最後の駅の向こう

何でもすぐ忘れる人の特に記憶に残しておきたいライブの簡易レポートと趣味のレビューの予定。あくまで予定。

20230809/9mm Parabellum Bullet “19th Anniversary Tour” @新代田FEVER

    

結成19周年を迎えた9mmが「9」の付くアニバーサリーイヤーを記念して今年1年かけて開催しているツアーの7公演目。9mmFEVERで有観客ワンマンを開催するのは意外にもこれが初めてで、コロナ禍の2020年に無観客での生配信ライブや事前収録の配信ライブツアーでFEVERを使用したり、今年の4月にFEVER隣接のPOOTLE9mm19周年記念写真展が開催されたり、コラボTシャツが2度発売されたりといった縁を経て満を持しての開催となった。

 

開演10分ほど前に入場するとフロアの後方にまだ僅かにスペースがあったため、後方下手側で開演を待った。ステージがそんなに高くないので何も見えないことを覚悟していたが、ステージに掲げられたバックドロップが人の頭の間から一部見えるくらいだったので少しはメンバーの姿が見えそうだと嬉しくなった。ソールド公演のため開演直前にはフロア後方まで埋まるくらいの状態になったが周りの人と少し距離を取るくらいの余裕はあり、空調もよく効いていて終始快適に観ることができた。開演時刻を3分ほど過ぎた頃に場内が暗転しSEDigital Hardcoreが流れ始めた。

 

 

Cold Edge

Discommunication

ハートに火をつけて

Vortex

All We Need Is Summer Day

Living Dying Message

反逆のマーチ

新曲

Brand New Day

光の雨が降る夜に

Answer And Answer

Sundome

淡雪

Trigger

atmosphere

One More Time

Black Market Blues

Spirit Explosion

Talking Machine

インフェルノ

 

Mr.Suicide

Punishment

 

 

セトリが全く予想できないツアー、今回はCold Edgeからライブがスタート。ステージがほとんど見えない中でも序盤からお立ち台に上がっていたのか、時々客の頭の上に滝さんの肩から上が現れた。Discommunicationはお馴染みの黄色い照明がステージを彩る。小箱なので恐らくFEVER備え付けの照明機材のみを使っていたのではないかと思われるが、発色が鮮やかでかなり綺麗だった。アウトロで一瞬、滝さんが普段と違ってフェイザーっぽいうねるような音を出していたような。続いてはハートに火をつけて、とここまでライブ定番曲が並びフロアを盛り上げていた。間奏ではフロント3人が揃ってジャンプしたのか、一瞬3人の顔が見えたがステージのかなり後ろにいたと思われる爲川さんはさすがに見えなかった。その後は卓郎さんが《手触りだけの新代田FEVER”は》と歌詞を変えて歌っていた。

ライブ定番曲3曲の流れを楽しんでいたところに突然レア曲Vortexの、ライブ版のイントロが聴こえてきて驚きの声を上げてしまった。この時はステージの様子はほぼ見えなかったので音に集中しながら歯切れのいいリズムの心地よさに体で拍を取りながら聴いていた。自分が聴いたのは2021年のツアー以来だっただろうか。序盤でこのクラスのレア曲を入れてくる油断のできなさが今年のツアーならでは。

 

Vortexという突然のとんでもないレア曲にざわつくフロアを静めるかのように、滝さんがギターで穏やかなフレーズを奏で始めると卓郎さんとかみじょうさんが演奏に乗っかり、キツネツキのようなまったりとした雰囲気のセッションがしばらく繰り広げられた。

セッションが終わると卓郎さんが話し始める。FEVERの温度の高さに言及するような文脈で、ここにいる人たちはみんな覚悟して来たんですよね?というひと言があったので、周りの人とほどよく間をあけることができて涼しかった後方と違いステージ付近はかなりの熱気なんだろうなとその様子を想像した。

 

All We Need Is Summer Dayではサビの大合唱に卓郎さんが満足気な笑みを浮かべていたのが見えた。自分が下手側にいたからかベースの音が普段より一際強く感じられたように思えて、この曲の特に好きな箇所である最後のサビのおおらかなベースラインがよく聴こえてとても心地よかった。All We Need Is Summer Dayのアウトロからかみじょうさんが音を切らずにドラムを叩き続けそのままLiving Dying Messageへ、赤と白の情熱的な照明に包まれる中この日一つ目の激繋ぎを見事に決める。赤い照明が続く反逆のマーチ、歌い出しの《この街はいつの間にか~》の部分では和彦さんがフロアのあちこちを見回すように視線を動かしているのがよく見えた。短髪になったことで目元が露になった和彦さん、演奏しながらフロアのことをよく見ているんだなということがよく分かるようになっていた。間奏ではステージの様子は全く見えなかったが、フロア前方から歓声が上がり何か見せ場があったんだな、と考えながら盛り上がるフロアを観ていた。

ステージが少し暗くなると、卓郎さんと滝さんが向かい合って静かにギターを弾き始めた。MCに入る前のセッションなのか、それともこの感じは黒い森の旅人だろうか、と思いながら聴いていると全く聴いたことのない曲の演奏が始まった。卓郎さんの歌に滝さんがオクターブ上のコーラスを重ねる。歌詞はよく聞き取れなかったが《愛》という単語が何度か聴こえたような。だんだん音が重たくなり曲調が激しくなり爆音のツーバス連打は床からも振動が伝わってきて全身を激しく揺さぶられる。まさかの披露となった完全未発表の新曲は、久々に壮絶さを感じさせるメタル曲でツーバス連打もこの日一番重たくあまりにも“9mm”な曲だった。

 

「新曲のリリース日だから、うっかり新曲をやってしまいました。」と卓郎さんがいたずらっ子のような笑顔を浮かべた。これをシングルにしようかとも思った、とも。久し振りに外部からソースを得て曲を作ろうとした、とのことで呪術廻戦の主人公である虎杖をイメージして作られたと。虎杖のイメージソングがハートに火をつけてであると単行本の3巻に書いてあるそうで、卓郎さんは元々好きだったけれどジャンプのアプリで読んでいるためそれを知らず、後から聞いて単行本を確認したとのこと。そのお返しということで勝手にトリビュートしたため、この曲は今放送中のアニメには一切関係ありません、と言っていた。(卓郎さんのMCを記憶を頼りに記載させて頂いたが、自分は呪術廻戦を全く知らないので間違いがあったらすみません。)

ここでだったかこの後のタイミングだったか、この曲を武道館でも聴きたいですか?というようなフリがあり、武道館は事前にリクエストを募ったけどこの曲も200票くらい入ってたもんね?と卓郎さんがすっとぼけて言っていたので、武道館でも聴けることを期待してもいいのだろうか。

 

そんな予想外の未発表曲披露を経てこの日リリースされた新曲、Brand New Dayを満を持してライブ初披露!ステージを彩る爽やかな水色の照明が曲調によく合っていて、生演奏だとMVで聴いた時よりもリズム隊の音が強いように感じられて、その分第一印象で感じていた爽やかさよりも元気な印象が強かった。《僕にもひとつください》の一節を歌う卓郎さんの眩しい笑顔が、人の頭の間からちょうど見えた。それに続いたのがライブでは久し振りに聴けた気がする、光の雨が降る夜に。この曲も鮮やかな水色の照明がバックドロップの双頭の鷲を華やかに染めていたのが見えた。アウトロのツーバス連打に乗せてギターのツインリードが炸裂する瞬間は何度聴いても美しい。光の雨の最後の一音からそのまま滝さんが音を切らずに続けて弾いたのはAnswer And Answerのリフ、この日2回目そして今まで聴いたことのないパターンの激繋ぎに驚き、フロアからも大歓声が上がる。一番最後の《君と出すんだ》の部分で和彦さんがまたフロア全体を見回しているのが見えた。

大興奮の激繋ぎを経て一瞬フロアが静かになった後、かみじょうさんが高速でハイハットを刻み始めその瞬間に次の曲を把握して息を呑んだ。ギターとベースが緩やかに音を重ねてゆくシリアスなアンサンブルから一気に炸裂する音、Sundome。緊張感を心地よく感じつつも演奏に圧倒されて指一本動かさずに演奏に向き合った。89日という日にち柄、もしかしたら聴けるかもしれないとほんの少しだけ期待してはいたけれど本当に聴けるとは。

 

Sundomeの演奏が終わると再び滝さんのギターからセッションが始まった。すぐに卓郎さんとかみじょうさんが演奏に加わり、ステージがほとんど見えなかったので違うかもしれないがどんどん音が増えていったので最後には全員参加していたかもしれない。ちょっとオリエンタルな雰囲気を感じさせる、リラックスして聴ける心地よいセッションだった。セッションが止まると卓郎さんが「かみじょうくんもっとバカスカやっていいよ!」と言っていた。それと、反応が良かったら正式な曲になるかも?というような内容のひと言もあり、それは是非とも実現して頂きたいところ。

 

温度を下げる、というか季節を変えますという感じの卓郎さんのひと言からギターの澄んだ音色が広がると演奏されたのは淡雪。ステージが全く見えなくなったので思い切って目を瞑って聴いてみると、深いリバーブのかかった音や卓郎さんの柔らかな歌声が軽やかに広がり、この時だけは小箱にいることを一瞬忘れるかのような音の広がり方だった。卓郎さんの言った通りに真逆の季節の雰囲気が空間を包んだ直後にTriggerの演奏が続き照明も淡い青から濃い赤へと変わりフロアの温度がすぐに戻ったような感覚。サビで少し見えた滝さんが、ギターを弾きながら口を大きく動かして歌詞を口ずさむ様子が見えた。

Triggerに続いたのがかなりのレア曲atmosphereで何てとんでもない流れなんだとまた驚かされる。中盤の轟音パートは小箱ということもあり音がギュッと凝縮したようなすさまじい迫力があった。最後に再び演奏が穏やかになる部分で一瞬見えなくなった和彦さんの頭が再び見えるようになったので、体を屈めたりステージにしゃがんだりといったアクションがあったのだろうか。2021年のツアーでatmosphereが演奏された際、和彦さんが音の大洪水の中まるで音と一体となって溶けてしまうかのような低い体勢で床にうずくまるようにして演奏をしていた光景がいまだに忘れられずにいるのでその時のことを思い出したりした。

atmosphereの演奏が終わるとここでまた短いセッションが始まった。atmosphereの続きというかエピローグというか、そんな雰囲気のある音階を使った演奏だった。

 

卓郎さんが「いけるかーー!!」と煽ってからのOne More Time、イントロの歌入り直前の部分でギターが1小節分だけツインリードのようにハモりを入れての演奏だった。間奏に入る時には卓郎さんが「ほら出番だよご主人様……滝ちゃん!!!」と今までにない言い方をしていて、普段は「ギター!!」と叫んでいるので滝ちゃん!?とびっくり。One More TimeBlack Market Bluesは昨今のライブで何度も激繋ぎを披露しているので自然とドラムのカウントと同じリズムで頭を振ってしまったが、期待通りやってくれた。卓郎さんが《新代田FEVERに辿り着いたなら!!》と歌詞を変えて歌っていた。

そろそろライブも終盤という雰囲気の中でこれまた予想外のSpirit Explosion、この日何となくこの曲を聴きたい気持ちが強かったので、イントロを聴いた瞬間に何とも言えないものすごく嬉しい気持ちになった。間奏らしきパートから終盤へ続く部分では、卓郎さんが和彦さん、和彦さんがかみじょうさんの方を見ながら演奏していてそれぞれリズムのタイミングを合わせているようだった。続けてTalking Machineが演奏されフロアを躍らせまくる中、客の頭の間から卓郎さんが《空をただ見上げてるだけ》の時に天井を指差す様子が見えた。そういえば2回目のサビの部分、普段と違いかみじょうさんがタムを連打するアレンジが入っていなかったような。本編最後はこの位置に来るのが珍しい気がするインフェルノ、後半では和彦さんがお立ち台に上ったようで頭を振りながらベースを演奏する様子が後方からでもよく見えた。

演奏が終わって5人が順番に退場する時にクリック音のような、一定の間隔でリズムを刻む謎の音がステージに流れていたが何だったんだろうか。かみじょうさんが若干はにかみながら退場するのが見えたけれど謎の音とは特に関係なかった?

 

少し長く続いたアンコール待ちの手拍子に迎えられ再びステージに卓郎さんたちが登場。卓郎さんはこの日限定販売されていたBrand New Dayジャケット写真がプリントされたTシャツに着替えて出てきた。

卓郎さんが「コロナ禍コロナ禍っていう言い方はあまりピンとこない、この中みたいで」と言いつつコロナの状況が始まったばかりの頃、FEVERにはお世話になったと(配信ライブという形で演奏する機会をくれたので)当時の話をしつつFEVERで有観客ライブができて嬉しい、地下鉄もないし218秒もかからないけどFEVERが好きです、これからもよろしくお願いします、とFEVERへの感謝の言葉を述べていた。

19周年のツアーももう折り返したはずなのにこの後もLa.mamaや武道館もあって最後のLIQUIDROOMまで盛りだくさんで…19周年も20周年もこんな感じでライブをやるので来てください。」とも言っていたので早くも来年、20周年に何があるのだろうかと期待が膨らむ。

19周年ツアーのメンバー地元凱旋ライブも残すところ和彦さんの仙台公演だけとなったのでその話の流れで卓郎さんが「和彦のセトリ楽しみだね!」と言うと和彦さんが絶妙な微笑みを浮かべて何度も何度も頷いてたのは任せとけ、という意思表示だったのか、セトリどうしよう、という意味だったのか。

 

卓郎さんが伸びをするように腕を伸ばしてからそのままの体制で「いけるかーー!!」になだれ込んだ微笑ましい様子から入ったアンコールの1曲目はMr.Suicide6月の水戸公演に続くセトリ入り。毎度同じことを言ってしまう気がするが《流星群の雨になって 夜空を洗い流していった》の部分のファルセットが堪らなく好きでこの日も目を瞑って聴き浸った。最後の曲はお馴染みのPunishment、間奏に入ると卓郎さんがお立ち台か柵かどちらかに上がったようで天井にも軽々と手が届くようになり、ギターを弾かずに笑顔を浮かべて天井を触りながらフロアの様子を見ていたのが本当に楽しそうな様子で、卓郎さんの楽しそうな笑顔が観られて嬉しい気持ちになった。

 

演奏が終わると卓郎さんが裕也!裕也!と爲川さんを呼んでいて、ステージ上手の様子は見えなかったが最後に爲川さんを紹介する配慮を見せていた。和彦さんはピック上手下手に何枚も投げて退場、かみじょうさんは上手袖に向かってゆっくり歩きながらフロアに手を振っていたようだった。卓郎さんはいつものように丁寧に挨拶をすると、上手の袖に入ったところで再度フロア側を向いて笑顔を向け、そのまま奥に消えていった。

 

 

毎度レア曲が数曲ずつセトリ入りしている今年のツアー、今回はVortexatmosphereとインディー期のレア曲、更にSundomeTrigger。ここまで全公演観ているわけではないが、もしかしてツアーで1年かけてインディー期の曲全部演奏しようとしている?と考えてしまうくらいの選曲。それに加えてこの日リリースされた新曲Brand New Dayのライブ初披露があった。新曲のライブ初披露に立ち会える機会はそう多くないので今回それに立ち会えたことも嬉しいことだった。しかもBrand New Dayの演奏が始まった時に聴きながらセトリの9曲目に入れられていたことに気付いてさすがだなと。

更に全く予想外だった、完全初披露の新曲まで!かなり好きなタイプの曲調だったので、本当に武道館でもその他ライブでも演奏して欲しいし、リリースされる日がもう待ち遠しい。

 

曲と曲をシームレスに繋げて演奏する卓郎さん曰く激繋ぎ、この日はAll We Need Is Summer DayLiving Dying Message光の雨が降る夜に〜Answer And AnswerOne More TimeBlack Market Blues、それとSpirit ExplosionTalking Machineもほんのり繋がっているような感じだった。以前から曲と曲を繋げて演奏していたことはもちろん何度もあったが、激繋ぎという呼び方が登場してからはライブの度に「この後次の曲と繋がりそうかな?どの曲が繋がるかな?」と意識して予想しながら観るという楽しみが増えた。

 

これまでに(把握している範囲で)FEVER9mmではフレンズのライブの対バン、他にはキツネツキが出演したり、メンバーそれぞれが他の方主催のイベントにゲスト出演したりという機会があったので9mmが今までにFEVERでワンマンを開催していなかったのはよく考えれば意外だったなと。冒頭でも書いたが9mmの初めてのFEVERワンマンは数回の配信ライブと2度のコラボシャツ販売、そして4月の写真展を経て遂に実現、ここ数年のイレギュラーな状況の中で深まった縁が開催のきっかけのひとつだと考えても良いかと思う。

個人的な話になってしまうが、自分の出身区にありライブハウスの中でも特に身近な存在であるFEVER9mmがツアーで来てくれる日がいつか実現することを長年待ち望んでいたので、ここ数年間でFEVER9mmが配信ライブや写真展などを開催し縁を深めていくのを勝手ながらワンマン開催に近付いたのではないかと嬉しく思いながら観ていた。今年のツアー会場にFEVERが入っているのを知った時には遂に念願叶うと喜びを噛み締めた。この日のライブ中に卓郎さんが曲中何度も何度もフィーバー!!!と叫んでいた。叫びやすそうだから色々な曲で入れていたのかなと思いつつ、卓郎さんがフィーバー!!!と叫ぶ度に余計嬉しい気持ちになった。FEVER9mmのワンマンを観たいという願いを叶えてくれてありがとうございました。