最後の駅の向こう

何でもすぐ忘れる人の特に記憶に残しておきたいライブの簡易レポートと趣味のレビューの予定。あくまで予定。

20191102/9mm Parabellum Bullet“FEEL THE DEEP BLUE TOUR 2019”@Zepp Sapporo

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 2019年9月9日にリリースされたアルバム「DEEP BLUE」リリースツアーの4本目。

 

この公演にFLOWER FLOWERのyuiさんとmura☆junさんがゲスト出演することが事前に告知された。FLOWER FLOWERが9mmのライブの翌日、11月3日に同じくZepp Sapporoにてライブをするという偶然が起こったため。(そしてFLOWER FLOWERのライブには卓郎さんがゲスト出演することも同時に発表されていた。)卓郎さんと共演したことがあるyuiさんと、卓郎さん和彦さんかみじょうさんによるアコースティックユニット・AC 9mmのワンマンにゲスト出演したmura☆junさん。

おふたりは今年のRISING SUN ROCK FESTIVALで9mmと共演するはずだった。しかし、台風の影響により9mmの出演日である8月16日は開催中止。実現できなかった共演が、この公演で果たされることとなった。

 

 

会場に入るとステージにはまだバックドロップは掲げられていなかった。大箱のワンマン公演恒例の演出として、開演したらSEと共にバックドロップ現れると予想できる。今年は15周年の特別なデザインのバックドロップを使用していて、それが初めて披露されたのもZepp Sapporoで行われたライブ(3月17日のカオスの百年ツアー2018振替公演)だったことを思い出していた。

 

定刻を過ぎ、場内が暗転し、Digital Hardcoreが鳴り響くとやはりバックドロップが下からゆっくり上がってくる。しかしそれに15周年ロゴの赤いプリントは無い。上がり始めてすぐに気付いて、驚きと嬉しさが込み上げてきた。

ステージに現れたのは、双頭の鷲とRSRのロゴが重なった、RSR仕様のバックドロップだった。

 

 

 DEEP BLUE

名もなきヒーロー

カルマの花環

Answer And Answer

Getting Better

Scarlet Shoes

反逆のマーチ

Ice Cream

Beautiful Dreamer

君は桜

夏が続くから

Discommunication(ゲスト:mura☆jun)

カモメ(ゲスト:mura☆jun、yui)

Mantra

ロング・グッドバイ

Black Market Blues

新しい光

Carry On

 

いつまでも

Punishment 

 

この日は上手側で観ることにした。かみじょうさん・滝さん・爲川さんは見える、卓郎さんはあまり見えない、和彦さんはほとんど見えない、という位置。

ステージが爽やかな青に染まりDEEP BLUEからライブがスタート。滝さんが曲に入る前からお立ち台に上り、Tシャツの裾からお腹が見えるくらいギターを高く掲げていた。爲川さんは上手の端にいながらも1曲目から滝さんと同じくらい前に出てきて、素敵な笑みを浮かべ歌詞を口ずさみながら弾いていた。

続いては名もなきヒーロー。夏頃から追加された、間奏のメロディーを元にしたようなライブアレンジのイントロから演奏に入る。淡い紫の照明がこの曲の優しさを引き出しているようだった。この日はバックドロップの下に小さな電球?が横一列に並んだ照明器具が使われており、名もなきヒーローの中盤でその照明が青い光の軌道をステージ上から下へと大きく向きを変えたところでその存在に気付いたが、その後もステージを印象的に染める役割を担っていた。

真っ赤な空間に変わったカルマの花環、終始滝さんが生き生きと動いていた、その様子だけが記憶に残っている。続くAnswer And Answerも滝さんと爲川さんの弾き姿にただただ目を奪われる。

 

 

ここで卓郎さんが話し始める。おれたち札幌に来ようとすると何か起こる、というような話をしていたかと思う。昨年のカオスの百年ツアー札幌公演が地震で延期になってしまったことと、今年のRSR中止があったため。それを考えると、今回無事に開催されたことへの喜びが増す。

 

歪んだベースの音からGetting Betterへ。イントロのタッピングは滝さんがひとりで弾いていた。最後のサビの「作りながらぶっこわしなさい〜」からはカオスパートのような演奏が繰り広げられていた。音源とライブ演奏に違いが出る部分を聴けるのがとても楽しい。

次の曲は何とScarlet Shoes!!タイトルや歌詞に合わせるようにステージが赤に包まれる。久々にライブで聴けた…!!一体いつ振りだろうか。予想外の選曲に驚き、大喜びしながら聴いていたが、嬉しさのあまり細かいところを観る余裕が全く無かった。

Scarlet Shoes最後の一音からそのままかみじょうさんが4カウント入れるという見事な繋ぎ方から反逆のマーチへ!オレンジの照明がとても美しかった。「この街はいつのまにか〜」の部分ではかみじょうさんのハイハットを叩く手元の小気味良さに見惚れていた。Aメロ部分では滝さんが爲川さんに演奏をお任せし、その間に水を飲んだりもしていたがその他の部分は大きめの動きで、途中で滝さんが爲川さんと衝突しそうになる程だった。

空間が一気に暗くなりどろどろとしたベースの音から始まったIce Cream、イントロではステージがどす黒い青に包まれる。音源で聴くよりもかなり重く感じた音の壁に圧倒される。歌が入ると上からはいくつもの赤いスポットライトの光が降ってきて、バックドロップ下の横照明は青く光り、そのコントラストが不穏な空気を作り出していた。

続くBeautiful Dreamerではまた爽やかな青の照明へ。イントロの静かなパートから一気に激しさを増す展開がとても好きなところ。サビでは滝さんがコーラスをする隣で爲川さんがタッピングをしていた。

君は桜、シンプルなリズムに乗る可憐なギターのメロディーと優しい歌のメロディーがとても際立っていた印象。名もなきヒーローの時と同様、淡い紫の照明だったのでピンクじゃないんだな、と意外に思いながら観ていたがピンクにアルバムのテーマカラーである青を混ぜたイメージで紫、なのだろうか。

卓郎さんがアコギ、滝さんがエレガットに持ち替える…ということは次の曲は、夏が続くから。個人的にアルバムの中でライブで聴くのを最も楽しみにしていた曲。どっしりとしたベースの上に乗るシャキッとしたアコギとドラム、まろやかなエレガット、伸び伸びとした卓郎さんの歌声、という音の層がただひたすらに気持ち良かった。曲調的に控えめな動きで演奏していた滝さんがソロに入った瞬間にエレガットを歪ませお立ち台に上り、目元に力を込め歯を食いしばるような全力の表情でメロディーを弾き始めるというかなり熱いギターソロが繰り広げられ、その気迫と熱さと繰り出される音の美しさが琴線に触れた。

 

ここで再びMCへ、と同時に卓郎さんと和彦さんの間にキーボードが用意される。卓郎さんが「和彦に、第一声でライジングサンへようこそって言ったら?と言われた」という話をしつつ、ゲストを紹介。まずはmura☆junさん。昨年のAC 9mmのライブにもゲストで出てもらったという紹介をしながら呼び込む。

このあたりだったか。卓郎さんが「RISING SUN ROCK FESTIVALへようこそ!!!」

 

昨年AC 9mmでもmura☆junさんと一緒に演奏したDiscommunicationがコラボの1曲目。卓郎さんと滝さんは夏が続くからで使っていたアコギとエレガットを持ち替えずそのまま演奏が始まる。ACの時の同じ6/8拍子のアレンジ、ACの3人とmura☆junさんによる演奏も言わずもがなとても素敵だったが、あのアレンジを滝さんと爲川さんも加わりライブで披露されたことが嬉しい。キーボードのフレーズがエレガントさを出しつつ、終盤に向かってmura☆junさんの音がどんどん厚くなり盛り上がるという豪華なアレンジ。

 

演奏が終わるともうひとりのゲスト、yuiさんを呼び込む卓郎さん。yuiさんについて「ボーカルもこき使いたいと思います…」と言っていた。その戯けた表現から、これまでにも共演したことのある卓郎さんとyuiさんの仲の良さが窺える。yuiさんを呼び込むまでの間、滝さんが静かにギターを弾き続けていて、弾き終わると卓郎さんがその演奏を「滝くんによるプレリュード」と紹介。黒地に小花柄?のワンピースという可愛らしい出で立ちで登場したyuiさん。「自由にやっていいって言われてるんで…」と言いながら卓郎さんにちょっかいを出したり、楽しそうにステージ前へ進むと滝さん用のお立ち台に上り客席を見渡す。その様子を、後ろでかみじょうさんが笑顔を浮かべながら見守っていた。客に向かって「9mm愛してますかー!!!?」とyuiさんが煽るとフロアからすかさず歓声が返ってくる。卓郎さんが「FLOWER FLOWERから始めます」と言ってから演奏へ。

 

卓郎さんの言葉通り、yuiさんのブレスにmura☆junさんが演奏を合わせ、ふたりの音から始まったのは、カモメ。yuiさんが歌い出した瞬間に柔らかく深い歌声が心身に染み渡り、また空間いっぱいに広がってゆく。その後は卓郎さんとyuiさんが交互に歌っていた。終始楽しそうで歌っていない時にはドラムの台に上ってかみじょうさんと向かい合ったりもしていたyuiさんが本当に自由にやってくれているんだな、という様子だった。間奏では滝さんが音源とは全く異なるメロディーを弾いていた。エレガットの音色に合わせたのか、原曲の壮大なソロとは打って変わってゆったりとしたメロディーを響かせる。サビでは卓郎さんの歌にyuiさんが滝さんパートのコーラスを重ねていたり、卓郎さんの歌にyuiさん・滝さんがコーラスを重ねたりしていたが、3人で歌っている時に滝さんパートの更に上の音程を重ねていて、最初はそれがyuiさんだと思っていたら滝さんの歌声だったので驚いた。滝さんパートを歌うyuiさんよりも高い音を、滝さんが出していたことになる。滝さん、女性のようなとても澄んだ綺麗なファルセットだった。

 

yuiさんとmura☆junさんが退場。卓郎さんが「北海道の夏は涼しいですね、おれダウンジャケット着てきたもの」と話し出す。そんなところまでRSR仕様にしてくれる卓郎さんの言葉に和やかさが広がる。「みんなDEEP BLUEに染まってきたね」と言っていたのはこの時だったか、そして「立てなくなるくらい声出して!いけるか札幌!!」と煽る。

 

その言葉に続くのはMantra!!卓郎さん、滝さん、爲川さんが叫び、途中で下手側の様子を何とか伺うとマイクに向かってシャウトする和彦さんが僅かに見えた。かみじょうさんだけは叫ばず、淡々とドラムを叩いていた。後半では滝さんが何の単語も言わずに叫び声を上げていた。ここからだったか、ふと卓郎さんの方に目を移すと卓郎さんが今までに見たことがないギターを持っていた。あまりよく見えなかったが新しいシグネチャーモデル、Trickstarの色違いに見えた。“DEEP BLUE”に合わせたかのような青いカラーリングで、卓郎さんが青を持っているのがちょっと意外な気がしてそれにも驚く。

滝さんのタッピングから始まるロング・グッドバイ、ここでも驚いたことが、照明が青かったこと。今までのライブではずっと赤を使っていたので、青く染まるロング・グッドバイはかなり新鮮だった。Mantraとロング・グッドバイ、「DEEP BLUE」と「BABEL」の曲を続けて演奏したことが予想外で、それもかなり驚かされたところ。ロング・グッドバイへ繋げたMantraの“終わってたまるか”という叫びの切実さが、後からじわじわと増していくように思えた。

Black Market Blues、曲の頭で普段なら歌っている滝さんがコーラスを爲川さんに任せお立ち台に上りギターで歌のメロディーを弾く、という結構珍しい始まり方をしていた。

新しい光、1サビ後の間奏で和彦さんと爲川さんが向かい合ってかみじょうさんの前へ。その時に和彦さんが爲川さんに向かって「こっち来なよ」と言わんばかりの仕草をしていた。サビではこの日一番の大合唱!やっぱりBMBから新しい光への盛り上がり方は半端なく、熱量に比例してフロアの圧縮も強くなっていた。

本編最後の曲はCarry On、2番で卓郎さんが「声を聞かせてくれーー!!」と煽る。この曲では滝さんが、大袈裟でなく他の曲の3倍くらいの声量で歌っていた。上手で聴いていると卓郎さんの声よりも大きく聞こえるほど。コーラスの最後の一節「いつか鼓動が」の最後の一音を、かなりの声量でずっと歌声を伸ばし続けていた。終盤はずっと大きく動き回っていた滝さん、曲の最後にギターのネックを勢いをつけて思いっきり振り上げていた。

 

曲が終わると滝さんと爲川さんがすぐに退場、卓郎さんと和彦さんが短めながらも丁寧にフロアに挨拶をし、その後ろでかみじょうさんが両手を頭の上で合わせながらゆっくりと退場していった。

 

 しばしのアンコール待ちから5人が再度ステージへ。ギターを構えながら、卓郎さんと滝さんがお互いに「どうぞどうぞ」と譲り合うような仕草を見せるという微笑ましい光景にフロアから笑い声が起こる。ステージに掲げられたRSR仕様のバックドロップについて言及していた。うろ覚えではあるが、これを使いたかったんだという感じの話だったか。yuiさん、mura☆junさん以外のRSRで共演するはずだった人達にも触れていた。そしてフロアに向かって「来年もよろしくお願いします!」

 

アンコール1曲目、いつまでも。何の捻りもない感想だけれど、とにかく何ていい曲なんだ…という気持ちで聴き浸っていた。その一言に尽きた。

この日最後の曲。Punishment、イントロ前のアレンジが少しだけ、先程のIce Creamと雰囲気がちょっと似ていたのは照明のせいだったか。真っ白なスポットライトが目まぐるしく動き回る眩いステージ。間奏でフロント4人が一斉に並んで弾いた後、自分の二の腕を叩きながら手拍子を煽る滝さん。動き回るフロントとは対照的に姿勢を崩さずに冷静に叩き続けるかみじょうさん。最後の最後に滝さんが空間をぶった切るようにギターのネックを思いっきり振り下ろした。  

 

 

前述のように上手側にいたので卓郎さんと和彦さんはほぼ見えない位置だったので、ずっと滝さん、爲川さん、かみじょうさんを観ていた。滝さん、全体的に動きが大きかったなという印象。薄い方のギターを使う曲ではギターの軽さもあり、滝さんの動きが大きくなると首元にギターが引っかかるような状態になっていたほど。Punishmentの他でも本編のどこかで自身の胸のあたりを叩きながら手拍子を煽ったりしていた。また終盤で、ギターを変えようとするスタッフの方を静止してギターを変えずに演奏を始めたが途中でやっぱりギターを持ち替える、という場面もあった。曲の途中であってもスタッフの方と息ぴったりに持ち替えをしていたのが流石だなと思いながら観ていた。

爲川さんは上手の端からほぼ移動しないまま、序盤からステージ前まで出てきて時折歌詞を口ずさみながらぐいぐいとギターを弾き倒していた。あまりにもいい表情と生き生きとした動きに何度も視線を掻っ攫われた。曲のいいところで、ギターのネックで目の前にいる客を撃ち抜いたりもしていたし、相変わらず演奏しながらフロアを丁寧に見ているようだった。かみじょうさんはハイハット・スネア側を叩く時の手元が遮る物なくとてもよく見えた。夏が続くからの間奏前に入ってくる三連符など、個人的に好きなドラムのフレーズが入ってくる所はかみじょうさんがしなやかにドラムを叩く手元を凝視していた。ここまで手元がよく見える機会は意外と少ないので貴重なものを観られた。

 

 9mmに限らずではあるが、いつもライブを観る時にメンバーと同じくらい照明もよく観ている。今回初めて観た、序盤でも書いたバックドロップの下に小さな電球が横一列に並んだような照明器具がかなりの存在感を放っていたのがとても印象的だった。青、赤、オレンジ、白…と色が変わり、一列全部が一斉に点いたりランダムに点滅したり、横並びの何個かずつ点いたり消えたりを繰り返していて、光り方のバリエーションが多く、特に一斉に点いた時の空間の染め方がとても美しかった。その横一列の照明の上にはいくつか、大きい電球の周りに小さな電球が配置されてる、というこれまた観たことのない照明器具もあった。大きい電球の周りで、小さい電球がその周囲を回るように点滅する、という控えめながらも面白い動きをしている物だった。また観たいと思っているので、この後の公演でも同じ照明が使われるのか気になるところ。

 

 この日の1曲目、DEEP BLUEの「あっけなく終わりにしたくない」という一節が、自分でも驚くほど真っ直ぐに、深々と胸に突き刺さった。ライブが終わった直後も、ライブから数日経った今でもまだその一節が心から離れない。青く瑞々しい光の中、独白のようにも聴こえた「あっけなく終わりにしたくない」という言葉。勝手な解釈かもしれないけれど卓郎さんがその言葉を歌うのを聴きながら、もしかしたらDEEP BLUEというアルバムはその言葉を言うためのアルバムなのではないか、とまで考えていた。

 

この日、「DEEP BLUE」の中で21gがセトリに入らなかった。そしてレア曲枠?としてScarlet Shoesが聴けた。自分は現時点で札幌公演しか観ておらず、他の公演のセトリも観ていない(ネタバレ回避のためツアーが終わるまで観るつもりはない)ので、今回のようにアルバム曲をほぼやる+お馴染みの曲もある+レア曲枠がある、という流れは大体同じなのか、どこかで変わってくるのか現時点では予想できない。そんな“セトリが予想できない”ところも含めて楽しみなツアー。深く青に染まり続ける1ヶ月が始まった。