最後の駅の向こう

何でもすぐ忘れる人の特に記憶に残しておきたいライブの簡易レポートと趣味のレビューの予定。あくまで予定。

20190909/9mm Parabellum Bullet“6番勝負”@昭和女子大学 人見記念講堂

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 9mmの15周年企画、6番勝負の5戦目。対戦相手に凛として時雨を迎え、三軒茶屋にある昭和女子大学人見記念講堂にて。6番勝負の中で最大のキャパであり唯一の座席指定の会場での開催となった。

“9mmの日”である9月9日、結成15周年の9mmの日が2019年9月9日、西暦では10年振りに「9」が3つ並ぶというかなりめでたい日付。9mmの2年振りのアルバム「DEEP BLUE」の発売日でもある。卓郎さんが以前出演したラジオ番組で、6番勝負は対戦相手に日付と場所を決めてもらったという感じの話をしていたので、 開催日を“9mmの日”、そして会場を2017年に“TOUR OF BABEL Ⅱ”として9mmがワンマンライブを行い、当時ライブ活動休止中だった滝さんが一時復帰を果たした人見記念講堂を指定したのは時雨側であると考えられる。これだけでも時雨の9mmに対する思い入れが伝わってくる。 

 

同世代である9mmと時雨、どこから話せばいいか分からないくらいこれまでに色々な事があった。何度も対バンしているし、滝さんと中野さんが同じプロジェクトに参加したり(ZiNGやKAT-TUN番組収録のバックバンドなど…)9mmが出演するイベントにDJピエール中野も出ていたり、またメンバー個人の付き合いも深いので挙げていくとキリがない。2マンライブに限ると2008年に“ニッポニア・ニッポン”というツアーを廻り、2014年には時雨の企画“トキニ雨”でも2マンを開催している。

 

 6番勝負、もちろん行ける公演は全てとても楽しみにしていたし、毎回その期待を遥かに上回るほどの楽しさだった。その中でも、正直に言うと時雨との対バンが一番楽しみだった。2019年のライブの中で最も楽しみにしていた。“ニッポニア・ニッポン”も“トキニ雨”も観に行けなかったため、遂に9mmと時雨の2マンを初めて観られる、というライブだったから。また、大変個人的な話になるが三軒茶屋のある世田谷区は自分が生まれてから現在まで長年住み続けている愛すべき地元であり、結成15周年の“9mmの日”というめでたい日に地元・世田谷区でライブが開催されることが本当に嬉しかった。1月1日にその報せを見た瞬間嬉しさで膝から崩れ落ちたほどに。  

 

 

“9mmの日”という特別な日だからか、会場のロビーではモバイル会員向けのスタンプラリー的な企画や、9月9日にリリースされたアルバム「DEEP BLUE」のジャケット柄の記念撮影スポットなどが用意されていた。

入場し自分の座席に着く。この日の座席は上手側。ステージには既に特大サイズの15周年仕様バックドロップが掲げられていて、広いステージの真ん中にぎゅっと集まるようにして時雨3人の機材が用意されていた。

定刻を5分ほど過ぎたところで暗転、3人が登場。  

 

凛として時雨

 

 Telecastic fake show

nakano kill you

DIE meets HARD

High Energy Vacuum

Enigmatic Feeling

DISCO FLIGHT 

laser beamer

感覚UFO

傍観

 

自分の席からはTKは見える、中野さんはTKに隠れてほぼ見えない、345も人の頭であまり見えない、という感じ。ギターを取るために後ろを向いたTKの背中が見えた瞬間に驚きと嬉しさで小さく声を上げてしまった。

TKの背中には、大きな双頭の鷲が描かれていた。 

 

Telecastic fake showからライブが始まる。スティックを振り回し煽る中野さん。アウトロが終わってもTKのギターが唸り続ける。続いてはnakano kill you、手数の多いドラムに合わせるかのごとく照明がストロボのように派手に点滅し、その後も緑・赤・青と目まぐるしく変わり続ける。この、たった2曲の間に普段より多めにシャウトを入れたり間奏で早弾きしまくるTK 、最初から凄まじい振り切れっぷり。

TK がギターを掻き鳴らしダウナーなリズムで始まるDIE meets HARDでは淡い黄緑と“ハチミツ色”の甘ったるい照明がステージに広がる。三軒茶屋の近所にある下北沢に縁のある曲(下北沢が舞台のドラマの主題歌であり、歌詞の内容が下北沢の街を思い起こさせるようだったり、「下北」を連呼しているように聞こえる箇所がある)であるため、世田谷区で凛として時雨がライブをするというただでさえ貴重な機会にこの曲が選ばれたことで、世田谷区でこの曲を聴きたいという悲願が叶った瞬間だった。 

 

ここでTK が「凛として時雨です、よろしくお願いします」と穏やかな口調でひと言、そして再びギターを掻き鳴らす。何の曲だ…?と考えながら観ていると繰り出される高速カッティング、High Energy Vacuum…!!緑と紫の照明が不穏な空気を演出する。曲のテンションに合わせるように片足を上げながらぐいぐいと演奏する345。定番曲やシングル曲が2曲続いた後にアルバム曲であるHigh Energy Vacuum、ワンマンでもないのにこの曲を入れてきたことに驚かされる。

Enigmatic Feelingはシングル曲ではあるが、演奏される機会はあまり多くないため嬉しい選曲。中野さんとTKがタイミングを合わせるようにしながら演奏を始める様子が見えた。一番の盛り上がりだったDISCO FLIGHT、やはりTKが普段の時雨ライブと比べてもかなりテンション高めに見えたのは気のせいか…?シャウトの威力がすごい。最後のサビの「揺れる紫色のDISCO FLIGHT」と歌う345が本当に紫色に包まれる。 

 

曲が終わると中野さんが立ち上がり「凛として時雨です!9mmとは同世代の仲間としてシーンを駆け抜けてきたので…6番勝負に呼んでもらえて嬉しいです!」という感じで大声で元気いっぱいに話し始める。それを聞いて拍手をする345。

「9mmの情報はよくチェックしてるんですけど、前にLINE LIVEをやってて、それにコメントしたりして…どうやら課金してアイテムとかを送ると順位が表示されると。それで2回、1位を取りました!!」

「なのに今日20歳の誕生日を迎えるかみじょうくんがなかなか名前を覚えてくれなくて“エリエール坂田”って呼んでくる…でもまだ20歳だからね。」

※かみじょうさんの誕生日が公式プロフィール上で1999年9月9日(仮)とされているため

「僕は色々SNSをやっていて、345もインスタをやっていて…最近インスタを始めたTKが今からピュンピュさせるんで!!」 

 

ピュンピュンといえばこの曲、laser beamer(レコーディング中のTK のツイートにて“ピュンピュン丸”と呼ばれたことがある)、緑一色に支配された空間をギターで出している音とは思えないピュンピュンが次々と客席目掛けて飛ばされてゆく。中盤、照明の色の関係でバックドロップの赤と黒の部分が完全に見えなくなり、白く巨大な双頭の鷲だけが3人の背後に浮き上がる。こちらを狙撃するようにスリリングな演奏を繰り広げる3人が双頭の鷲を従える光景はとても現実とは思えないもので、一瞬怯んでしまったほど。

そのままセッション的な演奏が続けられる。それだけでどの曲か把握して嬉しくなる。345の思いっきり歪んだフレーズから感覚UFOへ。曲調に合わせ段々と動きが大きくなり、下を向くようにして美しい髪を揺らす345。ライブ序盤から凄まじい振り切れっぷりのTKが更に激しくシャウト、「5・6・7 1・2・3!!!」と絶叫しながら中指を立てる。

 

 感覚 UFOでライブが終わる事も多いので、これで終わりか…?と寂しい気持ちになったがまだ3人はステージにいる。すると先ほどまでシャウトしまくっていたTKがまた穏やかな口調で話し始める。「短い時間でしたが…次が最後の曲です。9mmとは長い間ずっと対バンしてきました。これからも死ぬまで対バンしたいです。」

 

最後の曲は傍観。ステージが暗くなり、赤色が足元から侵食してゆくように広がる。狂気的な赤に照らされて黒い影になる3人。静かな演奏と独白のようなTKの歌声、そこからTKと345がありったけの声量で歌声を重ねる。「消えたい」と絶叫するTK、ステージ前方まで出ていって激しく動き回る345。TKが思いっきりギターを掻き鳴らす間に345と中野さんが退場。ひとりステージの上でギターを弾き続けたTK、演奏を終えギターを投げると最後に右腕を伸ばし、9mmを称えるかのようにバックドロップの双頭の鷲に手を向けるとステージから去っていった。

 

序盤から定番曲で盛り上げつつ最新曲とコアな選曲も入れ、更に感覚UFOと傍観をどちらもやるという素晴らし過ぎるセトリだった。コア曲枠として凄まじいテンションのHigh Energy Vacuumを選んだあたりからも、時雨がどれだけ本気で9mmとバチバチにやり合おうとしたかを感じられて、両バンドのファンとしてこんなに嬉しいことはない。9mmのバックドロップを背負って演奏する凛として時雨、という光景だけでもその嬉しさは言葉ではとても言い表せないほどであった。

 

 

 転換の様子をあまり見ていなかったが、9mmの機材がひと通り用意されたあたりでステージを見ると卓郎さんのアンプはマーシャルのヘッドにOrangeのキャビという今までに見たことのないセッティング、滝さんのギターは最近よく使っている薄いギターではなく、ウルトラトーンのようなボディにSufferのようなネックのギターという、これまた見たことのないものだった。そして長いカーペットを敷いているのも確認できた。1階席だったため、そのカーペットのようなものが何なのかは最後まで分からなかった。後日ライブ写真を見てようやく“9mm Parabellum Bullet”の巨大なロゴだったことを把握した。

 

9mm Parabellum Bullet

 

(teenage)Disaster

新しい光

DEEP BLUE

Beautiful Dreamer

Bone To Love You

ガラスの街のアリス

黒い森の旅人

ハートに火をつけて

Black Market Blues

名もなきヒーロー

ロング・グッドバイ

 

 Punishment 

Lovecall From The World 

 

自分の席からは卓郎さんと滝さんは見える、かみじょうさんは卓郎さん越しに見える、和彦さんはあまり見えない、武田さんは見える時もある、という感じ。1曲目は(teenage)Disaster、最近はアンコールで演奏されることが多いため、久々に1曲目に来たな…と思いながら聴いていた。赤と白が交互に点く照明がとてもめでたい感じ。アウトロはお立ち台でギターを弾く滝さん、カオス音は出さずに原曲通りのメロディーを弾いていた。後から気付いたが、10年前、2009年の9月9日の999(アットブドウカン)も1曲目は(teenage)Disasterだった、だからこの曲を最初に持ってきたのだろうか…。

間髪入れずに新しい光へ、今年のライブから毎回ライブ用の新しいイントロから曲に入る、という構成で演奏されているが、この日はそれが無くいきなり曲へ。このバージョンの新しい光を聴くのは久し振りだった。ステージが柔らかな水色に包まれる。サビ後の間奏、1サビ後は前に出る卓郎さんと滝さん、その後ろでは和彦さんと武田さんがかみじょうさんの前まで出てきて、ステージ中心に5人集まるようにして一斉にギター・ベースのネックを上げる。それが終わると和彦さんと武田さんは同時にかみじょうさんの前から離れるという、美しいフォーメーションを見せる。変わって2サビ後は卓郎さんが和彦さん寄り、滝さんが武田さん寄りに移動。すると武田さんがこちらから観るとちょうど滝さんの真後ろに付くような位置まで移動してそのままネック上げを。この曲の時には武田さんがよく見えて、曲中に顔を伏せるようにしてネックを上げながら弾き、直後に顔をこちらに向けると素敵な笑顔を見せる。曲中に卓郎さんが「東京!!!」と叫んでくれたのが東京の人間としては堪らなく嬉しかった。

続いて演奏されたイントロ、ライブで聴いたことない曲だ…?と思ったらこの日が発売日である新しいアルバム、「DEEP BLUE」収録の表題曲、DEEP BLUEだった。何の前置きもなく演奏されたことに驚きながら聴いていた。タイトルに合わせるように濃い青に染まるステージ。ひとつ前の新しい光の時からグラデーションのように変わるステージの様子が鮮烈。まだアルバムを聴き込んでいないためほぼ第一印象という感じだが何だか爽やかさを感じるような。これからツアーで聴き込むうちにこの印象がどう変わってゆくのかが非常に楽しみになる。ライブで披露されたのが初めてだからかフロント4人の動きは控え目なようにも見えたが、かみじょうさんは腕と頭を大きく振りながら叩いていた。 

 

ここで最初のMC。卓郎さんが話し始める前に謎の音がすると笑い声が起きる。こちらからだと状況がよく分からなかったが、曰く「話すより先に喉が鳴っちゃった!」と。なるほど。対戦相手である凛として時雨について「リハから観ていて、凄いとかかっこいいの向こう側でもはやウケました」と言う卓郎さん。おれたちも何かの向こう側に行きたいです、とも。

滝さんは新しいギターだからか、曲中や転換中に何度か音を調整しているようだった。演奏の合間にマイクの位置も何度か直していた。 

 

卓郎さんがひと通り話し終わると演奏へ。ギターのクリーンなサウンドが大きな空間にふわりと広がる。アルバム「DEEP BLUE」から続けてもう1曲、Beautiful Dreamer!イントロやサビ後のギターのメロディーは滝さんと武田さんがユニゾンで、サビの早弾きフレーズは武田さんが弾いていた。MVや音源でもこの曲の力強さは伝わってきていたが、目の前で聴くとそれは予想以上のものだった。

次の曲は6番勝負で毎回セトリ入りしているBone To Love You、滝さんはイントロからゆらゆらと小さく頭を振る。間奏の後、一気に速くなるパートに入ると和彦さんがかなり大きく動き回るのが見えた。ガラスの街のアリスでは2番の歌詞を「透明な“9月”の星を指でなぞったよ」と歌詞を変えて歌う卓郎さん。

徐に何となくどろどろとした音が奏でられ始め、次の曲は何だ?と考えていると、暗闇に一筋の光が射すように滝さんの澄んだギターの音が入ってくるという素晴らしいアレンジから黒い森の旅人。照明には緑ではなく青が使われていたことで夜明け前の森の雰囲気が出ていた。自分が上手にいたからというのもあるかもしれないが、武田さんのブリッジミュートの分厚さがよく伝わってきてとても心地よく聴いていた。サビに入るとかみじょうさんが大きく頭を振る度に耳元がきらっと光っていた。おそらく、ピアスに照明が当たって光っていたと思われるが、普段ならそんな細かい部分が見えることもなかなかないので些細な事ではあるがはっきり記憶に残っている。この日は最後のサビ前のスネアにはリバーブがかかっていた。やはりこの曲はホールが似合うな…と、思いセトリに入ったことを喜びながら聴き浸る。 

 

「10年くらい前に“ニッポニア・ニッポン”というツアーを廻ったんだけど…ニッポニア・ニッポンってどういう意味か分かる?…トキのことです」何故トキだったかというと、あの時に9mmや時雨のような音楽をやってるバンドは珍しかったので、両者とも絶滅危惧種みたいだということで。

時雨の音楽について「さっきも袖でライブ観てたけど……自分が持っているけれど気付かないような感情を表してくれるような時がある」という感じの表現をされていた。9mmも時雨と同様であると。両者の違いについて「温泉で例えると肩に効く、とか腰に効く温泉、みたいな…」と言うと客席にたくさんの「?」が浮かんでいるような空気に。それを見た卓郎さんが「こういうのが迷MC…“迷う”の方の迷MCって言われちゃうんだよね笑」と続ける。

「10年前にはBlack Market Bluesという曲ができて…」

「おれたちも10年生きました!!」 

 

そんなMCがあったので次はBlack Market Blues…?と思いきやハートに火をつけて、間奏で左にスライドする和彦さん・卓郎さん・武田さんとお立ち台の上でギターのネックを大きく左に振る滝さん。次に続いたのがBlack Market Bluesで、卓郎さんが「昭和女子大学人見記念講堂に辿り着いたなら!!」と歌詞を変えて歌っていた。「迷える子羊たちが~」の部分で下手に視線を映すと、この日も和彦さんがベースを高く掲げ、自身の左胸をトントンと叩くと思いっきりベースのボディを叩いていた。

そのままほぼ音を途切れさせることなく演奏が続いていたような気がする。今までに聴いたことのないメロディーだったので何の曲だ…?と考えながら聴いていた。卓郎さんと滝さんがお互いに様子を確認するように顔を合わせると次に滝さんが同じく様子を確認するようにかみじょうさんの方を見る。こちらからだと最終的に卓郎さん・滝さん・かみじょうさんが向かい合って演奏を合わせているように見えた。そんな中でピンクの照明が一筋ステージに入ってきたところでようやく何の曲か気付く。名もなきヒーロー!リリースして僅か5ヶ月ほどの新曲に、もう新たなアレンジを!?そうして少し長めのイントロが演奏されてから曲へ。この曲で驚いたことがもうひとつ。間奏でかみじょうさんが音源と違うフレーズを叩いていたように見えたこと。ドラムに関してはど素人なので自信はないが、明らかに手数が多くなっていたり、ギターのメロディーをなぞるように叩いていたような。「守りたいものにいつも守られているんだね」と歌う卓郎さんは優しい眼差しで客席の遠くの方を見ていた。

本編最後の曲。滝さんの元気なタッピングの音が響く…ロング・グッドバイ!最後のサビ前では滝さんが思いっきり勢いをつけて、ギターのナットとペグの間を鳴らす。生き生きと演奏する5人の姿を観ながら頭の中では、かつて観た光景を思い出していた。 

演奏が終わると武田さん、滝さんがまず退場。卓郎さんと和彦さんはステージ前方まで出てきて客席に向かって短めにお手振り。その間にかみじょうさんがドラムセットの方から出てきて、ひらひらと手を振りながら上手から下手へ、悠々と歩いて退場。

 

客電が点き、アンコールの手拍子がしばらく続くと再び暗転。まず出てきた卓郎さんはステージ上を歩いている間、ずっと2階席に視線を遣り手を振ったりしていた。2階席のみんなのことも見てるよ!と伝えるかのように。

「かみじょうくん20歳おめでとう!」と卓郎さんが言うと、かみじょうさんは何?と言いたげに目を丸くして卓郎さんを見つめ、(かみじょうさんから見て)右のイヤモ二を外すと背中を丸め、「何言ってるか全然分かんない、ごめんな~」とドラム用のマイク?を使って返す。卓郎さんが再度かみじょうさんに「おめでとう!」と言うとようやく聞き取れたようでかみじょうさんが卓郎さんに向かってOKのサインを手で作ったり、投げキッス的な動きをしていた。

 卓郎さんとかみじょうさんが話しているのに気を取られていたが、この時ステージ上にいたのは卓郎さん、滝さん、和彦さん、かみじょうさん…武田さんがいない。4人で演奏するようだ。これまでには「4人でやります」と卓郎さんが宣言してから演奏に入る、ということもあったが今回は特に何もなく演奏へ。“4人で演奏する時もある”というのが徐々に“普段の流れ”に近づいているのだろうか、と考えると嬉しい。

 

滝さんが静かにギターを弾き始めればどの曲かすぐ分かる。穏やかなイントロから滝さんの爆速カッティング、Punishment が始まる!滝さんは早弾きも交えながら弾いていた気がする。そして卓郎さん・滝さん・和彦さんが同じメロディーを重ねる間奏の無敵感!!

この日最後の曲はLovecall From The World、滝さんはこの日も卓郎さんと一緒に最初から最後まで熱唱していた。本編でもそうだったが、滝さんはTシャツの裾からお腹が見えてしまうくらい高く腕を上げ、ギターを掲げるところが何度もあった。アウトロでは和彦さんがシャウトを入れた後にベースを軽々と振り上げ、思いっきり動き回っていた。1分足らずのこの曲で残ったエネルギーを全て出し切るように音を叩きつけ、演奏が終わる。 

うねる様なベースの音がまだ残る中、早々と退場する滝さん。卓郎さんと和彦さんは下手、上手、真ん中と客席を見て挨拶しながらピックを投げる。かみじょうさんは頭の上で両手を合わせ、その状態で軽く振るようにしながらゆっくり歩いて袖に消えていった。最後に卓郎さんが万歳三唱、から丁寧にお辞儀をし、客席に笑顔を向けステージから去っていった。

 

 

最初にも少し書いたが、人見記念講堂は2017年7月に9mmモバイル会員限定ワンマンライブ“TOUR OF BABEL Ⅱ”を開催した会場である。当時9mmのライブ活動をお休みしていた滝さんが、数ヶ月振りに9mmライブへの復帰を果たした公演。滝さんが久々に帰ってきた“4人の9mm”で、アンコールにて2曲、新しい光とロング・グッドバイを演奏した。

だから、もしかしたら2年前のことを思い出して過剰に感情的になってしまうかもしれないな…と少し懸念していたが、自分でも驚くほどフラットな気持ちでライブを観られた。良かった。新しい光もロング・グッドバイも両方セトリに入れたのは、やはり2年前のことを意識したのだろうか。どちらの曲も聴きながら2年前の光景を思い浮かべ、それからたった2年後の現在、滝さんが全ての9mmライブに出演できるまでになったことを嬉しく思った。思いのほかフラットな気持ちでいられたとはいえロング・グッドバイのイントロを聴いた瞬間は静かに涙が零れた。

 

9mm Parabellum Bulletと、凛として時雨。彼らが登場した頃に「2000年代後半の突然変異型バンド」というアイキャッチを読んだ記憶がある。その言葉通りにカテゴライズ不可能なバンドが台頭していた世代。同世代の中で当時と同じ形で活動を続けられなくなったり、解散や活動休止を余儀なくされたバンドもいる中で卓郎さんの言葉通り9mmも時雨もずっとバンドとして生きて、TKの言葉通りずっと対バンしてきた。

ここ最近では「9mmと時雨」としての対バンなどの機会は少なくなってしまったが、盟友、を通り越して最早家族のようにも思える関係なのは変わらない。普段から9mm愛溢れる中野さんが元気いっぱいに15周年を祝い、普段あまりライブで喋らない(この日のTKは普段のワンマンより多めに喋っている)TKは穏やかな中に9mmへの親愛と敬意が込められた言葉を贈った。また、中野さんは何を着ているのか残念ながら確認できなかったが、TKは黒のバックドロップTシャツ、345は黒の6番勝負Tシャツと9mmのものを身に着けてステージに立ったことからも9mmへの愛が伝わってくる。

TKが言っていた「死ぬまで対バンしたい」という言葉が心の底から嬉しかったのは、9mmと時雨がこれからもずっと盟友で居続けることはもちろん、死ぬまでバンドを続けるという意志が込められたものでもあったから。

 

 

振り返ってみれば、時雨だけでなくこれまでの6番勝負の対戦相手も同じだった。9mmと長く付き合い、お互いに敬意を持ち、幼馴染のような間柄の同世代バンド。avengers in sci-fithe telephonesUNISON SQUARE GARDEN。これから対戦するTHE BAWDISもそうだ。アルカラは厳密に言うとちょっとだけ上の世代で、9mmとはここ数年で仲良くなったとはいえもはや運命共同体と言えるような特殊な間柄であり、太佑さんの言葉を借りると「思春期ぐらいから付き合い始めた」、とても濃い付き合いの盟友。

それぞれの対戦を観ながら、月並みな感想に聞こえてしまうかもしれないがこんなにも変わった音楽を生み出す人達が集まり、高め合って第一線で活躍し続けている面白さと、それを観続けられている嬉しさを実感した。

 

 

アルバム「DEEP BLUE」の発売日であることから、MCでは卓郎さんが「今言いたいことは全てアルバムに入っているのでたくさん聴いて下さい」と言っていた。6番勝負が終わるとすぐに「DEEP BLUE」のリリースツアーが始まる。今年は6番勝負を含め様々な15周年記念企画で9mmがここまで続いてきたことを祝う節目、という気持ちが強かったが、ここからはまた新しい9mmの、その先を観に行くんだ、という気持ち。これから「DEEP BLUE」の中に深く潜りながら、もうすぐ始まるツアーを楽しみに待っている。

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