放感の中で聴けた、過度な感慨深さのせいではなく、ただただ曲が美しかった、それだけでもう目頭が熱くなった。

 

Mr.Suicideから間髪入れずにLost!!へ、という繋ぎ、熱すぎる展開に大いに熱狂し、

その次は先日ビバラでも披露されたSupernova ギターが3人いるので、印象的なリフはトリプルリードのアレンジという贅沢さ。この時既に薄暗くなり、「満月」ではなかったけれど、下手側の上空には月が輝いていた。まさか本物の月を眺めながらSupernova聴けるとは…と感激していたので最後はステージもあまり観ず、

“満月の向こうで 満月の向こうで

満月の向こうで神は見ていたの?”

の一節を聴きながら月を眺めていた。その後は薄曇りといった空模様だったため月も隠れてしまい、Supernovaの時だけこんなにもよく月が見えていたことが奇跡的にも感じられた。

 

続いてStory of glory この1年間にあった出来事に思いを馳せながら聴くと、余計に今の9mm自身を歌っているように聴こえる。

“わけなんてなくて笑っていた

おれたちは今夜無敵なんだ”

と、絶叫するように歌ったのは滝さん!!!

滝さんがこんなに力強く、無敵なんだ!!!と叫んだ、それが言葉にならないくらい嬉しかった。

 

次もBABELからI.C.R.A  ここでやらないでどうする、と言いたくなるくらい、会場の規模が大きければ大きい程映える曲、だから嬉しいセトリ入り。間奏のタッピングは為川さんが見事に弾ききる。滝さんはここでライター奏法を披露。

同じくこの大人数で圧巻の大合唱を巻き起こしたVampiregirl かつて定番曲としてたくさん聴いてきたこの曲も久々に聴いた気がする。ギターが3人いるから最後のサビでは音源を再現するかのように演奏。

 

 

ここで卓郎さんが武田さんを呼び込むと、登場した武田さんが為川さんとステージ上でハイタッチして交代。

数日前のLINE LIVEにて予告されていた通り、新曲をここで披露。

BABELの選曲から漏れた、という話も何となく分かるような、相変わらず重たいけどそれ以上に爽やかさもある曲。

“キャリーオン やぶれた夢をつないで”

というサビの一節がまるで今の9mmをそのまま歌っているようだった。

 

Everyone is fighting on this stage of lonely  去年この曲を演奏していた時には、最後のコーラスをかみじょうさんが担当していた。しかしこの日はドラムセットにコーラス用のマイクは無かった。その代わりに頼もしい歌声を響かせたのは武田さんと、滝さん。

かみじょうさん、やはり去年は滝さんの代わりを担っていたんだ。かみじょうさんのコーラスがなくなったのは少しだけ寂しくもあるが、滝さんが帰ってきた実感がまたここで湧いてきて嬉しくなった。

 

原曲のアコギのイントロが音源で流れてから演奏に入った生命のワルツ、これは2年前の野音と同じ。その時は1曲目だった。アウトロでは和彦さんが思いっきり勢いをつけぐるぐると回る。キャリーオンからこの生命のワルツまで、「前に進む」姿勢や生命力に溢れた曲を並べてきた、これが今の9mmの意志を表しているように聴こえてならなかった。

 

そんな前向きな流れから次はかなりのレア曲、Scenes

“また会おう かならず”   の一節が頼もしい。

“燃えるように赤く舞い散る花びら”

の歌詞通り、温かみのある赤い照明、幾つもの四角が花のような模様を描き出す。それが一転、

“雪のように白く舞い散る花びら”

からは真っ白く変わり、ステージの壁に水玉を描く様が見事だった。

 

Terminationではサビの大合唱、間奏でソロを弾きながら最終的にステージを元気いっぱいに転げ回る滝さんの姿。ステージの上で思いっきり動き回る滝さんが、遂に、帰ってきた!

この曲の

“最後の駅の向こう 何から始めよう”

という一節が大好きで、それは退廃的な雰囲気があるこの曲に、最後の最後に少しの希望を持たせるような言葉だから。

この日に聴いたこの一節はこれからの9mmが見据える確かな希望を表しているかのように聴こえた。

 

Talking Machineのいつものイントロ、いつも通りマラカスを手にする卓郎さん。いつも通りの光景…かと思いきや、滝さんが卓郎さんからマラカスの片方をもらい、ふたり一緒にひとつのマイクの前で一緒にマラカスを振るというまさかの展開!細かい表情は見えないものの、卓郎さんと滝さんの楽しそうな様子はよく伝わってきた。

トーキンでの照明、細かな光の粒が上へ上へと上がっていくような。ステージ床に置かれたミラーボールはこの為のものだった。光の粒がステージいっぱいに広がる美しさ。ミラーボールをこんな風に使うんだ!!という驚き。

トーキン2サビの前、“何べんやっても”で和彦さんと滝さんがぴったりのタイミングで飛び上がる。かつてはこれもお馴染みの光景だった。しかししばらく、この光景すら観ることは叶わなかった。ようやく、ようやく観られた…これが観たかった!!

 

本編ラストの新しい光では卓郎さんに煽られるとこの日一番の大合唱が巻き起こる。最後にはまるで祝砲のように放たれた金テープがすっかり暗くなった夜空を彩った。

 

 

 

アンコール、メンバー4人と武田さん、為川さんと全員ステージに出てくる。事前に「6人では演奏しない」と告知されていたが、6人で演奏が始まる。

BMB、卓郎さんが「日比谷野外大音楽堂にたどり着いたなら!!!」と歌詞を変えて歌う。武田さんも為川さんも隣に並んで楽しそうにギターを弾き、時には滝さんがそれに加わる。

 

そしてこの無敵の6人編成でのラスト…静かなイントロが鳴り響き、滝さんの爆速カッティングが炸裂する!間違いなく9mm史上最強の、6人でのPunishment!!

曲に入る直前、滝さんが卓郎さんと何やら確認を取るように顔を見合わせていた。もちろん声も聴こえず、細かい表情も分からない。でも「いけるよ」と言っているように、見えた。ほんの僅かな瞬間で、もしかしたら思い違いかもしれないけれど、こんな瞬間でさえ嬉しかった。

間奏ではかみじょうさん以外の5人がステージ前方に並んで弾く圧巻のほぼBABELスタイル、また滝さんがソロを弾いた時だったか、無数のスポットライトが一気に滝さんを照らす。この時の滝さんのギターヒーローっぷり…暴れ回りスポットライトが大体外れる滝さんだから、これは貴重な光景だったかもしれない。

 

 

曲が終わると卓郎さんが

武田将幸!為川裕也!中村和彦!かみじょうちひろ!(「かみじょう」で噛んでしまって痛恨のやり直し)菅原卓郎!滝善充!!とメンバーの名前を順番に呼ぶ。言わずもがなではあるが、今やサポートの武田さん、為川さんも大事な9mmメンバーであり、全員でこの歓喜の公演を締めくくった。また割れんばかりの大歓声が巻き起こった。

 

滝さんはいつものように真っ先にステージから消えていったが、どこかやりきった表情に見えた。卓郎さんは上手、下手、真ん中、前も後ろもまんべんなく、丁寧に客席に向かって手を振ったり、笑顔を向ける。和彦さんもピックを投げまくりながら同様にゆっくりと挨拶をしてゆく。かみじょうさんはスティックを何本も客席に投げ入れ、Tシャツの両端をつまみながらバレリーナのようにエレガントな挨拶をし、ステージを後にする。

 

 

終わった。無事に、野音公演が終わった。

 

滝さんが全16曲を完走した。

まだ大変そうなところはサポートのおふたりに任せ、それでもここぞというところは台の上に立ったり、前に出てきたり、動きまくり転げまわりながら全部、弾き切った。

昨年の7月にはわずか2曲、それが12月には9曲を弾き、そして今回16曲も。正直、予想よりも遥かに早く、滝さんが復帰してきている。まず、それにとても安心した。無事に終わった。終わった後に安心して完全に力が抜けてしまった。じわじわと嬉しさがこみ上げてきた。滝さんが、帰ってきた。

 

卓郎さんはMCで「新しい伝説作ろうか!」と言っていた。野音の少し前には「リベンジではない」とも言っていた。本当に「リベンジ」なんかじゃなかった。因縁のステージを、あの時の何倍も素晴らしい景色にすっかり塗り替えてしまった。

 

セトリ全体を見てみると、どこまでも前向きなメッセージが込められているようにしか見えなかった。

去年から卓郎さんが言い続けていた通り、9mmはもう前に進むことしか考えていない。

何せAC 9mmの1曲目から

“はじまったんだ 何言ってんだ 終わりじゃないのさ”と宣言して始まったのだ。

 

ここ2年間で聴けなかった曲がたくさん演奏された。間違いなく、BABEL曲まで弾きこなすサポートのおふたりのお陰だ。ギター3本の5人編成は、結果的に原曲を再現するようなツインリードやそれ以上のアレンジが可能になり、単純に既存曲の表現方法が増えた。これまでのアコースティック編成の経験から、AC 9mmという新しい表現方法を手にして、更に演奏できる曲が激増した。

大変な2年間だったことは間違いないけれど、9mmがこの2年間で得たものはこんなにも多かった。それを実感できたライブでもあった。

 

最後に、卓郎さんが中盤で言ったこと。

「もうダメかもしれない。やめようと思った。その度にライブで見てきたみんなの顔が浮かんできて、考えるのをやめた。」

言葉は多少違うかもしれないが、卓郎さんはこんな言葉を客席に投げかけてきた。

 

2016年、満身創痍の状態で客席に向かって「助けてくれ」と言いながらステージに立ち続けた卓郎さん。

2017年、9mmを止める可能性があったことを明かしながらも、「9mmを続けるんだ」と言いながらステージに立ち続けた卓郎さん。

そして2018年。以前のように弱音を隠すことがなくなった。それはもう人前で言えるくらい、今は「大丈夫」だということ。卓郎さんがすっきりしたような笑顔で、この言葉を言った瞬間が、強く目に焼き付いている。

 

卓郎さん、2年前のあの時から、客席に向かって、ファンに向かって、何度も何度も感謝の気持ちと優しい言葉を投げかけてくれた。自分たちがどんなに大変な時にも、こちら側への気遣いの言葉を口にしてくれた。

(ちなみにこの公演、チケットのとあるトラブルが発生してしまった。それが発覚した時にも卓郎さんはすぐに、「だいじょうぶ」「一緒に楽しもう」と気遣いの言葉を下さっていた。)

 

野音公演の後からこの日に披露される新曲が9mmからの「プレゼント」として無料ダウンロードできるようになることが発表されていた。嬉し過ぎるプレゼントを、ライブと同じくらい楽しみにしていた。

ところがライブ中盤、何とこの新曲を来場者へのお土産に、CDとしてプレゼントするという更なるサプライズが発表された。形は何であれ新曲を聴けるだけで嬉しい、でもやはりCDとして手元に来ることはもっと嬉しい。

 

本当は、感謝の気持ちを表したいのはいつだってこちらの方なのに。でも、ただのファンなので何ができるわけでもない。それが当たり前で、ただ9mmの曲を聴きライブを観続けることが唯一できることだと思っていた。

それだけに、卓郎さんのこの言葉は、ただライブを観続けていたことがほんの僅かでも力になれたのか、とおこがましいことは分かっていながらも嬉しかった。本当に優しい、卓郎さん。優しいバンドだ、9mmは。

 

 

卓郎さんの言葉通り、間違いなく伝説の一夜になった。

その瞬間が目の前で繰り広げられていたこと、その瞬間に立ち会えたことが感無量です。

 

でもこの公演も、やがてこれからの9mmの中で輝かしい出来事のひとつ、あくまで“歴史のひとつ”として記憶に残るライブとなるのでしょう。だって、9mmはこれからもっと「最高」と「無敵」を更新し続けるのだから。