最後の駅の向こう

何でもすぐ忘れる人の特に記憶に残しておきたいライブの簡易レポートと趣味のレビューの予定。あくまで予定。

20191123/9mm Parabellum Bullet“FEEL THE DEEP BLUE TOUR 2019”@Zepp Nagoya

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アルバム「DEEP BLUE」リリースツアー7本目、名古屋。

朝、地元を出発する際には雨が降っており11月らしい寒さだったが名古屋に到着するといい天気で、季節が1ヶ月ほど逆戻りしたかのような暖かさ。しっかり着込んでしまったので少し暑いくらいだった。名古屋の街中を歩きながら「夏がまだ続くから…」とつい頭の中で反芻してしまった。 

 

会場に入り、ステージを見回しながら開演を待つ。ステージ最後方の下の方に横一列のLED照明が用意されているのを確認、今回も照明器具は札幌や仙台と一緒だな、とか卓郎さんが最近使い始めた、背の低いOrangeの黒キャビにお馴染みのマーシャルのヘッドが乗っている様子がとても可愛らしいな、など。ステージの奥の方を見るとドラムセット・PHXと滝さんのアンプ・メサブギーの間あたりにバックドロップの双頭の鷲の右側の頭が見えた。開場時間中はまだバックドロップがステージに掲げられておらず、ステージ下に畳まれている状態だったためである。

 開演時刻を数分過ぎた所で暗転、Digital Hardcoreが流れ、照明の激しい点滅と大歓声を浴びて15周年仕様の巨大なバックドロップがゆっくりと上がってくる。

 

 DEEP BLUE

名もなきヒーロー

The Revolutionary

Discommunication

Getting Better

Scarlet Shoes

反逆のマーチ

The Revenge of Surf Queen

Beautiful Dreamer

君は桜

Calm down

Ice Cream

夏が続くから

Mantra

ロング・グッドバイ

Black Market Blues

新しい光

Carry On 

 

(teenage)Disaster

Punishment 

 

この日は上手側で観ることにした。滝さんは自分の視線の真っ直ぐ先、右側を向けば爲川さん、左に視線をずらすとかみじょうさん、更に左に視線を向けると何とか卓郎さんも見える。和彦さんは残念ながら視界におさまらず。

曲に入る前に滝さんがピックスクラッチを一発、ステージが爽やかな青に包まれDEEP BLUEからライブがスタート。第一声で「あっけなく終わりにしたくない」と歌う卓郎さんは眼差しに力を込め、歌声も力強く響く。上手の一番端では爲川さんがすらりとした脚を、エフェクターボードを軽々と跨ぐようにしてモニターに乗せ歌詞を口ずさみながらギターを弾いていた。

ライブアレンジのイントロを演奏してから名もなきヒーローへ、序盤から滝さんが大きく開いた目を輝かせながら元気にコーラスをしていた。間奏ではかみじょうさんがシンバルを音源よりかなり多めに叩いていたが、いつの間にか左手からスティックが消えていて、右手に持っていたスティックを左手に持ち替え、右手で新しいスティックを取り出し、その間シンバルを叩き続けるというかなり器用なことをやっていたので驚きながら観ていた。

ここでThe Revolutionary、真っ白な照明がステージを眩く照らす。間奏では卓郎さんと滝さんがお立ち台でツインリードを弾き、和彦さんと爲川さんはかみじょうさんの前までやってきて向かい合うようにして弾いていた。お立ち台から後ろ向きに降りてそのまま定位置に下がる滝さんと、ステージ中央から上手端に戻る爲川さんがぶつかってしまいそうな瞬間があった。この日滝さんは「世界を!!」の部分は叫ばずに普通に歌っていた。

続いてDiscommunication、スポットライトの黄緑とバックドロップ下の横照明のオレンジが鮮やか。2番では和彦さんと爲川さんがライブアレンジのメロディーを弾いている中、滝さんが原曲通りのメロディーを弾いていた。アウトロでは滝さんが途中でピックを落としてしまったようで最後のリフを指で弾いていた。演奏が終わると少し表情を綻ばせながら新しいピックを手にしていた。 

 

演奏が終わるとフロアからステージ上の5人に向かって名前を呼ぶ声やたくさんの言葉が飛んでくる。その様子に卓郎さんが開口一番、「名古屋、元気だね〜」

卓郎さんが話している間、隣では滝さんが片手だけエアドラムをするかのようにリズムを取っていた。後ろではかみじょうさんがスタッフの方と何やら話したりイヤモニを付け直しているようだった。

卓郎さんが話を続ける。ツアーももう折り返したけど、まだまだ良くなる、と 。

 

それに続くのはもちろんGetting Better、下手から和彦さんの歪んだベースの音が聴こえてくる。イントロのタッピングは滝さん。この曲だったかと思うが、サビを卓郎さんと滝さんが一緒に歌い上げると同時に両腕を高く挙げ、爲川さんも一緒になって片腕を挙げていた瞬間が嬉しかった。

次はScarlet Shoes、レア曲が札幌、仙台に続きセトリ入り。“DEEP BLUE”のツアーで敢えて赤系の色をタイトルに冠した“Scarlet Shoes”を入れてくるところが面白いなと思いながら毎回聴いている。引き続き真っ赤なステージが情熱的な曲調を視覚でも表すかのよう。中盤では赤の中に青い照明も混ざり、双頭の鷲を斑らに染めていた。

そこから間髪入れずにかみじょうさんがカウントを入れ、反逆のマーチへ。曲が進むにつれて少しずつ滝さんの動きが大きくなっていった。最後のサビ前でかみじょうさんがカウベルを叩きながら、その隣に置かれているチャイナシンバルを掴んでいるのが見えた。カウベルの音に共振しないようミュートしていたのだろうか。  

 

次の曲、滝さんが徐に弾き始める音を聴いた瞬間にとある曲が思い浮かんではっとした、しかし本当にそれが来るのか…?と期待と緊張が入り混じった気持ちで待っているとカウントから演奏されたのはその期待通りのThe Revenge of Surf Queen!!!!まさかここで、このタイミングで…!!中盤以外は滝さんと爲川さんが滝パートのメロディーをふたりでユニゾン。その息ぴったりな様子、滝さんに完璧に合わせていた爲川さんが流石過ぎる…。深く爽やかな青い照明の中、バックドロップ下の横照明が小さいブロックに分かれ上下に動いてウェーブを描き、ステージに緩やかな波を作り出していた。そこで初めて、あの横照明が一直線すべてくっついている訳ではなく幾つものブロックに分かれていることを把握した。

 

ステージが暗い青の底に沈むと、青い影になった卓郎さんが「名古屋」と静かに呼びかけ、もっと音楽で色々な感情が出るところを見たい、もっとみんなの声を聞かせてくれ、そんな感じの内容だったかと思う。

 

 音が重なるにつれ段々と明るくなっていくような空間で、荘厳さすら感じさせるようなイントロから音も光も爆速感を出してゆくBeautiful Dreamer、卓郎さんの言葉通りサビでは何度も「You're Beautiful Dreamer!!」と大合唱が響く。タッピングを爲川さんに任せ、滝さんも大きな声でコーラス。

君は桜、薄紫の照明と可憐なリフから、真っ直ぐに突き進むようなメロディーへ変わる部分の高揚感にワクワクする。最後のサビ前、卓郎さんが歌い出す直前に柔らかな薄紫のスポットライトが一斉に卓郎さんを照らした瞬間はやはり言葉にならない美しさ。最後の音を鳴らした直後にかみじょうさんがシンバルの上からスッと手を下ろし、静かに音を止めた。

 

滝さんが弾き始めたフレーズから次の曲が読めず、何の曲だ?と考えながらしばらく滝さんを観ているとその間にステージから卓郎さんの姿が消えていた。そのまま滝さん、和彦さん、かみじょうさん、爲川さんの4人で演奏が続けられる。序盤はゆったりとした、どこか東洋的なメロディーを滝さんが弾き続けていて、聴きながらメロディーが何となくキツネツキみたいだな…と考えていた。しばらくすると演奏が少し激しくなり、最後にはステージを二分するような青と赤の照明の中、かなりの轟音を巻き起こしていた。この突然のセッションタイムに何が起こったか理解が追いつかず、呆然としながらもただひたすらメロディーの心地良さに聴き浸っていた。終演後に9mmの公式アカウントが出したセトリを見てこの枠が“Calm down”と名付けられていることが判明。

 

セッションが終わると卓郎さんが再びステージに登場し、ステージがどす黒い青に包まれどろどろとした音からIce Creamへ。中盤でステージ奥の横照明がバックドロップ側に向き双頭の鷲の銃を照らしていたり、演出の意図とは違う解釈になるがステージ天井から数本のスポットライトがバックドロップの前を真っ直ぐ下に光を伸ばした様子が双頭の鷲を檻に閉じ込めているように見えた光景が面白かったり、つい照明を多めに観ながら聴いていた。

卓郎さんがアコギ、滝さんがエレガットに持ち替え、卓郎さんのアコギの音から始まった夏が続くから、上手側で聴くとアコギとエレガットの歯切れの良さが目立つ。サビ前まではまろやかな音を響かせるエレガットが、サビではエフェクトをかけキレのある音に切り替わる流れがやっぱり好きで、間奏に入る前に三連符のシンバルが強めに入るのも大好きで、滝さんとかみじょうさんの手元を交互に観ていた。間奏のギターソロをお立ち台に上り、かなりの気迫で弾いてゆく滝さんの姿に釘付けになった。

 

ここで一旦演奏が終わると、また多くの人が名前を呼んだり、何かひと言飛ばしていて何を言っているかはほとんど聞き取れなかったが、「米美味しかった~!」というひと言が辛うじて聞き取れた。いつまでも客の声が止まらず、卓郎さんがその様子を見ながらのんびりと「僕喋っていいかな?」と話しながらフロアを鎮める。

歌詞があるようでない、日頃の鬱憤を叫ぶも良し、自分だけのマントラを唱えるも良し…と言う卓郎さん。みんなに叫んでもらう、と言ってから卓郎さんがまず叫ぶ、「いけるかーー!!!」

 

そんな卓郎さんのMCからMantra、卓郎さんは最初から歌わずマイクから離れてギターを弾いていて、その部分を滝さんと爲川さんが歌っていた。音源で4人が各々叫んでいる部分では和彦さんがずっとソロでシャウトしていたが、その様子がこちらからだと全く見えなかったことが悔やまれる。ドラムセットにマイクは無く、やはりかみじょうさんが歌うことは無いようだ…。客たちに好きなように叫んで欲しいという意図で、メンバーの叫びが少なかったのだろうか。

滝さんのタッピングから始まったロング・グッドバイ、サビなどでは爲川さんがずっと歌詞を口ずさみながら、楽しそうに弾いていた姿が記憶に残っている。卓郎さんが「僕には君がいれば何もいらなかった」と歌い切った直後に下手から歓声が聴こえてきたので、見えなかったがきっと和彦さんがオフマイクで思いっきり叫んでいたんだろうな…と想像していた。最後のサビ前で滝さんが勢いよくペグとナットの間を鳴らすあの瞬間、スポットライトが一斉に滝さんを照らしたのがこの日の照明の中でも屈指の見事な演出だった。

フロアの盛り上がりが更に加速するBlack Market Blues、卓郎さんが「Zepp Nagoyaに辿り着いたなら!!」と歌う。最後のサビ前には滝さんも手拍子をしフロアを煽っていた。

そこから新しい光、真っ白に輝くステージで1サビ後の間奏部分、和彦さんと爲川さんがかみじょうさんの前まで来てネックを掲げ、同時に定位置に戻るというフォーメーションの美しさを見せる。アウトロでは卓郎さんがかみじょうさんと向かい合って弾いていた。

本編最後はCarry On、2番で卓郎さんが「声を聞かせてくれー!!」と叫ぶとフロアから返ってくる大歓声!滝さんはこの日一番大きな声でコーラス。ライブ序盤から曲の盛り上がるところで頭や腕を振ったりする以外は終始滑らかな動きで叩いていたかみじょうさんがこの曲だけは終始、かなりの力と気迫を込めてドラムを叩き続けていた。

演奏が終わると卓郎さんが思いっきり両腕を広げ、その後にギターを高く掲げた。弾けるような笑顔で。やり切ったぞ!!という表情だった。  

 

アンコールで再びステージに登場した卓郎さん、滝さん、和彦さん、かみじょうさん。卓郎さんがまた来年も名古屋に来るから、この先の9mmもよろしくお願いします 、と。その前にMERRY ROCKもあるね!とも。

この時点で爲川さんがステージに戻って来ない。もしかして…と考えていると卓郎さんが4人で演奏します、と言ってから演奏へ。

アンコール1曲目は(teenage)Disaster !ここ最近、4人で演奏する場合にはこの曲が多い気がする。アウトロの終盤は滝さんが原曲通りのメロディーを弾いていた。

この日最後の曲。静かなイントロから爆速カッティングへなだれ込むPunishment、滝さんがアウトロ後に何度もギターのネックを掲げ、最後の最後に空間を斬り上げるように思いっきりネックを振った。

 

真っ先に退場する滝さん。頭の上で手を叩きながら退場していった。和彦さんが下手から上手へ移動しながら手にした大量のピックを1枚ずつフロアに投げる。卓郎さんも下手、上手と動き回ってフロアに挨拶。ステージ中央に戻ってきた卓郎さんがまたフロアに挨拶していると、卓郎さんの左隣にスティックを手にしたかみじょうさんがやってきて、身に着けている衣服の隙間にスティックを差してふざけてから下手方面にスティックを投げていた。最後までステージに残った卓郎さんが万歳三唱から綺麗にお辞儀をして退場。その姿が袖に消えるまでフロアに手を振り笑顔を見せていた。

 

 

この2週間前に観た仙台公演では卓郎さんの声が終始掠れていた。最後まで歌い切り、そのような状態でもアンコールで1曲歌ってくれたものの中盤は声を出すのが辛そうな瞬間があった。翌週の福岡公演でも、詳しい様子は把握していないがやはり喉の不調があったらしいと聞いたので名古屋はどうなるかと心配していた。結果、卓郎さんの声はいつも通りの綺麗でよく通る声に戻っていた。ライブ中ずっと楽しそうに笑顔を見せていて、演奏が終わった後にはこの日一番の清々しい笑顔だったので安心した。よかった…。

ただ、少しだけ歌う部分を減らしていたのでまだ本調子ではないのかもしれない。札幌や仙台では無かった突然のセッションタイムも、今思えば卓郎さんの喉を休めるための時間として急遽入れたものだったのかもしれない。

 

そして名古屋、何と言っても最後にライブで聴いたのがいつだったか覚えてないほど久し振りに聴けたThe Revenge of Surf Queenが一番嬉しかった。とても大好きな曲、ここ数年は全くセトリに入っていない気がしてまたライブで聴けることはないかもしれないと半ば諦めていた曲だったので、まさかのタイミングで聴けて喜びも一入だった。「DEEP BLUE」がリリースされたあたりのインタビューかラジオ番組か何かで、確か夏が続くからの話題の際に「9mmでサマーチューンは無かった」という発言があってそれを聴きながら咄嗟にThe Revenge of Surf Queenを思い浮かべていて、何ならツアーでThe Revenge of Surf Queenも演奏されたらいいのにな、とぼんやり考えていてのが本当に実現した…。

 

この日のMCで卓郎さんが「DEEP BLUE」のテーマである“一生青春”について触れていた。かなりうろ覚えだけれど、まず「昔は“一生青春”という言葉が好きではなかった」と話していた。その後、一生青春= “青を塗り重ねる”ことについて、青には“生命力”と言う意味もあるし、“憂鬱”もある、色々な意味があるんだと。それを塗り重ねてゆくことが“一生青春”なのではないか、そんな感じの話だった。

「DEEP BLUE」の曲たちを目の前で聴いて、卓郎さんの“一生青春”と“青”の話を聴くたびに心が深い青に染められてゆくツアー、これを書いている時点で名古屋の翌日に開催された大阪公演も終わり(大阪公演は観ていないが)、残るはあと2本。残り少ないのが既に寂しい気もするが、今まで以上の期待を持って週末を楽しみに待つ。最後の最後まで青に深く染まるために。