
オープン30周年を迎えたF.A.Dが、2026年6月を30周年イベント月間として様々なライブを開催、その一環で結成当初から現在に至るまでF.A.Dに何度も出演している9mmがワンマンライブを開催。
リリースに関連しないワンマンなのでセトリの予想がつかないながらも場所柄初期曲が聴けるのではと期待。入場して下手側の段上に場所を取りステージを見るとF.A.D30周年のロゴが描かれたバックドロップが掲げられていた。19時ちょうどに場内が暗転し滝さん、和彦さん、卓郎さんが登場。
(teenage)Disaster
Black Market Blues
踊る星屑
Heat-Island
太陽が欲しいだけ
All We Need Is Summer Day
サクリファイス
インフェルノ
レーゾン・デートル
The Revenge of Surf Queen
Keyword
Domino Domino
幻の光
The World
カタルシス
Baby,Please Burn Out
Termination
叫び -The Freedom You Need-
Talking Machine
Wildpitch
The Revolutionary
Punishment
滝さんがドラムセットのハイハット側に置かれたパッドを叩いてからカウントを入れて演奏されたのは9mm最初期の曲(teenage)Disaster、期待通りの選曲をいきなり聴けてしまった。続くBlack Market Bluesでも〈Flower and Dragonに辿り着いたなら!!〉と卓郎さんがF.A.Dの正式名称を早口で入れて歌っていたことに結成時からの付き合いであるF.A.Dに捧げるセトリというような特別感があった。真っ赤な照明が青色へ切り替わった踊る星屑では最後のサビ前に卓郎さんが「横浜!」と煽りフロアを一層盛り上げていた。初期曲→定番曲→新しめの曲、と序盤にして絶妙な選曲の構成に唸ったところで僅かに間を空けて滝さんの速いカウントからHeat-Islandの演奏が始まるとフロアのあちこちからどよめきの声が漏れた。滝さんのパンク感ある叩き方でのHeat-IslandがF.A.Dと相性がいいような気がした。
ここで最初のMC。この時だったか「F.A.Dはオーディションからライブ出ていて、最初は面白い対バンに出させてもらえなくて、Lizardに行くかって(笑)」という卓郎さんの暴露に和彦さんが人差し指を口に当てシーッ!というジェスチャーで返すとマイク通さないで言えばいいか、と卓郎さんがマイクから離れていったが、既に閉店してしまっている系列店のClub Lizardの名前も出しながらそんなことを言えてしまうくらいに関係の深い場所であることがよく伝わってきた。
この日は午後に雨が降ったからか、卓郎さんの「お足元の悪い中お越し頂きありがとうございます。こんな時に欲しいのは太陽だよな!!」というような煽りから演奏された太陽が欲しいだけ が盛り上がらないわけがない!観客がミチミチに詰まったフロアで〈さあ両手を広げて全てを受け止めろ〉の一節でたくさんの手が上がった光景は圧巻で、卓郎さんもその光景を笑顔で見ていた。太陽が欲しいだけ からAll We Need Is Summer Dayへという見事な流れにフロアから〈All We Need Is Summer Day〉と元気な大合唱が巻き起こり1番のサビ終わりでは卓郎さんが「夏を先取り!!」と叫んだ。
サクリファイスは原曲よりキーをやや下げての演奏、終始力強い歌と演奏だったが最後の〈足掻き続けて 生き抜いてみせるだけ〉の一節を卓郎さんが歌声と表情により一層の力を込めて歌い上げていた様子に胸を打たれた。サクリファイスからインフェルノへ、ベルセルク主題歌を続けて聴けるという豪華な流れ。〈運命を喰い破れ いくらでも悪あがけ〉という一節につい今の9mmの姿を重ねながら聴いてしまった。
インフェルノでのバスドラ連打など激しい演奏を披露した滝さんが、卓郎さんと和彦さんのチューニング中にひと息つくような仕草をしながら水とお酒を交互に飲んでいた。暑い!とも言っていたようでステージ上の熱気がどれほどか窺えた。
「サクリファイスとインフェルノ、カタカナシリーズで。ベルセルクの方じゃなくて(笑)」と戯けた卓郎さん。カタカナシリーズとして新曲のレーゾン・デートルの話になり、作ったのは去年でライブではやっているけど、F.A.Dに新曲を染み込ませないといけないからね、と会場への愛着を感じる話からこの日の9曲目にレーゾン・デートルを披露し、F.A.Dのフロアに決意表明のようにも感じられる勇ましい演奏を響かせた。
それに続いたのが何とThe Revenge of Surf Queenでイントロが始まった瞬間驚きの声を漏らした。曲が始まって観客が手拍子する様子に笑顔を見せた和彦さんが、手拍子が終わるとキリッとした表情になって演奏し、また途中で手拍子が起きると再び表情が緩んで笑顔でフロアの様子を見る…という変化にこちらも笑顔になった。和彦さんがそれほどフロアの様子をよく見ているんだなというのが伝わってきた。中盤のギターソロのような部分では滝さんのギター音源に重ねるように、ステージ真ん中のお立ち台へ出てきた卓郎さんがソロパートを弾いていたのがものすごく良かった。
The Revenge of Surf Queenから音を切らずに“激つなぎ”でKeywordへというこれまた予想外の流れ、間奏のギターソロでは前半は滝さんのギター音源、後半は卓郎さんがそれに重ねるようにソロパートを弾いてタッピングまで披露し喝采を浴びた。Keywordのアウトロから滝さんがバスドラを少しテンポを落として踏む音がしばらく鳴り響いてからDomino Dominoへと続き、かっちりとしたリズムが心地よかった演奏を聴きながらこの会場で観た「YOU NEED FREEDOM TO BE YOU」のリリースツアーを思い出していた。
「耳のいい人は気付いたかもしれないけど、滝のギターを録り直しました。6月のライブ分から。」と卓郎さんから衝撃の告白があった。こないだ名誉会長が来賓して…と言いながらギターの音がよかったことを褒めてもらえたと武田さんの口調を真似しながら話していた。
これからは5人編成もやっていくけど3人編成の方が自由な感じがある、というような話から、音源でアコースティックギター入れている曲はアコギも入れちゃえばいいんだ!と言ったり、それをライブで聴かせることを人体実験と呼んで笑いを誘ったりしながら演奏が始まった幻の光 ではイントロで繊細なアコギの音が鳴り、曲が進むと会場の特性もあるのか生演奏が爆音だったのでアコギ音源の音はほんのり聴こえる程度になったが、その音色と卓郎さんの柔らかな歌声でCD音源の儚さもあるようなイメージに今までよりも寄った新しいアレンジが聴けたのは嬉しかった。〈さよならさえ告げないうちに消えた〉の一節を今歌われるとまだ寂しくなってしまうのも正直なところだった。
相変わらずライブアレンジのイントロが美しいThe Worldは曲の後半〜終盤になるにつれドラムを筆頭にどんどん演奏が激しさを増し、繊細な印象もあった幻の光 からグラデーションのように音色が変わる様が素敵だった。
不穏な雰囲気を作り出すような音が鳴ってから演奏されたのはカタルシス。3人体制になってからのカタルシスは以前一度聴いたが、その時よりも中盤の展開などドラムの緩急がかなりくっきりとしていて滝さんのドラム経験値がものすごいことになっていて、短期間での滝さんのドラマーとしての進化を目の当たりにして圧倒された。
ここで卓郎さんが何を話していたか失念してしまったが、卓郎さんが話している間に滝さんが、それまで被っていた黒いキャップを「いいちこ」と書かれた緑色のキャップに変えていた。
「いけるかーー!!!」とフロアを煽ると力強いドラムにベース、ギターと音が重なっていくBaby,Please Burn Outへ。イントロや間奏、サビの要所要所やライブも後半に入り完全に温まったフロアから\オイ!!/と声が上がった。Baby,Please Burn Outから“激つなぎ”でTerminationへと続いたのでフロアが更に爆発的に盛り上がり、サビでは大合唱が巻き起こった。間奏ではここでも卓郎さんがギターソロを披露、この時だったか和彦さんが卓郎さんを見て!と言わんばかりに指差して見せ場を目立たせていた。音源を再現したかのようなギターの音から入った叫び -The Freedom You Need- のイントロに再びF.A.Dでリリースツアーを観た時のことを思い出したが、間奏で演奏を一時停止せず事前録音のギターを生かしてほぼ音源と同じ構成で演奏されていたのがこの編成ならではだった。続くTalking Machineは滝さんのドラムからライブアレンジのイントロへ続いたが3人編成になってからこのアレンジで聴けたのが自分は初めてだったので、ギターを録り直したことでまたできるようになったんだなと驚いた。ただでさえ盛り上がる曲だけれどアウトロに入るとフロアの爆発的な盛り上がりに呼応するように滝さんがバスドラを多めに連打する激しい演奏になっていった。
Talking Machineで本編が終わってもおかしくないような雰囲気だったが滝さんのカウントと和彦さんのシャウトからWildpitchへ!間奏では滝さんのギター音源&卓郎さんのギター演奏によるツインリードに途中から更に和彦さんのベースもハモって全員リードという状態になっていたのがとにかくものすごく良くてライブアレンジの長いアウトロまで興奮しきり。
演奏が終わって3人が退場し、少し長めにアンコールの手拍子が続くと黒っぽいTシャツから白いTシャツに着替えた卓郎さん、キャップを「いいちこ」から「下町のナポレオン」と書かれたものに変えた滝さん、そして和彦さんが再びステージへ。
卓郎さんが、これから9mmが初めて対バンするバンドとかとライブすることがあったら応援しに来てください、と対バン多めの今後のスケジュールに触れたり、下手にあるバーカウンターの方を見ながら「その辺に貼ってあると思うけど、30日間休みなくライブをやるって、すごいよね!ASPARAGUSの忍さんは3回出るって、アスパラ、キャプヘジ、キャプヘジで(笑)9mmも3回出たいよね!」と言いつつ、建物の取り壊しなどでなくなるライブハウスもある中で30年続くのはすごいことだ、とF.A.Dを讃えるような言葉もあった。
この日のアンコール1曲目The Revolutionary にはF.A.Dの30周年を祝うライブに相応しい晴れやかさを感じてより清々しい気持ちになった。〈世界が変わっても おれはおれのままさ〉の部分を歌った卓郎さんがびっくりするほど柔らかくてとびきり優しい笑顔だったのが忘れられない。卓郎さんと滝さんが溌剌と歌い上げるサビから間奏に入ると和彦さんがドラムセットの横へ移動し、ギターソロを弾く卓郎さんをリズム隊の滝さんと和彦さんが後ろから支えるような構図に見えたのがとてもよかった。
この日最後の曲はPunishment、ライブアレンジのイントロ部分で滝さんが片手でドラムを叩きながらお酒を飲み、空のカップを投げてから手数の多い演奏に入るという気合の入れようで、卓郎さんがギターを掻き鳴らし和彦さんが爆速フレーズを弾きまくり滝さんは同期の音を追い越しそうな勢いでドラムをぶっ叩き最後の最後までフロアを沸かせた。
演奏終わるとヘッドホンを投げるように取った滝さん、フロアに流れるお馴染みのMy Wayに合わせてドラムを叩くとそれを聞いた卓郎さんも乗っかってマイクを通してちょっと歌ってくれた。滝さんが退場、和彦さんもフロアにピックを何枚か投げて退場しステージに卓郎さんがひとりで残ると、ステージ中央で万歳三唱をやってからオフマイクでMy Wayを気持ちよさそうに歌っていた(もしくは歌うフリをしていた)のでかなりレアな光景を見られてしまった。最後にありがとうございました!とフロアに笑顔を見せて退場していった。
9mmが3人編成になってから半年くらい経ち今後5人編成でライブをやる日もあると発表されている中、この日卓郎さんが言った「6月のライブから滝のギターを録り直した」という話が本当に衝撃で、ライブ用のギター音源を録ることがかなり大変だったと滝さんが言っていたので、それをもう一度ワンマン一本分やったということが驚きだった。ギターを音源で流すスタイルを自由だと捉え新しくアコギを入れるという柔軟さも取り入れ、「9mmを続けるための3人編成」というところから短い期間でどんどん演奏やアレンジを磨き上げて進化していく様子を見られたことは純粋に楽しかったし、やはり3人のライブに対する執念も感じた。
卓郎さんが間奏などでリードを担う曲も増えたような気がしてそのような見所も多くなっているのが凄い。どの曲でのことだったか失念してしまったが、卓郎さんがステージ真ん中でギター弾いた後に、ギターで撃ち抜くかのようにフロアにヘッドを向けた瞬間がとてもかっこよかった。
どのあたりだったか、最近卓郎さんが 当たり前のように身の回りにあるものをおすすめする遊び をやっていると言っていた時があり(今発見したかのようにスプーンっていいよね!とか電車ってすごい…というリアクションで言い合うらしい)そうするとだんだん感動の閾値が下がってきて、F.A.Dおすすめだよ!9mmおすすめだよ!とおすすめしやすくなるよ、というような話になっていった。
中盤のMCのどこかで、卓郎さんが「滝と和彦にF.A.Dの思い出で言えるやつで何かある?と聞いてみた。」と話し始め、滝さんは昔対バンしたバンド(確かモンゴル◯◯みたいな名前だった)の曲だと言ったそうで、卓郎さんに促されるとドラムを叩きながら、
〈就職活動したくな〜い 就職活動したくな〜い 就職活動したくな〜い IT企業に入 れ て く れ!〉
という感じの歌詞を歌い始めてフロア爆笑、から滝さんの珍しいドラムボーカルに拍手喝采。それと、F.A.Dの落とし物の中からセパルトゥラのTシャツをもらったことがあるが、以前KEMURIと対バンした際にKEMURIのメンバーの方とそのTシャツが被った話もしてくれた。
和彦さんはF.A.Dに忘れ物を取りに来たらその日がPOLYSICSのライブでメンバーの素顔を見てしまったこと、を挙げていた。卓郎さんは以前対バンしたパンクバンドがMCに困ったのか、悟飯を守るピッコロさんのモノマネをしていたこと(ちょっと似てたらしい)を話し、和彦さんも覚えてる!というリアクションを取っていた。
終始卓郎さん達のF.A.Dへの愛着が感じられて、9mmとF.A.Dの微笑ましい思い出話や今は無き系列店のClub Lizardの名前を久し振りに聞けて、F.A.Dの30周年を祝うめでたい雰囲気もあったのが特別感あって楽しいライブだった。9mmの次のツアーでもF.A.Dでの公演が決定しているのを思い出しまた近いうちにF.A.Dで9mmを観られると嬉しい気持ちになった。







