最後の駅の向こう

何でもすぐ忘れる人の特に記憶に残しておきたいライブの簡易レポートと趣味のレビューの予定。あくまで予定。

20180928/9mm Parabellum Bullet“カオスの百年TOUR 2018”@Zepp Tokyo

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カオスツアー、いよいよ東京初日。

今回のツアーはどの会場も大小に差はあれど大体同じ作りなので、開演前の様子も全く同じ。フロア前方真ん中には花道、バックドロップのないステージ。

開演までの会場BGM、毎回選曲が違っていてこの日は卓郎さんのソロ曲(ボタンにかけた指先が)やキツネツキ(しかもリリース前の新曲・てんぐです)、その後にはHEREとfolca、とサポートギター陣のバンドの曲が連続で流れ、更に卓郎さんや滝さんの大学の同級生であり、初期9mmとよく対バンしていたQomolangma Tomatoの曲まで流れるというかなり面白い選曲。卓郎さんか、もしくは滝さんの選曲なのだろうか…?などと予想しながら聴いていた。個人的にQomolangma Tomatoは大好きなバンドで、メンバーと繋がりがあるとはいえまさかZeppでチョモが聴けるとは、と大喜びしながら開演を待っていた。

 

ほぼ定刻通りに暗転、Digital Hardcoreが鳴り響く中、バックドロップが下からゆっくり上がってくる。

赤いTシャツの卓郎さん。滝さんは黒のカオスTにキャップを被っている。かみじょうさんは青タイダイT、和彦さんは黒シャツ。為川さんも全身黒い衣装、裾の長い黒シャツを羽織る。

 

 

The Lightning

Mr.Suicide

Wildpitch

Sleepwalk

カルマの花環

Vampiregirl

インフェルノ

21g

Sundome

光の雨が降る夜に

キャンドルの灯を

ホワイトアウト

キャリーオン

marvelous

Talking Machine

太陽が欲しいだけ

sector

 

Termination

Punishment

 

 

今回のツアーの日替わり曲枠である1曲目はThe Lightning、仙台、大阪、名古屋の1曲目は「アルバムの1曲目に収録されている曲」だったがこの日もやはりそうだった。曲が始まる前に卓郎さんが早くも花道に出て来て、そのまま演奏が始まる。間奏では、前半は滝さんが1人でソロを受け持っていたが、後半からは滝さんと為川さんのツインリード(恐らく為川さんが滝さんの上の音を弾いていた)というライブならではのアレンジ。去年のTOUR OF BABELでセトリに入っていたが、滝さんのいるThe Lightningは久々!

 

次はMr.Suicide、照明を浴びたバックドロップの双頭の鷲が紫に染まる。今回のツアー、他に紫を使っている曲は記憶に無かったので、紫の双頭の鷲、というのも何だか新鮮に思える。「流星群の雨になって~」の部分、卓郎さんと滝さんがファルセットで美しいハーモニーを響かせる瞬間、白くて淡い照明がステージに降る。お二人の歌声と相俟ってとても神秘的だった。

 

和彦さんがマイクに向き合い勢いよく始まる、Wildpitch!今のところ毎回必ず入っているが正直この日のWildpitchのステージの様子をほとんど覚えていない。リクエストを募る、と聞いた時に真っ先に頭に浮かんだ曲。赤く染まりながら動き回るメンバーをぼんやり観ながら、今の9mmの演奏で繰り出される大好きな曲の重さとキレに酔いしれながら、音のみに集中して聴いていた。

 

Sleepwalkでは和彦さんが1サビ終了後に花道へ、しばし間を空けて佇み、それから弾き始める。この日は長めに花道に留まり、最後のサビまでそこで弾ききった。和彦さんが花道にいた間、卓郎さんが「む  だ  づ か い…」と歌う瞬間にステージに目を移すと、背後から淡い照明を受けながら繊細に歌う卓郎さん。Mr.Suicideでも同様だったが、歌声が繊細になるとそれに合わせて卓郎さんを照らす照明が淡くなるのが素晴らしい。アウトロに入る前にはかみじょうさんが派手にスティックを回しながらカウントを入れていて、なんて器用なことを…!!と驚かされた。

 

MC、秘密のCDについて、卓郎さんが「終演後に(天井から)降ってきますから、1枚ずつ(頭の上で両手を合わせながら)取ってください」、つまり降ってくるCDを白刃取りのようにキャッチするように、という無茶振りを入れてくる。CDはフライヤーが入っている袋に入れて出口で配られるため、恐らく普段フライヤーを持ち帰らない人が受け取り損ねないように、という配慮から毎回最初のMCで「忘れずに受け取ってください」と言い続けていたが、ここにきて卓郎さんが普通に呼びかけることをやめてふざけ始めたことに意表を突かれつつも面白くて。公演の回数を重ねるとこんな小さいところにも変化が出てくるんだな、と。

そのCDからカルマの花環。もう何度も同じことを言ってしまうがイントロのギターとベースが全員で同じメロディーを重ねて弾き、途中からドラムも同じリズムで入ってくる部分の重厚な音がこちらに襲いかかる迫力。やはり他の曲に比べると各メンバーの動きは控えめか。最後のサビに向かうにつれて滝さんがコーラスをする時に、段々と首元の辺りに力が入って行くような感じに見え、歌声も強く大きくなってゆく。

 

Vampiregirl、赤を基調とした照明がステージを染め上げ、改めて観るとこの人達は本当に真っ赤な照明が似合うな、などと思っていた。キリッとした表情で早口の歌詞をまくし立てる卓郎さん。

そしてインフェルノ。この2曲はどちらもステージが真っ赤に染まる時間が長く、曲の雰囲気もこうやって並べて聴いてみると相性がいいな、という印象。

 

秘密のCDのもう1曲、21gで個人的に好きなところ、間奏からその後歌に続くまでの転調する部分が独特の浮遊感があり卓郎さんの歌声も軽やかに伸びてゆく。淡い青をベースに柔らかく放射状の線を描く白い照明が横から順番に付いたり消えたりする、という演出。

イントロ前のかみじょうさんの真剣な表情がこの日も息を呑む程綺麗だったSundome、イントロでは滝さんが後ろを向いてアンプに向かい合うと微かにノイズを作り、後ろを向いたままじりじりとステージ前方に出て来る、そして弾く瞬間に一気にこちら側にネックを振る!!この時の動きの勢い、「来るぞ…来るぞ…来た!!!」という感じ!この一連の動きが観ていてとても気持ちよく、この日の光景の中でも最も強く記憶に残っている。

 

この辺りだったか、リクエストの話を。「新しい光…3票!」と卓郎さんが発表すると和やかな笑いが巻き起こる。3票、に合わせてかみじょうさんがカウベルを叩き、気の抜けたような効果音を入れていた。それに続いて卓郎さんは「だから、新しい光はやりません!!」と言いながら楽しそうに笑っていた。

そしてリクエスト1位の曲、卓郎さんが「光の雨が降る…“東京”の夜に!!」と叫ぶ!トリプルリードの妖しげで最高に贅沢なイントロは何度聴いても美し過ぎる。ライブだけで聴けるのがもったいないくらい。間奏では滝さんと卓郎さんが同時に花道へ。この、花道に出て来る時の息の合った瞬間も見事、の一言。卓郎さん達が花道にいる時にステージを観ると、和彦さんと為川さんがかみじょうさんの前まで出てきて向かい合って弾いていて、髪で顔が隠れてしまっている和彦さんの表情はよく分からなかったが、為川さんは大きく口を開けてとてもいい笑顔だった。その後、卓郎さんが「命よりも重いものは捨ててくれ」と歌うところ、滝さんが「捨てーてくれー!!」の部分でギターを弾かずに両手を大きく広げる。かつて光の雨がよくセトリに入っていた時にも滝さんは同じように両手を広げて熱唱していた。滝さんのこの仕草も大好きだから、また目の前で観られることが嬉しかった。

 

和彦さんがアップライトに持ち替え、キャンドルの灯を。1サビ後の短いギターソロは為川さんが弾いていたが、その部分に入る前に滝さんが「裕也を見て!」と言わんばかりに為川さんの方を指していた。 また和彦さんがアウトロでベースを回すところ、滝さんがぴょんぴょんと小さくジャンプしてリズムに乗り、その後のリフに備えているように見えた。

暖色のステージが一気に真っ白に染まる、ホワイトアウト。2番の入りで演奏が一際穏やかになるところでは、照明の明るさをぐっと落として、暗くなったフロアの壁にミラーボールが細かい水玉を描き、ステージでは淡い照明が卓郎さんを穏やかに照らす。

 

キャリーオンでは卓郎さんが2番で 「声を聞かせてくれ東京!!」と叫ぶと大歓声が上がる。サビでは滝さんが、かなり高い音域を歌っているはずなのにほぼファルセットを使わず地声で歌っていたような気がする。その声は、卓郎さんと同じ、瞬間によっては卓郎さんよりも大きく聴こえるぐらいの力強さだった。またサビの高揚感のある演奏、ドラムの方に目を移すとかみじょうさんはその中でも意外と冷静な様子で叩いているんだな、とここでも新たな発見。

marvelousのイントロ、拍に合わせてネックを高く上げながら弾く卓郎さん。 アウトロのカオスパートでは、自分が花道の真ん中から何列目というあたりだったためか、アウトロのカオスパートに入る前の一瞬、地鳴りのような音がしてその迫力たるや…その後のカオスパートも真正面から音を受けていた分、その迫力はこの日随一だった。

続くTalking Machineのイントロ、卓郎さんがマラカスを振る時の滝さんの様子は何もしていなかったりペットボトルを振っていたりと日によってかなり違うがこの日は軽くカッティングをしていた。ここで手を休めなくていいほど今日は調子がいいのかな、と勝手に思いながら観ていた。この曲も自分のテンションがかなり上がってしまうためなかなか冷静にステージの様子を観られていないが、「何べんやっても」の部分ではやはり和彦さんと滝さんが同時に跳び上がる。この様子も毎度同じことを言ってしまうけれども、嬉しい光景。

 

次の曲、太陽が欲しいだけ 雨の多かった数日間の中でこの日だけ快晴の空模様だったこと、歌詞通りこの曲が「雨雲を晴らし」たのではないだろうか…そう思いたくなるほど、この日にぴったりだった。太陽のイメージ通り、ステージが真紅に染まる中で卓郎さんに背後からひとつ、太陽のように強い光が当たっていて、それを浴びる卓郎さんの笑顔も太陽のようだった。

本編ラスト、フロント同時に4人が勢いよくネックを上げて轟音を叩きつけるsector! ここでも滝さんは卓郎さんと同じかそれ以上の声量で熱唱していた。

これで本編終了、滝さんと為川さんが退場、卓郎さんと和彦さんは長めにフロアに向かって挨拶。かみじょうさんはいつの間にか退場していた。

 

 

アンコールにて再び出てくる5人。卓郎さんだけ着替えを済ませていた。白のカオスT、よく見ると襟ぐりを切ってある。

「CD降ってきませんでしたねー」と、最初のMCでの自分の発言に乗っかる卓郎さん。

 

アンコール1曲目はTermination、他の公演では本編の中盤、この日キャリーオンを演奏していた枠で入っていた曲をここに持ってきたのは、会場のすぐ隣に大きな観覧車のあるこの会場に合わせて、アンコール1曲目という目立つ場所に持ってきたのだろうか。1サビの大合唱が終わると卓郎さんが「最高!!」と叫ぶ。卓郎さんに東京で、最高!って言ってもらえるなんて、嬉し過ぎる!

最後の曲、静かなイントロが始まる。この日も締めはPunishment、イントロで上手を見ると滝さんと為川さんがくっつくぐらいの至近距離で横並びになり、その距離で時折顔を見合わせながら弾いていたり、途中でネックを僅かに上げた時にふたりとも全く同じタイミングで全く同じ角度だったため完全に動きがシンクロしていた。為川さんと滝さんのチームワークの良さは他の公演でも垣間見えたが、この息ぴったりな様子は本当に見事だった。アウトロでは花道に卓郎さん、滝さん、和彦さん、為川さんが出てきて弾くという、このツアーではお馴染みになりつつある光景。

 

演奏がひと通り終わると真っ先に滝さんが退場。この日は客席に手を振ったりという様子もなく、その背中は少しお疲れの様子にも見えたが、この日も最後まで元気にギターを弾いていたのできっと大丈夫。それに続いて為川さんも退場。

卓郎さんと和彦さんはステージ下手から上手までフロアに丁寧に挨拶、そして花道に出てきてお手振り。途中で卓郎さんが何かを拾うような仕草をしていたが、こちらの位置からはよく見えなかった。最後にかみじょうさん。ランウェイさながらに花道をゆっくりと練り歩き、手にした1本のスティックを、上手の遠くを見ながら力一杯投げ…ると見せかけて下手側にふわりと投げ入れる。演奏中はかみじょうさんだけ花道に出て来れないため、最後にこうして出てきてくれるようになったのが嬉しい。卓郎さんが花道の先で「ありがとうございました!!」と大きく叫び、また最後まで笑顔を振り撒きながら退場、終演。

 

 

どこで入っていたか忘れてしまったこの日のMC。

 

21gの曲紹介だったか、2007年頃にレコーディングまでしたのにその後ずっとアルバムに収録されず、今こうして日の目を見たという話で、2007年当時の音源を今聴くと気恥ずかしいのか、卓郎さんが当時の音源をそのまま公開するのは「顔から血が出る…違う、火が出る(笑)」なんて言ってしまっていた。そんなうっかりがありつつ、音源自体もそんなに恥ずかしいのか…と思うと2007年バージョンが俄然気になる。

 

延期になった札幌公演が来年の3月17日で、3月17日とは9mmの結成記念日の「疑い」がある日です、と卓郎さんが話し出す。何故「疑い」かというと、この日に9mmの4人で初めてスタジオに入った日だから。元々卓郎・滝・かみじょうの3人でバンドを組んでいたが、卓郎さんが和彦さんをベースに誘ったという話。卓郎さんが「ベース、やるよね?」という和彦さんにやんわりと圧をかけるような口調だったのが面白かった。そして3月17日。本当は卓郎・滝・かみじょうの3人でスタジオに入る予定だったが、滝さんがスタジオに行く途中で和彦さんに会い、「捕獲」したのだそう。当時滝さんと和彦さんは服装が似ていて、デニムのカバーオールをよく来ていたためスタジオの窓から見えた人影を卓郎さんが滝さんだと思い込み、「おはよー」と声を掛けたら和彦さんだった、と。

それからこの日のライブ中に、AC 9mmが東京グローブ座でワンマンを行う、という発表もあった。まだ2回しかライブを行っていないAC、早くも?ようやく?東京でワンマンを開催。9mmのライブ予定は今のところ年末のCDJしかないが、その前に楽しみな情報が発表されて嬉しいし、もう待ち遠しい。

 

あとは来年9mmが15周年を迎えるというくだりだったか、卓郎さんが「おれ、来年やりたいことがある」と話し出すので色々予想しながら聴いていると、「“いけるか”Tシャツを作ろうかと思って…」という、斜め上過ぎる一言が。どんなTシャツになるんだろうか、きっと発売されれば買う人は多いだろうし(自分も欲しくなった)、きっとこれは実現するのではないか。いっそのことメンバー全員それぞれTシャツを作ってみてはどうか…。

この日の卓郎さんが特に楽しそうだと思った瞬間。普段フロアから飛んでくる客の言葉や問いかけをあまり拾わない卓郎さんが、この日は「楽しいぞ!!」といった感じの一言が飛んできた時に笑顔で「ワイもやでー」と、聴き慣れない一人称で返していた。こんな言葉が思わず出てくるほど卓郎さんがこの日のライブを楽しんでいたのだと考えると、同じ空間にいた身としてとても嬉しかった。

 

全体的に見て印象に残っているのは、滝さんの目線。自分のいた位置からは人の頭の隙間からちょうど滝さんがよく見えていて、滝さんの力強い眼差しや、卓郎さんのように滝さんもフロアのあちこちをしっかりと見ているんだな…という様子がよく分かった。綺麗な目をしていて、つい滝さんの目に見惚れてしまったほど。

 

 

予想通り、やはりセトリの日替わり枠である1曲目はアルバムの1曲目に収録されているものだった。じゃあ翌日の1曲目はある程度絞られる。帰路に着きながら、ならば明日はLovecall From The Worldが聴きたいな、と思っていた。そして延期になった札幌公演があるとはいえ次がもうファイナル、という寂しさも大きくなっていった。