20250111/9mm Parabellum Bullet “Tour 2024-2025 「YOU NEED FREEDOM TO BE YOU」” @Spotify O-WEST
アルバム「YOU NEED FREEDOM TO BE YOU」リリースツアーの11本目。全22公演なので、この日卓郎さんもMCで言及していた通りちょうどツアー日程の折り返し地点。
数年振りに来たO-WEST、入場すると関係者エリアとして使われるイメージがある2階席が開放されていたのでステージ付近とどちらで観るか迷ったが、折角だからと2階席へ。上手側が関係者席になっていて区切られており、真ん中あたりから下手に向かって詰めて座るようになっていた。自分が着いた時には最前列は下手側がまだ空いていたのでそこで観ることにした。最前列は安全のためか立見禁止だったが、Zeppなどの2階席よりもステージがかなり近く、ステージを斜め上から見るような感じでベースアンプ付近は見切れるがドラムセットも俯瞰のような角度で見られるいい席だった。
定刻から2分ほど経ってから場内が暗転しSEのDigital Hardcoreが鳴り響くと、アルバムタイトルの「YOU NEED FREEDOM TO BE YOU」が書かれたツアー用のバックドロップが掲げられたステージに9mmの4人とこの日のサポートギター・武田さんの5人が登場。
Baby, Please Burn Out
名もなきヒーロー
Mr.Foolの末路
One More Time
Domino Domino
ガラスの街のアリス
Fuel On The Fire!!
新月になれば
Supernova
それは魔法
朝影 -The Future We Choose-
カモメ
Brand New Day
太陽が欲しいだけ
Black Market Blues
叫び -The Freedom You Need-
Wildpitch
The Revolutionary
Talking Machine
アルバム1曲目のBaby, Please Burn Out がライブの幕を開ける。ドラムの音から演奏が始まり次にベース、そしてギターと徐々に音が重なっていくイントロにものすごく高揚感を煽られる始まり方に一気にテンションが上がり、最初のサビ直後やアウトロ直前でフロアから「ハイ!!!」と声が見事に揃う瞬間が何度観ても楽しい。Baby, Please Burn Outから演奏を切らずに“激つなぎ”で名もなきヒーローへ、情熱的な赤い照明に包まれたステージがこの曲ではお馴染みの青とピンクのバイカラーに変わった。新年一発目に力強く歌われる〈明るい未来じゃなくたって 投げ出すわけにはいかないだろ また明日 生きのびて会いましょう〉の一節に今年も何があってもこの曲を聴きながら頑張っていこうという強い活力を授かったような感覚があった。
そんな名もなきヒーローに続いたのは反逆のマーチで、更に気持ちを鼓舞してくれるような力強い流れが嬉しかった。それまでステージにばかり注目していたが反逆のマーチのイントロが始まった瞬間のフロアの盛り上がり方に目を奪われ、ステージとフロアの様子を一緒に楽しめるいい席が取れてよかったと改めて嬉しく思った。跳ねたリズムに合わせて卓郎さんが軽快にステップを踏んでいた様子もよく見えた。アルバム音源では抽象的な歌詞とどこか掴みどころがない不思議な雰囲気を味わっていたMr.Foolの末路はライブで聴くにつれパワフルな演奏やライブで披露されるごとにだんだんとテンポが速くなっている気さえするスピード感に、ライブ序盤の起爆剤的なイメージが強くなりアルバムのリリース直後から曲の印象が徐々に変わってきた実感も楽しみながら聴いていた。
演奏が終わりステージが明るくなるとフロアからあけましておめでとー!!と声が飛んできたのを聞いた卓郎さんが「頭にみかん乗せてくればよかったね。」というようなことを言っていたので心が和んだ。大晦日にアルカラとライブを開催したのでみんなにもう新年の挨拶をした気分になってたけど年を越さないライブだった、と言いつつ大晦日に来てくれた人も今日が初めての人も今年もよろしくお願いします、と新年のご挨拶。
次の曲に入るというタイミングであがった歓声に卓郎さんがもっともっと!と煽ってから始まった次の曲はOne More Time 、最近はライブ終盤やアンコールで演奏されることが多かった気がして序盤にきたのは完全に予想外だった。卓郎さんが間奏に入る直前の〈ほら出番だよご主人様〉から「滝ちゃーん!!」と滝さんの名前を呼び、滝さんがお立ち台に上がったところで卓郎さんがフロアに背を向けかみじょうさん、武田さんと向かい合って演奏するというフォーメーションの変化を俯瞰できてよかった。One More Timeからドラムだけ音を切らず、少しテンポを落として演奏を続けながら次の曲、Domino Dominoが始まるとミラーボールが回り始め空間全体に光の粒を散らした。純粋にダンスミュージック的なビートに合う演出にも思えるし歌詞をじっくり聴きながら観ると散らばったドミノや渦巻く思考のイメージにも合っていて個人的にとても気に入っている。着席してゆったり聴いていたからか卓郎さんがぽつりと零すように歌う〈僕は 願いの あきらめ方を 知りたい〉の一節が色々な物への執着をなかなか捨てられない自分に鋭く刺さるような感覚があった。
まさかこの曲がくるとは!とイントロで意表を突かれたガラスの街のアリスは透明感のある白い照明を激しく点滅させていたのが“ガラスの街”にぴったりだった。これも予想外の選曲かつ久しぶりにライブで聴いた気がしたのでイントロを聴いた瞬間、咄嗟に胸がキュッとなるような感覚があったが、序盤で滝さんがギターを武田さんに任せてお酒を飲みながら楽しそうに踊る様子を見て緊張感が解けた。真っ白なステージが一気に赤く染まる切り替わりも素敵だったFuel On The Fire!!でも滝さんが楽しそうに動きながら演奏の合間に器用にお酒を飲んでいて、リラックスしながらライブに臨めているのかなという感じにも見えてよかった。このツアーで初めてステージの5人がちゃんと見えたのでギターのメロディーは卓郎さんが担う部分もあり、滝さんと交互に弾いていることをようやく知ることができた。インストなので卓郎さんがギター演奏に専念し、頭を振ったりいつもより大きい動きでギターを弾いたりするこの曲ならではのギタリスト・菅原卓郎の姿もしっかり見られて嬉しかった。
卓郎さんがツアーを経て曲が馴染んでいく様子を「アルバムがだんだん自分たちのものになってきた」と表現し続けていて、それに加えて「アルバムの曲をガラスの街のアリスと並べても全然負けてないよね」とDomino Domino→ガラスの街のアリス→Fuel On The Fire!!と演奏されたこのブロックについて言及していた。
スタッフや周りの人からすごく人気だけど、もうこの曲だけ目立ってるということはないよね、と卓郎さんが言ってから演奏されたのは幻の光。そうは言っても優しく語りかけるような歌声やそれを引き立たせるような演奏など他の曲とはちょっと雰囲気が違うこの曲は存在感があるよなと思いながら聴いていた。穏やかさのある演奏ながら会場の特性なのかベースの音が一際目立って聴こえたのが他の会場と違っていて興味深かった。心地よいテンポでかみじょうさんがドラムを叩き始めてからイントロに入るというライブ用のアレンジの新月になれば へ続き序盤は優しい歌声が響くが演奏は一転して手数が多くなる、というグラデーションが絶妙な流れ。心の移り変わりを繊細に歌う2曲が続いたことで色々なものを重ねてつい感傷的な気持ちになりながら聴いてしまったがそれも嫌な感覚ではなかった。
一旦音が止まってからギターのクリーンなサウンドで奏でられたのはしばらく聴けていなかった気がするSupernova の、ライブバージョンのイントロだった。新月になれば とSupernovaを続けるんだなと意外に思っていたがサビの〈満月の向こうで 誰が見ていたの〉を聴いて新月からの満月か!と気付いてその手があったかと膝を打った。ひたひたと迫り来るような静かなイントロから一気に炸裂するカタルシスの曲展開とシリアスな雰囲気はSupernovaと抜群の相性だった。アウトロの最後にはかみじょうさんがスティックを2本まとめて両手で持つと刀を振り下ろすように力強くシンバルを叩いていた。
「渋谷でカタルシスを演奏するとざわざわするよね。今反応した人は読者ですね(笑)」とカタルシスなので呪術廻戦に関する話をしていたらしいが読者ではない自分には何の話かよく分からず、でもどうやら作中では渋谷で何かあったらしいということは分かったので作品に縁のある場所でカタルシスを聴くことができたことに嬉しさを感じた。
この時期に似合う曲、というようなひと言からそれは魔法 の演奏が始まると再びミラーボールが回り始めステージとフロアに雪景色を描いた。〈クリスマスソングは聴き飽きたと〉という一節はクリスマスが終わってさほど時間が経っていなかったこの時に聴いても違和感はなかったし、かなり寒かったこの日の空気にも合っていた。最後のサビからアウトロでかみじょうさんの短いソロに入る際に、その見せ場を誰も見逃さないように!と言わんばかりに滝さんがかみじょうさんの方を指した。
それは魔法 でじっくり聴き浸るモードになっていたところにいよいよ朝影 -The Future We Choose- が演奏され、着席した状態で観ていたこともあってか歌詞の一つひとつをより噛みしめて聴くことができて〈夜空のドレス着た花嫁の涙が 星になった光をただ目指してく〉といった言葉選びの美しさにただただ感動させられた。何となくアルバムジャケットの早朝の海を思い出すような、青色に白い光を組み合わせた照明は次の曲、カモメでもほぼそのまま使われていて、朝影の海辺の風景から大海原へ飛び立つようなイメージが脳内に広がった。久し振りにライブで聴いたこともあったからか、特にギターソロの気迫には圧倒されて終わった直後に頭がぽうっとしたままステージをじっと見つめてしまった。朝影 -The Future We Choose-からのカモメ、本当にとんでもなかった。
カモメの余韻にぼんやり浸っていると滝さんがおもむろにギターを弾き始めてかみじょうさんや和彦さんも順に演奏に加わり何だか可愛らしい雰囲気のセッションが繰り広げられた。セッションが終わると卓郎さんがフロア冷えちゃったかな?と様子を窺いながらフロアに話しかけていた。
「カモメは長く演奏してきて9mmを成長させてくれた曲。どうしてベストに入れなかったんですかみなさん!」と笑いを誘いながら、でもそういう曲もツアーではやるよと続けていた。
もう一度、フロア冷えちゃったよね?と確認しつつ「いけるかーー!!」からBrand New Dayへ。イントロを聴いた瞬間急に感極まりそうになってギュッと目を閉じ、ゆっくり目を開くと明らかに1階ではなく2階席のあたりに顔を向け笑顔を見せる卓郎さんの姿が真っ先に視界に入ってきたので何だかとても安心した。この日も1番サビの〈Brand new day どうか 僕にもひとつください〉に「みんなにも!!」と付け加えて歌ってくれた。太陽が欲しいだけ は照明に赤と白を使っていたのが狙っていたわけではないとは思うけれど新年っぽさがあり、〈ツキに見放されて 流れ星は消えた それでも最後は笑え〉の一節には今年もこの曲を聴きながら笑って過ごせたらいいなと少し前向きな気持ちになれた。終盤では滝さんと和彦さんが上手と下手でそれぞれギターのネックを思い切り振ったり派手に回転したりと大きく動き回っていた。Black Market Bluesでは「Spotify O-WESTに…」のあとにいつもの〈辿り着いたなら〉ではない言葉を卓郎さんが入れていた気がしたが何と言っていたのか聞き取り損ねてしまった。
叫び -The Freedom You Need-の公演ごとにフロアの反応が変わる部分、2番サビから間奏へ入る直前で演奏が止まりフロアからの大歓声がしばらく続くと滝さんが下手の和彦さんに向かってそっちを見てと言わんばかりに指さしていた。間奏の終わりから最後のサビに入る直前では再び演奏が止まるとフロアが一瞬静まり返るがフロアから誰かの歓声が上がるとそれに続いてワッと大歓声が起こり、この短い時間で反応が変化していくパターンもいいなと思った。卓郎さんの「最後の曲です!」から和彦さんのシャウトが響き…本編最後はまさかのWildpitch!!去年から何度か披露された、Wildpitchで本編を締めるという流れがあまりにも好き過ぎて、大立ち回りを繰り返すステージ上のメンバーと大熱狂の1階フロアにつられてこの時ばかりは行儀よく観ていることができずに座ったまま拳を振り上げ頭を振るのを止めることができなかった。
演奏が終わると滝さん、武田さんがすぐに退場。和彦さんが上手から下手へとフロアに挨拶してから退場しかみじょうさんはステージ前方へ出てくると戯けたポーズをしてから袖へ消えていった。卓郎さんが万歳三唱をするとそれに合わせて照明も僅かに点滅していた。
アンコールの手拍子がしばらく続いてからステージに再び5人が登場。ツアーグッズのタオルを頭に乗せて出てきた卓郎さんが「アンコールありがとうございます」と言いながらタオルを顔に巻いて顔を隠してしまうというお茶目な仕草を見せて笑いを誘った。タオルを取るとそれを見ながら「これ好きなんだよね」と言っていた。(渋谷QUATTROやZepp DiverCityなど)まだ東京の公演が残っていることにも触れ再度今年もよろしくお願いします、と挨拶。
イントロが始まった瞬間に卓郎さんが「初日の出!」と叫んだアンコール1曲目のThe Revolutionary、間奏のギターソロで滝さんと卓郎さんが揃ってお立ち台へ上がるとその後ろでは和彦さんがかみじょうさんの方を向き、武田さんもエフェクターボードを飛び越えて少し前に出てくると3人で向かい合って演奏していた。太陽が欲しいだけ も新年らしさがあったがそれ以上に正月に相応しい曲だった!元日をもう一度やり直したかのような清々しい気持ちになった。
この日最後の曲はTalking Machine、最近のライブでは「呼び込み君」のメロディーを入れたりご当地ソングを入れたりするアレンジが多用されていたがこの日は通常バージョンで、逆にそっちを久し振りに聴けた気がする。東京のご当地バージョンを楽しみにしてはいたが、今後の公演で披露されるんだろうか。終盤につれてステージ・フロア共にかなりの盛り上がりを見せ最後にはかみじょうさんが大きく腕を振り上げながら演奏していて、大きく動き回ったり楽しそうに踊ったりしていた滝さんはアウトロの終わりを待たずにスタッフさんにギターを渡し最後は自由に動きながらフィナーレを迎えていた。
再度真っ先に退場した滝さんに続いた武田さんが、袖に消える前に笑顔でフロアを見ながらサムズアップしていたので武田さんも楽しく演奏できていたのかなと嬉しい気持ちになった。ピックを投げながらフロアのあちこちを見ていた和彦さん、ひらひらと手を振っていたかみじょうさんが退場すると卓郎さんが再度卓郎万歳三唱し、フロアの1階にも2階にも笑顔を向けながら退場していった。自分の位置から卓郎さんが見えなくなった直後、1階フロアにいる何人かの方が下手の袖に向かって手を振り続けていたので卓郎さんが袖に消えるギリギリまでフロアを見ていたんだなと想像できて温かい気持ちになった。
とにかく視界抜群だった2階席。滝さんがニコニコ笑顔で演奏したり動き回ったり、和彦さんがフロアを煽り帰ってきた反応を見て笑顔になったり、かみじょうさんと武田さんがお互いの方を窺いつつ演奏を合わせる様子が見えたりした。ドラムセット・ギターアンプ・エフェクターボードに囲まれたステージ後方のスペースからほとんど動かず終始きっちりとサポートに徹する武田さんが二度ほど、エフェクターをひょいと飛び越えて控えめに前に出てきた瞬間も見られたのがよかった。
卓郎さんはかなりの頻度で1階フロアだけでなく2階席のあちこちにも視線を向けてくれていた様子に、一番後ろの客も置いていかずに音を届けるぞという気持ちを感じてものすごく嬉しかった。
名もなきヒーローからの反逆のマーチ、太陽が欲しいだけ、The Revolutionary、そして卓郎さんのMCでの「頭にみかん乗せてくればよかった!」など、アルバムツアーでありながら正月の季節感も存分に味わえたのが嬉しいセトリだった。今年も頑張ろう、という活力をもらえたような気になったり、何だかいいことがありそうだなとネガティブ気質な自分でも前向きな気持ちになれたりした。今年もし困難なことが起きたとしても、この日のライブを思い出して乗り越えていきたい。