最後の駅の向こう

何でもすぐ忘れる人の特に記憶に残しておきたいライブの簡易レポートと趣味のレビューの予定。あくまで予定。

20190427/ARABAKI ROCK FESTIVAL.19 (初日)

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最近増えてきた春フェスの先駆け、と言ってもいいのだろうか。東北の春の風物詩、荒吐に初めて参加してきました。

 

不慣れな野外フェスと東北の春の寒さを懸念して今まで一度も参加したことの無かった荒吐

いつか行ってみたいとは思っていたところ、今年の荒吐では9mmの15周年を記念した特別なステージがある、とのことでそれは行くしかない!と思い切って参加。初めてなので様子見ということで初日のみ参加。

 

当日はどんよりとした雲に覆われ、小雨が降ったり止んだり。気温も一桁とかなり寒かった。例年はもっと暖かいらしく寒さに耐えられるか心配だったが、用心してたくさん着込んでいったお陰で寒さにも耐えられた、と言う感じ。時折太陽が顔をのぞかせた時にはとても暖かかったけれども。

観たいバンドがたくさん出ていたが、最後まで体力を温存するために無理のないペースで回っていたので観られたステージはそんなに多くなかったし、泣く泣く諦めたステージもあったが、最後まで元気に過ごすことが出来た。

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◆12:00 HANAGASA STAGE

cinema staff

 

HANAGASA STAGEは屋根付きの空間で、ステージの後ろは真っ白でスクリーンのようになっていた。到着すると既にサウンドチェックが始まっていた。まずKARAKURI in the skywalkersをワンコーラス。次の西南西の虹では飯田さんが入念に確認をとっていた。

 

 

シャドウ

great escape

実験室

first song(at the terminal)

into the green

希望の残骸

 

シャドウからライブがスタート。最初から動き回り、ドラムに向かい合ってギターを弾く辻さん。この会場の特性なのか、空気が何か違うのか、単純に機材の違いなのか、音が普通の会場で聴くよりもジャキジャキと鋭い感じに聴こえ、個人的にはとても好きな音だった。運よく飯田さんの手元が見える場所で観ていたため、Aメロで飯田さんが高速でダウンピッキングをする僅かではあるけれど好きな手つきをいい位置で観られて静かに喜んでいた。次はgreat escape、ただでさえテンションの上がる曲でありこういうフェスの場でも知名度の高い曲だからか、とても盛り上がるフロア。

続いてはフェスでやるのは相当珍しいのではないか!?と驚いた曲、実験室。澄んだ歌声とゆったりした演奏が会場を包む。飯田さんは白い息を吐きながら歌っていて、丁寧に紡ぎだされる歌声がまるで目に見える形で生み出されてゆくようで、とても美しい光景だった。

first song(at the terminal)、曲調に合わせるかのようにステージ後ろを横に走るようなめまぐるしい照明が曲にぴったり。最後の少しゆったりとする部分ではそれに合わせて照明の速度が下がったりもしていた。into the greenは普段はサビでステージが緑に染まることが多いが、この日はサビ前までは緑、サビに入ると白い照明に変わるというなかなか珍しい様子。この曲の爽やかさと明るさをとてもよく表しているようで素敵だった。

時間も限られているので最初のMCではリリースやツアーの告知があるのみだったが、最後の曲の前に飯田さんがゆっくりと話し始める。実際の表現とは少し違うかもしれないが、信念、信念を持ってやっていく、そこに少しでの優しさがあればいいと、真っ直ぐな眼差しで話す飯田さん。その言葉に続いた最後の曲、希望の残骸がどれだけ素晴らしかったか。前向きなエネルギーが溢れてくるようでメンバー全員の熱量も最高潮に達し、場所柄聴き取ることはできなかったが辻さんが何かを叫びながらギターを弾いたり、三島さんがシャウトをすれば辻さんもそれに続いてシャウトしたり。短い時間ではあったが、新旧の緩急異なるタイプの曲が並ぶ良いセトリだった。

 

 

ここで一旦場内を見て回ったり、昼食を取ったりしていた。BANETSU STAGEを通りかかると竹原ピストルさんのライブが始まるところだった。その周りもぐるっと見て回ったが、そこだけ見ると音楽フェスに併設されたものとは思えないほど服や雑貨、バッグなどの店がたくさん並んでいて立派なマーケットのようだった。

 

 

◆13:30 MICHINOKU STAGE

SiM

 

MICHINOKU方面に戻ってくると丁度SiMのライブが始まっていた。実は曲をほとんど知らなかったが、普段観る機会がなかなか無いだけに観てみたくて、途中からは後方で観ていた。遠くからでも驚くほどステージがよく見えた。やはり激しいライブのようで、ダイバーが次々に飛んで行ったりモッシュも巻き起こっていた。歯切れのよいMCは激しく煽るだけでなく、以前SiMがツアーで東北に来た際にスタッフをしていた荒吐の主催でもある会社の新人スタッフさんがツアーの際に感極まり「次はSiMを荒吐に呼びます!」と言ったことを話し、新人なのにそんな権限はないだろと突っ込みつつそれが今回の出演に繫がったかもしれない、と言うようなことを言って「今ライブ観てるか!」と、話しかけていたところにこのバンドの温かみを感じた。初見なので詳しい感想が言える訳ではないが、最後までとても楽しく観ていた。

 

また休憩を挟んだり、グッズを買いに行って再びMICHINOKU方面に帰ってくるとサンボマスターがライブ中で、「平成最後!全員優勝!!」とコール&レスポンスをしているのが聴こえた。会場内をうろうろしていて突然、こちらも観てみたかった人間椅子のライブをやっていることに気付いて慌ててARAHABAKIへ向かったがもう最後の曲で、本当に僅かな時間しか聴けなかった。ステージに4人いたので不思議に思いよく見るとドレスコーズの志磨さんがゲスト出演していた。僅かな時間だったが、聴こえてくるギターの音がとんでもなくかっこよくて、すぐに心を掴まれるようだった。

 

 

◆16:30 MICHINOKU STAGE

10-FEET

 

なかなか観る機会の少ない10-FEET、今回観られるのを楽しみにしていた。知っている曲も僅かだったので後ろで観ていた。1曲目のgoes onでは演奏が始まったと思ったらすぐに中断、TAKUMAさんが「荒吐、こんなもんじゃないだろ!!!」と煽り演奏再開。曲が終わると「ありがとうございました!10-FEETでした!」と言ってここからアンコールに突入するような流れ。

「平成最後のとか絶対言わないからな!」と分かりやすいフリを入れたり、客に靴を掲げさせたりとMCではネタ満載だったが、東北の景色を歌ったという曲があったり、「伝えたいことがある人には真っ直ぐ伝えて」とあたたかい言葉を投げかける場面もあった。

一旦自分が中座してしまったため音漏れ状態で聴いていた曲もあり、戻ってくるとライブが終わる寸前で、ほんのちょっとだけ時間あるので、と言って始まったのは「時間がない時のRIVER」よく他の人の間奏ツイートやレポで目にしていたものだったので思わず笑ってしまった。ざっくりした感想になってしまうが、ライブはもちろんかっこよく、笑いもありグッとくる言葉もある、10-FEETがたくさんの人に支持される理由がとてもよく分かったステージだった。

 

 

◆18:00 MICHINOKU STAGE

 UNISON SQUARE GARDEN

 

この時間以降、観たいステージがいくつか被っておりギリギリまでどれを観るか悩んでいたが、今や気軽にチケットが取れる存在ではなく、このような機会でないとなかなか観られないユニゾンを観ることにした。

上手で待機しているとサウンドチェックからまず貴雄さんが登場し自らドラムを叩きながら確認を進める。少し時間が空いて田淵さんと斎藤さんも出てきて、3人でのサウンドチェックもあった。

1曲目は流れ星を撃ち落せ、と威勢の良い曲から始まった。Catcher In The Spyが好きなので大喜びしながら聴いていた。後で聴いたがフェスでこの曲をやるのはなかなか珍しいとのこと。ライブが始まると同時に後ろから人がたくさん流れてきたためステージはほぼ見えず、近くにあったモニターで時折メンバーの様子を見ていた。よく動き足を高く上げたりする田淵さん、曲によっては立ってドラムを叩いていた貴雄さん。斎藤さんが良い表情で間奏のソロを弾きまくる様子など。月並みな感想になってしまうが、やっぱりユニゾンのライブは楽しい。天国と地獄、場違いハミングバードシュガーソングとビターステップ、そして最後は君の瞳に恋してない。セトリを全て把握は出来なかったが、後半はこんな感じだった。今回もMCはほとんどなく、最後に斎藤さんが「バイバイ!」といって去って行った。

 

 

◆18:00 MICHINOKU STAGE

9mm Parabellum Bullet

 

いよいよMICHINOKUステージのトリ、9mm。

“15th ANNIVERSARY CARNIVAL OF CHAOS in ARABAKI”と名付けられた特別なステージ。持ち時間は何と90分、そしてたくさんのゲストの出演が発表されていた。

ニゾンに続き上手で待機。ゲストが多いため、転換中に運ばれてくるアンプの量が普段の倍くらいもある。ひと通りステージに並べられると下手から和彦さんのアンプ、黒いベースアンプ、白くて低いアンプ、卓郎さんのマーシャル、ドラムセットPHX、滝さんのメサブギー、ジャズコ、マーシャルヘッド&キャビ、メサヘッド&マーシャルキャビ、という順番に置かれる。ベースアンプはウエノさん、ジャズコは真緒ちゃん、その右隣のマーシャルは和嶋さんのものだと予想がつく。この時点で白いアンプは誰のか分からなかった。サポートは運ばれてきたギターから武田さんだと分かる。スタッフさん達が準備を進める中、ふとドラムセットに目を遣ると座っていたのはかみじょうさん。しばしドラムを叩き自ら確認。今回は本人がサウンドチェックやるスタイルかと思ったら他のメンバーは出て来ず、かみじょうさんもしばらくするとすぐにステージから消えていた。その後だったか、真緒ちゃんは出てきていたけれども。いよいよ開始時刻、暗転し荒吐のジングルが流れ…いつものようにDigital Hardcoreが流れる。始まる!!

 

登場する5人。和彦さんはいつものように黒シャツを肘下まで捲っており、卓郎さんは白いTシャツ?に薄めの長袖の白シャツを羽織る。武田さんは黒いオーバーサイズのTシャツか。この時の気温は結構低かったと思うが、北国出身の3人は寒さに強いのか、この通りの薄着だった。対照的に滝さんは黒のマウンテンパーカーを着ていて、前を首元までしっかりと締めていてとても暖かそう。かみじょうさんは黒いパーカーを着ているのは確認できた。

 

太陽が欲しいだけ

Cold Edge

黒い森の旅人(東出真緒)

ハートに火をつけて(チャラン・ポ・ランタン)

新しい光(斎藤宏介)

Bone To Love You(和嶋慎治&西馬音内盆踊り)

Vampiregirl(橋本絵莉子)

恋愛スピリッツ(橋本絵莉子)

The World(ホリエアツシ&山田将司)

Black Market Blues(TOSHI-LOW&ウエノコウジ)

Mr.Brainbuster(剣舞/みちのくプロレス)

The Revolutonary

名もなきヒーロー

Talking Machine

Punishment

 

カモメ

 

※括弧内はゲスト

 

まずは5人での演奏。いきなり太陽が欲しいだけ!もの凄いエネルギーを持つ明るいこの曲から威勢よく始まった。1日中小雨が降ったり止んだりの空模様だったこの日に相応しい選曲。

続いてCold Edge、仙台出身である和彦さんの曲だからセトリに入ったのだろうか。間奏のシャウトは位置的にあまり聞き取れなかったけれど、「荒吐――!!」と叫んでいたのか。最後のサビでは和彦さんがいつものように大回転していた。卓郎さんが歌うと、歌声と共に出てくる白い息。寒そうだなと思いつつその様子は上手く表せないが、とても綺麗だと思った。

 

ここからゲストの登場、まずはBIGMAMAの東出真緒さん。9mmとBIGMAMAは古い付き合いでかつて9mmのツアーでも対バンしていたし、最近は卓郎さんと滝さんのバンド・キツネツキに真緒ちゃんが“取り憑かれメンバー”として参加している盟友。登場した真緒ちゃんは黒いコルセットのような飾りのついた、光沢のある深い青の長袖ドレスを着た優雅な出で立ち。これからやる曲について、「実は東北を意識して作った」という卓郎さん。その曲は、黒い森の旅人。バイオリンが入るならこの曲だろうか、と思っていたらその通りで、バイオリンの音がただでさえ美しいメロディーを更に際立たせる。アレンジは2014年の武道館公演にてストリングス隊「黒い森の楽団」と演奏した時のものがベースになっていた。もう一度ストリングスの入った黒い森が聴きたかっただけにこのアレンジを、しかも真緒ちゃんのバイオリンで聴けたことが嬉しかった。終始笑顔でバイオリンを弾く真緒ちゃんは時折滝さんと顔を見合わせる。間奏の、普段ツインギターで弾いているところは滝さんと真緒ちゃんがふたりで弾いていた。真緒ちゃんが退場する時には笑顔の和彦さんが真緒ちゃんに向かってグーサインを向け、真緒ちゃんも同じくグーサインを作りふたりでグータッチをしていた。

 

続いて登場したのはチャラン・ポ・ランタン。チャランポとの出会いについて卓郎さんが話す。以前仙台にて機材を降ろしていたところ女性に声を掛けられ、逆ナンかな?と思ったらその女性がももちゃんだったとのこと。(ここでももちゃんが手を上げる) 9mmの方ですか?と声を掛け、チャラン・ポ・ランタンという姉妹ユニットをやっています、と自己紹介をしたとのこと。その後チャランポのふたりがラジオでハートに火をつけてをカバーしていると知った卓郎さん。という訳でチャランポと演奏する曲はもちろん、ハートに火をつけて!イントロではももちゃんが笑顔で、裏拍で拳を上げる様子が可愛らしくいざ歌い始めると圧巻の歌声。サビではももちゃん、卓郎さん、小春さん、滝さんが4人で歌うというこの編成ならではの豪華なハーモニーを響かせる。間奏のソロは小春さんがお立ち台の上でアコーディオンを弾きまくり、その隣で滝さんがギターを弾かずに両手の拳を交互に突き出したり、スカダンのようなステップを踏んだりと踊りまくっていた。アコーディオンの音色とももちゃんの歌声が入ることでもっと哀愁漂う雰囲気になるのかな、と思っていたがふたりのパワフルさが出ていてかなり熱いアレンジになっていた。間奏のソロは本当に見事だった。

実は2番の歌を入りそびれてしまっていたももちゃん。出番が終わり袖に入った直後、マイクがまだオンになっていたようで「踊ってたら2番歌い忘れちゃった!」という声が聞こえてきた。最後までとてもチャーミングだった。

 

次は9mmのひとつ前にMICHINOKUステージで演奏していたUNISON SQUARE GARDENの斎藤宏介さん。

9mmもユニゾンも今年で結成15周年という同い年バンド。ステージに登場した斎藤さん、「お邪魔しまーす!」とひと言。斎藤さんを迎えて始まった曲は新しい光!イントロや1サビ後の間奏では斎藤さんが卓郎さんと向かい合ってマイクを両手で持ちながら頭を振っていた。ハンドマイクで歌う斎藤さんの姿がとても新鮮。卓郎さんと交互に歌う斎藤さんの歌声は重厚なこの曲に爽やかさと更なる眩さを加えていて聴いてみれば確かに、ハイトーンが得意な斎藤さんにぴったりな選曲だった。アウトロではお立ち台に上った斎藤さんがエアギターをしていて卓郎さん、滝さん、和彦さん、武田さんが一斉にネックを上げるのを見ると同じようにエアギターでネックを上げるような仕草。歌っていない時にはとびきりの笑顔を見せていて、終始本当に楽しそうだった!斎藤さんがギターを持たずに自由にステージで動いている姿はとても貴重だった…。

 

「9mmには宮城の和彦と山形のおれ、東北出身のメンバーが2人いますが、次に出てくれる人は青森出身です。」というような紹介から登場したのは人間椅子の和嶋慎治さん。袴を穿いて襷を掛けた和服に丸眼鏡と一つに結った髪という出で立ちでSGを構える、その佇まいだけでもうかっこいい。滝さんと武田さんの間に立つ和嶋さん。始まったイントロでどの曲か分かるとあまりの驚きで叫び声を上げてしまった。自分が聴いたのは恐らく2014年の武道館以来何と5年振りの…Bone To Love You…!!スローで跳ねたリズムに和嶋さんの細かいチョーキングが絡む。中盤からは和服の男女が左右の袖から徐に登場。男性は黒子のように黒い布で顔を隠し、女性は大きな笠を深く被っていてやはり顔が見えないようになっていた。西馬音内盆踊りがここで登場!ということである。間奏では穏やかになる演奏に合わせるように踊り子さん達が腕を上に構えたままピタッと止まるとそれを見た卓郎さんが踊り子さん達の真似をして腕を上げて動きを止めていた様子が微笑ましかった。間奏の中盤からテンポが速くなると和嶋さんのワウが炸裂、盆踊りの皆様も人数が増えていきいよいよ盛り上がってくる。速い曲調とゆったりした盆踊りの絶妙な組み合わせ。そして和嶋さんの隣でギターを弾く武田さんは嬉しそうな笑顔を浮かべていた。退場する和嶋さんが滝さんと抱き合うと滝さんも一際嬉しそうな表情になっていた。

とんでもないレア曲が聴けてしまった。それだけでも貴重だったのに、更に和装で貫録のチョーキングを響かせる和嶋さんと盆踊りの皆様が加わり、ステージには浮世離れした光景が広がっていた。どことなく和のイメージのあるこの曲と盆踊りがどれだけ相性が良かったかは言うまでもない。

 

続いて登場したのは橋本絵莉子さん。ボーカルのみで参加するのかな、と勝手に思っていたら卓郎さんの左に立ち、ギターを手にする。見慣れない白いアンプはえっちゃんのものだった。お互いの共演を喜ぶえっちゃんと卓郎さん。ステージに立つのはおよそ1年振りらしい、ということはチャットモンチーのラストライブ以来!?曲はVampiregirl、イントロのギターは普段なら卓郎さん→滝さんの掛け合いだがこの日はまず滝さん、それに続いてえっちゃんが弾くがギターの音が出ない。すかさずギターのノブを回すえっちゃん、ボリュームが0のままだったようだ。無事ギターの音も出て順調に曲が進む。1番の早口パートは卓郎さんが歌い、サビでは卓郎さんとえっちゃんがふたりで歌う。卓郎さんが歌うメロディーが「夜明けま」までは音が上がっていき「で」で下がるようになっているのに対してえっちゃんのパートは「夜」から「明けま」で音が下がって「で」で再び上がる、というようなメロディーを歌っていた。えっちゃんのハリのある歌声が加わることで驚くほど凛々しく、真紅の薔薇のような気高さが出ていてそれはもう美しかった。2番の早口パートはえっちゃんが歌い始めると普段話している時と同じような可愛らしい口調で、サビに到達するギリギリのところで何とか全部言い切っていた。サビに入ると再びハリのある歌声を響かせる。間奏の後半は滝さんとえっちゃんによるツインリードのアレンジに!登場時から可愛らしい笑顔でほんわかとした雰囲気だったえっちゃんがギターを弾き始めた瞬間キリッとしたかっこよさに変わっており、その姿がどれだけ素敵だったか。

 

これまでのゲストは1曲毎に交代していたが、Vampiregirlが終わってもえっちゃんはそのままステージに残っていた。そしてえっちゃんが歌い出したのは…チャットモンチーの、恋愛スピリッツ。同時に客席から悲鳴が上がる。まさか、ここでチャットの曲をやるなんて想像もつかなかった。サビでえっちゃんと卓郎さんが一緒に歌う光景。原曲に近いようなアレンジだったがアウトロではカオス音を叩きつけドラムは手数が一気に増え、轟音が大洪水を起こすという、最後の最後に9mmならではのアレンジが入る。

結果的にゲストの中で2曲参加したのはえっちゃんだけで、ゲストの曲をカバーしたのもえっちゃんだけだった。9mmとチャットモンチー、同世代でありどちらも初期のプロデューサーが同じ(いしわたり淳治さん)という、兄弟のような深い縁のある2組だからこそ、と言えるのかもしれない。えっちゃんが退場した後にひと言、何を言っていたのかは失念してしまったのだけれど話していた卓郎さんが僅かに言葉を詰まらせていたり、鼻を啜るようにしていたのは自分の気のせいか、あの寒さのせいか、或いは。

 

次はTHE BACK HORN山田将司さんとストレイテナーホリエアツシさん。おふたりとも9mmや卓郎さんソロ等でも対バンや共演の機会が多い先輩たち。卓郎さんの左隣にホリエさん、右隣に将司さん、という形で位置に着く。卓郎さんは自らを先輩をまとめてしまった、「不届き9mm Parabellum Bulletです」なんて言っていた。将司さんがいるのでBlack Market Bluesあたりだろうかと勝手に考えていたが、カウントの仕方でそれではなく別の曲が来る事を察する。始まった曲はThe World、サビ以外はホリエさん、将司さん、卓郎さんが交互に歌いサビで3人がハーモニーを響かせる。ここでも何て贅沢なものを聴いているのだろうか…と感激するばかり。どこか退廃的な歌詞は特に将司さんの声が非常に合っていて、また美しいメロディーはホリエさんの流麗な声にとても合っていて、何となくバクホンやテナーと近いものがあるな、という印象。最後のサビの部分を観ていて気付いたところ、穏やかな表情としなやかな手振りで歌うホリエさんと対照的に眼差しに力を込めきゅっと拳を握り歌う将司さん、と同じ歌を歌っているのに歌い方に大きな違いが出ていたのが観ていて面白かった。将司さんは「9mm15周年おめでとう!」と言ってくれていた。退場時に滝さんを片腕でハグする将司さん、少しじゃれるような感じになった後滝さんを後ろから捕まえるような体勢になってしまっていた。ふたりともいい笑顔だった。更に袖に消える直前には将司さんとホリエさんがふたりでハグして去って行った。

 

次のゲストは大先輩、BRAHMANTOSHI-LOWさんとthe HIATUSウエノコウジさん。登場するやいなや「まとめるなら将司とホリエと一緒が良かった」と話し始めるTOSHI-LOWさん。卓郎さんは「でも革ジャン着てまとまってるじゃないですか」と見事に返す。

和彦さんの方を見て「和彦のマイク、ウエノの踝の高さまでしかないじゃん」とTOSHI-LOWさんが言えばそれに被せるようにウエノさんが腰をかがめ、和彦さんのマイクで「広島から来ましたウエノコウジです」と言いTOSHI-LOWさんがその様子を見て「進撃の巨人じゃん、巨人が人を食うシーン」と更に続けるというやりたい放題っぷりが客の笑いを誘う。TOSHI-LOWさんが和彦さんを見て「ベース2本要らなくね?」と言うと卓郎さんが「和彦、前で観てていいよ」と続け、その言葉を聴くと嬉しそうにベースを置いて客側に行こうとするふりをしていたがTOSHI-LOWさんが「曲の構成覚えてるやつがいないと困るからやっぱりいて」と言えばウエノさんが「9mmの曲はキメが多くて難しい!」と続ける。

またTOSHI-LOWさんは卓郎さんを見ると「雨だから卓郎の髪余計チリチリになってるじゃん」と言った後で更に(9mmのMCでは絶対に出て来ない方面の例え方)をしていじり倒す。卓郎さんの天然パーマをそんな風にいじれるのは絶対にTOSHI-LOWさんだけだ…笑 しかし卓郎さんから立ち位置を直されると素直に応じる優しいTOSHI-LOWさん。

このおふたりを迎えて演奏する曲が全然想像つかなかったが演奏が始まると聴き馴染みのあるライブ版のアレンジ、Black Market Blues!相当聴き込んだこの曲もおふたりの歌と演奏が入るととても新鮮で、TOSHI-LOWさんが歌い出した瞬間、あの歌い方で歌われたBMBのあまりのかっこよさに観ていて自然と感嘆の声が出てしまう程。ウエノさんは表情はあまり見えなかったが貫録の佇まい、ただひたすらにかっこよかった。TOSHI-LOWさんとウエノさんが加わることで良い意味で闇市感が増していた。そしてウエノさんと向かい合ってベースを弾く和彦さんの嬉しそうな顔!!普段、「迷える子羊たちが~」の部分はベースを弾かないため、片手でベースを高く掲げボディを叩くのがお決まりになっているがこの時にはウエノさんを目立たせるためか、そういった派手な動きはせずに弾いていた。曲の途中でステージ後方に何か飛んだのが見えたのが、かみじょうさんがスティックを投げたのか。和彦さんは最後までずっと嬉しそうだった。この共演が和彦さんにとってどれほど嬉しいものだったのかはその表情からよく伝わってきた。

 

この辺りだったか、中盤のMC中に出てきた話で、卓郎さんによると和彦さんは第一回目の荒吐を自転車で観に行ったらしい。その後卓郎さんがふざけて「9mmのベースと自転車担当」と紹介すると和彦さんがいやいやいや…というような仕草を見せていた。その和彦少年が長い年月を経て、地元のフェスのメインステージでトリを飾ったことがこれ以上にないくらいの素晴らしい凱旋だと思い、その姿に心を打たれた。

また、このあたりで気付くとかみじょうさんがパーカーを脱ぎTシャツ1枚になっていた。その少し前から腕を捲っているのには気付いていたが。白い息を吐きながら叩いているのに半袖、という様子はこちらから観ると寒そうに思えたが、あれだけの勢いで叩いていれば本人は暑いくらいだったのかもしれない。

 

次はゲストが出て来ないうちに5人で演奏されたのだが…ここでもイントロが始まって秒で悲鳴を上げることとなる。この曲もライブで聴いたのは数年振り、Mr.Brainbuster!!短い曲なのであっという間に終わってしまうこの曲の途中でいつの間にかステージ下手に登場していたのはみちのくプロレス剣舞さん。テーマ曲としてMr.Brainbusterを使って下さっているのが剣舞さんとのことで、今回は夢の競演であり生演奏に合わせ登場!という貴重なシーンだったということになる。曲が終わると悪役(ということでいいのだろうか、今回は)レスラーとして のはしたろうさんとレスラーがもう御一方(後で公式プロフィールとライブ写真を照らし合わせて確認した限りではシーサー王さんで合っているだろうか)レフェリーが登場、ステージがリングに変わる。のはしさんが剣舞さんと9mmを挑発すると客からブーイングが飛ぶなど試合さながら。その間にレフェリーにゴングを持たされた卓郎さんはそのまま剣舞さん達を観ていた。和彦さんはモニターに座っての観戦スタイル。ライブ中はあまり表情を変えないかみじょうさんもこの様子を観ていた時には(目元はシンバルに隠れて見えなかったが)口元に笑みを浮かべていた。レフェリーが試合開始を告げるような感じになると卓郎さんが滝さんにゴングを渡し、その状態でゴングを鳴らすが、当然鳴らすのに慣れていないからかその音は“カンッ”とかなり控えめに鳴っていた。剣舞さんがドロップキックから華麗にブレーンバスターを決め、3カウントで試合終了!とても短い時間であったが楽しかった。と同時に、この日みちのくプロレスを観に行かなかったことを激しく後悔した。

 

みちのくプロレスの皆様が退場し、これでゲストの皆様の出番がすべて終了。ここからまた5人での演奏になる。

次の曲はThe Revolutionary、間奏のツインリードを卓郎さんと滝さんが揃ってお立ち台に上って弾き、その後ろでは和彦さんと武田さんがかみじょうさんの前までやってきて向かい合って弾いていた。最後の「世界を変えるのさ」の部分で滝さんが「世界をーー!!!」と思いっきり叫ぶと卓郎さんも同じように叫ぶ!この部分でふたりが叫ぶと本当に世界を変えそうな感じがして胸が熱くなる。

続く名もなきヒーロー、最初のサビの「くじけそうな心をふるいたたせて」の部分。コーラスをする時に「心をふるいたたせて」と歌う滝さんが力強く、真っ直ぐな眼差しをこちらに向けた。本当に僅かな瞬間の出来事だけれど、その時の滝さんの眼差しに込められた力強さに一瞬で圧倒された。それほどの眼だった。ここ数年の間に滝さんもこの歌詞の通り「くじけそうな心をふるいたたせ」続けてきたんだろうな…とこちらの勝手な捉え方かもしれないが、何だか切実さが伝わってくるような場面だった。優しい卓郎さんの歌声がこの場にいる一人ひとりに直接話しかけているようだったし、卓郎さんの声を上回りそうなほどの声量だった滝さんのコーラスがこの曲に更なるパワーを吹き込むようだった。

 

Talking Machine、イントロで卓郎さんがマラカスを振っている間滝さんがお馴染みのカッティングを刻む。昨年まではこの部分は手を休める為かサポーターズに任せて卓郎さんのマラカスを真似するかのようにペットボトルを振ったり、全弦ミュート状態で軽く掻き鳴らしたりしていたが今年はしっかりとリフを弾いていて、滝さんがギターを弾く時間が増えているのが窺えるところ。いつもは2番の「何べんやっても」で和彦さんと滝さんが同時にジャンプするのがお馴染みであるがこの時には珍しく、1番の「何べんやっても」でもう息の合った大ジャンプを披露!もちろん2番でも揃ってジャンプをしていた。それだけふたりのテンションも上がっていたのか、と思うと観ているこちらまで嬉しくなってくる。

本編最後はPunishment、間奏では和彦さん、卓郎さん、滝さん、武田さんが一斉にステージ前方に出てくる。ここまで上手の一番端からあまり動かずに黙々とサポートに徹していた武田さんが遂に前に出てくるという、この日最大の見せ場だった。足元にあるライトに照らされた武田さんの勇姿が本当に頼もしかった。最後のサビの前の4小節では「ハイハイハイハイハイハイハイハイ………ダーーーッ!!!!!!!」と元気よく両手の拳を上げて絶叫する滝さん!!最後までかなりのテンションの高さで演奏していた。

 

本編が終わるとまず滝さん、次に武田さんが退場。普段は最後までステージにいる卓郎さんが珍しく早めに退場し、それより長めに挨拶をしていた和彦さんが続く。最後に退場したのはゆっくりとお手振りをしていったかみじょうさん。

 

アンコールの拍手が巻き起こってしばらくすると再び登場する5人。そして卓郎さんが手にしたのはアコギ。アンコールでは珍しい、カモメ。盛り上がる曲ではなくカモメを持ってきたことに驚きつつ、最後の最後にゆったりと音に浸れるこの曲で終わるのもとても粋だと思った。間奏のソロ、滝さんは歯を食いしばるような表情、といっても苦しそうな様子という訳ではなく気迫が前面に出ているような表情。魂を揺さぶる音色と弾き姿から目が離せなかった。

 

演奏が終わると滝さん、武田さんが退場。和彦さんは上手まで出てくると持っていたペットボトルを投げる。卓郎さんは下手上手、最後に真ん中と挨拶。かみじょうさんはスティックを数本持ってステージ前方まで出てくると、手にしたスティックをまとめて客に向かって投げる。悠々と下手まで歩いて行ったかみじょうさんが袖に入る前に下手側で止まり、投げキッスをすると大きな歓声が上がっていた。

 

心配していた天気は、やはり9mmの時間も小雨が降ったり止んだりという感じだったが、大雨になることはなかった。ギリギリ持ち堪えた。どこかのMC中に卓郎さんが「晴れましたね」と言った時に小雨が降っていたのには笑ってしまったし、客からは次々と「降ってるよー!」という声が上がり、卓郎さんが「良いじゃないこのくらい、ミストみたいなものだから」と言い返していたのがまた面白かった。

 上手にいたので下手の袖の様子がよく見えた。順番に登場するゲストが袖で出番を待っていたのも見えていて、次に誰が出てくるのかが実は全部見えていた。僅かに見えた袖の奥ではゲスト同士で会話をしたり、出番以外の人達が一緒にライブを観ているような様子も窺えた。TOSHI-LOWさんとウエノさんが出番を終えて袖に入った時には一際大きな笑い声が聞こえたのと、見間違いかもしれないがよくTOSHI-LOWさんと一緒にいる人物に似た人がいたような気がした。

袖の様子で一番驚いたのは、為川さんがいたこと。事前に9mm公式が上げたリハーサルの写真に為川さんが写っていたから、この日もサポーターズは2人体制だと思っていたし袖に為川さんがいるなら多少は出番があるのかと思っていたら結局一切出番がなかった。自分の出番がないのに、ここまで観に来てくれていたということだ。ライブ中、上手のギター陣をよく見ようと体を曲げて乗り出すように見ている仕草も何度かあった。


何から言えばいいんだろう、というくらいに盛りだくさんの全16曲。フェスではまず聴けないようなレア曲もあり、まさかのプロレスや盆踊りとのコラボは両者共にとても相性が良く、間違いなくこの日でなければ観られない内容の特別感満載のステージだった。

またこの晴れ舞台をくださった荒吐をはじめこれだけたくさんの盟友や先輩後輩、素敵な縁で繫がっている人達がお祝いに駆けつけ共に演奏した豪華なステージを観て改めて、9mmがどれほど多くの人に愛されているのかを実感できたステージでもあった。バンド最大の苦難を乗り越えて晴れて「メンバー全員」で15周年を迎えられたことが嬉しいと思ってきたが、メンバー全員だけではなく「仲間達皆で」迎えられた15周年なんだな…と、更に嬉しくなった。

 

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これで初めての荒吐が終了した。

結果的に、とても楽しいフェスだった!また来たい、と思った。

最後まで元気に回れたので、もう少し多めに移動をしても大丈夫だっただろうか、という感じ。

雨の影響で足元はぬかるんでいるのでは、と心配だったが意外と舗装されている通路も多く、一部ぬかるんでいる所に気をつければ大丈夫、という状況だった。

ライブ以外にもたくさんの出店もあり流石東北、ご飯も美味しかった。寒くなければ何か飲みたかったのでそれは少し残念だったけれども。

そして心に残っていることがもう一つ。朝、入場ゲートに至る道を並んで歩いていると途中にいらしたスタッフの方が笑顔で「楽しんでいってください、めっちゃ楽しんでいってください!」と声をかけてくださったこと。まだ会場に入る前だったのにこれだけでもう、来てよかったなと思えた出来事だった。とてもあたたかいフェスなんだな、と実感した。

たった1日ではまだまだ気付けない魅力もあったはず。だから、また来年、になるかは分からないけれどいつかまた参加したい。