最後の駅の向こう

何でもすぐ忘れる人の特に記憶に残しておきたいライブの簡易レポートと趣味のレビューの予定。あくまで予定。

20220317/9mm Parabellum Bullet “カオスの百年Vol.16”@EX THEATER ROPPONGI

 

9mmの結成日「の疑いがある」でお馴染みの3月17日。

結成18周年を迎えた今年の3月17日は六本木のEX THEATERにてワンマンライブを開催。2013年、9mmは当時リリースしたアルバム「Dawning」のツアー・Braking The Dawn Tourの追加公演をEX THEATER柿落としシリーズ公演の一環として開催しており、そこから9年振りに再びワンマンを開催(自分は9年前のワンマンは行けなかったため、思いがけず9年越しのリベンジとなった)。開催の1週間前に行われたYouTube Live配信の中でもその情報に言及があったため、もしかしたらDawning再現ライブでもやるのではないか、という期待も持ちつつ当日を迎えた。

 

全席座席指定のEX THEATERでライブを観るのはこれが初めて。客席前方は段差がほぼなかったが真ん中より後ろの列はライブハウスにしては結構傾斜が付いていて小さなホールのようだった。自分は前から3列目だったが、ライブが始まって客が全員立ち上がると前の人の頭が被りステージはあまり見えなかった。人と人の隙間からドラムセットのあたりは見える、という視界。

前列の椅子は床に直接、ではなく大きな台の上みたいなところに並べられていたので演奏や周りの人の動きに共振してよく揺れていた。足元からも曲のリズムを感じられる臨場感はとても良いものだった。



The Lightning

Answer And Answer

Zero Gravity

名もなきヒーロー

ルーレットでくちづけを

ロビンソン

徹頭徹尾夜な夜なドライブ

黒い森の旅人

新曲(タイトル未定・インスト曲)

ONE MORE TIME(新曲)

淡雪(新曲)

Caution!!

Snow Plants

コスモス

泡沫

キャンドルの灯を

太陽が欲しいだけ

Living Dying Message

新しい光

The Silence

 

ハートに火をつけて

Punishment



ほぼ定刻に場内が暗転し、いつものようにDigital Hardcoreが鳴り響く中バックドロップが登場。1曲目はThe Lightning、いきなりDawningの曲が来た!ライブで聴けたのはかなり久々だったのではないか。「明日を向いて歩こうか」と歌う、どこまでも前向きなこの曲で9mmの18周年が華々しく始まった!次の曲はライブ定番曲Answer And Answer、そういえばこの曲もDawning収録曲であった。滝さんがお立ち台に上がったりステージ上手の端、客席の近くまで出てきたりと大きく動きながらギターを弾く姿が嬉しい。卓郎さんが今では登場頻度の少なくなった赤いBricoleurを使っていた。

3曲目もDawningから、何とZero Gravity!!もはや何年前に聴いたのが最後だったか思い出せないくらい久々のセトリ入り。かっちりした縦のリズムや突然入ってくる三連符など、ドラマーであるかみじょうさんの作った曲だからというのもあるのか、リズムがとにかく気持ち良い曲。間奏の爆速ギターフレーズも滝さんがばっちり弾きこなす。中盤で滝さんが手拍子を煽る場面もあったが、ただでさえ久々にライブでやった上にこちらは声も出せないのでステージ側からいいタイミングで煽ってくれるのはありがたいものだった。ここまでの3曲はDawningのCDジャケットカラーである緑がかったような青を基調とした照明だったので、視覚からもDawningの雰囲気を味わいながら聴くことができた。

更にDawning曲が続くか、とも思ったが次の曲は名もなきヒーロー。照明はCDのジャケットカラーを再現するかのように青とピンクに切り替わった。リリースされてから3年の間に大変な出来事が色々起こったが、事あるごとに力をくれた曲で年々その頼もしさが増しているように感じる。今まではサビの「また明日~」の部分だけ赤くなる、という照明がお馴染みだったがこの日はここで白を使っておりこれまでより爽やかな印象があった。間奏では毎回若干違うフレーズを叩いているように見えるかみじょうさん、この日もそのような感じで時折両腕をクロスしてシンバルを叩く瞬間もあった。

 

演奏が終わるとステージが暗転しフロアから拍手が巻き起こっていたが、普段よりも拍手が長くなかなか鳴り止まなかった。拍手がおさまると、暗いままのステージで卓郎さんがもっと!と煽るように拍手をし始めたのでフロアからは再び拍手が巻き起こった。

ようこそいらっしゃいました!と挨拶し話し始めた卓郎さんが、「セルフカバーをやります!」と宣言したところで今日の目玉Dawningの曲だけじゃなかったんだ!?セルフカバー!?といきなり驚かされる。

 

宣言通りのセルフカバー曲、まずはルーレットでくちづけを!かつて栗山千明さんがアルバムをリリースした際に提供した曲で、ライブで披露したのは数える程度(自分は横浜アリーナワンマンで一度聴いたきり)というものすごいレア曲!原曲よりキーを下げての演奏、かみじょうさんの手元がよく見えたので、Bメロのあたりは手数が半端なくサビになるとツーバスの連打が凄まじいという様子を目の当たりにし、音源での印象以上に忙しい曲なんだなと(原曲よりも手数増やしていた可能性もあるのか)。続いてはスピッツのトリビュート盤に収録されている、ロビンソン。これも確か自分の知る限りでは2015年の渋谷QUATTRO公演以来のセトリ入りだったかと…原曲よりだいぶ元気でテンポの早い9mmらしいアレンジで、一番最後の「ルララ宇宙の風に乗る」の一節は、卓郎さんが9mmでの普段の発声よりも弾き語りの時の発声に近いような、柔らかい歌声で歌っていてその歌声が静かになったフロアに穏やかに吸い込まれていった。

しんとした空間に一瞬、地鳴りのような凄まじい音が鳴ってから演奏が始まったのは、徹頭徹尾夜な夜なドライブ!!UNISON SQUARE GARDENのトリビュートに収録されており、3年前にユニゾンと対バンした時でさえ演奏されなかった夜な夜ながこのタイミングで遂にセトリ入り!!ここ数年の9mmのリリース曲の中でもぶっちぎりのハードなアレンジはライブで聴くとこれでもかと威力を増していてただただ痛快で楽しい!間奏に入ると滝さんがオートワウを踏んで勢いよくステージ中央に飛び出してギターを弾きまくっていた。

あらゆるものを薙ぎ倒すような演奏を繰り広げてから一瞬の静寂を挟むと、静かでクリーンなギターの音が優しく響いた。次の曲は再びDawningから、黒い森の旅人。優しいイントロが、辺り一面を焼き尽くした更地からの芽吹きのようで美しかった。歌い出しのあたりから2階席の方へ目線を遣り真剣な表情で歌っていた卓郎さんが、何節か歌ったところでパッと優しい笑顔に変わった、その表情の切り替わりがとてもよかった。

 

またステージが暗転。フロアからまた長い長い拍手が巻き起こり、拍手がおさまりかけるとまた卓郎さんが、暗転したままのステージで拍手を煽るというやり取り。

このあたりだったか、8月にリリースを予定しているアルバムについての話があった。まだ曲数もタイトルも未定だが選曲は済んでおりレコーディングも進んでいるらしい。リリースツアーについて言及されたのもこのあたりだったか(ステージ上の武田さんが弾けるような笑顔と大きなガッツポーズで一番嬉しそうな反応をしていたのがよかった)。そして新曲をやります、みんなが大好きな拳突き上げる系のインストナンバーだと卓郎さんが曲紹介してからいよいよ演奏へ。

 

卓郎さんの言う通り、初聴きでも自然と拳を突き上げたくなるようなノリの良い曲で、時折ステージ前方に出てくる滝さんも少し口角が上がっているような、楽しそうな表情にも見えた。インストではあったけれど卓郎さんのコーラスが入っていた。曲の入りではこちらから見ると滝さんかみじょうさんが向かい合って慎重にタイミングを見計らってから演奏に入ったように見えて、そんな一瞬でさえも大変良かった。

次の新曲は昨年の9月9日に初披露された新曲で、こちらも体が自然と動く系の曲。昨年演奏された時から歌詞がまるっと変わっていた。この後のMCで明かされたが「ONE MORE TIME」という曲名とのこと。続いては2月14日にアーティスト写真撮影のためのライブを開催した際に初披露された新曲。少しゆっくり目のテンポで「桜」「別れの季節」などといった単語が並ぶ、歌モノっぽい曲。既発曲の「君は桜」と繋がるところがあるのだろうか、全て聴き取れた訳ではないので歌詞の全容がとても気になる。この曲もこの後のMCで「淡雪」という曲名であることが明かされた。

 

新曲3連発を終えると次の曲は…力強いバスドラと歪んだベースの音で始まったのはCaution!!再びDawningの曲そして再びライブで最後に聴けたのか忘れてしまったほどのレア曲が来てこの日のセトリがどれほどとんでもないものかを改めて実感。終始かっちりしたリズムで構成される硬派な曲、そのリズムの強さに共鳴して足元が振動して頭から爪先まで音に囲まれるような心地よさがあった。それに続いたのはSnow Plants、直近ではちょうど1年前の3月17日のワンマンで披露されたがこれもなかなか聴ける曲ではない。Answer And Answerがシングルで出た際のカップリング曲でリリース時期的にはDawningとかなり近いのでセトリに入った?曲の序盤と終盤の静かに情景を歌うパートと中盤の情念のこもったような演奏との緩急に引き込まれる展開とバックドロップの双頭の鷲に雪を降らせた照明が見事だった。

Snow Plantsの静かなアウトロから次はコスモスへ。9mmの曲の中でも一際可憐で優しいアレンジの曲、ギターはクリーンサウンドにコーラスのようなエフェクトをかけて柔らかな厚みを出していた。この日、ステージ後方には縦に細長いLEDパネルがいくつか置かれていて曲に合わせた模様を出したり細い照明器具のように使用されており、コスモスの演奏中には桜のような花の絵が舞っていた。「秋の桜」という歌詞や3月という季節柄に合っていて、9mmのライブでは珍しい紫色の照明と相俟ってステージ全体が美しい空間になっていた。

コスモスで心が落ち着いたところに次の曲、バラード的なテンポの泡沫が、卓郎さんのよく伸びる歌声がスッと入ってくる。「どこまでも沈めてくれ」という歌詞通りに強い没入感が空間を包み中盤でもっと遅く、もっと重々しくなる「どうして どうして どうして いつも~」の部分は突如照明が真っ赤になり一気に暗いところへ引き摺り込むような感覚、たった1曲の間に歌劇のような演出がありものすごい見応えだった。演奏が終わると和彦さんのもとへアップライトが運ばれるのが見え…ときたら次の曲はキャンドルの灯を。イントロは卓郎さん、滝さん、武田さんの3人でリードを弾いているように見えた。暗闇にポッと小さくもあたたかい光を灯すような曲の流れとそれに呼応した温かな赤系の照明がまた良かった。

 

このあたりだったか、演奏が終わると卓郎さんが再び話し始めた。「最近おれにも参っちゃうな、ということがあったり、世界の状況もそんな感じだし、それ以前に世の中もこんな感じで」と言いつつ「こうしてみんなに会えるのが嬉しいしそのために音楽はあるんだなと思った」というようなことを言っていて、本当にこの一節に尽きるなと…。

 

卓郎さんによる威勢のよい「いけるかーーーー!!」から太陽が欲しいだけ、先ほどの卓郎さんの言葉と歌詞の「それでも最後には笑え」が何となくリンクしているような気がして胸が熱くなった。「さあ両手を広げてすべてを受け止めろ」の部分では一瞬横を向いて客席に視線を移すと、フロアいっぱいに無数の手が上がっていた。更にテンションを上げるかのようにLiving Dying Messageへ、またステージ前方にやってきた滝さんがギターのネックを思いっきり上げるようにチョーキングしていて全身を使ってギター弾いてます!と言わんばかりの大きな動きに目を奪われる。それに続く新しい光では、この日終始ステージ後方からほぼ出てこなかった武田さんも遂にステージ前方に出てきていて、アウトロのキメでは更に武田さん・卓郎さん・滝さん・和彦さんがステージ前方にずらっと並んでいて、この日ずっと「武田さんも折角だからもっと前に出てきてくれたらいいのにな」と思いながら観ていたので嬉しい光景だった。2回目のサビ後の間奏ではステージ中央前列では卓郎さん・滝さん、後列では和彦さん・武田さん、がそれぞれ向かい合い、5人全員がステージ中央に集まるという綺麗なフォーメーションを見せ、最後には滝さんが勢いよくステージ中央に駆け込んできてその勢いのまま大きく手を三度叩いて空間をぶん殴るように動きながら曲を締めた。

これで本編が終わるのではないかと一瞬油断したが最後の曲が残っていた。ひたひたと迫ってくるような静かなイントロ、ステージ上に複数ある細長いLEDパネルは次々と血が滴るような模様を描きながら赤く光り空間に亀裂が入ったかのような、地獄の門が開くような、この時だけ別世界のような演出。ライブ本編の最後に、Dawningの最後を飾るThe Silence が待ち受けていた。真っ赤な空間でバックドロップの双頭の鷲が平伏せと言わんばかりに見下ろしてくる中、速さと重さを限界まで出すような壮絶な演奏をする様子には誇張抜きで演奏中、指一本動かせないほど圧倒された。

 

圧倒的轟音が鳴り止むと滝さん&武田さん→和彦さん&卓郎さん→かみじょうさん、といった順番でそれぞれステージから退場。アンコールの手拍子がしばらく続くと再び5人がステージに登場。卓郎さんがこの会場で9年前にDawningのワンマンを開催したこともありDawning攻めのセトリになったことに触れていた。「あの曲やってないというのはナシで…」とも付け加えて。

「おれたち18年目らしいですね!これからもよろしくお願いします!」と卓郎さんが言ってからのアンコール1曲目はハートに火をつけて、ライブ定番曲だがこれもDawning収録曲であり、「手触りだけの“EX TEATER ROPPONGI”は」と長いフルネームの会場名をどうにか歌詞に捻じ込んだところに特別感が出ていた。

この日最後の曲はPunishment、滝さんが曲のどこかで、残ったエネルギーを全部吐き出すかの如く凄まじいタッピングをしていた。本編ラストのThe Silenceでもそうだったが前列にいる卓郎さん・滝さん・和彦さん・武田さんが思い思いに動きまくって激しい演奏を繰り広げている後ろで、かみじょうさんが姿勢を崩さずステージ上で唯一冷静な表情でツーバスを連打していた様子が演奏面だけでなく視覚からでもこのバンドの「屋台骨」や「大黒柱」といった印象があって流石…!と。

 

演奏が終わるといつも通り真っ先に退場する滝さん、でもこの日は心なしか普段よりゆっくり目の足取りで頭の上で大きく拍手をしたり何度かフロアに目を向けたりしていたような。笑顔の武田さんが続いて退場、卓郎さんはまだ残っていたギターの残響音をいじってノイズのような音を出して遊んでいて、それに和彦さんが何か言っていそうな場面もあった。その後卓郎さんと和彦さんは上手下手と移動し丁寧に客の目を見ながら挨拶。昨今の状況になってからお馴染みとなった、卓郎さんによる無音の万歳三唱ではやはりシュールさと微笑ましさがあり僅かに笑い声が漏れてしまう。ドラムセットの方からステージ前方まで出てきたかみじょうさん、こちらからは何も聞こえなかったけど口の動きだけで「ありがとうございました」と言ってるのがはっきり見えた。



期待通り、Dawningの曲がたくさんセトリに入った。Zero Gravityやコスモス、Caution!!などなかなかライブで聴けない曲を9年前の縁ある会場で聴くことができた。そして全く予想外だったセルフカバー&カバー曲パートも結成日を記念するお祭りに相応しいびっくり選曲だった。あんなにも歓声を我慢するのが辛かった流れがあるだろうか。

 

それと、この日のセトリは曲の流れがとにかく良かった。個人的には後半のコスモスから、まず穏やかな曲調のコスモスで心が落ち着いたところに次の泡沫がスローなテンポで心身にスッと入りこみつつどろどろと深いところへ沈めていって、その暗がりの中をキャンドルの灯を のイントロがポッと心を照らし温めてゆく、というようなイメージ。

更に終盤は太陽が欲しいだけ の「もうひとりにはしない」からLiving Dying Messageの「あなたは二度と孤独にならない」そして新しい光の「君を連れて行くのさ」という流れがあまりにも綺麗に繋がっていて素晴らしかった。その流れを最後のThe Silenceで「俺は目を覚ますだろう 広がる焼け野が原〜」とそれまでの流れがまるで夢だったかのように、現実に引き戻すかのような流れに一瞬で変えて空間を一気に塗り替えた流れが本当に最高だった。

 

また同じくセトリの後半の話になってしまうが、9mmのライブでよく使われる照明の赤色、同じ赤を使っていたはずなのに曲によって表情が全く違っていたのが見事で、後半に集中的に使われていたこの日の赤い照明は特に印象に残った。

曲の中盤で使われた、じわじわと深みに引き摺り込むような泡沫の「赤」、その直後の柔らかく心を温めるようなキャンドルの灯を の「赤」、曲の持つ無敵のイメージを炸裂させるかのような太陽が欲しいだけ の勇ましい「赤」、純粋な情熱を表していたかのようなLiving Dying Messageの「赤」を経て、空間の全てを掌握し圧倒し焼き尽くすようなThe Silenceの「赤」。



結成18周年、とんでもないセトリで幕を開けた18周年はどんな1年になるのだろうか。この日販売開始されたグッズにもデザインとして使われていたが《1+8=9》、そして《18=9+9》でもあり、9を内包した年。何より夏にリリースされるアルバムは遂に《9枚目》と実は9だらけの1年なのでこの日のライブ以上に面白いことが必ずあるはず!という大きな期待。2022年、とてもいい年になりそうだ。