最後の駅の向こう

何でもすぐ忘れる人の特に記憶に残しておきたいライブの簡易レポートと趣味のレビューの予定。あくまで予定。

20220708/a flood of circle “Tour 伝説の夜を君と”@LINE CUBE SHIBUYA (メモ)

 

昨年12月にリリースされたアルバム「伝説の夜を君と」を引っ提げて2月から開催されたツアーのファイナル公演にして、フラッド初のホールワンマン。ソールドこそしなかったものの3階席までしっかり人がいるように見えたので席は結構埋まっていたのではないだろうか。よかった。自分の座席は「1階3列」とチケット画面に表示されており下手側で嬉しいなと思いながら場内に入ると1列と2列の座席がなく…まさかの3列が最前列の座席だったので驚いた。

 

ステージの装飾は金属のパイプが12本一組になったものが計4箇所天井からぶら下がったシンプルなものだった。MC中たまにカランと音がして不思議に思い周りを見回すと、空調で揺れたパイプ同士が当たり小さく音を出していた。

今年に入っていきなり髪を染めた佐々木さん、4月の新代田公演で観た時には金髪、横浜公演では銀色に近い髪色に見えたがこの日は金髪に戻っており白い革ジャンの下に珍しく襟付きのシャツを着ていた。姐さんが髪をゆるく巻いて髪の片側をピンで留め、赤い差し色が入った衣装を着ていて普段よりちょっとおめかしして更に美しくなっていた。ちょうど自分の目の前が姐さんだったのでくるくると変わる姐さんの表情をずっと見ていられた。テツ君は革ジャンを着て登場したけどいつの間にか脱いでいたので革ジャンはやっぱり暑いのか…。ライブ全体を通してなべちゃんがたくさんいい笑顔を浮かべていて嬉しかった。

 

A

Dancing Zombiez

クレイジー・ギャンブラーズ

Blood Red Shoes

狂乱天国

Rex Girl

Welcome To Wonderland

月に吠える

世界が変わる日

ブレインデッド・ジョー

バタフライソング

春の嵐

R.A.D.I.O.

テンペスト

プシケ

北極星のメロディー

シーガル

白状

伝説の夜を君と

 

花火を見に行こう

I LOVE YOU

 

Beast Mode

 

今回のツアー、自分は4月の新代田ワンマンと同じく4月のDOESとの2マンにも参加。ホールワンマンなので他公演とセトリを組み替えるのかなとも思ったが大枠は他の公演と同じような感じで若干順番が変わっていたり日替わり曲がある、というような構成だった。

特徴的なバンド名にかけたような「これが最初のA」と歌われるAでライブが始まり、Dancing Zombiezでは軽やかにステップを踏む姐さんに目を奪われる。クレイジー・ギャンブラーズのカラッとした痛快さからのBlood Red Shoesの心地よい緊張感という緩急のある流れも見事だった。

狂乱天国~Rex Girl~Welcome To Wonderlandは佐々木さんがギターを置いてハンドマイクで歌い、ステージを動き回る時もあった。Rex Girlでは2番で姐さんも歌い始めると佐々木さんが歌うのをやめテツ君にぴったりくっついて姐さんが歌うのを見ていた。「浦安よりフロリダよりここが一番楽しい」的なフリからのWelcome To Wonderlandでは中盤で佐々木さんがステージに寝転がると、客席に数人いたカメラマンさんが全員慌てて駆け寄って来て面白かった。

 

月に吠える のサビで佐々木さんとなべちゃんが歌声を重ねる姿にフラッドのこれまでを思い出しながら聴き浸り、続いて新譜からの世界が変わる日 のサビでも同じく佐々木さんとなべちゃんが共に歌っていて、2人がフラッドの柱として長年ブレずに活動してきたからこそ今のフラッドがあるのだということを、この2曲を並べることで象徴していたように思えた。

音源だとかなり明るく開けた新境地的な印象のバタフライソングは実際にライブでやるとなべちゃんがかなり大きな音でバスドラを鳴らしていて、その爆音加減がやっぱりフラッドだなという安心感があった。ブレインデッド・ジョー~バタフライソング~R.A.D.I.O.のパートは多幸感を感じさせるような流れで、これをホールの大空間で聴けたのはかなり気持ちよさがあった。

 

あまり勿体ぶらずに演奏に入ったテンペスト、個人的にアルバムの中で特に好きな曲だからというのもあるけれどバンドが安定した今だからこそ出せるようになったのか転がっていく、ではなく『止まれなかった』を匂わせる詞とやはり鬼気迫る演奏に心を掴まれ堪らない気持ちになった。そこからプシケへ繋がるのも良かった。この盛り上がりからシーガルへ、ではなく北極星のメロディーを挟んだあたりにこの曲がアルバムにおいて重要な位置にある曲だということを実感した。

 

ステージ下手端にグランドピアノが置かれていて、シーガルの演奏が終わると佐々木さんがピアノの方に移動。椅子に座るとこのピアノ2万で借りられるんだよ、なんてゆるい話をしてからこの日起こってしまった大きな出来事について触れた。「俺は今までの選挙で一度も自民党に入れたことはない。(ここで客席から拍手が聞こえたがそれを制して)でも安倍さんが死んでいいなんて思ってない。」晴れ舞台で出す話ではないかもしれないが、今までにもその時起こっている出来事について佐々木さんがMCで触れるのを聞いたことがあったので佐々木さんらしいと言えばそうだとも思える。自分はガンジーと同じ誕生日だから不暴力非服従で…と言ってみるなど、思いの丈を可能な範囲で吐き出しているようだった。この日集まった客たちについて、俺とちょっと似ているところがあるかもみたいなことを言って、俺とちょっと似ているところがある人は疲れてるかもしれないから、その人達が癒えるように、的な言葉から白状 へ。

ワンコーラスを佐々木さんのピアノ弾き語りで、その後は佐々木さんが元の立ち位置に戻るといつものバンド編成で演奏。ホールワンマンならではの演奏だった。本編最後は「俺たち無敵さ」と歌うアルバムの1曲目にして表題曲である伝説の夜を君と で締めた。



MCでの佐々木さんの第一声が「みんなは何のグミが好き?俺はHARIBO」だった。この日お茶割りと一緒にHARIBOのグミを買ったが、何度も食べてきたのにこのタイミングで初めてハンガリーのお菓子だと知ったそう。知らずに何頭のクマをやっつけてきたか、まだ知らないことがあるなと言っていた。 微笑ましい話だけれどこの話をした後、白状を演奏する前のMCの際に「ハンガリーの隣ってウクライナなんだよね、そこに繋げたかったわけじゃないけど」と話していて予想外の繋がり方をしていた。

ツアー中の思い出は長いツアーだったからかあまり思い出せないような様子もあったが、佐々木さんがWOMCADOLEに古着を買ってあげたり、広島でホテルのロビーに戻ったら目がガンギマリ状態の姐さんが酒飲んでたとか(笑)あとは、ツアー中空港でコンクリートぶち破って花咲かせてるたんぽぽを見た佐々木さんが「たんぽぽになりたい」と思ったと。 コンクリぶち破るほど勢いを持ったものへの憧れ、というのが話の主軸だったことは分かるが、金髪の佐々木さんがそれを言うのがちょっとだけ面白かった。



アンコールで登場するなり時間過ぎると延滞料金取られる!と佐々木さんが言って少し急ぎ目に演奏に入ったのは、ホールワンマンに合わせてリリースされた最新曲・花火を見に行こう。ステージの壁に歌詞を映しながらの演奏だった。歌詞も観ながら生で演奏を聴いてみると歌をじっくりと聴かせるようなメロディーでホールでの演奏がとても似合う曲だった。続いてI LOVE YOUで空間を多幸感いっぱいにしてアンコールが終了。途中歌詞を「渋谷ハチ公口」に変えて歌っていた。退場時に佐々木さんがピアノの鍵盤をちょっとつついて去って行った。

 

これで終わりかと思いきや、ステージの壁に映像が投影され始め、この日のライブが映像化されることや10月に代々木公園でフリーライブを開催することを告げる。(LINE CUBE前で話し始める佐々木さんが映るとそのままNHK横を歩いていき代々木公園の野外ステージに到着してお知らせ、という演出)最後に9月に「FUCK FOREVER」「I'M FREE」の再現ライブを開催するという告知も流れ会場がざわつくと再度4人がステージに登場。

Wアンコールとして演奏されたこの日最後の曲はBeast Mode、客席のテンションもかなり上がっていたが終盤では佐々木さんがもはや歌いもせず床にゴロゴロと転がり始めたのでかなりテンション上がってるように見えつつ何があったのか?とも思いながら観ていたら、アウトロが終わるところで弦が1本切れた状態のブラックファルコンを思いっきり床に叩きつけたので血の気が引いた。それほどまでにテンションが振りきれていたのか、そうでもしないと収まらない思いがあったのか、この時の佐々木さんがどんな気持ちだったのかこちらからは分かるはずもないが、そんなことをする佐々木さんを見たことがないのでかなり衝撃だった。告知解禁ラッシュとブラックファルコンのショックで最後の最後に気持ちが落ち着かなくなったが、中指を立てながらゆっくり退場するテツ君と、アンコール終わりの佐々木さんを真似するかのようにニコニコしながらピアノの鍵盤をちょっとつついて退場していったなべちゃんの姿が心を少し和ませてくれた。



ブラックファルコンは無事だったのだろうか。そして(もちろんこの日でなくても起こってはならない事ではあるが)「よりによって、どうして、今日起きたのか」と正直色々な気持ちが残ってしまったが、全体的には今回も大変いいツアーで素晴らしいホールワンマンだったし、これから毎年7月8日を迎える時にはこのライブのことを大切に思い出しながら過ごしたい。

グランドピアノやステージ壁をスクリーンのように使った演出はあれどセトリやパフォーマンスはホールワンマンとはいえ基本的にライブハウスでライブをやる時とほとんど変わらない、フラッドのスタイルでの堂々とした演奏だった。この先、武道館のステージで同じように演奏するフラッド が観たいしきっと武道館まで連れて行ってくれる、ライブを観ながらそう思わせてくれるようだった。