最後の駅の向こう

何でもすぐ忘れる人の特に記憶に残しておきたいライブの簡易レポートと趣味のレビューの予定。あくまで予定。

20240317/9mm Parabellum Bullet “カオスの百年vol.20” @Billboard Live TOKYO(夜の部)

     

9mm Parabellum Bullet、結成20周年おめでとうございます!!

 

20回目の結成記念日に開催されたカオスの百年vol.202021年以来となるビルボードでのワンマンライブ。今回は二部制で昼の部が男性限定、夜の部が女性限定。

自分は夜の部に参加。ステージの1フロア上、上手側、ステージをほぼ真横から見下ろすような位置にある座席で、通常のライブハウスやホールと全く違った角度からステージを観られる面白い席。開演までの時間を美味しいデザートとカクテルとともにゆったり楽しむことができたのも良かった。

 

ほぼ定刻に場内が暗転するとお馴染みのDigital Hardcoreが爆音で流れ始めステージ上に設置されたビルボードのロゴを激しい照明の点滅が照らし、フロアの下手側にあるドアからメンバーが次々と登場し、そのまま場内の座席の間を通ってステージへ。

 

Brand New Day

ハートに火をつけて

Vampiregirl

One More Time

DEEP BLUE

光の雨が降る夜に

Lady Rainy

眠り姫

君は桜

スタンドバイミー

キャンドルの灯を

The Revolutionary

白夜の日々

Talking Machine

Wildpitch

 

カモメ

The World

 

 

20周年の幕開けは最新曲Brand New Day!爽やかな水色の照明が空間全体を染める中〈したたか雨にうたれ続けてここまで来たから〉と歌うこの曲を20周年を迎えた日にステージで演奏することがあまりにも合っていて、記念すべき日のライブに相応しい幕開けだった。照明が水色から深紅に切り替わった次の曲はハートに火をつけて。間奏では滝さんがいつも通りステージ前方へ出てきてギターを弾いていたが、ビルボードの座席は一番前のテーブルがステージにぴったりくっついているので滝さんが前に出ると客との距離が数十センチほどになるという近さで(テーブルの上のビールが蹴られないかちょっと心配になるくらい)そのテーブルにいた方々があまりの近さにびっくりする様子が見えた。和彦さんがステージ前方に出ると下手側の一番前のテーブルでも同じような状況になっていた。すごい特等席だ。

 

ハートに火をつけて から音を切らずに次の曲へ続ける激つなぎを披露したVampiregirl、卓郎さんが女性ばかりのフロアに向かって〈You're Vampiregirl!!〉と歌う様子にセトリ入りした理由を察した。間奏のギターソロは滝さんと爲川さんによる見事なツインリードのアレンジで2人揃ってステージ前方まで出てきて演奏していた。その様子を座席から少し乗り出して見ようとした瞬間に爲川さんが上手側のこちらのエリアに視線を向けたのでギターソロを弾きながらこんな上の方の席まで見てくれているのかとびっくり。

Vampiregirlの赤い照明から青や白に切り替わって次の曲One More Timeへ。間奏では滝さんがステージ前方でギターを弾きまくる後ろで卓郎さんと爲川さんが上手の座席に背を向けてかみじょうさんと向かい合って演奏していて、ただでさえ似ている卓郎さんと爲川さんが首を全く同じ角度に曲げて全く同じ動きをしながら息ぴったりに演奏する2人の背中が微笑ましかった。

 

ここで最初のMC。お洒落なレストランといった雰囲気の中おめかしした女性達が座ってライブを観ている、という普段と全く違うフロアを見回して卓郎さんが「おもしれー!」と言ったり、みなさん素敵ですねと声をかけたり、(普段のライブとは違った雰囲気だが)意外と違和感がないですね、的なひと言もあったような。とにかく普段と違う景色を楽しんでいたようだった。このタイミングだったか卓郎さんが「演奏中でも気にせずおかわりしてください」と言うと和彦さんがうっかり大きめの声で笑ってしまい卓郎さんにすかさずそれを拾われていた。

 

次の曲はDEEP BLUE9mm15周年を迎えた年にリリースされたDEEP BLUE20周年の結成記念日という特別な日に聴けた感慨深さに浸った。イントロで歓声が聴こえたのはいつも人気投票で上位に入る光の雨が降る夜に。煌びやかな曲の雰囲気がビルボードにぴったりで大変素敵だった。この曲を聴きながらゆったり座って美味しいモヒートを飲んでいた時に今自分は何という贅沢をしているんだろうかといい気分になった。アウトロでは卓郎さんと滝さんが2人並んでステージ前方、再び一番前のテーブルすれすれのところまで出てギターソロを披露!

 

フロアが一旦落ち着いたところで次の曲はLady Rainy、先ほどのVampiregirlに続いて《Lady》なのでセトリに入れられたのだろうか、盲点だった。ここまでの曲よりも少し音量控えめで繊細さのある演奏になり、その分卓郎さんの伸びやかな歌声がフロア内に気持ちよく響いていた。次の曲もライブで滅多に聴けない眠り姫、この時に卓郎さんが赤にもオレンジにも見える今まで見たことのないギターを使っていて、角度的に自分の位置からは形などよく見えなかったが最近導入されたギターなのだろうか。眠り姫は半音下げチューニングなのでそれ用のギターなのかなと思ったが、どの曲か失念したがその後に別の曲でも使われていた。

 

再びMC、話の流れは忘れてしまったが次に演奏する曲について卓郎さんがちょうど卒業シーズンであることに触れ、小中学生の合唱曲として歌ってもらってもいいよね、教育関係の方がいましたら是非生徒に歌ってもらってというような話をしてから「卒業おめでとう!」と言って君は桜 の演奏へ。サビの〈花ひらいた 君は桜〉の部分で淡いピンク色の照明が空間全体を包んだ光景が美しかった。まだ桜が咲いている場所は少ないが、卒業シーズンであるこの時期に聴けて嬉しかった。確かに綺麗な日本語の歌詞でメロディーも歌いやすそうなので、合唱ソングとして歌われるのが実現したら素敵だなと。

 

それに続いたのがスタンドバイミー、この日はちょうど日曜日だったので〈日曜日の虹を見よう〉と歌うスタンドバイミーを演奏してくれたことも嬉しかった。開放感を感じるサビのメロディーが、天井の高いビルボードの空間にとても合っていた。最後のサビでは途中でギターを弾くのをやめた滝さんのもとへスタッフさんが駆け寄っていたのでギターに何か不具合があったようにも見えたが、すぐに演奏を再開できていたのでよかった。滝さんがギターを弾いていない間は爲川さんが歌詞を口ずさみながらしっかりとサポート、その後は爲川さんが音源通りのリフを弾いているところに滝さんがアドリブのフレーズを入れていた。

下手にアップライトベースが運び込まれて次の曲を察する。9mmの曲の中で最もビルボードの洒落た空間に相応しいのではないか、と思われるキャンドルの灯を。ビルボードのステージが似合うジャジーな曲を、ビルボードらしからぬ爆音で演奏するのが9mmらしさ。アウトロで和彦さんがアップライトベースをクルリと一回転させる様子も、ステージ斜め上からという珍しい角度で見ることができた。

 

ここまで中盤は何となくビルボードが似合う曲が並び、そろそろ終盤というところでぶちかまされたのがThe Revolutionary、真っ白な眩い光に包まれるステージでいつも通りの演奏が繰り広げられる。間奏で卓郎さんと滝さんがそれぞれの立ち位置からそのままステージ前方へ出ていくとその後ろでは 爲川さんと和彦さんがかみじょうさんの方へ移動し3人で向かい合うようなフォーメーションで演奏していた。20周年の節目に聴けたこの曲がいつもより更に清々しく聴こえた。同じく真っ白な照明に彩られた白夜の日々へ、The Revolutionaryからのこの流れが抜群に良かった。心なしか普段より少しだけテンポが早かったようなそれだけ気合のこもった演奏だったんだなという感じがした。

 

大盛り上がりの中、お馴染みのTalking Machineのライブアレンジのイントロ演奏が始まり、卓郎さんがギターを置いてマラカスを振りフロアを煽ると、突然別の曲の演奏が始まった。失礼ながらこの時点では何の曲か分からなかったがハンドマイクで時折モニターに足を掛けたりロックスターのような手振りをしたりとかなり恰好良い歌いっぷりだったので何の曲か分からずとも見ていてとても楽しかった。その隣では滝さんが卓郎さんに向かって両手で卓郎さんを指差して《ライブで最前列にいる熱狂的なファン》のような腕の動きをしていたのが面白過ぎて笑ってしまった。途中でそれに気付いた卓郎さんが滝さんを指差し返すと、滝さんがファンサをもらった客のような「おお」というような反応を一瞬見せたので更に笑った。ワンコーラス演奏すると再びTalking Machineの演奏に戻り、「1,2,3,4!!」の部分ではフロアからこの日一番大きな声が返ってきた。Zeppなどのライブハウスよりもステージが小さめだったからか各メンバーの動きは少し控えめなようにも見えたが、この時には動ける範囲で滝さんや和彦さんが大ジャンプを決めてみせたのが見えた。

 

卓郎さんの「最後の曲です!」と何となく雰囲気からいつも通りPunisumentで終わるかなと思ったが最後はまさかのWildpitch!!ここまでは楽しく見つつも着席したままでお行儀よく観ていたつもりだったが、和彦さんのシャウト一発で何が起きたかを理解し驚きのあまり大きな叫び声を上げてしまった。真っ赤な照明の中での轟音Wildpitchにフロアの誰もが着席して観ているはずなのに完全に小箱の空気になっていた。まさかビルボードで、しかも女性限定の方でこの曲を入れてくるとは。アウトロは原曲の倍くらいの長さのアレンジになっていて大好きなWildpitchをより長く聴けたことも嬉しかったし、昨年のツアーで一度だけ、本編をWildpitchで締めるライブを観た際にあまりにもかっこよかったのが忘れられなかったので再びそれを観られて我を忘れる勢いで嬉しかった。

 

滝さんが退場するところは見逃してしまった。爲川さんが客の方を見て挨拶をしつつステージを下り、フロアの座席の間を通って退場。卓郎さんと和彦さんはいつものようにフロアのあちこちを見ながら挨拶をしたり手を振ったりしていて、1フロア上の階にある自分たちの座席の方もしっかり見て笑顔を向けてくれたのでまた嬉しい気持ちになった。卓郎さん、和彦さん、最後にかみじょうさんも爲川さん同様に座席の間を通って退場していった。

 

いつものように「My Way」が流れ始めるとアンコールの手拍子が始まったが、普段はだんだんとテンポが速くなる事が多い手拍子がこの日はずっとMy Wayのテンポに合わせて揃っていた。フロアの向かい側にある階段の方に目を向けると、階段の途中に並んで立っていらしたカメラクルーの方々も2人並んで客と同じように手拍子していたのがとてもよかった。しばらく手拍子が続いてから再びメンバーが登場。ライブが始まった時とは違い、ステージより1フロア上から入ってきて階段を降り、座席の間を通ってステージへ上がった。

 

この時に卓郎さんが、先ほどTalking Machineのイントロで演奏したのはBOØWYBBLUEのカバーだったことを明かした。昼の部、男性限定ライブ用に(アーティスト名と掛けて)演奏することを決めたらしいが女性の方で何をカバーするか思いつかず、この曲は歌詞に〈boys&girls〉と入っているから夜の部でもやろうというような流れになったとのこと。

 

アンコールの1曲目はカモメ。演奏が始まるとそれまでは閉まっていたステージ背後に設置された黒い幕がゆっくりと開き、ガラス越しに六本木の夜景が見えるという夜のビルボードならではの演出がここで使われた。ステージを斜め上から見る角度だった自分の席からは夜景は少ししか見えなかったが六本木のビル群の赤いランプが僅かに見え、あとはガラスにメンバー5人とフロアにいる客が反射して見えたが、うまく言えないけれどそれもいい光景だった。この時に網目のような模様のライトをフロア全体に映していて、客の頭やテーブルの輪郭で直線の網目模様がゆがんで曲線になっていたのが水面が揺らめいた時の模様みたいで綺麗だった。最後のサビではそれまで深い青だった照明が朝焼けのようなオレンジ色に変わり、それも相俟って本当に海みたいな光景が広がっていた。

この日最後の曲はThe World、この曲でライブが終わるのも珍しいパターンだったかもしれない。東京の中でも一際大都会である六本木の夜景を観ながら〈目を凝らして焼き付けてみる 明日も僕らが生きていく世界を〉の一節を聴くというのが歌詞にものすごいリアリティが出ていて大変いい景色だった。前回9mmビルボードでワンマンを開催した際にはThe Worldでステージ背後の幕が開く演出が入れられ、その時にも夜景を聴きながらこの曲を聴くことにかなりインパクトがあり見事だったので、再び同じ光景を見ることができてよかった。

 

演奏が終わると滝さんが上手の袖にあたる部分へと消えていった。先ほどいつの間にか滝さんが消えていたのはそういう理由だったのかもしれない。爲川さんがフロアへ笑顔を向け挨拶をするとステージを降り、座席の間を通って階段を上り、1フロア上から退場。卓郎さんと和彦さんは再びフロアのあちこちに手を振り笑顔を向け、再度自分のいる上の方の座席にもしっかりと顔を向けてくれた。最後にドラムセットを離れたかみじょうさんも同様に上の方の座席までしっかりと見て手を振ってくれていた。そういえば和彦さんがピックをフロアに投げなかった気がするが、物を投げたらいけない会場だったのだろうか?最後に卓郎さんが丁寧にお辞儀をしてステージを降り、通り道の両側にいた客とハイタッチのような動きをしつつ、階段を上って1フロア上へ。姿が見えなくなるまでフロアのあちこちに笑顔を向け続けていた。

 

 

普段のライブハウスやホールとは全く違った会場で、普段通りのライブをやってみせた9mmビルボードはステージを面白い角度から見ることができるし、ドリンクやデザートは美味しいし、会場に合わせておめかしして来場する人が多いのでそういう部分も含めて楽しむことができた。

今回のセトリについて。ライブ中どのタイミングだったか失念してしまったが、VampiregirlLady Rainyは曲名から女性限定ライブにちなんでセトリ入りしたことが卓郎さんから明かされた。その時には入っていなかったが、曲名的に眠り姫もそうだったのではないか。そして本編最後に度肝を抜かれたWildpitchも〈隣には女がいて彼女の夢は幸せになること〉〈気付けば女はシートから消えた 帰る場所が違うから〉という歌詞があるのでそうだったのかもしれない。また、ライブが終わった後に内容を思い返した時にカモメは女性口調の歌詞だったのでセトリに入ったのではないかと気付いたが、ライブ中は何も考えずにビルボードが似合う曲だなと思いながら聴いていた。カモメの演奏が始まった時にステージの幕が開いて六本木の夜景が見えるようになったが、東京ミッドタウンは意外と海から近いのでそれもあってこの選曲はいいなと思っていた。

 

同じくどのタイミングのMCだったか、本編終盤かアンコールの時だったと思うが5月にリリースされるBlu-rayact Ⅷ」の収録内容が解禁になった話にも少し触れていた。この日の18時頃、自分がビルボードへ向かっている途中に音楽ニュースなどで解禁されているのを見たが、昼の部のMCで解禁したものだったと卓郎さんが言っていた。「(さっき言ってしまい追加のお知らせもないので)めくれるカードがない」とも。また昨年末のライブでも言っていたが今年は頑張ってアルバムも作る!と宣言していたのでより楽しみになった。

 

「昼の部はかみじょうくんが一番可愛くなろうとしてた。でも(夜の部の)みなさんにはちょっと敵いませんね」と昼の部であった出来事を卓郎さんが教えてくれて、かみじょうさんがその言葉を受けて頬っぺたを指でつつくあざとポーズをしたり頬っぺたをぷくっと膨らませたりしていて確かに可愛かったしフロアからも「かわいい!」という声が多数ステージに飛んできた。

 

 

会場に足を運びしっかりとライブを楽しんだ人間が言っていいことではないかもしれないが、記念すべき日に男女で分けてライブをやったことについては人によって無数の意見が出るはずだし、正直自分も色々思うところがあった。そもそもの開催の是非もそうであるし(近年のジェンダーの考え方的に男女分けをすることで参加しづらい人がいるかもしれない、ただ一方で性別を分けることで安心して参加できる人もいるのかもしれないという意見を知人に言われて気付いたので完全に否定するのも違うのかもしれない)、卓郎さんたちの思慮深さを疑いたくはなかったが男女を分けることで何らかの差が生まれてしまうのではないかという心配も正直あった。9mm2019年の6番勝負というツアーで何の説明もなく男性限定ライブだけを開催したことがあり、今でもその時の悲しさやどうしてという気持ちを忘れることができず、それもあり性別分けをすることに良い印象が持てなかった。ただ、ビルボード300席ほどしかないため男女で分けると必ず昼の部、夜の部どちらかにしかチケット申し込みをすることができなくなるという点ではできるだけ多くの人がチケットを取れるようになるというメリットは感じられた。

 

ライブはいつも通り楽しかった。ライブが終わった後にも「何で男女で分けたんだろうか?」という気持ちが完全になくなったわけではないけれど、懸念していた女性限定だから女性口調で煽ります、や穏やかな曲しかやりません、みたいなことは一切無く男性限定のライブと比べて内容に(個人的な曲の好みは置いておいて)優劣は無かったように感じたし、卓郎さんがMCで「9mmの曲はラブソングという感じでもないし(この辺りうろ覚え)、男性でも女性でも同性でも、友達家族どんなパートナーでもユニバーサルな気持ちで聴けるよね」と言っていて、「ユニバーサル」=普遍的・汎用的・全てで通用する、という表現を使ってくれていた配慮については純粋に安心した。