最後の駅の向こう

何でもすぐ忘れる人の特に記憶に残しておきたいライブの簡易レポートと趣味のレビューの予定。あくまで予定。

20230919/9mm Parabellum Bullet “19th Anniversary Tour 〜カオスの百年vol.17〜” @日本武道館

       

結成19周年を迎えた9mmが「9」の付くアニバーサリーイヤーを記念して今年1年かけて開催しているツアーの9本目!そして自主企画「カオスの百年」の名前も冠した、9mmの実に9年振りとなる武道館ワンマン。9mm19周年の919日という奇跡的な組み合わせの日付。

武道館ワンマンに向けて事前に曲のリクエストを募ったところ偶然、同率9位が3+同率19位が6=9曲になったので9位と19位だった全9曲をセットリストに入れることが4月の時点で発表された。また819日のYouTube Liveでは卓郎さんが「919日の武道館公演はA面で、La.mama公演(99日に開催済)B面なんじゃないか。」と言っていて、La.mama公演はその言葉通りほぼシングルのカップリング曲で構成されたセトリだったので、武道館はA=19年間の代表曲を入れつつリクエスト枠でコアな選曲も入る感じだろうか、などと予想しながら当日を楽しみに待っていた。

 

今回、アリーナの座席は前半分が「Pブロック」後ろ半分が「Mブロック」と名前が付けられ、合わせて16のブロックに細かく分かれているという今までの武道館ライブでは見たことがない形式だった。ブロック分けの特殊さにサブステージや花道設置の可能性も考えたが入場すると巨大なメインステージのみというシンプルな構成。ステージの上手側と下手側には通路のようになっていて、それぞれの端は1階スタンド席にかなり近付けそうな位置まで伸びていた。そしてドラムセットの後ろにはいつ振りだろうか、銅鑼が置かれていた!

自分は下手側P2ブロックの後方だったが、椅子がステージ側を向くように斜めに置かれていて角度的には見やすそうだった。ただ身長的に前の人の頭が被り上手はほぼ見えず、隙間から和彦さん、かみじょうさんのあたりがどうにか見えそう、という感じだった。

開演時刻になると場内が暗転しいつものDigital Hardcore…ではなく、先日のLa.mama公演で初めてSEとして使われたインスト曲が流れ19周年仕様の巨大なバックドロップが下からゆっくり上がってきて、場内に響く大きな拍手に迎えられステージにメンバーが登場した。

 

The World

All We Need Is Summer Day

Black Market Blues

Keyword

Story of Glory

キャリーオン

シベリアンバード〜涙の渡り鳥〜

3031

光の雨が降る夜に

Answer And Answer

Supernova

The Silence

(ドラムソロ)

One More Time

反逆のマーチ

Beautiful Target

新曲

Finder

キャンドルの灯を

カモメ

Brand New Day

The Revolutionary

名もなきヒーロー

新しい光

Punishment

 

太陽が欲しいだけ

Discommunication

Talking Machine

 

ステージが眩い真っ白な照明に包まれThe Worldからライブがスタート。最初は9mm4+武田さんという編成で始まったようで、ドラムセットと同じくらいの高さの位置に武田さんがいるのが見えた。真夏の日差しと快晴の青空のような黄色と水色の照明に切り替わったAll We Need Is Summer Dayでは〈All We Need Is Summer Day〉の部分で大合唱が巻き起こる。武道館という大会場でのライブということもあり周りの声量に驚くほどの大合唱で、昨年リリース時に声を出すことができなかった状況から1年でこんな光景が見られるようになったんだなと感慨深い気持ちになった。

All We Need Is Summer Dayから演奏を止めずにBlack Market Bluesへ、曲と曲をシームレスに繋ぐ激つなぎ”(表記については色々あるようだが、今回は武道館終了後の卓郎さんのインスタ投稿記載の表記に合わせる)を早くも披露!青い空間が一気に赤く染まり、演奏が進むにつれ和彦さんの動きと客席の盛り上がりが一気に大きくなった。卓郎さんが〈日本武道館に辿り着いたなら!!〉と歌詞を変えて歌い歓声を浴びていた。ライブ定番曲が3曲続いたところで次に演奏されたのが何とKeywordという出し惜しみのなさで客席が大きくざわついた。間奏でのギターのタッピングが薄っすらハモっていたように聴こえたのは気のせいか。ここでも演奏が激しくなると和彦さんが大きく足を蹴り上げたりシールドを靡かせながら回転してみせたりして見せ場を作っていた。

 

卓郎さんが嬉しそうな声色で「来たな武道館!9年振り、結成19周年の武道館へようこそ!」とひと言。今年のツアーで一番大きい会場だけれど、一番9mmを近くに感じられるライブにします、とも。事前にリクエストを募ったこと、その中の9位と19位に入った曲を演奏しますと説明を入れていた。「次の曲はリクエストに入った理由が分かる気がする。みんな歌いたいんだと思う。」

 

その言葉からStory of Gloryの演奏が始まると突然ステージ後方を横断するように真っ赤な光の線が出現。上手下手に伸びる通路を含めステージの、バックドロップの下あたりの高さに長い長い横一列のLED照明が設置されている事がここで判明した。その演出が生み出す燃え上がるような強い赤が後方からステージを照らす光景が曲の雰囲気に合致していた。卓郎さんの言った通り、〈You&I Try to fly All right now!! 〉では大合唱が巻き起こったが、それ以上に滝さんが力の限り声を張り上げて歌声を響かせていてその様子に胸が熱くなった。最後にはまたステージに燃え上がるような真っ赤な光の線が出現、ステージとメンバーを強く照らしたその光が、9mmの不屈の精神を表しているように思えた。次の曲はキャリーオン、先ほどと対照的にステージには鮮やかな青い光の線が出現。2番で卓郎さんが「声を聞かせてくれーー!!」と叫ぶと大歓声が巻き起こり同時に滝さん、和彦さん、かみじょうさん、武田さんも卓郎さんに呼応するかのように楽器を鳴らし、ここでの一体感は本当に素晴らしいものだった。9mmが一番困難な中にいた2017年にリリースされたStory of Gloryとその翌年、2018年に滝さんが日比谷野音でのAC 9mmとの対バンで9mmの演奏全曲フル出場を果たした際にお披露目されたキャリーオンが続けて演奏されたことで当時のことを思い出しつつ、色々なことを乗り越えてまた武道館のステージに立つ日が来たという喜びが実感と共に溢れ出して、まだライブ序盤なのに込み上げるものがあった。

 

そんな中で次に演奏されたのはシベリアンバード〜涙の渡り鳥〜、先ほどまでの流れで勝手に感極まった状態になってしまったが、哀愁を漂わせつつ元気いっぱいのリズムで演奏が始まると一瞬にしてただただ楽しい気持ちになりイントロに合いの手を入れるように拳を振り上げた。最後の〈胸にナイフを刺したまま〉の部分で和彦さんが自分の左胸を拳でトントンと叩いて歌詞を仕草で表現してみせた。次の曲に入る前に和彦さんがかみじょうさんの方へ何か合図を出すような仕草をしたので、ベース始まりの曲かな?と思ったら演奏が始まったのはライブで最後に聴いたのがいつだったか思い出せないほど久々の、3031だった。再び客席が大きくざわつき、自分も驚きの声を漏らした。もしかしたら最後に聴いたのは前回の武道館ワンマンだったのではないか。バックドロップに重ねられた巨大な爪痕のような模様が雰囲気の不思議さを更に増幅させていた。トリプルギター編成の音の厚み、かっちりしたリズムの気持ちよさ、卓郎さんの艶のある声、あの時よりも更に強固な演奏でこの曲を再び武道館で聴けて嬉しかった。

 

滝さんがクリーンな音でギターを奏でる中、卓郎さんが「ライブがあっという間に終わっちゃいそうだから、ゆっくり演奏したいぐらい」と楽しそうに話し、次に演奏する曲について、かつてリクエストで不動の1位だったけれど順位を落としてまでみんなに聴いてほしいみたいなので、というような紹介を入れた。

「リクエスト不動の1位」でどの曲かすぐに分かった、光の雨が降る夜に。気品のある青い色の照明に染まった空間にはサビに入ったあたりで天井に無数の光の粒が映され光の雨を見事に出現させていて、煌びやかなメロディーと光の雨の演出が本当に美しかった。最初のサビが終わった後の、ライブならではのアレンジである和彦さんのスラップもかっこよかった。見事なツインリードのギターソロを経てアウトロが終わった途端に滝さんがスポットライトを浴びそのままAnswer And Answerへ、ここでも激つなぎを披露!サビに入る前にはたくさんのスポットライトがかみじょうさんを照らし見せ場を逃さなかった。最後のサビ前にも滝さんがスポットライトを浴びているのが見えた。

次の曲はSupernova、何となく赤のイメージを持っていたので白を基調とした照明を勝手に意外に思った。終盤、派手に点滅する照明の中渾身のシャウトを決める和彦さんの姿はどうにか見ることができたがこの時にはステージがほぼ見えなかったことと、自分は大きな会場ででSupernovaが演奏される時にステージに掲げられたバックドロップを見ながら聴くこと、特に〈満月の向こうで 神は見ていたの?〉の部分をを聴きながらフロアを見下ろすような双頭の鷲の姿を見るのが好きなので視線をバックドロップの方に遣りながら聴き浸った。

 

演奏が終わってほぼ真っ暗になった空間にドラムのカウントからクリーンなギターの音が鳴ると場内が大きくどよめいた。そこから滝さんの高速カッティングへなだれ込みまだライブ中盤といったところでまさかのThe Silenceが投下された。バックドロップの下あたりに再び強い光の線が出現し真っ赤に染まるステージ、この日一番とも言っていいほどの壮絶な音圧で繰り広げられる演奏。よく見ると卓郎さんが久々に3ハムの黒いBricoleurを使っているのが見えた。〈暗い地下室で待っているあの人と〜〉の部分ではそれまで気付かなかったがバックドロップの上部に横に細長いモニターが設置されており、それに血が滴るような映像が映され、その演出が曲の持つ何とも言えない絶望感を増幅させていて圧倒的な演奏と合わせて一瞬本気で怖いと思ってしまうほどものすごい迫力で曲が終わるまで指一本動かせなかった。終始圧倒されつつもあらゆるものを薙ぎ倒すかのような音圧が心地よかった。

 

The Silenceの圧巻の演奏が終わると再び静かになるフロア。気付くとステージにはかみじょうさんだけが残っていて、そのままドラムソロが幕を開けた。かみじょうさんの代名詞ともいえる青に染まったステージで、速すぎず遅すぎずなテンポで次々と音を繰り出しそのビートとしなやかな腕の動きはこのままずっと見ていたいと思わされるくらいただひたすらに気持ちがよかった。途中でテンポが速くなるとツーバス連打とものすごい手数で左右のシンバルを乱れ打ち、そろそろ終わりかなという気配がした頃に急にお囃子のようなリズムを少し入れてからドラムソロを締めた。叩き終わると立ち上がって後方へ向かい銅鑼の前でバチを持って構えるとオフマイクとは思えない声量で「ぽぽぽぽーん!!」と一声入れてから思いっきり銅鑼を一発鳴らした。圧倒的かっこよさと親しみやすさ、魅力のすべてが詰まったような演奏だった。

 

ドラムソロを終え拍手喝采のところに卓郎さんたちが戻ってきた。武田さんではなく爲川さんが登場したのでここでサポート交代となったようだった。かみじょうさん渾身のドラムソロを受け、卓郎さんが「こうでなくっちゃね!」とひと言。

そして「もういっちょいける?」という呼びかけからOne More Time、ライブならではのアレンジとしてイントロの歌入り直前の部分でギターが1小節分だけツインリードのようにハモりを入れていた。サビに入ると和彦さんがステージ下手側の通路に出てきて距離が近くなった客席に向かってもっともっと!と言わんばかりに両手を動かして煽っていて、自分はステージが少し観辛い位置だったので、和彦さんがそれまでより近くに出てきてくれて嬉しかった。ここでも滝さんが客席の大合唱に負けないくらいの勢いで声を張り上げてコーラスをし、間奏に入る時には卓郎さんが〈ほら出番だよご主人様〉のあとに「滝ちゃーん!!!」と叫んでギターソロに入った。8月頃から卓郎さんが「ギター!!」ではなく「滝ちゃん!!」と言うようになり、威勢のいい呼びかけから滝さんが元気よくギターを弾きまくる様子は何度聴いても楽しい。

One More Timeの最後の音からかみじょうさんが音を切らずにカウントを入れてそのまま反逆のマーチのイントロへ、これでこの日3度目の激つなぎを披露!赤と白の照明に包まれ勇ましい演奏が繰り広げられる。中盤では〈戦ってるんだろ 武道館のみんなも!!〉と卓郎さんが歌詞を変えて歌っていてテンションが上がった。最後のサビに入る直前、カウントのようなリズムが入る部分ではバックドロップの下にあるLED横線照明がそのリズムに合わせて何らかのカウンターのように光を増やしていったのでそんな使い方もできるんだなと。

反逆のマーチの余韻が残る中、滝さんのタッピングが聴こえてきてその選曲にびっくりしたBeautiful Target、序盤はステージの上から複数本のスポットライトが真っ直ぐに線を描きつつそれが僅かにゆらゆら揺れていたのが歌のメロディーとギターのフレーズに合っていて、演奏とともに視覚からくる心地よさもあった。サビでは一変、演奏の雰囲気に合わせるかのようにバックドロップの上と下に設置されたモニターにシャープな印象の青い模様が出ていた。曲中に2回あるカオスパートの迫力はいずれも凄まじく、それに合わせて和彦さんもかなり動きを大きくしていて目を奪われた。

 

凄まじいカオス音が消えて再び訪れた静寂の中、卓郎さんと滝さんがクリーンなギターの音を重ねる。黒い森の旅人かなと思ったが違う、聞き覚えがあるぞ、もしやと構えているとその予想通りで卓郎さんと滝さんがオクターブで歌声を重ね歌い始めた。89日に新代田FEVERで突然披露した新曲が、武道館でも演奏された。バックドロップの下にあるLED横線照明が強烈な赤い光を放つ中、ここ最近の9mmの曲の中では最もハードな曲調、凄まじい音圧。ここでも卓郎さんはThe Silenceと同じ3ハムの黒いBricoleurを使っていた。聞き取れた歌詞の中に〈逆さまに呪うよ君を〉と今までの9mmになかったような表現が入っていたのは新代田FEVERで明かされた通り(武道館公演後に卓郎さんがインスタでも説明していたが)呪術廻戦をイメージして書かれた歌詞であるからだが、この日は前振りもなく披露し演奏が終わった後も特にMCで言及もされないという潔いお披露目だった。

 

みんなの声が聞こえる、と客席の歓声に反応した卓郎さんが「ちょっと前までこんな日はいつ来るんだと思っていましたけど来たね。」と嬉しそうに話し始めた。

表現は多少異なると思うが、次のような話を続けた卓郎さん。「インディー期からある曲が、後でアレンジが決まってアルバムに入ることがよくあるんですけど。次にやる曲もインディーズの時に録ったんですよ、その何日か前にできた曲を。でもその時保留になって、2ndアルバム(VAMPIRE)の時も形にならなくて、3rdアルバム(Revolutionary)の時にようやく入った。最近ずっと演奏していなかったけど、リクエストを募ったら1位になりました。作った時よりも今の方が(歌詞が)何を言っているのかが分かる気がします。その曲の2023年バージョンを聴いてください。」

 

 

Finder

 

 

驚きと再び聴こえた大きなどよめき。卓郎さんの「インディー期からある」ひと言でどの曲か即分かって、ようやくここで聴けるのかと喜びに浸ったFinder。演奏が始まるとステージ脇に数輪の大きな花の模様が映され、卓郎さんがぽつりぽつりとやわらかい響きで歌い出したその歌声が、感情に真っ直ぐ刺さり物悲しさに覆われるような気持ちになって堪らなくなって気が付いたら涙をぼたぼた溢してしまった。〈ひとりぼっちで歩き疲れて〉の部分を〈ひとりぼっちで街を歩いて〉と歌っていたが、以前ライブで聴いた時にもそのように歌ってた気がするので意図的に変えているのかもしれない。 白を基調とした照明の中演奏が進んでいったが間奏に入った瞬間にバックドロップ下のLED横照明が薄紫のようなピンク色のような妖しい色の照明になり、原曲よりだいぶテンポを下げ、一瞬だけ見えたステージ中央で卓郎さんと滝さんが向かい合って悩ましげな雰囲気のフレーズを弾き始める。かつて横浜アリーナワンマンや前回の武道館ワンマンなどでも披露されメンバーがエロFinder”と呼んだ、たくさんのファンが待ち望んでいたあのライブバージョンのFinderが遂に披露された。卓郎さんがMC“2023年バージョンと言っていたが、以前滝さんの独壇場だったFinderのギターソロが卓郎さん&滝さんの見せ場としてパワーアップしていたのでそういうことか!とその愉快さに涙を流しながら笑いが止まらなかった。ギターソロが終わるとまたシリアスな空気に戻り、アウトロの最後はまたスローなアレンジで締め、演奏が終わると割れんばかりの拍手と大歓声を浴びた。

 

暗くなったステージの中で和彦さんにアップライトベースが渡され次の曲を察する。冷たい空気のような色だった先ほどまでの照明から一転、オレンジ色の照明が大きな空間いっぱいに広がった、キャンドルの灯を。イントロでは卓郎さん・滝さん・爲川さんのトリプルリードのアレンジ。Finderで感情移入しすぎてしまった心にもそのあたたかさが沁み入るようだった。最後に和彦さんがアップライトベースをクルリと回してみせる瞬間も見ることができた。

静かになった空間に響く鳴き声のようなギター。卓郎さんはいつの間にかアコギに持ち替えて優しい音色を奏で始めるとカモメの演奏へ。穏やかな水色の照明と、バックドロップ上の横長モニターに映された波打ち際のような模様が武道館を一瞬で海沿いに変えた。卓郎さんの繊細な歌声と滝さんの柔らかなコーラス、それに寄り添うような演奏が武道館の広い空間いっぱいに広がってゆく心地好さ。最後のサビに入ると照明が強いオレンジ色に変わり、モニターにも陽光のような模様が現れて朝焼けの風景に変わった。息を呑むほどの美しい光景だった。

 

滝さんが静かにギターを弾く中で卓郎さんが、9mmが結成19周年を迎えるなんて自分たちが一番不思議だなと思っている、と言いつつ、いつもありがとうございます、と客席にお礼の言葉を述べた卓郎さん。滝さんの奏でるメロディーについて卓郎さんがしんみりしちゃう、とコメントすると演奏がパッと止まった。滝さんからの「そんなつもりじゃなかったんだよ」という意思だったんだろうか。

 

「今日は既に最高だと思うんだけど、もうちょっといきたい。いけるかーー!!行こうぜ!!!」という言葉からステージがパッと青くなりBrand New Dayへ。たまたまかもしれないけれど卓郎さんが照明に合わせたような青いギターを使っていてそれさえもよかった。この曲を最初に聴いた時から卓郎さんの歌声も明るくかなり明るい曲調で前向きっぽさを見せて到達点のイメージが強いという印象がありつつ、サビで〈僕にもひとつください〉と歌うことでここで終わりではなく【まだまだ追い求め続ける】気持ちが明確に入っているのがとても嬉しく、特にこの日は19周年を迎えた心境に触れたMCの後だったこともあり9mmのこれまでとこれからをより想起させ、まだまだこのバンドには先があるぞと強く思わせてくれるような演奏だったように聴こえた。

そこからThe Revolutionaryへ続くという開放感と無敵感が凄まじい流れ。間奏に入り卓郎さんと滝さんのツインリードが演奏されると客席から大歓声が巻き起こった。間奏の最後には滝さんがギター回しを披露したのが僅かに見えた。Brand New DayからのThe Revolutionaryが本当にいい流れでただただ感極まりながら観ていて、そんな中自分の数列前にいた2人組のお客さんが肩を組んで拳を上げながら盛り上がっているのが見えて、それが余計にグッとくるものがあって本当にいい光景だった。アウトロでは和彦さんがいつものようにリズムに合わせて軽快にジャンプ。The Revolutionaryのアウトロから間髪入れずに次の曲、名もなきヒーローへという激つなぎを披露、イメージカラーである水色とピンクを基調にサビの〈また明日〉でステージに赤い光の線が現れそこだけ空間が赤くなるという、この曲ではお馴染みの演出を武道館でも観ることができた。滝さんとかみじょうさんが間奏で随分アドリブを入れていたように聴こえていてそれも楽しかった。

一呼吸置いてから新しい光へ、名もなきヒーローからノンストップで入れそうな流れにも思えたが一旦音を切ったのは卓郎さんが演奏に入る直前に言った「みんな歌ってくれ!」というひと言のためだったのだろうか。中盤のサビ前には卓郎さんが「手を取ってくれ武道館!」と力強く煽った。再び強い白い光がステージを包み込む中、サビ後の間奏では自分の視界から和彦さんが見えなくなったので和彦さん、卓郎さん、滝さんがステージ中央に集まったりしていたのだろうかと見えない中で想像しながら聴いていた。

一瞬静かになった空間に滝さんがクリーンなギターの音でお馴染みのメロディーをメロディーを弾き始め、卓郎さんが「最後の曲です」と告げた本編最後の曲はPunishment。この日のPunishmentもかなりの速さに達しているように聴こえ、その速さで和彦さんがこれまた凄まじい速弾きをしていたので和彦さんから目が離せなくなった。中盤でステージ上のモニターに砂嵐が映されていたのは〈再現不可能〉ということか。いつも通りの轟音を叩きつけフロアを熱狂させると最後の一音と同時に銀テープが舞った。

 

本編が終わって5人が退場する際、卓郎さんが普段アンコールが終わった後にやっている万歳三唱をこのタイミングでやってから退場したので、もしかして今日はアンコールがない?と不思議に思っていたがその後も客席は暗いままだったのでそういうわけではないと分かりアンコールの手拍子に加わった。

手拍子に迎えられて武田さん、爲川さんを含む6人全員がステージに登場。武田さんと爲川さんを改めて紹介し、ここからは6人で演奏してもいいですか!と卓郎さんが言うと客席からは大歓声で卓郎さんへ応えた。この時だったか卓郎さんが「9mmを見つけてくれてありがとう」「見つけたからにはずっと聴き続けて欲しい」と言っていたのでそれを聞きながらこちらこそ何があっても19年間、9mmを止めないでくれてありがとうございますと言葉を返したい気持ちになった。このタイミングだったか卓郎さんが、「今日は本当に最高なんだけどこの先のライブも最高を更新しないといけない。帯広、函館、そしてLIQUIDROOM」と今後のツアーで訪れる先を挙げながら話していた。この時に11月の多賀城公演が飛ばされたが、その公演のセトリ決めを担う和彦さんは飛ばされた!というような反応も見せず全く動じずに聞いているように見えた。

 

アンコール1曲目は太陽が欲しいだけ!ステージがオレンジの照明に包まれ、バックドロップの上下にあるモニターには太陽の熱気を表すかのような模様が映された。色々なことを経てまた武道館に立った9mmが〈それでも最後には笑え〉と巨大なステージで鳴らしている姿が本当に頼もしいものだった。〈さあ両手を広げて全てを受け止めろ〉の部分ではステージが全く見えなくなるくらい、客席にいる多くの人達が両手を上げてそれに応えていて無数の両手に埋もれながらも圧巻の光景にまた嬉しさが込み上げた。Discommunicationはお馴染みの黄緑色の照明に今回は赤も混ざってより華やかな色合いになっていた。自分が9mmに出会った曲でもあるので、節目の武道館ワンマンでこの曲を聴けたことは個人的に大変嬉しいことだった。自分が9mmに出会ってから16年、9mmのおかげでどれほど折れそうな心が救われてきたか楽しい人生を送ってこられたか、自分の16年間も振り返りながら聴いてしまった。

かなりの曲数を披露したこの日のライブもとうとう最後の1曲に。「1,2,3,4!!」の声が響いたTalking Machineでは2番の〈永遠に空をただ見上げてるだけ〉で卓郎さんが天井を指差したタイミングで、この時だけステージの上に光の粒が投影され煌めく星空を作り出していて言葉にならないほど美しかった。その後の〈ああ 何べんやっても〉では和彦さんと滝さんが同時にジャンプ、特に上手側でほぼ見えないはずの滝さんが人の頭の上からちょっと見えるくらいの高さに達するほどの大ジャンプをしていてびっくり。この時だったか、和彦さんが最後に再びステージ下手側に伸びた通路まで出てきてくれた。最後の最後まで嬉しかった。

 

滝さん、武田さん、爲川さんが退場するところは見えなかった。下手側通路まで出てきて客席の上から下まで見るように挨拶をする和彦さんに視線を向けているとステージから威勢のいい銅鑼の音が一発。慌ててそちらに視線を向けるとかみじょうさんが銅鑼を叩いたらしい。卓郎さんも下手側通路に出てきて客席の隅々まで笑顔を向け、ステージへ一度戻ろうとしてから再度通路の端ギリギリ、スタンド1階席のすぐ近くまで行って挨拶。上手側も同様に端まで行って丁寧に挨拶をしていたようだった。かみじょうさんにすれ違いざま何やら声をかけられていた和彦さんも迫力のある音量で銅鑼を一発鳴らしてから退場。卓郎さんもドラムセットに近付いて何かを探すような仕草を見せ(銅鑼のバチがなかったらしい)スタッフさんからバチを受け取ると銅鑼を一発叩いたが、かみじょうさんや和彦さんよりも控えめな音量で上品さのある音色を出していて、銅鑼を叩くだけでも三者これだけ違いが出るんだなと。かみじょうさんは下手袖に入る直前に客席の方を向いて両手で投げキッスのような仕草をしているのが見えた。卓郎さんが最後に再び万歳三唱をすると笑顔でステージを去っていった。

 

 

色々な気持ちがこみ上げてきて終演後「すごかった」という言葉しか出てこないくらいのライブ。最初から最後まで本当にいいセトリだったのは言わずもがなで、定番曲新曲リクエスト枠のレア曲と良いとこどりのような内容で全部よかった。その中でも、この日から数日経った今でも特に強く記憶に残っているのはThe SilenceFinderだった。

曲のスケール的にやはり会場が大きければ大きいほど似合うThe Silenceの、思わず怖さを感じるほど鮮烈な赤い照明とものすごい迫力の壮絶な音圧での演奏が忘れられない。Finderはいつかまた観たいと思っていたライブアレンジの通称エロFinder”9年振りに、しかもトリプルギターの編成でパワーアップした演奏で観られたので強烈に記憶に残っているのもあるし、自分は純粋にこの曲の歌詞が大好きで特に〈高過ぎる秋の空 恋しがる冬の花〉の一節が9mmの全歌詞で一二を争うくらい好きなので、9年間の時を経て更に歌詞に寄り添うような歌い方になった卓郎さんの歌声で聴けたことも嬉しかった。

 

元々ライブで照明を観るのが好きなこと、特に武道館で行うライブではあの独特な丸い巨大空間で照明を楽しむのが好きなこと、今回はステージがあまり見えなかったこともあり時々天井を見上げながら曲と照明の共演を存分に楽しんだ。そんな中で、偶然なのか狙ってなのかは分からないが、ここ数年の色々なライブで使われた照明や演出が取り入れられていることに気付き大変感動していた。

ステージ上の高い位置には輪郭と内側を別々に光らせることができる大きな丸い照明が7個ほど設置されていて派手に点滅したりしていたが、それは2020年に赤坂BLITZから配信されたライブや、新代田FEVERで全7回にわたる配信ライブツアーを収録した際に使われていたものと同じだったのではないか(これに関しては本当にただの偶然かもしれない)

The Silenceの〈暗い地下室で待っているあの人と〜〉の部分で上部のモニターに血が滴るような模様を流していたのは2022317日のEX THEATERワンマンとほぼ同じ演出。Punishmentでモニターに砂嵐が映されたのは202199日、KT Zepp Yokohamafolcaを迎えて開催したカオスの百年vol.14”と同じ演出だった。上手下手に伸びる通路を含めステージの、バックドロップの下あたりの高さに設置された長い横一列のLED照明は2019年のFEEL THE DEEP BLUE TOURでも同じようなものが使われていた。

それらに気付いてからは演奏を聴きながら過去のライブを思い出して懐かしい気持ちになったり、それぞれ今でも記憶に残っているほど良かった照明演出を再び見られたという嬉しさもあった。勝手な解釈かもしれないが照明演出からもここ数年の9mmの集大成という印象が感じられた。

 

武道館公演開催前にもこの日序盤のMCでも、卓郎さんが「ツアーの中で一番大きい会場だけれど、一番近いと感じてもらえるようなライブにしたい」と言っていた。開催前にはつい物理的な距離の近さで考えてしまい、度々ワンマンでやってきたように花道を設置したり、もしくはステージの形を普段と違うものにしたりするんだろうかと予想していたが当日会場に入ると構成的には一般的なつくりのステージだったこと、実際にライブを観るともちろん特別な会場だし特別な選曲や演出はたくさんあったが、終盤にかけての選曲や盛り上がり方はそんな特別感や普段と違った会場の規模をいい意味で意識させないような、いつもの”9mmライブでいつも通り最高に楽しい時間だったことが卓郎さんの言う「一番大きい会場だけれど、一番近いと感じてもらえるよう」だったのだろうかと、終演後にライブを思い返しながら考えていた。

 

元々事前に武道館ワンマンは“A面セトリだと卓郎さんから言われていたので過度に感情的にならずに純粋に楽しく観ようという心づもりで当日を迎え、前述の通り特別な会場ながらいつも通り感もあるライブで、本当に純粋にライブを楽しむことができた。でもそれと同時に、もうすっかり9mmの活動に不安がなくなってから数年が経ったとはいえ、前回の武道館公演から色々なことがあった9mm9年振りに武道館のステージにまた立つことができた喜びが11曲演奏されるごとに大きくなり、やはり感情が昂ってしまった面もあった。この公演に、9mmのここ数年間を支え共に歩んできた武田さんと爲川さんも出演を果たし、アンコールでは6人全員で武道館に立つ姿を見せてくれたことも嬉しいことだった。まだまだ先を見据えているとはいえ間違いなくひとつの到達点であったライブ。その後改めて聴き返したBrand New Dayの歌詞が武道館公演を経たことでより9mmそのものの道程を歌ったものとして更にいとおしく感じられるようになった。

卓郎さんがこの日「また武道館に帰ってきます」と宣言していた。その言葉を信じて、来年迎える20周年やもっとその先へ、ずっと活動して何年もかけて最高を更新し続けた9mmをまた必ず武道館で観られる日が来ると楽しみに待っている。

 

 

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武道館開催後に出た情報について

SEは武道館公演のために卓郎さんが制作したものであることが、卓郎さんのInstagramにて明かされた。(それは表向きで、導入したAbelton Liveで何か作りたいという意図もあったとも書かれているので、今後のライブでどちらを使うかが気になる。)

 

ライブ中にどの曲が9位でどの曲が19位かは明かされなかった気がするが、それも後日公式SNSなどで内訳が公表された。

The World

All We Need Is Summer Day

Black Market Blues

Keyword  ◆9

Story of Glory  ◆19

キャリーオン  ◆19

シベリアンバード〜涙の渡り鳥〜  ◆19

3031  ◆9

光の雨が降る夜に  ◆9

Answer And Answer

Supernova  ◆19

The Silence  ◆19

(ドラムソロ)

One More Time

反逆のマーチ

Beautiful Target  ◆19

新曲

Finder  ●1

キャンドルの灯を

カモメ

Brand New Day

The Revolutionary

名もなきヒーロー

新しい光

Punishment

 

太陽が欲しいだけ

Discommunication

Talking Machine