最後の駅の向こう

何でもすぐ忘れる人の特に記憶に残しておきたいライブの簡易レポートと趣味のレビューの予定。あくまで予定。

20231109/キツネツキ “9mm Parabellum Bullet presents「19th Anniversary Tour」Acoustic Live” @新代田FEVER

     

結成19周年を迎えた9mmが「9」の付くアニバーサリーイヤーを記念して今年1年かけて開催しているツアーのアコースティック編として、卓郎さんと滝さんによるバンド・キツネツキがワンマンライブを開催。キツネツキのアコースティックは以前ラジオの公開収録などで何度か披露されていたが、自分はこの日初めてアコースティック編成のキツネツキを観られた。

事前に爲川裕也さん、福井健太さん、渡部宏生さんが取り憑かれメンバーとして参加、前半はキツネツキおふたり、後半は取り憑かれメンバーも入れて演奏することが発表された。

 

ソールドこそしなかったものの開演時間が近付くとフロアはほぼ埋まっていた。そこそこの整理番号ではあったが中途半端な位置にいた方が見づらいからと一番後ろ、PAの真ん前あたりで観ることにした。開演時間を数分過ぎたあたりで場内が暗転、登場SEとしてキツネツキのテーマ3が流れ始めた。

 

 

🦊菅原卓郎(Vo/Gt)滝善充(Dr/Vo)

キツネツキのテーマ

101匹おおかみ

ちいさい秋みつけた

小ぎつね

証城寺の狸囃子

The Revolutionary

名もなきヒーロー

🦊卓郎(Vo/Gt)(Dr/Vo)福井健太(Ba)

odoro odoro

It and moment

🦊卓郎(Vo/Gt)(Dr/Vo)福井(Ba)爲川裕也(Gt)

てんぐです

小さな木の実

🦊卓郎(Vo/Gt)(Gt/Vo)福井(Ba)爲川(Gt)渡部宏生(Dr)

キツネツキのテーマ2

ケダモノダモノ

よるのにじ

Intro〜きつねのよめいり〜

まなつのなみだ2019

Punishment

 

Black Market Blues

四川省

 

 

卓郎さんと滝さんがステージに登場し予告通り最初は2人編成で演奏がスタート。この時自分の位置からはステージがほぼ見えず、元々FEVERのステージが低いとはいえ普段頭の先くらいは見えるはずの長身の卓郎さんも全く見えなかったので座って弾いていたのだろうか。 アコギを弾きながら歌う卓郎さんが下手側、普段より控えめな音量でありながらも元気なドラムの音が聴こえてきた滝さんが上手側という位置。101匹おおかみはギターのストロークをシンプルなリズムにしたアレンジで、後のMCでそれがニルヴァーナMTV UnpluggedAbout A Girlという曲から拝借したことを明かしてほんの少しだけ原曲を歌ってくれた。少し後のMCで気付いた人がいたか卓郎さんがフロアに尋ねると1人くらいしか手が上がらず、その人に「お前にだけ伝わっていたらいいよ!」と言っていた。

 

秋が来たのかまだ夏が終わっていないのかよく分からない今の気候のことか、ちいさい秋見つからないね、いやこれがちいさい秋かな、中くらいの秋かな、もうすぐ大きい秋がきますね、と滝さんが前振りを入れてからのちいさい秋見つけた はオレンジ一色の照明とアコギの音色がとても似合っていた。それに続く証城寺の狸囃子は〈ぽんぽこぽんのぽん〉の部分を3割増くらいで歌う楽しいアレンジだった。

9mmのツアーなので、と何とキツネツキが9mmのカバーも披露!卓郎さんが普段弾き語りで演奏する時のアレンジをベースにしたような感じ。The Revolutionaryは本家9mmと同じ真っ白な照明、という演出だったのも良かった。原曲よりかなりゆったりした速さの名もなきヒーローは卓郎さんの歌をしっかりと目立たせたアレンジで歌詞を噛み締めるように聴くことができた。

 

どの曲の後だったか忘れてしまったが2人編成ブロックのどこかのMCにて、先日通販で販売された滝家の米にキャンセル分が出たのでこの日物販に持ってきたという話があった(自分が開場前に物販を覗いた際には既に無かった)。滝さんが生産者としてキャンセルされたことに喧嘩売ってる?と、あくまで普段通りのとても穏やかな口調ながら珍しくお怒りのご様子だった。お怒りの理由は折角精米したての新米なのにキャンセルされたら鮮度が落ちてしまう(要約)とのことで、それほど愛情をかけて精米まで手掛けたお米なのだということがひしひしと伝わってきた。まだ新米の残りがあるので今後の9mmの物販で売ろうかな、通販の方がいいですかね社長?と滝さんが話を続けると菅原社長が110kgとかだったら通販の方がいいと思うけど!と返し滝さんが「そのようにします」とかしこまって返答していたのが面白かった。

そんな話から卓郎さんが続けて「おれたちはキツネツキだけどお稲荷さんって何の神様か知ってる?お米の神様なんだって、お米の生産者がいてすごくない?」と話し、滝さんがそんなにすごいことかな、というような返しをすると卓郎さんが「おれ由来とか好きだから」と更に返していた。

 

名もなきヒーローの演奏後に卓郎さんが「(取り憑かれメンバーを)誰から呼ぼうかな~」と若干勿体ぶってから迎えたのは福井健太さん。下手側、卓郎さんの後ろあたりへ。過去に何度も取り憑かれている福井さんに、卓郎さんがこれで何度目だっけ?と言いながら福井さんと確認したが誰も正確には分からず。その流れで卓郎さんが5回出演でレギュラーになれるとか、メンバーのポイントカード作ろうなどと話が続いた。滝さんがそれに乗っかり、お客さんのポイントカードも作ろうとか、物販でお賽銭を入れたらスタンプ押せるようにする?などと話を続けた。卓郎さんたちがアコースティックのアレンジに悩んでエレキギター使ってしまうかなどと考えていた時に福井さんが助言をしてくれたそう。

 

福井さんがベースで加わってまず演奏されたのはodoro odoro、メインのフレーズをオクターブで重ねるように弾くアコギとベースの音が心地よかった。サビ以外はちょっとスローなテンポで卓郎さんが歌声を響かせサビに入ると原曲通りの速さに戻る、という凝ったアレンジ。続けて演奏されたのは It and moment、ゆったりしたフレーズを福井さんの音が奏でていたのが大変心地よかった。福井さんが取り憑かれたキツネツキは配信含め何度か観たことがあるが、特にこのようなゆったりした曲調で聴くと福井さんのベースの太い音色はキツネツキと本当に相性がいいなと。

 

自分の前にいる人達がいつの間にか少し動いたのか、この時あたりから少しだけステージの様子が見えるようになった。3人編成で2曲を演奏し終わるとレギュラー取り憑かれとしてお馴染みの爲川裕也さんが登場。上手側の滝さんの後ろあたりへ。そちら側にはマイクがなかったため裕也さんが卓郎さんたちに話を振られると福井さんの近くにあるマイクまで都度移動して喋っていた。裕也さんは今までどのライブに出たんだっけ、フェリーに乗った時?高松?などと4人でワイワイと話すもののやはり誰も正確には分からず。登場してすぐに告知を振られた裕也さんが今後のfolcaの予定を話したが、話しかけてやっぱりやめたイベントの告知が気になった。その後には福井さんが自身のバンドPeople In The Boxが今年東京と大阪のビルボードでライブを開催すると告知していた。

 

ギターの裕也さんも加わった編成で演奏されたのはてんぐです、裕也さんが柔らかめのアコギの音で軽やかなリードのフレーズを入れていたのがとても曲調に合っていた。2番では卓郎さんが〈新代田の彼氏は〉と歌詞を変えて歌っていた。

続いての曲は童謡で、滝さんが中学生くらいの頃に既に構想を持っていたが卓郎さんにその曲をやろうよと言われ滝さんが卓郎さんに先を越された、というような前振りが入った。音源化されている童謡のどれかのことを言っているのかなと思ったが演奏が始まったのは音源化されていないどころか今までライブで披露したことないかもしれない?「小さな木の実」という曲。じっくり語りかけるような歌詞も入っていて哀愁も感じさせるような曲の雰囲気が卓郎さんの歌声にぴったりだった。タイトルを聞いた時点ではピンとこなかったが、歌い出しを聴いた瞬間に子供の頃テレビでしょっちゅう聴いていた記憶が蘇ってきた。ライブ後に調べてみると1990年代に「みんなのうた」で放送されていたらしい。

 

4人編成で2曲を演奏し終えるともう一人のレギュラー取り憑かれ渡部宏生さんがステージに登場。ドラマーのロッキーさんが加わったことで滝さんがドラムからギターへ、場所もステージ中央に移動。裕也さんの持っているギターがガットギターのようなヘッドのものから赤いボディのものに変わったのが少しだけ見えたのでギタリスト3人の内訳は卓郎さんアコギ、滝さん恐らくエレガット、裕也さんは何らかのエレキという構成になったようだった。

 

5人の大所帯で キツネツキのテーマ2からアコースティックらしからぬ音量のケダモノダモノへと続いた。掻き鳴らすアコギの音色が情熱的な雰囲気を醸し出していて、このバージョンで音源化して欲しいと思ったほど曲調にぴったりだった。大人数での演奏は初めてかも、と卓郎さんが言ってから演奏されたのはキツネツキの中では新しい曲である、よるのにじ。昨年リリースされて以降確かに毎回2人編成での演奏だった気がする。中盤で滝さんがギター弾くのを止め指揮者のようにドラムスティックを振っていたのが見えた。

静まり返ったフロアに幻想的なギターの音色や柔らかなコーラスが響くIntro〜きつねのよめいり〜が演奏されるとそろそろライブも終盤という雰囲気になりそのまま、まなつのなみだ の演奏へ。アコギの音がきらきらと反射する雨粒のようで、アコースティックかつ大人数のアレンジがあまりにも良かった。そんな中でも2番では福井さんとロッキーさんが迫力ある雷鳴の轟きを表現するかのように音を鳴らすなど個人的に普段の演奏で好きな箇所もしっかり残っていて嬉しかった。

 

普段のキツネツキだとまなつのなみだ演奏後、最後にC.C.Odoshiなどのインスト曲を入れて賑やかに締めることが多いがこの日は滝さんがステージ中央でひとりで即興らしき演奏を始めた。フラメンコギターのようなフレーズを弾き続ける中、途中でよく知っているメロディーが出てきて生命のワルツのイントロと同じメロディーを弾ききるとすかさず滝さんが「これは手癖!でもアドリブだからね!」と言って仕切り直していたので本当にうっかり弾いてしまったらしい。

滝さんがもう少し即興を続けてから再びよく知っているメロディーが出てきたことに気付くとフロアからも歓声が。卓郎さんが「最後の曲です!」と告げ演奏が始まったのは完全に予想外のPunishment!!原曲よりも少しゆっくりなテンポでこちらもジャカジャカとアコギを掻き鳴らすヨーロッパ民謡のようなアレンジが情熱的で楽しい!間奏に入るとそれまでずっと卓郎さんの後ろにいた福井さんが遂にステージ前方へ出てきたのが見えたので9mmの事務所の後輩でもあった福井さんが本家Punishmentを意識して動いてくれたのかなと嬉しい気持ちになった。

 

アンコールの手拍子に迎えられ再び5人全員がステージへ登場。アンコール1曲目では9mmのカバーBlack Market Bluesを披露という大盤振る舞い!この日最後の曲は福井さんが卓郎さん達にあれやらないんですか?というようなことを言ったらしくそのおかげでセトリに入った四川省。アンコールの最後も賑やかな曲で締めることが多かった気がするが、ゆったりとしたメロディーを楽しむ四川省でのんびりと心地よくライブを終えたのもとても良かった。

 

 

ライブ中どのタイミングだったか失念してしまったもの。福井さんがPeople東阪ビルボードライブを告知した時に9mmビルボードライブはいつもの機材で演奏したよと卓郎さんたちが話した流れの中でだったか、この日ステージには小さいメサブギーのアンプを置いているが後ろの人は見えないよねと滝さんか誰かが話す場面があった。するとフロアにいる客が次々としゃがみ始め、何とほぼ全員がそれに続いたのでフロアの一番後ろにいた自分もステージ上の小さなメサブギーを見ることができた。そんなことある!?とフロア前方の皆様の優しさに心を打たれた瞬間だった。

その光景を見た卓郎さんがSlipknotのライブを思い出したらしく「すわれーー(デスボイス)」「わーかーれーろーー(デスボイス)」などと真似をし始めたので笑ってしまったと同時に一連の流れにほのぼのとした気持ちになった。

それと、フロア前方が少しだけざわついた時があり、何があったかと様子を窺っていると「ドラムに貼っていたミュートが最前列の人のところに飛んでいってしまった」だったそう。ただそれだけのことではあったが、それをMCで拾って和やかな雰囲気になっていたのがキツネツキらしいなと。

 

9mm19周年記念ツアーにキツネツキのワンマンを入れたことについて、9mmのメンバーがやってるバンドだからなと最初から納得しつつほんの少しだけ、敢えてキツネツキを入れたことを不思議に思っていた。それについて卓郎さんが、19年やってたらこういうサイドプロジェクトもできました、というような話をこの日していた。

また、アンコールかどこかのMCで滝さんが、キツネツキは滝さんがギターを弾かずにステージに上がるためという大義名分があったけれど2年くらいでその大義名分がなくなった、でも楽しいからやる、というような話もしていた。普段のキツネツキでは9mmの話題をうっかり喋っては「今日はキツネツキでしたね」とボケたりあからさまに他人設定で喋ったりしているが、一時期ライブをお休みしていた滝さんが9mmのステージに復帰する上でキツネツキの活動もなくてはならないもの、9mmにとって紛れもなくとても大事な活動だったという認識なんだなというのが伝わってきた。

大義名分はなくなっても、キツネツキは卓郎さんや滝さん、取り憑かれメンバーの皆様がとにかく楽しそうに演奏しているのを観られることが客側としても何よりも嬉しく幸せな時間なので、アルバムはいつ出るんですかなんて決して言わないので、今後も無理なく楽しく続けて欲しい。