最後の駅の向こう

何でもすぐ忘れる人の特に記憶に残しておきたいライブの簡易レポートと趣味のレビューの予定。あくまで予定。

20201225/a flood of circle“LOVE IS LIKE A Beer!Beer!Beer!”@新宿LOFT(2部)

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HISAYO姐さんがフラッドに加入して今年で10周年、ということで姐さんの10周年を記念して開催されたライブ。姐さん加入後初めてリリースされたアルバム「LOVE IS LIKE A ROCK’N’ROLL」を再現するという内容。今回は収容人数を制限する代わりに2部制でライブが行われ、自分は2部を観に行った。

ちなみに昨年は、同じくLOFTにて1stアルバム「BUFFALO SOUL」と2ndアルバム「PARADOX PARADE」の再現ライブを開催している。LOFTのレーベルからインディーズデビューし、独立するまでLOFTの事務所に所属していたフラッドにとっては“ホーム”である新宿LOFTが、今でもこのような節目には欠かせない存在となっているのが嬉しい。

 

検温や消毒を済ませ入場しようとすると、入り口でCDを渡された。盤面に「The Greatest Day HISAYO Remix」との記載。これは事前告知が無かったと思う。思いがけない嬉しいクリスマスプレゼント。

今回は自由席ということでフロアには椅子が並べられていた。2部は配信もされるので、上手の段の上には配信用機材のスペースも設けられていた。自分が入場した時点で空いていた上手前方端の席で観ることにした。場内ではこの日に合わせて姐さんがプロデュースしたグッズである、赤いタッセルの付いたイヤリングと、ベースのヘッドやバンド名を散りばめたデザインのタイツ(肌色と赤の2色展開)を販売していた。

 

I LOVE YOU

Blood Red Shoes

Whisky-Bon Bon

Sweet Home Battle Field

賭け(Bet!Bet!Bet!)

Hide&Seek Blues

YU-REI Song

Boy

The Beautiful Monkeys

King Cobra Twist

-session #6-

感光

 

Beer!Beer!Beer!

Beast Mode

 

SEは流れず、客の拍手だけが鳴り響く中ステージに真っ先に出てきたのはこの日の主役・HISAYO姐さん。黒いノースリーブのワンピースに自身がプロデュースしたイヤリングとタイツ(肌色の方)を身に付けていた。普段は綺麗めのデザインが多い姐さんのワンピース、この日は大きなフリルのような飾りが縦にいくつも付いたデザインで、全身がリボンで飾られているように見えるとても可愛らしいものだった。いつも可愛い姐さんだけれど、この日の装いは特に可愛かったので視線が姐さんに釘付けになった。

続いて登場したのはなべちゃん。何と髪をばっさりと切って黒髪短髪になっていた。最後にテツ君と佐々木さんが登場。10年前の再現という意味なのか、佐々木さんはI LOVE YOUのMVや「LOVE IS LIKE A ROCK’N’ROLL」のアートワークで着用していたものと同じ白い革ジャンだった。

 

I LOVE YOUからライブがスタート。イントロから素敵な笑顔で手拍子する姐さん。客は感染防止のため声を出すことが出来ず、いつものコーラスパートで声を出せないのがもどかしい。終盤では佐々木さんが「夜明けが近づく“新宿LOFT”!!」と歌詞を変えて歌っていた。続いてはBlood Red Shoes、ここで今回はアルバムの収録順通りに演奏されるセトリなんだろうな、というのを把握。先ほどまでは可愛らしい笑顔を見せていた姐さんが、イントロの入りで思いっきり歪ませたベースの音を叩き付ける。間奏のギターソロではテツ君がステージ前方まで出てきていた。終盤になるにつれ姐さんが大きく動いているのが見えた。演奏が終わると佐々木さんがひと言、「おはようございますa flood of circleです、よろしくどうぞ」

 

ここで最初のMC。佐々木さんが「LOVE IS LIKE A Beer!Beer!Beer!ということで…姐さん10周年ありがとう、おめでとう!!」と言うと姐さんが笑顔で「気付けば10年、みんなも最初から見てる人は一緒に年取ってますよね。今日という日を迎えられたことがとても嬉しいです。」と可愛らしい仕草を交えながら続けた。

 

続いてはWhisky Bon-Bon、なかなかレアな曲で個人的にはこのアルバムの中でも特に好きな曲のひとつなので、イントロで歓声を上げたくなるのをなんとか抑える。間奏に入る際に佐々木さんが「オンベース、HISAYO!」と叫んで姐さんの見せ場を引き立たせる。間奏のギターの掛け合いの部分では、佐々木さんが《ひいらぎかざろう》のメロディーを弾いていた。この日は12月25日、クリスマスということで入れられた微笑ましいアドリブ。終盤では跳ねたリズムに合わせるかのように姐さんがステップを踏んでいた。

佐々木さんがギターを置きタンバリンを手にして始まったのはSweet Home Battle Field、佐々木さんが間奏で姐さんの首にタンバリンをかける。間奏後にマイクスタンドを退けて歌い始める佐々木さん、普段ならここでステージから客の上に移動して歌うところだけれど今回はそういう訳にもいかず、ステージ前方で止まって歌い続けた。アウトロではタンバリンを首にかけたまま叩いていた姐さんの姿が可愛かった。

ブルージーなイントロからテンポの速い本編へなだれ込む賭け(Bet!Bet!Bet!)では姐さんがその場で足を小さく踏み踏みするようなステップ。テツ君のギターソロが始まると近づいて行ってそれを覗き込む佐々木さん。一瞬の間を開けてHide&Seek Bluesへ。先ほどの陽気な雰囲気から一転、スローで重たい音がLOFTのフロアに響く。なべちゃんのドラムの音は体感的に、この曲の時が特に重たかった気がする。4人の目つきは鋭く、姐さんが俯きがちにベースを弾く姿がかっこいい。間奏のギターソロはテツ君がほぼオリジナルのメロディーを弾いていた。再現ライブではあるけれど、ただの再現ではなく確かに今のフラッドが鳴らしている音だぞ、というように聴こえたのが嬉しかった。

 

ここで再びMC。「10年前の今ぐらいに姐さんが加入して、姐さんと作った最初のアルバムがLOVE IS LIKE A ROCK’N’ROLLなんだけど、10年前はこのステージでRUDE GALLERYのイベントがあって。元々入っていた予定だったと思うけど、姐さんの初ライブになっちゃってみんなびっくり、みたいな。でも今日に辿り着けて良かったですよね。」と佐々木さんが言うとそうね、と応える姐さん。

姐さんが続ける。ファンクラブのブログにて、10年前にLOFTで行われたフラッド加入後最初のライブにどんな感じで至ったかを自粛期間にひとりで振り返りをしたという話。「結構劇的な出会いがあってあそこに辿りついたっていうのを言ってこなかったから、この機会に言っとこうかな、みたいな。是非知りたい人は読んでほしいな、お金出さないと読めないということにしたいのよ、あの出来事を…タダじゃ喋らない」と悪戯っぽく言う姐さんに佐々木さんが「祝われに来たのに妙にがめつさ出してるじゃないですか(笑)」と突っ込みつつも、思い出がいっぱいってことですよね…と姐さんに言っていた。

ここからは姐さんと佐々木さんの掛け合いが続き、

姐さん「ブログ4~5月から始めたのに(2010年の出来事から書き始めて)まだ2013年とかで…」

佐々木さん「スラムダンクレベルの…」

姐さん「試合が長いんだよね……テツが全然出てこないね。2013年頃だと上京?専門学校行ってるくらい?」

佐々木さん「まだミルク飲んでる頃かな?」

テツ君「20か21くらい」

姐さん「お酒覚えたてぐらいの頃やね…(腕を組みながら)」

佐々木さん「怖い、説教始まるのかと思った、覚えたてぐらいの頃やね~って(姐さんの口調を真似しながら)」

姐さん「でもそんな片鱗もないのに今こうやって一緒に出来てるのってすごいね」

更に佐々木さんが続ける。「何が起こるか分からないのっていいよね、再現ライブってそれには全く向いてないんですけど…でもこれを再現するってことは予想してなかったから。今日は今日しかないし楽しんでいきましょう。」

 

佐々木さんが話し終えると次の曲へ入る…ような空気になったがなかなか曲が始まらない。話し始めたのはなべちゃん。「曲始めちゃっていいの?」と言うとフロアから笑い声が漏れる。

佐々木さんが始めたくなければ喋ってもいいし、飲んでもいいし、と言うとそれに促されるようになべちゃんがこんにちは、とひと言。またフロアに笑いが起こる、和やかな空気。

「不思議な感じですよね再現ライブって……話し出す勇気がないんで行こうかな。みんな曲順分かってると思うから、可愛いやついきます、次」

 

なべちゃんがそう言ってから始まったのはYU-REI Song、歌声も演奏もこのアルバムで一番穏やかな曲、ドラムをマレットで叩いているので音がコロコロと優しく響いていて可愛らしい。そんな穏やかな雰囲気からシリアスな空気への切り替わりが見事だったBoy、ステージを照らした夜明けみたいな照明のような照明が美しかった。「どこにも行かないで」の一節で心臓をグッと掴まれたような感覚になるのは、この曲をほぼ9年聴き続けた今でも変わらない。

佐々木さんが「Are you ready!!!?」と叫んでからThe Beautiful Monkeysへ、性急なリフに合わせるかのように姐さんが一際大きく跳ねる。間奏のギターソロでは佐々木さんがここでもテツ君に近付いて覗き込むようにしていた。続くKing Cobra Twist、姐さんが音を歪ませて弾くソロパートの直前に佐々木さんが「オンベース、HISAYO!」と再び入れる。また、次のブロックでは佐々木さんがなべちゃんのソロパートが来るとステージ中央辺りにしゃがんでフロアからなべちゃんがよく見えるようにするなど、それぞれ見せ場のあるリズム隊を目立たせるようにしていた。ソロパートを叩き切った直後になべちゃんがパッと笑顔になっていたのを見て反射的に嬉しい気持ちになった。そのまま音源通り-session #6-へ。この曲では最初から最後までステージ前方に出てきてギターを弾きまくっていた、テツ君の独壇場だった。

 

「2020年12月25日のことを多分誰も昨日まで分かんなかったはずで、だから確かめに来てみんなに会えて嬉しい」とフロアに話しかけるように言う佐々木さん。ステージ下で回されているカメラに向かって、カメラ目線で「観てる人もそうだし」と、配信を観ている人たちにも話しかける。

a flood of circleはたくさん曲あるんで…ずっと曲作ってるし今年も2020っていうすごいの出したし、って思ってるんだけど、ガンガンやってるけどちょいちょい振り返ってる俺達、という(笑)」

「こういうのしょっちゅうやってるしそれが不思議な気持ちになる時もあるんだけど、でも昔の曲やってる時って、昔のことあんまり思い出せない。今の気持ちしか歌えなくてそれでいいなって感じがある。そうやって、どうせ元には戻れないので、昔には誰も。これはみんな一緒の条件なんで」

「この先古い曲やってもその時の気持ちしか絶対歌わないし歌えないし、だからロックンロールやってるんだと思う。それが何十年目のスタイルでもこれが俺達だからこのまま行きますんでよろしくお願いします」

 

「じゃあ、元気で。《感光》」

本件最後の曲は、LOVE IS LIKE A ROCK’N’ROLLの最後を締めくくる、感光。「I Feel The Shine」の部分で優しい日差しのような照明が降り注いだ。終盤、演奏が止まると暫しの静寂。佐々木さんがフロアを見回すように目線を動かしているのが見えた。そしてありったけの力を込めるようにして歌われた「生きていて」の一節が胸に迫る。思えばこの曲は2011年3月、日本が危機的な状況だった時のことを内容に込めて生まれた曲だったので、今違う困難に直面している今の状況と重なるような気がして、切実なものに聴こえてくる。佐々木さんが昔の曲でも今の気持ちしか歌えない、とつい先ほど言っていたのでこの時の「生きていて」はあの時の再現ではなく正真正銘今現在の、佐々木さんの言葉だということ。

 

本編が終わると4人が順番に退場。姐さんが両手で大きく手を振りながら退場していった。

 

アンコールの手拍子がしばらく続く中、再び4人がステージに登場。

佐々木さんが「俺が言うのも変だけど、姐さんの10年目をみんなが祝ってくれて最高、嬉しいです、ありがとう。」と言ってから、12月29日に生配信を行うことを告知。出演予定だったCOUNTDOWN JAPANが中止になってしまい「その日暇になっちゃったから」と、一緒に暇潰ししよう、とのこと。また、来年1月9日に下北沢SHELTERから無観客生配信で行うライブの案内もあった。このライブは事前にリクエストを募っており、もうセトリは決めたらしいが練習がすごく大変、と言っていたのでかなりのレア曲が聴けるのではないか、と一層楽しみになった。更に来年開催する“2020 TOUR 2021”について、また状況が心配になってきた中ではあるが「やれると信じていく、やれることをやっていくだけ。15周年もどうぞよろしくお願いします。」と言っていた。

 

続けて、姐さんが自身でプロデュースしたグッズの紹介を嬉しそうな様子で始める。グッズが出来まして…と言いながら長い髪を耳にかけ、付けているイヤリングを見せる。客の中にはイヤリングやタイツをすでに装着している人もいたようで、姐さんが嬉しそうに言及していた。今回のグッズはどちらかと言うと女性向けだが、情報によるとイヤリングを買っていた男性もいたようで姐さんが「プレゼントにも良いと思いますし、男性が付けても良いと思う」と勧めていた。

話を続ける姐さん。「漫画が好きじゃないですか私」と言うと佐々木さんがすかさず「知らんけど…」と入ってくる。「好きな漫画家の先生にお願いして私を書いて頂きました。“女の友情と筋肉”の作者、KANA先生と何度かやり取りをして、私の人となりを知ってもらって書いてもらいました。」と言いながら大きな白いパネルを持つ姐さん。なべちゃんのドラムロールが始まる中、しばらく勿体ぶっていた姐さんがパネルを裏返すと、美しいタッチで描かれた姐さんの絵が。

「めっちゃ嬉しいです、10周年のご褒美ということで、かなり美人に書いて頂いているんですけど…何とこれ、Tシャツになります !どなたも着られますので!」と。もうひとつの姐さんグッズとして、誰でも身に付けやすいTシャツの発売を発表。そして「会場のみなさんにはクリスマスプレゼントをお渡ししてますので、お家で楽しんで下さい」と入場時に配布されたCDについてもここで言及。

 

パネルを置いて、一旦アンプ側に向かった姐さんが手にしたのはベースではなく缶ビール。こいつ全然ベース持たへんやんって思われてるよね~、と言いながら。

佐々木さんが、祝われに来てますからねと言えば姐さんが「わがままが許されるのは、私のためにこんなに時間取って良いの今日ぐらいだと思うから」と言って、更に佐々木さんが「全然いつでも時間取って下さい」と返す。

 

姐さんが続けて話す。「“LOVE IS LIKE A Beer!Beer!Beer!”ってタイトルを決めたのは私なんですけど、Beer!Beer!Beer!は佐々木くんが私をモチーフにして作ってくれた唯一の曲なので…唯一のは要らんか。ということで、私がライブの時にしたかったやつをやらせてもらいます!」

姐さんがマイクの前に来るように缶ビールを持つとプルタブを開ける。リバーブがかかったマイクがプルタブの音をフロアいっぱいに響かせるとそれを合図にBeer!Beer!Beer!の演奏が始まる。その中で嬉しそうにビールを飲む姐さん、開けてから飲むところまでをやりたかったらしい。ビールを置いてようやくベースを手にする。

佐々木さんがイントロに乗せ「HISAYOがいないと始まらない」とご機嫌に歌えば姐さんが「そうなんです、終わりたくないから始まらんとこうかなって。どうしようかなー、始めよっか」と名残惜しそうに言ってから姐さん自らのカウントで「1,2, 1,2,1,2,3,4!!」から歌へ入る。姐さんをモチーフにしているだけあって、フラッドの中でもとびきりキュートなメロディーの曲。聴きながら多幸感で満たされるような気持になった。フルコーラス演奏が終わると姐さんがマイクに向かって何か言っていたが、マイクの音量が大きくならない。すると姐さんが佐々木さん、なべちゃん、テツ君に向かってオフマイクで「行くよ、1,2,3,4!!」と音頭を取ってサビをおかわり!

これで終わりと思いきや最後にもう1曲、Beast Mode!この日は「LOVE IS LIKE A ROCK’N’ROLL」の曲とBeer!Beer!Beer!しか演奏されないと思っていたので完全に予想外だった。今年、もう一度生で聴くことが出来て、本当に嬉しかった。音源にはこんな状況になる直前にライブ会場で録った大勢の客の歌声が入っているが、ライブで披露される時にはもうライブハウスで声を出すことが出来なくなってしまった。早くこの曲をライブで大合唱できる世の中になって欲しいと思ってやまない。

演奏が終わるとテツ君が「サンキュー、またどこかで会おう」と言って退場。それに続いて佐々木さんも袖に消えていった。姐さんは大手を振って退場、なべちゃんはマイクの前を通る時に「良いお年を!」と言って退場していった。

 

 

2010年12月24日にフラッドのベーシストとして初めてステージに立ったHISAYO姐さん。

姐さんが加入した時、自分はtokyo pinsalocksのことはバンド名くらいは認識していたが、姐さんのことは知らなかった。自分が初めてライブで姐さんを観たのは2011年4月だったが、ノースリーブのワンピースに網タイツでクールな佇まいの綺麗な人、というのが第一印象だったと思う。そこから年月を重ねていくごとに段々と姐さんの人柄を知るようになった。ベースを構えすらっと立つ姿は美しく、演奏中のステップや繰り出す音はかっこよく、話している時など普段はどこかほんわかとした雰囲気のある可愛らしさがあり、ビールが大好きな姐さん。愛称どおり「姐さん」として、メンバーの安定しなかったフラッドを10年間共に支えてきた頼もしさ。色々な一面を知るごとに姐さんのことが大好きになった。姐さんがフラッドに出会ってくれて良かった。こんな状況の中でも姐さんの節目をお祝いすることができて、良かった。

改めましてHISAYO姐さん、a flood of circle加入10周年おめでとうございます。

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