最後の駅の向こう

何でもすぐ忘れる人の特に記憶に残しておきたいライブの簡易レポートと趣味のレビューの予定。あくまで予定。

20201122/9mm Parabellum Bullet“2Q2Q”@渋谷CLUB QUATTRO

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11月21日・22日の2日間、渋谷CLUB QUATTROにて開催された9mmの今年初となる有観客ライブの、22日公演を観に行った。

9mmが最後に客の前でライブをしたのは同じく渋谷CLUB QUATTRO、今年の年明け直後だった(バンドの中では2019年のライブという扱いになっている)ので実に11ヶ月半振り。6月の緊急事態宣言解除後から9mmは非常に慎重に活動していて、年内のツアーを延期にしたり、中止にした分を配信ライブに変えるなどの対応をしているため今年9mmは有観客ライブをやらないと思っていただけに嬉しかった。

 

今回はシングル&e.p.曲のみでセトリを組むということが事前に発表されていた。シングル縛りなんて今までなかった気がするし、シングル曲でも長いことライブで演奏されていない曲もあるので楽しみにしていた。シングル縛りということは、普段ライブの終盤に演奏されることの多いTalking MachineもPunisumentも(teenage)Disasterもロング・グッドバイもやらないということなので、どの曲をセトリの最後に持ってくるのかが個人的には一番気になっていた。

 

昨今の状況を受け、各地でライブが再開した後も自分はしばらくライブハウスに行くのを控えざるを得なかったので、ガイドライン制定後にライブハウスに来たのはこれが2回目で、会場がどのような対策を取っているのかも気になっていた。入場時に体温測定、間隔を開けて並びチケットのアプリ画面での操作も自ら行う、などの対応が徹底されていた。また開演前にはアナウンスが2回あり、座席移動は禁止、自席での立ち見や手拍子や拍手は可、終演後は規制退場となること等がしっかりと案内された。

 

会場に入るとステージではなくフロアの下手側の壁に、いつものバックドロップが掲げられているのが目に入った。フロアとその周りの段差の上にパイプ椅子が並べられており、席数は200を少し超えるぐらいだろうか。クアトロと言えば下手前方に柱が立っているが、さすがにその後ろには椅子は並べられていなかった。

自分が入場した時に下手側の段差の上にある座席が空いていたので、そこで観ることにした。下手端の方から斜めにステージを観るような角度。開演10分前にはサウンドチェックが始まったがその光景も随分懐かしいような気持ちで観ていた。ほぼ定刻に客電が落ち、ライブが始まった。

 

 Blazing Souls

The World

Answer And Answer

ハートに火をつけて

新しい光

インフェルノ

サクリファイス

Wanderland

命ノゼンマイ

生命のワルツ

カモメ

白夜の日々

名もなきヒーロー

Cold Edge

反逆のマーチ

Black Market Blues

 

 Discommunication 

 

暗転後に流れたのはお馴染みのSE、Digital Hardcore…ではなく先月配信リリースされたばかりの新曲、Blazing Soulsだった。曲が流れるとそれまで座っていた客が一斉に立ち上がる。卓郎さん、滝さん、和彦さん、かみじょうさんの4人がステージに揃うと曲の途中から演奏が始まった。完全に予想外だったのでびっくりしてしまったが、Blazing Soulsでの登場はとても勇ましさがあり、一気に気持ちが昂ぶった。真っ先に新曲を聴いてもらいたいという意図もあったかもしれないが、このライブは生配信もされており、権利関係など何らかの問題でDigital Hardcoreを流すことが出来ないためにこうなったのかもしれない、とも思った。(今までの配信ライブでもDigital Hardcoreは一度も流れなかった。)

自分がいた下手側の端からステージを観ると和彦さん、卓郎さん、滝さんがちょうど被らずに見え、かみじょうさんは卓郎さんのアンプが被っており更に顔の前にシンバルがあったため動き方によっては若干見える、という感じの視界だった。ちょうど自分の目線が和彦さんの手元と同じくらいの高さだったので、この日は全体を通して和彦さんの手元に釘付けになることが多かった。

 

次の曲はThe World、今まで何度も何度も聴いてきた「目を凝らして焼き付けてみる 明日も僕らが生きていく世界を」の一節をこの状況と重ねて聴いてしまった。2回目のサビでは滝さんがアドリブのフレーズを入れていた。続いてAnswer And Answer、和彦さんがすっかり伸びた髪をなびかせ、長い手足とベースのネックを大きく動かしながら演奏する様子に迫力がすごい…!!と初めてライブを観た人のような感想が出てしまった。そんな感想が出るほど久々の生9mmなんだな…と実感した。

ハートに火をつけて ではベースラインに合わせて終始和彦さんが小さくステップを踏むように足を動かしていた様子が小気味良く、その動きをずっと観ていた。最初のサビで卓郎さんが「灰にならないか渋谷ーー!!」と思いっきり叫んだ。間奏で卓郎さんと和彦さんが左にスライドしなかったのが珍しかったところ。

いつもライブ終盤に来ることの多い、新しい光が5曲目に入ってきた。2回目のサビ後の間奏では和彦さんがかみじょうさんの前に移動して向かい合うようにしゃがみ、その姿勢でベースのネックを上げていた。最後の「君を連れて行くのさ」の部分でかみじょうさんがだんだん音が大きくなるようにドラムを叩いていたのが曲の高揚感を一層盛り上げていた。 アウトロでは和彦さんが定位置を飛び出し、ステージのかなり端まで来てくれた。

 

「みなさんようこそお越しくださいました!来てくれて本当にどうもありがとう!」と卓郎さんが嬉しそうに話し始める。「今日は配信もやってますけど…今までの配信ライブは、みんなの好きなところで観られるし、本当は一人ひとりの家でやってもいいくらいのもんでしたけど、今日は渋谷CLUB QUATTROでやってる、みんなが観ているライブを配信で観てもらおう、という日なので、みんなの声は出せなくても、拍手で伝わる…(ここで拍手が起こる)あ、いいよ拍手してください…伝わるからひとつ、盛大なやつをしてください!」卓郎さんが「大丈夫だな渋谷!いけるかー!!」と叫ぶと、声を出せない代わりにフロアから全力の拍手が起こったり、拳が上がった。

ここまでの5曲は4人で演奏していたが、卓郎さんが話している間にこの日のサポートギター・武田さんがステージに登場。武田さんが定位置に立つと、滝さんの奥にその姿が見えた。

 

ステージが真っ赤になり、あっという間に駆け抜けるインフェルノ。鋭い眼差しで歌っていた卓郎さんが、歌い切った瞬間にパッと笑顔に変わった瞬間を観た。ステージが真紅から深い青へ切り替わり、滝さんが弾き始めたのはサクリファイスのイントロ。いつもと何か違うなと思ったら原曲よりキーを一音下げていた。キー下げのサクリファイスは初めて聴いた気がする。それまでしなやかにドラムを叩いていたかみじょうさんが、この曲の時には腕を思いっきり振り上げ、力強く叩き始めたのでついそちらに目を奪われる。シンバルの揺れ方がそれまでとは明らかに違っていたほど。(また当日は気付かなかったが、翌日にアーカイブを観た際に最後のサビで滝さんが卓郎さんの歌を追いかけるようなコーラスを入れるという新しいアレンジがあったことを知った。)次の曲はWanderland、シングル曲の中ではあまりライブで演奏されない曲なので イントロで歓声を上げそうになったが声を出してはいけないので何とかこらえる。

 

「今日はシングル&e.p.祭りです。その時々の9mmの顔としてみんなの前に届けられた曲ですが…おれたちも今年結成16年になるので、なかなか演奏できない曲もありますが、今日は彼らにも活躍してもらおうと思います。」

卓郎さんが話している時から滝さんがギターで静かに奏でていた不穏な音色で次の曲を何となく察した。その怪しげな雰囲気のまま滝さんがギターのナットとペグの間を鳴らす。卓郎さんの言った通り、シングル曲でありながら今や滅多にライブで聴けなくなった曲、命ノゼンマイ。自分が最後に聴いたのはもう6年も前だったかと思う。なので5人編成で演奏される命ノゼンマイはこれで初めて聴けたことになる。その編成の良さを最大限生かすように、間違いなくこの日一番の音圧を叩き出していたアウトロが圧巻だった。

拍手と一瞬の静寂の後、生命のワルツのイントロ音源が流れ、そのまま演奏へ。1番に入ったあたりで滝さんと武田さんが同時にギターのネックを大きく振る。最初のサビ後の間奏で和彦さんが大きな手を広げ、両手でネックを叩くようにして音を出している様子が記憶に強く残っている。

卓郎さんがアコギに、滝さんがエクリプスに持ち替えてから演奏が始まった、カモメ。空間いっぱいに広がる、包容力のあるリバーブがかかったギターのメロディーがとにかく心地よく、じっとステージを観ながら聴き惚れていた。間奏の途中でかみじょうさんのスティックが折れてしまったらしく、滝さんの後ろ辺りまで折れたスティックが飛んできて転がっていた。

 

ここで再びMC。卓郎さんが武田さんの方を見ながら、「サポートギター、武田将幸!」と紹介すると笑顔で手を上げる武田さん。かみじょうさんがドラムロールで盛り上げると武田さんが深々とフロアに向かってお辞儀をしていた。

「9mmが最後にお客さんの前でライブをしたのは2019年12月31日、正確には日付が変わって…そのクアトロのステージでした。それから11ヶ月振りに昨日、お客さんの前でライブしたんですけど、今日はそれに続き2日目のライブで、もう何回も、それしか言うことないんだけど、今日は来てくれて本当にありがとうございます。」

「配信ライブをやっていても、観ている人がいるのを感じると言うか…気のせいかもしれませんけど。同じ時間に物事が動いているのを感じながら演奏できたから配信ライブでも情熱的に演奏できたと思ってたけど、たとえみんなが声を出せなくてもみんながそこにいて反応してるだけで全然違う。ライブしている意味がある。」「いろんな人が集まって同じものを見て楽しもうという空間を、ちょっとずつ対策をしながら動かし始めてますけど、行ったり戻ったりするかもしれないけど、みなさんこれからも9mmを応援よろしくお願いします。」卓郎さんが話すたびにフロアが拍手で応えた。

「白夜の日々という…今年はツアーをたくさんするつもりだったから、君に会いに行くよ、という歌詞の曲を作ったんだけど、なかなか会いに行けませんで、11ヶ月。代わりにみんなに今日来てもらったけど、会いに行くぞという気持ちは変わらないので、配信で観てくれているみなさんもいずれ必ず会いましょう。今日ここにいるみなさんも、必ずまた会いましょう。」

卓郎さんが「いけるかーー!!」と叫んでも声でそれに応えることが出来なくてもどかしかったが、全力で拳を振り上げて応えようとした。フロア全体が声を出せない代わりに各々できる方法で卓郎さんに応えた。声を上げられないフロアを援護するかのように、かみじょうさんが思いっきりチャイナシンバルを鳴らした。

 

 白夜の日々の演奏が始まると、ステージ上のおびただしい数の照明が一斉に白く輝き、ステージを眩い光で包み込んだ。もしかしてこの演出のためにバックドロップをステージに掲げなかったのだろうか。曲の煌めきを視覚で完璧に表現したような、美しい光景だった。卓郎さんが2番で「星が見えなくなった“渋谷”の街は今夜も」と歌詞を変えて歌っていた。間奏のソロは武田さんが滝さんのオクターブ下を弾いているようだった。その息ぴったりな様子に感嘆しきりだった。遂に生で聴けた白夜の日々、先ほどの卓郎さんの話と共にひとつひとつの言葉が深く沁み入り、何とも言えない安心感とこみ上げてくるものがあった。

「流されずに 生きるために 君に会いに行くよ」と歌う白夜の日々に続けて演奏された名もなきヒーロー、「勝ち目が見当たらなくたって逃げたくないから笑ってんだろ くじけそうな心をふるいたたせて」の一節でそれまで抑えていたものを止められなくなってしまった。昨年のツアーからずっと変わらない、青とピンクの照明がサビの「また明日」で赤一色に切り替わるという色の変化が個人的にとても好きなところで今回も観られて嬉しかった。「守りたいものにいつも守られているんだね」の歌詞で真っ先に頭に思い浮かんだのは、自分がまさに今立っている場所だった。最後のサビに入るところで和彦さんと滝さん、という両翼が同時にギターとベースのネックを大きく振り下ろした光景も堪らなく嬉しかった。

名もなきヒーローのアウトロから間髪入れず、ドラムのカウントも入れずにCold Edgeへ。客が声を出せない代わりにイントロで叫んだのは卓郎さん!マイクから離れていたのにかなり大きな声だったので、卓郎さんがどれだけ全力で叫んでいたのかがよく伝わってきた。和彦さんが間奏の入りで「渋谷ーー!!」と叫んでいたが、この日の和彦さんのシャウトの中でこの部分が一番の声量だった。間奏後、再び歌に入るところでかみじょうさんがスティックを回したり投げたりするのが見えた。最後のサビ前、「飛び立て」と歌われた瞬間に和彦さんが両足で高くジャンプしながらぐるっと一回転した。アウトロで客の代わりに叫んだのも和彦さんだった。

Cold Edgeから更にノンストップで、ここでも照明の青と赤の切り替わりが見事だった反逆のマーチ、間奏の入りで和彦さんがベースを大きく振り回すとシールドが卓郎さんのギタースタンドに絡まってしまった。するとすかさずシールドをほどき、ギタースタンドを後ろに放り投げ素早く演奏に戻っていった。思わぬアクシデントも鮮やかに切り抜けた和彦さん。

本編最後の曲はBlack Market Blues、卓郎さんが「渋谷CLUB QUATTROに辿り着いたなら!!」と歌った。2番の入りでは和彦さんがアンプのキャビの前にしゃがみこんでノイズを出していた。その後和彦さんも手拍子を煽っていたが、元々手拍子が多く入っているこの曲なら、この状況でも遠慮なくいつも通り盛り上がれる!

 

 本編が終わり、滝さんが真っ先に退場、武田さんもそれに続く。かみじょうさんも早めにステージから去る。和彦さんと卓郎さんはいつものようにフロアのあちこちに視線を遣り挨拶。最後に卓郎さんがいつものように万歳三唱を始めたが、客が歓声を上げられないため無音でみんなで万歳をするというシュールな画になってしまい、それまで声を出すのを我慢していたフロアからクスクスと静かな笑い声が漏れた。

アンコールの手拍子が鳴る中、フロアにひっそりと掲げられていたバックドロップにちゃんとスポットライトが当たっていたことに気付いた。ステージではないところにあっても普段と同じように扱われていた様子を見てちょっと嬉しくなった。

 

 ステージの照明が点くと5人が再び登場。卓郎さんは先ほどまで着ていた白シャツから新しいグッズである2Q2Qの白Tシャツに着替えていた。かみじょうさんも新しいグッズであるコーデュロイキャップを被って登場。かみじょうさんが帽子を被っている姿はかなりレアなのでは…。

アンコールに演奏されたのはDiscommunication、この曲は以前から9mmのライブでは珍しい、黄緑っぽい色の照明が使われていたがこの日も黄色い照明が使われていた。また、サビではフロアの2ヶ所くらいに設置されたミラーボールが回っており、とても綺麗だった…と言いたいところだが、柱の陰になってしまいちゃんと見えなかった。今日は柱に邪魔されずにライブを観られるぞ!と思っていたのに思わぬところで結局あの柱に邪魔されてしまうとは。

最後のサビの歌が終わりアウトロに入るあたりで和彦さんが徐に卓郎さんのギタースタンドを後ろに退け、その後演奏に戻ると遠慮なくぐるぐると大きく動きながら弾いていた。反逆のマーチの時にギタースタンドを倒してしまったのを受けて今度は事前に退けたと思われる。先ほどと同じことが起こらないように対処してから思いっきり動く和彦さんの姿が最高にかっこよかったのと、その判断が曲中にできるほど和彦さんが冷静だったということに驚きながら観ていた。演奏が終わり、卓郎さんがギターを置こうと後ろを向いたところでスタンドがなくなっていてあれ?というリアクションを取っていたのがちょっと面白かった。 

 

演奏が終わると滝さんが上手からふらふらと歩いてきて退場していった。全エネルギーを出し切ったことが伝わってくるような後ろ姿だった。続いて武田さんも退場。かみじょうさんが前に出てくると被っていたキャップを取り、そのままフロアへ投げた…が、キャップはフロアへ落下せず、上手いこと天井の照明に引っかかってしまった。これには笑いを堪えきれなかったフロア。大きく目を開いてびっくりしている表情を浮かべるかみじょうさん。卓郎さんのマイクで「どうする?」的なことも言っていた気がする。その様子を見ていた卓郎さんが「アンコールはアーカイブが無いんだけど…生配信はしてるけど、アーカイブなくてよかったね!」と言うので更に笑ってしまった。(事前にアンコールは生配信の時のみ流し、アーカイブではカットすると告知されていた。)一旦ドラムセットの方に戻ったかみじょうさんがスティックを2本手にして戻ってくると今度は和彦さんのマイクで「新品のスティックあげるから許して!」と言ってからフロアにスティックを投げた。卓郎さんがスティックを取った人に向かって「ちゃんと消毒してね~」と声をかけるとかみじょうさんが何とも言えない表情をフロアに向けてから退場していった。このくだりの途中でいつの間にか和彦さんも退場し、最後に残った卓郎さんが面白がるような表情で再度静かな万歳三唱をし、フロアに挨拶をしてステージを去っていった。

 

 

本編では16曲も演奏されたが、曲と曲の繋ぎやMCを簡潔にして僅か1時間余りでやり切った。状況に配慮しながらもしっかりとワンマンの曲数を詰め込んでみせた。アンコールを含めても1時間半ほどだったかと思う。

久々に画面越しではなく直接自分の目で観られた9mm、演奏中に卓郎さんと滝さんが何度もアイコンタクトを取る様子や、和彦さんがステージの前の方まで出てきて何度もフロアを煽ったり、曲のいいところでお立ち台に片足を乗せて時にはベースを掲げるようにして弾く様子などのお馴染みの光景が嬉しかった。

 自分の見えていた範囲だと、和彦さんと卓郎さんがライブ中ずっと、フロアの隅々まで視線を送っていた。和彦さんは演奏中にフロアを覗き込むようにしていたし、卓郎さんはMC中もあちこちに視線を遣り、自分のいた下手の端まで観てくれていた。卓郎さんは目線が止まった瞬間に更に目を細めて優しい笑顔を向けていた。

 

 ライブが始まる前から気になっていた、シングル&e.p.縛りセトリの最後の曲はDiscommunicationだった。ライブを観ている時にはこれを最後に持ってくるのは意外だったな、などと思ったくらいだったが、ライブの最後を締め括った歌詞が「朝までかけて近付いても 最後の最後にすれ違う わたしはあなたの探し物 早くここまで迎えに来て欲しいの」という激しく焦がれるような一節だったことに後で気づいてはっとした。

今年の不安定な状況に翻弄されて一進一退を繰り返さざるを得ない音楽周りのあらゆる物事、それ以外にも会いたい人に会えない、やりたいことができない、手に入れたいものを諦めざるを得ない、といったどうしようもないまま抱えている色々な気持ちがこの一節に全部重なった。

繰り返しになるが9mmはこの状況でかなり冷静に状況を見極めて焦ることなく活動してきた。先月の配信ライブではこの状況に対して卓郎さんが「正しい怖がり方をしましょう」と言っていた。その姿勢を見せてくれたからこそ、こちらも焦る気持ちを抑えて配信ライブなどを楽しむことが出来た。自分の勝手な解釈かもしれないけれど、その冷静な行動や姿勢の奥に隠していた、生き甲斐としてきたことに焦がれる強烈な思いをあの一節に見た気がした。

 

卓郎さんがMCで言っていた通り、徐々にライブが再開されつつあるとはいえ全体的な状況は行ったり戻ったりを繰り返している。そんな中でやっと、やっと9mmも有観客ライブを再開できた。今までと勝手が違う状況はしばらく終わりそうになさそうだけれど、守るところはしっかりと守って出来る範囲の中で、ライブを楽しめる生活が徐々に戻ってくることを切に願っている。