最後の駅の向こう

何でもすぐ忘れる人の特に記憶に残しておきたいライブの簡易レポートと趣味のレビューの予定。あくまで予定。

【ツアーネタバレ注意】20210606/9mm Parabellum Bullet“カオスの百年TOUR 2020~CHAOSMOLOGY~”@ Zepp Haneda

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2019年の“FEEL THE DEEP BLUE TOUR”以来、約1年半振りのツアー。

元々は昨年、9mm初のトリビュートアルバム「CHAOSMOLOGY」のレコ発として各地ゲストを迎えて開催する予定だったが初日の横浜公演は中止(その代わり無観客配信ライブが開催された)、その他の公演は延期に。座席を全席指定にしたりワンマンライブに変更したりと、今の状況の中で出来る限り安全に開催するための対策を取ってようやくツアーが開催されることとなった。

開催の少し前に公演内容の詳細が発表された。二部構成で「第一幕は6人編成でBABEL再現ライブ」「第二幕は4人編成でGjallarhornとPhantomime再現ライブ」という、全く予想していなかったものだった。リリース当時、滝さんがライブ活動を休んでいたため参加出来なかったBABELの完全再現を武田さん、爲川さんという頼もしいサポーターズも迎えて全員で。そしてかなりのレア曲も含まれるインディー盤2枚の再現を4人だけで…!



開演20分ほど前に会場内へ。今回も入口では感染対策のため自分でチケットの半券をもぎり、検温と消毒を済ませて入場。ロビーにはZeppでは珍しい手書き看板と、9mmメンバーからZepp Hanedaに贈られたサイン入りポスターカレンダーが展示されており、撮影のための列ができていた。それに並んだりドリンクを受け取ったりしてから場内へ。ステージは黒い幕で覆われ、各座席には入場特典のCDが置かれていた。

自分のこの日の座席は上手側だった。事前に届いたチケットには「B列」と書いてあったので2列目に自席を探そうとしたが場内に「A列」の座席は設置されていなかった…「B列」が、この日の最前列だった。

 

定刻を少し過ぎた頃、劇場で流れるような音のブザーが鳴って開演を知らせると場内が暗転。今まで聴いたことのない、ガットギターで演奏されたようなプレリュード的なSEが流れ、ステージを覆っていた黒い幕が開くとそこには既に6人の姿が。ステージには今回のツアーのために用意された、入場特典CD「泡沫」のジャケット6ヶ所分の柄を使用したデザインのバックドロップが掲げられていた。後で気付いたがツアータイトルの「2020」の部分が「2021」と手書き風のデザインで上書きされていた。

前列に9mmメンバー4人、後列上手側に武田さん、下手側には爲川さん(自分の席からは卓郎さんのアンプの後ろから爲川さんの首から上だけが見えた)という立ち位置。ここで予想外だったのは、2017年のTOUR OF BABELではステージ前列上手にいたかみじょうさんが、ステージ前列下手、和彦さんの左隣にいたこと。



ロング・グッドバイ

Story of Glory

I.C.R.A

ガラスの街のアリス

眠り姫

火の鳥

Everyone is fighting on this stage of lonely

バベルのこどもたち

ホワイトアウト

それから



イントロから滝さんのタッピングが鳴り響くロング・グッドバイからライブがスタート。普段から比較的よくセトリに入るのでライブで聴く機会は多い曲だけれど、ギター4本というとんでもない音の厚みの特別感と、改めて「BABELの1曲目」として聴くと普段とはちょっと違う心地の良い緊張感があった。滝さんは口を尖らせながら少しリラックスしたように見える状態でリフを弾いたり、サビではオフマイクで口を大きく動かしながら歌っていたり、時折笑顔のような表情を浮かべたりしていた。最後のサビ前、滝さんがギターのペグとナットを鳴らす瞬間にスポットライトが一斉に滝さんを照らす、という演出が素晴らしかった。

続いてはStory of Glory、6人の最強の布陣で演奏されるこの曲、「おれたちは今夜無敵なんだ」の部分の、文字通りの無敵感たるや。「You and I Try to Fly~」のところは滝さんがほぼひとりで、一際大きな声で歌っていた。

I.C.R.A、滝さんが1番のAメロで素早く控えのギターに持ち替えていた。その後はアルペジオをサポーターズに任せ、カッティングを奏でる滝さん。下手に目を移すと、和彦さんがドラムセットが載っている一段高いところに足をかけて弾いていた。かつてのライブではフロアから大合唱が巻き起こっていたサビの「愛し合え」は卓郎さん、滝さん、武田さん、爲川さんが歌声を揃える。間奏のタッピングを滝さんがしっかりと弾き切った瞬間、嬉しくて思わず歓声を上げてしまいたくなったが、堪える。

ガラスの街のアリスでも滝さんが1番のAメロでギターを持ち替えていた。サビで和彦さんがステージ前方まで出てきて弾いていたのを観られたのは確かこの時だったか。2番では卓郎さんが「透明な“羽田”の星を指でなぞったよ」と歌詞を変えて歌っていた。この部分で歌詞を地名に変えるのは今までにもあったが、「羽田の星」とは何ともロマンチックな響きがあって、とても素敵だった。自分が上手にいるのでこの日は全体的にステージ上手側を多めに観ていたが、個人的に好きな部分、この曲中に数ヶ所出てくるかみじょうさんがシンバルを叩くと同時に掴んでミュートする瞬間には毎度視線を下手側に移した。

 

ここまでの激しい曲調から空気が一変する眠り姫、イントロでこの日初めてアコギの音が聴こえた。自分の席からは見えなかったが、爲川さんがアコギを弾いていたようだった。間奏では滝さんがボリュームを下げたり上げたりしながら幻想的な音を出していて、独特の空気感を作り出していた。

突然ステージがかなり濃いスモークに包まれ、原曲の半音下げキーで火の鳥の演奏が始まった。濃いスモークに包まれちょっと姿が隠れ気味になった滝さんから聴こえる、イントロの半端ないタッピングの音には何とも言えない荘厳さがあった。サビでは卓郎さんが遠くを観るように視線を移しながら歌ったり、別のサビでは和彦さんが遠くを指差すような仕草をしたりと、屋内でのライブなのに歌詞の通り羽ばたいて空高く、遠くへ飛び立ってゆく火の鳥の影が見えるかのような瞬間だった。

Everyone  is fighting on this stage of lonely、Aメロのカッティングは武田さんが担当、サビでは武田さんがキリっとした視線でギターを弾き続けるなど武田さんの見せ場が多くそちらに目を奪われた。最後のサビ、「戦え」と声高に歌う卓郎さん、その後ろで滝さん、武田さん、爲川さんが重ねた力強い歌声は強く胸を打つものだった。

そこからバベルのこどもたち、という重厚なアルバムの中でも最もシリアスな流れ。サビで白の照明を使っていたのが少し意外な気がした。6人編成で全体的にとんでもない音の厚みが繰り出されていたBABEL再現の中でもやはりこの曲の間奏の音圧は最も凄まじく、分厚い音の壁を間近で食らって身体中がビリビリするような感覚。

次のホワイトアウトでまた空気が一変。エレガントなリフが優しげでもあり、少し物寂しさもあり、全体的に重いアルバムの中で照明がバックドロップに白い四角のような模様が薄っすらと落としていた。この時には和彦さんが一際優しい手つきでベースを弾いていた。

MCを挟まずに演奏していったので、あっという間にBABEL最後の曲・それから へ。Aメロの高速ピッキングは武田さんが弾いていた。「浮かれた世界を沈めていく」で歌詞に合わせるように手を沈める卓郎さん。中盤、卓郎さんがスッとした立ち姿のまま、ほぼ動かずに独白のように捲し立て、言葉が途切れると滝さん、和彦さん、武田さん、爲川さんが激しく動き出すといった“静”と“動”の対比は視覚的にも非常に美しさがあった。最後、「わたしはあなたと乗り越えたいのさ」の一節を聴いた瞬間には反射的にこの4年間を思い出し、本当に乗り越えてこの日のステージに辿り着いた6人の姿を目の前にして、感慨深い気持ちが込み上げた。

 

「BABEL」全10曲をMCなしで一気に演奏。全体的に演奏、というよりもはや歌劇を観ているような感覚になった。照明も演奏中はBABELのアートワークを思い起こさせるような赤を基調としたもので、曲と曲の間の僅かな時間はそれぞれ青い照明になる、という切り替わりを繰り返していて、1曲ごとにまるで場面を切り替えているかのようにも見え、それも10曲を通して一つの物語を観ているかのように思わされたところ。

 

リリースから4年、2017年当時はライブに参加できなかった滝さんも一緒に、6人という大所帯でBABELという緻密なアルバムを遂に完全再現してみせた。今回のMCを挟まない形式や開演を告げるブザーの音は、2017年のTOUR OF BABELと同じだった。そんなところからも、復活した滝さんと共に遂にリベンジを果たしたことを実感した。

 

自分の目の前ということで主に上手側を観ていた。滝さんはどの曲も基本的にAメロ部分は原曲通りのリフは武田さんに任せて手数を抑えて弾いていたり、弾かずに曲のリズムに合わせて調子良さそうに体を揺らしたりしていた。

卓郎さんが何度も滝さんの方を向いてアイコンタクトを取ろうとしたり、かみじょうさんが曲に入る時にシンバルの下から覗き込むようにしてステージ全体の様子を窺うようにしていた。和彦さんは下手のかみじょうさんの方を向きながら弾いていることが多く(エフェクターボードもドラム側に置いていたように見えた)、上手からだと和彦さんの後ろ姿を見る時間が多かったが、普段のライブと比べたらそれも貴重な機会だったのかもしれない。




演奏が終わると幕が閉じ、15分の休憩を挟むことがアナウンスされた。休憩時間中はアンビエント的な音楽が流れ続けていた。

休憩が終わり客が席に着くと場内が暗転。Digital Hardcoreが鳴り響くと再び幕が開き、派手な点滅の照明の中お馴染みの巨大な双頭の鷲が描かれたバックドロップがステージの下からゆっくりと上がってきた。

ここからは4人での演奏、ということでステージ上の立ち位置も中央に卓郎さん、上手に滝さん、下手に和彦さん、後方真ん中にはかみじょうさん、という普段通りのものに変わっていた。



(teenage)disaster

Talking Machine

interceptor

atmosphere

Beautiful Target

marvelous

farther

Caucasus

Mr.Suicide

Vortex

少年の声

sector

 

泡沫



Gjallarhornの1曲目、(teenage)disasterからライブが再開。この時のアウトロは普段ライブでよくやっているようなカオス音を出すのではなく、音源通りのメロディーを弾いていた。4人だけとなり先ほどより広々としたステージで早くも滝さんが上手側を大きく動き回っていた。続いてはTalking Machine、定番曲だがいつものライブ用アレンジのイントロがなく、ここも音源通りに入る。2番の「空を見上げてるだけ」で天井を差す卓郎さん。サビに入る前には2回とも滝さんと和彦さんが大きくジャンプしていた。元気に高く飛び上がる和彦さんと滝さんの姿を見られるこの瞬間は、何べん観ても堪らなく嬉しい。3曲目は久々のセトリ入りとなったinterceptor、ということでGjallarhornも収録順に演奏されるようだとここで把握。すっきりとした青い照明の中、シャープな演奏が繰り広げられる。

atmosphere、ぽつりぽつりと続く演奏から曲調が一変して一気に轟音とシャウトを叩き付けるパートへ切り替わり、やがてベースだけが轟音の余韻を残してまたぽつりぽつり…の緩急がものすごいことになっていた。和彦さんが音の大洪水の中で床にうずくまって演奏をし始め、曲の最後までその体制で弾き続けている様子があまりにも音と一体化していて、小さくなってゆく音と一緒に溶けていってしまいそうだった。

Beautiful Targetはただひたすらリズムが気持ちよかった。声を出せない代わりに思いっきり拳を突き上げ、裏で頭を振り気持ち良さに浸っていた。最近のライブでは割と演奏されることの多かったmarvelous、中盤には卓郎さんが歌いながら拳を上げてフロアを煽っていたり、和彦さんと滝さんが思いっきり両手を上げたりととても楽しそうな様子。終盤で客も手拍子をすると会場全体ののリズムがひとつになる。カオスパートでは和彦さんと滝さんが思い思いに暴れまくっていた。

そしていつ振りに聴けたのかを忘れてしまったほどに久し振りのセトリ入りを果たした、fartherは歌を引き立たせるような演奏の中、卓郎さんがゆったりと歌声を響かせる。語尾のビブラートがどこまでも伸びていくようで美しかった。長く活動してきた中で、9mm以外のソロ活動なども経て卓郎さんが磨き上げた表現力が見事に出ていた。

 

Gjallarhorn全曲の演奏が終わると、ここでこの日初めてのMCが入る。

セトリが実質確定している今回のツアーについて卓郎さんは「出るカードは知っているけど、タネが割れている訳じゃないでしょ?」と絶妙な言い回しで表現していた。



ここからはPhantomimeの曲を演奏。これもかなり久々に聴けたCaucasus、全体的にシンプルなリズムで構成されているが、よく見るとかみじょうさんが時々スプラッシュを叩いたりしてアレンジを加えていたように見えた。時々ライブで聴けるMr.Suicideもこの流れで聴くとやはり普段とは少し違った新鮮さがあった。

Vortexも少年の声もライブで聴けたのは本当に久々だった。あまりに久々過ぎて夢を見ているような気持ちになりながら音に集中していたので、ステージの様子はあまり覚えていない。

本編最後の曲はsector、ここでもイントロはライブでお馴染みのアレンジを入れず音源通りに演奏。滝さん、和彦さんの暴れっぷりはいよいよ激しさを増し、アウトロでは滝さんがギターのネックをバットのように握って本気のフルスイングまで決めていた(ちなみに左打ちだった)。空間が轟音で満たされる中最後に卓郎さん、滝さん、和彦さんが一斉にかみじょうさんの方を向き、4人で向かい合った光景には感極まることを抑えきれなかった。

 

ライブ定番曲もありつつ数年、長いと10年くらいライブで聴けていなかった曲まで入ったセトリ。演奏力や表現力を爆上げした今の9mmがインディーズ期の曲をやるとこんなにも凄いことになるのか…と。全体を通して非常にシンプルな照明の中、ただただ音が、リズムが気持ちよくて全身で音を吸収しながら体を動かしていたり、ステージに釘付けになった。

滝さんはずっと派手に動き回っていて、演奏中にものすごい形相でマイクスタンドからピックをもぎ取ったり、膝立ちのような体制のままぴょんぴょんと跳ねたり転がったり何度も大ジャンプをしたり。滝さんがステージ前方まで来るとフロアに3人ほどいたカメラクルーの方が一斉に滝さんのところへすっ飛んできて写真を撮りまくっていた光景も楽しいものだった。広いステージを存分に使って生き生きと動き続ける様子は、ここ数年間の出来事を一瞬忘れさせるかのような、「何事もなく17周年を迎えた9mm」の姿そのものに見えた。




演奏が終わり、4人が順番に退場。

フロアが明るくなりアンコールの手拍子が続く中、しばらくするとステージに卓郎さんが再び登場。

9月9日にKT Zepp Yokohamaにて“カオスの百年 vol.14”を開催することを告知(ライブします、と言った時にマイクがハウリングしてしまって少し和やかな空気になっていた)、その日はOAにfolcaが出演することも告げられた。去年の9月9日にやるはずだったライブと同じ会場、同じ出演者。完全に去年のリベンジ公演ということになる。

この時に武田さんも再びステージに登場、卓郎さんに紹介されフロアに向かってお辞儀をしていた。

演奏を始める前に卓郎さんが言っていた言葉。表現はうろ覚えだけれど、こんなひと言だった。

「川の底にある石のように、周りが流れていっても、そこで変わらず音楽を続けていきたい。」

 

そんなひと言からこの日最後の曲にして9mmの最新曲、泡沫の演奏へ。青と白の照明が揺らめく様子はさながら水の中のようだった。滝さんが卓郎さんの1オクターブ上の音を歌う部分では澄んだファルセットが綺麗に空間に響く。中盤のテンポが遅くなり、雰囲気に重みが増す部分ではそれに合わせるかのように身を低くして弾く和彦さん。今のところ9mmで一番新しい曲、ではあるがインディー盤の曲と続けて聴くと何となく空気感が近いような印象もありつつ、曲構成などの部分などを見ると新しい9mmの要素も一緒に練り上げたような不思議な曲だなと感じた。

 

演奏が終わるとまず滝さんが退場。和彦さんと卓郎さんがそれぞれフロア中をまんべんなく見ながら笑顔を向けたり手を振ったりしていた。スティックを2本持って出てきたかみじょうさん、それを下手の方に投げ入れてから退場。最後にステージ中央に戻ってきた卓郎さんが恒例の万歳三唱(客は声を出せないため無言で万歳をする様子がどうしてもシュールで毎回笑ってしまう)、最後にもう一度こちらに笑顔を向けてから袖に消えていった。



9mmは感染対策をしながら、徐々に有観客ライブを増やしている。この日も卓郎さんは、「元に戻るのではなく新しい形を作れたらいいと思います」と言っていた。柔軟に形を変えつつ、音楽を鳴らし続ける意志を揺らぐことなく持ち続ける卓郎さんの言葉と、それと共に聴いた泡沫が、ライブが終わって時間が経ってもしばらく頭から離れず流れ続けていた。

 

一寸の隙もないような緻密に作り込まれた演奏の第一幕、BABEL完全再現。

持ちうるエネルギーを惜しみなく爆散していたような演奏の第二幕、GjallarhornとPhantomime再現。

待ち焦がれた1年半振りのツアーは丸2時間、全23曲、4人だけで演奏した曲は13曲、間違いなくここ数年のワンマンの中で一番のボリューム。立ち位置や演出も変え、対極とも言えるような二部構成で終演後には一気にライブを2本観たかのような気分になり、膨大な情報量と大きな満足感と凄いものを観たという驚きで終演後しばらく放心状態になるほどの内容だった。

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