最後の駅の向こう

何でもすぐ忘れる人の特に記憶に残しておきたいライブの簡易レポートと趣味のレビューの予定。あくまで予定。

20220317/9mm Parabellum Bullet “カオスの百年Vol.16”@EX THEATER ROPPONGI


9mmの結成日「の疑いがある」でお馴染みの3月17日。

結成18周年を迎えた今年の3月17日は六本木のEX THEATERにてワンマンライブを開催。2013年、9mmは当時リリースしたアルバム「Dawning」のツアー・Braking The Dawn Tourの追加公演をEX THEATER柿落としシリーズ公演の一環として開催しており、そこから9年振りに再びワンマンを開催(自分は9年前のワンマンは行けなかったため、思いがけず9年越しのリベンジとなった)。開催の1週間前に行われたYouTube Live配信の中でもその情報に言及があったため、もしかしたらDawning再現ライブでもやるのではないか、という期待も持ちつつ当日を迎えた。


全席座席指定のEX THEATERでライブを観るのはこれが初めて。客席前方は段差がほぼなかったが真ん中より後ろの列はライブハウスにしては結構傾斜が付いていて小さなホールのようだった。自分は前から3列目だったが、ライブが始まって客が全員立ち上がると前の人の頭が被りステージはあまり見えなかった。人と人の隙間からドラムセットのあたりは見える、という視界。

前列の椅子は床に直接、ではなく大きな台の上みたいなところに並べられていたので演奏や周りの人の動きに共振してよく揺れていた。足元からも曲のリズムを感じられる臨場感はとても良いものだった。



The Lightning

Answer And Answer

Zero Gravity

名もなきヒーロー

ルーレットでくちづけを

ロビンソン

徹頭徹尾夜な夜なドライブ

黒い森の旅人

新曲(タイトル未定・インスト曲)

ONE MORE TIME(新曲)

淡雪(新曲)

Caution!!

Snow Plants

コスモス

泡沫

キャンドルの灯を

太陽が欲しいだけ

Living Dying Message

新しい光

The Silence


ハートに火をつけて

Punishment



ほぼ定刻に場内が暗転し、いつものようにDigital Hardcoreが鳴り響く中バックドロップが登場。1曲目はThe Lightning、いきなりDawningの曲が来た!ライブで聴けたのはかなり久々だったのではないか。「明日を向いて歩こうか」と歌う、どこまでも前向きなこの曲で9mmの18周年が華々しく始まった!次の曲はライブ定番曲Answer And Answer、そういえばこの曲もDawning収録曲であった。滝さんがお立ち台に上がったりステージ上手の端、客席の近くまで出てきたりと大きく動きながらギターを弾く姿が嬉しい。卓郎さんが今では登場頻度の少なくなった赤いBricoleurを使っていた。

3曲目もDawningから、何とZero Gravity!!もはや何年前に聴いたのが最後だったか思い出せないくらい久々のセトリ入り。かっちりした縦のリズムや突然入ってくる三連符など、ドラマーであるかみじょうさんの作った曲だからというのもあるのか、リズムがとにかく気持ち良い曲。間奏の爆速ギターフレーズも滝さんがばっちり弾きこなす。中盤で滝さんが手拍子を煽る場面もあったが、ただでさえ久々にライブでやった上にこちらは声も出せないのでステージ側からいいタイミングで煽ってくれるのはありがたいものだった。ここまでの3曲はDawningのCDジャケットカラーである緑がかったような青を基調とした照明だったので、視覚からもDawningの雰囲気を味わいながら聴くことができた。

更にDawning曲が続くか、とも思ったが次の曲は名もなきヒーロー。照明はCDのジャケットカラーを再現するかのように青とピンクに切り替わった。リリースされてから3年の間に大変な出来事が色々起こったが、事あるごとに力をくれた曲で年々その頼もしさが増しているように感じる。今まではサビの「また明日~」の部分だけ赤くなる、という照明がお馴染みだったがこの日はここで白を使っておりこれまでより爽やかな印象があった。間奏では毎回若干違うフレーズを叩いているように見えるかみじょうさん、この日もそのような感じで時折両腕をクロスしてシンバルを叩く瞬間もあった。


演奏が終わるとステージが暗転しフロアから拍手が巻き起こっていたが、普段よりも拍手が長くなかなか鳴り止まなかった。拍手がおさまると、暗いままのステージで卓郎さんがもっと!と煽るように拍手をし始めたのでフロアからは再び拍手が巻き起こった。

ようこそいらっしゃいました!と挨拶し話し始めた卓郎さんが、「セルフカバーをやります!」と宣言したところで今日の目玉Dawningの曲だけじゃなかったんだ!?セルフカバー!?といきなり驚かされる。


宣言通りのセルフカバー曲、まずはルーレットでくちづけを!かつて栗山千明さんがアルバムをリリースした際に提供した曲で、ライブで披露したのは数える程度(自分は横浜アリーナワンマンで一度聴いたきり)というものすごいレア曲!原曲よりキーを下げての演奏、かみじょうさんの手元がよく見えたので、Bメロのあたりは手数が半端なくサビになるとツーバスの連打が凄まじいという様子を目の当たりにし、音源での印象以上に忙しい曲なんだなと(原曲よりも手数増やしていた可能性もあるのか)。続いてはスピッツのトリビュート盤に収録されている、ロビンソン。これも確か自分の知る限りでは2015年の渋谷QUATTRO公演以来のセトリ入りだったかと…原曲よりだいぶ元気でテンポの早い9mmらしいアレンジで、一番最後の「ルララ宇宙の風に乗る」の一節は、卓郎さんが9mmでの普段の発声よりも弾き語りの時の発声に近いような、柔らかい歌声で歌っていてその歌声が静かになったフロアに穏やかに吸い込まれていった。

しんとした空間に一瞬、地鳴りのような凄まじい音が鳴ってから演奏が始まったのは、徹頭徹尾夜な夜なドライブ!!UNISON SQUARE GARDENのトリビュートに収録されており、3年前にユニゾンと対バンした時でさえ演奏されなかった夜な夜ながこのタイミングで遂にセトリ入り!!ここ数年の9mmのリリース曲の中でもぶっちぎりのハードなアレンジはライブで聴くとこれでもかと威力を増していてただただ痛快で楽しい!間奏に入ると滝さんがオートワウを踏んで勢いよくステージ中央に飛び出してギターを弾きまくっていた。

あらゆるものを薙ぎ倒すような演奏を繰り広げてから一瞬の静寂を挟むと、静かでクリーンなギターの音が優しく響いた。次の曲は再びDawningから、黒い森の旅人。優しいイントロが、辺り一面を焼き尽くした更地からの芽吹きのようで美しかった。歌い出しのあたりから2階席の方へ目線を遣り真剣な表情で歌っていた卓郎さんが、何節か歌ったところでパッと優しい笑顔に変わった、その表情の切り替わりがとてもよかった。


またステージが暗転。フロアからまた長い長い拍手が巻き起こり、拍手がおさまりかけるとまた卓郎さんが、暗転したままのステージで拍手を煽るというやり取り。

このあたりだったか、8月にリリースを予定しているアルバムについての話があった。まだ曲数もタイトルも未定だが選曲は済んでおりレコーディングも進んでいるらしい。リリースツアーについて言及されたのもこのあたりだったか(ステージ上の武田さんが弾けるような笑顔と大きなガッツポーズで一番嬉しそうな反応をしていたのがよかった)。そして新曲をやります、みんなが大好きな拳突き上げる系のインストナンバーだと卓郎さんが曲紹介してからいよいよ演奏へ。


卓郎さんの言う通り、初聴きでも自然と拳を突き上げたくなるようなノリの良い曲で、時折ステージ前方に出てくる滝さんも少し口角が上がっているような、楽しそうな表情にも見えた。インストではあったけれど卓郎さんのコーラスが入っていた。曲の入りではこちらから見ると滝さんかみじょうさんが向かい合って慎重にタイミングを見計らってから演奏に入ったように見えて、そんな一瞬でさえも大変良かった。

次の新曲は昨年の9月9日に初披露された新曲で、こちらも体が自然と動く系の曲。昨年演奏された時から歌詞がまるっと変わっていた。この後のMCで明かされたが「ONE MORE TIME」という曲名とのこと。続いては2月14日にアーティスト写真撮影のためのライブを開催した際に初披露された新曲。少しゆっくり目のテンポで「桜」「別れの季節」などといった単語が並ぶ、歌モノっぽい曲。既発曲の「君は桜」と繋がるところがあるのだろうか、全て聴き取れた訳ではないので歌詞の全容がとても気になる。この曲もこの後のMCで「淡雪」という曲名であることが明かされた。


新曲3連発を終えると次の曲は…力強いバスドラと歪んだベースの音で始まったのはCaution!!再びDawningの曲そして再びライブで最後に聴けたのか忘れてしまったほどのレア曲が来てこの日のセトリがどれほどとんでもないものかを改めて実感。終始かっちりしたリズムで構成される硬派な曲、そのリズムの強さに共鳴して足元が振動して頭から爪先まで音に囲まれるような心地よさがあった。それに続いたのはSnow Plants、直近ではちょうど1年前の3月17日のワンマンで披露されたがこれもなかなか聴ける曲ではない。Answer And Answerがシングルで出た際のカップリング曲でリリース時期的にはDawningとかなり近いのでセトリに入った?曲の序盤と終盤の静かに情景を歌うパートと中盤の情念のこもったような演奏との緩急に引き込まれる展開とバックドロップの双頭の鷲に雪を降らせた照明が見事だった。

Snow Plantsの静かなアウトロから次はコスモスへ。9mmの曲の中でも一際可憐で優しいアレンジの曲、ギターはクリーンサウンドにコーラスのようなエフェクトをかけて柔らかな厚みを出していた。この日、ステージ後方には縦に細長いLEDパネルがいくつか置かれていて曲に合わせた模様を出したり細い照明器具のように使用されており、コスモスの演奏中には桜のような花の絵が舞っていた。「秋の桜」という歌詞や3月という季節柄に合っていて、9mmのライブでは珍しい紫色の照明と相俟ってステージ全体が美しい空間になっていた。

コスモスで心が落ち着いたところに次の曲、バラード的なテンポの泡沫が、卓郎さんのよく伸びる歌声がスッと入ってくる。「どこまでも沈めてくれ」という歌詞通りに強い没入感が空間を包み中盤でもっと遅く、もっと重々しくなる「どうして どうして どうして いつも~」の部分は突如照明が真っ赤になり一気に暗いところへ引き摺り込むような感覚、たった1曲の間に歌劇のような演出がありものすごい見応えだった。演奏が終わると和彦さんのもとへアップライトが運ばれるのが見え…ときたら次の曲はキャンドルの灯を。イントロは卓郎さん、滝さん、武田さんの3人でリードを弾いているように見えた。暗闇にポッと小さくもあたたかい光を灯すような曲の流れとそれに呼応した温かな赤系の照明がまた良かった。


このあたりだったか、演奏が終わると卓郎さんが再び話し始めた。「最近おれにも参っちゃうな、ということがあったり、世界の状況もそんな感じだし、それ以前に世の中もこんな感じで」と言いつつ「こうしてみんなに会えるのが嬉しいしそのために音楽はあるんだなと思った」というようなことを言っていて、本当にこの一節に尽きるなと…。


卓郎さんによる威勢のよい「いけるかーーーー!!」から太陽が欲しいだけ、先ほどの卓郎さんの言葉と歌詞の「それでも最後には笑え」が何となくリンクしているような気がして胸が熱くなった。「さあ両手を広げてすべてを受け止めろ」の部分では一瞬横を向いて客席に視線を移すと、フロアいっぱいに無数の手が上がっていた。更にテンションを上げるかのようにLiving Dying Messageへ、またステージ前方にやってきた滝さんがギターのネックを思いっきり上げるようにチョーキングしていて全身を使ってギター弾いてます!と言わんばかりの大きな動きに目を奪われる。それに続く新しい光では、この日終始ステージ後方からほぼ出てこなかった武田さんも遂にステージ前方に出てきていて、アウトロのキメでは更に武田さん・卓郎さん・滝さん・和彦さんがステージ前方にずらっと並んでいて、この日ずっと「武田さんも折角だからもっと前に出てきてくれたらいいのにな」と思いながら観ていたので嬉しい光景だった。2回目のサビ後の間奏ではステージ中央前列では卓郎さん・滝さん、後列では和彦さん・武田さん、がそれぞれ向かい合い、5人全員がステージ中央に集まるという綺麗なフォーメーションを見せ、最後には滝さんが勢いよくステージ中央に駆け込んできてその勢いのまま大きく手を三度叩いて空間をぶん殴るように動きながら曲を締めた。

これで本編が終わるのではないかと一瞬油断したが最後の曲が残っていた。ひたひたと迫ってくるような静かなイントロ、ステージ上に複数ある細長いLEDパネルは次々と血が滴るような模様を描きながら赤く光り空間に亀裂が入ったかのような、地獄の門が開くような、この時だけ別世界のような演出。ライブ本編の最後に、Dawningの最後を飾るThe Silence が待ち受けていた。真っ赤な空間でバックドロップの双頭の鷲が平伏せと言わんばかりに見下ろしてくる中、速さと重さを限界まで出すような壮絶な演奏をする様子には誇張抜きで演奏中、指一本動かせないほど圧倒された。


圧倒的轟音が鳴り止むと滝さん&武田さん→和彦さん&卓郎さん→かみじょうさん、といった順番でそれぞれステージから退場。アンコールの手拍子がしばらく続くと再び5人がステージに登場。卓郎さんがこの会場で9年前にDawningのワンマンを開催したこともありDawning攻めのセトリになったことに触れていた。「あの曲やってないというのはナシで…」とも付け加えて。

「俺たち18年目らしいですね!これからもよろしくお願いします!」と卓郎さんが言ってからのアンコール1曲目はハートに火をつけて、ライブ定番曲だがこれもDawning収録曲であり、「手触りだけの“EX TEATER ROPPONGI”は」と長いフルネームの会場名をどうにか歌詞に捻じ込んだところに特別感が出ていた。

この日最後の曲はPunishment、滝さんが曲のどこかで、残ったエネルギーを全部吐き出すかの如く凄まじいタッピングをしていた。本編ラストのThe Silenceでもそうだったが前列にいる卓郎さん・滝さん・和彦さん・武田さんが思い思いに動きまくって激しい演奏を繰り広げている後ろで、かみじょうさんが姿勢を崩さずステージ上で唯一冷静な表情でツーバスを連打していた様子が演奏面だけでなく視覚からでもこのバンドの「屋台骨」や「大黒柱」といった印象があって流石…!と。


演奏が終わるといつも通り真っ先に退場する滝さん、でもこの日は心なしか普段よりゆっくり目の足取りで頭の上で大きく拍手をしたり何度かフロアに目を向けたりしていたような。笑顔の武田さんが続いて退場、卓郎さんはまだ残っていたギターの残響音をいじってノイズのような音を出して遊んでいて、それに和彦さんが何か言っていそうな場面もあった。その後卓郎さんと和彦さんは上手下手と移動し丁寧に客の目を見ながら挨拶。昨今の状況になってからお馴染みとなった、卓郎さんによる無音の万歳三唱ではやはりシュールさと微笑ましさがあり僅かに笑い声が漏れてしまう。ドラムセットの方からステージ前方まで出てきたかみじょうさん、こちらからは何も聞こえなかったけど口の動きだけで「ありがとうございました」と言ってるのがはっきり見えた。



期待通り、Dawningの曲がたくさんセトリに入った。Zero Gravityやコスモス、Caution!!などなかなかライブで聴けない曲を9年前の縁ある会場で聴くことができた。そして全く予想外だったセルフカバー&カバー曲パートも結成日を記念するお祭りに相応しいびっくり選曲だった。あんなにも歓声を我慢するのが辛かった流れがあるだろうか。


それと、この日のセトリは曲の流れがとにかく良かった。個人的には後半のコスモスから、まず穏やかな曲調のコスモスで心が落ち着いたところに次の泡沫がスローなテンポで心身にスッと入りこみつつどろどろと深いところへ沈めていって、その暗がりの中をキャンドルの灯を のイントロがポッと心を照らし温めてゆく、というようなイメージ。

更に終盤は太陽が欲しいだけ の「もうひとりにはしない」からLiving Dying Messageの「あなたは二度と孤独にならない」そして新しい光の「君を連れて行くのさ」という流れがあまりにも綺麗に繋がっていて素晴らしかった。その流れを最後のThe Silenceで「俺は目を覚ますだろう 広がる焼け野が原〜」とそれまでの流れがまるで夢だったかのように、現実に引き戻すかのような流れに一瞬で変えて空間を一気に塗り替えた流れが本当に最高だった。


また同じくセトリの後半の話になってしまうが、9mmのライブでよく使われる照明の赤色、同じ赤を使っていたはずなのに曲によって表情が全く違っていたのが見事で、後半に集中的に使われていたこの日の赤い照明は特に印象に残った。

曲の中盤で使われた、じわじわと深みに引き摺り込むような泡沫の「赤」、その直後の柔らかく心を温めるようなキャンドルの灯を の「赤」、曲の持つ無敵のイメージを炸裂させるかのような太陽が欲しいだけ の勇ましい「赤」、純粋な情熱を表していたかのようなLiving Dying Messageの「赤」を経て、空間の全てを掌握し圧倒し焼き尽くすようなThe Silenceの「赤」。



結成18周年、とんでもないセトリで幕を開けた18周年はどんな1年になるのだろうか。この日販売開始されたグッズにもデザインとして使われていたが《1+8=9》、そして《18=9+9》でもあり、9を内包した年。何より夏にリリースされるアルバムは遂に《9枚目》と実は9だらけの1年なのでこの日のライブ以上に面白いことが必ずあるはず!という大きな期待。2022年、とてもいい年になりそうだ。


20210909/9mm Parabellum Bullet “カオスの百年 vol.14”@KT Zepp Yokohama

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すっかり“9mmの日”としてお馴染みになった9月9日。今年はバンド結成の地・横浜のKT Zepp Yokohamaにて、オープニングアクトにfolcaを迎えて有観客&生配信でライブを開催。

本当は去年の9月9日、トリビュートアルバム「CHAOSMOLOGY」リリースツアーの初日公演として全く同じ会場・出演者でライブが開催されるはずだったが、諸々の状況から有観客を断念し無観客配信での開催、更に内容や出演者が大幅に変更されfolcaは事前収録のトークパートのみ出演という形だった。1年越しで9mmとfolcaが一緒にライブに出られる日が、folcaもZepp Yokohamaのステージに立てる時が来た。



開演15分ほど前に場内へ。この日の自分の座席は1階の後ろから数列目、真ん中と下手の間くらいの位置。ステージには最初から9mmのバックドロップが掲げられていた。この日のステージは上手と下手に花道が設置されることが事前に発表されていたが、自席の位置からは花道がどのようになっているのかよく見えなかった。開演の5分ほど前にはこの状況になってから定番化した、感染予防対策と注意喚起のアナウンスが流れた。

 

場内アナウンスの前後にはいつものように「9mmメンバーの誰かが選曲したのかな」というような曲がBGMとして流れていたが、開演時刻である18時になると9mmが去年配信でリリースしたインストナンバー・Blazing Soulsが突如ボリュームを上げながら流れたため不思議に思っていると、曲の中盤でfolcaメンバー3人とこの日のサポートドラム・ピクミンさんが登場。9mmの曲をSEにして登場、という粋な幕開け。

 

演奏に入る前にボーカルのヒデさんが「ライブの始まりは元気なご挨拶から!」と言って客に出来る範囲でのリアクションを促しつつ元気に「こんばんは!!」と挨拶。これはこの数日前にfolcaの3人も出演した、9mmのYouTube LiveにてVTR出演したアルカラ太佑さんがfolcaの3人に贈った「挨拶大事!」というアドバイスを忠実に守ったものだったためその一連の流れを微笑ましく思いながら観ていた。

 

Strain

クレイジーショウタイム

WANNA WANNA Be

オーロラの種

光の雨が降る夜に

HAGURUMA

 

1曲目から照明の激しい点滅に照らされながら演奏する4人。普段からZeppクラスの大箱でライブやってますよね?と思わされるほど、堂々たる姿と轟音、こちらまで真っ直ぐに伸びてくる歌声(そしてピクミンさんの音の迫力たるや)。間奏では爲川さんがこちらの視線を釘付けにするようなパフォーマンスでソロを弾きまくる。アウトロではこの日、9月9日が誕生日であるベースのケンジさんが花道に出て来るとその空間を思いっきり使って動いていたのがとても良かったところ。続いては不穏なリフとアッパーなリズムと不思議な色気にぐいぐいと惹き込まれるような曲展開のクレイジーショウタイム、と畳みかける。コーラスワークも素敵だった3曲目、自分は恐らく初めて聴いた曲だったがその歯切れの良いリズムに自然と体が動く。

ここまでテンポ早めの曲を畳みかけていたが、4曲目でステージの空気が一変。夕暮れのような照明の中あたたかなクリーンサウンドを響かせ柔らかな歌声が会場いっぱいに広がってゆく。短い持ち時間の中で自分達の多彩な面を披露しようと言わんばかりの緩急のあるセットリスト。

 

ここでMC。ヒデさんが先ほどステージ袖にいた時にフロアが静かだったことに触れ、みんなの協力があるからイベントが開催できる、という言葉と共に客へ声を掛け、去年のリベンジとして再び対バンに呼んでくれた9mmへの感謝の言葉と「9mmのメンバー、関係者、お客さま、うちの爲川が大変お世話になってます」と多方面への感謝の言葉を続けたが、それはむしろこちらがfolcaの皆様にお返しすべき言葉である。

9月9日という、“9mm”と名乗っているバンドが大事にしないわけがない日に自分たちを呼んでくれたということに改めて、再び謝意を述べるとおもむろに聞き覚えのある音階を鳴らし始める。そのまま、9mmが普段演奏に入る前にやるお馴染みのコードを鳴らすと「バンドマンらしい感謝の返し方をします!」

 

そのまま演奏されたのは9mmのカバー、光の雨が降る夜に!昨年の9月9日、9mmとのライブが開催できなかった代わりにfolcaが生配信を行った際にも演奏された曲。キーを下げたくらいでほぼ原曲に忠実なアレンジだったが、爲川さんが普段9mmで弾いているからというのを差し置いてもとてもfolcaに似合っていた。間奏では爲川さんがオートワウを踏むと花道に出てきて演奏。アウトロに入る直前の3小節で、テンポとグッと落として勿体ぶるようにしてからアウトロへ。ヒデさんと爲川さんが見事なツインリードを披露する間にケンジさんがドラムセットの方へ近づいてピクミンさんと向かい合う。この時のピクミンさんのバスドラ連打の迫力はやはり凄かった。

 

ヒデさんが去年の9月9日は何してた?とフロアに話しかけながら再びMCへ。その時に比べたら有観客でライブが開催出来ている現状についてまだ大変な状況ではあるが確実に前進している、という話をしつつ「僕らはずっとライブハウスでライブをしています、ライブハウスは今みんな生き残ろうとして、みんなと戦おうとしています。もしタイミングと気持ちが合えばまたライブハウスに遊びに来てください。」

最後は僕たちの歴史の中で大切な曲を、と紹介してからfolcaの新譜「Heart」にも収録されているHAGURUMAを披露。演奏が終わると「今日を精一杯楽しんでください!」とヒデさんが言い、ケンジさんはアンプに置いていた梟のぬいぐるみを大事そうに持ちながら手を振って退場していった。



folcaのライブは以前にも観たことはあるので初見ではなかったが、最近はご時世的な問題もあって観に行けなかったので久し振りだった。繰り返しになってしまうけれども本当に、想像以上にZeppの広いステージが似合う演奏・パフォーマンスと佇まいがとにかく良かった。それだけにオープニングアクトということで持ち時間が30分ほど、あっという間に終わってしまったのが惜しかった。もっと観たかった。

最後の曲、HAGURUMAの前にヒデさんがMCで仰っていた言葉は、この状況でも去年からずっとフットワーク軽くライブハウスに出続けて現場を見続けているfolcaならではのものだなと思いながら聴いていた。バンドやファン達と共に最善を模索して戦い続けているライブハウスについての言及やfolcaがずっとライブハウスに出続けると、そこから状況への配慮もしつつライブハウスに遊びに来てくださいと迎え入れてくれる言葉。その言葉の一つ一つがとても力強く感じられた。きっとまたライブハウスにfolcaを観に行こう。

 

それから、あまり内容に関係のない感想ではあるが、ライブの途中ステージが暗くなった時にふとステージ天井に視線を移すと、消灯された照明器具の中にいくつか小さな光が点滅していて、それが控えめな星空のようでとても綺麗だったのを今でも覚えている。




30分ほど転換時間を挟み19時近くになると場内が再び暗転。

「Digitai Hardcore」が流れる中卓郎さん、かみじょうさん、滝さん、和彦さんがステージに登場。復帰後からは黒いスキニー姿がお馴染みだった滝さんが久々に短パンを穿いていることに気付いて驚く。和彦さんはすっかり長くなった髪をお団子付きのポニーテール、というような髪型にしていた。



Blazing Souls

Wildpitch

光の雨が降る夜に

Scenes

Endless Game

DEEP BLUE

ダークホース

キャンドルの灯を

サクリファイス

Starlight

悪いクスリ

Butterfly Effect

ホワイトアウト

 

◆メドレー◆

太陽が欲しいだけ

ハートに火をつけて

Answer And Answer

Discommunication

新しい光

The World

黒い森の旅人

名もなきヒーロー

Living Dying Message

 

泡沫

白夜の日々

Scream For The Future

Mantra

生命のワルツ

 

新曲

Punishment




9mmの4人だけで演奏を開始、先ほどfolcaもやっていた、9mmが演奏前に鳴らすお馴染みのコードを鳴らさないという珍しい幕開け。そこから始まった曲は先ほどfolcaが登場SEとして流していたBlazing Souls、曲調にぴったりの情熱的な赤い照明の中、勇ましく演奏される。1曲目から既に「いつものライブと何か違うぞ」感が出ていたが続く2曲目でそれが明確に「やばいセトリが始まった!」に変わった。和彦さんのシャウトからWildpitch!2018年のカオスの百年ツアーで演奏されて以来なのでものすごく久々ではないが間違いなくレアな選曲、しかも4人だけで!イントロで察して危うく声を出してしまうところだった。アウトロでグッと体制を低くして弾く和彦さんの姿が目を惹く。

続いては光の雨が降る夜に、1曲目のBlazing Soulsと合わせてfolcaへの粋なお返しのような流れ。間奏で卓郎さんが「横浜!」と叫ぶ、ご当地パートが聴けたのも嬉しいところ。アウトロで卓郎さんと滝さんがツインリードを弾く裏では和彦さんとかみじょうさんが向かい合って演奏をしていた。

そのまま音を止めずに繋いだ次の曲はScenes、光の雨が降る夜に とテンポが近いこともあり滑らかで綺麗な繋ぎ方だったので選曲に驚く暇も与えられないうちに曲が進んでゆく。最初のサビの「また会おうかならず」からすかさず「また会えたな!」と卓郎さんが言うものだから、咄嗟に嬉しさと涙がこみ上げてきた。次のサビではそのまま「また会おうかならず」と歌っていたので、こちらは配信で観ていた人たちに向けて贈った言葉だったのだろう。

 

ここで最初のMC。2021年の9mmの日へようこそ!と卓郎さんが笑顔で話し始める。「今日は去年と同じZeppで、去年は一緒にライブできなかったfolcaを迎えてライブを開催することができました。みんながいろんな気持ちで集まって、あるいは来るのを断念したり配信で楽しむからいいと思ってる人、それをもうここで全部混ぜて、ウイルスは全部外に出して、最後まで楽しめたらいいなと思っています。」

卓郎さんが話している途中だったか、このあたりでステージに武田さんが登場。ここからは5人編成での演奏になるようだ。

「今日は9mmの日ならではの選曲になってますからみんな覚悟出来てますか?3秒だけあげるから」と言いながら指でのサインも交えて3,2,1とカウントすると…

 

早くも卓郎さんの口から出た「いけるかーー!!!」から勢いよく始まったのはEndless Game、心の準備をする時間として与えられた3秒では足りなさすぎる曲に再び声を上げてしまいそうになるが堪える。ツーバスの凄まじい連打や高速ブリッジミュートがこちらの体を容赦なく撃ち抜いてゆく。ここから天井に何枚か設置されていた横長の長方形のLEDパネルが使用されるようになり、曲に合わせ赤地に白や黒の速そうなエフェクトが舞っていた。間奏の速弾きギターソロは滝さんが、最後のサビでのタッピングは武田さんが、それぞれ職人技のような演奏で魅せる。

重厚な“赤”のEndress Gameから爽やかな“青”のDEEP BLUEへ。9mmのライブではよく使われるこの2色の照明の、曲ごとの切り替わりが毎回美しくかっこいい大きな見所だと個人的には思っていてとても好きなところ。2回目のサビに入る直前、スポットライトに照らされながらリフを弾く滝さんの姿を、2年前のツアーのことを思い出しながら観ていた。DEEP BLUEのアウトロから音を切らずに次の曲へ、スポットライトに照らされた和彦さんの歪んだベースの音から始まるダークホース、卓郎さんが最初のサビの「生き残るぜ」の部分で歌詞を飛ばしてしまうとやっちまった!と言わんばかりの表情で笑っていた。そんなところからもどれだけ久々に演奏されたかを実感。最後のサビ前では和彦さんが再び赤と青のスポットライトに照らされ、見せ場を盛り上げていた。アウトロはギターが3人いる編成ならではのバッキング+ツインリードのアレンジだった。

ダークホースのアウトロの最後、ギターだけが鳴ってる間に和彦さんがベースをアップライトに持ち替え…ときたら次の曲はもちろん、キャンドルの灯を。ライブアレンジのイントロがないという珍しいパターンでここでもダークホースからノンストップで繋げる。イントロはトリプルリードの豪華なアレンジ。オレンジ色のあたたかい照明の中、卓郎さんの優しい歌声と力強い演奏が響く。最後に和彦さんがアップライトをクルリと一回転させる様子も、久し振りに観ることができた。

 

ここまでほぼノンストップで4曲続いたところでMC。卓郎さんが「セットリストの秘密に気付いた人いますか?」と言うのでしばし考えていると「ここまでの4曲はアルバムの9曲目を演奏しています。…正解者には帰り道で何かいいことがあると思います」と。気付けなかった、不覚。

「お気付きでしょうがアルバムは8枚しかありません。」卓郎さん曰くセトリの9曲目に9枚目のアルバムの9曲目を入れたかったらしい。どう反応していいか分からなかったような様子のフロア(自分は「なるほど~」という反応を拍手だけでどう出せばいいか悩んだ)を観ながら、拍手で大丈夫ですよと卓郎さんがフォローしてくれたので拍手で返した。では次の曲は?

「なので次に演奏する曲は9枚目のシングル、聴いてください、サクリファイス!」

 

最近はキーを下げて演奏されることがお馴染みになったサクリファイス。ステージを包む青が鮮やかだった。明確なモチーフのある曲だが、歌詞が何となく今の状況を歌っているような気もして不思議な気持ちにもなった。

ここからは先ほど卓郎さんから明かされた「アルバムの9曲目」が何だったかを考えながら聴き進めてゆく。サクリファイスから一旦音を切って、カウントから演奏に入ったのはStarlight、「Dawning」の9曲目。天井のLEDパネルには宇宙空間の星のような映像が映し出され、曲の美しい雰囲気を際立たせていた。短い間奏の後、「砂漠の中に落っこちた~」の部分で和彦さんがベースのハイポジションを弾くフレーズはとても音に丸みがあり、傍で穏やかに話しかけてくれているかのような優しさがあった。曲全体の中でも特に聴き惚れた瞬間だった。

ステージが一瞬暗転してからどっしりとしたスローなリズムが鳴り始めた次の曲は悪いクスリ、「VAMPIRE」の9曲目。バックドロップの双頭の鷲には蜘蛛の巣のような模様がかかり、サビではステージにプロペラのような3枚羽の模様が浮かぶという、不思議な世界観の曲に合わせたような不思議な照明だった。2番に入ると和彦さんがアドリブを入れたりもしていた。終始飄々とした演奏だったのがアウトロではベースとドラムがとんでもない重量の音でフロアを揺らした。

ぼんやりとした青い照明の中、悪いクスリのアウトロとほぼ同じテンポでかみじょうさんだけが音を切らずにしばらく演奏を続け、そこにギターのクリーンサウンドが乗る。アルバムの9曲目と言われた時からこの曲も入るのではないかと薄々考えてはいたがそれが的中したことを把握して、それでもまさかここで聴けるとは思わず驚きを通り越してイントロで口元がにやけてしまった。その曲がButterfly Effect、「Termination」の9曲目。濃い霧のような深い青の照明が曲の不穏な雰囲気を視覚で表す中卓郎さんの歌声がしなやかに響く。間奏での和彦さんのグリッサンドには何とも言えない心地よさがあった。終盤では細いスポットライトが数本、天井から真っすぐ光を伸ばした状態で左右にゆらゆらと揺れていて更に不穏な雰囲気を作り出していた。今までに一度だけ、ライブで聴いたことがあるがそれも11年も前のこと。Butterfly Effectを再び聴ける日が来るとは…!

“9曲目の9曲”最後を締めくくったのはホワイトアウト、「BABEL」の9曲目。ステージは真っ白な照明に包まれ、 天井のLEDも雪景色を映すという演出がエレガントなこの曲を更に繊細に飾る。最後のサビに入る前の部分のベースラインが個人的にとても好きなところで、和彦さんが身を屈めるようにして丁寧に演奏をする姿もとても良かった。

 

「さっきからおれがこうやってるのは、酒くれじゃなくて水下さいって言ってるんですけど(笑)」と飲み物を口に運ぶジェスチャーをしながら話し始めた卓郎さんは、つい先ほどまで驚愕のレア曲祭りを繰り広げたばかりとは思えないほど通常通りのゆったり口調で、つい先ほどまで最高潮に昂っていたこちらのテンションもいい意味でクールダウンしてゆく。“9曲目の9曲”どうでした?と卓郎さんがフロアに話しかけてきたので、力いっぱいの拍手で応える。

「残念ながら今年も夏フェスはおれたちのところにやってきませんで、というか世界中になかなかやってきませんで。いつになったらあれができるんだ、これができるんだっておれも思う時があるんですけど、思い悩んでもしょうがないって、それの繰り返しですよ。みんなもそうだよね。でも折角音楽やれるんだから、聴けるんだから(現地組だけでなく配信で観ている人たちにも触れていた)何かやりたいなと思って考えてきました。」

「まず9曲目シリーズね、でもこれじゃちょっと9mm配信やるから見てみようかなって人にはマニアック過ぎるじゃないかと。大体みんなも夏フェスで9mm観た時のようなあの曲聴きたいなというのがありますよね。そのすべてを満たすように、あたかも夏フェスに来たかのような、9mmのあんな曲やこんな曲をダイジェストで、メドレー形式でお送りします!!」



再びの「いけるかーー!!!」から元気に始まったのは太陽が欲しいだけ!久し振りに現地で聴いて改めてこの曲のイントロが放つエネルギーの凄まじさを実感した。ワンコーラスからアウトロまでを演奏すると次の曲、ハートに火をつけて へ。テンポが似ているため綺麗にノンストップで繋いでいた。イントロの途中から入って「ボロボロにやぶれて~」のあたりからサビへ。一瞬音を切ってAnswer And Answer、イントロからと思いきや最後のサビ~アウトロまでを演奏。メドレーが始まると同時に和彦さんが花道に出てきてずっとそこで演奏をしていて、Answer And Answerの時には花道の一番端(よく見えなかったが結構スペースがあったように見えた)まで移動して、端の席の客の近くで演奏していた。その時の和彦さんが普段の冷静な表情ではなく満面の笑みを浮かべていたので観ているこちらも本当に嬉しい気持ちになった。

Answer And Answerのアウトロが終わると突然「喋るな 心が聞き取れなくなるから」から歌い出すというトリッキーな繋ぎ方(さすがの卓郎さんも音程を取るのが大変そうだった)で入ったDiscommunication、照明は9mmでは珍しい鮮やかな黄色(近年Discommunicationは黄色の照明がお馴染みになってきた)。サビに入ろうかというあたりでずっと花道にいた和彦さんがステージへ戻っていき、アウトロのカオスパートではステージの広いスペースで勢いよく1回転してみせた。続いては新しい光、最後のサビから入ってアウトロまで。ここまでぶっ通しで5曲、全部フルコーラスの半分以下の長さでトータル数分しか経っていないはずなのに重みと満足感は充分にある。

ここで一旦テンポが落ち着く。かみじょうさんが数小節分リズムを叩くと次の曲、The Worldへ。「手当たり次第照明しよう~」からサビへ入りアウトロへ、という構成。その次は黒い森の旅人、最後のサビに入る前のクリーンサウンドのパートから入ってサビ~アウトロまで。The Worldで一旦落ち着き、続く黒い森の旅人でじわじわと盛り上がる展開から名もなきヒーローの最後のサビへ入る、という仄かな緩急のある流れが秀逸だった。サビから少し短縮したアウトロを演奏。黒い森の旅人と名もなきヒーロー、普段はどちらもサビでかみじょうさんが大きく腕を振り上げるようにしながら叩くのがお馴染みだが、この日はどちらも腕を振り上げないで叩いていた。こういう細かいところで普段と違う光景を観られたのも楽しかったところ( メドレーだったからだろうか)。

名もなきヒーローからここでも間髪入れずに次の曲へ、「最後の曲でーす!」と卓郎さんが紹介したLiving Dying Message。ワンコーラス演奏するとそのままアウトロへ入って全9曲のメドレーを締めくくった。



“あたかも夏フェスメドレー”が終わり、ほんの少しの間を挟むと、滝さんがクリーンサウンドで小気味よいフレーズを静かに弾き始める。滝さんのギターに合わせるようにフロアからは手拍子が。それがしばらく続くと卓郎さんが話し始める。

「メドレーやる時にこれ、本当に楽しいのかなと思ってたんですけど…楽しかったですね!」と卓郎さんが本当に楽しそうに言うとフロアからは大きな拍手が。

「スタジオで大丈夫かなと不安に思っていたけど、やって良かったなと思います。」と続ける卓郎さん。メドレーでそれぞれの曲を半分にしているのに、1曲分の熱量が来るねというようなことも言っていて、思わず大きく首を縦に振ってしまった。

「みんなの協力を得ながらライブをやっていますけど、そういうシリアスなところと、(メドレーについて)おれ演奏しながら笑っちゃいましたけどそういう笑えるところと両方持っていきましょうおれたちは。」

 

ここでも「いけるかーー!!!」を繰り返すと次の曲、泡沫へ。澄んだ水色の照明とLEDパネルに映る泡の模様が水底へと誘う中、心地の良い歌声が流れてゆく。バックドロップには多数の四角形で構成された模様が揺らめいていた。ゆらゆら夢現のような演奏から徐々にテンポはスローに、音は激しく重く深くなってゆく「どうして どうして~」の部分ではステージが澄んだ青から真っ赤に変わるという、抒情的な独白から激情へ移り変わる様を表現した演出は見事だった。そこから、ステージも曲調もパッと明るく、優しくなる白夜の日々に続くという流れがまた良かった。泡沫と白夜の日々、と比較的新しい曲が続いて完全に油断していたところに突然のScream For The Future、これもライブで聴けたのはかなり久々の曲だったのでライブ終盤でもまだまだ驚かせてくるセトリが嬉し過ぎる!

卓郎さんが「まだだぞー!」と叫んでからMantra限られた時間の中で1曲でも多く詰め込むかのように短めの曲を連発。この曲で声を出せない、というのはかなりもどかしさがあったけれど、その代わり和彦さんの長尺シャウトを集中して聴けたという嬉しさがあった。後半になると卓郎さんが下手花道に出てきてくれたがマイクから離れてしまったので最後の「なんとかなんのか」は滝さんが思いっきり声高に叫んだ。

怒涛のセットリストを締めくくった曲は生命のワルツ。イントロのアコギパートを音源で流し、それに生演奏を重ねてゆく。「でたらめな時代に立ち向かえ」「強すぎる弱さとの戦いで 手も足も出なくても歌があるぜ」もう6年も前にリリースされた曲なのに先ほどのサクリファイスと同様、歌詞があまりにも今の状況に合致していてどこか不思議な気持ちになると同時に、だからこそ余計に言葉の一つひとつがが胸に刺さる。躍動するステージ、終盤で和彦さんがベースを垂直にしながら弾いていたのが一際目を引く。最後にはすらっと立ってベースを高く掲げるとボディの裏を叩いて締めた。

 

演奏が終わると滝さんが退場(下手側に差し掛かると何かを飛び越えるようにしていた)、武田さんに続き卓郎さんも普段より早めに退場。ステージに残った和彦さんがいつものように上手から下手へ移動しながら深々とお辞儀をしたり手を上げてフロアに応えたりして退場。最後にかみじょうさんがドラムセットの方から出てくると、自分の席からは逆光になってしまい何をやっていたのか見えなかったが何やらアクションを取った後にゆっくりと歩いて退場していった。

 

フロアが少し明るくなるとアンコールの手拍子が始まる。しばらくは各々の早さでバラバラと続いた手拍子が、途中から会場に流れる“My Way”のテンポに合わせて揃ったのが何だか楽しかった。

手拍子の時間が少し長めに続いたのち、ステージに再び5人が登場。

 

事前に行われたYouTube Liveの中で、この日のライブで新曲を披露することが事前告知されており、配信の場合はリアルタイム視聴でないと聴けないとも言っていたのでアンコールでの新曲披露がほぼ確実、ということで楽しみに待っていた。その新曲披露について卓郎さんが説明していたのを要約すると、かつての9mmはよくライブでレコーディングなどもされる前の「幼虫、赤ちゃんという状態」の新曲をよく演奏していて、6月から開催したツアーでインディーズ盤再現ライブをやったので、そういうところも再現してみようと。そんな話だった。

 

そう言ってから演奏された新曲は、初めて聴いたのに自然と体がリズムを取れるようなノリの良いダンスナンバーで歌詞は「ファイティングポーズ」とか「踊りましょう」とか「猿のように」とか、そんな単語が入っていたのが薄っすら記憶に残っている(そしてそのリズムと歌詞から咄嗟にMonkek Discoooooooを思い出して楽しい気持ちになったりもした)。今後のライブでも披露されるのか、音源化される時にはどう変わるんだろうか…9mmのこの先の活動への大きな楽しみがまた一つ出来たことを嬉しく思いながら、今は「赤ちゃん状態」のこの曲を楽しんだ。

新曲披露も終わると滝さんがクリーンサウンドで静かにギターを弾き始め、この日最後の曲…Punishmentへ。高速カッティングから更にとんでもない速さで演奏が進んでゆく。その瞬間に天井のLEDパネルが全て砂嵐になったのは「再現不可能」だからだろうか、と考えるとあまりにも最高の演出だった。間奏では卓郎さんが再び下手花道まで出てきていた。白眉の間奏を終えて最後のサビに入る前、滝さんがギターを弾きながら元気に「ハイハイハイハイ…」と煽るように声を上げていたのが嬉しくて。最後にまた花道に出てきた和彦さんは、演奏が終わるとまだ音の消えていないベースを花道の端に置いた。この時だったか、終わった瞬間にやり切ったと言わんばかりのキリッとした眼差しを向けた和彦さんが本当にかっこよかった。

 

拍手喝采の中滝さんと武田さんが退場、和彦さんは本編終わりと同様フロアの方々に挨拶。何故か小刻みにリズムを刻むような音を出していたノイズに合わせて小刻みに足踏みするという可愛らしい仕草を見せていた卓郎さん。上手の花道に出てきたかみじょうさんが途中で花道にしゃがみこんでいたが何をしていたのかは見えなかった(近くにいた卓郎さんの様子から何やら面白いことがあったらしいと察した)。その後手にしていたスティックを上手側に投げてからゆっくりと退場していった。最後に卓郎さんがステージ中央に立ち、声出し厳禁の状況になってからの定番となりつつあるサイレント万歳三唱をしてからいつものように丁寧にお辞儀をすると、最後の最後まで楽しそうな笑顔を浮かべながらステージを去っていった。



去年から卓郎さんは「正しい怖がり方をしましょう」「元に戻るのではなく新しい形を作りれたらいい」と冷静にこの状況と向き合ってきた。この日のライブ中盤のMCでは「シリアスな面と、笑えるところと両方持っていきましょう」と言っていた卓郎さん。その話をする前のブロックが「卓郎さんがやりながら笑っちゃうくらい楽しかったメドレー」で、話の直後に演奏されたのが「近年で最もシリアスな曲展開の泡沫」だったのが流れとしてあまりにも完璧だった。

 

1年前のリベンジを果たしたライブ。夏フェス気分を味わわせてくれた特濃のメドレーを入れると全29曲というものすごい曲数。久し振りに演奏する曲を惜しげもなく大量に詰め込んだセットリスト。「アルバムの9曲目をまとめてライブで披露する」という、盲点を突かれたような選曲は“9mmの日”に相応しい、嬉し過ぎるものだった。

8年前、2013年の9月9日に9mmが当時Zepp Yokohamaと同じ新高島付近にあったライブハウス・今は無き横浜BLITZでワンマンライブ“カオスの百年 Vol.9”を開催した時には「当時リリースされていた5枚のアルバム(Termination~Dawning)の1曲目をやる」という選曲をしていた。その時のことを思い出し、今回のライブでも何か特別な選曲があるかもしれないという淡い期待を持って観に行ったが、この日実際に演奏されたセットリストは、その期待を大幅に超えるものだった。

 

かつての9mmは、ツアー中でも公演ごとにセットリストを大きく変えることが多く、「何がセトリに入るか予想できない」という大きな楽しみがあった。滝さんのお休み期間~復帰後はある程度セトリのパターンがありつつ日替わり曲が入るという流れに落ち着き(ライブをやってくれるだけでありがたいという状況だったのでそれでも嬉しかった)、ここ1~2年でライブで再び披露される曲やレア曲が入る割合が徐々に上がってきたところで、今年3月のライブでは“セットリスト予想クイズ”を開催してライブ初披露曲やレア曲を多数演奏、6月~7月のツアーでは“インディーズ盤・完全再現ライブ”を完遂、そして今回はこんなにものすごい選曲と曲数でライブをやってみせた。「毎回セトリが変わり過ぎて公演ごとにどの曲が入るか予想できなかった頃の9mm」が戻りつつあるんだなという喜びを静かに噛み締めた。

20210606/9mm Parabellum Bullet“カオスの百年TOUR 2020~CHAOSMOLOGY~”@ Zepp Haneda

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2019年の“FEEL THE DEEP BLUE TOUR”以来、約1年半振りのツアー。

元々は昨年、9mm初のトリビュートアルバム「CHAOSMOLOGY」のレコ発として各地ゲストを迎えて開催する予定だったが初日の横浜公演は中止(その代わり無観客配信ライブが開催された)、その他の公演は延期に。座席を全席指定にしたりワンマンライブに変更したりと、今の状況の中で出来る限り安全に開催するための対策を取ってようやくツアーが開催されることとなった。

開催の少し前に公演内容の詳細が発表された。二部構成で「第一幕は6人編成でBABEL再現ライブ」「第二幕は4人編成でGjallarhornとPhantomime再現ライブ」という、全く予想していなかったものだった。リリース当時、滝さんがライブ活動を休んでいたため参加出来なかったBABELの完全再現を武田さん、爲川さんという頼もしいサポーターズも迎えて全員で。そしてかなりのレア曲も含まれるインディー盤2枚の再現を4人だけで…!



開演20分ほど前に会場内へ。今回も入口では感染対策のため自分でチケットの半券をもぎり、検温と消毒を済ませて入場。ロビーにはZeppでは珍しい手書き看板と、9mmメンバーからZepp Hanedaに贈られたサイン入りポスターカレンダーが展示されており、撮影のための列ができていた。それに並んだりドリンクを受け取ったりしてから場内へ。ステージは黒い幕で覆われ、各座席には入場特典のCDが置かれていた。

自分のこの日の座席は上手側だった。事前に届いたチケットには「B列」と書いてあったので2列目に自席を探そうとしたが場内に「A列」の座席は設置されていなかった…「B列」が、この日の最前列だった。

 

定刻を少し過ぎた頃、劇場で流れるような音のブザーが鳴って開演を知らせると場内が暗転。今まで聴いたことのない、ガットギターで演奏されたようなプレリュード的なSEが流れ、ステージを覆っていた黒い幕が開くとそこには既に6人の姿が。ステージには今回のツアーのために用意された、入場特典CD「泡沫」のジャケット6ヶ所分の柄を使用したデザインのバックドロップが掲げられていた。後で気付いたがツアータイトルの「2020」の部分が「2021」と手書き風のデザインで上書きされていた。

前列に9mmメンバー4人、後列上手側に武田さん、下手側には爲川さん(自分の席からは卓郎さんのアンプの後ろから爲川さんの首から上だけが見えた)という立ち位置。ここで予想外だったのは、2017年のTOUR OF BABELではステージ前列上手にいたかみじょうさんが、ステージ前列下手、和彦さんの左隣にいたこと。



ロング・グッドバイ

Story of Glory

I.C.R.A

ガラスの街のアリス

眠り姫

火の鳥

Everyone is fighting on this stage of lonely

バベルのこどもたち

ホワイトアウト

それから



イントロから滝さんのタッピングが鳴り響くロング・グッドバイからライブがスタート。普段から比較的よくセトリに入るのでライブで聴く機会は多い曲だけれど、ギター4本というとんでもない音の厚みの特別感と、改めて「BABELの1曲目」として聴くと普段とはちょっと違う心地の良い緊張感があった。滝さんは口を尖らせながら少しリラックスしたように見える状態でリフを弾いたり、サビではオフマイクで口を大きく動かしながら歌っていたり、時折笑顔のような表情を浮かべたりしていた。最後のサビ前、滝さんがギターのペグとナットを鳴らす瞬間にスポットライトが一斉に滝さんを照らす、という演出が素晴らしかった。

続いてはStory of Glory、6人の最強の布陣で演奏されるこの曲、「おれたちは今夜無敵なんだ」の部分の、文字通りの無敵感たるや。「You and I Try to Fly~」のところは滝さんがほぼひとりで、一際大きな声で歌っていた。

I.C.R.A、滝さんが1番のAメロで素早く控えのギターに持ち替えていた。その後はアルペジオをサポーターズに任せ、カッティングを奏でる滝さん。下手に目を移すと、和彦さんがドラムセットが載っている一段高いところに足をかけて弾いていた。かつてのライブではフロアから大合唱が巻き起こっていたサビの「愛し合え」は卓郎さん、滝さん、武田さん、爲川さんが歌声を揃える。間奏のタッピングを滝さんがしっかりと弾き切った瞬間、嬉しくて思わず歓声を上げてしまいたくなったが、堪える。

ガラスの街のアリスでも滝さんが1番のAメロでギターを持ち替えていた。サビで和彦さんがステージ前方まで出てきて弾いていたのを観られたのは確かこの時だったか。2番では卓郎さんが「透明な“羽田”の星を指でなぞったよ」と歌詞を変えて歌っていた。この部分で歌詞を地名に変えるのは今までにもあったが、「羽田の星」とは何ともロマンチックな響きがあって、とても素敵だった。自分が上手にいるのでこの日は全体的にステージ上手側を多めに観ていたが、個人的に好きな部分、この曲中に数ヶ所出てくるかみじょうさんがシンバルを叩くと同時に掴んでミュートする瞬間には毎度視線を下手側に移した。

 

ここまでの激しい曲調から空気が一変する眠り姫、イントロでこの日初めてアコギの音が聴こえた。自分の席からは見えなかったが、爲川さんがアコギを弾いていたようだった。間奏では滝さんがボリュームを下げたり上げたりしながら幻想的な音を出していて、独特の空気感を作り出していた。

突然ステージがかなり濃いスモークに包まれ、原曲の半音下げキーで火の鳥の演奏が始まった。濃いスモークに包まれちょっと姿が隠れ気味になった滝さんから聴こえる、イントロの半端ないタッピングの音には何とも言えない荘厳さがあった。サビでは卓郎さんが遠くを観るように視線を移しながら歌ったり、別のサビでは和彦さんが遠くを指差すような仕草をしたりと、屋内でのライブなのに歌詞の通り羽ばたいて空高く、遠くへ飛び立ってゆく火の鳥の影が見えるかのような瞬間だった。

Everyone  is fighting on this stage of lonely、Aメロのカッティングは武田さんが担当、サビでは武田さんがキリっとした視線でギターを弾き続けるなど武田さんの見せ場が多くそちらに目を奪われた。最後のサビ、「戦え」と声高に歌う卓郎さん、その後ろで滝さん、武田さん、爲川さんが重ねた力強い歌声は強く胸を打つものだった。

そこからバベルのこどもたち、という重厚なアルバムの中でも最もシリアスな流れ。サビで白の照明を使っていたのが少し意外な気がした。6人編成で全体的にとんでもない音の厚みが繰り出されていたBABEL再現の中でもやはりこの曲の間奏の音圧は最も凄まじく、分厚い音の壁を間近で食らって身体中がビリビリするような感覚。

次のホワイトアウトでまた空気が一変。エレガントなリフが優しげでもあり、少し物寂しさもあり、全体的に重いアルバムの中で照明がバックドロップに白い四角のような模様が薄っすらと落としていた。この時には和彦さんが一際優しい手つきでベースを弾いていた。

MCを挟まずに演奏していったので、あっという間にBABEL最後の曲・それから へ。Aメロの高速ピッキングは武田さんが弾いていた。「浮かれた世界を沈めていく」で歌詞に合わせるように手を沈める卓郎さん。中盤、卓郎さんがスッとした立ち姿のまま、ほぼ動かずに独白のように捲し立て、言葉が途切れると滝さん、和彦さん、武田さん、爲川さんが激しく動き出すといった“静”と“動”の対比は視覚的にも非常に美しさがあった。最後、「わたしはあなたと乗り越えたいのさ」の一節を聴いた瞬間には反射的にこの4年間を思い出し、本当に乗り越えてこの日のステージに辿り着いた6人の姿を目の前にして、感慨深い気持ちが込み上げた。

 

「BABEL」全10曲をMCなしで一気に演奏。全体的に演奏、というよりもはや歌劇を観ているような感覚になった。照明も演奏中はBABELのアートワークを思い起こさせるような赤を基調としたもので、曲と曲の間の僅かな時間はそれぞれ青い照明になる、という切り替わりを繰り返していて、1曲ごとにまるで場面を切り替えているかのようにも見え、それも10曲を通して一つの物語を観ているかのように思わされたところ。

 

リリースから4年、2017年当時はライブに参加できなかった滝さんも一緒に、6人という大所帯でBABELという緻密なアルバムを遂に完全再現してみせた。今回のMCを挟まない形式や開演を告げるブザーの音は、2017年のTOUR OF BABELと同じだった。そんなところからも、復活した滝さんと共に遂にリベンジを果たしたことを実感した。

 

自分の目の前ということで主に上手側を観ていた。滝さんはどの曲も基本的にAメロ部分は原曲通りのリフは武田さんに任せて手数を抑えて弾いていたり、弾かずに曲のリズムに合わせて調子良さそうに体を揺らしたりしていた。

卓郎さんが何度も滝さんの方を向いてアイコンタクトを取ろうとしたり、かみじょうさんが曲に入る時にシンバルの下から覗き込むようにしてステージ全体の様子を窺うようにしていた。和彦さんは下手のかみじょうさんの方を向きながら弾いていることが多く(エフェクターボードもドラム側に置いていたように見えた)、上手からだと和彦さんの後ろ姿を見る時間が多かったが、普段のライブと比べたらそれも貴重な機会だったのかもしれない。




演奏が終わると幕が閉じ、15分の休憩を挟むことがアナウンスされた。休憩時間中はアンビエント的な音楽が流れ続けていた。

休憩が終わり客が席に着くと場内が暗転。Digital Hardcoreが鳴り響くと再び幕が開き、派手な点滅の照明の中お馴染みの巨大な双頭の鷲が描かれたバックドロップがステージの下からゆっくりと上がってきた。

ここからは4人での演奏、ということでステージ上の立ち位置も中央に卓郎さん、上手に滝さん、下手に和彦さん、後方真ん中にはかみじょうさん、という普段通りのものに変わっていた。



(teenage)disaster

Talking Machine

interceptor

atmosphere

Beautiful Target

marvelous

farther

Caucasus

Mr.Suicide

Vortex

少年の声

sector

 

泡沫



Gjallarhornの1曲目、(teenage)disasterからライブが再開。この時のアウトロは普段ライブでよくやっているようなカオス音を出すのではなく、音源通りのメロディーを弾いていた。4人だけとなり先ほどより広々としたステージで早くも滝さんが上手側を大きく動き回っていた。続いてはTalking Machine、定番曲だがいつものライブ用アレンジのイントロがなく、ここも音源通りに入る。2番の「空を見上げてるだけ」で天井を差す卓郎さん。サビに入る前には2回とも滝さんと和彦さんが大きくジャンプしていた。元気に高く飛び上がる和彦さんと滝さんの姿を見られるこの瞬間は、何べん観ても堪らなく嬉しい。3曲目は久々のセトリ入りとなったinterceptor、ということでGjallarhornも収録順に演奏されるようだとここで把握。すっきりとした青い照明の中、シャープな演奏が繰り広げられる。

atmosphere、ぽつりぽつりと続く演奏から曲調が一変して一気に轟音とシャウトを叩き付けるパートへ切り替わり、やがてベースだけが轟音の余韻を残してまたぽつりぽつり…の緩急がものすごいことになっていた。和彦さんが音の大洪水の中で床にうずくまって演奏をし始め、曲の最後までその体制で弾き続けている様子があまりにも音と一体化していて、小さくなってゆく音と一緒に溶けていってしまいそうだった。

Beautiful Targetはただひたすらリズムが気持ちよかった。声を出せない代わりに思いっきり拳を突き上げ、裏で頭を振り気持ち良さに浸っていた。最近のライブでは割と演奏されることの多かったmarvelous、中盤には卓郎さんが歌いながら拳を上げてフロアを煽っていたり、和彦さんと滝さんが思いっきり両手を上げたりととても楽しそうな様子。終盤で客も手拍子をすると会場全体ののリズムがひとつになる。カオスパートでは和彦さんと滝さんが思い思いに暴れまくっていた。

そしていつ振りに聴けたのかを忘れてしまったほどに久し振りのセトリ入りを果たした、fartherは歌を引き立たせるような演奏の中、卓郎さんがゆったりと歌声を響かせる。語尾のビブラートがどこまでも伸びていくようで美しかった。長く活動してきた中で、9mm以外のソロ活動なども経て卓郎さんが磨き上げた表現力が見事に出ていた。

 

Gjallarhorn全曲の演奏が終わると、ここでこの日初めてのMCが入る。

セトリが実質確定している今回のツアーについて卓郎さんは「出るカードは知っているけど、タネが割れている訳じゃないでしょ?」と絶妙な言い回しで表現していた。



ここからはPhantomimeの曲を演奏。これもかなり久々に聴けたCaucasus、全体的にシンプルなリズムで構成されているが、よく見るとかみじょうさんが時々スプラッシュを叩いたりしてアレンジを加えていたように見えた。時々ライブで聴けるMr.Suicideもこの流れで聴くとやはり普段とは少し違った新鮮さがあった。

Vortexも少年の声もライブで聴けたのは本当に久々だった。あまりに久々過ぎて夢を見ているような気持ちになりながら音に集中していたので、ステージの様子はあまり覚えていない。

本編最後の曲はsector、ここでもイントロはライブでお馴染みのアレンジを入れず音源通りに演奏。滝さん、和彦さんの暴れっぷりはいよいよ激しさを増し、アウトロでは滝さんがギターのネックをバットのように握って本気のフルスイングまで決めていた(ちなみに左打ちだった)。空間が轟音で満たされる中最後に卓郎さん、滝さん、和彦さんが一斉にかみじょうさんの方を向き、4人で向かい合った光景には感極まることを抑えきれなかった。

 

ライブ定番曲もありつつ数年、長いと10年くらいライブで聴けていなかった曲まで入ったセトリ。演奏力や表現力を爆上げした今の9mmがインディーズ期の曲をやるとこんなにも凄いことになるのか…と。全体を通して非常にシンプルな照明の中、ただただ音が、リズムが気持ちよくて全身で音を吸収しながら体を動かしていたり、ステージに釘付けになった。

滝さんはずっと派手に動き回っていて、演奏中にものすごい形相でマイクスタンドからピックをもぎ取ったり、膝立ちのような体制のままぴょんぴょんと跳ねたり転がったり何度も大ジャンプをしたり。滝さんがステージ前方まで来るとフロアに3人ほどいたカメラクルーの方が一斉に滝さんのところへすっ飛んできて写真を撮りまくっていた光景も楽しいものだった。広いステージを存分に使って生き生きと動き続ける様子は、ここ数年間の出来事を一瞬忘れさせるかのような、「何事もなく17周年を迎えた9mm」の姿そのものに見えた。




演奏が終わり、4人が順番に退場。

フロアが明るくなりアンコールの手拍子が続く中、しばらくするとステージに卓郎さんが再び登場。

9月9日にKT Zepp Yokohamaにて“カオスの百年 vol.14”を開催することを告知(ライブします、と言った時にマイクがハウリングしてしまって少し和やかな空気になっていた)、その日はOAにfolcaが出演することも告げられた。去年の9月9日にやるはずだったライブと同じ会場、同じ出演者。完全に去年のリベンジ公演ということになる。

この時に武田さんも再びステージに登場、卓郎さんに紹介されフロアに向かってお辞儀をしていた。

演奏を始める前に卓郎さんが言っていた言葉。表現はうろ覚えだけれど、こんなひと言だった。

「川の底にある石のように、周りが流れていっても、そこで変わらず音楽を続けていきたい。」

 

そんなひと言からこの日最後の曲にして9mmの最新曲、泡沫の演奏へ。青と白の照明が揺らめく様子はさながら水の中のようだった。滝さんが卓郎さんの1オクターブ上の音を歌う部分では澄んだファルセットが綺麗に空間に響く。中盤のテンポが遅くなり、雰囲気に重みが増す部分ではそれに合わせるかのように身を低くして弾く和彦さん。今のところ9mmで一番新しい曲、ではあるがインディー盤の曲と続けて聴くと何となく空気感が近いような印象もありつつ、曲構成などの部分などを見ると新しい9mmの要素も一緒に練り上げたような不思議な曲だなと感じた。

 

演奏が終わるとまず滝さんが退場。和彦さんと卓郎さんがそれぞれフロア中をまんべんなく見ながら笑顔を向けたり手を振ったりしていた。スティックを2本持って出てきたかみじょうさん、それを下手の方に投げ入れてから退場。最後にステージ中央に戻ってきた卓郎さんが恒例の万歳三唱(客は声を出せないため無言で万歳をする様子がどうしてもシュールで毎回笑ってしまう)、最後にもう一度こちらに笑顔を向けてから袖に消えていった。



9mmは感染対策をしながら、徐々に有観客ライブを増やしている。この日も卓郎さんは、「元に戻るのではなく新しい形を作れたらいいと思います」と言っていた。柔軟に形を変えつつ、音楽を鳴らし続ける意志を揺らぐことなく持ち続ける卓郎さんの言葉と、それと共に聴いた泡沫が、ライブが終わって時間が経ってもしばらく頭から離れず流れ続けていた。

 

一寸の隙もないような緻密に作り込まれた演奏の第一幕、BABEL完全再現。

持ちうるエネルギーを惜しみなく爆散していたような演奏の第二幕、GjallarhornとPhantomime再現。

待ち焦がれた1年半振りのツアーは丸2時間、全23曲、4人だけで演奏した曲は13曲、間違いなくここ数年のワンマンの中で一番のボリューム。立ち位置や演出も変え、対極とも言えるような二部構成で終演後には一気にライブを2本観たかのような気分になり、膨大な情報量と大きな満足感と凄いものを観たという驚きで終演後しばらく放心状態になるほどの内容だった。

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20210317/9mm Parabellum Bullet “カオスの百年 vol.13“@LINE CUBE SHIBUYA

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3月17日は9mmにとって「結成記念の(疑いがある)日」という大きな意味を持つ日であり、昨年の3月17日にはワンマンライブ“カオスの百年 vol.13“を開催するはずだった。昨今の状況のせいで丸一年延期してしまったが、2021年3月17日にようやく開催することができた。

多くのライブが時短の対応やキャパを減らすなどの対応を余儀なくされている中、全席指定のホールワンマンということもあって各方面に確認を取り万全の対策をした上で、キャパ100%でやるという大勝負に出た9mm。

 

今回のライブではレア曲やライブ未演奏曲を披露する“裏ベスト10連発”をやることが開催1週間ほど前に突如発表された。更にどの曲が入るのかを予想し10曲全て当てた人は抽選でプレゼントがもらえる企画もあり、自分もどの曲が入るか予想しながら当日を楽しみに待っていた。ライブ未演奏曲は2曲ほどしかないので予想ができたが、レア曲の方は把握できただけでも数年レベルでセトリに入っていない曲がかなりあって、10曲に絞るのが難しくギリギリまで悩んでいた。

 

当日は感染症対策のため来場者シートに個人情報を記入して提出し、検温・手の消毒・紙チケットを自分でもぎって入場。場内にも数ヶ所に消毒液が置かれていた。先行物販でも検温と手の消毒は都度実施されており、本当に出来る限りの対策を取っている印象だった。

この日、自分の座席は1階某列のほぼど真ん中という位置。開演15分ほど前に自席に着きステージを見ると卓郎さんのマイクスタンドとドラムセットの位置が完全には被っておらず、ドラムセットが若干下手寄りにあるように見えた。ステージ上はバックドロップがまだ掲げられていない状態。2度ほど流れた場内アナウンスでは感染対策の案内と、収録用のカメラが入っていることも告げられた。生配信は実施されなかったが、後日何らかの方法で公開、もしくは映像作品になるのだろうか、と少し期待してしまった。

 

定刻を数分過ぎたところで場内が暗転、Digital Hardcoreが流れると今回のために作られたロゴのバックドロップが下からゆっくりと上がってきた。大きな拍手が巻き起こる中メンバー4人と、この日のサポートギター・武田さんが登場。和彦さんはすっかり長く伸びた髪を一つに結んでいた。

 

 

太陽が欲しいだけ

DEEP BLUE

白夜の日々

Burning Blood

Heart-Shaped Gear

EQ

オマツリサワギニ

Face to Faceless

銀世界

Lady Rainy

Snow Plants

午後の鳥籠

Faust

名もなきヒーロー

marvelous

Talking Machine

Lovecall From The World

 

Discommunication

Punishment

 

 

1曲目は太陽が欲しいだけ、そのタイトルに相応しい赤い照明はお馴染みだが、普段と違っていくつかのスポットライトが同系色の細い光の線を描くようにステージに差し込んでいた。「さあ両手を広げてすべてを受け止めろ」の部分で赤い空間に上がる無数の手、それ越しに見える卓郎さん、という光景を見て序盤から晴れ晴れとした気持ちになった。続いて演奏されたのはDEEP BLUE、ステージが赤から深い深い青へ。確か昨年は一度も演奏されなかったので、レアではないものの久々に聴けた曲。出だしの「あっけなく終わりにしたくない」という一節に、この状況の中でどうにかして音を鳴らし続けようとする卓郎さん達の姿が重なった。

3曲目の白夜の日々ではステージを眩い白い照明が包んだ。ただの白一色ではなく、最初は純白のような透明感のある白、歌に入ると少しあたたかみのある白、と変化していたことに驚く。ここまで1曲ごとに赤→青→白、とステージの色が変わってゆく様子が美しかった。優しい眼差しで歌う卓郎さんは終盤で2階席、3階席の隅々まで見渡すように視線を上に向けていた。和彦さんも遠くを見るように視線を動かしていた。

 

ここで最初のMC。昨年からあまりにも有観客のライブが減ってしまったためか、卓郎さんが「9mm Parabellum Bulletです…本当におれたちです!!」と、みんなも本当だよね?と嬉しそうに話していた。この一言に聴いた直後は単純に和やかな気持ちになったが、久々にキャパ100%=今までの日常に一番近い環境で演奏できる、ライブを観られる、その喜びを凝縮したような言葉だったなと後からじわじわ嬉しくなった。

ここからいよいよ“裏ベスト10連発”へ、卓郎さんが「いけるかー!!!」と煽る。

 

裏ベスト10連発”の幕開けは滝さん&武田さんのタッピングが炸裂、昨年10月に配信リリースされたばかりのインストナンバー・Burning Blood!いきなりライブ初披露の曲が来た!!広いステージを大きめに動き回っていた滝さんが中盤ではステージ中央、卓郎さんの前あたりまで元気に出てきて弾き倒していた。終盤にはまるでプロレスの入場シーンのようにいくつものスポットライトがグルグルと派手に動き回っていて、それが余計にかっこよかった。次の曲はHeart-Shaped Gear、ここからは1曲ごとにライブで聴けたのいつ振りだ…?と振り返りながら聴き進めていった。改めて今聴くと、メロディーや歌詞の口調などに何となく卓郎さんソロ曲に通じるものを感じたり、Termination収録曲は何となく赤のイメージがあったので、ここの照明は青なんだな、意外だなと勝手に思ったりしながら聴いていた。よく演奏していた当時は1番サビ後の間奏で音源とは違うライブアレンジのメロディーが入っていたが、この日は滝さんがピックスクラッチを一発入れた以外は音源通りのメロディーを弾いていた。音域的に結構高めのコーラスを滝さんが綺麗に歌い上げていたのが強く耳に残った。

続いてはEQからオマツリサワギニ、共に2014年の武道館公演で初披露された2曲が揃って裏ベスト入り。

不穏なギターのフレーズに頭を揺らされ心を揺さぶられるEQでは転調パートの後の「生きるべきか いやさ死ぬべきか」の部分で、この一節を強く目立たせるかのようにいくつものスポットライトが一斉に卓郎さんを照らした瞬間に息を呑んだ。性急なリズムのEQとは正反対に民謡的なゆったりしたテンポのオマツリサワギニでの深い赤の照明の中どことなく和風なメロディーが流れる様子は、何となくこの世のものではない祭りを覗き見ているような雰囲気があって不思議な心地よさにすっかり陶酔しながら聴いていた。

オマツリサワギニからカウントも入れずにノンストップで演奏されたのはFace to Faceless、あまりにも綺麗に繋がって曲に入ったので一瞬どの曲に入ったのか分からないほどだった。つかみどころのない序盤からサビで核心に触れるようなシリアスな曲展開が、リリース当時よりも迫力を増していたように思えた。今回セトリに入る可能性は大いにあったとはいえ個人的にはほぼノーマークの曲だったのでびっくりだった。もちろん大好きな曲だし、かなり久々に聴けて嬉しかったけれど、驚きの方が大きかったかもしれない。

 

5曲の演奏を終えここで再びMC。卓郎さん曰く「一気にやると目眩がするかもしれないから」とのこと。本当はみんなに札を持ってもらって、セトリ予想的な意味で今どのくらい振り落とされているか?をやりたかったらしい。客側は言わずもがなだけれど、卓郎さんたち演奏する側もこの企画をそうやって楽しんでいるんだな、と思うと嬉しい。

 

裏ベスト10連発”後半戦、演奏が始まったのは銀世界。ギターとベースの音が控えめな分、バスドラの連打が一際強く目立っていて、自分の体のど真ん中を貫通するようにその振動が伝わってきた。ここまで全然気づかなかったがステージの上手と下手の端にそれぞれミラーボールが床置きされていて、それがサビで突然雪を降らせていた。思わずステージから目を離し、天井を見上げたり会場全体を見回してしまうほど美しい雪景色だった。中盤、「とぎれとぎれの文字で~君の眠りが覚める朝に」のパートを卓郎さんが丸ごと飛ばしてしまっていたが、そんなところからもこの曲がどれほど久々に演奏されたかを実感した。

ミラーボールがきらめく銀世界を作り上げた後、スポットライトが雨を降らせたのはLady Rainy 卓郎さんのしなやかな歌声とそれを引き立たせるような優しい演奏。その演奏にじっくり浸る間もなく脳裏に蘇ってきたのは2016年の野音ワンマン。この曲の演奏中に滝さんの腕に不調が出てしまった、因縁の曲。もうすぐ5年経つがあの光景は今でも忘れることができない(もしかしたら聴き手側の感情が大きくなりすぎてしまっただけかもしれないけれど)。だからついあの時のことを思い出してしまったが、滝さんはしっかりと弾ききってみせた。最初はどうしても不安な気持ちになってしまったけれど、途中から集中して聴けるようになり、演奏が終わると何とも言えない嬉しい気持ちになった。

雨が上がって次の曲はSnow Plants、再び雪の曲。ステージは熱を奪うような青に包まれていたが最後のサビに入ると雪の曲なのにいきなり照明が真っ赤に変わるという演出に驚かされた。曲全体の情景から歌詞の情念に視点を移したかのような演出に思えた。アウトロのツインリードのようなパートは上の音を滝さん、下の音を武田さんが重ね、澄んだギターの音を息ぴったりに響かせていたのが見事だった。自分は今までライブでSnow Plantsを聴けたことがなかったのでここでようやく、聴けた…!!

次の曲、午後の鳥籠もBurning Bloodと同じく今まで一度もライブで演奏されたことのない曲。4年前にリリースされてからいつ聴けるのだろうか、とずっと待ち遠しかった曲もここでついにセトリ入りを果たした。細いスポットライトがステージに何本もの縦線を描き、まるで大きな鳥籠のようだった。ようやく聴けた嬉しさに浸りつつも本当に聴けたんだ…と夢のような気分で立ちつくしてしまった。

裏ベスト10連発”最後の曲は、Faust 演奏が始まると歌詞に合わせて日差しをイメージしたのだろうか、細いスポットライトがステージの上に何本かの斜線を描いていた。

 

「どれだけ歩き続けても ここにいるただの自分が 抱きしめられない 抱きしめたいのに」

 

リリースが2008年、自分がこの曲を最後にライブで聴いたのはおそらく10年以上前。リリース当時から存在感のある曲ではあった。でも年齢を重ね演奏力・歌唱力・表現力を爆上げした状態の現在の9mmが投下したこの一節は重みが全く違っていて、同じく当時から年齢や色々な何かを重ねてきた聴く側の人間の心に想像以上にのしかかってくるものがあった。それが本当に素晴らしかった。

 

ここでのMCだったか、卓郎さんがもうマスクをしていてもここ(自分の目元を両手で囲いながら)だけで笑ってるとか、怒ってるとか表情が分かるようになったよね?だからみんなが楽しんでいるのも伝わってくるというような話をしていた。客席に向かってそれぞれの健康を気遣う言葉を投げつつ、「ライブのような特別なものが日常にあって欲しいからまたライブをしたりCDを出したりしていきたいと思います。6月にはツアーもありますから。」と今後の活動に向けての前向きな言葉も出てきていた。

 

その言葉に続いたのは名もなきヒーロー、歌い出しの時の青く染まった空間にピンクのスポットライトが線を描いた照明が鮮烈だった。6月開催のツアーという具体的な未来の話をしてからの「生きのびて会いましょう」がとてもいい意味で実態のある、現実的な前向きさのある言葉に聞こえて普段よりさらに強く心に突き刺さった。次に演奏されたのはmarvelous、直近だと2019年のライブで演奏されていたがどちらかというとレアな曲なので、“裏ベスト10連発”ではない=レア曲扱いではない!という流れに完全に意表を突かれた。前半の「分かり合えた“ことにしよう”」の部分で滝さんが客席めがけて腕を真っすぐ伸ばし、勢いよく指をさしてみせた。後半に入ったあたりでは武田さんが高速ブリッジミュートを弾きながらかみじょうさんの方を見てしっかり息を合わせている様子が見えた。

marvelousからの Talking Machineというかつてのお馴染みの流れが嬉しかった部分、イントロセクションで突然別の曲の演奏が始まった!?という感じの、今まで聴いたこともないアレンジが入っていて更に驚かされる。初期からずっと演奏され続けてきた定番曲でまだ新しいアレンジが聴ける、それが堪らなく嬉しかった。本編最後の曲はLovecall From The World、あっという間に駆け抜けるような演奏の中で滝さんが卓郎さんと共に出だしから元気に歌い、和彦さんはアンプに駆け寄ってノイズを生み出したり、一切の出し惜しみをしないぞという感じで大きく動き回ったりしていた。

 

演奏が終わると滝さんから順番に退場。武田さんもちょっと急ぎ足で袖に消えていった。いつの間にか髪が解けていた和彦さんがステージ前まで来て挨拶、卓郎さんも客席のあちこちに目を遣り、丁寧に挨拶して退場していった。

 

本編のどこだったかを失念してしまったもの、MCで卓郎さんが話し始めると滝さんがギターで陽気に演奏し始めるものの盛り上がって手拍子をしたり踊ったりする人が増えてくると演奏をやめてしまう、というくだりがあった。また終盤のどの曲だったか、ステージの前方まで飛び出して滝さんがギターを弾いている時にシールドがマイクスタンドの向こう側に引っかかってしまい袖のスタッフさんが急いで直しに行っていて、滝さんが特に元気いっぱい動いている時のお馴染みの光景なので、そんなところも観ていて嬉しかった。

 

 

アンコールの手拍子がしばらく続いた後に再び4人が登場。卓郎さんが、キャパ100%で開催させてくれた会場・LINE CUBE SHIBUYAへの感謝の言葉を述べていた。この時既に20時まで10分を切っており卓郎さんが、もう時間が少ししかないから…と急ぎつつ、「3月17日9mm Parabellum Bullet、4人で演奏します」と卓郎さんが言ってから演奏へ。大事な大事な3月17日に4人で演奏することを強く意識したようなこのひと言を聞いた瞬間、嬉しいとか泣きたいとか、そんな単純なものではない感情が湧き上がってくる感覚があった。

アンコール1曲目はDiscommunication、銀世界で登場したミラーボールが再び会場に光の粒を散りばめていた。1番のサビ後の間奏はライブの時用のアレンジではなく、音源通りに弾いていたかと思う。昨年の2Q2Qで聴いた時にも思ったが、この状況で聴く「わたしはあなたの探し物 早くここまで迎えに来て欲しいの」の一節にはつい、余計に焦がれるような気持を重ね合わせてしまった。そしてこの日最後に演奏されたのはPunishment、時間が迫る中でもアンコールに2曲入れてくれた。もはや笑ってしまうほど痛快なスピード感で土砂降りのように降ってくる音に合わせるように、床に置かれたミラーボールに点滅する照明を当てて光の粒と幾つもの放射状の線を描くことで、ステージに大嵐を起こしていた、圧巻の締め括りだった。

 

演奏が終わると滝さんが真っ先に退場。和彦さんと卓郎さんが3階席の後方まで視線を送るかのように遠くまで視線を送ったり、客席の隅々まで見回して丁寧に挨拶。最後に卓郎さんがいつもの万歳三唱を始めるが、歓声を出せないので無言で万歳を繰り返すことになり、その時だけは我慢できず客席に静かな笑い声が漏れていた。ドラムセットの後ろからゆっくり前に出てきたかみじょうさんはスティックを2本持ってきていて、1本目は遠くに投げると見せかけて前の席へ、2本目はもう少し後ろの席めがけて投げ、その後軽く手を振りながら退場していった。

 

終演を告げるアナウンスが終わると再び大きな拍手が巻き起こった。

 

 

終演後は3階席の後ろから一列ずつ規制退場が始まり誘導に従って特に混乱もなくスムーズに退場。最後まで徹底的な感染対策がされていた。

本当に久しぶりのキャパ100%ということでどんな感じになるのだろうか…とも思っていたが、最初から最後まできちんとした対策があり、指定席の会場で自分の両隣の席に人が座っているのが久々だったのでライブ中にうっかり腕が当たってしまわないように…と少しそわそわしてしまった以外はそんなに不安もなかった。自分の周りは自席で声を出している人はほぼいなかった(最後の万歳で堪えきれなかった小さな笑い声くらい)し、隣に人がいるとはいえその感覚は椅子を出した状態のライブハウスとさほど変わらなかった気がする。

 

卓郎さんの言葉通り、1年延期になったからこその特濃セットリストだった。ライブ初披露曲のBurning Bloodと午後の鳥籠の他、どれも数年振りに聴けた8曲も詰め込んだ“裏ベスト10連発”はもちろん、それ以外にも久々のDEEP BLUEやまさかのレア曲ではないところに入ってきたmarvelousなど、全体的に普段とは様子が違う選曲に驚かされっ放しだった。このセトリを弾きこなした武田さんが凄すぎる!感謝してもしきれないという気持ちです。

 

Faustを聴いた時に特に強く思ったが、何年もライブで演奏されていない曲を今の9mmの表現で、またギターがひとり多いという大きなプラスのアレンジができる状態で聴くとリリース当時、もしくはライブで演奏されていた頃とまた違う捉え方ができるので本当に楽しい。ここまでのレア曲ずくめというわけにはいかないかもしれないが、もしかしたら今後もライブで少しずつ、久し振りの曲を聴けるようになるかもしれない。

そして久々となったキャパ100%のライブ、もう少し日にちが経って結果的に何の問題もなく終われていれば、今後も同様に会場等の条件が合えば同じ環境でライブを観る機会が増えるかもしれない。

そんな風に、今後の状況への楽しみや希望を持てたことも嬉しいライブだった。

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20210120/ THE BACK HORN&9mm Parabellum Bullet “荒吐20th SPECIAL -鰰の叫ぶ声 - 東京編”@昭和女子大学 人見記念講堂

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ARABAKI ROCK FEST.の20周年を記念して1月19日・20日の2日間にわたり開催された、THE BACK HORN9mm Parabellum Bulletによるライブの2日目。

この日は前半の40分がバクホンのライブ、後半が9mm&バクホンによる合同バンド“鰰の叫ぶ声”とメンバーをシャッフルしたバンド“黒組”と“白組”でのライブ、という流れ。ステージには前日と同じく最初から2バンド全員分の機材が並んでいた。この光景だけでもかなり貴重なものだなと思いながらステージを眺めていた。

 

18時を過ぎるとお馴染みの荘厳なSEが流れ、客席から拍手や手拍子が起こる中バクホンのメンバーがステージに登場。

 

コワレモノ

ブラックホールバースデイ

心臓が止まるまでは

美しい名前

瑠璃色のキャンバス

シンフォニア

太陽の花

無限の荒野

 

聴いた瞬間に体を揺らしたくなるような軽快なリズムのセッションが始まる中、手拍子を煽る将司さん。そこから低いベースの音へ繋がるコワレモノからライブがスタート。サビまでのどこか飄々としたパートの時には青、サビで演奏の熱量がグッと上がると赤、と視覚的な面でもメリハリを強調していた照明が見事だった。1曲目ながら終盤では将司さんと栄純さんの動きが段々と激しくなっていった。続いてはブラックホールバースデイ、サビの「手を伸ばせ 一人消えてしまうその前に」の一節に声が掠れるほどの力を込めていた将司さんの歌声が、確かな救いを感じさせるように頼もしく響いた。

 

演奏が終わると松田さんが話し始める。「“鰰の叫ぶ声”2日目、THE BACK HORNがやらせて頂いてます。昨日“鰰の叫ぶ声”で演奏しましたがTHE BACK HORNとしては今年最初のライブということで。荒吐でやる予定だったこのライブ、先に東京編を開催することになりましたけど、同じ時間を共有できることを嬉しく思っています。」

 

「生きるための言葉を刻もう」という歌い出しから始まる、心臓が止まるまでは サビではリズムに合わせ客席からたくさんの手がゆらゆらと伸びる光景が目に焼き付いている。「生き抜くために」とか「生きたがって」とか、何度も何度も曲中で歌われる言葉に心をぐいぐいと引っ張られるような感覚になった。

一旦暗くなったステージの中を穏やかなギターの音が流れてゆき、岡峰さんの儚げなベースの音から美しい名前 へ。先ほどまでの力強さとの対比もあり、一つ一つの音や言葉が余計に切実なものとして刺さる。最後の音が消えていくと一瞬の静けさの後に大きな拍手の音が響いた。

 

ここで話し始めたのは将司さん。「ライブに行く機会もやる機会もなくなって、ライブというものに日々生かされているんだなと感じてます。久し振りにライブすると感情が乗り過ぎて泣いてばかり」という突然の告白。それだけ心を動かす場だったんだな、というようなことも話していた。

 

そんなライブへの想いが溢れた話から、昨年6月にリリースされたバクホンの最新曲、瑠璃色のキャンバス へ。この曲だけ将司さんはギターを弾きながら歌っていた。曲名に合わせるかのように青一色に染まったステージに優しくあたたかなメロディーが広がる。「約束するよ僕ら また会う事を」という一節に昨年の困難な状況の中での祈りのような気持ちと、この困難は必ず乗り越えられるという想いを感じる。この前日には9mmが、同じく昨年あの状況下で作られた白夜の日々 を演奏していた。瑠璃色のキャンバスと白夜の日々、曲調は全然違うけれど曲に込められたものはとても近い。前日に卓郎さんがバクホンと9mmについて「似てる、というわけではなくて何かが近いんだなと思った。」と言っていたのを思い出した。

続いてはシンフォニア ハンドマイクに戻った将司さんがステージの上手辺りを歩きながら歌い始める。イントロや間奏などでは将司さんが客席に向かって大きく両手を動かし煽る。「帰る場所なら“ARABAKI ROCK FEST.”にあるから」と歌詞を変えて歌っていた。オレンジの鮮やかな照明が華やかさを際立たせた太陽の花、演奏や歌声は力強いがメロディーに何となく可憐な印象もあり、それが本当に美しいものだった。「君が 君がまだ 辛いなら 何度でもこの手伸ばすから」の一節には瞬間的にステージに向かって手が伸ばしてしまった。

最後の曲は無限の荒野、自分が観たバクホンのライブではコバルトブルーからの刃でライブが終わることが多かったのでかなり久々に聴けた、それだけで嬉しかった。将司さんが思いっきり力を込めて「否、まだだ、ここでは死ねない」と叫ぶ声に気持ちが強く昂った。

 

全体的に気持ちを強く奮い立たせるような、腹の底からものすごいエネルギーを引っ張り上げるような、バクホンの不屈の魂そのものと言うべき生命力に溢れたセトリだった。バクホンのライブを会場で観たのが久々だったので、太陽の花や瑠璃色のキャンバスなど比較的新しい曲を初めて目の前で聴けたことも本当に嬉しかった。

 

 

バクホンのライブが終わり、この日も休憩・換気タイムを挟んでから再び場内が暗転。本家荒吐と同じSEの三味線の音が流れバクホンと9mm両バンドのメンバーが登場し、ここからは合同バンド“鰰の叫ぶ声”のライブ。バクホンのライブの時に黒いシャツを着ていた将司さんは白シャツに、白っぽいTシャツを着ていた松田さんは黒っぽいTシャツに着替えていた。前日将司さんに「明日は光舟と同じ髪型にするんでしょ?」と言われていた和彦さんは、変わらず長い髪を一つに結んでいた。

 

8人全員で演奏されたのは前日と同じくコバルトブルー、そしてハートに火をつけて。ハートに火をつけて ではこの日も卓郎さんが「手触りだけの“人見記念講堂”は」と歌詞を変えて歌っていた。2日目だからなのか、この時点で既にステージ上の動きが前日よりも明らかに激しくなっていて、伸び伸びと演奏しているような印象だった。勇ましい将司さんの歌声としなやかな卓郎さんの歌声、正反対のように思える2人の声が重なると驚くほど相性がいい。オクターブで同じフレーズを重ねる栄純さんと滝さんのギターの音が嬉しい。松田さんとかみじょうさんの息ぴったりな様子はスティックの動きから伝わってきたが、場所柄2人の表情はよく見えなかったので、どういう風にアイコンタクトを取っていたのか気になる…。そして岡峰さんと和彦さんは2人で並んでいる様子を遠目から見ると、やっぱり似ている。

 

ここからは卓郎さん・栄純さん・和彦さん・岡峰さんの4人=黒組のライブ。

こんばんは、と挨拶する卓郎さん。「我々が“鰰の叫ぶ声”です。今ステージに残っているのが“黒組です。”」と自己紹介。全員黒い衣装を着用。前日には白シャツに黒のロングジャケットという出で立ちだったが、この日はシャツまで黒。

偶然にも両バンドのよく喋る人達が集まった黒組は、「昨日黒組が喋り過ぎたせいで白組の話すことがなくなった」と言われたらしい。「だから、こっちは関係ないこと喋っとけば白組が本題を喋れるよね。」と栄純さんが言った。卓郎さんが関係ない話と言うか、昨日言い忘れた話で…と前置きをしつつステージに掲げられているバックドロップが“鰰の叫ぶ声”が出演するはずだった荒吐のHATAHATA STAGEのものであると紹介していた。まそれを受け松田さんが「だから、荒吐への思いも背負ってライブをしているような気持ち。」と話していた。

そんな話をしている中、栄純さんが突然「卓郎って本当にいい声だよね」と言うと卓郎さんが「そんなに褒めてもらえるとシャツのボタン1個外しますけど」と返しながら首元に手をかけると栄純さんが「同じ個数になったね!」と、松田さんが「“菅”同士だからね」と続けるなど、時間があればいつまでも話し続けてくれそうな感じだったが、ここで会話を切り上げて曲へ。

 

卓郎さんが「いけるか東京!!」と言ってから始まったのはVampiregirl  栄純さんが2番に入ったあたりで卓郎さんの方を向き、両手を横に伸ばすという不思議なポーズをしていた。間奏での栄純さんの振り切れっぷりが凄まじく、大きく頭を振りながらギターソロを弾いていた。そんないい意味での荒々しさもありつつ、やはりどこか淑やかさを感じさせるところが絶妙だった。続いては罠 前日に聴いていた時にも思ったが、やはり卓郎さんの柔らかく伸びてゆく歌声が、将司さんとは違うベクトルの貫禄があってこの曲に抜群に合っていた。

 

黒組と入れ替えにステージに将司さん、滝さん、岡峰さん、かみじょうさん=白組の4人が登場。

真っ先に話し始めたのは岡峰さん。「昨日滝くんが白着ないって言ったから、今日は白黒の服にしました。」と言うと滝さんが岡峰さんの方を向いて反応を返していた。続いて、この日も白のロンTを着ていたかみじょうさんに向かって「ちーちゃんは昨日もそれ着てたけど洗ったの?」と聞くと、かみじょうさんが首を縦に振っているのが見えた。そこへ将司さんが自分の着ている白シャツについて「俺も洗った、これ1着しかなくて。」と会話に入っていった。将司さん曰く「白のロンTにしようと思ったが、リハで着たら学生みたいになってしまった」とのことだが、岡峰さんに「そっちの方が学生っぽい」と言われてしまう。

そんな中でも普段通り喋らない滝さん、かみじょうさんを見つつ将司さんが困ったときに気候の話を出してしまう…と「今日は大寒らしいですね」と話しを続けてみたりもしていた。

岡峰さんが話題を変え、「ステージに8人もいると(配信用の)カメラマンさんやスイッチャーさん(配信画面を切り替える人)もどこ選んだらいいか分からないよね。4人になると喋らないから、滝くんとちーちゃんだけ映しといてください!」と言ってみたり、2人が話している間ギターで静かな音を奏でていた滝さんに将司さんが「滝くんはギターでお喋りしてるもんね。」と声を掛けたりしていた。

 

眩い光に包まれたステージで演奏されるThe Revolutionary 間奏に入ると滝さんが将司さんのところにすっ飛んできて2人でツインリードのソロを弾き始めると、岡峰さんもそこにやってきて中央に3人集まって弾いていた光景が嬉しかった。将司さんが思いっきり叫んだ「世界を!!!」の瞬間は、その一言だけで本当に世界を変えてしまいそうなほどの迫力があった。滝さんとかみじょうさんの音がさすがの重厚感を放っていた戦う君よ では将司さんと滝さんが朗々と歌声を重ねる「今はまだ闇に震えていても 笑いあえる日が来る」の一節に心を鷲掴みにされた。

 

将司さんが黒組の4人を呼び込み、ステージ上に再び8人が揃った。将司さんと卓郎さんが「今年の荒吐は無事に開催されることを願っています」「何かしら工夫して、違う形で開催された時にはきっと我々はライブやりますから。開催された時のためにみんな、めっちゃ良かった、って発信してください」卓郎さんが「来てくれてありがとう」というと将司さんが「配信も観てくれてありがとう」と言ってから足元のカメラを覗き込むようにしている様子が見えた。

 

卓郎さんが「いけるかー!!!」と叫ぶとすかさず将司さんが「行こうぜー!!!」と続け、刃からはステージ上が完全に無敵状態に入ったようなテンションでの演奏が始まった。アウトロでは前列の6人が全員でコーラス。和彦さんもあの低い位置にあるマイクでコーラスに参加していた。オクターブ下を歌う声も聴こえたが、誰の声だったかは分からなかった。

将司さんの「元気でね、また生きて会おうぜ」から最後の曲、Black Market Blues この日も卓郎さんが「 人見記念講堂に辿り着いたなら!!」と歌っていた。2番に入ると和彦さんと岡峰さんが2人でアンプに向かい合って一緒にノイズを出していた。終盤でかみじょうさんがフロント全体を見回すように下手側から上手側へ目線を移している様子が見えた。最後は前列6人がかなり振り切れたテンションで動き回っていて、ステージ上の全員がこの時間を思いっきり楽しんでる様子に最高に気持ちが昂った。ただただ楽しかった。

 

 

20時までに終わらなければならないためか、この日もアンコール無くライブが終了。8人が次々と退場する中、栄純さんが客席に向かって元気に手を振ったり、卓郎さんが短めにお辞儀をしたり、一番最後に残ったかみじょうさんもゆっくりと手を振ったりしていた。ステージ上に誰もいなくなり、終演のアナウンスが流れると再び大きな拍手が巻き起こった。

 

 

バクホンと9mm、対バンしたりそれぞれのライブに誰かがゲストや代打で出演したりということは何度もあったが、8人全員で一緒に演奏する機会は今までなかったので、実際に8人で演奏するとこんなにも壮観なのかと圧倒されっ放しだった。言葉にすると単純に聞こえてしまうかもしれないけれど、本当にものすごく元気が出た。この状況にすっかり疲れて心の中に溜まったもやもやとしたものを全部吹っ飛ばしてくれたような、きっとまだやれるぞ、という思いを分けてもらったような気分になった。また少し経って心が疲れても、あの8人のステージを思い出せば頑張れるような気がする。

 

上手を見れば栄純さんと滝さんが元気いっぱいに動き回っていて、下手を見ればどことなく似ている岡峰さんと和彦さんが並んで仲良く全く同じ動きをしていたりして、ステージ中央では舞うように動き回る将司さんと笑顔の卓郎さん、後方では松田さんとかみじょうさんが息ぴったりにドラムを叩く…ステージ全体が視界におさまるくらい後方の席で観ていたのに、8人での演奏はあまりにも見所が多過ぎて目が2つでは全然足りないほどだった。

初日も本当に素晴らしいライブで、とても楽しかった。しかし2日目の全員の伸び伸びとした様子や振り切れっぷりは凄かった。“鰰の叫ぶ声”3度目のライブになる荒吐は、この2日間を更に超えるはず。こんなに素晴らしいステージ、絶対にこれだけで終わらないで欲しい。4月の荒吐が、どうか無事に開催されますように。荒吐のステージで再びこの8人が演奏できますように。

 

◆鰰の叫ぶ声(全員)

コバルトブルー

ハートに火をつけて

◆黒組(菅原卓郎・菅波栄純・中村和彦・松田晋二)

Vampiregirl

◆白組(山田将司・滝善充・岡峰光舟・かみじょうちひろ)

The Revolutionary

戦う君よ

 

◆鰰の叫ぶ声

Black Market Blues

 

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20210119/9mm Parabellum Bullet&THE BACK HORN“荒吐20th SPECIAL -鰰の叫ぶ声 - 東京編”@昭和女子大学 人見記念講堂

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 1月19日・20日の2日間にわたり開催された、THE BACK HORN9mm Parabellum Bulletによるライブ。ARABAKI ROCK FEST.の20周年を記念した企画で、本来は昨年4月にバクホン&9mmの総勢8人で荒吐のHATAHATA STAGEに出演し、その後5月9日・10日に東京の人見記念講堂でライブをする予定だったがどちらもこの状況で延期となってしまった。

東京編は昨年4月の時点で延期後の日程が1月19日・20日に決定しており、延期に伴う払い戻しでキャパが50%を下回ったため、有観客と生配信にて開催されることになった。昨年の時点で延期の報せを聞いた時には、来年にはこの状況も収まり無事にライブが開催されるだろうと思っていたので、まさかここまで状況が悪化するなんて…。

 

会場では感染対策として、来場者は入口で個人情報を記入したシートを提出、消毒・検温の実施、チケットの半券は自身でもぎり入場、そして市松模様のように一席飛ばしに配置された指定席で観覧するという形式。そのため空席には「この座席はご利用いただけません」の貼り紙を、使用する座席には元々書かれている番号の上にこの日のために配置を変えた席順に対応する番号が貼られていた。

この日は前半の40分が9mmのライブ、後半が9mm&バクホンによる合同バンドとメンバーをシャッフルしたバンドでのライブ、という流れ。ステージには既に2バンド全員分の機材が並んでおり、その後ろには格子状の骨組の照明機材とともに荒吐のHATAHATA STAGEと同じバックドロップが掲げられていて、本家荒吐のステージをそのまま東京に持ってきたようだった。

 

18時過ぎに場内が暗転、お馴染みのSEであるDigital Hardcoreが流れ9mmメンバーとこの日のサポートギター、武田さんがステージに登場。

 

太陽が欲しいだけ

Answer And Answer

白夜の日々

サクリファイス

Supernova

The World

名もなきヒーロー

新しい光

Talking Machine

ロング・グッドバイ

 

太陽が欲しいだけ からライブがスタート。「さあ両手を広げて全てを受け止めろ」の部分では客席から無数の手が上がり、この一節を歌い切った卓郎さんも笑顔で両手を上げていた。アウトロでは滝さんがモニター前に飛び出しながら轟音を出し、和彦さんは派手に回るように動いていた。続いてAnswer And Answer 、滝さんが続けてモニター前やお立ち台でギターを弾き続ける。間奏では和彦さんがモニターを軽々と飛び越えてステージ前方まで出てきていた。開幕から2曲続いたカラッとした明るさの曲たちを、清々しい気持ちで聴いていた。

白夜の日々ではステージが眩い白に包まれ、その中を煌びやかなメロディーが流れてゆく様子が美しかった。「流されずに 生きるために 君に会いに行くよ」の一節が、この状況下でも出来る限りの最善を尽くしてライブを開催してくれた彼らの姿と重なって聴こえた。最後の一音が鳴り終わるとかすかに残った余韻が空間いっぱいに広がって消えていった。

音が止まりステージが暗くなる中、卓郎さんが「ありがとう!」と言うと客席から拍手が巻き起こる。歓声を上げることができない代わりに拍手をし続けた。それは他の人も同じだったようで、長い間拍手が鳴り止まなかった。

 

ステージが明るくなり、卓郎さんが話し始める。「みんなの長い拍手でちゃんと気持ちが、声が届いてるので。なかなかこれまでのライブとは違いますけど、その調子で楽しんで下さい。」卓郎さんが話している間、滝さんがギターで何となくバイオリンのような音を奏でていた。

「9mmは今年初ライブなので、新年一発目をみんなと過ごせてとても嬉しく思います。今日も明日もここに来た人も正解だし、今日来ない、家で観ようと思った人も正解だと思うからそれぞれの場所で余すところなく楽しくやってください。」この言葉に再び大きな拍手が起こった。

 

卓郎さんが「次の曲は昔ここで9mmがやった時におれがイントロを弾こうとして盛大にミスった曲」と紹介してから始まったのは、サクリファイス。ステージが真っ青な空間に変わる。昨年のライブで演奏された時もそうだったが、原曲よりキーを下げての演奏。1サビ後のパートを滝さんと武田さんがオクターブで引いているように聴こえた。間奏後、真っ青なステージに差し色で赤が入った瞬間の鮮やかさがとても良かった。最後のサビでは滝さんが卓郎さんのパートを追いかけるようなコーラスが入れられていた。

サクリファイスのアウトロから音を切らずにそのままSupernova へ! この繋ぎ方が本当に綺麗で、思わず歓声を上げそうになってしまった。久し振りに聴けたのでそれも嬉しかった。終盤では和彦さんのシャウトと同時に滝さんが広いステージを動き回り何度もギターのネックを振り下ろしていた。The Worldでは間奏あたりで放射状に広がる光がいくつもステージを彩っていた様子がクリーンのアルペジオにとても合っていた。「目を凝らして焼き付けてみる 明日も僕らが生きていく世界を」の一節はやはりどうしても今の状況を重ねながら聴いてしまう。最後にかみじょうさんが左右のシンバルに両手を静かに落として音を止める様子が見えた。演奏が終わると暗くなるステージの中で卓郎さんが丁寧にお辞儀をしていた。

 

滝さんがギターで重たい電子音のような不思議な音を奏でる中、卓郎さんが会場である人見記念講堂についてここは本当に素晴らしいホールですね、内装も美しいし、と話し始める。

「9mmの演奏が終わったら、9mmとTHE BACK HORNが合体して“鰰の叫ぶ声と”いうバンドとして登場しますので、楽しみにして頂いて。すごいよ!」「THE BACK HORNとおれたちのことを好きでいてくれるみなさんは、いつかこういうことが起こるんじゃないかと思ってたかもしれませんが、今日がその日だということで。」

「今日はおれたちと“鰰の叫ぶ声”、明日はTHE BACK HORNと“鰰の叫ぶ声”なので先攻と言いましたが、まだ俺たちの攻撃は少し残ってるから。いってもいいですか?」

 

卓郎さんの「いけるかーー!!!!」から名もなきヒーローへ、 ステージ後方の照明が青とピンクの強い光を放っていて、ホールの大空間の天井まで薄っすらと染め上げていた。サビの「また明日」で真っ赤な照明に切り替わるのはこの曲での定番の流れ。「勝ち目が見当たらなくたって 逃げたくないから笑ってんだろ くじけそうな心をふるいたたせて」の一節が、この状況で沈みきった心を引っ張り上げてくれるように力強く響いた。最後のサビの、優しく広がる滝さんのファルセットが心地よかった。

名もなきヒーローのアウトロからカウントも入れずそのまま新しい光へ!照明も一瞬名もなきヒーローと同じ青とピンクを入れた後に真っ白な光に変わっていて、その流れも2つの曲がひとつになったようで良かった。2回目のサビ後にステージ中央を挟むようにして和彦さん・卓郎さんと武田さん・滝さんがギターやベースのネックを立てるという綺麗なフォーメーションを見せる。声が出せない客席、最後のサビでは歌声の代わりにいくつもの拳が上がった。

滝さんが飛び跳ねながらギターを弾き、卓郎さんがマラカスを振るライブアレンジの繋ぎからTalking Machineへ。曲に入る時の「1,2,3,4!!」は卓郎さんがマイクから少し離れ、 オフマイクに近い状態で思いっきり叫んだ。「踊れー!!」と卓郎さんに煽られれば、体を動かさずにはいられない!2サビに入る瞬間に滝さんと和彦さんが同時に大きくジャンプ、かみじょうさんも大きく頭を振りながらの演奏。アウトロの入りで卓郎さんが「踊れ踊れ踊れー!!」と更に煽り、滝さんの動きも一層大きくなっていった。

最後の曲はロング・グッドバイ、イントロでこの日一番の轟音を叩き付ける。1サビ後に滝さんがタッピングする瞬間に上側の後ろの照明、アウトロでは和彦さんが思いっきり体を屈めてベースを弾いた後に思いっきり蹴り上げるように立ち上がってぐるぐると回ったり、滝さんも最後に大ジャンプを決めていた。

 

演奏が終わり拍手が巻き起こる中、卓郎さんがステージ中央でお辞儀をする瞬間に拍手の音が止まり、卓郎さんのお辞儀を見届けると再び大きな拍手の音が巻き起こっていた。滝さんと武田さんは早々に退場し、卓郎さんに続いて和彦さんが客席に向かって拳を向けるようにしながら退場、最後にかみじょうさんが客席に大きく手を振って袖に消えていった。

 

広々としたステージを最大限に生かすように、和彦さんと滝さんが終始大きく動き回っていた。下手の和彦さんはすっかり伸びた髪を振り乱しながら何度も回ったり、大きくジャンプしたり。上手の滝さんはお立ち台に上ったりステージ端まで行ったり、ギターのネックを振り回したり。上手の壁に滝さんのすらっとした影が大写しになる様子も大きい会場ならではの光景だった。

この日、9mmがステージに登場する際にいつも通りAtari Teenage Riotの「Digital Hardcore」が流れたが、実は昨年は配信ライブ・有観客ライブともにこのSEは使われなかったため、Digital Hardcoreで入場するといういつもの光景を観られたのは何と1年振りだった(権利関係など何らかの都合で流せなかったのではないかと思っている)。それも嬉しかったところ。

卓郎さんがサクリファイスの時に「昔ここでイントロをミスった」と言っていたが、それは2017年7月の“TOUR OF BABEL Ⅱ”での出来事。その公演は当時ライブ活動をお休みしていた滝さんがアンコールで一時復帰を果たし、ロング・グッドバイと新しい光を演奏したライブでもあった。今回再び同じ場所で新しい光もロング・グッドバイも演奏され、卓郎さんの思い出話も出てきたので2017年当時を思い出しつつ、2021年に同じステージで滝さんが元気に演奏している姿を観られることを本当に嬉しく思いながら聴いていた。

 

 

9mmのライブが終わり、休憩・換気タイムを挟んでからロビーに出ていた客が自席に戻り再び場内が暗転すると、三味線の音が流れ始める…それは荒吐で使用されているSEだった。それに合わせ9mmとバクホン、両バンドのメンバー8人がステージに登場。拍手は途中で三味線のリズムに合わせた手拍子に変わる。前列は下手から和彦さん・岡峰さん・卓郎さん・将司さん・栄純さん・滝さんの順に並び、後列には左にかみじょうさん、アクリル板のようなものを挟んで右に松田さん、という並びでドラムセットが2台。和彦さんは髪を一つに結び、卓郎さんはアコギを構えていた。

 

松田さんとかみじょうさんが同時にドラムを叩き始め、栄純さんと滝さんがイントロのリフをオクターブで弾く、コバルトブルーからこの特別な編成のライブがスタート。歌い出しは将司さん、「変わらないこの世界~」の部分からは卓郎さんと滝さんが2人で歌声を重ねる。サビでは将司さんの勇ましい歌声と卓郎さんのしなやかな歌声が重なる。ギター3本、ツインベースにツインドラムという大所帯の編成には高揚感が止まらなかった。

2曲目はハートに火をつけて。将司さんの歌声と栄純さんのギターの音が乗るといい意味で不穏さが出ていて、もうバクホンの曲なのでは?という雰囲気さえあってそれが堪らなくかっこよかった。序盤で岡峰さんが、自分の弾くところを忘れてしまったようで途中で気付いて弾き始め、それを横で観ていた和彦さんが手を叩いたり岡峰さんを指さしながら爆笑するという微笑ましい場面があった。間奏後には卓郎さんが「手触りだけの“人見記念講堂”は」と歌詞を変えて歌っていた。

 

演奏が終わるとステージが暗転。しばらくして照明が点くとステージには卓郎さん、和彦さん、栄純さん、松田さんが残っていた。

「おれたちが“鰰の叫ぶ声”です!」と自己紹介をする卓郎さん。この名前は、荒吐のボスである菅さん(主催のGIP・菅真良さん)が名付けたらしい。その話をしながら「菅」原卓郎さんと「菅」波栄純さんが、ややこしいよねーと言い合っていた。“鰰の叫ぶ声”は2つに分裂するんですよ、9mmとバクホン、ではなく混合バンドに…この4人は便宜上“黒組”という名前である、と話を続ける卓郎さんと松田さん。(それを聞いて栄純さんがもう本番なのにまだ便宜上なんだ?と返していた。)そしてステージから退場した残りの4人が“白組”とのこと。9mmのライブ中は白シャツ1枚だった卓郎さんが後半になって黒いロングジャケットを着て出てきたのは、黒組だからということか。

卓郎さんが「だから、黒白(こくはく)歌合戦ですよねー」と言うと松田さんが「過去に決闘披露宴(2014年開催)という2マンもやったし、“披露宴”とか“こくはく”とか、何か縁があるんですよね」と続け、それに対して卓郎さんが「何でLOVE寄りなんですか!」栄純さんが「ラブコメ感あるのかな」とそれぞれ返すなど、しばらく3人のほんわかしたやり取りが続いた。

 

「お互いの曲を演奏していきます」と卓郎さんが言ってからの1曲目は9mmの曲、Vampiregirl 松田さんのドラムの丁寧さのおかげか普段よりほんの少し淑やかさを感じさせていたのが新鮮で、とても良かった。間奏に入ると上手では栄純さんがアドリブも混ぜながらソロを弾き、下手では和彦さんがモニター?に座ってベースを弾いていた。終盤では和彦さんがいつものように大きくぐるぐると動き、栄純さんも大きく頭を振っていた。

続いてはバクホンの曲、罠 卓郎さんの歌声は9mmの時よりも柔らかく、それがかえって曲にどろどろとした凄みと何とも言えない美しさを出していた。

 

演奏が終わると卓郎さん・和彦さん・栄純さん・松田さんが退場し、入れ替わりに将司さん、岡峰さん、滝さん、かみじょうさんが登場。滝さんは変わらず黒いTシャツだったが、先ほどまでそれぞれ黒っぽい服を着ていた岡峰さんとかみじょうさんが白いロンTを着て出てきた。将司さんは最初から白いシャツを着ていたので4人中3人が白を着ているという出で立ち。

最初に話し出したのは将司さん。「どうも白組です…大事なことはもう卓郎が全部言ったね。皆さんご存じの通り、心が白組と心が黒組ということで…」と言うと客席から堪えきれず笑い声が漏れる。

岡峰さんが「滝くんとちーちゃんは喋らないの?(無言で同意する2人)じゃあ白は全然喋らないね。黒組のドラムの人凄い喋るからね…“黒いドラム”っていいね。」と言った時に、確かに普段両バンドでMCをやる人達がみんな黒組だったことに気付く。喋り慣れていない将司さんと岡峰さん、時折話し始めが被ってしまい譲り合う場面もあった。

1人だけ黒い服だった滝さん、岡峰さんは「滝くんに、俺ら白着るけど…まあ着なくてもいいんだよ」と声を掛けていたらしい。滝さんは将司さんが「白あんま着ないもんね?」と聞くと大きく頷き、岡峰さんが「何か(理由が)あるんでしょ?」と聞くと首をブンブンと横に振っていた。「好みの問題なんだ?」と聞かれると再び大きく頷く滝さん。それを見た岡峰さんが、「今後差し入れできるようになったら滝くんに白い服をあげてください」と言っていた。

将司さんが、岡峰さんが最近髪を切ったことに触れると岡峰さんが下手2人とも長いと重たいでしょ、というような言葉を返していた。将司さんはライブが始まる前、和彦さんに「明日は光舟と同じ髪型にするんでしょ?」と言ってシカトされたらしい。

 

話がひと通り終わると演奏へ。1曲目は9mmの曲、The Revolutionary  将司さんはギターボーカルでの演奏。強い頼もしさのある歌詞は将司さんの勇ましい歌声にぴったりだった。間奏のツインリードは滝さんが将司さんのところまで行って2人で向かい合って弾いていた。最後の「世界を変えるのさ おれたちの思い通りに」でありったけの力を込めて叫ぶ将司さんと滝さん。

続いてはバクホンの曲、戦う君よ 将司さんはいつものようにハンドマイクに戻っていた。コーラスパートが多いこの曲、将司さんと滝さんの歌声が重なるのをたくさん聴けたのも嬉しかった。終盤で将司さんが「綺麗事じゃなく美しい日々 探し続けていこうぜー!!!」と変えて歌っていた。

 

将司さんが黒組の4人をステージに呼び込み、再び8人が揃う。それぞれのパート同士でお互いを称え合うように笑顔で向かい合ったり、オフマイクで何か話したりしていたので誰からだったか、自然と「マイク通してよ」という声が飛んだりもしていた。「白組見てテンション上がっちゃったよ」と言いながら栄純さんが滝さんと嬉しそうに笑い合っていた。

将司さんと卓郎さんが話し始める。たまたまではあるが、黒組の4人はかつて荒吐BRAHMANコピーバンドとして出演したことがある、という話。主催の菅さんに東北出身者で何かやってよ、と言われたのがきっかけとのこと(卓郎さんが菅さんの真似をしながら)。今回の組分けは公正にじゃんけんで決めたのに結果そうなったので不正を疑われたが、それじゃ全員で話し合わせないとダメだから逆に難しいよという話に落ち着いていた。

 

松田さんが「荒吐が作ってくれた機会なので、順番が逆になって東京編が先になってしまったけど、荒吐が開催出来たら東北の地でもまたやりたいですね。」と言っていたが、本当にどうにか、今年の荒吐が開催されて再びこの8人でのステージが観られますように。(ちなみに松田さんが話し始めた時に将司さんが「おっ、黒いドラムが」と話しかけていたがスルーされていた)

 

再び8人での演奏、将司さんが「人見――!!」と思いっきり叫んでから演奏されたのは、刃!イントロではかみじょうさんがスティックを2本まとめて両手で持ち、持ってシンバルを叩いていた。ここでもリフをオクターブで弾いていた栄純さんと滝さん。この8人がステージに並んで刃を演奏する様子は月並みな言葉になってしまうが壮観、そして圧巻だった。この曲で声を一切上げられないというのが、本当にもどかしかった。

最後の曲はBlack Market Blues 、卓郎さんが「人見記念講堂に辿り着いたなら!!」と歌詞を変えて歌っていた。中盤だったか、一際大きく動き回っていた滝さんがステージの上手端、シールドの届くギリギリのところまで来てくれた。普段和彦さんがこの曲のイントロで屈んでベースを弾いたり、2番の入りでベースをアンプに近づけてノイズを出したりしているが、それを岡峰さんが真似して和彦さんと一緒にやっていたのが2人の仲の良さを窺わせる、嬉しい場面だった。

 

演奏が終わり滝さんを筆頭に順番に退場していく中、卓郎さんが「気をつけて帰って下さい、また会いましょう!」と挨拶。和彦さんが袖に消える前に客席に一礼、最後にかみじょうさんが手を振って退場していった。

20時までに終わらなければならないこともあり、アンコールは無かった。終演のアナウンスが流れると再び大きな拍手が巻き起こった。

 

 

この日卓郎さんがMCで9mmとバクホンについて、「似てる、というわけではなくて何かが近いんだなと思った。音楽的に親戚。」と表現していた。かつて栄純さんと滝さんが別の機会でそれぞれライブに出られなかった時にお互いの代打をした話が出た時には、将司さんが「親戚の助け合い」とも言っていた。実際8人が一緒にステージに立って演奏する様子を観ながら、“親戚”という例えの絶妙さを実感した。この2組が一緒に演奏するなら楽しいに決まってる、と当日まで期待を膨らませていたが、それを軽く飛び越えてきたライブに翌日の公演への更なる期待が高まった。

 

 

◆鰰の叫ぶ声(全員)

コバルトブルー

ハートに火をつけて

◆黒組(菅原卓郎・菅波栄純・中村和彦・松田晋二)

Vampiregirl

◆白組(山田将司・滝善充・岡峰光舟・かみじょうちひろ)

The Revolutionary

戦う君よ

◆鰰の叫ぶ声

Black Market Blues


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20201225/a flood of circle“LOVE IS LIKE A Beer!Beer!Beer!”@新宿LOFT(2部)

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HISAYO姐さんがフラッドに加入して今年で10周年、ということで姐さんの10周年を記念して開催されたライブ。姐さん加入後初めてリリースされたアルバム「LOVE IS LIKE A ROCK’N’ROLL」を再現するという内容。今回は収容人数を制限する代わりに2部制でライブが行われ、自分は2部を観に行った。

ちなみに昨年は、同じくLOFTにて1stアルバム「BUFFALO SOUL」と2ndアルバム「PARADOX PARADE」の再現ライブを開催している。LOFTのレーベルからインディーズデビューし、独立するまでLOFTの事務所に所属していたフラッドにとっては“ホーム”である新宿LOFTが、今でもこのような節目には欠かせない存在となっているのが嬉しい。

 

検温や消毒を済ませ入場しようとすると、入り口でCDを渡された。盤面に「The Greatest Day HISAYO Remix」との記載。これは事前告知が無かったと思う。思いがけない嬉しいクリスマスプレゼント。

今回は自由席ということでフロアには椅子が並べられていた。2部は配信もされるので、上手の段の上には配信用機材のスペースも設けられていた。自分が入場した時点で空いていた上手前方端の席で観ることにした。場内ではこの日に合わせて姐さんがプロデュースしたグッズである、赤いタッセルの付いたイヤリングと、ベースのヘッドやバンド名を散りばめたデザインのタイツ(肌色と赤の2色展開)を販売していた。

 

I LOVE YOU

Blood Red Shoes

Whisky-Bon Bon

Sweet Home Battle Field

賭け(Bet!Bet!Bet!)

Hide&Seek Blues

YU-REI Song

Boy

The Beautiful Monkeys

King Cobra Twist

-session #6-

感光

 

Beer!Beer!Beer!

Beast Mode

 

SEは流れず、客の拍手だけが鳴り響く中ステージに真っ先に出てきたのはこの日の主役・HISAYO姐さん。黒いノースリーブのワンピースに自身がプロデュースしたイヤリングとタイツ(肌色の方)を身に付けていた。普段は綺麗めのデザインが多い姐さんのワンピース、この日は大きなフリルのような飾りが縦にいくつも付いたデザインで、全身がリボンで飾られているように見えるとても可愛らしいものだった。いつも可愛い姐さんだけれど、この日の装いは特に可愛かったので視線が姐さんに釘付けになった。

続いて登場したのはなべちゃん。何と髪をばっさりと切って黒髪短髪になっていた。最後にテツ君と佐々木さんが登場。10年前の再現という意味なのか、佐々木さんはI LOVE YOUのMVや「LOVE IS LIKE A ROCK’N’ROLL」のアートワークで着用していたものと同じ白い革ジャンだった。

 

I LOVE YOUからライブがスタート。イントロから素敵な笑顔で手拍子する姐さん。客は感染防止のため声を出すことが出来ず、いつものコーラスパートで声を出せないのがもどかしい。終盤では佐々木さんが「夜明けが近づく“新宿LOFT”!!」と歌詞を変えて歌っていた。続いてはBlood Red Shoes、ここで今回はアルバムの収録順通りに演奏されるセトリなんだろうな、というのを把握。先ほどまでは可愛らしい笑顔を見せていた姐さんが、イントロの入りで思いっきり歪ませたベースの音を叩き付ける。間奏のギターソロではテツ君がステージ前方まで出てきていた。終盤になるにつれ姐さんが大きく動いているのが見えた。演奏が終わると佐々木さんがひと言、「おはようございますa flood of circleです、よろしくどうぞ」

 

ここで最初のMC。佐々木さんが「LOVE IS LIKE A Beer!Beer!Beer!ということで…姐さん10周年ありがとう、おめでとう!!」と言うと姐さんが笑顔で「気付けば10年、みんなも最初から見てる人は一緒に年取ってますよね。今日という日を迎えられたことがとても嬉しいです。」と可愛らしい仕草を交えながら続けた。

 

続いてはWhisky Bon-Bon、なかなかレアな曲で個人的にはこのアルバムの中でも特に好きな曲のひとつなので、イントロで歓声を上げたくなるのをなんとか抑える。間奏に入る際に佐々木さんが「オンベース、HISAYO!」と叫んで姐さんの見せ場を引き立たせる。間奏のギターの掛け合いの部分では、佐々木さんが《ひいらぎかざろう》のメロディーを弾いていた。この日は12月25日、クリスマスということで入れられた微笑ましいアドリブ。終盤では跳ねたリズムに合わせるかのように姐さんがステップを踏んでいた。

佐々木さんがギターを置きタンバリンを手にして始まったのはSweet Home Battle Field、佐々木さんが間奏で姐さんの首にタンバリンをかける。間奏後にマイクスタンドを退けて歌い始める佐々木さん、普段ならここでステージから客の上に移動して歌うところだけれど今回はそういう訳にもいかず、ステージ前方で止まって歌い続けた。アウトロではタンバリンを首にかけたまま叩いていた姐さんの姿が可愛かった。

ブルージーなイントロからテンポの速い本編へなだれ込む賭け(Bet!Bet!Bet!)では姐さんがその場で足を小さく踏み踏みするようなステップ。テツ君のギターソロが始まると近づいて行ってそれを覗き込む佐々木さん。一瞬の間を開けてHide&Seek Bluesへ。先ほどの陽気な雰囲気から一転、スローで重たい音がLOFTのフロアに響く。なべちゃんのドラムの音は体感的に、この曲の時が特に重たかった気がする。4人の目つきは鋭く、姐さんが俯きがちにベースを弾く姿がかっこいい。間奏のギターソロはテツ君がほぼオリジナルのメロディーを弾いていた。再現ライブではあるけれど、ただの再現ではなく確かに今のフラッドが鳴らしている音だぞ、というように聴こえたのが嬉しかった。

 

ここで再びMC。「10年前の今ぐらいに姐さんが加入して、姐さんと作った最初のアルバムがLOVE IS LIKE A ROCK’N’ROLLなんだけど、10年前はこのステージでRUDE GALLERYのイベントがあって。元々入っていた予定だったと思うけど、姐さんの初ライブになっちゃってみんなびっくり、みたいな。でも今日に辿り着けて良かったですよね。」と佐々木さんが言うとそうね、と応える姐さん。

姐さんが続ける。ファンクラブのブログにて、10年前にLOFTで行われたフラッド加入後最初のライブにどんな感じで至ったかを自粛期間にひとりで振り返りをしたという話。「結構劇的な出会いがあってあそこに辿りついたっていうのを言ってこなかったから、この機会に言っとこうかな、みたいな。是非知りたい人は読んでほしいな、お金出さないと読めないということにしたいのよ、あの出来事を…タダじゃ喋らない」と悪戯っぽく言う姐さんに佐々木さんが「祝われに来たのに妙にがめつさ出してるじゃないですか(笑)」と突っ込みつつも、思い出がいっぱいってことですよね…と姐さんに言っていた。

ここからは姐さんと佐々木さんの掛け合いが続き、

姐さん「ブログ4~5月から始めたのに(2010年の出来事から書き始めて)まだ2013年とかで…」

佐々木さん「スラムダンクレベルの…」

姐さん「試合が長いんだよね……テツが全然出てこないね。2013年頃だと上京?専門学校行ってるくらい?」

佐々木さん「まだミルク飲んでる頃かな?」

テツ君「20か21くらい」

姐さん「お酒覚えたてぐらいの頃やね…(腕を組みながら)」

佐々木さん「怖い、説教始まるのかと思った、覚えたてぐらいの頃やね~って(姐さんの口調を真似しながら)」

姐さん「でもそんな片鱗もないのに今こうやって一緒に出来てるのってすごいね」

更に佐々木さんが続ける。「何が起こるか分からないのっていいよね、再現ライブってそれには全く向いてないんですけど…でもこれを再現するってことは予想してなかったから。今日は今日しかないし楽しんでいきましょう。」

 

佐々木さんが話し終えると次の曲へ入る…ような空気になったがなかなか曲が始まらない。話し始めたのはなべちゃん。「曲始めちゃっていいの?」と言うとフロアから笑い声が漏れる。

佐々木さんが始めたくなければ喋ってもいいし、飲んでもいいし、と言うとそれに促されるようになべちゃんがこんにちは、とひと言。またフロアに笑いが起こる、和やかな空気。

「不思議な感じですよね再現ライブって……話し出す勇気がないんで行こうかな。みんな曲順分かってると思うから、可愛いやついきます、次」

 

なべちゃんがそう言ってから始まったのはYU-REI Song、歌声も演奏もこのアルバムで一番穏やかな曲、ドラムをマレットで叩いているので音がコロコロと優しく響いていて可愛らしい。そんな穏やかな雰囲気からシリアスな空気への切り替わりが見事だったBoy、ステージを照らした夜明けみたいな照明のような照明が美しかった。「どこにも行かないで」の一節で心臓をグッと掴まれたような感覚になるのは、この曲をほぼ9年聴き続けた今でも変わらない。

佐々木さんが「Are you ready!!!?」と叫んでからThe Beautiful Monkeysへ、性急なリフに合わせるかのように姐さんが一際大きく跳ねる。間奏のギターソロでは佐々木さんがここでもテツ君に近付いて覗き込むようにしていた。続くKing Cobra Twist、姐さんが音を歪ませて弾くソロパートの直前に佐々木さんが「オンベース、HISAYO!」と再び入れる。また、次のブロックでは佐々木さんがなべちゃんのソロパートが来るとステージ中央辺りにしゃがんでフロアからなべちゃんがよく見えるようにするなど、それぞれ見せ場のあるリズム隊を目立たせるようにしていた。ソロパートを叩き切った直後になべちゃんがパッと笑顔になっていたのを見て反射的に嬉しい気持ちになった。そのまま音源通り-session #6-へ。この曲では最初から最後までステージ前方に出てきてギターを弾きまくっていた、テツ君の独壇場だった。

 

「2020年12月25日のことを多分誰も昨日まで分かんなかったはずで、だから確かめに来てみんなに会えて嬉しい」とフロアに話しかけるように言う佐々木さん。ステージ下で回されているカメラに向かって、カメラ目線で「観てる人もそうだし」と、配信を観ている人たちにも話しかける。

a flood of circleはたくさん曲あるんで…ずっと曲作ってるし今年も2020っていうすごいの出したし、って思ってるんだけど、ガンガンやってるけどちょいちょい振り返ってる俺達、という(笑)」

「こういうのしょっちゅうやってるしそれが不思議な気持ちになる時もあるんだけど、でも昔の曲やってる時って、昔のことあんまり思い出せない。今の気持ちしか歌えなくてそれでいいなって感じがある。そうやって、どうせ元には戻れないので、昔には誰も。これはみんな一緒の条件なんで」

「この先古い曲やってもその時の気持ちしか絶対歌わないし歌えないし、だからロックンロールやってるんだと思う。それが何十年目のスタイルでもこれが俺達だからこのまま行きますんでよろしくお願いします」

 

「じゃあ、元気で。《感光》」

本件最後の曲は、LOVE IS LIKE A ROCK’N’ROLLの最後を締めくくる、感光。「I Feel The Shine」の部分で優しい日差しのような照明が降り注いだ。終盤、演奏が止まると暫しの静寂。佐々木さんがフロアを見回すように目線を動かしているのが見えた。そしてありったけの力を込めるようにして歌われた「生きていて」の一節が胸に迫る。思えばこの曲は2011年3月、日本が危機的な状況だった時のことを内容に込めて生まれた曲だったので、今違う困難に直面している今の状況と重なるような気がして、切実なものに聴こえてくる。佐々木さんが昔の曲でも今の気持ちしか歌えない、とつい先ほど言っていたのでこの時の「生きていて」はあの時の再現ではなく正真正銘今現在の、佐々木さんの言葉だということ。

 

本編が終わると4人が順番に退場。姐さんが両手で大きく手を振りながら退場していった。

 

アンコールの手拍子がしばらく続く中、再び4人がステージに登場。

佐々木さんが「俺が言うのも変だけど、姐さんの10年目をみんなが祝ってくれて最高、嬉しいです、ありがとう。」と言ってから、12月29日に生配信を行うことを告知。出演予定だったCOUNTDOWN JAPANが中止になってしまい「その日暇になっちゃったから」と、一緒に暇潰ししよう、とのこと。また、来年1月9日に下北沢SHELTERから無観客生配信で行うライブの案内もあった。このライブは事前にリクエストを募っており、もうセトリは決めたらしいが練習がすごく大変、と言っていたのでかなりのレア曲が聴けるのではないか、と一層楽しみになった。更に来年開催する“2020 TOUR 2021”について、また状況が心配になってきた中ではあるが「やれると信じていく、やれることをやっていくだけ。15周年もどうぞよろしくお願いします。」と言っていた。

 

続けて、姐さんが自身でプロデュースしたグッズの紹介を嬉しそうな様子で始める。グッズが出来まして…と言いながら長い髪を耳にかけ、付けているイヤリングを見せる。客の中にはイヤリングやタイツをすでに装着している人もいたようで、姐さんが嬉しそうに言及していた。今回のグッズはどちらかと言うと女性向けだが、情報によるとイヤリングを買っていた男性もいたようで姐さんが「プレゼントにも良いと思いますし、男性が付けても良いと思う」と勧めていた。

話を続ける姐さん。「漫画が好きじゃないですか私」と言うと佐々木さんがすかさず「知らんけど…」と入ってくる。「好きな漫画家の先生にお願いして私を書いて頂きました。“女の友情と筋肉”の作者、KANA先生と何度かやり取りをして、私の人となりを知ってもらって書いてもらいました。」と言いながら大きな白いパネルを持つ姐さん。なべちゃんのドラムロールが始まる中、しばらく勿体ぶっていた姐さんがパネルを裏返すと、美しいタッチで描かれた姐さんの絵が。

「めっちゃ嬉しいです、10周年のご褒美ということで、かなり美人に書いて頂いているんですけど…何とこれ、Tシャツになります !どなたも着られますので!」と。もうひとつの姐さんグッズとして、誰でも身に付けやすいTシャツの発売を発表。そして「会場のみなさんにはクリスマスプレゼントをお渡ししてますので、お家で楽しんで下さい」と入場時に配布されたCDについてもここで言及。

 

パネルを置いて、一旦アンプ側に向かった姐さんが手にしたのはベースではなく缶ビール。こいつ全然ベース持たへんやんって思われてるよね~、と言いながら。

佐々木さんが、祝われに来てますからねと言えば姐さんが「わがままが許されるのは、私のためにこんなに時間取って良いの今日ぐらいだと思うから」と言って、更に佐々木さんが「全然いつでも時間取って下さい」と返す。

 

姐さんが続けて話す。「“LOVE IS LIKE A Beer!Beer!Beer!”ってタイトルを決めたのは私なんですけど、Beer!Beer!Beer!は佐々木くんが私をモチーフにして作ってくれた唯一の曲なので…唯一のは要らんか。ということで、私がライブの時にしたかったやつをやらせてもらいます!」

姐さんがマイクの前に来るように缶ビールを持つとプルタブを開ける。リバーブがかかったマイクがプルタブの音をフロアいっぱいに響かせるとそれを合図にBeer!Beer!Beer!の演奏が始まる。その中で嬉しそうにビールを飲む姐さん、開けてから飲むところまでをやりたかったらしい。ビールを置いてようやくベースを手にする。

佐々木さんがイントロに乗せ「HISAYOがいないと始まらない」とご機嫌に歌えば姐さんが「そうなんです、終わりたくないから始まらんとこうかなって。どうしようかなー、始めよっか」と名残惜しそうに言ってから姐さん自らのカウントで「1,2, 1,2,1,2,3,4!!」から歌へ入る。姐さんをモチーフにしているだけあって、フラッドの中でもとびきりキュートなメロディーの曲。聴きながら多幸感で満たされるような気持になった。フルコーラス演奏が終わると姐さんがマイクに向かって何か言っていたが、マイクの音量が大きくならない。すると姐さんが佐々木さん、なべちゃん、テツ君に向かってオフマイクで「行くよ、1,2,3,4!!」と音頭を取ってサビをおかわり!

これで終わりと思いきや最後にもう1曲、Beast Mode!この日は「LOVE IS LIKE A ROCK’N’ROLL」の曲とBeer!Beer!Beer!しか演奏されないと思っていたので完全に予想外だった。今年、もう一度生で聴くことが出来て、本当に嬉しかった。音源にはこんな状況になる直前にライブ会場で録った大勢の客の歌声が入っているが、ライブで披露される時にはもうライブハウスで声を出すことが出来なくなってしまった。早くこの曲をライブで大合唱できる世の中になって欲しいと思ってやまない。

演奏が終わるとテツ君が「サンキュー、またどこかで会おう」と言って退場。それに続いて佐々木さんも袖に消えていった。姐さんは大手を振って退場、なべちゃんはマイクの前を通る時に「良いお年を!」と言って退場していった。

 

 

2010年12月24日にフラッドのベーシストとして初めてステージに立ったHISAYO姐さん。

姐さんが加入した時、自分はtokyo pinsalocksのことはバンド名くらいは認識していたが、姐さんのことは知らなかった。自分が初めてライブで姐さんを観たのは2011年4月だったが、ノースリーブのワンピースに網タイツでクールな佇まいの綺麗な人、というのが第一印象だったと思う。そこから年月を重ねていくごとに段々と姐さんの人柄を知るようになった。ベースを構えすらっと立つ姿は美しく、演奏中のステップや繰り出す音はかっこよく、話している時など普段はどこかほんわかとした雰囲気のある可愛らしさがあり、ビールが大好きな姐さん。愛称どおり「姐さん」として、メンバーの安定しなかったフラッドを10年間共に支えてきた頼もしさ。色々な一面を知るごとに姐さんのことが大好きになった。姐さんがフラッドに出会ってくれて良かった。こんな状況の中でも姐さんの節目をお祝いすることができて、良かった。

改めましてHISAYO姐さん、a flood of circle加入10周年おめでとうございます。

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