最後の駅の向こう

何でもすぐ忘れる人の特に記憶に残しておきたいライブの簡易レポートと趣味のレビューの予定。あくまで予定。

20191109/9mm Parabellum Bullet“FEEL THE DEEP BLUE TOUR 2019”@仙台PIT

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アルバム「DEEP BLUE」リリースツアー5本目、仙台。

仙台といえば和彦さんの地元ということで、普段9mmのライブでは基本的に喋らない和彦さんが仙台公演では毎回マイクを通して喋る姿を観られるのが恒例となっており、そういうところも楽しみな公演。個人的にはこのツアー2本目の参加で、1本目の札幌はゲストにFLOWER FLOWERのyuiさんとmura☆junさんを迎えた特別仕様のセトリだったため、ツアーのレギュラーセトリを観るのはこれが初めてだった。どんな違いがあるのか、それとも基本的には変わらないのか?と色々予想しながら当日を迎えた。

 

  会場に入り様子を窺うとやはりステージにバックドロップは掲げられていない。定刻を数分過ぎた所で暗転、Digital Hardcoreが鳴り響き、ステージ下からバックドロップがゆっくりと上がってくる。

派手に点滅する照明を浴びながら、真っ赤な“ⅩⅤ”の文字を背負った、15周年仕様の巨大な双頭の鷲がステージに現れた。  

 

 DEEP BLUE

名もなきヒーロー

カルマの花環

Answer And Answer

Getting Better

Scarlet Shoes

反逆のマーチ

Ice Cream

Beautiful Dreamer

君は桜

サクリファイス

夏が続くから

Mantra

ロング・グッドバイ

Black Market Blues

新しい光

Carry On  

 

 Punishment 

 

 

今回は下手側へ。前から数列目、和彦さんのアンプがちょうど真正面に見えるあたり。そこまで下手寄りにいるのに、意外と卓郎さんや滝さんの方まで見える。何となく、普段より和彦さんのマイクの位置が高いように見えた。和彦さん、曲が始まる前にステージの前方まで出てくるとフロアを見ながら気合のこもったような表情、その後に軽く舌を出してみせる。

1曲目はDEEP BLUE、卓郎さんが朗々とした声で歌う「あっけなく終わりにしたくない」のひと言から、ライブが始まった。札幌公演と同じく、バックドロップの下に小さな電球が横一列に並んだ照明器具が配置され、眩い青の光を放っていた。

続いてはお馴染みになりつつある、間奏のメロディーを元にしたようなライブアレンジのイントロから名もなきヒーローへ。シングル「名もなきヒーロー」のジャケットカラーであるピンクとアルバム「DEEP BLUE」のジャケットカラーである水色の照明が交差するように天井から降り注ぐ。札幌では紫の照明を使っていたので、会場によって違いが出ているのが面白い。この曲では和彦さんがピック弾きをしていて、真っ直ぐな力強いフレーズを繰り出すイントロも、それと対象的に柔らかい手つきで弾いていた。イントロや間奏ではかみじょうさんがスティック回しを入れていたが、この曲でスティックを回しているのを観たのは初めてだったかもしれない。「守りたいものにいつも守られているんだね」と歌う卓郎さんの眼、この日はとても力が込められていた強い眼差しだった。

次はカルマの花環。この日、序盤から卓郎さんの声が少し掠れていた。サビの「花は咲くのか」で卓郎さんの声が聴こえず…代わりに滝さんが歌っていた。滝さん、日によってこの部分は歌ったり歌わなかったりなので1回目は偶然なのかもしれないが、次のサビでは滝さんが明らかに卓郎さんの方を確認してから卓郎さんと一緒に「花は咲くのか」を熱唱していた。まるで滝さんが卓郎さんのフォローをするかのように。和彦さんが最後のサビの入りで軽く回し蹴りするような動きをしていたのが堪らなくかっこよかった。

そこからAnswer And Answer へ。イントロの入りのギターは滝さんが弾いていた。滝さんがお休み中に入りのギターを弾いていたのは卓郎さんで、滝さん復帰後もそのまま卓郎さんが弾いていたので、いつの間にか滝さんの受け持ちに戻ったんだな、と。和彦さん、前髪がかなり伸びていて顔、特に目元はほとんど髪に覆われていたが動きが激しくなると片目が現れたりしていて、フロアをよく観ている様子が窺えた。 

 

卓郎さんがやや柔らかめの口調で「仙台!」とひと言。お久し振りですね、おれたち15周年を祝ってもらう気満々ですからという感じのことを卓郎さんが言うと和彦さんから笑みがこぼれる。 

 

 和彦さんがまた前に出てくると、歪んだベースの音からGetting Betterへ。イントロの間はずっとステージ前方で自身の見せ場を盛り上げていた和彦さん。自分がベースアンプからまっすぐ正面にあたる位置にいたため、イントロのベースのフレーズの迫力を真正面から受け止めることが出来た。ステージは鮮烈な赤へ。Aメロではかみじょうさんがバスドラを踏みながら僅かに一息つくような仕草。

次はレア曲Scarlet Shoes、引き続き真っ赤なステージ。間奏では青も混ざっていた。札幌でもセトリ入りしていたが数年振りにライブで聴けたという驚きから冷静に聴くことができなかったので、ここでもう一度聴けて嬉しい!小気味よいリズムに頭を揺らす。下手で聴いていたこともあり、最後の「赤いクツで」の後に入るベースとブラストのようなドラムの性急なリズムが目立っていてとてもかっこよかったところ。

Scarlet Shoesから間髪入れずにカウントで繋ぎ反逆のマーチへ。曲の入りでフロアを笑顔で見ていた卓郎さんの表情が記憶に残っている。勇ましくベースを弾いてゆく和彦さん、サビ終わりの3連符のスラップを一際強調するかのように弾いていたのが、曲に更に勢いをつけていた。

ステージが暗く深い青に包まれ、どろどろとしたベースの音から始まるIce Cream、このイントロを曲調に合わせるかのようにあまり動かず引いていた和彦さんが、最後だけは少し動きを大きくしていた。 

また少し暗くなったようなステージで、次の曲に繋げるかのように滝さんが静かにギターを奏でるとかみじょうさんがそれに合わせるように静かにシンバルを叩く。 Beautiful Dreamer、イントロの静かなパートはベース側で聴いていたためか音源の印象よりもかなり重い音、そこからなだれ込んだ時にはよく動くスポットライトたち、そしてバックドロップ下の横照明は高速で光を左右に流して行き、かなりの爆速感を演出していた。サビでは「You're Beautiful Dreamer」の大合唱!

君は桜、紫の柔らかい照明が優しい。最後のサビ前、一瞬音が止んだ瞬間にスポットライトの紫が一斉に卓郎さんを照らした瞬間と、そこから卓郎さんの優しい歌声が広がる瞬間は本当に見事な美しさだった。

サクリファイス、しばらくライブで聴けなかった曲なので久々…!確かにジャケットも青でこれまでのライブでも青い照明だったのでこのツアーにぴったりの選曲だったかもしれない。下手側からだと、曲中に数回行われるかみじょうさんのシンバルミュートが全て、何の遮りもなく観られたのでそれがまた良かった。

卓郎さんのアコギの音から始まる、夏が続くから。前回の公演で上手側=ギター前で聴いていた時にはアコギ・エレガット・ドラムの歯切れの良さが際立ちシャキッとした音を楽しむ曲という印象だったが、下手側=ベース前で聴いていると全ての音を一手に支えるようなベースの音がオクターブ間を波のようにうねる、どっしりとしたリズムを楽しむ、という印象。当たり前かもしれないが、それでもフロアのどの場所で聴くかによってこんなにも曲の印象が変わるのか…と驚きながら、その違いを大いに楽しみながら聴いていた。間奏後の歌い出しの部分では和彦さんも一小節分くらい手拍子をしていた。ゆったりと音に浸り指弾きの手元を観ながら、和彦さんが意外と忙しい曲なんだな…と考えていた。

 

 卓郎さんがまた話し始める。うろ覚えだが、次の曲について、みんなも好きな人の名前を叫んだり、嫌いな人の名前を叫んだりしてくださいと言っていたので次に何が来るのかを察する。 

 それに続く曲はもちろん、Mantra!ステージ前方まで出てきた和彦さんがオフマイクで「かかってこい!!」と言うと後半では定位置まで下がりマイクを通して叫び続けていた。

そのままの勢いでロング・グッドバイへ。ずっと赤い照明と共に演奏されてきたこの曲を、ステージが青く照らされる中で聴くのはやはり新鮮な光景。「僕には君がいれば何もいらなかった」の部分では和彦さんがオフマイクで思いっきりシャウト!本当にオフマイクか!?と思うくらいにはっきりと聴こえてきた。

Black Market Blues では卓郎さんが「218秒かけて 仙台PITに辿り着いたなら!!」と歌っていた。2番の「迷える子羊たちが~」の部分、普段ベースを高く掲げてみせることの多い和彦さんがこの日はフロアに背を向け、アンプと向かい合ってノイズを出す、という普段とは違う動きをしていた。

新しい光では1サビの後の間奏で、この日も和彦さんと爲川さんがかみじょうさんの前まで来て向かい合う様子が見えた。ここも個人的にとても好きな瞬間。真っ白い照明達が曲展開の緩急と完全にシンクロし、静かな間奏や最後のサビに入る瞬間の柔らかな光の美しい様子には思わず息を呑んだ。

本編最後の曲Carry On 、2番で卓郎さんが「声を聞かせてくれ!」と叫ぶとこの日も大歓声と無数の拳が上がる。最後にはかみじょうさんが両腕を回す様にかなり大きな動きでシンバルを乱れ打ち、和彦さんがアウトロあたりで、音を強調するように一際強く弦を弾き、クライマックスを大いに盛り上げていた。

 

  演奏が終わり、滝さんと爲川さんが先に退場、卓郎さん、和彦さん、かみじょうさんは少し短めにフロアに挨拶をしてから順番に退場。和彦さんはソフトボールのような投げ方でフロアにペットボトルを投げ入れた。

 

  しばらくしてから再び暗転、最初にステージに戻ってきたのは和彦さん。何と黒のDEEP BLUE Tシャツ…和彦さんが9mmのライブで半袖Tシャツを着用している!!!徐にマイクスタンドの高さを変え始める和彦さんの姿に、フロアから歓声が起こる。ずっとざわついているフロアの様子をしばし窺っていた和彦さんが「みんな静かにしてくれないと喋れないよ」と照れるように笑いながらひと言。そこから話を続ける…かと思いきや一旦水を飲んだり。フロアから「おかえり!」の声が飛ぶと、「ただいま」と返す和彦さん。

珍しく半袖のTシャツを着ていることに触れ、「ステージでは半袖のTシャツ着ないんだけど。何かキマらなくて…部屋着みたいな。でもここは俺の部屋みたいなものだから」と話す。客のひとりが「かっこいい!」と叫ぶと、「じゃあ、是非買ってください…」と続け笑いを誘う。

ひとしきり話すと落ち着かない様子でステージ袖の方を覗くが誰もステージに現れず、最後には袖に向かって両手で「来い来い!」という感じの仕草をしていた。そこでようやく卓郎さんが登場。和彦さんと色違い、白のDEEP BLUE Tシャツに着替えてきた卓郎さん。「早くマイクスタンド直さないと死んじゃうよ?」と声をかけると和彦さんが「まだ大丈夫」と当たり前のように返し、またフロアからは笑いが起こり和やかな空気に。卓郎さんが和彦さんと色違いのTシャツを着て出てきたため、フロアから「部屋着?」というひと言が飛んでくると和彦さんが「部屋着は俺だけ」と返していた。

 

これからも9mmの音楽を色々な形で日本中に届けます、と卓郎さんが話してからアンコールとしてこの日最後に演奏されたのはPunishment!間奏の終盤で滝さんが「ハイハイハイハイハイハイ!!」と叫びながらギターを弾く。ここから滝さんが「ダーーッ!!!!」と叫んで歌に入る事が多いが、この日これを叫んだのは滝さんではなく、和彦さんだった。偶然かもしれないがふたりの見事な連携プレー!アウトロでは和彦さんがシャウトの代わりに超絶的な早弾きを披露、最後の最後まで食い入るように和彦さんの手元を観ていた。

 

演奏が終わると滝さんと爲川さんが退場、卓郎さんと和彦さんは一緒に上手の方へ行って挨拶。ゆっくりとドラムセットの後ろから出てきたかみじょうさんが投げるスティックを選ぶと2本ほどフロアに投げ入れて退場。最後に卓郎さんが万歳三唱から丁寧にお辞儀をし、袖に消える直前にもう一度こちらに笑顔を見せ、退場していった。

 

 

 前述の通り、下手にいたので和彦さんを多めに観ることができた。何度も何度もステージ前方まで出てきたり、時には下手のかなり端まで出て行ってベースを弾きまくり、フロアを大いに盛り上げていた。どの曲だったか忘れてしまったが、本来弾くフレーズの代わりに弦をスライドして音を出している瞬間があって、その一瞬の光景は記憶に焼き付いている。

札幌と同様会場が大きかったため、前回一目ですっかり好きになった、バックドロップの下に一直線に並ぶ照明も仙台でそのまま使われていた。この後の公演も大箱ばかりなので、どの公演でも同じ照明がまた観られるのではないかと思われる。

 

 セトリは札幌とほぼ一緒だった。まさかScarlet Shoesがもう一回聴けるとは思わなかったので、純粋に嬉しかった。仙台公演ということで期待通り和彦さんが話すのも聞けた。和彦さんが喋る様子を観ながら、そういえば昨年のツアーで「持つと車掌さんみたいになってしまう」と例えていた四角いフォルムのマイクではない…?という気がしたのだけれど、いつの間にマイク変えたのだろうか。

そして“9mmのライブ”で半袖Tシャツを着て演奏する和彦さん、というもしかしたら今まで一度も見たことがないのではないかと思われる貴重なものも観られた。初期は長袖Tシャツ、ここ数年は黒シャツを着て袖を捲る、という出で立ちがお馴染みの和彦さんが9mmのライブで半袖を着てこなかった理由をまさかここで知ることになるとは…。「部屋着」と絶妙な例えをしながら(でも半袖も普通に似合っていましたよ!)地元・仙台のライブハウスで「ここは俺の部屋みたいなもの」と言い切った和彦さん。それを仙台の人たちは幸せ者だな、と思いながら聞いていた。