最後の駅の向こう

何でもすぐ忘れる人の特に記憶に残しておきたいライブの簡易レポートと趣味のレビューの予定。あくまで予定。

20231119/9mm Parabellum Bullet “19th Anniversary Tour” @多賀城市文化センター 大ホール

      

結成19周年を迎えた9mmが「9」の付くアニバーサリーイヤーを記念して今年1年かけて開催しているツアーの12公演目。ツアーの中でメンバーの出身県にある会場で、そのメンバーセレクトのセトリでライブを行う卓郎さん曰く「ふるさと納税シリーズ」の最後となる公演。今回は和彦さんの地元宮城県多賀城市にある多賀城市文化センターにて開催。

 

広々とした綺麗なロビーを通り、開演15分前くらいに会場内へ。座席がホールによくある1席独立の折りたたみ式ではなく、ソファのように隣の席と完全にくっついていて縫い目で1席ずつ仕切られているという珍しい椅子だった。隣の席にはみ出さないよう注意が必要だったけれど座り心地はよかった。ステージの上手下手端には短い花道のようなスペースがあり、スピーカーや照明機材の間を抜ければ滝さんや和彦さんが出て来られるかもしれない、と期待。この日は下手の前方の席で、和彦さんやベースアンプと向かい合うような位置だった。ステージと座席1列目の通路が狭かったので体感的にライブハウスの大箱よりもステージが近いような感覚があった。

 

ホール公演の場合は開演して客電が落ちてからSEと共にバックドロップが掲げられる演出が多いが、この日は開演前からステージ上には19周年のバックドロップが掲げられていた状態だったので珍しいな、昨年のTIGHTROPEリリースツアーのようにいつものSEを使わずにHourglassからライブが始まったりするのだろうか、と色々考えながら開演を待った。定刻を数分過ぎたあたりで客電が落ちるとDigital Hardcore HourglassSEなどではなく軽快なロックンロールのイントロが、何故かJohnny B. Goodeが流れ始めたので予想外過ぎる幕開けにびっくり、そのまま順番にサポートの爲川さんを含めた5人がステージに登場。卓郎さんはJohnny B. Goodeに合わせて楽しそうにツイストのようなステップまで披露!

 

Beautiful Target

One More Time

Black Market Blues

The Revolutionary

Wanderland

Grasshopper

ロンリーボーイ

Monday

ダークホース

誰も知らない

泡沫

眠り姫

サクリファイス

黒い森の旅人

Caution!!

ハートに火をつけて

Talking Machine

名もなきヒーロー

Cold Edge

生命のワルツ

 

Lovecall From The World

Punishment

 

誰も予想できなかったであろう登場の仕方に驚いていると1曲目がBeautiful Targetで更にびっくり。9月の武道館公演でも演奏されたがこの曲からライブが始まるのを今までに観たことがないかもしれない。曲中、スタッカートを効かせたメロディの演奏と客席からの歓声の掛け合いも見事に決まり序盤からかなりの盛り上がり。終盤のカオスパートでは和彦さんと滝さんがそれぞれ大きく動きながら演奏していた。続くOne More Timeでは和彦さんが最初のサビでステージ前方まで出てくるといつものように両腕を大きく動かし下手の客を煽ったがその時に微かに「もっと!」という声が聞こえてきて、普段のライブだとそんな細かい部分まで聞き取ることができないのでそんなに全力で盛り上げてくれていたのか!と嬉しくなりこちらのテンションもものすごく上がって普段より大きな声を出し拳を上げながら観ていた。2番のサビから間奏へ入る部分で卓郎さんが「ほら出番だよご主人様滝ちゃーん!!」と元気に名前を呼ぶと滝さんが勢いよくステージ中央に出てきてギターソロを弾き始め、その様子を和彦さんが楽しそうに笑いながら観ていた。

One More TimeからBlack Market Bluesへ、かみじょうさんが音を切らずにカウントを入れシームレスに次の曲へ入る激つなぎを披露!この曲でピック弾きから指弾きに切り替えた和彦さんがイントロに入るタイミングで勢いよく投げたピックが自分の頭上を通って行った。卓郎さんが〈多賀城市文化センターに辿り着いたなら!!〉と歌詞を変えて歌い、和彦さんはそのあたりの部分でアドリブ的なフレーズを入れていた。その勢いのままThe Revolutionaryへ続くとステージが眩い真っ白な照明に包まれる。間奏に入ると卓郎さんと滝さんがステージ中央で向かい合いながらギターソロを弾き、その後ろでは和彦さんと爲川さんがかみじょうさんの前に集まるように向かい合って演奏というお馴染みの光景から滝さんが見事なギター回し!アウトロでは下手の和彦さんと上手後方の爲川さんが息ぴったりにジャンプしながら演奏していてこれもお馴染みの光景だが、下手のステージ近くから見ると和彦さんが結構な高さまでジャンプしていることがよく分かりすごいなとつい見惚れる。定番曲が3曲続いた後に披露されたのが最近では珍しくなったWanderland、予想外の選曲だったので不意を突かれつつ久々のWanderlandにじっくりと聴き浸った。

 

ここで最初のMC。滝さんがシンセみたいな、言葉で表すのがちょっと難しいような、音が段々上がっていくようなエフェクトをかけてギターを弾くと卓郎さんがそれに合わせてスローな動きで大きくステップを踏んでみせ、月面着陸みたいだねとコメント。メンバーの地元で開催する「ふるさと納税シリーズ」についても解説を入れながら、次の曲は声を出したり、飛び跳ねたりしてくださいというような表現の前振りが入ったので遂にあの曲が聴けるのか、とそわそわしながら演奏が始まるのを待ち構えた。

 

そんな卓郎さんの前振りからの次の曲は期待通りのGrasshopper!もう長いことライブで聴けていないが、和彦さん作曲なので和彦さんの地元でやるライブでなら聴けるだろうと期待したのが実現。サビでは客席から\ウォーウォー!!/と大きな声が上がりそれを目の当たりにした和彦さんが嬉しそうな表情を浮かべているように見えた。地元で自分の作曲したGrasshopperを演奏、ということで和彦さんが主役といってもいい曲なのに間奏に入るとすかさず和彦さんが上手の滝さんを指差して滝さんを見て!と言わんばかりの仕草をしていたので、上手でギターソロを披露する滝さんと下手でベースを弾く和彦さんを交互に観ていた。それに続いたのがこちらも和彦さん作曲のロンリーボーイだったので、ここからは和彦さん曲が続くのかとワクワクしながら聴いていた。この曲もライブで聴けたのはいつ振りか分からないほどのレア曲。卓郎さんの朗々とした歌声を支えるようなアレンジが今更と言われそうだけれど改めて聴くとものすごくいいなと。ステージの床やバックドロップに六芒星のようなフォルムの網目みたいな模様がいくつも映される演出が美しかった。

ロンリーボーイのアウトロから音を切らずに次の曲へという激つなぎで演奏が始まったのは何とMonday!いつぶりに聴けたか分からないくらいのレア曲が惜しみなく次から次へと披露されるセトリに一瞬頭が追いつかずワンテンポ遅れてものすごくびっくりするという嬉しい流れ。Mondayでは歌詞に出てくる〈雨〉を表すかのようにステージ床などに細かい光の粒を投影して雰囲気を作り上げていた。ゆったりとしたメロディーを歌い上げる卓郎さんの歌声がホールの空間にぴったりで、ここで聴けて本当に良かったと嬉しさが込み上げた。和彦さんの歪んだベースの音で驚きと喜びの歓声が上がったダークホースは真っ赤な照明の中力強い立ち姿でぐいぐいと演奏する和彦さんの姿に釘付けになった。Grasshopperからダークホースまで4曲も和彦さん作曲ナンバーをぶっ通しで聴かせてくれた。これが聴きたかった!

 

ダークホースの演奏が終わると卓郎さんが滝さんのところへ行って何やら相談を始め、滝さんがオフマイクで「1回!」と言ったのが下手にいた自分にも聞こえた。すると卓郎さんがステージから退場して残った4人でセッションが始まった。滝さん手動でGm的なコードの速過ぎず遅過ぎずなテンポで、和彦さんやかみじょうさんが滝さんの様子を窺いながら、爲川さんも滝さんと息ぴったりに演奏を合わせただひたすらに心地よいセッションが繰り広げられた。あまりにも巧すぎてそんなわけないはずなのに元々用意してきたものなんじゃないか、と思ってしまうほど。

 

セッションが終わると卓郎さんがステージに帰ってきた。ニコニコしながら「かっこよかったですね。おれのいない間、かっこよかったですね!」と笑いを誘うように客席に話しかけ場を和ませた卓郎さん。歌っているうちに声がガサガサになってしまった、と状況を説明し「みんなの力を貸してくれ!」とひと言。

 

卓郎さんが、次の曲は久々にやる曲でアレンジを色々と変えたら誰も知らない…“誰も知らないような曲になってしまった(要約)という丁寧な前振りをしてから演奏が始まった、これもライブで聴けたのはいつ振りだろうかというレア曲、誰も知らない。その言葉通りでイントロのドラムが音源より明らかに手数が激増していた。シリアスさのある曲の雰囲気に比べるとちょっとコミカルに見えるような動きで滝さんが腕を動かして踊っていたが、確かに体でリズムを取りやすい気持ちのよいテンポの曲なので踊りたくなってしまう気持ちも伝わってくる。そのシリアスな空気のまま泡沫へ、誰も知らない も泡沫も、卓郎さんが喉の不調を感じさせないかのような伸びやかなビブラートを入れながら歌う様子には圧倒されるものがあった。水の中をイメージしたかのような青い照明が、中盤の〈どうして どうして どうして いつも〉の部分からは歌詞の情念を表すかのような真っ赤な色に変わり、和彦さんが曲の重みを視覚で表すかのように体を屈め低い体勢で演奏していた。これが何度ライブで聴いても圧巻で好きなところ。

次の曲に入る前に卓郎さんが今までライブで見た記憶がない黒いテレキャスシェイプのギターに、爲川さんも白いストラトシェイプのギターに持ち替えたので珍しいなと思いながら観ていると次に演奏されたのは眠り姫。この曲だけチューニングが他の曲と違い半音下げだからいつもと違うギターが出てきたのかと。自分が下手側、ベースアンプの延長線上にあたる位置で聴いていたからか繊細な音色のギターと比べて元々目立つベースの太い音が更に強調されて聴こえ、滑らかなグリッサンドをふんだんに入れたベースラインが非常に心地よかった。青い照明に包まれるステージに三枚羽のプロペラみたいな模様が投影されるという演出の中で演奏された、ライブでは意外と久し振りのような気がしたサクリファイスは音源よりキーを1音ほど下げての演奏だっただろうか。

 

卓郎さん、滝さん、爲川さんの3人が向かい合うと滝さんが「12」とオフマイクでカウントを入れたのが聞こえた。それを合図に3人がトレモロピッキングで弾き始めたのは、黒い森の旅人のライブ用イントロのメロディー。このアレンジは初めて聴いたかもしれない。間奏で卓郎さんと滝さんが向かい合うようにしてツインリードのメロディーを弾く部分、普段はついそちらに注目してしまうことが多いが、この日はしっかりと和彦さんの方に注目し伸びやかで美しいベースラインに聴き浸った。イントロの力強いバスドラムと歪んだベースの音で次の曲が何かを察し客席から驚きの声が漏れたCaution!! 再び和彦さん作曲ナンバーがセトリ入り。音源だと8小節ほどのベースソロが入るが、この日はベースソロを音源よりもかなり長くしたアレンジにしていたので和彦さんのソロを存分に楽しむことができた。長い長い見せ場を弾き切った和彦さん、凛々しい表情を大きく崩すことはなかったが心なしか少しだけやり切ったぞ、という表情が混じっていたようにも見えた。

 

ハートに火をつけて では卓郎さんがここでも〈手触りだけの多賀城市民センターは〉と歌詞を多賀城仕様に変えて歌っていたり、Talking Machineでは「ふるさと納税シリーズ」恒例となったライブ用イントロに当地ネタなどを入れるアレンジをやったりとこの辺りはこの日ならではの特別感のある流れとなっていた。この日のTalking Machineには自分が聴いたことのない歌が入れられていて、宮城県で流れている何らかのCMソングなのかなと考えつつも卓郎さんの歌声にとても合っている曲調で初めて聴いたはずなのにどこか心がほっとするようなあたたかいメロディーで、卓郎さんがあまりにも楽しそうに歌っていたので曲を知らなくても楽しい気持ちで聴いていた。宮城県では誰もが知る曲のようで客席もかなり沸いていた。正体をアンコールと終演後に知ることになるその歌からTalking Machineの演奏に戻ると更に熱狂する客席。2番のサビに入る際には下手の和彦さんと上手の滝さんが息を合わせて大ジャンプ!

 

そろそろライブも終盤という雰囲気を漂わせたタイミングで名もなきヒーロー、CDのジャケットカラーを再現するかのように青とピンクを主体とした照明でサビの〈また明日 生きのびて会いましょう〉の部分だけ赤くなる鮮やかな演出はホールでも健在。それに続いて和彦さん作曲ナンバーの代表格であるCold Edgeが終盤で満を持してセトリ入り。間奏では和彦さんが「多賀城ーー!!!」と力強く叫ぶ様子や、その後の演奏で入る休符をミュートする手元が普段よりも近い距離でしっかりと見られたのが嬉しかった。卓郎さんがサビの一部を歌わずマイクから少し離れるような動きをしていたので喉がきついのだろうか、と少し心配しながらその様子を観ていた。

本編最後の曲は生命のワルツ。今までのライブのように音源のイントロを流したりギター、ベース、ドラムでライブ用アレンジを演奏したりするのではなくギター陣で音源のイントロを再現するような、今まであまり聴いたことのないアレンジだった気がする。中盤では和彦さんが力強く蹴り上げる動きから大きく回転する大立ち回りを見せた。この時にも卓郎さんはサビの一部を歌わずにいたが、その部分では客たちが全力で歌い、客席から大きな歌声が巻き起こった。

 

演奏が終わると滝さんと爲川さんはいつものように早めに退場、卓郎さんと和彦さんが客席のあちこちに視線を向けながら挨拶して退場。かみじょうさんはステージ中央あたりに出てきて戯けたようなポーズを見せてから退場して行った。

 

いつもより少し長めに感じたアンコールの手拍子に迎えられ、和彦さんがひとりで下手の袖から再びステージに出てきた。マイクをいつもの腰くらいの位置から普通の高さまで上げるだけで大歓声。客席から和彦!と大きな声で名前を呼ばれると少し照れたような笑顔を浮かべながら落ち着かせるかのように「分かった分かった!」とひと言。

客席を見渡しながら、ふるさと納税シリーズって公式の名前になったんだっけ?と笑いながら和彦さんが話し始める。仙台生まれでその後多賀城に引っ越したそうで、普段は出身地を仙台と言っているけれど多賀城に住んでいた時期の方が長いとのこと。

アンコールで登場した時に本編で着ていた黒いシャツからこの日限定の和彦さんTシャツ()に着替えてきていて、そのTシャツを見せながら、多賀城のお土産に何を買うか迷うと思うのでT”を是非、と紹介。コラボ商品のネックウォーマーも一緒に宣伝していた。

Talking Machineのご当地ネタについても言及。アレンジのデータをメンバーに送ったところ卓郎さんが歌を気に入ったようで着替えながら口ずさんでいたとのこと。あれを聴いて分からない人=東京から来た人を炙り出せると言っていて東京から観に行った身としては一瞬動揺してしまった。藤崎で働いてる人いる?と客席に尋ねていた。ライブで言及されたのはこのくらいだったので終演後に知人に聞いたり調べたりしてみると仙台にある藤崎百貨店のテーマソングである「好きさ、この街が」を歌っていたことが分かった。

 

そんな感じでひとりで話し続けるも他のメンバーが誰も出て来ず、何度かステージ袖を気にしながら話していた和彦さん。どうしようかなというような雰囲気を出していると客席の下手前方にいた方が「和彦先輩!」と声を掛けたので和彦さんがそれを拾って少し会話が続いた。その方は和彦さんと同じ高校の出身だったらしい。

9mmが宮城でライブをする際は仙台でやることが多いが、地元・多賀城でライブを開催したことについて和彦さんが「今回の会場いいよね、音響もいいしまた多賀城でやってもいいよね?俺が勝手に言ってるだけだけど。仙台からも近いし。今日も仙石線に乗ってきました。」とコメント。

それでもまだステージに誰も戻ってこない。困ったような表情を浮かべながら和彦さんが「俺は今日泊まっていくけど、東京に帰るメンバーもいるからあんまり長く喋るなって言われてるのに」と言いながら様子を窺っていた少し後だったか、上手の袖からようやく卓郎さんが登場。わざとらしくゆっくりした動きで歩きながらステージ中央へ。

話し始めた卓郎さんは声がかなり掠れていて裏声みたいな発声の仕方でどうにか喋っているという状況だった。卓郎さんが和彦さんに「声が出ないからおれの代わりに多賀城とみんなへの感謝を伝えて!」と無茶振りをすると、また少し照れ笑いのような表情を浮かべた和彦さんがマイクから離れると、オフマイクでかなりの声量で「ありがとう!!!!」と叫ぶように言った。

 

卓郎さんが客席に向かって一緒にメンバーを呼んでくれとお願いすると卓郎さんが音頭を取り「せーの!」「みんなー!!」と9mmらしからぬ掛け声で他のメンバーを呼び込んだ。滝さんは上手袖から飄々と歩きながら笑顔で登場、かみじょうさんは下手袖からゆっくりと歩いて出てきた。全員が定位置につき再び演奏へというところで、和彦さんが卓郎さんやかみじょうさんの方へ向けてオフマイクで「ちょっと待って」とひと言、何があったのかと様子を窺うと、滝さんのギターがまだ準備が終わっておらず、シールドが刺さっていなかったらしい。滝さんの準備が完了して演奏へ。

 

もう卓郎さんの声がほとんど出ていない状態でアンコールをどうするのかと心配していると1曲目は49秒のショートナンバーLovecall From The Worldで歌い出したのは何と滝さん!そのまま歌い続ける滝さんに続くように客席からも大きな歌声が聞こえ、自分もそれに歌声を重ねた。この日最後の曲はPunishmentで、序盤は引き続きメインボーカル滝さんと客が、〈再現不可能〉以降は滝さんがいつも通りコーラスの方のメロディーに切り替えて客の大合唱とハモる形になっていた。声が出ないはずの卓郎さんも歌詞を口ずさむような動きで口を大きく動かしていた。間奏に入るとステージ中央の卓郎さんの近くへ和彦さん、滝さん、そしてそれまでずっとステージ後方にいた爲川さんも出てきて4人で並んで演奏というお馴染みの光景。間奏が終わると和彦さんがステージ下手側の花道のようなスペースまで移動して演奏、演奏が終わるとベースを花道のスペースに器用に横向きに立てるように置いてステージに戻っていった。

 

滝さんと爲川さんが退場するところは見逃してしまった。和彦さんは下手からステージ中央、上手へとピックを何枚か投げながら移動しつつ客席に挨拶。ドラムスティックを1本持ったかみじょうさんがステージ中央へゆっくりと出てくると、客席に背を向けたままスティックを投げ込んで退場。卓郎さんが声を出せない分、ありったけの笑顔を向けてから退場していった。

 

 

卓郎さんの不調を全員でカバーするようなライブが見事だった。トラブルがあってもその時にできることを全力でやる9mmの、これまでの経験からの強さが存分に発揮されていた。用意していたかのような完成度のセッションは2019年のツアーで同じく卓郎さんの喉の不調が出た時に他の4人で即興でセッションし卓郎さんの喉を休ませる時間を確保したことを、滝さんが代わりに歌ったアンコールはかつてライブ中滝さんの腕に不調が出た時に卓郎さんがすかさず滝さんのパートを弾いて助けていたことを思い出し、メンバー同士すかさずフォローし合える頼もしさに感激しきり。

ライブ中盤には卓郎さんが「19年目もみんなに助けてもらって」と言ったり、客にみんなの力を貸してくれ、と呼びかけたりしてこちらを頼ってくれたことも嬉しかった。Punishmentでは前述の通り歌い出しは滝さんがメインボーカルを務めたが、サビに入ると普段通りハモリの方を歌っていたように聴こえたのが、サビのメインボーカルは客を信じて任せてくれたのかなと後から思い返すとちょっと込み上げるものがあった。卓郎さんは声が出ない代わりにギターを全力で演奏し普段通り客席にたくさん笑顔を向けてくれた。

 

和彦さんの地元で期待通り、普段なかなかライブで聴けない和彦さん曲が多めに入れられたセトリや宮城公演恒例の和彦さん単独MCもたっぷりと聴くことができた。表情豊かな和彦さんがたくさん見られたのも嬉しかった。どのタイミングが忘れてしまったが、和彦さんが卓郎さんに普段と違った登場SEの話を振られて笑顔になっていた場面もあった。これもどの曲の後だったか、ライブ中盤あたりでピック弾きから指弾きに切り替える際に和彦さんが持っていたピックを投げたが客席まで届かずステージ前方に落ちてしまい、はにかみながら落ちたピックを指で弾いて客席最前列中央あたりまで飛ばし直していた。

Grasshopper〜ロンリーボーイ〜Monday〜ダークホースという次いつ聴けるか分からないくらいの怒涛の流れが間違いなくこの日の白眉だった。他にもWanderlandや眠り姫といったライブでは久々に聴けた曲もあり、卓郎さん作曲の誰も知らない が予想外のセトリ入りを果たしたり、和彦さんの大きな見せ場があるキャンドルの灯を は意外にも演奏されなかったりと今回どういう思いや意図で選曲されたか一つひとつ解説が聞きたいところ。また、迷宮のリビングデッドや湖など今回演奏されなかった曲も聴きたかったし、和彦さんもまたこのホールでライブやってもいいよねと言っていたのでいつか多賀城市文化センターで「和彦さんが作った曲全部やる」ライブを開催してくれないだろうか。どうかお願いします。

 

19周年という9mmにとって記念すべき年のツアーで、3月にかみじょうさんの辰野、6月に滝さんの水戸、7月に卓郎さんの鶴岡、そして11月に和彦さんの多賀城、とメンバー4人の地元あるいは出身県で行われた「ふるさと納税シリーズ」、自分は4公演中水戸と多賀城のみ参加できて、その日ならではのメンバーセレクトのセトリに入れられたレア曲が単純に嬉しかったし普段よくやる曲も各メンバーが自分の地元で演奏したいという思いで選んだんだなと考えながら聴くと普段とは少し違う気持ちで聴くことができた。それぞれ会場のホールもとても見やすく、レア曲尽くめのライブを指定席でじっくり聴けたのもよかった。

観に行けなかった辰野と鶴岡も知人の感想や9mm公式が上げているライブレポを読んでセトリを見ているだけでも楽しかった。水戸も多賀城も開演前に「映像収録カメラが入っております」とアナウンスがありライブ中カメラクルーの方が客席を行き来していたので、4公演とも映像化されるのだろうか。

水戸も多賀城も今までに行ったことがなかったので初めての場所に行ってみる良いきっかけにもなり、それぞれ日帰りではあったが短い時間の滞在を楽しみ、特産品をお土産に買い帰ってからも楽しめたので卓郎さんが言い続けていた【ふるさと納税シリーズ】がとても的を射たタイトルだった。もちろん辰野も鶴岡も行きたかったし、一度きりの開催にするのは惜しい企画なので数年後になってもいいので、ふるさと納税シリーズ第二弾の開催を期待したい。

 

【追記】

128日のYouTube配信で和彦さんから言及されたもの

 

◆セットリストのポイント

・みんなの選曲となるべく被らないようにした

9/9渋谷La.mamaで開催したワンマンがB面集=act Bだったが、シングルでもあまりやっていない曲が意外とあるのでこの際今年中にやれたらいいなと密かに思っていた曲を投入した

・なるべく各アルバムから最低1曲ぐらいは入れるようにした

 

SEについて

Johnny B. Goode

バック・トゥ・ザ・フューチャーのサントラに入っているバージョン

・劇中でJohnny B. Goodeをやるシーンが和彦さんが思い描く「ホールで激しいライブが行われている」のイメージ