アルバム「DEEP BLUE」リリースツアー9本目!東京2days初日。
この日は2階席を取った。9mmをZeppの2階席で観るのは初めて。何となくずっと1階で観ていたが、折角の東京2daysなので片方を2階席にしても良いのではと思ったため。
席に到着したのは開演時刻の数分前。着席してしばらくするとすぐに場内が暗転。
Digital Hardcoreが鳴り響く中、交互に点滅する左右のスポットライトと大歓声を浴びながら15周年仕様のバックドロップが下からゆっくりと上がってくる。ステージに現れる巨大な双頭の鷲は、2階席最後列にいる自分とちょうど目が合うくらいの高さだった。
DEEP BLUE
名もなきヒーロー
Discommunication
太陽が欲しいだけ
Getting Better
Scarlet Shoes
The Revenge of Surf Queen
君は桜
Calm down
Ice Cream
夏が続くから
Mantra
ハートに火をつけて
新しい光
Carry On
いつまでも
Punishment
この日もバックドロップの下あたりに長い横一列のLED照明が用意されていた。1曲目、滝さんがひとりでギターを弾き始めた瞬間に、その横照明が滝さんの後ろだけ光り、滝さんの姿を浮かび上がらせる。1階で観ていた時には全く気付かなかった。こんな使い方が出来るのか…!!といきなり美しい瞬間から始まったDEEP BLUE。澄んだ水色に包まれるステージを、2階席だと隅々まで視界におさめることができる。
2階席のほぼど真ん中の見晴らしの良さに感激している間に次の曲、かみじょうさんがスティックをくるりとひと回ししながら叩くと徐々に4人の音が重なっていく。その間、滝さんが何度もギターのペグとナットの間を鳴らしていた。ライブアレンジのイントロから名もなきヒーローへ。青とピンクのスポットライトが、こちらから観るとかみじょうさんと卓郎さんの間あたりで交差するように線を描いていた。サビも青とピンクの照明が交差していたが、卓郎さんが「また明日」と歌い切った瞬間に全ての照明が赤に変わりスポットライトがフロアをなぞるように縦に動く。間奏では滝さんがギターのボディを叩きながら手拍子を煽っていた。
続いてはDiscommunication、普段から青や赤の照明が多い9mm、今回はそれが特に顕著な気がしたがこの曲では黄緑の照明がとてもよく映える。次の曲、滝さんの爆速ピッキングから太陽が欲しいだけ!自分が観た中ではこのツアーで初めてセトリ入りしたのでイントロで思わず歓声を上げてしまった。燃え上がる太陽を表すかのように赤い照明がステージを包んでいたが「ツキに見放されて 流れ星は消えた それでも最後には笑え」の部分では、ステージ下半分は青く、上半分は赤く、ステージに鮮烈な夜明け空を描き出すようだった。
卓郎さんがフロアに「東京!」と元気に呼びかける。東京、よく来たね!とも。
続けて、このツアーの中で色々と実験をしてきたけれど、“まだ良くなる”、“もっと良くなる”…
と前置きしてから始まったGetting Better、和彦さんがステージの前方へ出てきて歪んだベースを鳴らす。その瞬間、ステージ全体が青くなる中で和彦さんだけを赤いスポットライトが照らす、という演出で和彦さん渾身の見せ場を盛り上げていた。曲中で一度「東京!!」と卓郎さんが叫んでいたような。
次はScarlet Shoes、最初のサビ後のドラムだけになる僅かな瞬間にかみじょうさんが一際明るく照らされていて、かみじょうさんの見せ場をしっかりと目立たせていた。間奏で滝さんが弾くゆらゆらとしたフレーズに合わせるかのようにバックドロップを赤と青の斑に色付けていた照明が不穏な雰囲気を作り出していた。
カウントから間髪入れずに反逆のマーチへ。毎回この曲では滝さんの動きが序盤の他の曲よりも大きいような気がするな、と思いながら観ていた。「戦ってるんだろ“東京”のみんなも!!」と歌う卓郎さん。
3曲続けて赤を基調とした照明だったが、一度ステージが薄暗くなり、滝さんが次の曲が何となく予想できるような音を出し始め、そのままThe Revenge of Surf Queenへ。一転して爽やかな青い照明がステージいっぱいに広がる中、曲調に合わせるように控えめな動きで演奏する5人。サビにあたる部分では滝さんがギターを歪ませお立ち台へ。間奏のような部分ではお立ち台に乗った滝さんが更に動きを大きくしながら弾いてゆく。その間に下手では和彦さんがモニターに座り足を伸ばし、リラックスしたような様子でベースを弾いていた。バックドロップ下の横照明は濃淡をつけてウェーブを描き、ステージに波を出現させていた。
卓郎さんが「東京」と優しい口調で語りかける。語り口は失念してしまったが、どんどん黒に近づくほどに青を塗り重ねる、そんな話だったかと思う。
そのひと言から始まったBeautiful Dreamer 、音源の印象とは比べ物にならないほど重厚な演奏が段々大きくなるにつれてステージも明るくなり、爆速感のあるメロディーになだれ込んだところで煌びやかな青が視界一面に広がる。サビ前、和彦さんのシャウトの瞬間に照明が赤に変わる。名もなきヒーローの時もそうだったが、ピンポイントなタイミングで入れられる赤が曲の見せ場をさらに目立たせる。
君は桜、最初は水色、そこから白が差し込むような照明。ピンクじゃないんだな、と思いつつ春の晴天と日差しを思わせる色合いが若々しさのあるこの曲にぴったりだった。サビではステージが淡い紫のような、桜色のような色へ。最後のサビ、「花ひらいた 君は桜」と卓郎さんが歌う直前に桜色のスポットライトが一斉に卓郎さんを照らした。最後の一音の後にかみじょうさんがシンバルを静かな手つきで止める。
君は桜 が終わり暗くなるステージ。卓郎さんが速やかにステージから退場し、ギターも下げられると滝さんが穏やかにギターを弾き始める。序盤はしばらく東洋的なまったりとしたメロディーが奏でられ、中盤から段々と演奏が激しくなり最後にはステージが青と赤に二分される中、思いっきりカオス音を叩きつける。距離が離れている2階席にいてもその迫力に言葉を失うほどの音圧だった。激暴れする和彦さんと滝さん、上手端から離れないまま、でも動きを大きくしていく爲川さん。最後の最後に滝さんがかみじょうさんの前、普段卓郎さんがいるあたりまで出て思いっきりギターのネックを振っていた。最後の音が鳴った瞬間に突然ステージが轟音で焼き尽くされたかのような真っ赤に変わり、音が止まるのとほぼ同時に暗くなった。これが、ツアー中盤から突如として現れたセッションパート、Calm downである。
卓郎さんが戻ってくると暗いステージにどろどろとした音が放たれる。「DEEP BLUE」の中でも異色の雰囲気を持つIce Creamが始まる。そんな不思議な雰囲気に浸りながら卓郎さんと滝さんによるツインリードの掛け合いを聴いていた。 バックドロップの双頭の鷲の体に、波形のような模様の照明が青や赤に色を変えながらずっと浮かび上がっていた。
卓郎さんがアコギ、滝さんがエレガットに持ち替える。卓郎さんのギターから夏が続くから へ。澄んだ白の照明とアコギ・エレガットの音色がとても合っていた。間奏前からは青い照明に変わった。どの公演でも同じことを思いながら聴いていたが、滝さんのギターソロがあまりにも情熱的で美しいメロディーなので、人はただただ「目の前に存在する音が美しいから」という理由だけでこんなにも心を掴まれるのかと毎回胸を打たれながら聴いていた。この曲を聴いていると自分でもうまく言葉にできないが、何かに焦がれる気持ちが沸々と湧いてくるような、不思議な気持ちになる。
このあたりだったか、滝さんがクリーンサウンドで静かにギターを弾き始める。何だか可愛らしいメロディーを弾いているとかみじょうさんがハイハットで合わせ始め、最終的にCメジャー調?のジャムセッションのようになっていた。その様子に卓郎さんが後で「セッションタイムが増えましたね…20年、30年続けていたらもっと増えるかもね!」と楽しそうに言っていた。
アルバムについて「みんながたくさん聴いてくれているのが分かる」と言ってくれたりもしていた。
また、アルバムのテーマである“一生青春”について改めて説明します、と。“一生青春”とは、ワーワーキャーキャーしていることではなくて青を塗り重ねていくこと、ここにいるみんなには伝わるってるかな、と。
そして次の曲について、客に叫んで欲しいものとして「嫌いな人、好きな人、好きな食べ物…自分だけのマントラ」と卓郎さんが言うと「マントラ」の部分で歓声が上がっていた。
卓郎さんの「いけるかーー!!!」の勢いのままMantra!赤いスポットライトが猛スピードで回転しながらステージとフロアに鋭い光を飛ばす。 最初の「終わってたまるか」のブロックでは卓郎さんはマイクから離れ、滝さんが思いっきり歌詞を叫び始める。中盤は和彦さん、滝さん、爲川さんが「終わってたまるか」を叫んでいたが、和彦さんは普段のシャウトのような叫び方ではなくはっきりと歌詞が聴こえるように叫んでいた。最後は卓郎さんと滝さんがふたり揃って「なんとかなんのか!!!!」
更にその勢いのまま滝さんのタッピングからロング・グッドバイへ!「僕には君がいれば何もいらなかった」と卓郎さんが歌う間に和彦さんが前に出てきて、オフマイクで思いっきり叫んでいた。その声はさすがに2階席までは届かなかったが、和彦さんがどれほどの力を込めて叫んでいたのかは視覚からはっきりと伝わってきた。そしてこの日も、最後のサビ前で滝さんが勢いよくペグとナットの間を鳴らすあの瞬間にスポットライトが一斉に滝さんを照らした。
再びステージが燃え上がるような赤に包まれたハートに火をつけて。間奏では和彦さん、卓郎さん、爲川さんが左にスライドする中ひとりお立ち台でソロを弾く滝さんが3人が移動するのと同じ方向にネックを振る。間奏後には卓郎さんが「手触りだけの“Zepp Tokyo”は」と歌っていた。最後のサビでも滝さんはお立ち台の上でかなりの熱量でギターを弾いていた。
毎回5人のサビ後のフォーメーションが美しいため、2階席でその様子をステージの上から観られるのを一番楽しみにしていた新しい光。2回目のサビだったと思うが、滝さんがお立ち台の上で一度大きく両手を広げた後、ギターで歌のメロディーを弾いていた。なかなか珍しいものが聴けたと大喜びしながらその様子を観ていた。その後の間奏では和彦さんと爲川さんが同時にかみじょうさんの前へ。卓郎さんと滝さんがお立ち台の上でギターを弾き、その後ろで和彦さんと爲川さんが向かい合い、中心にはかみじょうさんがいるという左右対称の美しいフォーメーション。4人がネックを上げると直後に和彦さんと爲川さんがまた同時にそれぞれの定位置に戻る。アウトロでは和彦さんと爲川さんがそれぞれ上手と下手の端まで出て行って、卓郎さんと滝さんは先程と同じ位置、そしてステージ奥の中心にはかみじょうさん、というフォーメーション。期待していたものが本当に観られた。見事な美しさだった。
今までに何度も何度もライブで聴いてきた新しい光。多くの客たちが出せる限りの歌声を響かせる最後のサビの部分、いつも1階にいるとそれがとても力強い歌声に聞こえていた。ところが2階席にいて下から聞こえてきた大合唱は普段と全然聞こえ方が違ったことにとても驚かされた。たくさんの人の色々な声が混ざって、ひとつの優しい歌声になっていた。あんなに優しい歌声が聞こえてくるとは思わなかった。眩い白い照明とクリーンな演奏の中で聞こえたその歌声は、思わず感極まるほど希望に満ち溢れたものだった。あの歌声を、きっと一生忘れないだろうなと思う。
本編最後の曲、Carry On。かみじょうさんが チャイナシンバルでカウントを3拍入れると、かみじょうさんの方を向いているように見えた滝さんがそれに合わせて片腕を振って拍を取っていた。青空のような澄んだ水色のステージに双頭の鷲が浮かんでいる、その光景は今思い出すとアルバムのジャケットを表しているかのよう、とも取れるものだった。かなり大きな声でコーラスをしていた滝さんが最後に一回転するように動いていたのが記憶に残っている。
5人が退場し、アンコールの手拍子が鳴り始める。自分の目線の高さと同じ位置にいる双頭の鷲を見ながら再び5人がステージに戻ってくるのを待つ。
しばらくするとステージが明るくなり、卓郎さんがひとりで出てきた。卓郎さんが話し始めたのは9mmの来年の活動について。「来年は今年よりも盛りだくさんです」と言いつつ、2020年3月17日に渋谷公会堂にてワンマンライブ“カオスの百年 vol.13”を開催することを告げた。(渋谷公会堂、現在は渋谷LINE CUBEって名前だっけ、という卓郎さんのひと言で渋公の名前がまた変わったことを初めて知った)そしてこれが9mmの来年一発目のライブになるとのこと。
ひと通り告知が終わると卓郎さんが「そろそろ呼んでいいかな?」「9mmの皆さんです!」と言いながらメンバーを呼び込む。最初に和彦さんが出てきて、どうもどうも、というような感じで軽く頭を下げる。滝さん、かみじょうさんに続き登場した爲川さんが定位置に辿り着きアンプに向かったところで卓郎さんが「サポートギター爲川裕也!」と突然紹介を始めると爲川さんがすぐに客席側を向き、スマートな仕草で挨拶。
アンコール1曲目、いつまでも。この曲は公演によっては演奏されないこともあったため、今日は聴けるんだな、という喜びと共に聴いていた。白い光の中をオルガンのようなギターの音色が広がってゆく様子がとても晴れやか。優しい演奏と卓郎さんの歌声がそれに合わさると会場全体がこの日一番やわらかい空気に包まれたように感じられた。最後に寒色系の白い照明が暖色系の白へ変わり、優しい光がフロアを撫でるように動いていた。
そんなやわらかい空気を一変させるこの日最後の曲、Punishment!Ice Creamに似た雰囲気の低音が響き、そこからお馴染みのリフへ。曲の速さに合わせるかのように白いスポットライトが高速で回りまくっていた。アウトロでは和彦さんがシャウトの代わりに爆速で指弾きしているように見えた。最後の最後に滝さんが軽々とギターを掲げ、振り回していた。
演奏が終わり、滝さんと爲川さんが退場。滝さんが袖に消える前に一度立ち止まってフロアを見、頭の上で拍手をしていた。和彦さんと卓郎さんがフロア上手下手真ん中と丁寧に挨拶をしている間にゆっくりと前に出てきたかみじょうさんが、いつの間にか手にした水を飲みながら顔の横で手を振っていた。ペットボトルにストローが刺さっていたのでもしかして卓郎さんの水か?と思いながら見ていると、ペットボトルを卓郎さんのアンプに戻していたのでその通りだった。最後に卓郎さんが万歳三唱、袖に消える直前までフロアに笑顔を向け、ステージを去った。
今回のツアーで唯一2階席から観ていたこの日の感想。とにかく照明の美しさを余すことなく視界におさめることができたことが嬉しかった。アルバムのアートワークやMV、歌詞を思い起こさせたり曲のメロディーとリズムに連動するような照明を目一杯楽しめたこと。特に今回のツアーは、バックドロップ下に設置された横一列のLED照明が光り方と色のパターンが多くてとにかく美しく、1階で観ていた時とは印象が大幅に変わったところがあったり、1階で観ていた時には気付かなかった照明の使い方を2階席では確認することができた。照明の角度を変えることでステージの下半分を色付けしたり、バックドロップを照らしたり、メンバーを紗幕のような光で覆ったり、流れる水のように見えたり、など。照明を観たい、でも5人の動きも追っていたい…と遮るものなくステージが全部見えるので、途中で目が2つでは足りない!と思ってしまうくらいだった。
全席指定の場合を除いて、これまで9mmのライブはほぼ1階のチケットを取ってきた。熱量の高いファン達に混ざって、照明の範囲内にも入り、ステージと近い高さから観るのが好きだから。2階席では最初こそほんの少しだけ外野感あるかな…という気もしたが、1階にいる時とは違う楽しみ方ができる、2階席でも静かに盛り上がった気持ちで観ることができるな、ととても楽しむことができた。これからは機会があれば大箱の2階席で観ることも増えるかもしれない。
この日、卓郎さんがMCで「これでもうアルバムの曲やりませんというのは嫌だなと思ったので、次のアルバムが出るまではDEEP BLUEのプロモーション期間ということにします。」と言っていた。リリースツアーが終われば当たり前だけれどアルバムの曲は一部を除いて演奏される機会がかなり少なくなってしまう。ツアーが終わったら次に聴けるのは何年後、という曲ももしかしたら出てくるかもしれない。あと1本でこのツアーが終わってしまうという寂しさも抱えながら観ていただけに、この言葉は本当に嬉しいものだった。フェスなど持ち時間が短いライブだとなかなか厳しいかもしれないが、ツアーが終わってもきっと近いうちに聴ける日が来るんだな、と。卓郎さんのおかげでツアーが終わる寂しさが少しだけなくなり、翌日のファイナルへの期待を一層膨らませながら会場を後にした。