最後の駅の向こう

何でもすぐ忘れる人の特に記憶に残しておきたいライブの簡易レポートと趣味のレビューの予定。あくまで予定。

20220923/9mm Parabellum Bullet“Walk a Tightrope Tour 2022”@SENDAI GIGS

       

結成18周年(1+8=9!)を迎えた9mmの記念すべき“9枚目”のアルバム「TIGHTROPE」リリースツアー、仙台公演。9月9日の大阪公演を皮切りに名古屋、そして福岡と続くはずが台風のせいで福岡公演が惜しくも中止に。本来全6公演のうちの4公演目だった仙台公演が3公演目となった。

今回のツアーは会場によってスタンディングだったり自由席だったりと形式が異なり、仙台公演は全席指定。自分の座席はフロアのほぼ真ん中あたりの位置だったので前の座席の人の頭が視界と被る可能性も想定していたが、ステージが結構高かったようで予想以上にステージ全体が見やすい席だった。

場内に入るとTIGHTROPEのジャケットに似たデザインの柄にバンド名とツアータイトルが印刷された、今回のツアーのためのバックドロップが既にステージに掲げられていた。フロア前方あたりの天井にはロープが天井の照明機材の骨組みを利用してゆるい懸垂線を描くように結ばれていて、数えてみるとちゃんと9本あった。そのうち8本は黒いロープだったが真ん中の1本だけは赤色で、その赤色のロープだけはまるでフロアとステージを結ぶかのように天井からバックドロップの右側を通ってステージの床あたりまで垂らされていた。アルバムタイトルに合わせて本物のロープを飾るとは全く予想もつかなかったので会場に入った瞬間かなり驚いた。

 

ほぼ定刻に場内が暗転するとお馴染みのSEであるDigital Hardcore、ではなくこのツアーのために制作されたと思しきちょっとダークなサウンドアンビエント的インストが流れ、紫色のスポットライト数本がランダムに動いて場内を不穏な雰囲気が包む中卓郎さん、滝さん、和彦さん、武田さん、かみじょうさんがステージに登場。

 

 

Hourglass

All We Need Is Summer Day

名もなきヒーロー

Supernova

Psychopolis

悪いクスリ

白夜の日々

インフェルノ

夏が続くから

Spirit Explosion

Cold Edge

淡雪

Tear

タイトロープ

キャンドルの灯を

The World

One More Time

Black Market  Blues

Termination

泡沫

煙の街

 

Discommunication

Talking Machine

 

不穏な雰囲気の中演奏が始まったのはTIGHTROPEの1曲目でもあるHourglass。序盤から卓郎さんが鋭い眼差しで朗々と歌い上げていた。シャワーのように無数の細い光を描くスポットライトが曲の中盤あたりで天井に光の粒を描き、歌詞通りの〈こぼれ落ちる砂〉を表現しているようで息を吞んだ。間奏の滝さんのタッピングやアウトロの和彦さんのシャウトなど見所が次々と続き1曲目にしてぐいぐいと引き込まれる。続いての曲はAll We Need Is Summer Day、Hourglassとの対比もありそれまでの重い空気を一気に明るくするかのような開放的なメロディーと鮮やかな黄色の照明がステージを彩り、その開放感が聴いていてとにかく心地よかった。〈All We Need Is Summer Day〉のコーラス部分は客がまだ声を出せないものの、思い思いに体でリズムを取ったり元気に腕を上げたりという様子で盛り上がる。1番サビから2番へ入る間奏、ベースの速いフレーズが入る部分では和彦さんがちょっと前に出てきたようでその見せ場をしっかりと観ることができた。

続いては名もなきヒーロー、All We Need Is Summer Dayと並んだことで夏フェスの空気感を持ってきたような流れだなと勝手に感じた。この曲のイメージカラー的に使われる水色とピンクの配色やサビの〈また明日 生きのびて会いましょう〉で赤を挟む照明が個人的に好きなところ。サビなど一際盛り上がる部分ではいくつかのライトが高速で回転してステージをより華やかにしていた。名もなきヒーローのアウトロから流れるように演奏に入った次の曲はSupernova、いきなりの予想外の選曲に漏れそうになった歓声を慌ててこらえた。イントロは聞き間違いでなければ武田さんが滝さんと同じメロディーを弾いていたのか、ギター3人でツインリードのメロディーを息ぴったりに合わせていた。スポットライトの光がバックドロップの上で交差して大きな星にも見えるような模様を描いていた。最後のサビでは滝さんが上手の空間いっぱいに動き回っていて思わずそちらに目を奪われた。

 

ここで最初のMC。卓郎さんが開口一番「仙台、仙台!仙台!!」と立て続けに呼びかけていて、仙台で無事にライブできる嬉しさを爆発させるような様子だった。この日は9mmの他にPeople In The BoxDragon Ashも仙台でライブをしていることから卓郎さんが「仙台をロックシティに!」というコメントも。

 

9mmが今年メジャーデビュー15周年であることに触れ、メジャー1stアルバムが出た時の気持ちを思い出させます、というような話からの次の曲は9mmのメジャー1stアルバム「Termination」の1曲目、Psychopolis!9mmは結成から何年、には毎年言及しているがメジャーデビューから何年、というのにはそれほど触れてこなかった気がするのでレコ発の中で言及されるとは思わず、これも予想外の選曲。アウトロの最後の1小節を飛ばしそのまま次の曲、悪いクスリのイントロのベースへ繋がるという見事な流れ!以前何かで全く同じ繋ぎ方を聴いたことがあって、繋ぎ方のあまりの見事さでずっと記憶に残っていたものをまた観られるとは…と驚きと嬉しさでいっぱいになった。悪いクスリ、Aメロは武田さんにギターを任せて滝さんはギターでこれまで9mmでは聴いたことのないような、何となくコズミックな不思議な音を出していた。序盤は照明がバックドロップにネットのような模様を描き、サビでは歌詞に合わせるかのように三枚羽根のプロペラのような模様をフロア左右の壁に投影して曲の不思議な空気感を視覚でも表現していた。

白夜の日々では白い照明で、ちょっと見えづらくなるほど強く眩しい光がステージを包んだがこれも曲やMVのイメージにぴったりでいい演出だった。2番のサビで卓郎さんが〈君に「会いに来たぞー!!」〉と歌詞を変え、清々しい笑顔で歌っていた。次のインフェルノではステージが白から真っ赤へと移り変わった様子で曲の流れを視覚で楽しめた。

 

ここで短いMCが入ったが卓郎さんが何を言っていたか失念してしまった。卓郎さんはアコギに、滝さんがエレガットに持ち替えて次の曲のタイトルを匂わせるようなことを話したものだから次の曲を察して演奏前からそわそわしてしまった。その期待通りで次の曲は前作「DEEP BLUE」の中で自分が最も好きな曲、夏が続くから。卓郎さんのアコギから演奏に入るこの曲、卓郎さんが弾き始める直前かそれと同時に滝さんが卓郎さんの方に腕を伸ばしそちらに注目させるような仕草をしていた。照明はほぼ普通の白色のみというこの日最もシンプルな構成だったのもよかった。リズム隊の音と武田さんのエレキの音がしっかりと支えるような演奏にアコギのシャキッとした音とエレガットの繊細なメロディーが乗る組み合わせは相変わらず言葉を失うほど美しかった。本当に幸せな時間だった。

繊細な夏が続くからとの対比でイントロから一際力強さを感じさせたSpirit Explosion、武田さんがバッキングを担当し卓郎さんと滝さんがイントロからツインリードを弾くという割り振り。ただひたすらにかっこいいメロディーに血が滾る。Spirit Explosionの最後の音と同じ音から始まるCold Edgeというここも綺麗な流れ、Cold Edgeは定番曲のようで最近では意外とセトリに入らないので久し振りに聴けた気がする。間奏の入りでは和彦さんが「仙台!!!」とシャウト。ここまでの夏が続くから・Spirit Explosion・Cold Edgeと何となく「青」のイメージがある3曲が並んだ。

フロアが一旦静まりそれまでの熱い雰囲気からスッとクールダウンしたかのような空気の中での淡雪。音源ではたっぷりかけられているリバーブはライブではさほど強くなく、それでも卓郎さんのしなやかな歌声がフロアいっぱいに響き渡った。最後のサビでの滝さんの澄んだファルセットも美しかった。無数の細かい線を描く照明がステージを淡い白に染めていて、ふと後ろを向くとフロア後方2階席のあたり、ステージの向かい側の壁に光の粒が映っていてまるで雪景色のようだった。ステージにいる5人からは客の上に雪が降っているように見えていたのかもしれない。淡雪についてはこの後のMCで卓郎さんが荒吐でやったら季節的にちょうどよさそう、というようなことを話していた。荒吐で演奏される淡雪、いいなあとその様子を想像しながら話を聞いていた。これが必ず実現すると信じて来年を楽しみに待ちたい。

 

かなり変則的な拍子のTear、イントロではかみじょうさんがシンバルをミュートしながら滝さんのいるあたりを確認し息を合わせるかのように演奏に入ったのが印象的だった。サビがないような曲構成はインディーズ時代の曲に近いものがあるなと思いながら聴いていた。アルバムと同じ名前を冠したタイトロープは乗りやすいリズムにキャッチーな歌のメロディーが聴いていてひたすらに気持ちいいのに何とも言えないスリリングさを感じさせる不思議な曲。卓郎さんが歌いながら天井のロープをチラッと見るような瞬間もあった。全体的に赤い照明がスリリングさを煽り、〈嵐の中に羽を広げて〉からの転調するパートでは青い照明に変わり刹那の開放感を演出するという切り替えも見事だった。和彦さんがアップライトベースに持ち替えて…ときたら次の曲は、キャンドルの灯を。タイトロープからの対比であたたかみのあるメロディーやオレンジの照明がより際立っていた。5人編成の時に聴けるイントロのトリプルリードのアレンジは何度聴いても素敵過ぎる。

卓郎さんが再びアコギに持ち替えたので何の曲だろうかと考えていると次はまさかのThe World、9mmの通常編成で卓郎さんがこの曲をアコギで弾くのは多分、今までに観た記憶がないのでかなりレアだったのではないかと驚いた。アウトロでは滝さん・武田さん・和彦さんが同じタイミングでぴったりとリズムを取りながら演奏、その中でも和彦さんは途中からかなり頭を大きく振るなど段々と動きが大きくなっていた。最後はかみじょうさんが左右のシンバルの上にスッと手を置き静かに音を切った。

 

卓郎さんが「いけるか~~~!!」とフロアを煽り大いに盛り上げてからOne More Timeへ、All We Need Is Summer Dayとセットでライブ序盤にやるのかなと予想していたのでここまで出てこなかったのは意外だったが、温存してここで投下してきたのが雰囲気的にもぴったりだった、とにかく楽しかった!そのままBlack Market  Bluesに入ると卓郎さんが〈SENDAI GIGSに辿り着いたなら!!〉と歌詞を変えて歌い、更に盛り上げていた。Psychopolisと同様メジャー1stアルバムに収録されているのでセトリに入った?Terminationでは間奏のギターソロに入る直前に和彦さんが滝さんを指差してそちらに注目を集めるようにしていたり、ギターソロ中には卓郎さんと武田さんが向かい合って弾いていたりしたていて、特に卓郎さんと武田さんはふたりとも笑顔で本当に楽しそうな様子で演奏していたのでこちらも心の底から嬉しい気持ちになった。まだ客が声を出すことができないのでサビで大合唱が起こることはなかったが、その代わり思い思いに腕を上げて楽しむ客に向かって1番のサビでは卓郎さんが「ありがとう!!」と叫んで応え、次のサビでは和彦さんがフロアからよく見えるように自らの左胸をトントンと叩いて応えるような仕草を見せていたので、声は出せなくても今できる方法でこんなに楽しむことができるし、ステージ上のメンバーにもそれが十分に伝わっていることがよく分かってなんだか無性に泣きそうになってしまった。

 

ライブもそろそろ終盤の空気を漂わせつつここで泡沫。水の中を表すかのような淡い水色の光が空間を満たす。卓郎さんの歌声は全体的に柔靭ながら〈どこまでも沈めてくれ〉の部分はかなり感情を込めるような歌い方だった。それまでの水色が一変、〈どうして どうして どうして〉からのスローになる部分は演奏と卓郎さんの歌声に重みが増し込められた情念を表すかのようにステージが真っ赤に変わった部分は圧巻だった。

最後の曲はTIGHTROPEの最後の曲でもある、煙の街。ライブが始まる際にSEで使われたようなサウンドがしばし流れてから演奏へ入った。スモークが多めに焚かれる中ステージを斜めから照らすようなライトがスモークの中に長方形に近い光を作り出し、歌っている卓郎さん以外の4人はそれぞれ違う方向を向いて俯きがちな佇まいで演奏していて「煙の街に佇む5人」という光景を完璧に生み出していた。卓郎さんの歌声がゆらゆらと響き、演奏は徐々に重たさを増してゆき、陰鬱な空気と轟音に包まれるがそれが何とも言えず心地よかった。終盤の〈ああ 燃えた夢はいくつ〉からの部分はステージ中央のみを照らすスポットライトが卓郎さんのシルエットを生み出し、アウトロの一際轟音が増す部分は更に濃くなったスモークの中をフラッシュのような照明がいくつも光る怪しげな、この世のものとは思えない光景を生み出していた。最低限の照明とスモークだけで完璧に曲の雰囲気を作り上げていたのが圧巻だった。最後の一音が鳴ったと同時にステージが暗くなり、暗いままのステージから5人が静かに退場していった。

 

本編が終わりアンコールの手拍子がしばらく続くとステージが再び明るくなり、和彦さんが一人で登場。本編では黒の長袖シャツを着ていたが何と18周年デザインの白いロンTに着替えていた!和彦さんが白を着ている姿は相当レアではないだろうか…。いつも通り低くセッティングしているマイクスタンドをゆっくりと一般的なマイクの高さに直し、照れ笑いを浮かべながら話し始める。自らのMCについて「一部の人に人気の…一部ってのはここ(仙台)のことだけど」と話したり「珍しく物販の(Tシャツ)を着ました。今日はソールドしたらしいですね、ありがとうございます。グッズをお土産に是非」と宣伝を入れたり。

続けて客と会話するかのように「“さくら野”の跡って何になるか決まったんだっけ?あそこでライブやってみたいよね。」と話していた。アー写撮りたいとか、9mmは廃墟似合うから、とか。地元ネタだったようで自分はその場では何の話をしているのか分からなかったが、ライブ後に調べて仙台駅の近くに残っている、今営業していない「さくら野百貨店」という施設の話をしていたと把握した。一通り話し終わっても誰も出てこないため袖を見ながらまだみんな来ないんですかね、と和彦さんが困っていると卓郎さんがステージに登場。ステージ中央についた卓郎さんに和彦さんが「社長!」と呼びかけた。そのすぐ後だったか、卓郎さんが和彦さんに よっ、社長!と言っておどけて見せると和彦さんが社長はあなたでしょうという感じで反応するという微笑ましい場面があった。

全く気付かなかったが卓郎さんがグッズのロープを腰に付けていて、その理由が「ベルトを忘れた」からだそうでロープで代用したとのこと!和彦さんがそれを褒めると気分を良くした卓郎さんが「なんか飲む?」と話しかけ、和彦さんがあとで…という感じで返すという更に微笑ましい会話が。

それも終わると卓郎さんがそろそろみんなを呼び込もうかと袖に向かって「ちーちゃん」「滝くん」「武田くん」と呼びかけ、5人がステージ上に再び揃った。

 

アンコールの1曲目はDiscommunication、これも15年前のメジャーデビューシングルというメモリアルな曲、だからセトリに入ったのだろうか。蛍光イエローのような照明は近年ライブでこの曲を演奏する際のお馴染みになりつつある。この日最後の曲はTalking Machine、Punishmentではなくこの曲でアンコールを締めるのも結構珍しかったのではないか…。最後にこの日一番フロアを躍らせてライブを締めた。

演奏が終わると滝さんが退場、それに続くように武田さんも客席に向かって笑顔で親指を立てながら退場。卓郎さんと和彦さんはフロアの隅々まで見渡し、笑顔を向け、手を振っていた。下手に到着すると2人で譲り合うようなじゃれあうような様子も見せていた。ドラムセットの後ろからステージ前方上手側に出てきたかみじょうさんは下手の袖に消えるまでの間に声は聞こえなかったが何度もありがとう、ありがとうと口を動かしているのが見えた。最後に卓郎さんがステージ中央にやってくると万歳三唱をして(万歳のリズムに合わせて照明を若干点滅させていたのがよかった!)袖へ入るギリギリまで客席に笑顔を向けて退場していった。

 

TIGHTROPE収録曲は全10曲、35分ほどでワンマンのセトリでは持ち時間の半分弱ほどが埋まる長さ、アルバムが短いのでグレイテスト・ヒッツのようなセトリになると卓郎さんもMCで言っていたが、そのおかげでアルバム全曲はもちろん定番曲から最後にライブで聴いたのいつだ!?というほどのレア曲までたっぷり楽しめるセトリだった。メジャーデビュー15周年の節目も入れるとは思わなかったので嬉しかった。

曲中は悪いクスリで使われたのが印象的だったが、MCで卓郎さんが話しているときに滝さんがこれまで9mmでは聴いたことのないようなピュンピュンと不思議な音を出したり、どう表現したらよいのかシンセみたいに滑らかに上がっていく電子音のような音を出したりするので卓郎さんが「滝が仙台を持ち上げています」とコメントして笑いを取っていた。そういえば滝さんは久し振り?にキャップを被ってステージに登場したが、激しく動き回るのですぐにキャップを吹っ飛ばしていた。ライブ中に被り直しても気付くとまたキャップがなくなっている、という様子で僅かに楽しそうな笑顔を浮かべていることも多かったので絶好調だったのかなと。滝さんのそんな姿を見られたのも嬉しかったところ。

この公演があった3連休は台風が近づいてきたタイミングで仙台も雨はほぼ降っていなかったものの湿度高めの気候だった。そのため、卓郎さんが台風から逃げるようにして来たのに湿度が高いと話しながら自身の髪型を気にして、髪の毛の具合が湿気の指標になるとも話していた。その後のMCでは演奏後のまだ暗いステージで自らの髪を何度かわしゃわしゃと撫でて髪のボリュームを気にするような仕草をしていて微笑ましかった。

この公演の1週間前にもやはり台風が近づいてしまったせいで福岡公演が中止になったことにも触れ悔しい気持ちを露わにしていた。

 

今回の照明は変わった形のライトやLEDパネルやレーザーなど派手な機材はなかったが、普通の大きさながらグルグルと高速で回るライトや曲の雰囲気に合わせて模様を投影するものなどを駆使して曲の雰囲気を見事に表現していた。また、サビやギターソロに入る前といったタイミングでかみじょうさんにスポットライトを当てるという演出が多く使われていた。

 

中盤あたりのMCだったか、表現はうろ覚えだけれど卓郎さんがタイトロープの歌詞は歌入れ当日にできたので本当に綱渡り的な状態だったらしい、というような話が出てきた。9枚目のアルバムなのでタイトルに9を入れることも考えたが、最終的に「TIGHTROPE」になってよかったと。これでセルフタイトルをつける機会は永遠に失われましたね、と笑いながら言ってもいた。

またこれも中盤やアンコールのMCで出た話。卓郎さんが今まで9mmにも綱渡り状態の時があったが、落ちそうになった時にみんなが引き上げてくれた、とかみんな綱渡りのような日々を送ってきたから誰かが落ちそうな時は助け合おうとか、本当は綱渡りってみんなでやるようなものじゃないよね的なひと言もありつつ、みんなが落ちそうな時にはおれたちが引き上げます、というような話をしていた。

自分もそうだったが人生の中で相当しんどいことがあった時に9mmの音楽に助けてもらった経験がある人は少なくないだろうし、9mmが最大のピンチを乗り越えた直後、2018年の野音ワンマンで卓郎さんが「もうダメかもしれない。やめようと思った。その度にライブで見てきたみんなの顔が浮かんできて、考えるのをやめた。」と言っていたことがあった。そしてここ3年続いている正に綱渡りのような不安定な状況。ポジティブな意味もネガティブな意味も含んだ「TIGHTROPE」というタイトル。正直、発表時にはあまりピンとこなかったので不思議な気持ちで見ていたタイトルだけれどライブでTIGHTROPEの曲たちを聴き、卓郎さんの言葉一つひとつを聞いてこのタイトルの中には9mmがこれまで通ってきたことや積み重ねてきたものが確実に含まれていることを認識できたし、9枚目というこのバンドにとって記念すべきアルバムに相応しいものなんだなと実感することができた。