最後の駅の向こう

何でもすぐ忘れる人の特に記憶に残しておきたいライブの簡易レポートと趣味のレビューの予定。あくまで予定。

20180909/9mm Parabellum Bullet “カオスの百年TOUR 2018”@スペシャアプリ(スタジオライブ生配信)

2018年の“9mmの日”、本来であればZepp Sapporoにて「カオスの百年TOUR」初日公演が開催されるはずだった。

ほんの数日前に北海道を襲った地震により、当然の判断ではあるがこの公演は延期が決定。

しかし、すぐさま公式から告知されたのは「9月9日にスタジオライブを生配信する」という、嬉しい報せ。

被災地のために、アーカイブを長めに残すという配慮付きで。

 

この日の公演は特別に、メンバーが正装でライブをすること、そして客は携帯であればライブの模様を撮影することが許可されているという企画「フォーマル&モバイル」が予定されていた。

配信でも正装なのか、そもそも何曲ぐらいやるのか、事前に募ったリクエストからはどの程度反映されるのか…などとあれこれ考えながら、まるで本当のライブの開演前のような気持ちで配信開始を待つ。

 

 

ライブの開演時刻に合わせた17:30、いよいよ配信が始まるとぼやけたバックドロップの一部、続いてバスドラに描かれたロゴが映る。いつものSEもなく(版権の関係か)、メンバーを映し、ライブが始まる。

 

やはりメンバーは正装。スーツに蝶ネクタイ姿の卓郎さん、ハットに黒スーツの滝さん、見慣れた黒シャツの和彦さん、端に映るため様子がよく分からないが暗めのスーツを着た為川さん。

ここまでは何となく予想していた通りの、とても素敵なフォーマル衣装。しかしただ一人、かみじょうさんは袖にフリルの付いたシャツに青いジャケット、まるで貴族のような衣装でこれは流石に予想外だった!確かにフォーマルですけどかみじょうさん!笑 ドラム叩きづらそうな衣装なのでそこにも驚き。

 

 

  1. Discommunication
  2. ハートに火をつけて
  3. Sundome
  4. Wildpitch
  5. 21g
  6. カルマの花環
  7. The Silence
  8. Sector
  9. キャリーオン
  10. 光の雨が降る夜に

 

 

最初は定番曲から。序盤から滝さんも生き生きと動き回り、本当のライブの様子を観ているかのよう。

どちらの曲でもソロでは滝さんが同じ音を使っていた。先日のLINE LIVEで滝さんが最近作って気に入っていると仰っていたオルガンのような音がきっとこれなんだろう。確かに不思議で面白い音。

この流れで、定番曲を多めに入れてくるのかと一瞬思ったが、そのつまらない予想を一瞬でぶっ飛ばすかのような一言が卓郎さんから告げられる。

 

「カオスの百年TOURではリクエストを募りまして…そのTOP5をこれから演奏します」

 

文字にすると伝わり辛いが、この一言にどれだけ驚いたか!上位曲をごっそりセトリに入れる、と。

リクエストは募ったが、ランク入りしたから必ずやるとはっきり言及されていた訳ではないので、いきなりここで聴けてしまうという大盤振る舞いである。

 

まずは5位のSundomeから。ライブではハットの速い刻みから入り、徐々に音が重なっていくというアレンジ。かつてのライブでは度々聴いていて、とても好きだったアレンジ。

シリアスな空気、心地いい緊張感の中でギターのメロウなフレーズが重なる。卓郎さんの高速カッティング、そして溜めて溜めて一気に爆発するようなイントロ。今の体制、今の機材、今の演奏力で繰り出したSundomeは、やはりキレがとんでもないことになっていた。滝さんは前述のオルガンのような音をここでも駆使。

 

続いて4位。事前にランキングを聞いていたので次の曲を知っていた。

いよいよ聴ける、と身構えた。リクエストを募る、と聞いた際に頭の中に真っ先に浮かんできた1曲。早々と願いが叶った。画面越しとかもうそんなのは関係ない。

 

Wildpitch!!!4年振りのWildpitchだ!!!

 

カウントから和彦さんのシャウトが炸裂した瞬間に腹の底から喜びが湧き上がってきた。ギター3本の重さは想像を遥かに越えていた。滝さんが思いっきり弦を掻き鳴らす。タッピングは映らなかったけれどきっと為川さんだ!間奏のツインリードは最高にかっこよかった、もう余計な表現など要らないくらいにかっこよかった。やっとこのツインリードを聴けた…という実感が込み上げてきてじわじわと視界が滲んだ。思いっきり頭を振ったりネックを振り下ろす和彦さん、そして渾身のシャウトを叩きつける和彦さんの姿に思わず歓声を上げそうになった。嬉しかった、ただひたすら嬉しかった。

 

次は3位の曲…と思いきやここで、来場者に配られるCDに収録される新曲が。

既に解禁されている21gから。イントロが始まったと思ったら一旦演奏が止まり、卓郎さんが何事もなかったかのようにもう一度曲紹介を始める。笑 こんなところも本当のライブを観ているよう。

まだ聴いて日が浅いのでざっくりした印象だけれど、サビの開放感と明るさはこのバンドにしては意外な程だけれど、新しい一面がまた観られたようで楽しい。(とはいえこの曲はTermination期に作られた曲というのがまた驚き)

続いて何の説明もなく、聴いたこともないリフが演奏される。ギターとベースの若干不穏なユニゾンがかっこいい。

まだ解禁されていなかった、カルマの花環!21gとは打って変わってマイナー調の威勢の良い曲。これもざっくりした印象になってしまうが、個人的にはかなり好みで、間奏で拍子が変わるのもワクワクする。まだ解禁されていないから、もしかしたら配信では演奏しないのでは、とも思っていたが、そんな出し惜しみをするようなバンドではなかった。

 

新曲の説明と、かみじょうさんの貴族のような衣装にほんの少しだけ触れ、また為川さんが着ている正装が卓郎さんのソロの際の衣装だと説明される。暗くてよく分からなかったが、よく見ると確かにあの青いスーツ。素敵に着こなしているのはやはり卓郎さんと似ているから当然なのか…細身だから、というのもあるとは思うけれど。

 

ランキングに戻り、3位のThe Silence

嵐の前の静けさ、のようなイントロから、滝さんの爆速カッティングへとなだれ込む。この曲も随分久々に聴けた!壮絶なイントロはこれもギター3本で聴きたかった!今や滝さんはすっかり元気になっているご様子とはいえ、滝さんによるあの爆速カッティングがまた聴けたと心から嬉しくなる。大サビ前の和彦さんのシャウトの裏では3本のギターが凶悪な音を出している。実際に目の前で聴いて、この部分の音圧を体感したかった。

 

2位はSector、これもいつ振りだろうか。卓郎さんと滝さんの元気なツインボーカル、威勢のいい演奏に嬉しさが止まらない。アウトロでぐるぐると動く和彦さん、ドラム乱れ撃ち状態のかみじょうさん。自宅で観ていることを忘れて、拳を振り上げそうになった。

 

「本当にシングル曲が一曲も出てこないという。素晴らしいですね」と卓郎さん。

圧倒的な人気で1位となった曲…の前にキャリーオンを演奏。

スカッとしたメロディー、ひとつひとつがとんでもないエネルギーを発する言葉。解釈は色々あると思うが私はこの歌詞が卓郎さんから滝さんへのメッセージにしか聴こえなくて、また「声を聴かせておくれ」という卓郎さんの呼びかけに答えるようなフレーズを全員が弾いている、この部分が堪らなく好きで、また不安の多い現状でこの歌が流れてくることへの頼もしさを噛みしめながら聴いていた。

 

この曲が主題歌となっている映画「ニートニートニート」は北海道が舞台らしい。

振替公演を必ずやるから、待っていてくださいと北海道の人たちに告げた、卓郎さんの優しさ。

 

そして最後に、満を持して1位、光の雨が降る夜に

イントロのツインリードはトリプルリードの贅沢なアレンジに!これも、今の編成で聴きたいと思っていた部分のひとつ。サビで一緒に歌う卓郎さんと滝さん、そしてその向こうにいる和彦さんが並んだ光景を時折カメラが抜く。最強の並び。かっこよすぎる画。どんどん高揚感を煽りいよいよアウトロのツインリード、卓郎さんと滝さんが向かい合ってギターを弾く!滝さんが復帰して、こんなにも早くこの光景を観られるなんて正直思っていなかった。それだけに本当に本当に嬉しかった。最後に和彦さんがベースを高く掲げた、その瞬間にまた思わず大歓声を上げそうになった。

 

 

約1時間、全10曲、とても濃い10曲。

今年の新曲3曲を全て、そしてランキング上位5曲も。配信だからと言って、全く出し惜しみのないセトリ。

本当に目の前でライブを観ているような気持に何度もさせられた、迫力と熱のこもった演奏。

いつもフロアを見渡す時と全く同じ眼差しで画面のこちら側を見てくるかのような卓郎さんの目。安全第一とはいえよく動く滝さん。以前は曲の中でも休み休みギターを弾いていたが、今回はほとんど弾いているようにも聴こえた。安全第一の滝さんに代わるかのように、思いっきり動いていた和彦さん。カメラにあまり抜かれなかったが、本当は為川さんの様子ももっと観たかった。そして衣装は奇抜ながらいつも通り冷静な表情のかみじょうさん。

 

本来であれば、札幌の会場に居る人達だけが目の当たりにできるはずのライブだった。それが配信になったお陰で、結果的に日本全国、リアルタイムでは難しい方もいたとはいえアーカイブを含めれば「この日のライブを観たいと思う全ての人が観られるライブ」となった。

本来のライブ通りメンバーは全員正装。更に配信という形だからライブの模様をスクショできる、つまり本来のライブと同じく携帯であれば撮影しても良いという状況。曲数の制限と配信であることを除けば、予定通りの「フォーマル&モバイル」だった。

しかもカメラを何台も駆使しメンバーを映すことで、客は全員特等席状態でライブを観覧できたことになる。

「フォーマル&モバイル」を、全国の9mmファンが参加できた。結果的に余りにも粋な計らいだった。

さながら“カオスの百年TOUR初日公演@日本全土”だったな、と。

確かに今日がツアー初日だった、最高のツアー初日だった!

 

卓郎さんはいつものように「ありがとう!」と言ってスタジオライブを締めくくっていたけれど、今年の9mmの日を今できる限りのことで最高の一日に変えて下さった、その配慮にこちらがありがとう、と言わせてください。