最後の駅の向こう

何でもすぐ忘れる人の特に記憶に残しておきたいライブの簡易レポートと趣味のレビューの予定。あくまで予定。

【ツアーネタバレ注意】20241109/9mm Parabellum Bullet “Tour 2024-2025 「YOU NEED FREEDOM TO BE YOU」” @F.A.D YOKOHAMA

      

結成20周年を迎えた9mmがアルバム「YOU NEED FREEDOM TO BE YOU」を10月にリリースし、来年3月まで続くリリースツアーを開催。初日の11月「9日」の会場は結成の地横浜の、9mmと縁深いF.A.D YOKOHAMA

 

入場すると既にフロア前方1/3ほどが埋まっていてどのあたりの場所を取るか迷ったが、どこを取っても恐らくステージはほぼ見えないと予想して下手の最後方で観ることにした。ステージにはアルバムタイトルの「YOU NEED FREEDOM TO BE YOU」が書かれた、ツアー用のバックドロップが掲げられていたのが見えた。自分のいた位置のすぐ後ろにカメラが設置されていたので映像化の予定があるんだろうか。ソールド公演のため開演直前には後ろまでパンパンに人が入った状態になり、予想通りステージはほぼ見えなくなった。

 

定刻を5分ほど過ぎた頃に場内が暗転しSEDigital Hardcoreが鳴り響き、フロアの前方から大歓声が巻き起こったタイミングでメンバーが登場したんだなと想像しながらステージの方向を見ていた。メンバーが定位置に着くと人の頭の隙間から奇跡的に卓郎さんの顔が見えるようになった。

 

Baby, Please Burn Out

ハートに火をつけて

Black Market Blues

叫び -The Freedom You Need-

Mr.Foolの末路

Vampiregirl

Discommunication

Domino Domino

新月になれば

Fuel On The Fire!!

黒い森の旅人

泡沫

それは魔法

幻の光

朝影 -The Future We Choose-

Brand New Day

太陽が欲しいだけ

名もなきヒーロー

(teenage)Disaster

カタルシス

 

One More Time

Talking Machine

 

アルバムの1曲目であるBaby, Please Burn Outからいよいよツアーが始まった!赤い照明の中真剣な眼差しで歌い始める卓郎さんの様子が見えた。1番サビ〈愛の照明存在を始めていいんだろ〉と、最後のサビ〈完全燃焼 一片の悔いも残すなよ 愛の他に〉の部分ではフロアから見事に揃った「ハイ!!!」と声が上がり、何度かライブで演奏される機会があったとはいえツアー初日の1曲目とは思えないくらいの一体感があった。続いて演奏されたのはハートに火をつけて、〈燃え尽きてみろよ〉と歌うBaby, Please Burn Outとは抜群の相性でなるほどその手があったか、と。そこからほぼ音を切らずにBlack Market Bluesへ、卓郎さんが「Flower and Dragonに辿り着いたなら!!」としっかりF.A.Dの正式名称を入れて歌っていた。2番に入るといつものように和彦さんがノイズを作り出している間に滝さんはアドリブのフレーズを入れていたように聴こえた。

3曲終わった時点で早くもじわじわ場内の温度が上がってきたことが感じられるくらいに盛り上がったところでアルバムの2曲目に入っている叫び -The Freedom You Need-が演奏された。現時点でアルバム全曲の中でも特に好きな歌詞のひとつである〈生きることが戦いでも 人が人でいるためには心が必要だろ〉という言葉は当たり前かもしれないけれど生で聴くことで余計に強く心に響くものがあった。間奏のベースソロ前に突然演奏が停止するという驚きのアレンジ!フロアから歓声が上がり、しばらくして演奏が再開し最後のサビに入る直前で再び演奏が停止すると卓郎さんがフロアを煽り先ほどより大きな歓声が上がり、その様子を確認した卓郎さんが〈咲き乱れた命の花~〉の部分を歌い再度演奏に戻った。出したばかりの新曲でこんなに音源と違うアレンジを入れてくるなんて!

 

ここで最初のMC。「ツアーを通して段々と曲がおれたちのものに、9mmの音楽の一部になっていくわけで、アルバムの曲たちはまだ誰のものでもない。このツアーの末路はどうなるんだろうか。」

という丁寧な前振りから演奏されたのはもちろんMr.Foolの末路。アルバムの中でも特に抽象的な歌詞で掴みどころがない印象だったので、ツアーを経て印象がどう変わるのかがとても楽しみな曲だと思っていて、ライブで初めて聴けたこの日はステージの様子がほぼ分からない分聴くことに集中し語感の良さやメロディーを純粋に楽しんだ。次の曲がVampiregirlだったのはもしかしてタイトルが「Mr.Fool」との対比?と咄嗟に考え、アルバム曲と既発の曲の並べ方に色々考えを巡らせながら聴くのも楽しかった。

Discommunicationは普段黄緑色の照明が使われることが多いが、確か赤っぽい色で珍しいなと思いながら聴いていた。ここもほぼノンストップで激つなぎ的なアレンジだっただろうか、和彦さんのベースの音が一際目立つDomino Dominoのイントロへ。ここまで赤い照明が多かったのでパッと青い照明に切り替わったのがいいアクセントだった。音源を聴いた時からそのような印象だったが、和彦さんとかみじょうさんによるストロングなリズムがとにかく気持ちよく、特にバスドラの音が一直線に体を貫通するかのように強く響いていたのが小箱でのライブならではの感覚だった。

ここまでBaby, Please Burn Outや叫び -The Freedom You Need-そしてMr.Foolの末路とアルバム収録曲は収録順で、その間に既存の曲が入るという構成だったのでそれが続くのかなと予想しながら聴いていたら8曲目のDomino Dominoがここで演奏されたので、この後のセトリがどうなるのか予想がつかなくなった。

 

卓郎さんがDomino Dominoは演奏していて楽しい!というようなことを言っていた。この曲の歌詞を書く時に煮詰まっていたとのことで何でドミノの歌詞書いてるんだろうとも思いつつ願いごとをドミノみたいに並べる歌を思いつき、願いごとを並べて最後には倒してしまうなんて退廃的じゃないか!と、歌詞が完成した時に「歌詞を書くとはこういうことだよ菅原くん!」となったことを話してくれた。

 

今日は上弦の月なので新月はまだ先だけれどというような言葉から次の曲、新月になれば の演奏へ。随所にツーバス炸裂というフレーズが差し込まれていながらゆったりした歌のメロディーや、どこか童謡のような雰囲気ともの寂しさが混ざった歌詞の不思議な取り合わせがありつつ、卓郎さんの歌声に聴き浸ると優しくあたたかい感覚が自分にそっと寄り添ってくれるような不思議なイメージが湧いた。この日の終演後、帰路で空を見上げると卓郎さんの言っていた通り、上弦の月が明るく夜空に輝いていた。アルバムの中で唯一のインストナンバーFuel On The Fire!!は徐々に高揚感が増して最後に転調するパートでそれが最高潮に達するという曲構成が大変気持ちよかった。卓郎さんがどのギターを使っているのか全く見えなかったが、中盤で恐らく卓郎さんのギターだけがなっていた部分は何となくいつもよりシャキッとした音がしたような気がしてそれも心地よいものだった。

フロアが静かになってから徐に響いたギターの音に次の曲はカタルシス?と一瞬予想したが聴こえてきたのは黒い森の旅人の、イントロのメロディーだった。トレモロピッキングのような音で柔らかなクリーンサウンドが響き、そこから音源通りのイントロへ繋がりいつも通りの美しい演奏が繰り広げられるというアレンジだった。新月から(Fuel On The Fire!!を挟んで)黒い森、と空を見上げたところから徐々に視線を移すようなイメージから次の曲、泡沫で水底へ一気に沈むというこの部分の流れの素晴らしさには唸るしかなかった。歌い出しのあたりから滝さんが音が揺らめくようなエフェクトで音を出していて今までのライブよりも水の中にいる感じが更に増すようなアレンジになっていた。澄んだ水の中にいるような水色の照明から一転、中盤で照明が真っ赤になった〈どうして どうして どうして いつも〉からの部分では演奏のテンポがスローになるのがお馴染みではありながら今までより更に遅く音は更に重たく、天井の低い小箱というのもあってか重たい音に上から押し潰されるようなイメージも湧くほどの迫力だった。

 

9mmには冬の曲がいくつかありますが、とうとう〈クリスマスソングはもう飽きた〉という曲ができました(笑)おれはそんなことないですが。」と卓郎さんが言ってからそれは魔法を演奏。ライブの前に少しだけ通った、クリスマスツリーや装飾が少しずつ現れ始めた横浜の街を思い出してぴったりな時期に聴くことができる嬉しさがあった。ステージが見えなくても9mmのライブはとても楽しいが、この時ばかりはほんの少しだけ、アルバム随一のとびきりのフレーズを叩き続けるかみじょうさんの様子が見たかったなという気持ちになった。幻の光では卓郎さんが時折9mmでも見せるようになった、弾き語りの時のような柔らかい歌声がフロアいっぱいに広がった。全体的に歌のメロディーが際立っているアルバムの曲の中でも特に歌を美しく聴かせるような2曲がここで並んだ。

そんな流れからいよいよ朝影 -The Future We Choose-を披露。9mm結成初期から縁のあるこの場所で聴いたからというのもあったかと思うが〈あなたなしの朝が来る明日は選ばない〉の一節は色々なことがあった中でもひたすらに「バンドを続けること」を目標にし続けた9mmの意志であるように感じられ、〈壊れかけた世界なら なおさら愛して見せましょう〉の一節には長年の活動の中で何度も垣間見えた9mmの、卓郎さんの物事の柔軟な見方や懐の深さが滲み出ているようにも感じられた。

 

「叫び -The Freedom You Need-と朝影 -The Future We Choose-はゲームのOPEDで、ゲームにもOPEDがあるんだ、というところから始まって(笑)プロットをもらって、滝くんが曲を書いて、おれが歌詞を書いて。タイアップだけど100%9mmの曲、と両立できるように書きました。インフェルノの時みたいに。」と卓郎さんが丁寧にタイアップが付く際の曲作りについて話してくれた。

「曲の中で実はゲームのネタバレをしてしまってるので、Nintendo Switchを持っている人は買ってください、持ってなかったらクリスマスに買って。ゲームをやってみて、これかぁ〜〜!!(笑)って。そして感想をつぶやいて教えて欲しい。」とのことで、自分が普段やらないようなジャンルのゲームだけれどそれを聞いてしまったら実際どこがネタバレなのか買って確かめたくなってきた。

ゲームのOPEDである叫びと朝影がアルバムでもオープニングとエンディングの位置に入って、Brand New Dayがアルバムのエンドロールのような位置にある、とも。Brand New Day9mm19周年を祝う曲だったのが、みんなの前で演奏するにつれみんなのことも祝福するような曲になってきた、と卓郎さんは話を続けた。

 

卓郎さんの「みんなを祝福してもいいですか!!」からのBrand New Day1番サビの〈Brand new day どうか 僕にもひとつください〉に「みんなにも!!」と付け加え、最後の一節は〈Brand new day どうか 「僕らに」ひとつください〉と歌詞を変えて歌ったので直前のMCと合わせて9mmに関わる全ての人達を祝福するかのような雰囲気が嬉しかった。そんな多幸感の中続けて演奏された太陽が欲しいだけ はいつにも増して強く前向きなエネルギーを放っていたように思えて、Brand New Dayと太陽が欲しいだけ の組み合わせの無敵感に心を打たれたが、更に名もなきヒーローまで続いたのが9mmの頼もしさが全面に出たような堪らなくかっこいい流れだった。

卓郎さんが「20年前に作ってこの場所でやった曲!」と言うと演奏されたのは9mm最初期の曲である(teenage)Disaster、間違いなくF.A.Dに捧げた選曲だったと思うし、この場所でこの曲を聴けるのがとにかく嬉しかった!

「最後の曲です」と卓郎さんが告げてから演奏されたカタルシス。この日ライブを観て一曲一曲を楽しみながらもずっと、この流れでカタルシスはどこに入るんだ?と考えていた。ツアーが始まる前には、アルバムの新月になれば〜朝影〜Brand New Dayの完成度の高さにこの曲順のままセトリの最後に入るのかなと予想もしていたが、全てを燃やし尽くすような音圧と壮絶な演奏のカタルシスが最後に投下されたことで驚嘆ととんでもない高揚感に襲われた。全然予想できなかった。すごかった。本当にすごかった。

 

アンコールの手拍子が少し長めに続いてから5人が再びステージに登場したと思われるタイミングでフロア前方から歓声が上がった。しばらくすると控えめな笑い声が聞こえ、ステージで何があったんだろうかと気になっていると卓郎さんが滝さんの方を向いていいよいいよ、と笑いながら言ってからみんなも何回でもおかわりしてくださいね、One More One Moreってと滝さんの何らかのお酒に関しての反応だったことと次に演奏される曲を把握した。

というわけでアンコール1曲目はOne More Time、タイトルや歌詞的にもアンコールに相応しい曲なのでアンコールの曲として〈One more,one more time〉とステージとフロアで一緒に歌声を重ねることができるのはとにかく楽しい。この日も卓郎さんが間奏に入る際「ほら出番だよご主人様滝ちゃーん!!」と元気に滝さんの名前を呼んでいた。

この日最後の曲はTalking Machine。今日のイントロはどんなアレンジかなとワクワクしながら聴いていると突然人の頭の隙間からひょいと滝さんが現れて(お立ち台に上がったと思われる)、かみじょうさんが楽しげなリズムを刻み始めると今年のライブで何度か披露されている「呼び込み君」のメロディーが聴こえてきた。Talking Machineに取り入れられる前からこのメロディーが大好きなので体を揺らしながら楽しく聴いていると滝さんも笑顔で演奏していたのでより嬉しくなった。 2番に入ると〈ああ 何べんやっても〉を「20年やってまーーす!!!」と卓郎さんが思いっきり叫ぶように歌詞を変えていてこちらのテンションもぶち上がったと同時に20年間9mmを続けてくれてありがとう!!という気持ちが溢れて止まらなくなった。一瞬フロアに背を向ける滝さんの姿が見えたが、フロアにダイブしていたと後日話に聞いたり9mm公式がSNSに上げた写真を見たりしてもしかしてあれはダイブする直前の姿だったのか

 

演奏が終わり拍手喝采の中、武田さん、滝さん、かみじょうさん、和彦さんの退場する様子はやはり見えなかったが最後に卓郎さんがいつもの万歳三唱をする姿は少し見えたので、一緒に万歳をしてステージを去る卓郎さんの笑顔も見ることができた。

 

 

どのタイミングだったか忘れてしまったもの。卓郎さんがMCで、20年経っても新曲をライブでやる時は緊張すると言っていて、その発言があったので初日ならではのドキドキ感が少し増してよりツアー初日の雰囲気を楽しむことができた気がする。

前述の通りステージがほぼ見えなかったためサポートがどちらだったか分からない状態だったが、中盤のどこかのMCで卓郎さんが武田さんを紹介してくれたのでライブ中に知ることができた。その際に1113日にHEREがツアーの横浜公演をF.A.Dで開催することに触れ「裕也がインスタのストーリーズで武田くんに誕生日プレゼント何がいいか聞いたら動員!って。だからおれも武田くんに動員をプレゼントしたい。」と言ってHEREライブの宣伝をしていた。13日は武田さんと三橋さんの誕生日という非常にめでたい日でしかも対バンが爲川さんの所属するfolcaと和彦さんが所属するSYSという素敵過ぎるライブ(休みが取れれば自分も動員に貢献したかった)

MCに入る際にいつものようにいい感じのセッションが繰り広げられ、その後に卓郎さんが話すこと特に決めてないと言いつつグッズのタオルの話を始めて、「YOU NEED FREEDOM TO BE YOU」とたくさん書かれたデザインが気に入っていることとタオルのデザインがケーキ屋の箱みたいだとも言っていた。確かに言われてみればこんな感じのデザインのケーキ屋があったな(多分TOPS)とちょっと笑った。

19周年として、毎月9の付く日にライブや配信をやっていた去年の方が忙しいと思っていたけど、今年も気付けば3/4くらい終わってた!と時の流れに言及する場面もあった。

 

アルバム曲と既存の曲で色々と近いものを感じたり相性が良かったりする組み合わせがいくつもあるという発見ができてものすごく楽しかった。Baby, Please Burn Outとハートに火をつけて、そしてBrand New Dayと太陽が欲しいだけ。アルバムの現時点での印象として歌詞からどことなく喪失感が漂っているように感じられて、なので泡沫がものすごく今作と相性がよかったのも確かにとライブを聴きながらはっとした。今後の公演でセトリが変わるなら、この日とは違う相性のいい組み合わせを知ることができるかもしれない。

遂にツアーが始まり、アルバム「YOU NEED FREEDOM TO BE YOU」全曲をライブで聴くことができた。ツアー初日が横浜のF.A.Dで最後(Extra公演)も同じく横浜のKT Zepp Yokohamaなので、卓郎さんがフロアに向けてツアーを回ってまた横浜に帰ってきますから!と話していた。卓郎さんがツアーを通して新しい曲が9mmの音楽の一部になっていくと絶妙な表現で話してくれたこともあり長いツアーに出る9mmを見送るような気持ちにもなり、来年の3月に9mmが横浜に帰ってきた時にアルバム曲の演奏がどのようになっているのか余計に楽しみになった。

     

20240822/KEYTALK&9mm Parabellum Bullet“DREAM MATCH 2024”@新宿LOFT

     

新宿LOFTの歌舞伎町移転25周年を記念したイベントの一環でKEYTALK9mm2マンライブが開催された。2014年に9mmの企画で対バンして以来の共演で、どちらも大好きなバンドで9mmKEYTALKの対バンを再び観られる日をずっと待っていたのでこの公演の開催は本当に嬉しかったが、その後KEYTALKが活動休止を決断しこれが休止前最後のライブになるなんて。

 

入場するとフロア前方や段差上の最前列など見やすそうな場所はほぼ埋まっていたが、一番上の段の最後方に行ってみると奇跡的に前の人の頭が被らずステージがよく見えたのでそこで見ることにした。ステージの前にはスクリーンが張られ最初はどちらが出るのか分からないようになっていたが、開演時刻が近付くとサウンドチェックが始まり明らかに9mmの楽器と思われる凄まじい音が聞こえてきた。

 

9mm Parabellum Bullet

 

Discommunication

The Revolutionary

Supernova

名もなきヒーロー

All We Need Is Summer Day

The World

カタルシス

Brand New Day

One More Time

Black Market Blues

Punishment

 

定刻から5分ほど過ぎたあたりでスクリーンが上がり、場内が暗転しSEDigital Hardcoreが流れ9mmメンバーとこの日のサポートギター、HEREの武田将幸さんが登場。ステージにはLOFT移転25周年記念のロゴが描かれたバックドロップが掲げられていた。長身の卓郎さんはステージに出るとすぐ天井に両手を伸ばすと届いた!というような表情を見せていた。滝さんもそれに続いて天井のパイプを掴んでみせたように見えた。

Discommunicationからライブがスタート、1曲目から和彦さんが何度もフロアを笑顔で見ていたので久々のLOFTを楽しんでいるのかなとこちらも嬉しい気持ちに。2007年にリリースされたDiscommunication e.p.に新宿LOFTのライブ音源が入っているのでこの曲を最初に持ってきたのかもしれない。普段はライブ中盤〜終盤で演奏されることが多い気がするThe Revolutionaryが早くもセトリ入り、5人編成なのでステージの広さ的に大きく動き回れないながらも間奏では卓郎さんと滝さんがステージ前方で2人並んでギターソロを弾いてフロアを沸かせ、和彦さんと武田さんがかみじょうさんの前に集まって演奏するというお馴染みのフォーメーションを披露!アウトロでは和彦さんがリズムに合わせ軽快にジャンプを繰り返した。

Supernovaでは途中で滝さんのギターに何かあったようで一旦弾くのを中断していたが、スタッフさんとの見事な連携でサビに入るまでの間にスムーズにギター交換を終え、またその間は武田さんの完璧なフォローが見事だった。「Supernova」は KEYTALKに同名の曲があるので、それが理由で演奏されたのではないかもしれないが縁を感じて嬉しくなった。Supernovaから音を切らずシームレスに次の曲へ繋げる通称激つなぎで名もなきヒーローへ。ジャケ写を彷彿とさせる青とピンクの照明に彩られた5人の佇まいには頼もしいかっこよさがあった。間奏ではかみじょうさんが音源よりも多めにシンバルを叩くアレンジを入れていた気がした。

〈勝ち目が見当たらなくたって 逃げたくないから笑ってんだろ くじけそうな心をふるいたたせて〉

〈正しい答えじゃなくたって 間違いだとは限らないだろ たおれたらそのまま空を見上げて〉

〈明るい未来じゃなくたって 投げ出すわけにはいかないだろ また明日 生きのびて会いましょう〉

明確に9mm流の応援歌として生み出されたこの曲の一言一句すべてが、それを真剣な表情と柔らかい笑顔を交互に見せながら歌う卓郎さんの姿が、この日はKEYTALKへのエールのようにしか思えなかった。

 

ここで最初のMC。フロア前方やステージの方はかなり暑くなっていたのか卓郎さんが本当に空調付いてる?と漏らしたり最近日本の夏力が上がってるよね、と言ったりしつつ「こんな暑い日9mmKEYTALKLOFTで対バンさせるなんてどうかしてる!でも、だから25年も続いたんだよね。おめでとうございます!」とLOFTにお祝いの言葉を贈った。

そんな話からAll We Need Is Summer Dayの演奏に入ると真っ赤な照明が灼熱感を演出しサビ前では〈All We Need Is Summer Day〉の元気な合唱が巻き起こるなど歌舞伎町の地下にいながら夏フェスの風景を思い起こさせるようだった。上がりきったフロアの熱気を下げるようなギターのクリーンサウンドから始まったのはThe World。かつて9mmがこの曲が入ったCDのリリースツアーとしてLOFTでライブを行ったという縁のある選曲で、自分は当時まだ9mmを知らずThe World Tourを観られなかったのでLOFTThe Worldを聴けたのが余計に嬉しかった。次の曲は9mmの最新曲カタルシス、卓郎さん、滝さん、武田さんが3人で向かい合うと滝さんのカウントで3人同時にギターを鳴らして演奏に入った。中盤では〈蒼く 高く 空は 澄めども 赫く 深く 帷は 降りる〉という歌詞を表すように赤と青のスポットライトが交差する演出。呪術廻戦の主人公をイメージして書いたというどこかダークな雰囲気の歌詞を、キリッとした眼差しで卓郎さんが歌い続け、アウトロではかみじょうさんが表情を一切変えずに爆速でバスドラを連打するなどものすごい迫力だった。

 

演奏が終わりステージが暗くなると滝さんが小気味良いフレーズを弾き始め、それにかみじょうさんも乗っかってセッションが始まった(MCに入る前にちょっとしたセッションが始まるのは9mmライブではお馴染み)。卓郎さんが先ほど演奏したカタルシス9mmの最新曲であることを紹介しつつ、The Worldを「時じゃなくて呼吸を止める方」(自分は元ネタが分からず後日友人にジョジョのネタだと教えてもらった)と紹介してフロアの笑いを誘っていた。

17年前?(と和彦さんに確認すると和彦さんが頷く)に新宿LOFTThe World Tourというツアーをやった時の曲で、それが初めてのLOFT出演?(と和彦さんに確認すると和彦さんが違うよみたいな仕草を返す)その前にイベントで出たことがあったんだっけ。」と9mmLOFTの関係を振り返りながらThe WorldLOFTと縁深い曲であることを語った。

「今日来たみんなの気持ちが手に取るように分かる。おれたちも色々あったけど20周年を迎えてライブができてるから、きっといい未来が待ってる、ってKEYTALKKEYTALKのファンに言いたい。責任は取らないけどね!(笑)」

「何があったか調べなくていいけど。病歴見られるみたいで恥ずかしい、ただの飲み過ぎじゃねえか!みたいな。20年やってるけどこないだ飛行機に乗れなかったからね(新千歳空港のトラブルで9mmライジングサンロックフェスティバルの出番に間に合わなかった)。」

と笑顔で明るく前向きに話してKEYTALKKEYTALKのファンにエールを送った。卓郎さんがそう言うなら9mmに何があったかを書くと野暮になってしまうので控えるが、当時の状況を知る身からするとあんなに大変だったのに、フロアに満面の笑みを向けながら明るくエールを送る卓郎さんが今どれほどの優しさをKEYTALKKEYTALKファンへ向けてくれたのか、寄り添ってくれているのかを強く実感した。

 

卓郎さんが「行こうぜ!」と力強く言ってから演奏に入ったBrand New Dayの〈嘘みたいに遠くに見えている 目的地はいつでも嵐の向こう〉で勝手にKEYTALKのことを思い浮かべてしまい、サビの〈いつかすべてがきらめく日を〉で卓郎さんの「きっといい未来が待ってる」という言葉を反芻し、最後のサビでは

〈いつかすべてがきらめく日を〉

Brand new day どうか 僕にもひとつください〉

に卓郎さんが「KEYTALKにも!!」大きな声で付け加えたので、直前のMCも合わせ9mmからKEYTALKへのエールがあまりにも頼もしく温かくてKEYTALKのファンとして大感激して感情が溢れて止まらなくなった。

その流れにもしっかり続くように、サビでステージとフロアが一体となって何度も〈One more,one more time〉と歌うOne More Timeが演奏され間奏のギターソロに入る直前には卓郎さんが〈ほら出番だよご主人様〉と歌った後に「滝ちゃーん!!!」と叫ぶと滝さんがステージ前方へ出てきてギターを弾きまくりフロアを盛り上げた。次にBlack Market Bluesを投下して更にフロアを盛り上げ卓郎さんが〈地下鉄の改札から218秒かけて 「新宿LOFTに辿り着いた」なら!!〉と歌詞を変えて歌っていた。最後の曲はPunishment、歌い出しのあたりでは滝さんが飲み物を飲んでからしばらくギターを弾かずに踊っていたりとやはり楽しそうで、間奏に入るとそれまではステージ後方からほぼ動かなかった武田さんもステージ前方へ出てくると和彦さん、卓郎さん、武田さん、滝さんが並んだ。最後は残ったエネルギーを全て出し尽くすかのような轟音、和彦さんは下手の壁に壁にタックルするくらいの勢いで動き回りながら演奏していた。

 

演奏が終わると滝さんと武田さんは早めに退場し、和彦さんはフロアにピックを何枚も投げていて一瞬フロアに向かって謝るような仕草をしていたがピックが変なところに飛んでしまったのか。かみじょうさんはドラムセットの方からステージ前方へ出てくるとスティックを投げ退場。卓郎さんがステージ中央で短めにお辞儀をすると最後にフロアの柱のあたりにいる人達の方を見て笑顔で手を振ってから退場していった。

 

DiscommunicationThe WorldといったLOFTと縁深い曲を演奏してKEYTALKへのエールのようなThe Revolutionaryや名もなきヒーロー、Brand New Dayも入れてあまり9mmに詳しくないKEYTALKファンでもフェスなどで聴ける機会が多かったであろうBlack Market Bluesもしっかりやった上で最後は爆速爆音のPunishmentでフロアをぶち上げていったのがあまりにも最高のセトリだった。

昨年、9mmが色々なことを乗り越え19周年を迎えた到達点の曲としてBrand New Dayを大事に聴いていたけれどこれからはそれに加えてKEYTALKと自分達KEYTALKファンへのエールとして贈られた曲だと思って聴き続けるんだなと思ったらこの曲が余計にいとおしくなった。

 

 

再びスクリーンが降りてきて転換に入った。音や声からメンバー本人がセッティングしているようにも聞こえた。ワイヤレスの設定が難航していたのか時間をかけてスタッフさんが何度も確認していたが無事セッティングが完了したようで安心(演奏中にもスタッフさんがステージ端に立ち細かな調整を行っていた)

自分のいたフロア後方のあたりでは、9mmの出番が終わるとすぐに何人かの9mm目当てと思われる方々が後ろにいるKEYTALKファンの方々に声をかけて段上最前列の見やすい場所を譲っていて、その光景に心が温かくなった。

 

 

KEYTALK

 

MATSURI BAYASHI

アゲイン

ハコワレサマー

DROP2

ブザービーター

color

テキーラキラー

ナンバーブレイン

One side grilled meat

エンドロール

summer tail

黄昏シンフォニー

Oh!En!Ka!

 

夕映えの街、今

 

スクリーンが上がりSEの「物販」が流れると巨匠、武正さん、八木ちゃんが元気よく登場。1曲目はMATSURI BAYASHI、赤と白の照明がお祭り感を演出する中サビに入ると武正さんがギターを弾くのを一旦やめて踊り始めるなど普段通りの明るいパフォーマンス。続いての曲アゲインは過去自分が行ったライブではなかなか聴けなかったのでまさかこのタイミングで聴けると思わず不意を突かれ驚きつつ嬉しかった。ハコワレサマーはキーを下げていたような気が。サビで元気にフリコピするフロアを笑顔で見る巨匠と八木ちゃん、ギター弾きながら時々踊りながらニコニコとフロアに満面の笑みを向ける武正さん、湿っぽさなど全く感じさせないとにかくKEYTALKらしい楽しい雰囲気。

 

ここでMC。武正さんが「Everybody sayまかまかほーい!」\まかまかほーい!/とお馴染みの「ペーい!」ではないコール&レスポンスを始めたがそれゆえにフロアの反応が今ひとつだったからか「お前ら!!休止前最後のまかまかほいだぞ!!!」と煽り再びの「Everybody sayまかまかほーい!」で今度はフロアから元気な\まかまかほーい!/が返ってきた。

巨匠「KEYTALK、になる前のrealに加入した頃、1819歳くらい?」

武正「19じゃない?512(巨匠の誕生日)の後でしょ?」

巨匠「で、その頃バンドサウンドに馴染みがなかったからYouTubeで色々聴いて勉強してて真っ先にスッと耳に入ってきたのが9mmだった。休止前最後のライブがワンマンではなく2マンなのは何か意味があるんじゃないか、と思っています。」

 

巨匠が9mmとの出会いを話してくれた次の曲はDROP2、同期でシンセのサウンドを入れつつ歌のメロディーの裏で存在感を放つギターのフレーズやぐいぐい突き進むようなストロングなリズムなど曲調は若干違えど9mmと何となく共通するようなところがあるような気もするなと思いながら聴いていた。サビで武正さんがコーラスを入れていたのが珍しい気がした。ほぼ1年振りにライブで聴けた個人的にはレア曲であるブザービーターと、おそらく5年振りくらいに聴けたcolorが続けて演奏され再び驚き。久々に聴いても体が覚えている、ブザービーターのハンドクラップを入れながらリズムをとる楽しさやcolorでは八木ちゃんがこのイベント開催にあたり行われたインタビューで「ツインペダルは付いているのでメンバーに怒られない程度に」バスドラを連打したいと言っていたのを思い出しその通りのセトリを組んできたなと楽しい気持ちになった。

武正さんがテキーラキラーのイントロのリフを弾き始めるとおもむろに立ち上がった八木ちゃんが小さなコップを手にステージ前方へ。本物のテキーラ!?と様子を伺っているとグイッと一気に飲みコップをフロアに投げた。ドラムセットに戻った八木ちゃんを巨匠と武正さんが確認するとそのままテキーラキラーの演奏が始まった。巨匠が出だしの歌に僅かに入り損ねてしまったのはご愛嬌。元々ツインボーカルの絶妙な掛け合いがあり、それを1人で歌おうとするとかなりブレスの入れ方が難しい曲であるがサビに入ると武正さんも歌って巨匠とのツインボーカル状態に。DROP2でもそうだったが、巨匠と武正さんが一緒に歌っていた姿に武正さん達がどうにかして今できる限りのことやってKEYTALKを守ろうという気概を感じて純粋に感激した。

自分が長年、9mmKEYTALKの対バンが実現したらこの曲を演奏してくれたらいいなと願っていたナンバーブレインとOne side grilled meat2曲が続けて演奏されたので念願が叶った!!3人の様子がこうだったとか、フロアの様子がこんな感じだったとか、しっかりと目に焼き付けたはずなのにあまりの嬉しさでとにかく嬉しかった!という感情以外の記憶がほとんど飛んでしまった。

 

巨匠が「俺たちには夏の曲がたくさんあるけど、その中でもしっとりした曲を演奏します」という感じの話をしてから演奏が始まったのはエンドロール。

続いてキーを下げて演奏されたsummer tailはピンクとオレンジの照明が夏の夕暮れのような雰囲気を作り出した。巨匠が言った通りKEYTALKの夏の曲はたくさんあり、お祭り的ナンバーだけでなく情景を思い浮かべながらほんの少し切ない気持ちを感じるような曲も魅力なのでそれを象徴するようにエンドロールとsummer tailを続けて披露したこの流れは大変良いものだった。

黄昏シンフォニーもキーを下げて演奏されていたのでやはり巨匠の喉の負担を少しでも減らすためだったんだろうか。〈この先君を待ついくつもの未来を 僕はどれだけ支えていけるのかな〉〈それでもこの手を離さないでいて〉の部分が、活動休止となるKEYTALKから観客へのメッセージのように思えてしまって、KEYTALKの演奏中はずっと我慢していた涙が出そうになった。

 

今日は声が枯れるまで歌おうと思って来たと言う巨匠の声は確かに少し掠れていた。

「今日演奏できなかった曲もあるけど、みんな曲に対する色々な思いがあって、それで曲が育っていくと思います。(戻ってくるまで)曲を育てていってくれると嬉しいです。」

 

「今日まではずっとみんなに向けてこの曲を歌ってきた。でも今日だけはみんなが僕達に歌って欲しい。」巨匠がそう言ってから歌い出したのはOh!En!Ka!だった。

〈何度だってまたそこから立ち上がるんだ そんな君に歌いたい歌があるから その心に確かなスタートを 声を枯らして君に届け応援歌〉

このような状況だからOh!En!Ka!の歌詞に巨匠達の独白と自らを鼓舞する気持ちと、自分達がKEYTALKを応援したいという気持ち、その全てが入っているように感じることができた。ただのファンがメンバーのために出来ることはほとんどなく、力になりたいというおこがましいことも考えないようにしていた。なので巨匠から「僕達に歌って欲しい」と、自分達がKEYTALKへ応援の気持ちを伝える時間をくれたことが何よりも嬉しかった。声が枯れるまで歌うと覚悟を決めた巨匠の気持ちと最後の〈声を枯らして君に届け応援歌〉の一節が重なった。

 

どのあたりのMCだったか忘れてしまったが、久し振りにKEYTALKLOFTでライブをやるということで八木ちゃんが昔LOFTに出させてもらった時よりも今日更新してます、と言いつつ「かかってこい!!」と叫ぶと巨匠が冷静な口調で「かかってこいと申しております」と解説して、「かかってこいの説明することあんまりないよ?」と武正さんが口を挟むといういつものKEYTALKらしい思わず頬が緩むような流れがあった。

 

本編の演奏が終わり、アンコールの手拍子がしばらく続いてから3人が再びステージに登場。どのタイミングだったか、八木ちゃんがドラムセットに戻った時だったか最後に気合を入れるためか急にシャツを脱いでいた。

「思ったより早くステージに戻ってきました!」

「あ、今休止中だったんだ?」

「またすぐ休止します」

というやり取りでフロアを笑わせつつここで満を持して武正さんが

Everybody sayぺーい!」\ペーい!/

Everybody sayぺーい!」\ペーい!/

「これは普段の生活で言わない言葉!!」

に続いて

Everybody sayぺいぺい!」\ペいぺい!/

Everybody sayぺいぺい!」\ペいぺい!/

「これは普段の生活で言う言葉!!」

と本編最後に少し湿っぽい雰囲気になったかもしれない流れを吹き飛ばすように畳みかけた。

 

この時間が終わってしまう名残惜しさを噛みしめる中、巨匠が〈降り続け染めてく かじかんだ手のひらにそっと〉と歌い出し、この日最後の曲、夕映えの街、今 の演奏へ。休止前の最後の最後で歌われた〈終わりなき旅の途中で〉の一節にKEYTALKが終わるわけではないから、と言われたような気がして泣きそうになったり曲が進むにつれやっぱりただただ楽しくて活動休止の実感がなくなったりと自分の心もこの短い間に色々と変わっていって、でも最後には楽しい気持ちが勝った。KEYTALKのライブでは久し振りにダイバーが大量発生するのを見た気がするが、最後は巨匠もフロアにダイブしながら歌いフロアがグシャグシャになって巨匠が落下したように見えたので心配ではあったが歌いきったあたりでステージに戻ってきた。武正さんがずっとフロアのあちこちを見ながらフロア最後方にいた自分にも分かるくらいはっきりと口を動かして大丈夫?大丈夫?大丈夫?と何度も何度も話しかけていて優しかった。

 

演奏が終わり3人がステージ前方に集合すると巨匠もシャツを脱ぎ、武正さんもそれに合わせるかのようにシャツを脱ぎ始めたがボタンを一つ外したところで一つずつ外すのをやめボタンを引きちぎるようにして勢いよくシャツを脱ぐと、そっとお腹の肉をつまんだのでその様子に吹き出してしまった。そのまま3人でお辞儀をすると武正さんがフロアにピックを次から次へと投げてタオルまで投げて最後に着ていたシャツを頭上でぶん回しまさかそれも投げるのかと思ったがさすがにシャツは投げず、最後まで笑顔で退場していった。

 

 

自分は9mmKEYTALKもずっと大好きで曲を聴き続け(KEYTALKについてはここで記事が書けていなかっただけで)両者とも可能な範囲で行ける限りのライブに通い続けてきた。2014年に9mmの主催イベント「カオスの百年vol.10」にKEYTALKが出演した時は本当に嬉しかったし、それ以来対バンの機会はなかったがいつかまたKEYTALK9mmの対バンを観られる日を10年間待ち続けていた。昨年開催の9mmの武道館ワンマンにKEYTALKが贈った花を見てもしかしたら近いうちにご縁があり対バンが実現するかもしれないと期待が高まった。だからこの公演が発表された瞬間、長年の願いが遂に叶うとものすごく嬉しかった。

まさかこの日がKEYTALK活動休止前最後のライブになるなんて、というかKEYTALKが活動を休止する事態になるなんて予想もしなかった。もちろん義勝さんも含めた4人のKEYTALK9mmの対バンを観たかったが、このような状況の中でも招かれたライブはやると決めてKEYTALKがこの公演に出演してくれたのは嬉しかったし、休止前最後の対バンが9mmというのが個人的には安心感があった。

それは、どうしても9mmファンとしての贔屓目で見てしまっている部分があることは否定しないけれど、KEYTALKと事情は違えど9mmもかつてバンドが続けられなくなるかもしれないというような経験があり、それを乗り越えて今活動を続けていること、そして9mmのライブでMCを担当する卓郎さんが普段から思慮深く柔らかい言葉で話をされることを知っているから。前述の経験以外にも9mmは今までライブ中幾度となく小さなトラブルに見舞われたが、そのたびに卓郎さんが場を和ませるようなことを言ってくれていて、今思い返すと休止前だからといって重たい空気になりすぎないように明るく話してくれていた武正さんと近いような感じがあった。だから休止前最後の対バンが9mmで本当によかった。次はまた10年後なんて言わず、KEYTALKが復帰したら再びKEYTALK9mmの対バンが観たい。また必ず観られると信じて待ちたい。

 

 

6月半ばに義勝さん活動休止のお知らせが出てから今に至るまでの状況を見てきて、もちろん悲しい気持ちはありたくさん色々なことを考えたけれどこちらが知れることはほとんどないから「どうしてこうなってしまったんだろう」と考えても仕方がなかった。

ただ、6月〜7月の3人編成のライブを会場や配信で観た時に武正さん達がおそらく言えることがかなり少ない状況で最大限こちら側を気遣う言葉を発していたので、その点では自分は3人の今出来る限りの誠意を感じた。7月のFC限定ライブを配信で観た時には演奏開始前に武正さんが「ファンのみんなに3人でできることを誠心誠意お届けしたい。」「KEYTALK、そしてKEYTALKのライブという場所をよかったらみんなと一緒に楽しく守っていけたら嬉しいなと思っている。」と話してくれた。

アコースティックライブの際にも演奏前に真っ先に武正さんから謝罪の言葉があり、ライブ終了後には822日で活動休止すること、全国ツアーの休止について巨匠が「4人で考えたツアーだから、心に引っかかりのあるままやるのは」と休止に至った気持ちを丁寧に話してくれた。こうなってしまった以上、どうしても色々な意見が目に入ってしまうであろう状況でステージに立ち続ける3人の心労も心配だったので、もちろん寂しい気持ちは強いけれどそのような話を直接聞けたこともあり活動休止には自分は納得している。

活動休止の発表があった際にはっきりと解散ではないと言っていて、場内の空気が重くなると武正さんが「休みまーーす!」と明るく言ってくれた。どんな形か分からないけどまたみんなで遊ぼうと活動再開を誓うように話してくれた。どのあたりだったか忘れてしまったが新宿LOFTでも巨匠が「ライブハウスが帰ってくる場所だと思ってる」と言ったり、演奏中に武正さんが「絶対戻ってくるからな!!!」と叫んだり、何度も解散ではない、ちょっと休みます、戻ってくる、と言いながら最後まで明るいKEYTALKの姿でいてくれたので寂しさもありつつ必ず帰ってくると信じて前向きな気持ちになることができた。曲を聴いて育てていって欲しいという巨匠の願い通り、ずっとKEYTALKの曲を聴き続けながら復帰を待ちたい。

   

   

20240728/9mm Parabellum Bullet“SHINJUKU BLAZE LIVE SERIES ~Many Thanks~”@新宿BLAZE(メモ)

    

731日で閉館する新宿BLAZEのクロージングライブのひとつとして開催されたワンマン。

このライブの3日後にファン投票で収録曲を決めた配信限定ベストアルバムがリリースされるというタイミングだったこともあり、このワンマンでベストアルバム再現ライブをやることが事前に発表された。セトリが分かっている状態でも普段は終盤で演奏されることが多いPunishment5曲目に入っているなど普段のライブとは違った曲順なのでどういう感じになるのか予想がつかないところもあって楽しみだった。

下手側後方の一番高い段上スペースを確保。ステージからは距離があったものの全体を見渡せるいい場所だった。サウンドチェックの際に滝さんの茶色のSufferが出てきて、重くて滝さんの体に負担がかかるからと長いことライブで使われなかったが最近また少しずつ使われるようになってきたSufferで演奏が聴けるんだなとより楽しみな気持ちになりながら開演を待った。

 

 

Blazing Souls(SE&後半から生演奏)

太陽が欲しいだけ

Black Market Blues

The Revolutionary

キャンドルの灯を

Punishment

Talking Machine

Discommunication

光の雨が降る夜に

黒い森の旅人

ハートに火をつけて

ロング・グッドバイ

Supernova

名もなきヒーロー

Scenes

スタンドバイミー

ガラスの街のアリス

生命のワルツ

Mr.Suicide

Brand New Day

One More Time

 

カタルシス

Wildpitch

 

ほぼ定刻に場内が暗転するといつものDigital Hardcore…ではなくBlazing Soulsの音源が流れメンバーが登場、後半から生演奏に切り替えるというスタイルでライブが始まった。本編はベストアルバム収録曲だけをやると勝手に予想していたのでBLAZEだからBlazing SoulsSEにしたのはその手があったか!と粋な計らいに膝を打ったし、SEとして途中まで音源を流して後半から生演奏という流れは2020年のライブ2Q2Q、コロナで有観客ライブが出来なかった期間を経て数ヶ月振りに有観客で開催できたライブと全く同じだったのでそれを思い出し、あの期間も乗り越えて今この光景があるんだなと胸が熱くなった。

ここからいよいよベストアルバム再現パートへ。ファン投票で1位だった太陽が欲しいだけ は自分が投票した3曲のうちベストに入った唯一の曲だった。〈さあ両手を広げて全てを受け止めろ〉の部分でのフロアに上がる無数の手の向こうに見えるステージ、といういつもの光景はフロア後方から見るとより良いものだった。Black Market Bluesでは卓郎さんが〈新宿BLAZEに辿り着いたなら!〉と歌詞を変えて歌っていたがこう歌えるのもこれが最後かと思うと少し寂しい気持ちに。何度聴いてもイントロが始まった瞬間に優勝だ!!という気持ちにさせてくれるThe Revolutionaryでは間奏で卓郎さんと滝さんがふたりでツインリードを弾き、その後ろで爲川さんと和彦さんがドラムセットの前まで移動してかみじょうさんと3人で向かい合うという美しいフォーメーションがこの日も見られた。

 

ここで最初のMC。フロアから20周年おめでとう!と声がかかると卓郎さんがありがとう!と返し拍手が起きたが、その後スッと拍手が止まると卓郎さんがありがとうって言ったら終わったねというようなことを言った(ように聞こえた)

次の曲はキャンドルの灯を なので下手では和彦さんがいつものベースからアップライトベースに持ち替えていて、卓郎さんが普段と様子が違うよねというような感じで触れると和彦さんがアップライトをクルッと一回転して見せたが、この曲の前にMCが入るなんて今までほとんどなかったかもしれないし、なので演奏中でないタイミングで和彦さんがアップライトをクルッと回すのを見られたのもかなりレアで、いつものライブ用のイントロもなくかみじょうさんのカウントで音源通りのアレンジで演奏が始まったのもレアだった。

ベストアルバム再現と聞いて「Punishmentがこの位置に来るとどんな感じ?」と一番気になっていたが、これもいつものライブ用イントロを入れずに始まったのでびっくりしつつこんな序盤に出番が来たPunishmentの違和感が面白すぎてしばらく笑いが止まらなくなってしまった。間奏では爲川さんもステージ前方に出てきて和彦さん・卓郎さん・爲川さん・滝さんが一列に並んだのがクライマックス感あってもうライブ終わり!?と一瞬だけ錯覚してしまった。普段は Punishmentの前に演奏されることが多いので逆の曲順が新鮮だったTalking Machine もライブ用イントロなしだった。最後のサビではかみじょうさんが普段よりも大きく腕を振り上げて演奏するのが見えた。ど定番曲が並んだのにベストアルバム再現だとこんなに普段と様子が変わるのかとかなり面白い流れだった。それに続いたDiscommunicationは普段通りのライブアレンジがよく見る黄緑色の照明の中で演奏された。

 

今日のセトリは様子がおかしいと卓郎さんが内容に触れ、この時だったか曲順が分かっているんだからステージにめくりがあってもよかったね!と紙をめくるジェスチャーをすると和彦さんがそれを見て笑っていた。

次の曲、光の雨が降る夜に はどんな形式のファン投票でも必ずランクインするので卓郎さんが「しぶとい!」と言って笑いを誘った。みんな光の雨好き?と卓郎さんがフロアに話しかけると拍手や大きな歓声が上がったのでその様子に「みんなが好きならいいか!」と笑顔で言っていた。

 

新宿にもぴったりなんじゃないか、まだ星が出てるかは分かりませんが、光の雨が降る新宿の夜に!と演奏に入ると淡い水色の光がフロアいっぱいに広がり、それが華やかな演奏によく合っていた。独特のキラキラした雰囲気と少し歌謡曲的なメロディーが大都会新宿のイメージに本当によく合っていて、9mmが新宿でライブをやる回数はそこまで多くないので貴重な機会だった。DiscommunicationまではSufferで演奏していた滝さんが光の雨が降る夜に からは軽量のギターであるカルマスターに持ち替えたので、カルマスターになったら重たいSufferに比べるとやはり音が軽くなったがそのカルマスターならではの音が光の雨の煌びやかさにものすごく合っていたので、今後Sufferとカルマスターをこんな感じで使い分けられるようになったのならとても素敵だなと思った。

これもライブ用イントロを入れずに演奏が始まっただろうか、黒い森の旅人では光の雨と同じ水色の照明だったがサビで木々の間から漏れる光を表すかのように白い光を入れていたのが曲にとても合っていた。黒い森の旅人の次はハートに火をつけて とアルバムDawning収録曲が並びその後にロング・グッドバイが続くという流れだったが曲調的に黒い森の旅人とロング・グッドバイの間にハートに火をつけて が挟まるのも普段だったら無さそうだから再現ライブならではだなと考えながら聴いていた。

SupernovaMVが日本刀の出てくるアクション映画的な映像なのでそういえば歌舞伎町で聴くのがかなり合ってるのかもと思うとセトリに入ったことがより嬉しくなった。Supernovaから激つなぎで名もなきヒーローへ。MVに近いようなビビッドなピンクと水色の照明を浴びて演奏する5人の姿が勇ましくかっこよかった。名もなきヒーローからScenesそしてスタンドバイミー、ファン投票の結果を見た時からこの3曲が続くのいいなと思ってはいたがこの日実際に聴いた時に心があたたかくなるようなほっとするような気持ちになった。9mmの曲は無理に手を引くんじゃなくて悲しい気持ちをそっと包んでくれたり、どうにか進まないといけない時に肩をポンと叩いて併走してくれたりするような優しさを感じる。

 

この辺りだったか、卓郎さんが「おれはロング・グッドバイに投票しました。本当はBABEL全部入れたかった、と本人だと分かるようにコメント入れて。そのコメントをみなさんが見ることはないですけど」と自分もベストアルバムの投票に参加したことを話していた。困難な中でバンドを続けていた時期に作り出されたBABELというアルバムにはやはり思い入れも一入、ということだろうか。

BABELを出した時みたいなこともあったけど、どん底だと思っていてもこんな風に(何とかなります)からヘラヘラしていきましょう」と卓郎さんが言った言葉が、この時とある悲しい出来事に直面していた自分にとっては本当に救いだった。困難を乗り越えた人の言葉は強くて優しかった。

 

「新宿というガラスの街」と前置きが入ってから演奏されたガラスの街のアリス では最初のサビで卓郎さんが「愛してるぞ新宿!!」と叫んだ。光の雨が降る夜に と同様都会的な曲調で新宿にぴったりの曲。続く生命のワルツでは曲に入る時にかみじょうさんが何かしらの機材のスイッチ押しているのが見え、そうやってイントロの音源を流しているのかと今更かもしれない発見があった。力強くエネルギーに満ち溢れるような曲調の生命のワルツからパンチのあるリフが特徴的ながら心の内を繊細に表現したかのような歌詞のMr.Suicideという、タイトルからして真逆の曲が並んだのも再現ライブならではというか、この日限りの流れかもしれない。終盤にして昨年リリースされた比較的新しい曲であるBrand New Dayまでしっかり入ってきてしかもファン投票19位が9mm19周年にリリースされた曲というのもすごいし、本編最後=ベストアルバム最後の曲はOne More Timeで、ステージとフロアが一体となって何度も〈One more,one more time〉と歌うOne More Timeが最後に来ることで20年の節目だけれどまだまだこの先があるぞ!というように感じさせてくれる絶妙な選曲なのもすごい、本当にたまたまこの順位になったのかをつい疑いたくなるほどに。

 

5人が一度退場し、アンコールの手拍子が長めに続いた後に再びステージに登場。かみじょうさんはこの日から発売されたグッズの、青いフード付きタオルを被り、ステージの下手側で一度止まると自らの頬っぺたを指で突くかわいいポーズを取ってからドラムセットの方へ歩いていった。卓郎さんがフロアを見て「(フード付きタオルを)被ってる人いるね!」と笑顔で言っていた。何を持っていたかまでは見えなかったが、滝さんがお酒のようなものを2本持って出てくるとアンプの後ろに置いてから演奏の準備をしていると卓郎さんが滝さんの機材について長いケーブルにしても音が劣化しない画期的なシステムなんですよ、と説明してくれた。詳しくは分からないが昨年あたりから導入された?滝さんが腰のあたりに付けた何らかの機材を経由してギターにシールドを差すようになったのが不思議だったので教えてもらえて嬉しかった。

 

アンコール1曲目は9mmの最新曲カタルシス。かみじょうさんがタオルのフードを被ったまま演奏に入り、シリアスで壮絶なカタルシスをフード付きタオルを被った可愛らしい姿のまま叩きまくっていた様子が曲調とのギャップがすごかった(さすがに終盤ではフードを脱いでいた)。アンコールのラスト=新宿BLAZEでの最後の曲はWildpitchで、去年からしばしばライブの最後に演奏されているが未だにこの曲が演奏されると新鮮でびっくりしてしまいそれから嬉しさがこみ上げる。最後の最後にこの日一番と言ってもいいくらいの激しい演奏、アウトロでは滝さんが和彦さんの近くまで走っていくぐらいの大暴れを見せていた。

滝さんがフロアを見つつ真っ先に、爲川さんがそれに続いて退場。和彦さんが大量のピックをフロアに投げてから退場。かみじょうさんがステージ前方まで出てくると珍しく卓郎さんのマイクを通して話し始め、

「全然見えなかった!」(スティックを投げる)

「間違えちゃった!」(スティックを投げる)

「ごめんね〜」(スティックを投げる)

と、フード付きタオルを被っていたことに言及して退場していった。

 

 

どのあたりだったか忘れてしまったもの。序盤のMCで滝さんがギターのボディを叩きながら弦に触り不思議な音を出していたり、MCに入る前に用意が終わった滝さんがギターを弾き始めると他のメンバーもそれに乗っかり短いセッションに。それが終わると卓郎さんが名曲ができた!と嬉しそうに言っていた。後半のMCでも同じ流れになって卓郎さんがまた名曲ができたと喜んでいた。ライブ中にセッションが始まるのも最近ではよく見られるので本当にここから曲が完成したら素晴らしいなと毎度思わずにはいられない。

それと、小さいことではあるがどこかのタイミングで卓郎さんが耳栓裏返しになってた!と言っていて、卓郎さんライブ中に耳栓付けていたのかと新たな発見があった。

6月にレコーディングを行っていたという新しいアルバムが遂に完成したそうで、まだ曲数は言わない方がいいか、と言いつつ今回もいいアルバムが完成したというような雰囲気があり、まだ発売日の発表もない状態なので詳細が発表されるのがより待ち遠しくなった。

 

BLAZEでのワンマンが決まった際に元からベストアルバム再現ライブをやろうと思ったわけではないが、投票の結果を見てこのままライブができるのではないかと思った、というような話もあった。全てのアルバムから曲が選ばれ定番曲とレア曲、初期曲と新しい曲がバランスよく入りつつ普段まずないような曲順の部分もあったりしてワンマン1本やるのにぴったり。9mmっていい曲ばかりだね、とも卓郎さんが言っていたがライブ中色々な年代の曲を聴きながら何度も全く同じことを思った。

 

最後のBLAZEということで思い出話も。2023317日にHEREfolcaとの3マンライブ「逆三角関係」で最後にステージに傘をたくさん並べたこともあったと話していた。卓郎さんがかつて新宿に住んでいたという話は時々インタビューなどで出てきていたが、西新宿に住んでいた頃に好きになった菊地成孔さんが731日、BLAZEの最終日に出演されるので同じ括りで出られて嬉しいというような話もあった。BLAZE 9mmの知人?である「ジュンザブロウさん(通称)」という方が働いておりそのご縁があったらしい。卓郎さんがまたBLAZEのスタッフがBLAZEのようなものを作るかもしれないと、BLAZEという場所がなくなってもスタッフさんたちとの縁が続いていくことを願うかのように話していた。

 

9mmBLAZEにはライブの他にアーティスト写真の撮影や今年5月の武道館ブルーレイ発売記念上映会など、またキツネツキがワンマンを開催したりHEREの主催イベントであるハイテンションフェスに和彦さんが所属するバンドSYSが出演するなど、など色々な形で出演の機会があった。この日初めて知ったがライブのリハーサルをBLAZEでやらせてもらったこともあるらしい。最近はZepp Shinjukuができたがそれまで新宿には大箱がなかったことも理由のひとつなのか、9mmを新宿で観られる機会が非常に少ない期間が長かったのでBLAZEのおかげで卓郎さんの「新宿!!」がたくさん聞けたのが本当にありがたかった。新宿にとても馴染みのある自分にとっては9mmと新宿のご縁を繋げてくれた大事な箱でもあった。とてもステージが見やすい構造だったところも好きだった。

 

たくさんの楽しい思い出をありがとうございました!!

    

    

 

 

20240531/9mm Parabellum Bullet“「act VIII」発売記念フロアライブ”@新宿FACE

      

昨年開催された19th Anniversary Tourからいくつかの公演と9月の武道館ワンマンの模様を収録したブルーレイ「act VIII」のリリースを記念して開催されたフロアライブ、というなかなか不思議なワンマン。会場の新宿FACEは普段ライブだけでなくプロレスの試合も開催されており、インディーズ2ndPhantomime」に収録されているTalking MachineMVを撮影したという伝説の場所。多用途のためか小規模の会場ながらフロア後方に段差が付いているのが珍しかった。

 

フロア中央に演奏エリアが設けられ、サポートギターの武田さんを含む5人の機材が向かい合うような円形に配置されていた。フロア下手側の壁に背を向けるような位置に卓郎さん、そこから時計回りに滝さん、武田さん、かみじょうさん、和彦さん、という並び順。卓郎さんのアンプと和彦さんのアンプの間にお立ち台、滝さんのアンプと武田さんのアンプの間にもお立ち台が置かれていた。

卓郎さんのアンプのすぐ裏にはローディーさんの作業台が置かれチューナーや弦、ギター持ち替え指示が書いてあると思しきセトリが表示されたタブレットなどが置かれていた。おかげでライブ中、普段はなかなか近くで見られないローディーさんのお仕事を間近で見ることができた。その右側にはギタースタンドがあり和彦さんのベースと卓郎さんのギターが置かれていた。開演時間が近付くとスタッフさんがメンバー用のペットボトルを置きに来たが、その際滝さんのアンプの裏側に黒ラベルの缶を置くのが見えた。

 

演奏エリアの周りをほぼ一周囲むように観客用のエリアが設けられていて、本来のステージ部分も客が入れるようになっていた。どの位置で見ても普段のライブとは違った角度でメンバーを見られるのでどこに場所を取るか迷ったが、フロア下手側の端、卓郎さんのアンプの後ろ側が演奏エリアが近く段差があり見やすそうだったのでそこで観ることにした。

ほぼ定刻に場内が暗転、Digital Hardcoreがフロアに鳴り響くと(場所を取った時には全く気付かなかったが)フロア下手側、ちょうど自分がいたエリアのすぐ左隣にあった扉からメンバーが順番に登場。滝さんがすっかり伸びた髪をゆるく一つ結びにしてキャップを被っていた。

 

 

Hourglass

Discommunication

Black Market Blues

Brand New Day

太陽が欲しいだけ

interceptor

Supernova

Face to Faceless

Blazing Souls

Spirit Explosion

The Revenge of Surf Queen

カタルシス

バベルのこどもたち

The World

泡沫

(teenage)Disaster

The Revolutionary

新しい光

Talking Machine

Wildpitch

 

ロング・グッドバイ

Punishment

 

 

Digital Hardcoreが止まるとすかさずHourglassのイントロ音源が流れそのまま演奏へ、という意外な幕開け。自分と向かい合うような位置だった武田さんがキリッとした表情と鋭い眼差しで演奏していて、普段は位置的になかなか武田さんの表情が見えないことが多かったので初っ端からフロアライブという特殊な配置ならではの発見があった。次の曲はDiscommunication、フロア下手側以外は演奏エリアと客エリアの間に柵がほとんどなく白線が引いてあるだけだったため滝さんが歩き回りながら観客にかなり近付いてギターを弾いている様子をフロア対角線上から見たり、普段のライブより距離が近い分和彦さんの大きな立ち回りの迫力が普段より増していたりとこの時点でもう既にフロアライブ最高!という気持ちになっていた。

Discommunicationから卓郎さんが〈新宿FACEに辿り着いたなら!!〉と歌うBlack Market Bluesへ、ライブでお馴染みの曲が続きフロアがいつも通り大盛り上がりになったがいつもと違って自分の正面にも観客がいる状態で、正面の観客の方々があまりにもいい笑顔だったのでメンバーから目を離し観客の様子に注目する瞬間が何度もあった。Black Market BluesからBrand New Dayで恒例の激つなぎを披露、熱いBlack Market Bluesからどこか爽やかさと煌めきを感じさせるBrand New Dayへの瞬時の切り替えも見事だった。

 

ここで最初のMC。数日前から出ていた、台風1号が関東に近付くという予報が直前で覆り東京は暴風雨を免れたため卓郎さんが天気持ち直してよかった!来られない人も出てくるかとと話した。このライブは「act VIII」のリリース記念ライブだけどあまり関係ない内容になる、ここで演奏したらいいだろうなという曲をやります、というような話もあった。

 

結果的に天気が回復して何よりだったが台風予報を受けてセトリ入りしたかもしれない?天気の話を入れてから太陽が欲しいだけを演奏、という粋な流れ。真っ赤な照明を浴びながら残った雨雲を吹き飛ばす勢いの演奏を繰り広げ〈さあ両手を広げて全てを受け止めろ〉の部分では観客が一斉に両手を上げ、たくさんの手が卓郎さんたちの周りを囲むという大迫力の光景が広がった。

そこから再び激つなぎで続いたのが何とレア曲interceptor!太陽が欲しいだけ の灼熱感から一瞬でフロアの温度がスッと下がるような緩急の素晴らしさ。Supernovaは割とお馴染みの選曲ながら普段のライブより距離が近い分サビの炸裂っぷりが凄い迫力になっていた。その次は独特のカウントに一瞬どの曲がくるか把握できなかったが始まった演奏を聴いて驚きの声を漏らしてしまった、Face to Facelessという驚愕のレア曲。びっくりしつつも不穏な雰囲気のメロディーにじっくりと聴き浸った。卓郎さんが言った通り(Supernovaは武道館でも披露されたが)act VIII」の収録内容との関連がない、予想外のレア曲が続いた。演奏後、このタイミングで卓郎さんから「新宿FACE だからFace to Facelessをやった」という話があった気がするが、言われてみればそういう理由でFace to Facelessを入れる可能性があったんだなと。

 

新宿FACEはプロレスをやっている会場でもありリングがあること、Talking MachineMVもここで撮影したがライブだとリングの上でアンプが(振動で)ボヨーンとなってしまうからと話していたのでリングの上での生演奏、Talking MachineMVと同じ光景を見たい気持ちもあったが再現するのは難しかったことが分かった。

 

9mmにもプロレスにまつわる曲があります、ここからはインスト3連発!と卓郎さんが宣言すると新日本プロレスへ提供したBlazing Soulsの演奏が始まった。リングは設置できなくてもプロレスに縁のある場所だからこの曲をやってくれるのではないかと期待していたので嬉しかった!スポットライトがグルグルと動きながらフロアを照らす様子が何となくプロレスの入場シーンのようだった。それに続いたのはBlazing Soulsの兄弟分みたいな曲だと以前何かのインタビューで言われていたSpirit Explosionで、Blazing Soulsから引き続き赤を基調とした照明だったのでリリース時の青いジャケット写真のイメージとは違った赤色が意外だったが、それも含めて9mmのヒーロー感を余すことなく発揮していてとにかくかっこよかった。聴いているだけで腹の底からエネルギーが湧いてくるような気分になりひたすら拳を上げ続けた。

フロアを大いに沸かせたSpirit Explosionが終わると、プロレスにまつわるインスト曲はまだあるのでそれも披露かと思いきやそれに続いたのはThe Revenge of Surf Queenという予想外の流れ。音の厚みがありつつ清涼感のあるメロディーが水色の照明とともにフロアいっぱいに広がった。中盤では滝さんが観客エリアとなっているステージへ突撃、下手のスピーカーや手すりに足を乗せて客の至近距離まで行って曲が終わるまでその位置でギターを弾きまくり盛り上げていた。滝さんが突撃していった位置にちょうど固定カメラがあったのでものすごく迫力のある映像が撮れたのではないか。演奏が終わるとまだステージの方にいる滝さんに気付いた和彦さんがあんなところに!みたいな反応をしながら笑っていた。インスト曲3連発、序盤から演奏エリアを動き回っていた滝さんや和彦さんに加えほぼマイクの前に立つ必要がなくなった卓郎さんもギターを弾きながら歩き回ったり、ひょいとお立ち台に上がってフロアに笑顔を向けたりと自由に動き回ってとても楽しそうだった。

 

楽しい雰囲気の演奏が終わり滝さん達が一旦定位置に戻ってから卓郎さん・滝さん・武田さんが集まって向かい合うと滝さんがオフマイクで「1,2,3,4」とカウントするとクリーンなギターの音色で奏でられたのは新曲カタルシスのイントロ。ひたひたと迫りくるような音色にベースとドラムそして歌声が重なりやがて壮絶な演奏へ。まだ歌詞が公開されていないものの中盤で〈赤く〉と〈青く〉が出てくる部分ではしっかりと赤と青の照明が一緒に使われていた。昨年から既に何度もライブで何度も演奏されているが、セトリのどこに入ってきても存在感がすごい。

 

次の曲が始まりそうな気配を見せるようだった、滝さんから始まりかみじょうさん達も乗っかった見事なセッションはこのあたりだっただろうか。それが終わり拍手を浴びると「あのゴジラいつ出てくるんだろう」と新宿FACEのすぐ隣にあるTOHOシネマズのゴジラの話をする卓郎さん。昔、コマ劇場で日雇いのバイトをしたことがあるという話も出てきた。卓郎さんから歌舞伎町との縁が話されたところで「新宿にもうひとつタワーを建てようと思います」と卓郎さんが言うのでまさかあの曲をやるのかと

 

その期待通り、次の曲はバベルのこどもたち。昨今ではセトリ入りの機会もだいぶ減っていたので、まさかこの曲を新宿で聴ける日が来るなんて。やはりどうしてもほんの少しだけこの曲がリリースされた時のことを思い出してしまったが、軽く跳ねながら生き生きと演奏していた滝さんの姿に安心。間奏は間違いなくこの日一番の音圧で客が大きく動いたりジャンプしたりしているわけではないのに床からもかなり振動が伝わってきたほど。圧や緊張感をそっと緩めるかのようなThe Worldのイントロが続きほっとしつつもバベルのこどもたち と組み合わさったことでこの曲の持つどこか儚げな印象がいつもより少しだけ増して感じられたような気がした。「地上」のバベルのこどもたち からThe Worldを経て「水底」の泡沫へ。淡い水色の照明の中、さほど高くない天井とほぼ四方を観客に囲まれて演奏する様子が水の底みたいな景色を作り出していた。中盤の〈どうして どうして どうして いつも〉の部分では和彦さんが体を屈めかなり低い体勢で演奏するという普段のライブでもよく見られるものを、この日は和彦さんのほぼ真後ろからという普段のライブとは違う角度から見ることができた。アウトロでは一瞬だけドラムの手数を増やしたようなアドリブが入っていた気がする。

 

泡沫を演奏している時の光景について、水の底みたいだったと卓郎さんも言っていた。新曲の「カタルシス」というタイトルについて触れ、マイナスな表現(悲劇など)を見ることで得られる心の開放感というような意味があり泡沫もそうなのではないか、と説明していたのを聞いて確かにそうかもしれない、バベルのこどもたち・The World・泡沫は制作時期が全く違う曲ながら並べて演奏するとかなり雰囲気が合っていたのはそういう理由かもしれないと納得。

 

「いけるかー!!」から(teenage)Disasterへ、曲の勢いのよさとフロアの爆発的な盛り上がりがフロアライブに相応し過ぎる選曲!眩い光がフロアを包んだThe Revolutionaryでは間奏に入るとドラムセットの前に卓郎さん・滝さん・和彦さん・武田さんが集まり全員が一ヶ所に固まって演奏、その際に普段はあまり表情を変えないかみじょうさんが珍しくはっきりと笑顔になっていて、そんな5人の様子が筆舌に尽くし難いほど嬉しい光景だった。

卓郎さんが「歌ってくれ!」と呼びかけると大合唱が巻き起こり、円形に向かい合うメンバーとその周りを囲む観客という配置も相まってものすごい一体感だった新しい光 ではそれまでは主に演奏エリアの周りを動いて撮影をしていたカメラマンの西槇さんが演奏エリアの真ん中に入ってきて、長い棒の先に小さなカメラが付いているもの(360°カメラ?)を中央に置いたり、卓郎さん・滝さん・和彦さん・武田さんが集まってギターとベースのネックを一斉に掲げる瞬間を床に寝転がって下から撮っていたりしていた。これもフロアライブだからこそできたことだと思うので、写真が公開されるのが待ち遠しい。

 

この会場でMVを撮ったTalking Machineがここで満を持して演奏。卓郎さんがマラカスを振った時かその直後だったか、珍しくかみじょうさんがカウベルを入れていた。ライブアレンジのイントロは最近他の公演で披露されたと聞いていた「呼び込み君」のメロディーを入れる衝撃のアレンジ!最初は何の曲か気付けなかったがあの独特のメロディーが聞き取れた瞬間笑いが止まらなくなった。卓郎さんが愉快なメロディーに合わせてニコニコしながら両腕をグルグル回したりと楽しさが溢れていた。軽やかな身のこなしでお立ち台にひょいと上がった卓郎さんが音頭をとるかのようにしてメンバーの周りをぐるっと取り囲む観客が叫んだ「1,2,3,4!!」は圧巻で、〈ああ 何べんやっても〉の部分では滝さんと和彦さんが勢いよくジャンプしたりその後も大きく動き回ったりとフロア全体の熱狂ぶりは半端ないものだった。

卓郎さんの「最後の曲です!」から演奏されたのは何とWildpitch、昨年から時々Wildpitchで本編を締めることがあったがここでもやってくれるとは、大好きな曲で最後にWildpitchをぶちかますスタイルがものすごくかっこよくてまた観たいと思っていたので普段より距離が近くフロア全体の熱狂度が高まっていたこの場でやってくれたことが本当に嬉しかった!経緯は分からなかったが終盤に滝さんがギターを弾くのをやめてその場で踊るように動いたりしていたがいつの間に観客エリアに上がってきたのか、ビールを持ってじっとステージの卓郎さん達を見る滝さんが、自分のすぐ近くに立っていた。

 

出入口のすぐ近くにいた滝さんはそのまま退場、それに武田さん、かみじょうさん、和彦さん、卓郎さんが続いた。かみじょうさんが退場途中にPA卓付近のスタッフさんに近付いてコマネチのようなポーズをするとスタッフさんが早く退場しなさい、と言いたげなジェスチャーをしていた。

 

割と長いことアンコールの手拍子が続いてから再度5人が登場、1人ずつフロアに降りていった。かみじょうさんはプロレスを意識したのか(実際のプロレスでやっているのかは分からないが)タオルを振り回しながら入場していた。

 

6月はアルバム制作期間で、曲は既に出揃っているらしい。なのでみなさんとはしばしのお別れという卓郎さんの言葉で次の曲を察し、滝さんの方に目線を映すとその期待通り威勢の良いタッピングからロング・グッドバイ の演奏へ。演奏を楽しみながら前々から卓郎さんが話してくれていた新しいアルバムがもうすぐ完成するんだなと期待が高まってより楽しみな気持ちが湧き上がってきた。本編の最後がWildpitchだったのでPunishmentがこの日の最後を締めくくり、卓郎さん・滝さん・和彦さんがそれぞれ客のかなり近くまで動き回って演奏していて迫力がすごかった。この時だったかと思うが和彦さんがフロア上手側の観客に近づいていくとそこがかみじょうさんの背面にあたる位置だったので、自分から見るとこちらを向いたかみじょうさんと後ろ向きの和彦さんで背中合わせで演奏しているように見えて、それも普段のライブではまず見られない配置なのでものすごくいい光景だった。

 

演奏が終わると滝さんと武田さんが順番に退場。和彦さんは主にフロア上手や後方側に向かってピックを何枚も投げてから退場。かみじょうさんもドラムスティックを3本ほど投げたが最後の1本をちょうど近くにいた卓郎さんが見事にキャッチしてしまい、再度投げ直していた。ゆっくりとかみじょうさんが退場して最後に卓郎さんが万歳三唱、たくさんの万歳!が卓郎さんを囲んだ。卓郎さんはギリギリまでフロアに笑顔を向けながら退場していった。

 

 

「昔、コマ劇場で日雇いのバイトをしたことがある」と言っていた卓郎さん。何かのインタビューで新宿に住んでいたと言っていたし、数年前に卓郎さんのソロアルバムのイベントで新宿のタワレコでインストアを開催した際には「ここにはよく買い物に来ているんですけど」とも言っていた。今まで新宿に大箱がなかったこともあり最近になるまで9mmが新宿でライブする機会は限られていたが、新宿は卓郎さんにとってかなり身近な街なんだなという話がまた聞けたことはかつて新宿で働いていた自分にとっては何となく嬉しいことだったし、今年は9mmが新宿でライブをやる日がまだあるので卓郎さんと縁がある街でのライブだと考えると今後のライブがより楽しみになった。

 

この日のライブは予め電子チケットに「モッシュ・ダイブ・ジャンプ禁止」の記載があり開演前にもしっかりとアナウンスがあった。モッシュダイブ禁止は色々な会場で案内を見るしジャンプに関しては会場が7階なのでビルの構造上ジャンプしたら階下も揺れてしまうからかもしれないと考えていたが、フロア下手側以外は演奏エリアと客エリアの間に柵がほとんどなく白線が引かれただけで観客とメンバーとの距離が驚くほど近く、万が一少しでもモッシュなどが発生すると観客が将棋倒しになって確実に演奏が止まってしまいそうな配置だったのでそういう意味での禁止事項だったことが窺えた。

滝さんや和彦さんがライブ中何度も柵のない観客エリアにギリギリまで近付いて演奏をしていたが、自分が見た限りではそこで客同士押し合いになることもなく、メンバーの体や楽器に触れようとする人もおらず終始とても行儀よく盛り上がっていた。今回のようなフロアライブは観客がきちんと注意事項を守りメンバーに過度に触れないように配慮できるという信頼がなければできないもので、後から思い返してフロアライブという形でワンマンを開催してもらえたことが余計に嬉しくなった。

 

自分は卓郎さんと和彦さんはほとんどずっと背中を見るような位置にいたが、ただでさえ普段とは違う珍しい角度から見たずっと憧れている人達の演奏中の背中は頼もしくかっこいいものでこちらは終始大満足だったが、優しい卓郎さんは時々振り返って後ろのエリアにいた観客達にも笑顔を向けてくれた。卓郎さん的にも自分の後ろに人がいるのが珍しいからというのもあったかもしれない。スタッフさんが時々スマホで動画を撮っていて、一度卓郎さんがそのスマホに気付いてカメラ目線で表情を作っててお茶目だった。

 

卓郎さんはずっとニコニコしていて滝さんも笑顔でいる時が多く、かみじょうさんも和彦さんもたまに笑顔を浮かべ9mmモバイル名誉会長でもある武田さんはリラックスしている時は観客と同じように9mmを楽しんでいるといった笑顔を見せていた。卓郎さんも気に入ったようで「何かにつけてフロアライブやりたいね!」と言っていた。

何よりそれを取り囲む観客がみんな満面の笑顔で、自分達観客は普段こんなにいい顔で笑っていたのかと。2018年の日比谷野音公演で卓郎さんが「もうダメかもしれない。やめようと思った。その度にライブで見てきたみんなの顔が浮かんできて、考えるのをやめた。」というようなことを言っていたがあの時の「みんなの顔」は笑顔で溢れたこの光景だったのか。今回のフロアライブは卓郎さん達がずっと見てきたものと全く同じ光景を卓郎さんと同じ目線で見られたことが、一番嬉しかったことかもしれない。

20240317/9mm Parabellum Bullet “カオスの百年vol.20” @Billboard Live TOKYO(夜の部)

     

9mm Parabellum Bullet、結成20周年おめでとうございます!!

 

20回目の結成記念日に開催されたカオスの百年vol.202021年以来となるビルボードでのワンマンライブ。今回は二部制で昼の部が男性限定、夜の部が女性限定。

自分は夜の部に参加。ステージの1フロア上、上手側、ステージをほぼ真横から見下ろすような位置にある座席で、通常のライブハウスやホールと全く違った角度からステージを観られる面白い席。開演までの時間を美味しいデザートとカクテルとともにゆったり楽しむことができたのも良かった。

 

ほぼ定刻に場内が暗転するとお馴染みのDigital Hardcoreが爆音で流れ始めステージ上に設置されたビルボードのロゴを激しい照明の点滅が照らし、フロアの下手側にあるドアからメンバーが次々と登場し、そのまま場内の座席の間を通ってステージへ。

 

Brand New Day

ハートに火をつけて

Vampiregirl

One More Time

DEEP BLUE

光の雨が降る夜に

Lady Rainy

眠り姫

君は桜

スタンドバイミー

キャンドルの灯を

The Revolutionary

白夜の日々

Talking Machine

Wildpitch

 

カモメ

The World

 

 

20周年の幕開けは最新曲Brand New Day!爽やかな水色の照明が空間全体を染める中〈したたか雨にうたれ続けてここまで来たから〉と歌うこの曲を20周年を迎えた日にステージで演奏することがあまりにも合っていて、記念すべき日のライブに相応しい幕開けだった。照明が水色から深紅に切り替わった次の曲はハートに火をつけて。間奏では滝さんがいつも通りステージ前方へ出てきてギターを弾いていたが、ビルボードの座席は一番前のテーブルがステージにぴったりくっついているので滝さんが前に出ると客との距離が数十センチほどになるという近さで(テーブルの上のビールが蹴られないかちょっと心配になるくらい)そのテーブルにいた方々があまりの近さにびっくりする様子が見えた。和彦さんがステージ前方に出ると下手側の一番前のテーブルでも同じような状況になっていた。すごい特等席だ。

 

ハートに火をつけて から音を切らずに次の曲へ続ける激つなぎを披露したVampiregirl、卓郎さんが女性ばかりのフロアに向かって〈You're Vampiregirl!!〉と歌う様子にセトリ入りした理由を察した。間奏のギターソロは滝さんと爲川さんによる見事なツインリードのアレンジで2人揃ってステージ前方まで出てきて演奏していた。その様子を座席から少し乗り出して見ようとした瞬間に爲川さんが上手側のこちらのエリアに視線を向けたのでギターソロを弾きながらこんな上の方の席まで見てくれているのかとびっくり。

Vampiregirlの赤い照明から青や白に切り替わって次の曲One More Timeへ。間奏では滝さんがステージ前方でギターを弾きまくる後ろで卓郎さんと爲川さんが上手の座席に背を向けてかみじょうさんと向かい合って演奏していて、ただでさえ似ている卓郎さんと爲川さんが首を全く同じ角度に曲げて全く同じ動きをしながら息ぴったりに演奏する2人の背中が微笑ましかった。

 

ここで最初のMC。お洒落なレストランといった雰囲気の中おめかしした女性達が座ってライブを観ている、という普段と全く違うフロアを見回して卓郎さんが「おもしれー!」と言ったり、みなさん素敵ですねと声をかけたり、(普段のライブとは違った雰囲気だが)意外と違和感がないですね、的なひと言もあったような。とにかく普段と違う景色を楽しんでいたようだった。このタイミングだったか卓郎さんが「演奏中でも気にせずおかわりしてください」と言うと和彦さんがうっかり大きめの声で笑ってしまい卓郎さんにすかさずそれを拾われていた。

 

次の曲はDEEP BLUE9mm15周年を迎えた年にリリースされたDEEP BLUE20周年の結成記念日という特別な日に聴けた感慨深さに浸った。イントロで歓声が聴こえたのはいつも人気投票で上位に入る光の雨が降る夜に。煌びやかな曲の雰囲気がビルボードにぴったりで大変素敵だった。この曲を聴きながらゆったり座って美味しいモヒートを飲んでいた時に今自分は何という贅沢をしているんだろうかといい気分になった。アウトロでは卓郎さんと滝さんが2人並んでステージ前方、再び一番前のテーブルすれすれのところまで出てギターソロを披露!

 

フロアが一旦落ち着いたところで次の曲はLady Rainy、先ほどのVampiregirlに続いて《Lady》なのでセトリに入れられたのだろうか、盲点だった。ここまでの曲よりも少し音量控えめで繊細さのある演奏になり、その分卓郎さんの伸びやかな歌声がフロア内に気持ちよく響いていた。次の曲もライブで滅多に聴けない眠り姫、この時に卓郎さんが赤にもオレンジにも見える今まで見たことのないギターを使っていて、角度的に自分の位置からは形などよく見えなかったが最近導入されたギターなのだろうか。眠り姫は半音下げチューニングなのでそれ用のギターなのかなと思ったが、どの曲か失念したがその後に別の曲でも使われていた。

 

再びMC、話の流れは忘れてしまったが次に演奏する曲について卓郎さんがちょうど卒業シーズンであることに触れ、小中学生の合唱曲として歌ってもらってもいいよね、教育関係の方がいましたら是非生徒に歌ってもらってというような話をしてから「卒業おめでとう!」と言って君は桜 の演奏へ。サビの〈花ひらいた 君は桜〉の部分で淡いピンク色の照明が空間全体を包んだ光景が美しかった。まだ桜が咲いている場所は少ないが、卒業シーズンであるこの時期に聴けて嬉しかった。確かに綺麗な日本語の歌詞でメロディーも歌いやすそうなので、合唱ソングとして歌われるのが実現したら素敵だなと。

 

それに続いたのがスタンドバイミー、この日はちょうど日曜日だったので〈日曜日の虹を見よう〉と歌うスタンドバイミーを演奏してくれたことも嬉しかった。開放感を感じるサビのメロディーが、天井の高いビルボードの空間にとても合っていた。最後のサビでは途中でギターを弾くのをやめた滝さんのもとへスタッフさんが駆け寄っていたのでギターに何か不具合があったようにも見えたが、すぐに演奏を再開できていたのでよかった。滝さんがギターを弾いていない間は爲川さんが歌詞を口ずさみながらしっかりとサポート、その後は爲川さんが音源通りのリフを弾いているところに滝さんがアドリブのフレーズを入れていた。

下手にアップライトベースが運び込まれて次の曲を察する。9mmの曲の中で最もビルボードの洒落た空間に相応しいのではないか、と思われるキャンドルの灯を。ビルボードのステージが似合うジャジーな曲を、ビルボードらしからぬ爆音で演奏するのが9mmらしさ。アウトロで和彦さんがアップライトベースをクルリと一回転させる様子も、ステージ斜め上からという珍しい角度で見ることができた。

 

ここまで中盤は何となくビルボードが似合う曲が並び、そろそろ終盤というところでぶちかまされたのがThe Revolutionary、真っ白な眩い光に包まれるステージでいつも通りの演奏が繰り広げられる。間奏で卓郎さんと滝さんがそれぞれの立ち位置からそのままステージ前方へ出ていくとその後ろでは 爲川さんと和彦さんがかみじょうさんの方へ移動し3人で向かい合うようなフォーメーションで演奏していた。20周年の節目に聴けたこの曲がいつもより更に清々しく聴こえた。同じく真っ白な照明に彩られた白夜の日々へ、The Revolutionaryからのこの流れが抜群に良かった。心なしか普段より少しだけテンポが早かったようなそれだけ気合のこもった演奏だったんだなという感じがした。

 

大盛り上がりの中、お馴染みのTalking Machineのライブアレンジのイントロ演奏が始まり、卓郎さんがギターを置いてマラカスを振りフロアを煽ると、突然別の曲の演奏が始まった。失礼ながらこの時点では何の曲か分からなかったがハンドマイクで時折モニターに足を掛けたりロックスターのような手振りをしたりとかなり恰好良い歌いっぷりだったので何の曲か分からずとも見ていてとても楽しかった。その隣では滝さんが卓郎さんに向かって両手で卓郎さんを指差して《ライブで最前列にいる熱狂的なファン》のような腕の動きをしていたのが面白過ぎて笑ってしまった。途中でそれに気付いた卓郎さんが滝さんを指差し返すと、滝さんがファンサをもらった客のような「おお」というような反応を一瞬見せたので更に笑った。ワンコーラス演奏すると再びTalking Machineの演奏に戻り、「1,2,3,4!!」の部分ではフロアからこの日一番大きな声が返ってきた。Zeppなどのライブハウスよりもステージが小さめだったからか各メンバーの動きは少し控えめなようにも見えたが、この時には動ける範囲で滝さんや和彦さんが大ジャンプを決めてみせたのが見えた。

 

卓郎さんの「最後の曲です!」と何となく雰囲気からいつも通りPunisumentで終わるかなと思ったが最後はまさかのWildpitch!!ここまでは楽しく見つつも着席したままでお行儀よく観ていたつもりだったが、和彦さんのシャウト一発で何が起きたかを理解し驚きのあまり大きな叫び声を上げてしまった。真っ赤な照明の中での轟音Wildpitchにフロアの誰もが着席して観ているはずなのに完全に小箱の空気になっていた。まさかビルボードで、しかも女性限定の方でこの曲を入れてくるとは。アウトロは原曲の倍くらいの長さのアレンジになっていて大好きなWildpitchをより長く聴けたことも嬉しかったし、昨年のツアーで一度だけ、本編をWildpitchで締めるライブを観た際にあまりにもかっこよかったのが忘れられなかったので再びそれを観られて我を忘れる勢いで嬉しかった。

 

滝さんが退場するところは見逃してしまった。爲川さんが客の方を見て挨拶をしつつステージを下り、フロアの座席の間を通って退場。卓郎さんと和彦さんはいつものようにフロアのあちこちを見ながら挨拶をしたり手を振ったりしていて、1フロア上の階にある自分たちの座席の方もしっかり見て笑顔を向けてくれたのでまた嬉しい気持ちになった。卓郎さん、和彦さん、最後にかみじょうさんも爲川さん同様に座席の間を通って退場していった。

 

いつものように「My Way」が流れ始めるとアンコールの手拍子が始まったが、普段はだんだんとテンポが速くなる事が多い手拍子がこの日はずっとMy Wayのテンポに合わせて揃っていた。フロアの向かい側にある階段の方に目を向けると、階段の途中に並んで立っていらしたカメラクルーの方々も2人並んで客と同じように手拍子していたのがとてもよかった。しばらく手拍子が続いてから再びメンバーが登場。ライブが始まった時とは違い、ステージより1フロア上から入ってきて階段を降り、座席の間を通ってステージへ上がった。

 

この時に卓郎さんが、先ほどTalking Machineのイントロで演奏したのはBOØWYBBLUEのカバーだったことを明かした。昼の部、男性限定ライブ用に(アーティスト名と掛けて)演奏することを決めたらしいが女性の方で何をカバーするか思いつかず、この曲は歌詞に〈boys&girls〉と入っているから夜の部でもやろうというような流れになったとのこと。

 

アンコールの1曲目はカモメ。演奏が始まるとそれまでは閉まっていたステージ背後に設置された黒い幕がゆっくりと開き、ガラス越しに六本木の夜景が見えるという夜のビルボードならではの演出がここで使われた。ステージを斜め上から見る角度だった自分の席からは夜景は少ししか見えなかったが六本木のビル群の赤いランプが僅かに見え、あとはガラスにメンバー5人とフロアにいる客が反射して見えたが、うまく言えないけれどそれもいい光景だった。この時に網目のような模様のライトをフロア全体に映していて、客の頭やテーブルの輪郭で直線の網目模様がゆがんで曲線になっていたのが水面が揺らめいた時の模様みたいで綺麗だった。最後のサビではそれまで深い青だった照明が朝焼けのようなオレンジ色に変わり、それも相俟って本当に海みたいな光景が広がっていた。

この日最後の曲はThe World、この曲でライブが終わるのも珍しいパターンだったかもしれない。東京の中でも一際大都会である六本木の夜景を観ながら〈目を凝らして焼き付けてみる 明日も僕らが生きていく世界を〉の一節を聴くというのが歌詞にものすごいリアリティが出ていて大変いい景色だった。前回9mmビルボードでワンマンを開催した際にはThe Worldでステージ背後の幕が開く演出が入れられ、その時にも夜景を聴きながらこの曲を聴くことにかなりインパクトがあり見事だったので、再び同じ光景を見ることができてよかった。

 

演奏が終わると滝さんが上手の袖にあたる部分へと消えていった。先ほどいつの間にか滝さんが消えていたのはそういう理由だったのかもしれない。爲川さんがフロアへ笑顔を向け挨拶をするとステージを降り、座席の間を通って階段を上り、1フロア上から退場。卓郎さんと和彦さんは再びフロアのあちこちに手を振り笑顔を向け、再度自分のいる上の方の座席にもしっかりと顔を向けてくれた。最後にドラムセットを離れたかみじょうさんも同様に上の方の座席までしっかりと見て手を振ってくれていた。そういえば和彦さんがピックをフロアに投げなかった気がするが、物を投げたらいけない会場だったのだろうか?最後に卓郎さんが丁寧にお辞儀をしてステージを降り、通り道の両側にいた客とハイタッチのような動きをしつつ、階段を上って1フロア上へ。姿が見えなくなるまでフロアのあちこちに笑顔を向け続けていた。

 

 

普段のライブハウスやホールとは全く違った会場で、普段通りのライブをやってみせた9mmビルボードはステージを面白い角度から見ることができるし、ドリンクやデザートは美味しいし、会場に合わせておめかしして来場する人が多いのでそういう部分も含めて楽しむことができた。

今回のセトリについて。ライブ中どのタイミングだったか失念してしまったが、VampiregirlLady Rainyは曲名から女性限定ライブにちなんでセトリ入りしたことが卓郎さんから明かされた。その時には入っていなかったが、曲名的に眠り姫もそうだったのではないか。そして本編最後に度肝を抜かれたWildpitchも〈隣には女がいて彼女の夢は幸せになること〉〈気付けば女はシートから消えた 帰る場所が違うから〉という歌詞があるのでそうだったのかもしれない。また、ライブが終わった後に内容を思い返した時にカモメは女性口調の歌詞だったのでセトリに入ったのではないかと気付いたが、ライブ中は何も考えずにビルボードが似合う曲だなと思いながら聴いていた。カモメの演奏が始まった時にステージの幕が開いて六本木の夜景が見えるようになったが、東京ミッドタウンは意外と海から近いのでそれもあってこの選曲はいいなと思っていた。

 

同じくどのタイミングのMCだったか、本編終盤かアンコールの時だったと思うが5月にリリースされるBlu-rayact Ⅷ」の収録内容が解禁になった話にも少し触れていた。この日の18時頃、自分がビルボードへ向かっている途中に音楽ニュースなどで解禁されているのを見たが、昼の部のMCで解禁したものだったと卓郎さんが言っていた。「(さっき言ってしまい追加のお知らせもないので)めくれるカードがない」とも。また昨年末のライブでも言っていたが今年は頑張ってアルバムも作る!と宣言していたのでより楽しみになった。

 

「昼の部はかみじょうくんが一番可愛くなろうとしてた。でも(夜の部の)みなさんにはちょっと敵いませんね」と昼の部であった出来事を卓郎さんが教えてくれて、かみじょうさんがその言葉を受けて頬っぺたを指でつつくあざとポーズをしたり頬っぺたをぷくっと膨らませたりしていて確かに可愛かったしフロアからも「かわいい!」という声が多数ステージに飛んできた。

 

 

会場に足を運びしっかりとライブを楽しんだ人間が言っていいことではないかもしれないが、記念すべき日に男女で分けてライブをやったことについては人によって無数の意見が出るはずだし、正直自分も色々思うところがあった。そもそもの開催の是非もそうであるし(近年のジェンダーの考え方的に男女分けをすることで参加しづらい人がいるかもしれない、ただ一方で性別を分けることで安心して参加できる人もいるのかもしれないという意見を知人に言われて気付いたので完全に否定するのも違うのかもしれない)、卓郎さんたちの思慮深さを疑いたくはなかったが男女を分けることで何らかの差が生まれてしまうのではないかという心配も正直あった。9mm2019年の6番勝負というツアーで何の説明もなく男性限定ライブだけを開催したことがあり、今でもその時の悲しさやどうしてという気持ちを忘れることができず、それもあり性別分けをすることに良い印象が持てなかった。ただ、ビルボード300席ほどしかないため男女で分けると必ず昼の部、夜の部どちらかにしかチケット申し込みをすることができなくなるという点ではできるだけ多くの人がチケットを取れるようになるというメリットは感じられた。

 

ライブはいつも通り楽しかった。ライブが終わった後にも「何で男女で分けたんだろうか?」という気持ちが完全になくなったわけではないけれど、懸念していた女性限定だから女性口調で煽ります、や穏やかな曲しかやりません、みたいなことは一切無く男性限定のライブと比べて内容に(個人的な曲の好みは置いておいて)優劣は無かったように感じたし、卓郎さんがMCで「9mmの曲はラブソングという感じでもないし(この辺りうろ覚え)、男性でも女性でも同性でも、友達家族どんなパートナーでもユニバーサルな気持ちで聴けるよね」と言っていて、「ユニバーサル」=普遍的・汎用的・全てで通用する、という表現を使ってくれていた配慮については純粋に安心した。

 

20231219/9mm Parabellum Bullet“19th Anniversary Tour” @LIQUIDROOM

    

結成19周年を迎えた9mmが「9」の付くアニバーサリーイヤーを記念して今年1年かけて開催しているツアーのファイナル公演。

ライブ開催の数週間前にこの公演で1stアルバム「Termination」再現ライブを行うことが発表された。129日のAC 9mmワンマンにてこれが和彦さんの提案であることも明かされた。ツアー初日の福岡公演が最新アルバム「TIGHTROPE」の再現ライブだったので、ツアーファイナルはTerminationの再現ライブをやろう、というアイデアとのこと。LIQUIDROOMは恵比寿に移転したのが9mm結成と同じ2004年で何度か合同の周年イベントが開催されたことがあり、200711月にはTerminationがリリースされた直後に9mmがワンマンライブ「硝子越しの暴走」を開催したという縁もある場所なのでTermination再現ライブをやるには相応しい会場なのかもしれない。

 

大体キャパの半分くらいの番号で入場、見やすそうな場所を探し下手側最後方の段上を取ってみるとステージは遠かったが人の頭が被らずステージ全体を見ることができる位置だった。大箱やホールではないので、ステージには既に19周年仕様のバックドロップが掲げられていた。このバックドロップを見られるのもこれが最後かもしれないと思うとツアーが終わる寂しさが込み上げてきた。196分に場内が暗転。

 

Brand New Day

One More Time

All We Need Is Summer Day

泡沫

白夜の日々

名もなきヒーロー

ガラスの街のアリス

カモメ

The Revolutionary

Psychopolis

Discommunication

Heat-Island

Sleepwalk

砂の惑星

Heart-Shaped Gear

Sundome

Battle March

Butterfly Effect

Termination

The World

Punishment

 

(teenage)Disaster

Talking Machine

 

自分がいた位置はメンバー全員が見えて音量もちょうど良かったが照明の光が強かったのでかなり眩しくてステージを直視できない時も多かった。でも眩しい光の中に5人がいた光景もそれはそれで良いものだった。

Termination再現を最初に持ってくるのかどうかが気になっていたが1曲目に演奏されたのは9mmの最新曲であるBrand New Day。曲のイメージに合うような淡い青の照明が眩しいくらいにステージを輝かせていた。次の曲はOne More Time、ライブでもすっかりお馴染みのナンバーに2曲目にしてフロアが完全に盛り上がっていてサビの〈One more,one more time〉の繰り返しでは大合唱の歌声が最後列までよく聴こえてきた。2番に入ると滝さんがギターを弾かなくていい部分でステージ中央あたりまでズンズンと歩いて行くなど自由に楽しんでいたようだった。間奏に入る時には卓郎さんが〈ほら出番だよご主人様〉と歌った後に「滝ちゃーん!!!」と叫んでギターソロに入った。

 

One More TimeからAll We Need Is Summer Dayへ、2022年リリースのアルバム「TIGHTROPE」収録曲が続いたのでもしかして時間を遡るようにリリース順の新しいものからセトリを組んでいる?と何となく考えたがまだ確証がない。青や赤を駆使した真夏日っぽい照明の中、サビ前の〈All We Need Is Summer Day 〉の部分では再びフロアからの大合唱が巻き起こった。そこからほぼ間を空けずに泡沫の演奏へ、3連続「TIGHTROPE」の曲が並んだのでやっぱりそうか?と。自分がフロアの中でも段上の一番高い位置にいて天井が近かったことや、それまで気付かなかったがフロアの天井にステージと同じライトがステージと逆方向を照らすように設置されフロア最後方のこちらまでステージと同じ色に照らされるという演出の効果もあり、天井が水面でフロアの一番下が水底のように見えて、この曲にものすごく合う光景が広がっていた。中盤の〈どうして どうして どうして いつも〉からの部分だけ真っ赤な照明、テンポがスローになり重みを増す演奏、そして和彦さんがそれを更に視覚で表すかのように体を屈め低い体勢になりつつ上半身を大きく振るような動きで演奏する様子は遠くから見ていても迫力を感じるほどだった。しなやかな歌声を出し続けていた卓郎さんが最後のサビの〈どこまでも沈めてくれ〉だけはかなり力を込めるようにして歌うのがいつ聴いても心を奪われるところ。

 

リキッドルーム!」と卓郎さんがオフマイクで言って最初のMCへ。Terminationの再現ライブをやることを改めて説明し、その前に何曲か演奏します、もう少し準備運動がしたいというようなことを言っていた。

文脈を忘れてしまいはっきりと思い出すことができないが、今年の5月くらいから声出しやマスク着脱が自由になったことに触れた(外せるようになってよかった、だけでなく着用していてもどちらでもよいと言って誰も否定しないのが卓郎さんの優しさ)のは予想通り時間を遡るようにセトリを組んだことをここで明かした上で次の曲でコロナ禍の時期までタイムスリップする、というような説明があったからだったかと思う。その言葉通りで次に演奏されたのは「TOGHTROPE」にも収録されたがシングルのリリースはコロナ禍真っ只中の2020年だった白夜の日々。MVのように真っ白な光に包まれたステージにどこか優しげな音色が響いた。演奏を聴きながら有観客ライブすらできなかった2020年を思い出すと3年経ってライブハウスにパンパンに人が入り声を出せるようになった現在のフロアの様子がより一層嬉しいものに感じられた。その次は2019年、9mm15周年を迎えた年にリリースされたシングル&アルバム「DEEP BLUE」より名もなきヒーロー。ジャケットデザインと同じ青とピンクの照明がステージを彩る。リリースの順番としては実際とは逆だが、〈すべて忘れても 君に会いに行くよ〉とささやかな希望を祈るように歌う白夜の日々の後に〈また明日 生きのびて会いましょう〉と力強く頼もしく歌う名もなきヒーローが続くという流れは素晴らしいものだった。

 

イントロで歓声が上がった次の曲は2017年にリリースされたアルバム「BABEL」よりガラスの街のアリス 。澄んだ白の照明が曲の持つソリッドな雰囲気にぴったりで、2番に入ると滝さんがギターにエフェクトをかけてピュンピュンと不思議な音を出していてより近未来感を演出するような感じだった。卓郎さんがアコギに持ち替えたので次の曲を察して、だいぶ時間が飛ぶのでは?と思ったが次の曲は予想通りカモメ。2011年にリリースされたアルバム「Movement」に収録、同年にシングルカットされた曲なのでやはりだいぶワープした感があったが、このあとに演奏される曲が12曲残っていることもあり、限られた尺の中で時間を遡った構成は純粋に楽しかった。空や大海原をイメージさせるような水色の照明の中、壮大さを感じさせる演奏が繰り広げられ最後のサビに入ると朝焼けのような柔らかなオレンジ色がフロアを包み込んだ。

 

このMC4年タイムスリップして、ここからTerminationに入ります、アルバムを聴いているつもりで聴いてください、という卓郎さんのひと言からいよいよ「Termination」再現パートが始まり、Psychopolisをサビ前まで演奏したあたりで突然演奏が中断された。最後方からは何が起こったか分からず機材トラブルでもなさそうだったので心配していると「柵壊れた!!」と前方のお客さんが叫んだ声が聞こえた。

柵が壊れた!?

 

上手最前の柵が壊れたらしくその辺りが少しざわついていた。Psychopolis演奏中に激しいモッシュなどは無かったように見え、派手な将棋倒しなどは起きていないようだったが、ライブハウスの柵が壊れるなんて初めて見た。ステージ前にスタッフさんが向かったのが見え、すぐに修理が開始された模様。

卓郎さんが「ちょっとみんな揺れてて!」と言いながらリズムを取るように体を揺らすと即興でセッションが始まった。ゆったり踊れるくらいのテンポのセッションが続き、途中でかみじょうさんがドラムのリズムパターンを変えたり滝さんがエフェクターボードをいじって水中から浮上するような、あるいはSFの効果音みたいな面白い音を作り出すとそれに合わせて卓郎さんと一緒に屈んでから立ち上がる動きを笑顔でやってみたりしていた。

 

一通りセッションが繰り広げられ滝さんが柵の復旧状況を確認していたがまだだったようで、卓郎さんが時間かかりそうだから1曲増やそうかとまさかの提案。2011年からいきなり2007年へタイムスリップしたから失敗しちゃったかな、とも。柵修理中なのでみんなその場で聞いてくれる?みたいにフロアに話しかけた後で「Black Market BluesThe Revolutionaryかな?Black Market Bluesだと暴れちゃうって人?(フロアの何人かが手を挙げる)じゃあThe Revolutionaryだと暴れちゃうって人?(フロアの数人が手を挙げる)」と確認し、The Revolutionaryの方が少なかったからそっちにしようと言ってフロアのスタッフさんに向かってみんなが動かないと言ってくれたから1曲増やしますと言ったりかみじょうさんと何やら相談したりしてから演奏へ。

9mmのアコースティックやAC 9mmで演奏されるカントリー調アレンジのThe Revolutionaryをエレクトリックの5人編成で、という初めてやったのでは、というくらいのレアな演奏が始まった!滝さんがほぼオートワウのようなエフェクトをかけていたので爲川さんのギターの音と聴き分けることができて、今までこのアレンジでのThe Revolutionaryを演奏したことがないかもしれない爲川さんが序盤からコード弾きっぽいのを入れていてすごいなと思っていたら、中盤で明らかにアドリブのメロディーを入れていてその高過ぎる技術力と対応力に驚かされた。

 

急遽1曲演奏したがまだ柵の修理は終わらない。すると卓郎さんが「SayHo〜?」と言うとフロアから\Ho〜!/と声が返ってくるという普段やらないようなコール&レスポンス、卓郎さんが声色を変えて何度かそれを繰り返した。卓郎さんたちが色々と演奏してくれていた間に物販列の整理に使われるようなパイプでできた柵が運ばれてくるのが見えた。

その他にも卓郎さんがたくさん喋ってくれて、この時だったか、まだ時間がかかりそうなのでと卓郎さんがこの日のサポートを務めた爲川さんを紹介。爲川さんの年内の9mmサポートはこの日が最後であることと日頃の感謝の気持ちを伝え、出演はしていなかった武田さんにもいつもありがとう、と言うと上手側通路の方にぴょこぴょこと動く人影が見えたのでもしかしたらそうだったのかもしれないと思わず笑顔になった。

卓郎さんがフロアに向かって「Terminationから聴いてる古参のファンの人いる?」と話しかけると結構な人数の手が挙がったり(自分も挙げさせてもらった)、話の流れは忘れてしまったがTerminationリリース時と比べて卓郎さんは体重が5kgしか増えてないという話があったり。「Terminationは暴動みたいなアルバム」と卓郎さんが言ったのもこのあたりだっただろうか。129日のAC 9mmワンマンの際に卓郎さんが「みんな再現ライブは好き?」と尋ねて肯定の反応にびっくりしていたという流れがあったからか、この日もフロアに向かって「みんな、再現ライブは好きかー!!」と呼びかけるとフロアから大歓声が返ってきて、コール&レスポンスのように「再現ライブは好きかー!!」\イエーイ!!/と何度かやり取りを繰り返していた。再現ライブの需要を把握したばかりの卓郎さんは「だって再現ライブ嫌い、って人とか、再現ライブ?そんなゴミみたいなっていう人がいるかもしれないし。そういう人は観に来なければいいだけの話だけど()」と言って、本当に再現ライブをみんなが観たいのかを改めて確認していた。

 

それなりに時間はかかったが、卓郎さんたちが色々な演奏などで楽しませてくれたので待つ時間も楽しかった。スタッフさんたちの懸命な対応で遂に柵の応急処置も終わったようで卓郎さんがフロアに向かって準備できた?と呼びかける。ここからはあまり私語を入れないようにしますね、と言ってから「いけるかーーーー!!!」とフロアを煽り、いよいよ演奏再開。Psychopolisのイントロが勢いよく演奏された瞬間、2023年の9mmが鳴らすPsychopolisの迫力に圧倒されつつTerminationリリース当時のことが一瞬で頭の中に蘇ってきたのでこの後は演奏をじっくり聴きつつ時折リリース当時まで時が戻ってその時にアルバムを聴いて感じたことを思い出したりと頭の中が忙しい状態になった。

いつものライブアレンジのイントロからDiscommunicationへ。再現ライブではあるがアルバム音源の完全再現というわけではなく、今の9mmのアレンジで演奏されるというのがとても良かった。照明はお馴染みの黄緑色。Heat-Island19周年ツアーの他の公演でも披露されていたが何度聴いても現在の9mmが演奏した時のの緩急に凄まじいキレのある演奏がただただ心地よい。〈冬枯れの街路樹〉の季節に聴くことができたことも嬉しかったSleepwalk2番で卓郎さんが声を潜めるようにして歌う〈無駄遣い〉の部分で滝さんが卓郎さんを指差し、和彦さんは口に人差し指を当てて静かに、というジェスチャーをして卓郎さんの見せ場を目立たせていた。

 

卓郎さんが次の曲について「ここにこの曲が入っていてよかったなと思ってます。イントロのリフをレコーディングで80回弾いたけど、もう大丈夫。」と話してから次の曲、砂の惑星へ。その言葉通り卓郎さんがしっかりとイントロを弾きこなす。以前譜読みした時に感じたが確かにこの曲は滝さんパートよりも卓郎さんパートの方が難しいかもしれない。軽快なリフに合わせて踊るように体を動かしていた滝さんの様子やリズム隊の音がかなりがっしりしているところなどはアルバム音源のどこかうら悲しさを感じさせるような印象とは結構変わったなという感じがあったけれど、アルバム音源も現在の伸び伸びとしたライブパフォーマンスも個人的にはどちらも好きだなと思えた。再現ライブなので次に来る曲を分かっていてもイントロのドラムでソワソワしてしまったHeart-Shaped Gear1番のサビの後の間奏で滝さんが入れていたアルバム音源と違うアレンジが昔ライブで聴いたものとほぼ同じだったような気がして、ぼんやりと思い出して懐かしい気持ちになった。Sundomeをライブで演奏する時の、かみじょうさんが高速でハイハットを刻み始めてからギターとベースがそれに緩やかに音を重ねてゆくシリアスなアンサンブルから卓郎さんのカッティングそして炸裂する演奏という流れの心地よい緊張感が大好きで、この日も指一本動かすこともなくただただ演奏と向き合って聴き浸った。ただでさえ久々にライブで聴けたBattle Marchは、リリース当時より卓郎さんの歌い方に艶がありそれがとんでもなくこの曲に合っていて、サビではアルバム音源の倍くらいツーバスを踏み続けるアレンジになっていてかなり驚いた。フロア最後方にいても体の真ん中を撃ち抜かれるような振動と音圧があって迫力がとにかくすごかった。

 

この日は曲が終わってステージが暗くなる度にチューニングなどで間が空くとすかさずフロアから歓声やメンバーの名前を呼ぶ声が飛んできていたが、この時だけはフロアが静まり返っていた。それは誰もが次の曲を分かっているが故に何となく緊張感が漂っていたからかもしれない。卓郎さんが「次の曲はこのアルバムの中ではここ数年で一番ライブでやってるかもしれないね。かみじょうくんのお気に入りだから。」その言葉に続いて演奏が始まったのは、ここ数年より前はライブでほぼ聴くことができなかったレア曲、Butterfly Effect。ギターやドラムが繊細な音を出しているのと反対に序盤からベースの音はかなり太くてフロアに強く響いていて、夢現のような印象のアルバム音源と少し印象が変わっているところもあって興味深かったが、リリース当時よりもしなやかさのある卓郎さんの歌声が柔らかく空間に伸びてゆく様には音源と同じ印象があり、自分の視界に視界に入る位置にあったフロア天井に吊るされたいくつもの電球がゆらゆらと僅かに揺れる様子すらこの曲に合っていた。

 

「みんな歌ってくれ!」と卓郎さんが呼びかけ、Butterfly Effectの緊張感が一気に溶けてフロアが大歓声と熱狂に包まれたTermination、サビでは卓郎さんの呼びかけ通り、いつも通り大合唱が巻き起こり間奏に入る際に卓郎さんが「ギター!」と叫べば滝さんが前へ出てきて歓声の中ギターソロを披露する、そんないつも通りの熱いライブの様子を観ながらもその光景と重なるようにリリース当時狂ったように観ていたTerminationMVの《爆音が鳴っているのに静寂も感じる乾いた景色》がずっと頭の中に浮かんでいて不思議な気持ち、2023年と2007年を頭の中で行き来しているような不思議な感覚があった。ライブ定番曲で何度も何度も、何年も聴き続けてきたTerminationも再現ライブという流れで聴くとかなり普段と違う気持ちで聴くことになったがそれは次の曲The Worldも同じだった。MVの最後を想起させるような白い照明。〈目を凝らして焼き付けてみる 明日も僕らが生きていく世界を〉という最後の歌詞とドラマチックなアウトロの壮大さは収録曲順で改めて聴くとこの曲でアルバムを締めたとしてもかなり綺麗にまとまるよなとも思ったが、だからこそ最後を飾る曲のインパクトがより強調されるのかもしれない。

滝さんが静かに音を奏でる中、卓郎さんが「最後の曲です」と告げて演奏が始まった最後の曲・Punishmentではイントロに入る前に滝さんのギターに何かあったのか、状況は分からないが一旦演奏が止まり、でもすぐに何事もなかったかのように再開した。そのリカバリーの早さに加えフロアから特に動揺するような反応も見受けられなかったのでメンバーと客どちらも「このくらいじゃ動じないよ」感があってさすがだなと。本編やアンコールの最後を飾る曲としてあまりにもお馴染み過ぎる曲だが、“Terminationの最後の曲として聴くと普段とちょっと違う気持ちで聴くことができた。間奏ではそれまでずっとステージの上手奥の方にいた爲川さんもステージ前方に出てきて和彦さん、卓郎さん、滝さんと並んだ。アウトロでは和彦さんが卓郎さんと接触しそうになって謝るようなしぐさを見せていたが、それほどまでに全力を尽くした圧巻の演奏だった。

 

5人がステージから退場するとすぐにアンコールの手拍子が始まった。なかなか出てこないなといつもより長めに手拍子をしていたような気がするが、いつも本編終了後に流れるGipsy Kingsの「My Way」が丸々フルコーラス流れたあたりで5人が再び登場。このあたりだったか、卓郎さんがほぼ1年かけて行われたツアーが無事ファイナルを迎えられました、と言っていたり来年東名阪でライブを開催することに触れたり、「アルバム」だったか「新曲」という単語も出てきただろうか、いい曲を作れというみんなの圧をくださいというようなことも言っていた。

 

アンコール1曲目は(teenage)Disaster、時間を遡るような構成のセトリだった本編の流れを続けるかのような選曲だった。そしてこの日最後の曲はTalking Machine(teenage)DisasterTalking Machineもインディーズ1stの「Gjallarhorn」収録曲だがこの日はそっちではなくTerminationと同じ2007年にリリースされたプレデビュー盤「The World e.p.」から持ってきたのではないか、と勝手に考えながら聴いていた。いつものようにライブアレンジのイントロが始まりいつものように卓郎さんがマラカスを振っていたが、いつもと違い卓郎さんがギターを置いてしまい上手の袖へ向かっていったのでどうした?と卓郎さんの方を見ていたら滝さんたちが突然ヱビスビールCM曲でありJR恵比寿駅の発車メロディーでもある「第三の男」のテーマを弾き始め、卓郎さんは黒い箱を持ってくると滝さん、和彦さん、爲川さんに金色の缶=おそらくヱビスビールを配り始めた。爲川さんが卓郎さんのアンプの上に置いてあった缶をかみじょうさんに渡すと3人で何やら話していたようで、かみじょうさんが「そのくらいで怒らないから!」と言っていたのだけ辛うじて聞こえたので卓郎さんがかみじょうさんに渡すのを飛ばしてしまったのか(もしくは卓郎さんが後ででかみじょうさんに渡そうとしていたのを、手が空いていた爲川さんが渡してくれたのか)。マイクのある人はマイクの前にビールを持ってきて、和彦さんも体を屈めてあの低いマイクのところにちゃんと缶を持って行って5人同時にプルタブを開けると、何も言わずともPAさんがマイクにリバーブをかけたようでフロアにプルタブのいい音が響いた。卓郎さんが乾杯の音頭を取って5人全員がビールを飲むという、普段の9mmライブでは滅多に見られない光景。和彦さんはお立ち台に座ってちょっとくつろぎながら飲んでいた。

 

和やかな打ち上げのような雰囲気からTalking Machineの演奏が再開するとびっくりするほど大きな「1,2,3,4!!!」がフロアから聴こえてステージはいつも通りに。1番の〈ああ 何べんやっても〉の直後には卓郎さんを囲むように和彦さん・爲川さん・滝さんが息ぴったりにジャンプ!そんな中でも2番に入ると滝さんと和彦さんが同時に缶を手に取りビールを飲むという先ほどまでの打ち上げみたいな雰囲気も残っていた。アウトロでは和彦さんがステージからフロアに降りてベースを弾いていて、最前列からはかなりの近さで和彦さんの演奏が観られたのではないか。

 

演奏が終わると滝さんがヱビスビールの缶片手にフロアに軽く手を振って退場、爲川さんもそれに続いた。和彦さんがフロアに何枚もピックを投げ、丁寧にお辞儀をしてから退場。かみじょうさんはドラムスティックを1本フロアに投げてから上手の袖へ。最後に卓郎さんがステージ中央に戻ると両手の拳を万歳のように突き上げてフロアから歓声を浴び、笑顔で退場していった。

 

 

今年の29日から始まりほぼ1年かけて開催された19周年記念ツアーが無事に終わった。YouTube配信や番外編のアコースティックライブを入れると1月から毎月9日と19日に何かしらの活動がある、という楽しい1年だった。もちろんツアーは全公演行けたわけではないが、特設サイトにてアコースティックライブを除く全公演のライブレポートが公開されたおかげで自分の行けなかったライブもセトリや内容を知ることができたし、YouTube配信で毎回ツアーの映像を少しずつ見ることができたのもありがたかった。同じツアーの中でも日によってセトリが全く異なるというかつての9mmのようなライブが鉄壁の5人編成で、更にここ数年にリリースされた曲も入れて完全に帰ってきたというのが何よりも嬉しかった。

49日のF.A.D公演のようにライブハウスのスタッフさんにリクエストを募る、59日のキネマ倶楽部公演のようにたくさんのゲスト出演者をお迎えする、メンバー4人の地元や出身県でメンバーセレクトのセトリでライブをするふるさと納税シリーズ、ツアー初日の「TIGHTROPE」再現ライブとツアーファイナルの「Termination」再現ライブという対の構成など特別感のあるライブがこれでもかと詰め込まれ、ツアーの中でも一番特別感のある会場の日本武道館9年振りに開催されたワンマンでは敢えて武道館っぽい派手な演出を極力入れずいつもの9mm”を大舞台で見せてくれた。全公演終わった今改めて振り返ると、ひとつのツアーにこんなにたくさんのパターンを入れてくれたのか!と、あまりにも盛りだくさんな内容に改めて驚かされた。

ふるさと納税シリーズ全公演でTalking Machineにメンバーセレクトのカバー曲やご当地ソングを入れるというアレンジが披露されていて、11月の多賀城公演を観た後に実現はないだろうけれど自分の出身地・東京でもしこれをやってくれるなら東京のご当地ソングは何になるんだろうかと実は考えたことがあるのでツアーファイナルでそれに近いものが観られるとは思わず大変驚きつつとても嬉しかった。恵比寿なので恵比寿駅の発車メロディーにもなっているヱビスビールCM曲をやったと思うが、その「ヱビスビール」は本当に現在の恵比寿が発祥地なので東京版Talking Machineだったと言ってもいいのでは。

 

柵が壊れるという今までに遭遇したことのないトラブルがあったことには本当に驚いたし、その柵付近にいた方ができるだけ無事でありますようにと心配な気持ちになった。盛り上がっていたとはいえ(圧縮はあったらしいが)派手なモッシュもダイブもなかったので元々柵が壊れやすい状態だったのかもしれない。ライブを中断せざるを得ない、またしばらくライブを再開できない状況の中で少し様子を窺ったくらいですぐにセッションを始めたり急遽1曲追加して演奏したり、コール&レスポンスをやってみたり、たくさん話を聞かせてくれたりしながら客を楽しませてくれた9mmの、19年間の中で培われてきたトラブルが起こった時の強さと対応力が図らずも完全に発揮されていた。踏んできた場数が違い過ぎる。

 

 

事前に「Termination」再現ライブをやるという情報を聞いてはいたが、ただ再現ライブをやるだけでなく1曲目のBrand New Dayからアンコール最後のTalking Machineまで全編を通して時間を遡るような、9mm19年間を振り返っていくような構成でのライブを観られたことは完全に予想外だった。卓郎さんのMCでそれが意図されたセトリだと確定した後は、その場の演奏を楽しみながら同時にそれぞれの曲がリリースされた時のことを思い出しながら聴いていた。それは2007年の10月に9mmの曲と出会ってから9mmを聴き続けて生きてきた自分の人生も振り返らずにはいられない構成ということでもあった。

自分が9mmの曲を初めて聴いたのは200710月、Discommunication9mmの曲と出会って、初めて聴いた9mmのアルバムがその1ヶ月後にリリースされたTerminationだった。プレデビュー盤として期間限定リリースされていたThe World e.p.Terminationと一緒に買った。こんなに激しいバンドを今までに聴いたことがなかった。全てに衝撃を受けて、割愛するが当時曲を聴いた時の感想もまだ全部鮮明に覚えている。「DiscommunicationMVの演奏シーンと卓郎さんの歌声が人生最大の衝撃だった」「Terminationのすべてが衝撃だった」と文字にするとありきたりになってしまうが、DiscommunicationMVをテレビで見た時の脳天に雷が落ちたような感覚は多分一生忘れないし、未だにあれを超える衝撃を受けたことがない。

 

でも当時はまだライブに行き慣れていなくて、チケットの先行予約というシステムもよく分からないし一般販売の争奪戦にも勝てず、硝子越しの暴走もTermination Tourもチケットが取れなくて悔しい思いをした。それから16年も経ってから硝子越しの暴走と同じLIQUIDROOMでまさかの「Terminatination」再現ライブを、あの時の悔しさを帳消しにするようなライブを観られるなんて想像もつかなくて再現ライブをやると発表された時にはそんなことあるのかとじわじわ嬉しい気持ちになった。ライブ中、PsychopolisからPunishmentまで、更にアンコールのTalking Machineまでずっと当時の感想を思い出しながら演奏を聴いていたので、それらの感想を抱いていた10代の時の自分が「9mmかっこいい!」「Terminationかっこいいね!」とずっと頭の中で言ってるような気がしてずっと嬉しくて嬉しくて。とはいえ全てが完全再現というわけではなくてアレンジも含めてちゃんと現在の9mmが確かに鳴らす、アルバム音源よりも格段に表現力が爆上がりした演奏を純粋に楽しめたことも嬉しかった。19周年ツアーの最後にこんなに嬉しい公演が待っていたなんて思わなかった。感無量でした。

     

20231209/AC 9mm “9mm Parabellum Bullet presents「19th Anniversary Tour」Acoustic Live” @F.A.D YOKOHAMA

    

 

結成19周年を迎えた9mmが「9」の付くアニバーサリーイヤーを記念して今年1年かけて開催しているツアーのアコースティック編として、卓郎さん、和彦さん、かみじょうさんによるアコースティックバンド・AC 9mmがワンマンライブを開催。

11月下旬から129日まで滝さんがenvyのアジアツアーに出演するのでこの日がACのライブになったと思われるが、11月には卓郎さん&滝さんのバンド・キツネツキが同じくツアーのアコースティック編としてライブを開催しその際に卓郎さんがキツネツキをツアーに入れたことについて「9mm19年やってたらこういうサイドプロジェクトもできました」と紹介していたのでACも同じ理由でツアーに入れたのかもしれない。

 

この日は椅子・立見併用スタイルだったが、後ろから数えた方が早いというような整理番号で入場すると既に椅子は埋まっており立見スペースも半分くらいは埋まっていた。まだ人が少なかった下手側に場所を取るとステージはあまり見えなかったが人の頭の隙間から少しだけステージの様子を見ることができて、AC 9mmの時だけ使われる、白い球体が幾つかくっついたかのようなドラムセットがちょうど人の頭の隙間から見えた。開演時刻から数分経った頃に場内が暗転。

 

Answer And Answer

One More Time

淡雪

荒地

Discommunication

白夜の日々

ウイスキーが、お好きでしょ

冬がはじまるよ

白い恋人達

キャンドルの灯を

Brand New Day

Black Market Blues

The Revolutionary

(teenage)Disaster

 

カモメ

太陽が欲しいだけ

 

黒いTシャツを着たかみじょうさんがひとりで登場すると、そのままドラムを叩き始める。次に黒い開襟シャツを着た和彦さんがステージに出てきてセミアコのベースで演奏に加わった。Brand New Dayリリース時のTシャツにジャケットを羽織りハットを被った卓郎さんが最後に登場するとアコギを弾きながら歌い始める、という洒落た登場で演奏が始まったのは、ジャズっぽいアレンジがクールなAnswer And Answer。全体的な雰囲気やサビ・アウトロでアクセント的に入れられる三連符のリズムが何度聴いても堪らないかっこよさで、今のところ個人的にAC 9mmのレパートリーの中で一番好きなアレンジ。

 

1曲演奏が終わると早くもMC。卓郎さんが「F.A.D…Flower and Dragon…今日はFlower and Dragon、って煽りますから」と9mmのホームとも言えるF.A.Dを正式名称で呼んでいた。「おれ今日はそんなに喋らないから。今喋ってるけど、前説だから!」と言って和彦さんとかみじょうさんに喋ってもらおうとしていた。

 

初めてやるアレンジです、というような紹介から演奏されたのはOne More Time。原曲2番と同じような、少し跳ねるようなリズムでのアレンジから始まりサビだけは4つ打ちという切り替わるリズムが気持ちいい構成。サビの〈One more,one more time〉のところでは9mmライブと同様に客の合唱が聞こえる部分もあった。間奏の本来ギターソロが入る部分ではかみじょうさんが和彦さんの方を向いて様々なおどけた表情を見せながらドラムを叩きそうで叩かないという(和彦さんは見えなかったのでそれにどんな反応をしていたのか分からなかったが)フェイントの掛け合いのようなやり取りをして再び歌のパートに入っていた。淡雪は卓郎さんの歌声を引き立たせるようなシンプルなアレンジで、白く発光するドラムセットもよく似合う。One More Timeと淡雪、AC9mmのライブがなかった2年の間にリリースされた曲を続けて初披露という嬉しい流れだった。

 

卓郎さんのコードストロークを基調とした演奏の荒地はアウトロで卓郎さんがアコギを思いっきり歪ませて演奏するアコースティックらしからぬアレンジ。卓郎さんが歪んだ音でギターソロを弾いている時にかみじょうさんがずっと卓郎さんの方を見ながらドラムを叩いていた。今までのAC 9mmのライブでも荒地は何度も演奏されてきたはずなのに、2年振りにAC 9mmを観たのでアウトロでアコギを歪ませるのを自分がすっかり忘れていて演奏を聴きながらびっくり、そして聴きながら途中でそういえばそうだった、と思い出した。

荒地の演奏が終わると卓郎さんが「歪んだ音最高!」とアコースティックライブらしからぬひと言で笑いを取っていた。 ずっとこの音でやってたいよね、(コンセプトを)破壊するようなこと言うけど、とも。Discommunication9mmのアコースティック形態の時と同じく6/8拍子のアレンジで、イントロからサビ前まではドラムセットが赤く、サビに入るとドラムセットは青く光っていた。アコギの穏やかな音から演奏に入った白夜の日々ではドラムセットが白く光り、ステージの照明も純白を基調とした色合いに。

この時だったか、かみじょうさんが赤ワインを飲んで酔っ払うと女性みたいな言葉になるという話が出てきていたが、以前どこかで聞いたことのある話だったので赤ワインの時点でその話だと気付き吹き出してしまった。卓郎さんがそれに乗っかって女性言葉で受け答えをしていた。

 

そんなやり取りから次の曲は、2年前のビルボード公演でも披露された「ウイスキーが、お好きでしょ」のカバー。卓郎さんがしっとりと歌い上げるこの曲は卓郎さんの歌声によく合っているのでこのまま音源化して欲しいくらい。演奏が終わると、そういえばこの曲は女性言葉(の歌詞)だったね、ドラムもウイスキー色だったね(あまり見えなかったが黄色にしていた?)とかハイボールの方が体へのダメージ少ないんだっけ?プリン体的な意味で3人で話していた。

卓郎さんが次の曲からはかみじょうくんが選んだ、とこの後演奏する曲について説明。かみじょうくんは昔のCMソングをよく覚えてるよね、次の曲は何のCMの曲だっけ?と卓郎さんがかみじょうさんに聞くと返答はまさかの 「覚えてない」でフロア爆笑。JRのスキーのCMだっけ、ビールのCM?と3人で話してから演奏に入った曲は「冬がはじまるよ」テレビで聴く機会が多い曲で親しみやすいメロディーのいい曲という印象があったが、アコースティックでの演奏で聴くことで実は歌のメロディーとコードの組み合わせが難解そうな曲だということに初めて気付いて驚いた。演奏後にお客さんから冬物語というビールのCMソングだと教えてもらっていた。平成初期のCMだったのか、卓郎さんかかみじょうさんが「平成以降生まれの人、すいません」と言っていた。

 

次のカバー曲は卓郎さんが歌っているとご本人の歌い方に寄ってしまうというようなエピソードを入れてから演奏されたが自分は歌い出しからしばらくどの曲か分からずサビの少し前でようやく「白い恋人達」だと気付いた。確かに普段の卓郎さんと少しだけ歌声が違っていたような。後半のファルセットがとても美しく見事だった。

歌い終わった卓郎さん、途中で自分の歌い方に戻そうと思ったのに「おれが分からなくなってしまった!」と言っていた。また、歌詞の〈こみあげる〉の部分は桑田さんじゃなくて長渕さんになってしまうと言いながら長渕さんっぽくその部分を歌ってみせた。それを聞いたかみじょうさんが「俺もモノマネやりたい」というようなことを言ったり、和彦さんが「モノマネ芸人さんはすごいよね」と言ったりしていた。誰だったか、この辺りのパートは恋に敗れてるみたいだよね、と言いながら次の曲へ。

 

その次の曲が、ステージがオレンジ色の照明に包まれた中で演奏された、キャンドルの灯を。ボサノヴァのようなリズムが心地よく聴いていて胸の奥がほっと暖かくなるような感覚があった。以前、9mmアコースティック配信でボサノヴァニューウェーブ、という解説があったことを思い出した。このあたりからはそれまで見えていたかみじょうさんのあたりがほぼ見えなくなり逆にそれまで見えなかった和彦さんが少し見えるようになった。9mmと違い和彦さんがアップライトベースを弾かないキャンドル、よく考えたらとてもレアだなと思いながら演奏する様子を観ていた。

 

次の曲について卓郎さんが「かみじょうくんが今朝ドラ見てるからブギみたいなアレンジ。毎回アレンジが決まっているわけではないから、今回のアレンジがレアになるかもしれない。」という解説を入れてから演奏されたのは9mmの最新曲Brand New Day、シャッフル的なリズムの今回のアレンジは前向きな曲調が更に明るくなったような素敵なアレンジだった。言葉ではうまく表せないが跳ねたリズムを3人できっちり揃える、という最後の締め方が非常にかっこよかった。

Black Market Bluesはアコースティックだといつも卓郎さんが滝さんのギターのメロディーを口ずさむのがお馴染みだがこの日はイントロで珍しく卓郎さんが歌わなかった。最初のMCを回収するかのように〈Flower and Dragonに辿り着いたなら!!〉と歌詞を変えて歌っていた。次のサビ後の間奏では卓郎さんが滝さんパートの、ライブバージョンのメロディーを口ずさんでいたのでイントロは客に歌って欲しかったのかもしれないと気付いたが遅かった。間奏では卓郎さんがフロアの上手、下手、真ん中と順番に煽りそれぞれの位置にいる客が歓声を返す様子を嬉しそうに見ていた。その様子を見ていた和彦さんも椅子から立ち上がってやろうとしたところシールドが抜けてしまい、椅子に戻ってスタッフさんにシールドを戻してもらっていた。

 

ステージから卓郎さんのハーモニカの音が聞こえてきたので次の曲が何となく分かったところで人の頭の隙間からステージの様子を窺うと、卓郎さんがかみじょうさんに向かってハーモニカの音を出しそれを受けたかみじょうさんが口を手で叩いてワワワワと声を出して反撃していたので笑ってしまった。卓郎さんのハーモニカの出番と言えば次の曲はThe Revolutionary、カントリー調の軽快な演奏に合わせるかのようにドラムセットが赤・青・緑と色を変えながら光っていた。本編最後は(teenage)Disaster9mm初期の曲なのでこの日のセトリの中で一番F.A.Dに縁がある曲だったのではないか。曲のテンポに合わせるかのようにThe Revolutionaryの時よりも更に早いスピードでドラムセットが赤青緑と色を変えていたのが見え、賑やかで楽しい締めとなった。

 

一旦3人が退場した後、しばらく続いたアンコールの手拍子に迎えられ再び3人がステージへ。卓郎さんがAC 9mm&キツネツキコラボロンTの白、かみじょうさんが卓郎さんと色違いのロンTに着替えていた。(薄く色が付いているように見えたのでスモーキーグリーン?)かみじょうさんが黒以外の服を着ているのが珍しいなと思ったら「スタッフに渡された」とのこと。卓郎さんは「ツアーの中でAC 9mmとキツネツキが異物だと思われないように、みんなの胸に焼き付けて胸にロゴが入ってるから、ってわけじゃないよ!本当はそういうの言わなきゃいいんだよね」と図らずもロンTのデザインに合致した発言をしてしまい和やかな雰囲気に。

そんな雰囲気の中、卓郎さんが優しくアコギの音を出し始めると青い照明の中、卓郎さんの柔らかい歌声が存分に発揮されるカモメの素敵なアレンジに聴き浸った。この日最後の曲は赤い照明の中、客に手拍子を促しながら明るく和やかな雰囲気で演奏された太陽が欲しいだけ。アンコールの2曲の青い照明と赤い照明、という対比の構成だったのもよかった。

 

退場時に卓郎さんがステージ中央に立つと、先ほどBlack Market Bluesでやっていたのと同じようにフロアの上手、下手、真ん中と順番に煽り再びそれぞれの位置にいる客が歓声を返し、それを卓郎さんが嬉しそうに見ていた。そんなフロアとのやり取りを何度も楽しんでから笑顔で下手の袖へ退場していった。

 

 

基本的に卓郎さんしか喋らない9mmと違い、和彦さんとかみじょうさんも喋るAC 9mm。かっこいい演奏の間にゆるいトークが何度も挟まれるのもAC 9mmの楽しみのひとつ。あまりにも話題が多くどこで何の話をしていたか忘れてしまったので以下覚えている分だけメモ。※急に思い出したら追記したい

 

envyのツアーでアジアを廻る滝さんの近況が、滝さんと共にenvyのサポートを務めているロッキーさんから卓郎さん宛に送られてくるとのこと。

 

19周年ツアーのセミファイナルであるこの日の公演。和彦さんが「AC 9mmは初日」と言った後に少し間を空けて「AC 9mmはツアーファイナル」とも言っていた気が。それを聞くと1日だけのライブなのが惜しくて、短くてもいいのでいつかツアーをやってくれたらいいなと考えてしまった。

 

かみじょうさんがMCに慣れていないという話。どういう流れだったかかみじょうさんが「MCの踏んできた場数が違うんだよ」と言うとすかさず卓郎さんが「先輩場数踏んでないっす!」と返していたのが面白かった。9mmが新曲を試したいからと乙やLa.mamaのブッキングを入れてもらっていた時にかみじょうさんがMCをやったことがあったがすべってしまい、当時の事務所の社長から「お前もう喋るな」と言われたらしい。

同じくかみじょうさんのMCの話の時に、光るドラムセットが自分の目の前にあると女優ライトみたいな効果になって顔が綺麗に見える、逆光になるのでフロアの様子も見えないからMCですべっても大丈夫、と言ったところフロアの電気を点けられ逆光ではなくなってしまい客の顔が見えるようになってかみじょうさんが咄嗟に自分の顔を手で覆って隠していたので笑ってしまった。

 

後半のどこかで、かみじょうさんが以前 20歳くらいの子と喋ったらGLAYを知らないと言われたという話になり卓郎さんが「義務教育受けてないの!?」と大きな声を出して驚いていた。ラルクも知らないって、とかみじょうさんが続けて言うと卓郎さんが再び「義務教育受けてないの!?」と言いながら2曲ほど即興で歌っていた。が自分にはGLAYの曲なのかラルクの曲なのか分からなかったのが残念。かみじょうさんが(世代的に、の意だと思うが)教科書が違うんじゃないか?と返していた。ちいちゃんのかげおくりないの?ごんぎつねは?とも。

 

この日卓郎さんがF.A.Dの近くにあるセブンでコーヒーを買ってからF.A.Dの前まで来た時に、ハイエースが止まって誰が出てくるかと思ったらアルカラの太佑さんだった!という話 も。アルカラはこの日横浜ベイホールでライブがあり、そのついでにF.A.Dに忘れ物を取りに来たらしい。Hawaiian6NUBOとアルカラの対バンだったそう。アルカラのサポートを務める爲川さんもライブ前に卓郎さんたちの楽屋に遊びに来ていたらしく、結構ギリギリまでいたよねと和彦さんが言っていた。実は自分が17時頃F.A.Dに到着した時に物販スペースに爲川さんがいるのを見かけて遊びに来たのかなと思っていたので理由が分かった。アルカラと9mm、そしてcinema staff3マンを大晦日に開催するという話も出てきて、年越しをしないイベントのため卓郎さんが健全なイベントと言っていたのが面白かった。

 

1219日に開催される19周年ツアーのファイナル公演についての話になり、既に告知されている通りTermination再現ライブをやることになったがそれは和彦さんの発案だと卓郎さんが説明。29日、ツアー初日の福岡公演は昨年のTIGHGROPEリリースツアー福岡公演が台風で中止になってしまったこと、TIGHGROPE35分ほどの長さだったので丸々入れられるのではないか、とTIGHGROPEの再現ライブをやったので、ツアーファイナルは1stアルバムTermination再現にしようというアイデアとのこと。卓郎さんが「(Termination)一番難しいんじゃないか」と言うと和彦さんが「変な曲ばっかりだからね」と返していた。続けて卓郎さんが「みんな再現ライブ好き?」とフロアに問いかけると歓声や拍手が巻き起こりその反応に卓郎さんがびっくりしていた。卓郎さんの反応を見る限り再現ライブにそんな需要があることは完全に予想外だったようだが、「何回も見たもののけ姫見た時をコロナ禍に映画館で見て感動した(リバイバル上映の意?)のと同じかな」と言って納得していたようだった。みんなに聞いておいて良かった、とも言っていたので今後再現ライブの開催に期待してもいいのだろうか。

 

 

2年振りのライブということでその間にリリースされたOne More Timeに淡雪、Brand New Dayと新曲を3曲もACのアレンジで聴くことができて更に嬉しかった。卓郎さんが途中でも気にせずお酒を取りに行ってください、というようなことを言っていた気がするし、この日のライブを忘年会と言い表してもいた。そのくらい全体的に終始リラックスした気持ちで観ることができたライブだった。自分は基本的にワンマンライブでは開演前~ライブ中にお酒を飲まないことにしているが、もし立見ではなく椅子に座れていたら雰囲気の心地よさにライブの途中でお酒をもらいに行っていたかもしれない。

 

AC 9mmならではのアレンジで繰り広げられるかっこいい演奏と、9mmのライブでは見られない3人のゆるすぎるMCの組み合わせは何度観てもやっぱり楽しい。AC 9mmはライブを一旦お休みしていた滝さんが少しずつライブへ復帰し始めた2018年から活動を開始しているが、滝さんがその後9mmのライブ全てに参加できるようになり今年は19周年、来年は20周年とアニバーサリーイヤーが続くので9mm本隊の活動が多い分元々そんなに本数の多くなかったAC 9mmのライブがかなりレアになってきたなというところ。今後も滝さんがenvyに参加して海外へ発つことがあるのなら今回同様またその時にAC 9mmのライブを開催されたらいいなと。2年振りにAC 9mmを観られて嬉しかった。