最後の駅の向こう

何でもすぐ忘れる人の特に記憶に残しておきたいライブの簡易レポートと趣味のレビューの予定。あくまで予定。

20180915/9mm Parabellum Bullet“カオスの百年TOUR 2018”@仙台PIT

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“カオスの百年”というタイトルを冠したツアーは2015年以来、3年振り2度目の開催。

初めから告知されていた通り、来場者にCDが配布されること。また後々情報が解禁になっていったように、CDは新曲に加え各地で異なるライブ音源が収録されること。それが、5月に開催された野音ワンマン“カオスの百年 Vol.12”の音源であること。更に、ツアー開催にあたってリクエストを募ったこと。

こんなに特別なことだらけのツアーなんて、過剰に期待するしかないじゃないですか!

 

初日は地震の影響で2019年3月17日(9mmの結成記念日であり、15周年に突入する非常にめでたい日である)に延期。しかし急遽行われたスタジオライブがリクエスト曲上位5曲全て演奏されるという驚愕のセトリだったため、結果的に今ツアーのセトリに更なる期待が膨らむ。和彦さんの地元である仙台から、本格的にツアーが始まる。

 

 

会場に入ると、何とフロアの真ん中には花道が!これを見た瞬間に、楽しそうにここまで出てくるメンバーの様子が頭に浮かんできて、絶対にここで見るしか…!!と、花道の前で待機。

ステージにいつものバックドロップは無い。開演時刻を少し過ぎて、客電が落ち、普段通りDigital Hardcoreが流れると大箱用の巨大なバックドロップが派手に点滅するライトを浴びながらゆっくりと上がってくる。何度見ても大好きな演出、緊張が高揚感に変わる、遂に、始まる。

 

 

生命のワルツ

Wildpitch

Discommunication

Sleepwalk

カルマの花環

Vampiregirl

インフェルノ

21g

Sundome

光の雨が降る夜に

キャンドルの灯を

ホワイトアウト

Termination

marvelous

Talking Machine

Answer And Answer

sector

 

キャリーオン

Punishment

 

 

順番に出てくるメンバー。黒いカオスTを着た滝さんは曲が始まる前から花道に出てくる。真っ黒なTシャツ、笑顔の卓郎さん。和彦さんは珍しくワインレッドのような色のシャツ。気付くと既にドラムセットに到着していたかみじょうさんは青のタイダイTシャツ。(為川さんは黒い衣装、しかし残念ながらよく見えず)

 

メンバーが揃うと生命のワルツの音源版のイントロが流れる。もう最初からよく動く滝さん、和彦さんはネックを叩いてみたり、最後にはオフマイクで叫ぶ。少し離れているこちらにも僅かに聞こえるくらいの気合の入った叫び。滝さんは花道に出てきて、ステージと向かい合ってギターを弾く。巨大な双頭の鷲と対峙する滝さんの立ち姿、頼もしい背中。

 

次はWildpitch、まさか2曲目で入って来るとは、という驚き。リクエストした曲だったこともあり、嬉しさのあまり和彦さんのシャウトを聴いた瞬間、大歓声を上げてしまった。

数年振りに目の前で聴けたWildpitch、今の9mmの演奏で聴いたWildpitchは本当にキレがとんでもないことになっていた。Aメロではあんなに早い曲なのにかみじょうさんがスティックを回しながらハットを叩いていた。「答え以外は何でも」の、“何でも”の部分、卓郎さんが音源よりも少し抑揚を長くして歌っていた。序盤のタッピングは為川さんが見事に決め、サビの卓郎さん滝さんによるツインボーカルと間奏のツインリード、これが聴きたかった!!これを今の9mmの演奏で聴きたかった!!!ありがとう!!!

そういえばこの曲は和彦さん、ピック弾きだった。昔の曲はピック弾きが多めな気がする…?

 

ディスコミュを挟んでここでリクエストのTOP10には入っていなかったSleepwalk!卓郎さんの「む だ づ か い……」がもちろん聴きどころで、これも聴きたかった。それ以上のハイライトは1サビ後、花道に出てきた和彦さんがベースだけになるパートを弾き、卓郎さんがその後ろで「む だ づ か い……」を歌う。

花道の先のあたりにいたのでこの時の和彦さんを下から見上げるように観ていて、長い手足のすらっとした長身でベースを構える和彦さんの立ち姿、そのままサビまで花道でベースを弾く和彦さんの姿があまりにも美しくて目を奪われ、ずっと和彦さんを観ていた。

 

ここでMC。卓郎さんが「イントロクイズ状態のセトリ」と表現していたが、序盤にしてもうレア曲を連発という出し惜しみ一切なしのセトリ。終わったら忘れずにCDを受け取って帰ってね、忘れないように最初と最後に言うから!(笑)という優しい忠告の後に続くのはその新曲に入っている、カルマの花環。

キャリーオンや21gは割と明るい印象の曲で、それとは逆にカルマの花環は結構重たい印象。メロ隊とベースがユニゾンで弾くイントロが不穏な雰囲気を出していてかっこいい。まだやり始めたばかりの曲だからか、メンバーの動きは控えめな気がした。

 

次はVampiregirl、この曲すらしばらくの間、あまりセトリに入っていなかった。久々でもフロアからは大合唱が返ってくる。

インフェルノ、あっという間に終わってしまったが、最近はよく穏やかだったり楽しそうな笑みを浮かべる卓郎さんがこの曲では鋭い眼差しで真っ直ぐ前を向き、「命を燃やし尽くせ」と歌っていた、その瞬間がはっきりと記憶に焼き付いている。

 

次の新曲、21gは滝さんによると2006年ぐらいに作った曲で、Terminationリリースの時にちゃんとレコーディングまでしたが日の目を見なかった曲。それをこうして2018年に届けられることができた、と。卓郎さんは「曲は宝だね」と言っていたが、この言葉には共感しかなくて、10年以上の時を経て素晴らしい新曲として、日の目を見るなんて素敵な話じゃないですか。古いバージョンの21gもそのうち聴けるようにしたいと話していたので、今後Termination期の21gが聴けることにも期待。

 

かみじょうさんが小刻みにハットを叩く、もうそれだけでどの曲か分かる。一点を見つめながら黙々と叩くかみじょうさん、この時の真剣な表情にはかなり見惚れるというか、惹かれるものがあり、目が離せなくなった。そこに緩やかに重なるギター、卓郎さんの高速カッティング、溜めて溜めて炸裂する音、Sundome。

この緊張感を、今の9mmの演奏で、聴きたかった。配信で観ていただけでもそれが伝わってきていた。それを目の前で演奏された時、何か圧倒的なものと向き合っているような気分になり、聴いているだけなのに全く気を抜けないような緊張感に包まれて曲が終わるまで動けなかった。

これも本当はリクエストしたかったけれど泣く泣く諦めた曲だったので嬉し過ぎるセトリ入り。

 

リクエストでぶっちぎりの1位だった光の雨が降る夜に、イントロはトリプルリードになったことで音が分厚く、妖しげな雰囲気が更に増していて、ギターが3人いるこの編成だからこそできる贅沢なアレンジ。

間奏では上手を観れば滝さんが台の上でソロを弾きまくり、下手を観れば和彦さんが派手なスラップを披露、後ろを観ればかみじょうさんがシンバルをミュートする(個人的にかみじょうさんがシンバルを掴むところがとても好きなので)という、どこを向いても眼福、目が2つでは足りないような光景。アウトロのツインリードは卓郎さんと滝さんが花道まで出てきて、本当に楽しそうな笑顔で向かい合って弾いていた。

 

暗転、和彦さん側から歓声が上がる。アップライトに持ち替えた和彦さん。と来れば次の曲はもちろん、キャンドルの灯を。仙台だから和彦さんの見せ場が多い曲として選ばれたのだろうか。アウトロではお馴染み、アップライトを華麗に回して魅せる。

 

キャンドルからホワイトアウト ステージが真っ白い照明で雪景色のように染まる。滝さんが弾くホワイトアウトをライブで聴けたの、よく考えたらこれが初めてなんじゃないか?それまではどっしりと構えて力強くベースを弾いていた和彦さんが、この時にはすらっと真っ直ぐに立ち、柔らかい手つきで優しげに弾いていた。

 

Termination、イントロで高くネックを掲げる和彦さんと卓郎さん。卓郎さんに煽られると返ってくる大合唱、間奏では生き生きと花道に出てきてソロを弾き、弾ききると勢いよくフロアに向かって腕を伸ばし指をさす滝さん!真っ直ぐ前を見据える滝さんの強い目力と勇ましい表情!!

 

marvelousからTalking Machine、かつてはライブ終盤のど定番の流れだったこの2曲。

marvelousのアウトロのカオスパートに久々に飲み込まれる嬉しさ、トーキンではふと滝さんに視線を移すと卓郎さんがマラカスを振る横でペットボトル振ってた!!そういえば野音の時にはマラカスを一つもらって一緒に振っていた。ここのギターを為川さんに任せたことで滝さんが何かしら振れるようになったのか、と終わった後に気付く。2サビ前の「何べんやっても」では和彦さんが飛び上がる。後から聞いた話によると、滝さんも同時に飛んでいたらしい。この両翼のジャンプが復活したことがたまらなく嬉しい。

 

Answer And Answer、イントロのギターは滝さんが復帰した今でも卓郎さんがそのまま引き継いでいているようで、花道まで出てきて弾き始める。これを弾く卓郎さんの姿を真横から観られたのは大変貴重な光景だった。

 

最後の曲、sector、あのイントロの三連符がもの凄い音圧で叩きつけられた瞬間、大袈裟かもしれないけれど、「凱旋」のイメージが浮かんできて、sectorをよくライブで演奏していたあの時の9mmが、巨大なバックドロップを背負って暴れまわる無敵のギタリスト滝善充が遂に「9mmのワンマンライブ」に、帰ってきた!いや、ただ帰ってきただけではなくて当たり前かもしれないけれどあの時の何倍もかっこいいバンドになって、帰ってきたのだと実感した。単純にsectorで終わるライブがあまりにも久し振りで、ここ最近の状況を考えるとこんなにも早くsector締めのライブがまた観られるなんて思っていなかった。とにかく嬉しかった。

 

 

アンコールで再びメンバーが登場。

卓郎さんが嬉しそうに「今日は滝も最後までいるよ」「目撃者多数ってことでよろしく」と話す。2年前のツアー(太陽が欲しいだけ)では、滝さんはアンコールに出られなかった。だからその時のことを指していたのだろうか。

 

「みんなを連れて行く」という言葉からのキャリーオン 卓郎さんが「声を聞かせておくれ」と歌った後にそれに返事をするようにかみじょうさん、和彦さん、滝さん、為川さんが音を返すこの部分が大好きで、来るぞ…来るぞ…と楽しみにしていた瞬間。ここに完全に予想外だったが、更に客席からも卓郎さんの呼びかけに返事をするように無数の拳と大歓声が上がった。ステージもフロアも関係なくあの場にいた皆が卓郎さんの呼びかけに応えた!!驚きつつもこの一体感に胸を打たれながら観ていた。

 

この日最後の曲、Punishmentでは卓郎さん滝さん和彦さん、そして為川さんも遂に花道へ!花道に4人並んで間奏のソロを弾く!元気に客を煽る滝さん!ありがとう花道…!!

 

本編終わりでもそうだったけれど、滝さんは普段通り早々とステージを去る。為川さんも少しこちらに挨拶をして、すぐに去ってゆく。和彦さんと卓郎さんは花道まで出てきて丁寧に挨拶。卓郎さんのあのお辞儀を、真横から眺めるというこれまた貴重なものを観られた。頭を深々と下げる様子、しなやかな長い腕は指先までとても美しかった。

そんな中でステージの方を見てみると、スティックを投げ入れていたはずのかみじょうさんが何故かステージの下に降りていて、何やってるのかなと不思議に思っていると、どうやら投げたスティックがステージ前の通路に入ってしまったようで、それを自ら取りに行き、ステージに上がって投げ直していた。かなりの高さのあるステージに軽々と飛び乗るかみじょうさん、すごい…。

和彦さんがピックを大量に投げ込み、笑顔でステージを去る。

 

 

仙台は和彦さんの地元、ということで普段9mmではマイクを通して話さない和彦さんも喋る。中盤、スタンドからマイクを取ると下手から大歓声。

みんな気付かなかったかもしれないけれど今日から和彦さんのマイクが変わった、という話から入る。四角いフォルムのマイクに変わっており、和彦さんマイク変えたのか、と何となく気付いてはいたけれども。

スタンドに刺さっている時は良いけれど「手に持つと車掌さんみたいになってしまう」という絶妙な例えで笑いが巻き起こる。

また、ワインレッドのシャツを着ている理由について「楽天カラーです」とのこと。なるほど。

そんな感じでのんびりと和彦さんが喋っていると卓郎さんがドラムセットの台に座ってニコニコしながら和彦さんの話を聞いていて、そのうち滝さんが卓郎さんの横に座り、更に為川さんも滝さんの隣に座る。3人揃ってちょこんと座っていた様子が大変微笑ましくて、(年上の男性にこんなことを言うのは失礼にあたるかもしれないが)佇まいが可愛らしくて。かみじょうさんも徐にドラムセットに足を乗せて寛ぐような姿勢で和彦さんを見守るという、和やかな場面があった。この時だったか?和彦さんと話す卓郎さんがいきなり訛ってみせ、つい東北訛りが出る…という流れもあった。

 

どこかで入ったMCにて、卓郎さんがリクエストの結果について話し、

「シングル曲…シングリー(笑)な曲は2票ずつぐらいしか入ってなかった。Black Market Blues、2票!新しい光、2票…」と話していた。

先日9月9日のスタジオライブについて、公演が中止になるかもしれないと聞いた時に、卓郎さんもスタッフさんも同じ気持ちで、配信をやりたいと思ったこと。延期にはなったけれどあれがツアー初日だった、と卓郎さん。あの素晴らしいセトリの配信が、まぎれもなくツアー初日だと思っていたけれど、それは9mmチームも同じ気持ちだった。

 

また来年について、札幌公演の振替日が3月17日で9mm結成日の「疑いがある」日です、と。やはり狙ってこの日にしたのかなと思ったのと、疑いとは?と思ったが初めて4人でスタジオに入った日だから、「結成日の疑い」ということらしい。そろそろ新しいアルバム聴きたいでしょ?年内に仕込みたい、と。「出す出す詐欺にならないように」しないと、というようなことを少し表現が違うかもしれないが仰っていた。

仙台という事でARABAKIの話題も出していて、来年おれたち15周年で出ない訳ないよね、今年も6、8?(ステージ)出てるから…と何かを匂わすようなことを言っていた。この日の夜に解禁されたARABAKIのロゴには二丁の銃と弾丸。何かあるのだろうか。

 

 

全部で2時間足らずとはいえ、アンコールも含め全19曲。滝さんがフル出場し、更にこのセトリ。

振り返ると、何より為川さんがこの初期曲連発セトリを弾き切ったことへの驚き。凄腕のギタリストであることは去年十分に思い知らされたけれど、本当に化け物みたいなギタリストだなと改めて。

 

花道があるなんて想像もつかなくて、入場してかなり驚いた。9mmの皆様は花道があると普段以上にテンションが上がって楽しそうにするから、よくぞ作ってくれた!!と。更に花道を囲むように柵が出来ているので、結果的に柵の距離が増えていて、最前列状態で観られる人数が通常の倍くらいに増えてとても観やすくなっているという有難さもあり。メンバーが近くで演奏して下さるのを真横から見られるのがもの凄く面白い。

 

今回は花道先端のすぐ近くで観ていて、上手に背を向けるような体勢だったのでギター陣はあまり見えず。その代わり、リズム隊はとてもよく見えた。かみじょうさんもちょうど卓郎さんが被らない位置だったため、こまかいところまでしっかりと観ることが出来た。どの曲だったかすっかり失念してしまったが、セッションからイントロに入る直前、卓郎さんがかみじょうさんとアイコンタクトを取っていた。そんなところまでよく見えた。かみじょうさんがその一瞬、ほんの僅かに表情を緩めていた、気がした。

滝さんがその暴れっぷりでキャップを吹っ飛ばすも、すぐさま拾ってかぶり直したり空中でキャッチするのが昨年末からのお馴染みになりつつあるが、この日はよく見えなかったもののキャップが上手くギターのヘッドに引っかかっているようだったり、落ちたキャップを卓郎さんが拾ったり、というような場面もあった。

滝さんはMC中に相槌を打つようにギターを鳴らしていた。気の抜けたようなフワフワなメロディーを弾いたり、運指練習みたいなフレーズを鳴らしてみたり。休養する少し前はあまりやらなくなってしまっていた気もするが、復帰後はまたこのような相槌が聴けるようになった。

髪がまた伸びてきた和彦さん、演奏中は目元が髪の毛ですっぽりと覆われていることが多かったけれどMC中には髪をかき分けて顔がよく見えるようになっていた。ずっと笑顔だった。

それから今更かもしれないけれど、演奏中の和彦さんをずっと見ていて佇まいの美しい人だな、と実感した。勢いのある曲では長い脚を広げてどっしりと構え力強く弾く姿。緩急のある曲では頭から足まで真っ直ぐにして立つ、すらっとした立ち姿。ステージギリギリ前まで出てきてはフロアを煽り、曲が盛り上がるところでは思いっきりベースをぶん回したり自らがぐるぐると回転する。どれもとても絵になる。セトリ入りを期待していた和彦さんの曲は入らなかったけれど、Sleepwalkやキャンドルは和彦さんの見せ場が長くて、もしかして仙台だからそういう曲を入れてきたのかな、とも思った。地元という事でMCも聴けたし、地元ならではの特別感をここで味わうことが出来た。

 

あと5公演はセトリをガラッと変えてくるのか、ランキングに入った曲はどの程度採用されるのか?久し振りの「セトリが全く予想できないツアー」、期待以上にとんでもないツアーが、始まった!!