最後の駅の向こう

何でもすぐ忘れる人の特に記憶に残しておきたいライブの簡易レポートと趣味のレビューの予定。あくまで予定。

20230509/9mm Parabellum Bullet “19th Anniversary Tour” @東京キネマ倶楽部

      

結成19周年を迎えた9mmが「9」の付くアニバーサリーイヤーを記念して今年1年かけて開催しているツアーの4公演目。東京キネマ倶楽部はキツネツキがワンマンを開催したり、卓郎さんがSHIKABANEというユニットのワンマンで出演したりしたことはあったが9mmとしては初めてライブを行う会場。そして59日は滝さんの誕生日!

 

ゲストにチャラン・ポ・ランタンの小春さんとももちゃん、fox capture planの岸本亮さん、SOIL&"PIMP"SESSIONSのタブゾンビさん、栗原健さんの出演が事前告知されていた。全員、2020年にリリースされた9mmのトリビュートアルバム「CHAOSMOLOGY」に参加しているためそれぞれがカバーした曲が聴けるのではないかという期待もしながら楽しみにしていた。

 

3桁半ばくらいの整理番号で入場すると、普段は一般開放されていないことが多いステージ上階のバルコニー席の下手側が空いていて、折角なのでそちらで観ることにした。バルコニーが弧を描いている形状のため座ってみるとキネマ倶楽部の特徴でもあるサブステージとそれにつながる階段がかなり近く、その下のステージも普通のライブハウスの2階席とは比べ物にならないほど近くてライブ中はステージ上のメンバー全員がものすごくよく見えた。

 

入場に時間がかかったこともあり定刻から15分ほど過ぎた頃に場内が暗転。豪華で広々とした空間にお馴染みのDigital Hardcoreが鳴り響く様はちょっと不思議な感覚があった。サブステージから登場するのかと思いきやステージの上手と下手に分かれて入場。卓郎さんは白シャツに黒いスーツ、滝さん・和彦さん・武田さんはそれぞれ襟付きの黒シャツだっただろうか、かみじょうさんは黒っぽいシャツにネクタイといういで立ちで、全員いつもより少しフォーマルな雰囲気。

 

Cold Edge

One More Time

白夜の日々

シベリアンバード〜涙の渡り鳥〜

Scarlet Shoes

泡沫

どうにもとまらない (w/チャラン・ポ・ランタン)

名もなきヒーロー (w/チャラン・ポ・ランタン)

ガラスの街のアリス (w/岸本亮)

生命のワルツ (w/岸本亮)

黒い森の旅人 (w/タブゾンビ&栗原健)

反逆のマーチ (w/タブゾンビ&栗原健)

スタンドバイミー

ロング・グッドバイ

新しい光

Supernova

Talking Machine

煙の街

 

Black Market Blues  (全員)

ハートに火をつけて (全員)

 

 

Cold Edgeからライブがスタート。自分がライブでCold Edgeを聞けたのは意外と久し振りだった。特別な会場でもいつも通りの9mmで、イントロから客の拳と歓声が元気よく上がる幕開け、間奏では和彦さんが「キネマーー!!」と叫んでいた。One More Timeではサビで卓郎さんがマイクから離れ客の合唱を煽ると、歌声が返ってくる客席を嬉しそうな笑顔で見ていた。

ステージが眩い白い光に包まれた白夜の日々、2回目のサビで卓郎さんが〈君に会いに来たぞー!〉と歌っていた。最後のサビの〈君に会いに行くよ〉の部分では和彦さんが、ステージ上階のバルコニー席にも音が聞こえるくらい強く自らの左胸のあたりをパンパンと叩いていた。歌わずとも、言葉は発さずとも客席に向かって会いに来たぞ!と言ってくれていたんだろうか。昨年のツアーからしばらくの間、One More Timeの後にBlack Market Bluesを繋げるパターンが続いていたところだったのでOne More Timeから白夜の日々に続いたのはちょっと意表を突かれた流れだった。

 

卓郎さんが久し振りの曲をやります、というような前振りをしてから演奏されたのが最後にライブでいつ聴いたか覚えていないくらい久々のシベリアンバード〜涙の渡り鳥〜、久々なのに客席ではイントロに合いの手を入れるようにたくさんの歓声と拳が上がり、かなりの盛り上がりだった。昨年、アルバム「Dawning」の曲が多めに演奏されたライブがあったがその際にもシベリアンバードは演奏されなかったのでようやく聴けた!!と嬉しさでいっぱいになりながら聴いていた。和彦さんが〈胸にナイフを刺したまま〉の一節をそのまま表現するかのように自分の拳を左胸に当てる瞬間があった。

それに続いたのがScarlet Shoesという「Dawning」繋がりの選曲!曲名に合わせるかのようにステージが真っ赤に染まり、情熱的な曲調もキネマ倶楽部の雰囲気にぴったりだった。間奏でギターにオートワウをかけフワフワと不思議な音を出しながらソロを弾く滝さんの手さばきの美しさが記憶に強く残っている。

 

そんなレア曲2連発に続いたのは泡沫。先ほどまで真っ赤だった空間全体、高い天井のところまで澄んだ青に染まり、ステージにいる5人が本当に水の底にいるかのように見えた。サビでは切実な思いを表すかのように強い歌声で、それ以外の部分は柔らかな歌声と歌い方を分ける卓郎さんの表現力に毎度強く惹き込まれる。中盤の〈どうしてどうして どうして〉からの部分で一際テンポが遅くなり演奏の重たさが増していくのに比例して和彦さんが徐々に低く体を屈めながらベースを弾いていて、視覚からも曲展開が重たくなっていく様を味わうことができた。

 

このあたりだったか、そろそろMCに入るかなという空気になると滝さんがギターを弾き始め、かみじょうさんがそれに乗っかりセッションが始まるなどいい雰囲気。またこのタイミングだったと思うが卓郎さんがキネマ倶楽部でのワンマンが初めてであることに触れ、9mmはキネマ倶楽部似合ってますか?というようなことを客席に問いかけていた。メロディーに歌謡曲っぽさがあるシベリアンバードやScarlet Shoesが会場の雰囲気にあまりにもぴったりだったので言わずもがなお似合いだった。そんな話をしながら、卓郎さんがゲストを呼ぶことを匂わせたり「すぐに終わっちゃいそうだからまだ呼びたくない」と勿体ぶったりしつつ、いよいよゲストが呼び込まれた。

 

最初のゲストはチャラン・ポ・ランタン。おそろいの青いワンピースを着たももちゃんと小春さんがサブステージに登場、揃って階段を下りてステージへ。

おふたりを迎えての1曲目はどうにもとまらない、ただでさえ久し振りにライブで聴けた曲なのに更に小春さんのアコーディオン、ももちゃんのパワフルな歌声、そしてキネマ倶楽部の雰囲気が加わった最高の選曲だった。ももちゃんが歌っている間には卓郎さんがマラカスを手に取り楽しそうに振っていた。

 

20209月に9mmが無観客ライブを行い、その際にチャランポがゲスト出演したのでその際の思い出話が出てきた。その時は無観客だった、とかその日は雨が降っていたね、など。

MC中にセッションが起こりがちな9mmについて、ももちゃんが「喋ると楽器がお返事してくれる!」と珍しそうに言うと卓郎さんが森みたいでしょ、とももちゃんに返し滝さんとかみじょうさんがセッションを始めるという微笑ましい場面もあった。

次の曲でチャランポがCHAOSMOLOGYでカバーしたハートに火をつけて が来るかなと思いきや演奏が始まったのは名もなきヒーロー、まさかチャランポがこの曲を歌ってくれるとは!アコーディオンの音色も絶妙に似合っていた。最後のサビで下手側からももちゃん、卓郎さん、小春さん、滝さんが一列に並んで4人揃って歌声を重ねた部分は特に堪らないかっこよさがあった。どうにもとまらない も名もなきヒーローもあまりにも予想外の選曲だったので本当に驚かされた。

 

ももちゃんと小春さんが退場し2組目のゲスト、fox capture planの岸本亮さんが呼び込まれると同じくサブステージから登場。メルテンさんも落ち着いた色のスーツを着ておりフォーマルな雰囲気。

チャランポのおふたりと同じく2020年の無観客配信ライブに出演されその時にはメルテンさん・和彦さん・かみじょうさんのトリオでガラスの街のアリスを、fox capture planCHAOSMOLOGYでカバーしたアレンジで演奏したのでその時のことを話題に出しつつこの後にお楽しみがとまた匂わせてから演奏が始まった曲はやはりガラスの街のアリス。今回は原曲のアレンジでの演奏。ピアノの音色が入りシャープさとどこか儚げな雰囲気が増した演奏がものすごく素敵だった。

 

2曲目はメルテンさんが見事なソロを披露し始めたと思ったら生命のワルツのイントロ、音源だとアコギで弾いている部分をピアノで弾くという贅沢なアレンジ。こちらの曲では主にピアノの低音を分厚く重ねたりちょっと不穏な響きのコードを忍ばせたりして曲に更なる重厚感を加えていた。アウトロでの速弾きも圧巻で、演奏が終わるといつの間にかメルテンさんの眼鏡がどこかへ消えていたほどの熱演ぶりだった。

 

メルテンさんが退場しフロア全体が暗くなる中、サブステージに人の気配を感じたのでそちらを見ると最後のゲスト、タブゾンビさん&栗原さんが出てきていた。暗転の中おふたりが演奏し始めたのは黒い森の旅人 の、CHAOSMOLOGYでキツネツキとともにカバーしたアレンジの出だしの部分で、演奏しながら階段を下りてステージへ。そのままカバー版のアレンジに入るかと思いきやそこから原曲版のイントロへ繋いだ。タブゾンビさんと栗原さんが揃ってお立ち台に上がって演奏、その間片手でトランペットを持って演奏するタブゾンビさんのスタイルはとても目を惹くものだった。栗原さんは曲中、隣にいる和彦さんと同じ動きをしてみせる瞬間もあった。ホーンが入ることでかなり熱いアレンジになっていてお馴染みの曲でありながらも新鮮味があった。間奏の、最後のサビ前の間部分で鳴らされたトランペットの音は歌詞にも出てくる〈朝焼け〉のイメージにあまりにもぴったりで清々しさがあった。

 

9mmSOIL9mmがデビューした頃、SHIBUYA-AXSHIBUYA-BOXXだったかで既に対バン経験があったそう。2019年のRSRでは9mmとタブゾンビさん&栗原さんが共演するはずだったが台風で中止になってしまったので、この日ようやく共演できたというような話も(是非ともRSRでの共演リベンジも果たして欲しい)

この日タブゾンビさんはモノトーンの柄物の衣装にゴールドのネックレスをたくさん付けており、栗原さんは赤い柄物のジャケットを羽織っているといういで立ちだった。卓郎さん曰く「今日は(衣装を)フォーマルで、黒でお願いしていて、楽屋でも大丈夫だと仰っていたんですけど。」ということだったらしいが始まってみたらお二人とも衣装が柄物!ということだったらしい。タブゾンビさんが「金色も黒の一種だから。」と返答して笑いを取っていた。話の流れは失念してしまったがトリビュートにまつわる話だったか、「ツェーデー、いやCDね、あっちのほうが長いもんで鹿児島。何すか?」と軽快に話すなどトークも軽快でもう少し聞いていたかったなと思わされた。それと、MC中はおふたりとも普通のマイクではなくトランペットやサックスに付けられたマイクを使って話していてそういう使い方もあるのかと。お二人の話を聞いていた卓郎さんがずっとニコニコしていて楽しそうな様子だったのも観ていて嬉しかった。

トークでも楽しく盛り上がったところでコラボ2曲目は反逆のマーチ。あの曲調にホーンが合わないわけがない!真っ赤に染まったステージでの演奏、そして普段よりも勇ましさが増したようなアレンジがぴったりでとんでもなくかっこよかった。

 

盛りだくさんのゲストパートが終わると卓郎さんが、ゲストを迎えて演奏すると毎回「おれたちに足りないものはこれだったんだ」と思う、と話していた。

ここからは再び5人での演奏。これも久し振りにライブで聴けたスタンドバイミー、天井が高いキネマ倶楽部が曲の開放感にとても合っていたのがよかった。続いてロング・グッドバイ、滝さんのタッピングからストロボのように強く点滅する照明の中勢いよくイントロへなだれ込む流れに高揚感を煽られる。ここからは普段の9mmライブらしい曲が並び、新しい光では中盤のサビの後、いつものライブハウスより少しコンパクトなステージで和彦さん、卓郎さん、武田さんがステージ中央のかみじょうさんを囲うようにギュッと集まってフォーメーションを組んでいた。滝さんと和彦さんが大きく動き回っていたSupernovaからTalking Machineへ続く流れで更に盛り上がるフロア。2番の「ああ 何べんやっても」で和彦さんが上手の滝さんの方を確認しタイミングを窺う様子が見え、サビに入る直前に見事に滝さんと同時にジャンプしてみせた。

 

ここまでフロアを存分に躍らせた直後、暗くなったフロアに聞き覚えのあるアンビエント的なサウンドが流れ何となく怪しげな雰囲気に包まれたところで卓郎さんが歌い始めたのは、煙の街。Talking Machineの直後に持ってくることで強烈なインパクトがあった。暗めの照明の中演奏が続き終盤の〈茜色に染まる部屋でした〉の部分でステージがパッと歌詞通りの茜色に。空間全体が何とも言えない空気に包まれる中すっぱりと音を切って何とこれで本編が終わり、5人が順番にステージ袖へ消えていった。

 

アンコールの手拍子が鳴り響く中再び9mmと武田さんがステージへ(サブステージではなく再びステージ袖からの登場)、続けてゲストの皆様がサブステージから登場。次々にステージへ降りていく中タブゾンビさんと栗原さんは階段を下りながらハッピーバースデーの曲を演奏し始めそのままももちゃんと小春さんが歌を入れ他の出演者もセッションに加わるという何とも贅沢なお祝い!卓郎さんから滝さんへ誕生日ケーキではなくうまい棒をたくさん束ねてホールケーキのような形にしたものと、何らかのお酒が渡された。「誕生日は年の数だけうまい棒を食べるんだよね」と卓郎さんが言っていたので滝さんへプレゼントされたうまい棒は年齢にちなみ40本だったよう。

 

「完全体9mm!」と卓郎さんが宣言して遂に9mm4人に武田さん、ももちゃんと小春さん、メルテンさん、タブゾンビさんに栗原さんと総勢10名での演奏へ!1曲目はBlack Market Bluesで卓郎さんとももちゃんが交互に歌ったり、滝さんはギターを弾かない部分ではお酒を飲んだり、右手と左手で交互にパンチを繰り出すように踊ったり、またお酒を飲んで曲中に2本目の缶に手を付けようとしたりしていた。もう完全にお祭り騒ぎといった様子のステージ。〈迷える子羊たちが~〉の部分や最後のサビ前で演奏の音が少し控えめになる部分ではメルテンさんのピアノの音がかなり効いていた。

この日最後の曲、ここで満を持して演奏されたのがハートに火をつけて!間奏では滝さんがギターソロを弾き切るとそのまま卓郎さんが声掛けをしながら小春さん→メルテンさん→タブゾンビさん栗原さん、と順番にソロ回しを繋いでいく。栗原さんで終わりかと思いきや最後にかみじょうさんがソロを披露!滝さんは自分のソロパートが終わるとギターを置いて、缶片手に楽しそうに踊っていた。

 

演奏が終わりステージ上のメンバーが順番に退場、ステージに残った和彦さんが客席にピックを何枚も投げる。バルコニー席にも投げ入れようとしたが届かず、それでも何回もバルコニー席めがけてピックを投げてくれた。残念ながら一度も届かなかったが、頑張れば届きそうなくらいにはステージとバルコニー席は近かったので一枚だけでも入れたかったんだろうなとも思ったし、どうにかしてバルコニー席の客にもピックを渡そうとしてくれていたようにも感じられてそのお気持ちだけでとても嬉しかった。最後までステージに残っていた卓郎さんがいつもの万歳三唱をしてから笑顔でステージを後にした。

 

 

予想以上に豪華なコラボ、贅沢で意外な選曲が盛りだくさんでとにかく楽しかった。何よりも出演者が全員あまりにも楽しそうにしていて、それを見ているだけで幸せな気持ちになった。もはやどの曲のどの部分かなどは細かく覚えていないけれど、和彦さんもかみじょうさんも笑顔を見せていた瞬間が普段より多く、武田さんもすごく嬉しそうな笑顔を浮かべていた時があり、卓郎さんはゲストパートでずっとニコニコしていて、滝さんは色々な曲で飛び跳ねたり暴れ回ったり踊りまくったりしていた。

 

中にいるだけで普段とは一味違った内装や雰囲気を楽しむことができる東京キネマ倶楽部は個人的にもかなり好きな会場で、その中でも一際特徴的なサブステージ、ここを9mmがどのように使うのだろうかというのが一番楽しみにしていたことだった。ゲストの方々はここから登場したり演奏したりとサブステージを存分に使っていたが9mm4人と武田さんはサブステージを一度も使わなかった。今回はゲストの方々に優先的に使ってもらおうという配慮だったのだろうか。

 

レトロで豪華な内装が特徴の会場であることと、この日はスタンディングではなく座席が用意されていたこともありお洒落して来場する客も多く見られたことも普段のライブとは違った雰囲気でよかった。MCで卓郎さんが次はドレスコード有りのライブもやりたいねというような話もしていたので、その時にはサブステージを存分に使う9mmが観られるのではないかという期待も込めつつまたここで9mmがフォーマルな装いでライブをやってくれるのを今から楽しみに待っている。