最後の駅の向こう

何でもすぐ忘れる人の特に記憶に残しておきたいライブの簡易レポートと趣味のレビューの予定。あくまで予定。

20230809/9mm Parabellum Bullet “19th Anniversary Tour” @新代田FEVER

    

結成19周年を迎えた9mmが「9」の付くアニバーサリーイヤーを記念して今年1年かけて開催しているツアーの7公演目。9mmFEVERで有観客ワンマンを開催するのは意外にもこれが初めてで、コロナ禍の2020年に無観客での生配信ライブや事前収録の配信ライブツアーでFEVERを使用したり、今年の4月にFEVER隣接のPOOTLE9mm19周年記念写真展が開催されたり、コラボTシャツが2度発売されたりといった縁を経て満を持しての開催となった。

 

開演10分ほど前に入場するとフロアの後方にまだ僅かにスペースがあったため、後方下手側で開演を待った。ステージがそんなに高くないので何も見えないことを覚悟していたが、ステージに掲げられたバックドロップが人の頭の間から一部見えるくらいだったので少しはメンバーの姿が見えそうだと嬉しくなった。ソールド公演のため開演直前にはフロア後方まで埋まるくらいの状態になったが周りの人と少し距離を取るくらいの余裕はあり、空調もよく効いていて終始快適に観ることができた。開演時刻を3分ほど過ぎた頃に場内が暗転しSEDigital Hardcoreが流れ始めた。

 

 

Cold Edge

Discommunication

ハートに火をつけて

Vortex

All We Need Is Summer Day

Living Dying Message

反逆のマーチ

新曲

Brand New Day

光の雨が降る夜に

Answer And Answer

Sundome

淡雪

Trigger

atmosphere

One More Time

Black Market Blues

Spirit Explosion

Talking Machine

インフェルノ

 

Mr.Suicide

Punishment

 

 

セトリが全く予想できないツアー、今回はCold Edgeからライブがスタート。ステージがほとんど見えない中でも序盤からお立ち台に上がっていたのか、時々客の頭の上に滝さんの肩から上が現れた。Discommunicationはお馴染みの黄色い照明がステージを彩る。小箱なので恐らくFEVER備え付けの照明機材のみを使っていたのではないかと思われるが、発色が鮮やかでかなり綺麗だった。アウトロで一瞬、滝さんが普段と違ってフェイザーっぽいうねるような音を出していたような。続いてはハートに火をつけて、とここまでライブ定番曲が並びフロアを盛り上げていた。間奏ではフロント3人が揃ってジャンプしたのか、一瞬3人の顔が見えたがステージのかなり後ろにいたと思われる爲川さんはさすがに見えなかった。その後は卓郎さんが《手触りだけの新代田FEVER”は》と歌詞を変えて歌っていた。

ライブ定番曲3曲の流れを楽しんでいたところに突然レア曲Vortexの、ライブ版のイントロが聴こえてきて驚きの声を上げてしまった。この時はステージの様子はほぼ見えなかったので音に集中しながら歯切れのいいリズムの心地よさに体で拍を取りながら聴いていた。自分が聴いたのは2021年のツアー以来だっただろうか。序盤でこのクラスのレア曲を入れてくる油断のできなさが今年のツアーならでは。

 

Vortexという突然のとんでもないレア曲にざわつくフロアを静めるかのように、滝さんがギターで穏やかなフレーズを奏で始めると卓郎さんとかみじょうさんが演奏に乗っかり、キツネツキのようなまったりとした雰囲気のセッションがしばらく繰り広げられた。

セッションが終わると卓郎さんが話し始める。FEVERの温度の高さに言及するような文脈で、ここにいる人たちはみんな覚悟して来たんですよね?というひと言があったので、周りの人とほどよく間をあけることができて涼しかった後方と違いステージ付近はかなりの熱気なんだろうなとその様子を想像した。

 

All We Need Is Summer Dayではサビの大合唱に卓郎さんが満足気な笑みを浮かべていたのが見えた。自分が下手側にいたからかベースの音が普段より一際強く感じられたように思えて、この曲の特に好きな箇所である最後のサビのおおらかなベースラインがよく聴こえてとても心地よかった。All We Need Is Summer Dayのアウトロからかみじょうさんが音を切らずにドラムを叩き続けそのままLiving Dying Messageへ、赤と白の情熱的な照明に包まれる中この日一つ目の激繋ぎを見事に決める。赤い照明が続く反逆のマーチ、歌い出しの《この街はいつの間にか~》の部分では和彦さんがフロアのあちこちを見回すように視線を動かしているのがよく見えた。短髪になったことで目元が露になった和彦さん、演奏しながらフロアのことをよく見ているんだなということがよく分かるようになっていた。間奏ではステージの様子は全く見えなかったが、フロア前方から歓声が上がり何か見せ場があったんだな、と考えながら盛り上がるフロアを観ていた。

ステージが少し暗くなると、卓郎さんと滝さんが向かい合って静かにギターを弾き始めた。MCに入る前のセッションなのか、それともこの感じは黒い森の旅人だろうか、と思いながら聴いていると全く聴いたことのない曲の演奏が始まった。卓郎さんの歌に滝さんがオクターブ上のコーラスを重ねる。歌詞はよく聞き取れなかったが《愛》という単語が何度か聴こえたような。だんだん音が重たくなり曲調が激しくなり爆音のツーバス連打は床からも振動が伝わってきて全身を激しく揺さぶられる。まさかの披露となった完全未発表の新曲は、久々に壮絶さを感じさせるメタル曲でツーバス連打もこの日一番重たくあまりにも“9mm”な曲だった。

 

「新曲のリリース日だから、うっかり新曲をやってしまいました。」と卓郎さんがいたずらっ子のような笑顔を浮かべた。これをシングルにしようかとも思った、とも。久し振りに外部からソースを得て曲を作ろうとした、とのことで呪術廻戦の主人公である虎杖をイメージして作られたと。虎杖のイメージソングがハートに火をつけてであると単行本の3巻に書いてあるそうで、卓郎さんは元々好きだったけれどジャンプのアプリで読んでいるためそれを知らず、後から聞いて単行本を確認したとのこと。そのお返しということで勝手にトリビュートしたため、この曲は今放送中のアニメには一切関係ありません、と言っていた。(卓郎さんのMCを記憶を頼りに記載させて頂いたが、自分は呪術廻戦を全く知らないので間違いがあったらすみません。)

ここでだったかこの後のタイミングだったか、この曲を武道館でも聴きたいですか?というようなフリがあり、武道館は事前にリクエストを募ったけどこの曲も200票くらい入ってたもんね?と卓郎さんがすっとぼけて言っていたので、武道館でも聴けることを期待してもいいのだろうか。

 

そんな予想外の未発表曲披露を経てこの日リリースされた新曲、Brand New Dayを満を持してライブ初披露!ステージを彩る爽やかな水色の照明が曲調によく合っていて、生演奏だとMVで聴いた時よりもリズム隊の音が強いように感じられて、その分第一印象で感じていた爽やかさよりも元気な印象が強かった。《僕にもひとつください》の一節を歌う卓郎さんの眩しい笑顔が、人の頭の間からちょうど見えた。それに続いたのがライブでは久し振りに聴けた気がする、光の雨が降る夜に。この曲も鮮やかな水色の照明がバックドロップの双頭の鷲を華やかに染めていたのが見えた。アウトロのツーバス連打に乗せてギターのツインリードが炸裂する瞬間は何度聴いても美しい。光の雨の最後の一音からそのまま滝さんが音を切らずに続けて弾いたのはAnswer And Answerのリフ、この日2回目そして今まで聴いたことのないパターンの激繋ぎに驚き、フロアからも大歓声が上がる。一番最後の《君と出すんだ》の部分で和彦さんがまたフロア全体を見回しているのが見えた。

大興奮の激繋ぎを経て一瞬フロアが静かになった後、かみじょうさんが高速でハイハットを刻み始めその瞬間に次の曲を把握して息を呑んだ。ギターとベースが緩やかに音を重ねてゆくシリアスなアンサンブルから一気に炸裂する音、Sundome。緊張感を心地よく感じつつも演奏に圧倒されて指一本動かさずに演奏に向き合った。89日という日にち柄、もしかしたら聴けるかもしれないとほんの少しだけ期待してはいたけれど本当に聴けるとは。

 

Sundomeの演奏が終わると再び滝さんのギターからセッションが始まった。すぐに卓郎さんとかみじょうさんが演奏に加わり、ステージがほとんど見えなかったので違うかもしれないがどんどん音が増えていったので最後には全員参加していたかもしれない。ちょっとオリエンタルな雰囲気を感じさせる、リラックスして聴ける心地よいセッションだった。セッションが止まると卓郎さんが「かみじょうくんもっとバカスカやっていいよ!」と言っていた。それと、反応が良かったら正式な曲になるかも?というような内容のひと言もあり、それは是非とも実現して頂きたいところ。

 

温度を下げる、というか季節を変えますという感じの卓郎さんのひと言からギターの澄んだ音色が広がると演奏されたのは淡雪。ステージが全く見えなくなったので思い切って目を瞑って聴いてみると、深いリバーブのかかった音や卓郎さんの柔らかな歌声が軽やかに広がり、この時だけは小箱にいることを一瞬忘れるかのような音の広がり方だった。卓郎さんの言った通りに真逆の季節の雰囲気が空間を包んだ直後にTriggerの演奏が続き照明も淡い青から濃い赤へと変わりフロアの温度がすぐに戻ったような感覚。サビで少し見えた滝さんが、ギターを弾きながら口を大きく動かして歌詞を口ずさむ様子が見えた。

Triggerに続いたのがかなりのレア曲atmosphereで何てとんでもない流れなんだとまた驚かされる。中盤の轟音パートは小箱ということもあり音がギュッと凝縮したようなすさまじい迫力があった。最後に再び演奏が穏やかになる部分で一瞬見えなくなった和彦さんの頭が再び見えるようになったので、体を屈めたりステージにしゃがんだりといったアクションがあったのだろうか。2021年のツアーでatmosphereが演奏された際、和彦さんが音の大洪水の中まるで音と一体となって溶けてしまうかのような低い体勢で床にうずくまるようにして演奏をしていた光景がいまだに忘れられずにいるのでその時のことを思い出したりした。

atmosphereの演奏が終わるとここでまた短いセッションが始まった。atmosphereの続きというかエピローグというか、そんな雰囲気のある音階を使った演奏だった。

 

卓郎さんが「いけるかーー!!」と煽ってからのOne More Time、イントロの歌入り直前の部分でギターが1小節分だけツインリードのようにハモりを入れての演奏だった。間奏に入る時には卓郎さんが「ほら出番だよご主人様……滝ちゃん!!!」と今までにない言い方をしていて、普段は「ギター!!」と叫んでいるので滝ちゃん!?とびっくり。One More TimeBlack Market Bluesは昨今のライブで何度も激繋ぎを披露しているので自然とドラムのカウントと同じリズムで頭を振ってしまったが、期待通りやってくれた。卓郎さんが《新代田FEVERに辿り着いたなら!!》と歌詞を変えて歌っていた。

そろそろライブも終盤という雰囲気の中でこれまた予想外のSpirit Explosion、この日何となくこの曲を聴きたい気持ちが強かったので、イントロを聴いた瞬間に何とも言えないものすごく嬉しい気持ちになった。間奏らしきパートから終盤へ続く部分では、卓郎さんが和彦さん、和彦さんがかみじょうさんの方を見ながら演奏していてそれぞれリズムのタイミングを合わせているようだった。続けてTalking Machineが演奏されフロアを躍らせまくる中、客の頭の間から卓郎さんが《空をただ見上げてるだけ》の時に天井を指差す様子が見えた。そういえば2回目のサビの部分、普段と違いかみじょうさんがタムを連打するアレンジが入っていなかったような。本編最後はこの位置に来るのが珍しい気がするインフェルノ、後半では和彦さんがお立ち台に上ったようで頭を振りながらベースを演奏する様子が後方からでもよく見えた。

演奏が終わって5人が順番に退場する時にクリック音のような、一定の間隔でリズムを刻む謎の音がステージに流れていたが何だったんだろうか。かみじょうさんが若干はにかみながら退場するのが見えたけれど謎の音とは特に関係なかった?

 

少し長く続いたアンコール待ちの手拍子に迎えられ再びステージに卓郎さんたちが登場。卓郎さんはこの日限定販売されていたBrand New Dayジャケット写真がプリントされたTシャツに着替えて出てきた。

卓郎さんが「コロナ禍コロナ禍っていう言い方はあまりピンとこない、この中みたいで」と言いつつコロナの状況が始まったばかりの頃、FEVERにはお世話になったと(配信ライブという形で演奏する機会をくれたので)当時の話をしつつFEVERで有観客ライブができて嬉しい、地下鉄もないし218秒もかからないけどFEVERが好きです、これからもよろしくお願いします、とFEVERへの感謝の言葉を述べていた。

19周年のツアーももう折り返したはずなのにこの後もLa.mamaや武道館もあって最後のLIQUIDROOMまで盛りだくさんで…19周年も20周年もこんな感じでライブをやるので来てください。」とも言っていたので早くも来年、20周年に何があるのだろうかと期待が膨らむ。

19周年ツアーのメンバー地元凱旋ライブも残すところ和彦さんの仙台公演だけとなったのでその話の流れで卓郎さんが「和彦のセトリ楽しみだね!」と言うと和彦さんが絶妙な微笑みを浮かべて何度も何度も頷いてたのは任せとけ、という意思表示だったのか、セトリどうしよう、という意味だったのか。

 

卓郎さんが伸びをするように腕を伸ばしてからそのままの体制で「いけるかーー!!」になだれ込んだ微笑ましい様子から入ったアンコールの1曲目はMr.Suicide6月の水戸公演に続くセトリ入り。毎度同じことを言ってしまう気がするが《流星群の雨になって 夜空を洗い流していった》の部分のファルセットが堪らなく好きでこの日も目を瞑って聴き浸った。最後の曲はお馴染みのPunishment、間奏に入ると卓郎さんがお立ち台か柵かどちらかに上がったようで天井にも軽々と手が届くようになり、ギターを弾かずに笑顔を浮かべて天井を触りながらフロアの様子を見ていたのが本当に楽しそうな様子で、卓郎さんの楽しそうな笑顔が観られて嬉しい気持ちになった。

 

演奏が終わると卓郎さんが裕也!裕也!と爲川さんを呼んでいて、ステージ上手の様子は見えなかったが最後に爲川さんを紹介する配慮を見せていた。和彦さんはピック上手下手に何枚も投げて退場、かみじょうさんは上手袖に向かってゆっくり歩きながらフロアに手を振っていたようだった。卓郎さんはいつものように丁寧に挨拶をすると、上手の袖に入ったところで再度フロア側を向いて笑顔を向け、そのまま奥に消えていった。

 

 

毎度レア曲が数曲ずつセトリ入りしている今年のツアー、今回はVortexatmosphereとインディー期のレア曲、更にSundomeTrigger。ここまで全公演観ているわけではないが、もしかしてツアーで1年かけてインディー期の曲全部演奏しようとしている?と考えてしまうくらいの選曲。それに加えてこの日リリースされた新曲Brand New Dayのライブ初披露があった。新曲のライブ初披露に立ち会える機会はそう多くないので今回それに立ち会えたことも嬉しいことだった。しかもBrand New Dayの演奏が始まった時に聴きながらセトリの9曲目に入れられていたことに気付いてさすがだなと。

更に全く予想外だった、完全初披露の新曲まで!かなり好きなタイプの曲調だったので、本当に武道館でもその他ライブでも演奏して欲しいし、リリースされる日がもう待ち遠しい。

 

曲と曲をシームレスに繋げて演奏する卓郎さん曰く激繋ぎ、この日はAll We Need Is Summer DayLiving Dying Message光の雨が降る夜に〜Answer And AnswerOne More TimeBlack Market Blues、それとSpirit ExplosionTalking Machineもほんのり繋がっているような感じだった。以前から曲と曲を繋げて演奏していたことはもちろん何度もあったが、激繋ぎという呼び方が登場してからはライブの度に「この後次の曲と繋がりそうかな?どの曲が繋がるかな?」と意識して予想しながら観るという楽しみが増えた。

 

これまでに(把握している範囲で)FEVER9mmではフレンズのライブの対バン、他にはキツネツキが出演したり、メンバーそれぞれが他の方主催のイベントにゲスト出演したりという機会があったので9mmが今までにFEVERでワンマンを開催していなかったのはよく考えれば意外だったなと。冒頭でも書いたが9mmの初めてのFEVERワンマンは数回の配信ライブと2度のコラボシャツ販売、そして4月の写真展を経て遂に実現、ここ数年のイレギュラーな状況の中で深まった縁が開催のきっかけのひとつだと考えても良いかと思う。

個人的な話になってしまうが、自分の出身区にありライブハウスの中でも特に身近な存在であるFEVER9mmがツアーで来てくれる日がいつか実現することを長年待ち望んでいたので、ここ数年間でFEVER9mmが配信ライブや写真展などを開催し縁を深めていくのを勝手ながらワンマン開催に近付いたのではないかと嬉しく思いながら観ていた。今年のツアー会場にFEVERが入っているのを知った時には遂に念願叶うと喜びを噛み締めた。この日のライブ中に卓郎さんが曲中何度も何度もフィーバー!!!と叫んでいた。叫びやすそうだから色々な曲で入れていたのかなと思いつつ、卓郎さんがフィーバー!!!と叫ぶ度に余計嬉しい気持ちになった。FEVER9mmのワンマンを観たいという願いを叶えてくれてありがとうございました。

20230708/凛として時雨“トキニ雨 #16”@Zepp Haneda

       

凛として時雨がゲストアーティストを迎えて行うイベントトキニ雨”7年振りの開催。

6月にアルバムリリースツアー“aurora is mine tour 2023”を終えたばかりの時雨。自分は4月のZepp DiverCity公演のみ観に行くことができて、言わずもがな大変いいライブで1公演しか観に行けないことを惜しんでいたので、ツアーが終わったばかりなのにまたツアーを開催してくれたのが本当に嬉しかった。

大阪公演のゲストは羊文学、名古屋公演はCrossfaith、そして東京公演のゲストは9mm Parabellum Bullet。時雨と9mmが対バンするのは201999日、9mm15周年ライブの六番勝負以来で4年ぶりとなる盟友同士の対バン。告知解禁時にはすべてのゲストが×で伏せ字になった状態で画像に掲載されていたが、東京公演のゲストの異常な文字数の多さに解禁前から9mmだと何となく予想がつく状態になっていたのが面白かった。

 

この日の座席は2階席の上手側3列目だった。Zepp Haneda2階席の2列目と3列目の間に通路がある珍しいつくりのためかなり見やすかった。時雨ワンマンの2階席は東京ではほとんどの人が着席したままライブを観ることが多く、この日は対バンだったのでどうかなと周りの様子を窺ったがやはり着席のままの人が多かったので自分も着席のままでライブを観ることにした。

 

 

9mm Parabellum Bullet

 

Discommunication

All We Need Is Summer Day

Living Dying Message

The Revolutionary

(teenage)Disaster

Psychopolis

カモメ

新しい光

One More Time

Black Market Blues

Talking Machine

Punishment

 

 

ほぼ定刻にフロアが暗転、SEが流れメンバーが登場。この日のサポートギターはfolcaの爲川裕也さんで、上から見ると前列に和彦さん、卓郎さん、滝さん、その後ろにかみじょうさんと爲川さんが並ぶという立ち位置。

9mmZeppで観る時は大体ワンマンやツアーなど主催ライブが多いため、Zeppクラスの会場でステージにバックドロップが掲げられていない9mmZeppで観るのが久々だった。そんな中1曲目のDiscommunicationからゲストバンドとは思えないほどフロアが盛り上がる。お馴染みの黄色の照明をベースにこの日は赤や青の差し色が入り心なしか普段より華やかな照明。続いてのAll We Need Is Summer Dayでもフロアから《All We Need Is Summer Day》の大合唱が巻き起こるなど9mmのワンマンか?と思うほどの盛り上がり。この日のうだるような暑さにもフロアの熱気にも合わせたかのように、1番のサビを歌い終えた卓郎さんがすかさず「暑いですねえええ!!!」と叫んでいた。

All We Need Is Summer Dayのアウトロから音を切らずにそのまま次の曲、Living Dying Messageへ!昨今9mmのライブでは曲と曲をシームレスに繋いで演奏することが多々ありそれを卓郎さん達が激繋ぎと呼んでいるものでこの2曲の激繋ぎは初披露だったのではないか、予想外の選曲につい驚きの声を漏らした。Living Dying Messageは時雨と9mmが初めて2マンライブを行ったニッポニア・ニッポン開催年と同じ2008年の曲なのでそれを意識した選曲だったりして?とライブの後にふと考えた。

「もういっちょ!!」と卓郎さんが叫んでからThe Revolutionaryへ。真っ白な眩い光にステージが包まれる中、間奏ではステージ中央で卓郎さんと滝さんが向かい合ってツインリードを弾き、その後ろに和彦さんと爲川さんも集まってくるというお馴染みのフォーメーションが決まると割れんばかりの大歓声が1階から聞こえてきた。アウトロでは和彦さんが曲のテンポに合わせ軽快にジャンプを繰り返していた。

 

ここで最初のMC。卓郎さんが時雨との対バンを如何に大切に思っているかを話し「ハッピーな轟音をぶつけようと思います!」と素敵な表現で意気込みを語った。9mmが今年19周年を迎えたことにも触れつつ、トキニ雨のゲストバンドが×の伏せ字で解禁された際に自分達のバンド名が長過ぎて数えてみた時に初めて9mm Parabellum Bullet19文字だということに気付いたという話から19周年を迎えた9mmが今年の919日、9年振りに武道館でライブをやるから来てくださいねと言っていたのはこのタイミングだったか。

 

話を続ける卓郎さん。「北嶋くんから夜中にメールがきて今回の対バンが決まったんですけど。折角だから何の曲を聴きたいか聞いたら、この中からやって欲しい、って3曲送られてきまして。」

 

「その3曲全部やります!!!!」

 

その言葉にフロアが沸く中TKリクエストパートへ、1曲目は9mm最初期のナンバーである(teenage)Disaster、続いての曲はライブで演奏されるのはなかなか珍しいPsychopolisという嬉し過ぎる選曲。TKがこの2曲をリクエストしたんだなと思いながら聴くといつもよりも余計嬉しい気持ちに。そして特にPsychopolisは定番曲というわけでもないのに、2曲ともフロアは9mmワンマンの時と遜色ないほど盛り上がっていた。

リクエス3曲の最後を飾ったのはカモメ。先ほどまで盛り上がっていたフロアをスッと落ち着かせるようなギターのクリーンな音が響いてから演奏へ。全ての音と卓郎さんの歌声がフロアに優しく響く中、ステージ壁に淡い青のライトを当て波の模様を壁に描くという演出が入り普段の9mmライブとは一味違った演出に時雨の照明を借りている感があって個人的にとてもいいなと思いながら見ていると、その波がスポットライト「9個」で作られていることに気付き静かに感動していた。最後のサビでは曲の盛り上がりに合わせるかのようにステージが朝焼けのようなオレンジに染まった。ただただ美しかった。

 

TKリクエストパートを終えると再びMCへ。卓郎さんが時雨との関係の近さについて「(CDショップの)試聴機のDisc19mmが入ってる時はDisc2に時雨、Disc1に時雨が入ってる時はDisc29mmが入っていることが多くて。」と言っていたのが的確過ぎたし何だか懐かしかった。ちなみにDisc3にはZAZEN BOYSthe band apartが入っていたよね、とのこと。先ほど演奏された(teenage)Disasterは試聴機で聴いた時のことを思い出してくれたらというようなことも言っていた。

「話が戻るけど、対バンが×で隠れてる時からバレバレだったよね。その時から(ゲストが9mmだと)察して来てくれた人もいるんじゃないか。だって今日おれたちのTシャツが売り切れたんだって!そんなことある!?」と嬉しそうに話を続けていた。この日から9mmは新作Tシャツの販売を始めており、この日のライブでは卓郎さんが白を、かみじょうさんが黒を着ていた。

 

「これからも時雨とはずぶずぶの関係でいきますので、よろしくお願いします!!」

 

眩い真っ白な照明の中で5人が演奏する光景が最高にかっこよかった新しい光、サビの後のキメで卓郎さん滝さんがステージ前方に来たり、和彦さん滝さんがそれぞれステージ端へ行ったりというフォーメーションが決まるたびにここでも大歓声。最後の《新しい光の中に君を連れて行くのさ》の部分、かみじょうさんが普段クレッシェンドをかけるようにスネアを叩く、というのが今回は無くその代わりアドリブっぽいフレーズを叩いているのが聞こえた。

One More Timeではサビに入るごとに卓郎さんがフロアを煽り大合唱が巻き起こり、そのたびに卓郎さんが楽しそうな笑顔を浮かべていた。滝さんは中盤あたりのギターを弾かなくていい部分でギター横に持ってまるで肩で風を切るような勢いでズンズンとステージ中央に向かって歩いて行ったり、ちょっと卓郎さんに近付くぐらいの位置で腕を大きく動かして踊ったりするなど大きな動きが多くこちらも楽しそうだった。

One More Timeから音を切らずにそのままBlack Market Bluesへという最近の9mmライブではお馴染みの激繋ぎを披露、卓郎さんが《Zepp Hanedaに辿り着いたなら!!》と歌詞を変えて歌う。最後のサビではかみじょうさんが普段より激しく頭を振っていた。ここまでの間もずっとワンマンのような大盛り上がり、と表現してきたがこの曲でより一層盛り上がる様は特に気持ちよかった。

そのままの流れでTalking Machineへ、熱狂し続けるフロアを更に躍らせる。《空を見上げてるだけ》で天井を指差す卓郎さんの動きは個人的に特に好きなところ。ステージ上の動きも更に大きくなり終盤では滝さんがお立ち台の上でめちゃくちゃに頭を振りながらもしっかりとメロディーを弾きこなすという職人技を見せた。最後の曲はPunishment、爆速カッティングで勢いをつけ序盤から寝転びながら演奏する滝さん、和彦さんはベースの速弾きにタッピングまで披露!間奏ではそれまでずっと後方から離れなかった爲川さんもステージ前方へ出てきて和彦さん、卓郎さん、滝さん、爲川さんが一列に並んだ。間奏後の最後のパートを滝さんが全部ファズかけっぱなしで弾き続けるなど、ライブど定番曲のPunishmentも普段と明らかに気合が違うといった様子だった。

 

ありったけの轟音を叩きつけ演奏が終わると滝さんは早々に上手の袖へ消えていき(滝さんはいつも退場するのが早い)、爲川さんも早めに退場。サポートということで爲川さんは後方からほぼ動かずに演奏していたが、2階席からもよく分かるほど華やかな立ち振る舞いや表情でフロアのあちこちに視線を遣り1階の人達を乱れ撃ちしていた。

和彦さんはフロア下手側から上手側へ順番に挨拶しながらピックを投げてから退場していった。ライブ中どの曲か失念してしまったほど、和彦さんもこの日は普段の1.5倍くらいぐるぐると回っていたりフロア下手側を煽ったり自分の胸をトントンと叩くようにしてフロアからの歓声に応えたりと気合が滲み出ていた瞬間が多かった。

卓郎さんもワンマンの時より短めながら丁寧にフロアに挨拶して退場。最後にかみじょうさんがゆっくりと下手の袖へ歩いて行ったがその際、フロアに向かって手を振りつつ一瞬だけ両腕を頭の上でクロスしたように見えた。たまたまそう見えただけかもしれないけれど、もし意識してやったのだとしたらそれは、あのジャンプじゃないですか!!

 

9mmを観終わった後の満足感があまりにも凄かったので、これからまだ時雨のライブが待っているというのはこんなにも幸せなことなのか、と余韻に浸りつつ時雨を楽しみに待っていたら転換時間もあっという間のように感じられた。フロアが再び暗転しいよいよ時雨の番。

 

 

 

凛として時雨

 

アレキシサイミアスペア

DIE meets HARD

nakano kill you

Marvelous Persona

DISCO FLIGHT

am3:45

〈ドラムソロ〉

想像のSecurity

Telecastic fake show

竜巻いて鮮脳

傍観

 

ツアーではセトリの一番最後の曲だったアレキシサイミアスペアから演奏が始まった。澄んだ水色の照明が美しくフロアが一瞬にして時雨ライブならではの心地よい緊張感に包まれたのが最初からもう最高だった。次の曲に入る瞬間TKが気合を入れるかのように叫んだのでびっくりしているとDIE meets HARDの演奏へ、この曲の入りでTKが叫ぶことなんて今まで無かったのでは!?この時点でこの日のTKの気合の入り方が伝わってくるようで凄いライブになりそうだとDIE meets HARDはライブでは意外と久し振りに聴けた気がしたので、蜂蜜のような甘い色の照明がステージを包む中どっしりとしたリズムに体を撃ち抜かれる感覚に久し振りに浸ることができた。

そのまま中野さんがドラムを叩き続け次の曲へと思いきや一旦演奏が止まる。一瞬で仕切り直しTKがもう1回やりますとひと言、それから「9mmからのリクエスト曲です。」と告げてから改めて演奏へ。その言葉にびっくりしていると演奏が始まったのはnakano kill you、イントロのツーバス連打の体感速度がいつもより早いように感じられたのは気のせいか、その勢いのままTK345が歌い出した際のステージをくっきりと二分するかのような赤と青の照明が目に焼き付いている。

 

このあたりでTKが話し始める。先程まで絶叫していた人とは思えない穏やかな話し声はやはり落ち着く。「凛として時雨です。9mmが最高のライブをしてくれてありがとうございます。僕達も本気でやっていきますので、よろしくお願いします。」

 

同期と思しき345の声が徐に聴こえてきてそれに演奏が重なるMarvelous Persona345の伸びやかなハイトーンにかっちりしたリズムが重なる後半の展開が大好きで、345の気高い歌声に気品ある淡い紫色を基調とした煌びやかな照明があまりにも似合い過ぎていて、リリースツアーで観た時から大好きな演出だったのでこの日また観られて嬉しかった。中野さんが煽るといつも以上にフロアが沸いたDISCO FLIGHT、ここでもTKのシャウトが心なしか多かったような演奏からも3人の気合いが溢れていたように思えてとにかく凄かった。

そんなキレッキレの2曲を経てここで一旦フロアが静まっただろうか、しんとした空間にクリーンなギターの音が響いて演奏が始まったのはまさかのam3:45。昨年開催の“DEAD IS ALIVE TOUR”で演奏されはいたがかなりのレア曲でワンマン以外でも演奏されることがあるのかとこの一番意外だった曲かもしれない。穏やかな照明の中345のやわらかい声が広い空間いっぱいに響き、間奏が終わった後に再び345が歌い出すとフロア天井のミラーボールに白い照明が当たりフロアの空間や壁が柔らかな光の粒でいっぱいになって、澄んだ歌声と合わさって本当に美しい雰囲気を作り出していた。この光景を2階席から、ステージとフロアをを上から観ることができて幸せだった。

 

中野さんにスポットライトが当たると何とドラムソロが!TKは上手袖へ消えていき、345はステージに残ったままで定位置から少し離れたところに立ちチューニングのような動きをした後にドラムを叩きまくる中野さんを見守っていた。ワンマンよりもだいぶ短めだったが、ワンマン以外でもドラムソロをやってくれるのかと驚きながら中野さんの凄まじいスティックさばきに釘付けになった。ドラムソロが終わる頃にTKがステージに戻ってきた。

 

「滝くんの一番好きな曲です。」とTKが紹介してから想像のSecurity、先ほど9mmのリクエストに応えnakano kill youを演奏したがここでも9mm側へ贈る選曲。思いがけず滝さんの好きな曲を知ることができ、お馴染みの想像のSecurityも滝さんの好きな曲なのかと思いながら聴くと普段よりもちょっと嬉しさが増した。そのままの勢いでTelecastic fake showへ続くと中盤ではTKが珍しくマイクスタンドから少し横に離れる場面があった。サビでは青とオレンジの照明を使いまるでマジックアワーのような色使いが綺麗で、スピーディーな曲調にも絶妙に合っていた。このあたりから2階席の自分の目の前にあった通路へカメラクルーの方が来て通路を何度も行ったり来たりしながら撮影を続けていた。ワンマンですら映像化されることが少ないのに1階だけでなく2階にもカメラを入れるなんて映像化を期待していいのだろうか、などとそわそわした気持ちになった。

ライブ終盤というタイミングで満を持して竜巻いて鮮脳。イントロのメロディーのワクワク&ゾクゾク感に乗せてフロアの方へ向いた複数のスポットライトがゆっくり回転し、フロアの客を全員ステージに引き摺り込むような効果を出していた演出が天才的な素晴らしさでこれも個人的にとても大好きな演出。中盤の親しみやすいテンポの曲展開ではそれに合わせ楽しく体を揺らし終盤で一気にテンポが速くなるというエクストリームな展開にもワクワク感を煽られる本当にどこを取っても良い曲。リリースツアーでは最後にテンポが速くなる部分もスポットライトがゆっくり回っていて曲と照明のテンポのギャップが逆に得体の知れない現象のようになっていて素晴らしかったし、この日はテンポが速くなるのに合わせて水色の照明が派手に点滅する演出に変わっていてこれもかなり良かった。短期間に同じ曲でも2パターンの演出を観られたのが嬉しかった。曲が終わっても中野さんが叩くのをやめずかなりの手数でしばらくの間ドラムを叩き続けていた。

 

ここで再びMCTKが「メンバーを紹介します。ベースボーカルの中村美代子さんです。」と穏やかな声で紹介。345も先程までのハイトーンボイスが嘘のような小さく穏やかな声でこんばんは、ありがとうございます、とフロアに丁寧に挨拶。「暑いですね……大丈夫ですか?」と続けてフロアへ優しく話しかけていた。

9mmと対バンできて本当に嬉しいです、と話しつつ「グッズの紹介をひとつだけ、グッズの紹介をします。靴下を作りました。今日の思い出に是非、是非、是非。」と話を続け、先ほどのドラムソロと同様短縮版ではあるがワンマンでもないのに物販紹介をやってくれた。

345が中野さんとTKの方を見ながら「(喋らなくて)大丈夫?」と聞くと次に口を開いたのは中野さん。9mmがとんでもないライブをしたので僕も今日は本気でやらないとなと思いまして、といった話をしていた。「あと1曲やるんですけど!地獄のような時間を過ごすと思いますけど、みなさん放心状態で帰ると思います!」と次の曲を察しつつそれに似合わない明るい紹介があまりにも愉快で楽しい気持ちになった。

最後に中野さんがTKに「TKもさすがにひと言あるよね?」という感じで話を振る。普段のワンマンならニコニコしながら発言を控える流れがお馴染みだけれど、珍しくTKも話し始めた。

 

「これからも卓郎くんに死ぬまで深夜にメールし続けます。」

「僕達と9mmは癒着しているんですけど。これからもお互いの場所で新しい音を見つけていって。」

 

9mmとは、死ぬまで、対バン、し続けます。」

 

この日最後の曲はもちろん、中野さんが地獄のような時間と何とも言い得て妙な表現をした傍観。今年開催の“aurora is mine tour 2023”でも昨年の“DEAD IS ALIVE TOUR”でも傍観が演奏されなかったので、この曲で終わるライブを久々に観た。ステージがどす黒い赤に包まれる光景、その中で絶唱するTK、この日一番激しい動きで演奏しながら長い髪を振り乱す345。それをただじっと見つめる長いようであっという間に終わってしまう時間。

TK345がまだ音を出す中、真っ先に中野さんが退場。次にステージを後にした345は退場時に僅かにフロアを見るとそちらへ手を振っていた。ひとり残ったTKがステージ中央あたりまで出てくるとギターを弾き狂いひとしきり弾くとギターをフロアへ投げ捨て、下手の袖に向かう途中でフロアを見て手を振るとそのまま袖に消えていった。この楽しい時間が終わるのを惜しむかのように、フロアには耳をつんざくようなノイズが長い時間響いていた。

 

 

まるで9mmと時雨のワンマンを続けて2本観たかのような満足感があった。時雨はTKが明らかに普段のライブより多く喋っていたり中野さんのドラムソロや345のグッズ紹介があったりと普段のワンマンライブの短縮版のような構成だった。リリースツアーの余韻を残しつつ定番曲や予想外のam3:45も披露されたものすごいセトリ。9mmはゲストということもあり定番曲多めではあったが、TKのリクエストのおかげでセトリに入れられたPsychopolisなどは対バンでは珍しい選曲だったし、9mmと時雨で持ち時間は同じだったと思うが9mmは曲が短いからか時雨よりも多い曲数で12曲も披露。何度も言及してしまったがフロアの盛り上がり方も含めゲストで呼ばれたとは思えないライブをやってみせた。時雨も9mmも大好きでこの2マンを4年振りに観られることを本当に楽しみにしていたが、その期待を遥かに上回る幸せな時間だった。

今年ツアーを開催したりPSYCHO-PASSのイベントにも出演したりと完全に仕上がっている状態の時雨、それにしてもこの日の3人の気合いの入りっぷりは凄かった。特にnakano kill youや竜巻いて鮮脳のアウトロなどでそれが顕著だった中野さん。シャウト2.5割増ぐらいに思えたTK。すさまじいライブをやってみせた9mmの気合いに返すように、お互い対バン相手として気のおけない仲間がいてこその気合の入れ方をしてライブをやっていたんだなと。

 

9mmTKからのリクエス3曲を全部セトリに入れ、時雨は9mmからのリクエストを1曲、滝さんが好きな曲も1曲セトリに入れ互いにリクエストに応えるというこれも予想外の特別なセトリだった。思いがけずお互いの好きな曲を知ることができたことも9mmと時雨両方のファンとしては本当に嬉しかった。

2010年、9mmと時雨、ミドリが対バンした新木場クライシスというイベントにて、9mmTalking Machineを演奏した際ライブアレンジのイントロ部分で滝さんが想像のSecurityの出だしのメロディーを弾いた。滝さんが時雨のフレーズを弾くのが珍しかったので今でもはっきりと覚えているが、それから13年も経った2023年に想像のSecurityが「滝くんが一番好きな曲」であることが明かされたので咄嗟に新木場クライシスのことを思い出し、13年の時を経て遂に伏線回収されたような気持ちになった。

 

「これからも時雨とはずぶずぶの関係でいきます」と話した卓郎さんと「9mmとは死ぬまで対バンし続けます」と宣言したTK。それを聞いて9mmと時雨が4年前に対バンした際にもTKが「9mmとは死ぬまで対バンしたいです」と言っていたのを思い出した。時雨は20年、9mm19年活動してきて、お互いにこの先もバンドの活動を続けることを疑わずにまた対バンしますと言ってくれたのが何よりも嬉しかった。いつまでもずぶずぶに癒着し続ける関係でいてください。

       

20230609/9mm Parabellum Bullet “19th Anniversary Tour” @ザ・ヒロサワ・シティ会館

   

結成19周年を迎えた9mmが「9」の付くアニバーサリーイヤーを記念して今年1年かけて開催しているツアーの5公演目。ツアーの中でメンバーの出身県にある会場で、そのメンバーセレクトのセトリでライブを行う卓郎さん曰く「ふるさと納税シリーズ」の一環で今回は滝さんの地元茨城県、水戸にあるザ・ヒロサワ・シティ会館にて開催。

 

会場へ入るとホール内のスモークが若干ロビーに漏れていたようでロビーが少しだけ靄がかかったようになっていた。1500人ほどが入るホールは真っ赤な座席がびっしりと並び、後方へいくにつれて傾斜が急になっていて下から見ると赤い壁のようになっていて美しかった。3階席にあたる後方の座席は何列か空席だった。普通のホールでは前方の10列分くらいは傾斜がなかったり僅かだったりで自分のように身長が高くない場合は前の人の頭で逆に見えづらいことがあるが、この会場は珍しく前方の列にもしっかりと傾斜がついていて結果的にかなり見やすい構造だった。

今回の会場は上手下手ともにステージから花道が伸びていて、自分は下手側のかなり端の方の座席で花道のすぐ近くだった。もしかしたら和彦さんが花道まで出てくるのかもしれないと少し期待しながら開演を待っていた。(花道に至るスペースにスピーカーや照明機材が置いてあり通りづらそうだったので、残念ながらこの日和彦さんが花道まで出てくることはなかった。後で会場HPを確認するとこの花道は全長9mだったらしい。)

 

開場時間中はステージにバックドロップはなく、定刻から5分ほど過ぎた頃に客席が暗転しSEDigital Hardcoreが流れるとステージ後方の壁に蜘蛛の巣のような模様が投影される中19周年仕様の巨大なバックドロップが上がってきた。

 

 

Lovecall from The World

Answer And Answer

Mr.Suicide

Sleepwalk

All We Need Is Summer Day

The Revenge of Surf Queen

Heat-Island

Everyone is fighting on this stage of lonely

ラストラウンド

Trigger

Termination

コスモス

砂の惑星

命ノゼンマイ

黒い森の旅人

The Revolutionary

Beautiful Target

marvelous

Talking Machine

Hourglass

 

One More Time

Punishment

 

 

いきなり予想外のLovecall from The Worldでライブが幕を開けた。49秒のショートチューンを駆け抜けると滝さんがお立ち台へ上がってAnswer And Answerイントロのギターを弾き始める。滝さんがお立ち台に上がった瞬間にスポットライトが滝さんではなく無人になった滝さんの本来の定位置を照らしていた。最後のサビ前に全く同じことがもう一回起きていて、スポットライトが滝さんを捉えることができないという今まで何度も見てきた光景に思わず頬が緩んだ。

割と定番曲であるAnswer And Answerですっかり油断したところに続いたのがMr.Suicide!まだまだ序盤なのに出し惜しみの一切ない選曲に驚かされる。普段のライブハウスよりも音が綺麗に伸びてゆくホールで聴く〈流星群の雨になって 夜空を洗い流していった〉の部分の卓郎さん&滝さんのファルセットや次の曲、Sleepwalk2番で卓郎さんが静かに歌う〈無駄遣い〉のウィスパーボイスが空間に響いてスッと消える様子の美しさ。SleepwalkAメロではステージ後方にウェーブを描くように置かれた照明が、光を右から左へと流すように点滅していたのも曲調のシャープさに合っていて素敵な演出だった。

 

ここで最初のMC。卓郎さんが「ザ・ヒロサワ・シティ会館ザ・ヒロサワ・シティ会館」と繰り返して言葉の響きを楽しんでいるかのようだった。「ようやくマスクも個人の判断になってあっ外してと言っているんじゃないよ」と、ライブのルールが緩和されつつあることに嬉しい気持ちを表しつつもこの場にいる人達を誰も否定しない優しさはさすが卓郎さん。「人生楽ありゃ苦もあるさを体現しているバンド」と9mmについて水戸黄門のテーマソングを引用しご当地ネタを入れながら話していた。

 

All We Need Is Summer Dayでは薄い黄色を基調に白い光の線があたたかな日差しの如く客席に降り注ぐ照明の中大合唱が巻き起こる。ホールの特性なのか客の歌声もライブハウスより聞き取りやすい気がして、溌剌とした演奏と合わさって聴いていて気持ち良さがあった。続いて演奏されたのが何とThe Revenge of Surf Queen、一足先に真夏が来たかのようないい流れと個人的に特に大好きな曲なのでまさかここで聴けるなんて、とイントロを聴いた瞬間に驚きと嬉しさで今年一大きな声が出てしまった。イントロからしばらくの間、和彦さんがリラックスしたような笑顔を客席に向けながら演奏していて観ているこちらも楽しい気持ちが溢れてきた。笑顔全開の和彦さんは途中で一瞬「あっ」と言うような表情になりその後はいつものシュッとした表情に戻っていった。上手に視線を移すと滝さんが広いスペースを存分に使ってステージ中央、卓郎さんがいる方まで動き回りながらギターを弾きまくっていたのが見えた。大好きなThe Revenge of Surf Queenを聴きながらニコニコしていたところへ投下された次の曲がHeat-Islandという驚愕の選曲、自分がライブで聴けたのは9年前、2014年の武道館公演で聴いて以来だったかもしれないというほどのレア曲。その時より演奏力を更に更に爆上げした状態の、しかもトリプルギターの編成でHeat-Islandが聴けるなんてを行き来するような緩急のある構成をこんなにも凄まじくキレのある演奏で聴くことができるなんて、と感激しきりだった。

 

このタイミングだったかこの後のMCだったか忘れてしまったが、卓郎さんもHeat-Islandいつ振りだっけ?というようなことを言っていたので本当に久々の曲だったのだなと。Heat-Islandと水戸にまつわるエピソードとして、昔『The World Tour』というツアーを開催した時に水戸公演で滝さんのギターのヘッドと接触して卓郎さんが流血したことがあった、よりによってその直前に千葉LOOKの店長さんに「怪我しないでね」と言われたのに!という話が出ていた。(ちなみにその時にタオルを貸してくれたのがUNISON SQUARE GARDENの貴雄さんだったという話は過去に卓郎さんがライブで話したことがある。)

 

次はお酒に合う曲、というよりビールに合う曲かな?と卓郎さんが前置きしたので次の曲を予想しながら待っていると演奏が始まったのは全く頭に浮かばなかったEveryone is fighting on this stage of lonelyで、卓郎さんはこの曲にそういうイメージを持っていたのかと興味深かった。ギターが3人いるのにAメロの高速カッティングは武田さんがひとりで担っており和彦さん・かみじょうさんとともに3人だけで出しているとは思えない分厚い音を出していた武田さんの姿がとても頼もしかった。最後のサビでは卓郎さんが〈戦え〉と歌い上げる横で滝さんが英語のコーラスを朗々と歌い上げていた。その勢いのままラストラウンドへ、この曲もかなり久々にライブで聴けたのでまた驚かされた。客席の左右両側の壁には照明で渦のような模様が描かれ凄まじい曲調を視覚でも表しているかのよう。つい先ほどMCで「人生楽ありゃ苦もあるさ、を体現してきたバンド」と自らを表した人達がその後この2曲をぶっ続けで演奏する流れがあまりにも良過ぎた。

Everyone is fighting on this stage of lonelyの〈倒れた勇気を奮い立たせて〉〈立ち上がれよ 何度でも〉とラストラウンドの〈倒されても倒されても立ち上がればいいだろ〉といった言葉の一つひとつが正に9mmそのものであり、特に困難な状況に立たされながらもステージに帰ってきた滝さんが久し振りに地元でライブを開催したこの日のためにこの2曲を選んだと思うと聴きながら感慨深い気持ちになった。

 

そんな熱過ぎる流れを経て次の曲もいつ振りに聴いたか分からないほど久々のTrigger!!最初のサビの〈撃ち抜いてやるんだ〉の部分で滝さんがギターのヘッドを客席に向け撃ち抜くジェスチャーをしていた。Triggerから間髪入れずに演奏に入ったのはTermination、曲が変わったことに気付くのが一瞬遅れるほどシームレスに曲と曲を繋ぐやり方を卓郎さんが以前YouTube配信で激繋ぎと呼んでいたが今回の激繋ぎも見事だった。ここでもサビでは客席から大合唱が起こり、間奏では上手で滝さんがギターソロを弾きながら床に寝転がり、中央では卓郎さんと和彦さんがかみじょうさんの前あたりで向かい合うとすかさず武田さんも仲間に入れてくれと言わんばかりに笑顔で近付いていって4人で向かい合うようにして演奏していた。

 

ここでも次の曲へ入る前に卓郎さんが次もお酒に合う曲、と紹介していてこの時だったか「お酒に合う選曲、というのは(今回選曲をした)滝が言っているんじゃなくておれが勝手に言っている」という感じのことも言っていたような。そのような前置きからの次の曲はコスモス 。バックドロップの双頭の鷲が淡いピンクの照明に照らされ、先ほどまですさまじい轟音を奏でていたとは思えないほど繊細で澄んだ演奏がホールの空間いっぱいに響き渡る。和彦さんが優しい手つきで柔らかなフレーズを弾く様子に目を奪われた。そんな柔らかな雰囲気のまま砂の惑星へ続き、本当にあと何回レア曲に驚かされるのかと静かに喜びながら演奏に耳を傾ける。決して前向きな内容を歌っているわけではない(けれどそこがいい)砂の惑星を、卓郎さんが心から楽しんでいるような笑顔で歌っていたことがライブから数日経った今でも目に焼き付いていて、どうしても上手く言い表せないけれどそういう内容の曲を単純にそこまで楽しんで演奏している様子が大変よかった。

まだ驚愕のレア曲披露は続く。シングル曲でありながら演奏される機会があまり多くない命ノゼンマイでは何ともどろどろとした模様がバックドロップの双頭の鷲を包み照明が青、赤、橙などこの日一番多くの色を使っていたはずなのに全然明るい雰囲気にならずおどろおどろしい雰囲気を作り上げたのが見事だった。その雰囲気の中で卓郎さんの艶のある歌声が空間を支配してゆくかのように広がり圧巻の迫力だった。

命ノゼンマイが創り上げた独特の雰囲気から空間を浄化するかのような澄んだギターの音が次の曲、黒い森の旅人のフレーズを奏でると客席からも穏やかな拍手が起こったが、その拍手も何とも言えない綺麗な響きだった。間奏で卓郎さんと滝さんがギターソロを弾ききった後、5人が逆光で影になるような演出があり、各々の表情は見えなかったがきっとキリッとした表情で演奏しているんだろうなと思いながら観ていると、照明が切り替わった瞬間に強い光の中から見えるようになった和彦さんが今まで見たことないくらい穏やかな笑顔でとても優しげな表情をしていて、驚いたと同時にその表情から目が離せなくなり、心なしか普段よりも気高さを増したような演奏のようにも感じられていたため僅かな間に自分でもよく分からないくらい一気に色々な感情が溢れてしまった。とにかく抜群に良い瞬間だった。

 

The Revolutionaryでは間奏で卓郎さんと滝さんがステージ中央に並んでギターを弾き、そのすぐ後ろで和彦さんと武田さんが向かい合って演奏、それを一番後ろのかみじょうさんが見守るというフォーメーション、から滝さんが勢いよくギター回しを披露したので客席から割れんばかりの大歓声が上がった。アウトロでは熱狂するフロアに同調するかのように上手の滝さんも下手の和彦さんも生き生きとジャンプしていた。和彦さんがThe Revolutionaryで大いに盛り上がったフロアの方を向き、人差し指を口元に持ってきて「静かに」とジェスチャーして客席を静めるので何事かと思ったら上手から滝さんのタッピングの音が聞こえBeautiful Target の演奏へ。滝さんのギターの音を全員が聞き逃さないようにという配慮があったのかもしれないし、こんなに客席とコミュニケーションを取ってくれるんだなと改めて嬉しくなった瞬間でもあった。Beautiful Target 2021年のツアーでも演奏されたがその時には声出しが禁止されていたので、中盤で演奏と客席の掛け合い状態になる部分で思いっきり声を上げることができてとにかく楽しかった。

かつてはお馴染みの流れだったライブ終盤のmarvelousからのTalking Machine、という流れがここで復活!!Talking Machineはイントロに入る前に卓郎さんが客にジャンプを促すところで和彦さんの方を見ると、ジャンプするタイミングで上半身は普通に演奏を続け左足(客席側から見ると右の方)の膝から下を跳ね上げるように動かしていた。毎度滝さんだけがアドリブを入れるところでは何と全員で水戸黄門のテーマソングを演奏し始め卓郎さんが〈歩いてゆくんだしっかりと 自分の道を踏みしめて〉と歌ってからTalking Machineの演奏へ戻り、客席からは大歓声が巻き起こった。客席を大いに躍らせ盛り上がらせこの流れでPunishment…と思いきや本編の最後はHourglassが締めくくった。気のせいかもしれないが昨年リリースされてから毎回のようにライブで演奏されているHourglassがライブの最後に演奏されたのは珍しいのではないかと。〈白い白い生命はこぼれ落ちる砂〉という詞に合わせて客席の壁や天井近くに白い光の粒が描かれそれを見上げながら聴いた。演奏の重厚さを視覚でも表すかのように低い姿勢で演奏していた和彦さんがアウトロに入ったところで突然ベースを置き勢いよくマイクを掴んで力の限りシャウト、からの曲を締めるタイミングでベースのボディを掴んで高く掲げ、客席に背を向けてボディ裏を叩いてみせた姿があまりにも絵になる光景だった。

 

 

アンコールで5人が再び登場。ツアーの中でも「ふるさと納税シリーズ」ではメンバーコラボグッズが何種類か販売されるため卓郎さんが珍しく?物販紹介を始めた。それを聞きながら本編で白いシャツに黒ジャケットだった卓郎さんが滝さんTシャツ(バックプリントに滝さんの機材写真が、袖に双頭の鷲と米のイラストが描かれたタグがついている)の白を、アンコールで着替えることが滅多にない滝さんも本編で着ていたTシャツではなく黒の滝さんTシャツに着替えていた。コラボキャップは被ったり投げたりしてください、と紹介して笑いを誘っていた。この日のライブに合わせ茨城の酒造メーカー明利酒類とコラボした日本酒「泡沫の夜」も販売されたが通販分も会場販売分も早々に売り切れたため卓郎さんが「日本酒完売したらしいよ!」と滝さんに話しかけると滝さんがギターのチョーキングで返事をしていた。

卓郎さんが客席に向かって「滝のセトリはどうでしたか?」と話しかけると客席が大歓声や大きな拍手で卓郎さんに反応を返したが、その中でも一番大きなリアクションで喜びを表していたのはステージ上にいる9mmモバイル名誉会長・武田さんだった。

 

昨年末くらいから声出しできるライブが増えてきて、9mmも今年からはライブの声出しを認めているため「みんなが歌えるようになって歌ってるな~と思った」と卓郎さんが嬉しそうに話した後のアンコール1曲目はOne More Time 、サビでの客の大合唱を聴く卓郎さんの嬉しそうな様子。滝さんは先ほど卓郎さんがキャップを「被ったり投げたりしてください」と言ったことを受けてなのか演奏が始まって割とすぐに被っていたキャップを上手袖に向かってフリスビーのようにぶん投げていた。その後も両腕をぐるぐる動かしたりパンチを繰り出すような動きをしたり、ニコニコと手拍子をしながらステージ中央の卓郎さんに向かって横歩きしてきてあまりにも楽しそうにしていたものだから観ているこちらも幸せな気持ちになった。最後の曲は満を持してのPunishment、この日のPunisumentもすさまじい速さで、〈暴いた生命科学の末路~〉の部分でいつものように爆速で指弾きしていた和彦さんは遂に爆速タッピングまで披露!間奏ではそれまでほとんど後列にいた武田さんも前に出てきて和彦さん、卓郎さん、滝さん、武田さんが並んだ。

 

演奏が終わると滝さんはすぐに上手の袖に引っ込んでしまったが、それだけ全エネルギーを注いでいたのかもしれない。武田さんがフロアに視線を遣りながら上手側から歩いてきて下手の袖へ入っていった。和彦さんは上手側にも挨拶しに行った後に下手に戻ってくると下手の客席にピックを何枚も投げてから退場。卓郎さんも客席のあちこちに挨拶をするといつもの万歳をしようとしてやっぱりやらない、を2回ほど繰り返してから万歳三唱して笑顔で下手の袖へ。かみじょうさんが少し戯けたようなポーズを取りながらゆっくり退場していった。

 

 

ここ最近はずっとそんな感じだけれど、この日もいつも以上に滝さんの暴れっぷりがよくてステージの端まで使って動き回ったり踊ったり手拍子しながらステージ中央まで横歩きしてきたりギターのネックを左右にぶんぶん振ったりギターのボディの端っこを両手で持ってひらひらと扇ぐように動かしたり(滝さんの現行ギターはiPhoneくらい薄い)、とにかくずっと楽しそうに動き回っていた。ギターで扇ぐような動きはボディが薄い滝さんのギターならではの動きだった。和彦さんも(最近また髪の毛が伸びてきていて下を向くと顔が隠れてしまうことが多々あったが)笑顔を見せながら演奏していることが多かったように思えた。

何度かあったMCの際にはほぼ毎回、卓郎さんが話し始める前に滝さんがギターを弾き始め、かみじょうさんや卓郎さんがそれに乗っかってセッションが始まりしばらく演奏したところで滝さんが指揮者が演奏を止める時のように腕を動かしてセッションを終わりにする、ということがあり卓郎さんがどこかのMCで「音を出してからじゃないと喋れなくなって」とコメントするという和やかな時間もあり、各メンバーが楽しそうだったりリラックスしていそうだったりという様子が観られてこちらも本当に楽しかった。

卓郎さんが何かのタイミングで「あと200曲ぐらい聴きたい?でも9mmがリリースした曲100曲ぐらいしかないから2回同じ曲聴くことになっちゃうよね。」笑いを取ってからそれに続けて「でもそのくらいライブがしたかった」と、一時期ライブを制限せざるを得なかった頃から現在再びたくさんできるようになった喜びを語っていた。

 

卓郎さんが「またこの3年間みたいなことがあっても9mmとみんななら乗り越えられるよね」と言っていて、そこまで深い意味は無かったのかもしれないけれど卓郎さんの柔軟さが自然と出ていた言葉だったなと 最近の良くなっているんだか悪くなっているんだかよく分からない状況の中で、また何かが起こったとしてもきっと9mmは今まで経験したことを無駄にせずその時に合った動きができるよと言っているように思えたし、客側も同じ姿勢でいると信じてくれているんだな、と聴いていて勝手ながら少しほっとしたひと言だった。

 

ふるさと納税シリーズ」は3月にはかみじょうさんの地元長野県辰野町でライブが開催され、今回は滝さんの地元茨城県。次回は7月に卓郎さんの地元山形県鶴岡市で開催される。どこかのタイミングで「今日来てくれたみんなは全員山形来てくれるんだよね?」と言って拍手喝采を浴びていた。それぞれの地元で、来たいと思った人がみんな来られるくらいの会場規模のライブを開催できることはやはり嬉しいはずで、3月の辰野と今回の水戸を経て卓郎さんが次回自身の地元・山形公演の開催をより待ちきれないものに思ったのかなと考えると微笑ましかった。

 

卓郎さんが「滝のセトリはどうでしたか?」と客席に向かって問いかけていたが、滝さんの選曲によるセトリは初期曲やライブで長年聴けなかった曲が詰め込まれた、こちらの期待を遥かに上回る驚愕のセトリだった。先行物販に並んでいた時に、音漏れでどの曲か判別できないけれど地鳴りみたいなすさまじい低音が聴こえてきたので今日は一体どの曲をやるんだとびっくりしたがライブ中にセトリを把握して納得した。

近年の9mmはライブで久し振りに演奏する曲を積極的に入れている印象があり、ワンマン毎にレア曲が聴けるという嬉しい状態ではあるが、そんな中でもこの日のセトリのレア度は群を抜いていた。卓郎さんもいつ振りにやったっけ?と言うほど久々だったHeat-Islandを筆頭に卓郎さんがどこかのMCで「久し振りの曲を演奏するとおれたちにもいろいろ降りかかってきて」と言っていたりライブの数日前に和彦さんが「レア曲練習中。しかし昔の曲ってなんでこんな速いんだろな」とツイートしたりしていたのでそれはそうかもしれないが演奏するのも大変なセトリだったんだなと。

かつての9mmはツアーで毎公演のようにセトリをガラッと変えるためツアー中にセトリを見てもネタバレに影響しない、というイメージがあった。開催中の19周年ツアーは自分が行けなかった公演も含めてセトリを見比べると各公演で全然違っていて驚いたと同時に、毎度セトリを変えていた頃の9mmをまた観られるようになったんだなと、ここまでの公演を振り返って改めて嬉しくなった。

       

20230509/9mm Parabellum Bullet “19th Anniversary Tour” @東京キネマ倶楽部

      

結成19周年を迎えた9mmが「9」の付くアニバーサリーイヤーを記念して今年1年かけて開催しているツアーの4公演目。東京キネマ倶楽部はキツネツキがワンマンを開催したり、卓郎さんがSHIKABANEというユニットのワンマンで出演したりしたことはあったが9mmとしては初めてライブを行う会場。そして59日は滝さんの誕生日!

 

ゲストにチャラン・ポ・ランタンの小春さんとももちゃん、fox capture planの岸本亮さん、SOIL&"PIMP"SESSIONSのタブゾンビさん、栗原健さんの出演が事前告知されていた。全員、2020年にリリースされた9mmのトリビュートアルバム「CHAOSMOLOGY」に参加しているためそれぞれがカバーした曲が聴けるのではないかという期待もしながら楽しみにしていた。

 

3桁半ばくらいの整理番号で入場すると、普段は一般開放されていないことが多いステージ上階のバルコニー席の下手側が空いていて、折角なのでそちらで観ることにした。バルコニーが弧を描いている形状のため座ってみるとキネマ倶楽部の特徴でもあるサブステージとそれにつながる階段がかなり近く、その下のステージも普通のライブハウスの2階席とは比べ物にならないほど近くてライブ中はステージ上のメンバー全員がものすごくよく見えた。

 

入場に時間がかかったこともあり定刻から15分ほど過ぎた頃に場内が暗転。豪華で広々とした空間にお馴染みのDigital Hardcoreが鳴り響く様はちょっと不思議な感覚があった。サブステージから登場するのかと思いきやステージの上手と下手に分かれて入場。卓郎さんは白シャツに黒いスーツ、滝さん・和彦さん・武田さんはそれぞれ襟付きの黒シャツだっただろうか、かみじょうさんは黒っぽいシャツにネクタイといういで立ちで、全員いつもより少しフォーマルな雰囲気。

 

Cold Edge

One More Time

白夜の日々

シベリアンバード〜涙の渡り鳥〜

Scarlet Shoes

泡沫

どうにもとまらない (w/チャラン・ポ・ランタン)

名もなきヒーロー (w/チャラン・ポ・ランタン)

ガラスの街のアリス (w/岸本亮)

生命のワルツ (w/岸本亮)

黒い森の旅人 (w/タブゾンビ&栗原健)

反逆のマーチ (w/タブゾンビ&栗原健)

スタンドバイミー

ロング・グッドバイ

新しい光

Supernova

Talking Machine

煙の街

 

Black Market Blues  (全員)

ハートに火をつけて (全員)

 

 

Cold Edgeからライブがスタート。自分がライブでCold Edgeを聞けたのは意外と久し振りだった。特別な会場でもいつも通りの9mmで、イントロから客の拳と歓声が元気よく上がる幕開け、間奏では和彦さんが「キネマーー!!」と叫んでいた。One More Timeではサビで卓郎さんがマイクから離れ客の合唱を煽ると、歌声が返ってくる客席を嬉しそうな笑顔で見ていた。

ステージが眩い白い光に包まれた白夜の日々、2回目のサビで卓郎さんが〈君に会いに来たぞー!〉と歌っていた。最後のサビの〈君に会いに行くよ〉の部分では和彦さんが、ステージ上階のバルコニー席にも音が聞こえるくらい強く自らの左胸のあたりをパンパンと叩いていた。歌わずとも、言葉は発さずとも客席に向かって会いに来たぞ!と言ってくれていたんだろうか。昨年のツアーからしばらくの間、One More Timeの後にBlack Market Bluesを繋げるパターンが続いていたところだったのでOne More Timeから白夜の日々に続いたのはちょっと意表を突かれた流れだった。

 

卓郎さんが久し振りの曲をやります、というような前振りをしてから演奏されたのが最後にライブでいつ聴いたか覚えていないくらい久々のシベリアンバード〜涙の渡り鳥〜、久々なのに客席ではイントロに合いの手を入れるようにたくさんの歓声と拳が上がり、かなりの盛り上がりだった。昨年、アルバム「Dawning」の曲が多めに演奏されたライブがあったがその際にもシベリアンバードは演奏されなかったのでようやく聴けた!!と嬉しさでいっぱいになりながら聴いていた。和彦さんが〈胸にナイフを刺したまま〉の一節をそのまま表現するかのように自分の拳を左胸に当てる瞬間があった。

それに続いたのがScarlet Shoesという「Dawning」繋がりの選曲!曲名に合わせるかのようにステージが真っ赤に染まり、情熱的な曲調もキネマ倶楽部の雰囲気にぴったりだった。間奏でギターにオートワウをかけフワフワと不思議な音を出しながらソロを弾く滝さんの手さばきの美しさが記憶に強く残っている。

 

そんなレア曲2連発に続いたのは泡沫。先ほどまで真っ赤だった空間全体、高い天井のところまで澄んだ青に染まり、ステージにいる5人が本当に水の底にいるかのように見えた。サビでは切実な思いを表すかのように強い歌声で、それ以外の部分は柔らかな歌声と歌い方を分ける卓郎さんの表現力に毎度強く惹き込まれる。中盤の〈どうしてどうして どうして〉からの部分で一際テンポが遅くなり演奏の重たさが増していくのに比例して和彦さんが徐々に低く体を屈めながらベースを弾いていて、視覚からも曲展開が重たくなっていく様を味わうことができた。

 

このあたりだったか、そろそろMCに入るかなという空気になると滝さんがギターを弾き始め、かみじょうさんがそれに乗っかりセッションが始まるなどいい雰囲気。またこのタイミングだったと思うが卓郎さんがキネマ倶楽部でのワンマンが初めてであることに触れ、9mmはキネマ倶楽部似合ってますか?というようなことを客席に問いかけていた。メロディーに歌謡曲っぽさがあるシベリアンバードやScarlet Shoesが会場の雰囲気にあまりにもぴったりだったので言わずもがなお似合いだった。そんな話をしながら、卓郎さんがゲストを呼ぶことを匂わせたり「すぐに終わっちゃいそうだからまだ呼びたくない」と勿体ぶったりしつつ、いよいよゲストが呼び込まれた。

 

最初のゲストはチャラン・ポ・ランタン。おそろいの青いワンピースを着たももちゃんと小春さんがサブステージに登場、揃って階段を下りてステージへ。

おふたりを迎えての1曲目はどうにもとまらない、ただでさえ久し振りにライブで聴けた曲なのに更に小春さんのアコーディオン、ももちゃんのパワフルな歌声、そしてキネマ倶楽部の雰囲気が加わった最高の選曲だった。ももちゃんが歌っている間には卓郎さんがマラカスを手に取り楽しそうに振っていた。

 

20209月に9mmが無観客ライブを行い、その際にチャランポがゲスト出演したのでその際の思い出話が出てきた。その時は無観客だった、とかその日は雨が降っていたね、など。

MC中にセッションが起こりがちな9mmについて、ももちゃんが「喋ると楽器がお返事してくれる!」と珍しそうに言うと卓郎さんが森みたいでしょ、とももちゃんに返し滝さんとかみじょうさんがセッションを始めるという微笑ましい場面もあった。

次の曲でチャランポがCHAOSMOLOGYでカバーしたハートに火をつけて が来るかなと思いきや演奏が始まったのは名もなきヒーロー、まさかチャランポがこの曲を歌ってくれるとは!アコーディオンの音色も絶妙に似合っていた。最後のサビで下手側からももちゃん、卓郎さん、小春さん、滝さんが一列に並んで4人揃って歌声を重ねた部分は特に堪らないかっこよさがあった。どうにもとまらない も名もなきヒーローもあまりにも予想外の選曲だったので本当に驚かされた。

 

ももちゃんと小春さんが退場し2組目のゲスト、fox capture planの岸本亮さんが呼び込まれると同じくサブステージから登場。メルテンさんも落ち着いた色のスーツを着ておりフォーマルな雰囲気。

チャランポのおふたりと同じく2020年の無観客配信ライブに出演されその時にはメルテンさん・和彦さん・かみじょうさんのトリオでガラスの街のアリスを、fox capture planCHAOSMOLOGYでカバーしたアレンジで演奏したのでその時のことを話題に出しつつこの後にお楽しみがとまた匂わせてから演奏が始まった曲はやはりガラスの街のアリス。今回は原曲のアレンジでの演奏。ピアノの音色が入りシャープさとどこか儚げな雰囲気が増した演奏がものすごく素敵だった。

 

2曲目はメルテンさんが見事なソロを披露し始めたと思ったら生命のワルツのイントロ、音源だとアコギで弾いている部分をピアノで弾くという贅沢なアレンジ。こちらの曲では主にピアノの低音を分厚く重ねたりちょっと不穏な響きのコードを忍ばせたりして曲に更なる重厚感を加えていた。アウトロでの速弾きも圧巻で、演奏が終わるといつの間にかメルテンさんの眼鏡がどこかへ消えていたほどの熱演ぶりだった。

 

メルテンさんが退場しフロア全体が暗くなる中、サブステージに人の気配を感じたのでそちらを見ると最後のゲスト、タブゾンビさん&栗原さんが出てきていた。暗転の中おふたりが演奏し始めたのは黒い森の旅人 の、CHAOSMOLOGYでキツネツキとともにカバーしたアレンジの出だしの部分で、演奏しながら階段を下りてステージへ。そのままカバー版のアレンジに入るかと思いきやそこから原曲版のイントロへ繋いだ。タブゾンビさんと栗原さんが揃ってお立ち台に上がって演奏、その間片手でトランペットを持って演奏するタブゾンビさんのスタイルはとても目を惹くものだった。栗原さんは曲中、隣にいる和彦さんと同じ動きをしてみせる瞬間もあった。ホーンが入ることでかなり熱いアレンジになっていてお馴染みの曲でありながらも新鮮味があった。間奏の、最後のサビ前の間部分で鳴らされたトランペットの音は歌詞にも出てくる〈朝焼け〉のイメージにあまりにもぴったりで清々しさがあった。

 

9mmSOIL9mmがデビューした頃、SHIBUYA-AXSHIBUYA-BOXXだったかで既に対バン経験があったそう。2019年のRSRでは9mmとタブゾンビさん&栗原さんが共演するはずだったが台風で中止になってしまったので、この日ようやく共演できたというような話も(是非ともRSRでの共演リベンジも果たして欲しい)

この日タブゾンビさんはモノトーンの柄物の衣装にゴールドのネックレスをたくさん付けており、栗原さんは赤い柄物のジャケットを羽織っているといういで立ちだった。卓郎さん曰く「今日は(衣装を)フォーマルで、黒でお願いしていて、楽屋でも大丈夫だと仰っていたんですけど。」ということだったらしいが始まってみたらお二人とも衣装が柄物!ということだったらしい。タブゾンビさんが「金色も黒の一種だから。」と返答して笑いを取っていた。話の流れは失念してしまったがトリビュートにまつわる話だったか、「ツェーデー、いやCDね、あっちのほうが長いもんで鹿児島。何すか?」と軽快に話すなどトークも軽快でもう少し聞いていたかったなと思わされた。それと、MC中はおふたりとも普通のマイクではなくトランペットやサックスに付けられたマイクを使って話していてそういう使い方もあるのかと。お二人の話を聞いていた卓郎さんがずっとニコニコしていて楽しそうな様子だったのも観ていて嬉しかった。

トークでも楽しく盛り上がったところでコラボ2曲目は反逆のマーチ。あの曲調にホーンが合わないわけがない!真っ赤に染まったステージでの演奏、そして普段よりも勇ましさが増したようなアレンジがぴったりでとんでもなくかっこよかった。

 

盛りだくさんのゲストパートが終わると卓郎さんが、ゲストを迎えて演奏すると毎回「おれたちに足りないものはこれだったんだ」と思う、と話していた。

ここからは再び5人での演奏。これも久し振りにライブで聴けたスタンドバイミー、天井が高いキネマ倶楽部が曲の開放感にとても合っていたのがよかった。続いてロング・グッドバイ、滝さんのタッピングからストロボのように強く点滅する照明の中勢いよくイントロへなだれ込む流れに高揚感を煽られる。ここからは普段の9mmライブらしい曲が並び、新しい光では中盤のサビの後、いつものライブハウスより少しコンパクトなステージで和彦さん、卓郎さん、武田さんがステージ中央のかみじょうさんを囲うようにギュッと集まってフォーメーションを組んでいた。滝さんと和彦さんが大きく動き回っていたSupernovaからTalking Machineへ続く流れで更に盛り上がるフロア。2番の「ああ 何べんやっても」で和彦さんが上手の滝さんの方を確認しタイミングを窺う様子が見え、サビに入る直前に見事に滝さんと同時にジャンプしてみせた。

 

ここまでフロアを存分に躍らせた直後、暗くなったフロアに聞き覚えのあるアンビエント的なサウンドが流れ何となく怪しげな雰囲気に包まれたところで卓郎さんが歌い始めたのは、煙の街。Talking Machineの直後に持ってくることで強烈なインパクトがあった。暗めの照明の中演奏が続き終盤の〈茜色に染まる部屋でした〉の部分でステージがパッと歌詞通りの茜色に。空間全体が何とも言えない空気に包まれる中すっぱりと音を切って何とこれで本編が終わり、5人が順番にステージ袖へ消えていった。

 

アンコールの手拍子が鳴り響く中再び9mmと武田さんがステージへ(サブステージではなく再びステージ袖からの登場)、続けてゲストの皆様がサブステージから登場。次々にステージへ降りていく中タブゾンビさんと栗原さんは階段を下りながらハッピーバースデーの曲を演奏し始めそのままももちゃんと小春さんが歌を入れ他の出演者もセッションに加わるという何とも贅沢なお祝い!卓郎さんから滝さんへ誕生日ケーキではなくうまい棒をたくさん束ねてホールケーキのような形にしたものと、何らかのお酒が渡された。「誕生日は年の数だけうまい棒を食べるんだよね」と卓郎さんが言っていたので滝さんへプレゼントされたうまい棒は年齢にちなみ40本だったよう。

 

「完全体9mm!」と卓郎さんが宣言して遂に9mm4人に武田さん、ももちゃんと小春さん、メルテンさん、タブゾンビさんに栗原さんと総勢10名での演奏へ!1曲目はBlack Market Bluesで卓郎さんとももちゃんが交互に歌ったり、滝さんはギターを弾かない部分ではお酒を飲んだり、右手と左手で交互にパンチを繰り出すように踊ったり、またお酒を飲んで曲中に2本目の缶に手を付けようとしたりしていた。もう完全にお祭り騒ぎといった様子のステージ。〈迷える子羊たちが~〉の部分や最後のサビ前で演奏の音が少し控えめになる部分ではメルテンさんのピアノの音がかなり効いていた。

この日最後の曲、ここで満を持して演奏されたのがハートに火をつけて!間奏では滝さんがギターソロを弾き切るとそのまま卓郎さんが声掛けをしながら小春さん→メルテンさん→タブゾンビさん栗原さん、と順番にソロ回しを繋いでいく。栗原さんで終わりかと思いきや最後にかみじょうさんがソロを披露!滝さんは自分のソロパートが終わるとギターを置いて、缶片手に楽しそうに踊っていた。

 

演奏が終わりステージ上のメンバーが順番に退場、ステージに残った和彦さんが客席にピックを何枚も投げる。バルコニー席にも投げ入れようとしたが届かず、それでも何回もバルコニー席めがけてピックを投げてくれた。残念ながら一度も届かなかったが、頑張れば届きそうなくらいにはステージとバルコニー席は近かったので一枚だけでも入れたかったんだろうなとも思ったし、どうにかしてバルコニー席の客にもピックを渡そうとしてくれていたようにも感じられてそのお気持ちだけでとても嬉しかった。最後までステージに残っていた卓郎さんがいつもの万歳三唱をしてから笑顔でステージを後にした。

 

 

予想以上に豪華なコラボ、贅沢で意外な選曲が盛りだくさんでとにかく楽しかった。何よりも出演者が全員あまりにも楽しそうにしていて、それを見ているだけで幸せな気持ちになった。もはやどの曲のどの部分かなどは細かく覚えていないけれど、和彦さんもかみじょうさんも笑顔を見せていた瞬間が普段より多く、武田さんもすごく嬉しそうな笑顔を浮かべていた時があり、卓郎さんはゲストパートでずっとニコニコしていて、滝さんは色々な曲で飛び跳ねたり暴れ回ったり踊りまくったりしていた。

 

中にいるだけで普段とは一味違った内装や雰囲気を楽しむことができる東京キネマ倶楽部は個人的にもかなり好きな会場で、その中でも一際特徴的なサブステージ、ここを9mmがどのように使うのだろうかというのが一番楽しみにしていたことだった。ゲストの方々はここから登場したり演奏したりとサブステージを存分に使っていたが9mm4人と武田さんはサブステージを一度も使わなかった。今回はゲストの方々に優先的に使ってもらおうという配慮だったのだろうか。

 

レトロで豪華な内装が特徴の会場であることと、この日はスタンディングではなく座席が用意されていたこともありお洒落して来場する客も多く見られたことも普段のライブとは違った雰囲気でよかった。MCで卓郎さんが次はドレスコード有りのライブもやりたいねというような話もしていたので、その時にはサブステージを存分に使う9mmが観られるのではないかという期待も込めつつまたここで9mmがフォーマルな装いでライブをやってくれるのを今から楽しみに待っている。

20230409/9mm Parabellum Bullet “19th Anniversary Tour” @F.A.D YOKOHAMA

       

9mm Parabellum Bullet 祝結成19周年!「9」が付くアニバーサリーイヤーを記念して今年1年かけて開催されるツアーの3公演目。会場は9mm結成の地・横浜にあり9mmが結成当初より出演しているなど縁深いF.A.D

 

この公演はマスクを着用して隣の人と会話する程度の声量で歌ったり一時的に声を出したりすることは可能と事前に告知があり、当日入場開始前にもマスク必須の旨がスタッフさんからアナウンスされていたので個人的にはちょっと安心して参加することができた。

自分の整理番号はかなり後の方で、入場するとフロアがほぼ人で埋まっていて奥に進めなかったほど。元々前に行くつもりはなかったのでそのまま入口付近に場所を取った。こんなに人でいっぱいになった小箱を見たのはこのご時世になってから初めてで、開場前にマスク着用必須や上着等を預けてから入場するように、とアナウンスがあったことも納得の客入り。スタッフさんが客にできるだけ前へ詰めるよう案内しどうにか最後に入ってきた人まで場内におさまった。

入場に時間がかかったこともあり定刻より10分ほど過ぎてから客電が落ちると自分の数列前にいた人達が一斉に少し前へ動いたので、その光景に3年前までのライブを思い出して懐かしい気持ちになった。

 

 

少年の声

interceptor

One More Time

Black Market Blues

Answer And Answer

Termination

Tear

タイトロープ

荒地

Vampiregirl

Sleepwalk

R.I.N.O.

mervelous

Beautiful Target

sector

新しい光

All We Need Is Summer Day

Talking Machine

 

ハートに火をつけて

(teenage)Disaster

The Revolutionary

Punishment

 

満員になると後方からはステージが全く見えないでお馴染みのF.A.D、やはり後方は人の頭の隙間から辛うじてバックドロップの端や卓郎さんの頭が見えるかどうか、という視界。

リリースツアーではないためセトリ確定曲がないツアー、1曲目は何かと身構えていたらいきなり少年の声でフロアから早速歓声が上がった。場所柄初期曲も入るだろうなとは思っていたがまさか初っ端から!2曲目もinterceptorで初期曲が続くというとんでもない流れにびっくり。少年の声とinterceptorどちらも卓郎さんが柔らかめの歌声で歌い上げていた。インディーズ期はリアルタイムで聴いていたわけではないが自分が9mmに出会った頃を思い出しながら聴いているとそれに続いたのが最新曲のOne More Timeだったので十数年前から現在に時間が一気に進んだような感覚になった。声出し可なのでサビでは卓郎さんが歌うのをやめることで客に声出しを促し、フロア全体で歌声を合わせることができて楽しかった。そこからBlack Market Bluesに繋げる流れは昨年のツアーから披露され続けているもので、シームレスに曲が替わるの聴いていて大変気持ち良い。

 

ここで最初のMC。卓郎さんの第一声は具合が悪くなったら無理せず(スペースのある場所?端の方?)へ行ってねというような気遣いの言葉だった。前方の様子は全く分からなかったが、この時点でかなりの熱気だったことが窺えた。

この日セトリを組むにあたり、F.A.Dのスタッフさんにリクエストを募ったことを話し、でもその前にもうひと盛り上がり的な話があったような。

 

その言葉通りAnswer And Answerで更に盛り上がるフロア。2番に入ったあたりで滝さんがお立ち台に上がったようで滝さんの肩から上あたりが見え、元気にギターのペグあたりの弦を掻き鳴らす瞬間を見ることができた。Terminationではここでもサビで以前よりは控えめな声量ながらフロア全体で大合唱できて感慨深い気持ちになった。

ハイハットで慎重にカウントする音が聴こえると次に演奏が始まったのはTear、初めて聴いた時にAメロ・Bメロ・サビの境界線がはっきりしていないところが初期9mm曲っぽいと思っていたのでF.A.Dで演奏されるのがぴったりな印象。次の曲はタイトロープ、と最新アルバムの曲が並んだ。リリースツアー時に大箱で聴いた時とまた印象が違い、音や振動が近い分この曲が持つ緊張感が増したような気がして、心地よいヒリヒリ感を全身で受け止め存分に味わった。Tearもタイトロープもリリースツアーが終わったのでセトリに入る機会が減るかもしれないと思っていたのでこの2曲、特に個人的にアルバムTIGHTROPEの中でもかなり気に入っているタイトロープを聴けたのはものすごく嬉しかった。馴染みのF.A.Dで凱旋の意味も込めて最新の曲たちも鳴らしたかったのかもしれないな、と勝手に考えながら聴いていた。

 

ここでまたMC。卓郎さんが話し始める前に少しセッションのような演奏が繰り広げられたのはフロアの熱気を落ち着かせるためだったのか。ここでいよいよF.A.Dのスタッフさんからのリクエスト曲を演奏するパートへ。きっと狙っていたんだろうなと思ったが、リクエストパートが始まるこのタイミングが、9曲目だった。

 

フロアの期待を大いに煽ったリクエストパートは荒地から始まった。イントロでまた歓喜の大歓声、自分も驚きでつい声を漏らした。このあたりでは卓郎さんの頭すら全く見えなくなったので聴くことに集中、9mmの中でも特に好きな歌詞のひとつである〈枯れた花のために ささやかな祈りの雨を〉を卓郎さんがしなやかに歌い上げる様にしっかりと耳を傾けた。続いての曲はVampiregirl、間奏のギターソロではこの日サポートで入っていた爲川さんがステージ前方まで出てきたようで初めてその姿を見ることができた。爲川さんが見えたのは結局このタイミングだけだったが、滝さんの側まで来て笑顔で演奏する爲川さんが一瞬でも見られて良かった。この後のMCで卓郎さんが爲川さんをVampiregirlで前に出てきたけれど今日はステージ上の小部屋みたいなところで弾いていますと改めて紹介していた。ステージ上の、スピーカー裏あたりのことを指していたのだろうか。定番曲のVampiregirlで楽しく盛り上がったところにSleepwalkというまたとんでもないレア曲を投下。卓郎さんの段々囁き声になってゆく〈無駄遣い〉を聴くためのフロアの一瞬の静寂、からの大歓声という盛り上がり方は何度聴いてもやはり良い。

 

このあたりでまた少し長めにセッション的演奏が入った。周りの人と少し隙間があった後方でさえこの時には段々と暑くなり始め、フロアの熱を逃すため遂にスタッフさんが入口に付いて扉の開閉を始めた。この時だったかもう少し後のタイミングだったか失念してしまったが卓郎さんがオフマイクでフロアに何か話しており自分は聴こえなかったが、その後マイクに乗せて「マスクを付けている方が危ないんじゃないか」というようなことを言っていたので前方は熱と酸欠で大変な状態だったのかもしれない。「道開けてください!」というスタッフさんの声や前方から汗だくで後方へ退避する人もいて、同じくこのタイミングだったか失念してしまったが卓郎さんが「F.A.Dの中にいれば9mmの曲は届くから」と気遣いの言葉をかけていた。

 

まだまだ続くリクエストパート、イントロでこの日一番驚愕の声を上げてしまったのがR.I.N.O. 何年振りのセトリ入りだろうか?夢でも見ているのかと思うほどの選曲、ステージは見えないながらも熱狂する客の無数の拳を見ながら演奏の熱演ぶりを楽しんだ。次は初期曲でありそこそこレアな曲mervelousで、イントロではこちらから見る限りフロアで手拍子する人と拳を挙げる人が混在していて自由に楽しんでいる、という様子で良かった。多分この時だったかと思うが中盤でお立ち台に上った滝さんがギターを弾かずに天井のパイプ?を掴み拳を振り上げながら大口を開けて歌う瞬間が見られてこちらもめちゃくちゃテンションが上がった。2年前の再現ライブで演奏されたとはいえこちらもなかなかのレア曲であるBeautiful Targetでは2年前と違い声出し可能になったことで演奏と声出しの掛け合いパートで思いっきり声を上げることができた。

リクエストパートの最後を飾ったsectorは、この日は立ち会えなかった9mmに縁のあるPAの方のリクエストだったとのこと。2004年〜2005年頃、マスクは付けているけれどあの頃にタイムスリップしてくれますかと直前のMCで卓郎さんが言っていた。イントロが鳴った瞬間の無敵感は凄まじく、これでライブが終わってもおかしくないというほどのクライマックス感があった。

sectorで後方まで灼熱になるほどの盛り上がりからそのまま新しい光、サビ前でここでも合唱が巻き起こったAll We Need Is Summer Dayはフロアのあまりの暑さに去年ロッキンで灼熱の中この曲を聴いた時のことを思い出しひと足先に夏を感じたような気持ちになった。本編の最後はTalking Machine、この曲が本編を締めるのはちょっと珍しい気がする。卓郎さんが「踊れーー!!」とフロアを煽りまくり、後方でほぼ動かずにライブを聴いていた自分もこの時ばかりは前方へ突っ込んで行きたくなった。

 

演奏が終わりアンコールの手拍子が始まる中、前方から何人も汗だくの人達が後方へ下がってきたので後方もかなりぎゅうぎゅうになった。体を冷やすために開放された扉から少し外へ出てアンコール待ちをする人もいて改めて前方がどれほどの熱気だったかを察した。

 

しばらくするとメンバーが再びステージに登場したようで、卓郎さんが事情によりアンコールをいつもより長めにやりますと宣言してから再び演奏へ。ハートに火をつけて では「灰にならないかFAD〜〜!!」「手触りだけのFADは」と歌詞を変えて歌っていた。ここでも初期曲(teenage)Disasterを投下し選曲からもクライマックス感が出ていたがまだまだアンコールは終わらずThe Revolutionaryへ続き、アンコールの最後はPunishmentが締めた。人が密集し全く動けなくなり棒立ちの状態で、容赦なく体を撃ち抜くようなバスドラ連打の振動を受け止め続けた。

メンバー退場もほぼ見えなかったが、和彦さんと卓郎さんはステージ前方まで出てきたのかお立ち台に上がったのか、それぞれ一瞬だけその姿を見ることができた。周りに合わせながら声を出せるようになった万歳三唱に参加し、卓郎さんがフロアへありがとうと声をかけてライブが終わった。その後もかなり長い時間アンコールの手拍子が鳴り止まなかった。

ダブルアンコールはなかったので拍手がおさまるのを待って出口へ向かうと先ほどまでステージ上でギターを弾いていたはずの爲川さんが出口のすぐそばにいて自身のバンド・folcaのフライヤーを配っていたのでお礼の言葉を述べながらフライヤーを頂いた。512日にワンマンライブを開催するとのこと。

 

 

久々のフルキャパのFAD、後列からは想定通りステージはほとんど見えず、更に自分のいた位置はステージ上、中央あたりにあったライトが目を直撃しあまりの眩しさに目を瞑っていた時間も長かった。だからこそ逆に100%音だけに集中できて単純に音の良さや、前列が盛り上がった時に床を伝ってくる振動や体の真ん中を撃ち抜くようなバスドラの振動など、視覚以外をフルに使って楽しむことができた。ほぼ視覚を捨てて音だけに集中したことで、初期の曲を聴けば「9mmに出会ったタイミングで当時の既存曲を必死に追った学生の頃」を思い出し、他の曲も「あの時のこの公演で聴いたのが大変良かったな」など曲に紐付いた思い出が次から次へと頭の中に出てきたので新旧織り混ざった選曲を聴きながら勝手に色々な年代を行ったり来たりしていた。

ステージほぼ見えなかったけれど、それでも卓郎さんも滝さんも和彦さんも長身、かつお立ち台に上ったらしきタイミングがあり、何度か頭が見えたのは良かった。

 

ここまでに何度も言及したがフロアがパンパンだった分フロアの暑さも半端なく、ここ3年程そこそこの人口密度で快適にライブを観ていたのでこの感覚も、熱気で天井の空調から水が滴るのを見たのも実に久し振りだった。卓郎さんが何度もフロアを気遣い声をかけていたがステージも相当暑かったんだろうなと。

事情によりアンコールを長めにやる、と言っていたが一刻も早くフロアの換気をして熱を逃すために本来なら本編でやるはずの曲をアンコールに移したのでは?とまで考えてしまった。そんなに簡単に構成を変えるはずないとも思いつつあまりの暑さと、Talking Machine終わりでハートに火をつけてと(teenage)Disasterを持ってきても違和感がないな、とも思ったので。もしくは映像化の予定があってディスク1枚におさまる長さにしたという可能性もあるだろうか。

 

9mmが結成初期から出演していたF.A.Dでの開催とリクエスト枠のおかげで初期曲や本当に何年振りにライブで聴いたか分からないほどのR.I.N.O.が聴けたとんでもないセトリ。中盤のMCで、卓郎さんが9mmがここで初めてライブした時の1曲目が少年の声だったのでその時の気まずさを味わってもらおうと思ったが存外盛り上がった、と言っていた。そりゃ盛り上がらないわけがないじゃないですか!

 

12月まで続くツアー、まだ会場が告知されていない日程もある。ツアーグッズのTシャツは会場が告知解禁されたらそのタイミングで販売されるTシャツの背中のプリントも更新されるシステムになっており、卓郎さんが着ていたのは919日に開催される武道館公演の日程も解禁されていない時に販売されたバージョンのレアなやつだったそう(Tシャツ販売開始直後のもの)。武道館公演開催にあたりリクエストも受け付けたので今回のライブのようなセトリになるだろうとこちらの期待を更に煽るようなひと言もあり、益々ツアーの続きが楽しみになった。

 

追記
4
19日の生配信YouTube Liveカオスの百年 Vol.21”にて卓郎さんと和彦さんよりリクエスト曲の内訳についての話がありました。
F.A.D
スタッフさんからのリクエストが荒地、VampiregirlR.I.N.O.PAさんからのリクエストがSleepwalkmervelousBeautiful Targetsectorとのこと。

実はF.A.Dのスタッフさんで1人だけリクエストを聞きそびれてしまった方がいたらしいですが、その方がリクエストしたかったのが偶然セトリに入っていたハートに火をつけてだったのでよかった、という話もありました。

 

20221002/9mm Parabellum Bullet“Walk a Tightrope Tour 2022”@Zepp Haneda

      

9mmの記念すべき“9枚目”のアルバム「TIGHTROPE」リリースツアーのセミファイナル、東京公演。

今回のツアーは会場によって立見だったり自由席だったりと形式が異なり、羽田公演の1階は立見。近年スタンディング形式だと立ち位置がマス目やマークで指定されることが多かったがこの日はそのようなものはなく、客の判断で周りの人とぶつからないように場所を取るスタイルだった。元々2400人が入るというZepp Hanedaの1階、フルキャパとはいかないまでも整理番号1000番台が存在していたため近年のスタンディング形式のライブの中でもかなり客を入れられるようになったことが伺えた。そこそこの整理番号だった自分が入場すると上手側の段差の上がまだ埋まっていない状態だったのでそこから観ることにした。前の人の頭の間からステージがちょうど見える位置。開演時間が近付くにつれ1階はここ3年間で見たこともないほどたくさんの人で埋まった。

 

今回の会場でも仙台公演と同様、ステージには初めから今回のツアー用のバックドロップ(TIGHTROPEのジャケットに似たデザインの柄にバンド名とツアータイトルが印刷されている)が掲げられていて、天井の照明機材の骨組みを利用して9本のロープがゆるい懸垂線を描くように結ばれており、真ん中の1本だけは赤色でステージのバックドロップ右横まで繋がって垂らされていた。各会場の構造によってロープの飾り方が変わるようで、仙台ではフロア前半分の頭上に飾られていたが羽田はフロア前方あたりの天井にある照明機材の骨組みから2階席の柵を利用してフロアほぼ全体にロープを行き渡らせてあった。ライブでバックドロップ以外の装飾物を使うことがあまり多くはなかった9mmが今回は会場に本物のロープを飾るほど、TIGHTROPEの世界を再現するにあたっての気合を感じた。

開場中に2回ほど諸注意のアナウンスがあり「ロープの装飾がありますがお手を触れないようにお願いします」との注意もあったが、ロープの1番低い部分は確かにかなり長身の人が思いっきり手を伸ばせば触れられるだろうか?と思えなくもない高さではあった。

 

ほぼ定刻に場内が暗転すると普段SEで流れるDigital Hardcoreではなく、このツアーのために制作されたであろうダークなアンビエント的インスト曲が流れ、紫から青色に変化したような色のスポットライト数本がランダムに動く以外は薄暗いままのステージに卓郎さん、滝さん、和彦さん、武田さん、かみじょうさんがステージに登場。

 

Hourglass

All We Need Is Summer Day

Supernova

反逆のマーチ

Psychopolis

悪いクスリ

白夜の日々

インフェルノ

夏が続くから

Spirit Explosion

Cold Edge

淡雪

Tear

タイトロープ

キャンドルの灯を

The World

One More Time

Black Market  Blues

Termination

泡沫

煙の街

 

キャリーオン

Talking Machine

 

TIGHTROPEの1曲目、Hourglassでライブの幕が開けた。イントロのクリーンパートは音源を流していたようでそれに徐々に音を乗せて演奏に繋げていた。キャップを被って登場していた滝さんは気付けば曲の中盤にはもうキャップを被っておらず、見逃した間にキャップをすぐ吹っ飛ばすほど動き回っていたらしいということが伺えた。サビでは細かい光線が天井に白い点を描き〈こぼれ落ちる砂〉を見事に出現させた。卓郎さんが早くも「東京!」と煽りAll We Need Is Summer Dayへ。〈All We Need Is Summer Day〉のコーラス部分は音源の歌声を流しているようだったが、それに埋もれないくらい大きな声で滝さんが歌っていたのがまるでまだ声の出せない客全員の分を背負って歌ってくれていたかのように思えた。サビに入る直前にはかみじょうさんを一瞬スポットライトが照らし見せ場を逃さない。サビ後のベースソロのような部分では和彦さんがちょっと前に出てきていたのか、上手側からもその時の勇姿をしっかりと観ることができた。淡い黄色の照明が夏の日差しのように明るく降り注ぐ中、卓郎さんの溌剌とした歌声が強く響いた。

次の曲はSupernova、〈十万度の太陽を〜〉の部分に入るとランダムに動いていたスポットライトが卓郎さんの上あたりに集まって交差し、歪な星のようにも見える模様を描いた。サビ前までのどこか儚さを感じさせるようなメロディーを経てサビに入った瞬間の爆発力は凄まじく、終盤には滝さん・和彦さんの動きも一際大きくなっていた。卓郎さんが〈流れ星の最期〉の語尾をビブラートかけて長めに歌声を伸ばしていた僅かな瞬間が忘れられないほど美しかった。今までだっていつ聴いても毎回良い演奏だと思っていたがこのツアーでのSupernovaの演奏は今までよりも更に貫禄を増していて化け物のような存在感を放っていた。続いては反逆のマーチ、赤と白の照明が威勢よく点滅する中元気いっぱいに跳ねるような演奏、滝さんも軽やかにステップを踏んでいたように見えた。間奏で滝さんがギターでピュンピュンと効果音を入れ、卓郎さんは〈闘ってるんだろ “東京のみんなも”!!〉と歌った。7年前の曲だけれど、歌詞の一言一句が全世界的な困難を乗り越えようとしている今の状況にぴったりで納得のセトリ入りだと思うと同時に、この状況下でまだ疲弊している心を奮い立たせてくれたようで嬉しかった。

 

ここで最初のMC。今回のセトリについてアルバムTIGHTROPEが35分しかないので、今回はアルバム以外の曲の方が多いかもしれないと言及していた。確かに90分あまりのセトリを組んだとしても3分の1しか埋まらないくらいの長さだなと。

9月17日の福岡公演が台風で中止になってしまったため、この日のライブは急遽生配信されており、会場にいる人だけでなく全国の人達がライブを観ている状況だった。なので卓郎さんは全国で生配信を観ている人達にも呼びかけつつ「今だけはみんなのこと福岡だと煽っていいですか?」と言ってから曲に入る前に「いけるか!福岡!!!」

 

福岡で配信を見ている人達への熱いメッセージからPsychopolisへ、序盤から武田さんが頭を激しく振りながら演奏していてかなりテンションが上がっていることが伺えた。天井近くにあったLEDライトが右から左へ円い形の赤い光を点灯しては消えてゆく様子が煌びやかで素敵な演出。仙台と同様、アウトロの最後の1小節は演奏せずすかさず次の曲、悪いクスリのイントロのベースが入りスムーズな繋ぎで引き続き演奏へ。歌詞を“ミルク”ではなく〈“何かを入れた”コーヒーで〉と変えて歌っていた。どっしりとしたリズムに飄々としたメロディーとこちらを惑わせるかのような歌詞、バックドロップに映された蜘蛛の巣のような模様やサビでフロア両壁に散らされた三枚羽根のプロペラのような模様の演出がこちらを奇妙な夢の世界に迷い込ませるような雰囲気がありそれに包まれる時間を目一杯楽しんだ。そんな不思議な空気を一瞬で吹き飛ばすような真っ白で眩い照明がステージを包み込んだ白夜の日々。リリースされた2年前はライブの開催が危うかったり規制が今より多かったりした頃で、その時には歌詞のすべてが、特に〈君に会いに行くよ〉の一節がささやかな祈りのように感じられたが今では確実さををもった約束のように頼もしく聞こえてきてグッとくるものがあった。卓郎さんも歌詞を〈君に“会いに来たぞーー!!”〉と変えて歌ってくれていた。そこから短い演奏時間にエネルギーを爆発させるかのようなインフェルノへ。〈終わりのない夜を越えて命を燃やし尽くせ〉の一節も、今の状況で聴くとより一層頼もしさを感じさせた。

 

ステージが暗転すると卓郎さんと滝さんがギターを持ち替える。ステージが明るくなるとアコギを構えた卓郎さんとエレガットを構えた滝さんがそこにいた。それを見た瞬間に次の曲を察してそわそわしてしまう。

滝さんが優しいアルペジオを奏でる中、卓郎さんがこの日の10月とは思えない暑さに触れたり来週ツアーファイナルを行う札幌も30℃近くあるらしいというような話をしてみたり、最後には「やっぱり夏はずっと続いてもらわないと困る」というようなひと言で次の曲を匂わせたところで夏が続くからの演奏へ。あたたかい白を基調としたシンプルな照明が軽やかなメロディーのこの曲を優しく引き立たせていた。個人的に大好きな夏が続くから を聴けた嬉しさやツアー終わったらまたしばらく聴けなくなるのかなという寂しさや単純に曲の美しさに心打たれたりと色々な気持ちが一気に出てきて溢れてくる感情を抑えることができなかった。そしてこの曲をライブで聴くたびに、メロディーと演奏がただただ美しいというだけでこんなにも心を動かされるのかと堪らない気持ちになる。

繊細な夏が続くからとの対比が印象的なSpirit Explosion、卓郎さんと滝さんというギターヒーローふたりによるツインリードのイントロはやはり聴いていて血が滾り(バッキングを担当する武田さんも言わずもがなギターヒーローであるという贅沢さも改めて嚙み締めた)それを視覚で表したような赤い照明が余計に5人のヒーロー感を演出していた。曲中では卓郎さんもフロアと一緒になって拳を上げるなど全体的にかなりのエキサイトぶりを見せていた。Spirit Explosionの最後の音からかみじょうさんが短くドラムで繋ぎそのままCold Edgeへ、ここでも武田さんがものすごい勢いで頭を振りながら演奏していて、きっと全力で演奏を楽しんでいるんだろうなという様子だったので観ているこちらも嬉しくなる。間奏では和彦さんが「福岡ーー!!!」とシャウトしていて、ここでも行くことが叶わなかった福岡への想いが溢れていた。照明の青くて細い光が空間を横に斬るような動きをするのはかつてのCold Edge演奏時の定番で個人的に好きな演出のひとつだったので、同じ演出を入れてくれていたことにも胸を打たれた。

叩きつけられた轟音がスッと引くと柔らかな音色がフロアに広がり、ドラムの音から次の曲、淡雪の演奏に入ると桜色の照明がパッとステージを包み込んだ。サビ以外の部分は無数の細かい線を描く照明がステージを淡い白に染めていて、その光がフロア後方に雪のような模様を描いていたようだった。やわらかくも芯のある歌い方だった卓郎さんが2番の〈駅に続く道で 二人黙り込んで〉の部分ではもっとふわりとやわらかな、弾き語りの時などに近いような歌い方に変えていたように聴こえて、それが一層曲のたおやかさを表現していた。

 

ここでのMCだったか、卓郎さんがタイトロープの歌詞はレコーディングが進む中で歌入れギリギリの状況で書かれたと図らずもスリリングな状態だったことを明かし、「TIGHTROPEは世界中がこういう状況になってから作ったアルバムで…世界中が同じ状況で過ごしたのは多分これが初めてだと思います。だから聴いて共感できるところがあるとしたら、それはおれたちがみんなと同じことを考えて過ごしてきたからだと思う。」とも話していた。

 

タイトルからの連想なのか淡い水色の照明をメインに使っていたTear、変則的な拍子のイントロはかみじょうさんが武田さんや滝さんの方を確認しながら、武田さんもかみじょうさんの方を向いてしっかりと拍を合わせる。ゆったりとした曲調なのでその分もあってか、ドラムの一打一打がどっしりと重たくフロアに響いていてそれに圧倒された。ゆらゆらとしたイントロのクリーンパートからスリリングな空気が伝わってくるタイトロープはフロアの両壁に映し出された大きなプロペラ模様も惑わせるような雰囲気を演出。サビで卓郎さんと滝さんが歌声を重ねるところや全体的にストロングなリズム、ベースラインのすべて(特に2番で一瞬だけ入るスラップ)など聴いていて心地よいポイント尽くしであまりステージの細かいところを観る余裕もなく音に体を委ねるようにして聴いていた。卓郎さんが僅かに天井のロープに視線を遣る瞬間があったり、自分の視界には常に客とステージとそのすぐ上のロープがいっぺんにおさまっていたので本物のロープを見ながらこの曲を聴くことができたりと、やはりこの曲で一番ロープの存在感が意味を成していた。

和彦さんがアップライトベースに持ち替えれば次の曲はキャンドルの灯を、ライブアレンジのイントロが始まると先程までのスリリングな雰囲気が消えて心が温かくなるような空気感にほっとする。卓郎さん・滝さん・武田さんがメインのメロディーを見事にハモるイントロから小気味よい跳ねたリズムに乗せて大勢の客が思い思いに頭を動かしリズムに乗る様子には視覚からも気持ちよさを感じた。最後に和彦さんがアップライトをクルリと回してみせる様子もしっかりと観ることができた。

和彦さんがアップライトからエレキベースに戻り卓郎さんがアコギに持ち替えるとThe Worldの演奏へ。アコギの歯切れの良い音が加わってコードの美しさがより際立つようになったのでいいなあ、今後もアコギ入りで演奏して欲しいと思いながら聴き惚れていた。最初のサビ終わりで卓郎さんのアコギ演奏だけの部分に入る際には滝さんが卓郎さんに注目を集めるかのようにそちらを指し、そのパートが終わると滝さんが真横にぶった切るようにギターのネックを振って演奏を再開していた。

 

演奏が終わって暫しの静寂の後、確か滝さんからだったかギターを弾き始め、卓郎さん達もそれに続々と乗っかり短いセッションが繰り広げられた。卓郎さん曰く楽しくなってしまったそうで、でもこれでチューニング合ってなかったら馬鹿みたいだからチューニングします、と言うのでほっこりとした雰囲気に。

この辺りでだったか、今年メジャーデビュー15周年を迎えることに言及し「ツアーファイナル札幌公演の翌日がDiscommunication(メジャーデビューEP)のリリース日なので札幌はディスコだけやろうかな?」と言って笑いを誘いつつ、9mmにも色々なことがありましたが、と卓郎さんが続け、(メジャーデビューアルバムにも収録されている)The Worldをこんな風に聴いてもらえるとは思っていなかった、しかもみんなが拍手しか出来なくなって…でもこうしてライブできてよかった、と感慨深げだった。

 

「東京、まだまだいけるか!!!」から威勢良くOne More Timeへ、間奏のギターソロに入る時には卓郎さんが思いっきり「ギター!!」と叫ぶと滝さんがステージ前方まで出てきてギターを弾きまくり、卓郎さん・武田さん・和彦さんはかみじょうさんの方を向いて4人で輪になるような位置で演奏していた。One More Timeの最後の音から今度は滝さんがギターで音を繋ぎBlack Market Bluesへ、〈Zepp Hanedaに辿り着いたなら!!〉と歌詞を変えて歌っていた。〈迷える子羊たちが〉の部分では和彦さんが自身のアンプと向かい合ってつんざくようなノイズを出していた。これだけの大人数で手拍子がぴったり揃う光景がなんだか久し振りな気がして圧巻だった。

それに続くTerminationでは最初のサビで卓郎さんが「歌ってくれーー!!」と煽ったが少なくとも自分の周りでは誰一人歌うことなく手を挙げてリアクションのみで応え、この時に聴こえた歌声は大きな声でコーラスをする滝さんのものだけだった。サビが終わると卓郎さんが「聴こえたぞーー!!!」と大きな声で返してくれたものだからもう何もかもが嬉しくて感極まってしまった。ここでも間奏のギターソロに入る前に卓郎さんが「ギター!!」と叫んだがその瞬間、既にお立ち台にいた滝さんがピックを手放してしまったのか、マイクの側に急いで戻ってピックをもぎ取ると何事もなかったかのように最高にかっこいいギターソロを披露してみせた。

勿体ぶらずにそのまま演奏に入った泡沫 、あの空間がすべて水に沈んだかのような澄んだ水色の照明に包まれる。赤い照明に切り替わり曲の情念を表したかのような〈どうして どうして どうして〉の部分はこれまでこの曲をライブで聴いてきた中で最も遅いテンポで演奏していたように感じたが〈生まれて こわれて 消えゆく さだめ〉の部分はもっとじっくり溜めて入り、それが曲の重厚さを最大限際立たせていてとんでもない迫力だった。最初から感情を込めつつもしなやかな歌声を崩さなかった卓郎さんが最後の〈どこまでも沈めてくれ〉にかなり力を込めて歌っていて切実な叫びのように聴こえ、歌い方を巧みに使い分け音源で聴くより遥かに曲へ引き摺り込まれる力が強くなっていて圧倒された。

本編最後の曲はTIGHTROPE最後の曲である煙の街。ライブが始まる際にSEで使われたようなサウンドがしばし流れてから演奏へ入った。スモークが多めに焚かれる中、白い照明と5人の黒い影で終始モノクロの世界を作り出していたが〈茜色に染まる部屋でした〉の部分だけはステージが歌詞通りの茜色に。アウトロに入るとスモークに包まれたステージをストロボのような照明がいくつも点滅し非現実的な光景を生み出すなど最低限の照明とスモークだけで何とも形容しがたい曲の雰囲気を完璧に作り上げた。最後の一音が鳴ったと同時にステージが暗くなり、薄暗いステージから5人が静かに退場していった。



アンコールで再び5人が出てくると手拍子のリズムに合わせるかのようにまたセッションが繰り広げられたあと、満員のような状態のフロアを見て卓郎さんが「あともう少しだね、(以前みたいに戻れる日が来たらマスクを、的な言葉)YAZAWAみたいに投げる?」とおどけていたが、卓郎さんの言う通り、声が出せなかったり他の人に触れないようにしないといけなかったりという制約以外はフロアにたくさんの人を入れ、2時間のワンマンライブが問題なく開催できるところまで状況が戻ってきた。滝さんはワンマンでは珍しく、缶のお酒と思しきものを手にして演奏までの間飲んでいた。

「これからもよろしくな!」というひと言にぴったりなアンコール1曲目はキャリーオン、2番の歌詞を卓郎さんが〈“心”の声を聴かせてくれー!!〉と叫ぶとそれに呼応するかのようにまたフロアから無数の拳が上がった。この日最後の曲はイントロのライブアレンジパートからフロアを踊らせまくったTalking Machine、曲入りの「1.2.3.4!!」もフロアの熱狂ぶりとは裏腹に誰も声を出さなかった。ここでも時折滝さんがギターでピュンピュンと不思議な音を入れていた。多くの客がまだ定位置を動けない中でも思い思いに体を揺らす光景には見入ってしまった。最後には滝さんがギターのネックをバットのように握り全力でフルスイングを決めた。

 

演奏が終わるといつの間にか滝さんは退場していて、武田さんがフロアに丁寧にお辞儀をしてから笑顔で親指を立てつつ退場。卓郎さんと和彦さんが上手下手、1階2階を隅々まで見るようにしながら挨拶していると後ろからかみじょうさんが出てきてドラムスティックを4本くらいフロアに投げ、目の横でピースサインというお茶目な挨拶をして下手の袖に消えていった。最後に卓郎さんが万歳三唱をして(仙台と同じく万歳のリズムに合わせて照明を若干点滅させる気の利いた演出!)フロアに笑顔を向けながら退場していった。



ここまでの間に何度か言及したが、都内最大級の広さをもつライブハウスにこんなに人がたくさん入ったのを久々に観た。当日、フロア後方から観ていても座席指定や立ち位置指定だった時よりも人が多い分ライブ中の盛り上がり方も目に見えて大きく、更に後日公開されたこの日のライブ写真では以前とそこまで変わらないくらい(人同士の密着がないよう人数調整されている前提で)にフロアに多くの人が入っていた。ライブハウスに再びこんなにたくさんの人が集まれるようになったのが本当に嬉しかった。アンコールでは卓郎さんが満足げな様子に見えたし、曲中には滝さんや和彦さんが両手を大きく動かして何度も何度もフロアを煽っていたのでたくさんの人で盛り上がるフロアの景色はやはり演奏する側にとっても相当テンションが上がるような良いものだったのだろうなと。

 

卓郎さんがTerminationで「歌ってくれーー!!」と煽ったことには最初は正直少しびっくりしたが、当然のように歌わずにリアクションを返したフロアの様子に安心感と嬉しさが込み上げた。今までずっと慎重な姿勢を示していた卓郎さんが一時の気の迷いや考えなしにそんな煽り方するわけがない。客への絶対的な信頼をもって煽り、客は一切歌わないことで卓郎さんに完璧に応え、卓郎さんがしっかりそれを受け止めてくれた。お互いの信頼をもってステージとフロアで完璧にコミュニケーションを取ることができる、そんなバンドとファンであることが証明されて嬉しさと誇らしい気持ちになった。

 

自分は長いこと東京に住んでいて、9mmのツアー東京公演も何度も観てきた。なのでこの日のMCで卓郎さんが「東京は演奏中は盛り上がるけれど、MCの時にはすぐ静かになって、拍手が鳴り止むのも早いし…それが東京でライブやってるな、という感じがする」という話をしてたのを驚きながら聞いていた。東京、今までそんな印象を持たれていたのかと…。何か意図があるわけではなく、あくまで他の地域と比べての話をしただけだと思うけれど、それにしてもこんな地域差を感じていたんだなと。その話が出た後、「拍手がすぐ止む」東京をいじるかのように卓郎さんが笑顔で拍手を要求してたように見えた時があってつい笑ってしまった。今後はもう少し長めに拍手をしよう。

また余談になってしまうが今までの9mmのツアー東京公演は圧倒的にZepp Tokyoが多く、大きな観覧車の下にあるライブハウスでTerminationを聴けることが楽しみであり、セトリに入ると毎度嬉しかった。昨年末でZepp Tokyoが、今年の8月末で観覧車の営業が終了し思い出の場所がなくなってしまい寂しい気持ちでいる最中なのでこの日Terminationを聴いている時にもZepp Tokyoでの数えきれないほどの思い出が次々と頭に浮かんだ。こうやって自分にとって大事な思い出を呼び起こしてくれる曲になってくれたことも嬉しかった。

 

TIGHTROPEレコ発の短いツアーもファイナルの札幌公演を残すのみとなった。この日のライブで卓郎さんが「ツアー完遂してきます!」と宣言していた。Zepp Hanedaのすぐそばには羽田空港がありここは正に札幌へ向かう時の出発の地でもあるので、この日から1週間ほど日にちは空くがそれを聞いて勝手に卓郎さん達を見送るような気持ちになった。どうか無事にツアーが完遂しますように。

       

20220923/9mm Parabellum Bullet“Walk a Tightrope Tour 2022”@SENDAI GIGS

       

結成18周年(1+8=9!)を迎えた9mmの記念すべき“9枚目”のアルバム「TIGHTROPE」リリースツアー、仙台公演。9月9日の大阪公演を皮切りに名古屋、そして福岡と続くはずが台風のせいで福岡公演が惜しくも中止に。本来全6公演のうちの4公演目だった仙台公演が3公演目となった。

今回のツアーは会場によってスタンディングだったり自由席だったりと形式が異なり、仙台公演は全席指定。自分の座席はフロアのほぼ真ん中あたりの位置だったので前の座席の人の頭が視界と被る可能性も想定していたが、ステージが結構高かったようで予想以上にステージ全体が見やすい席だった。

場内に入るとTIGHTROPEのジャケットに似たデザインの柄にバンド名とツアータイトルが印刷された、今回のツアーのためのバックドロップが既にステージに掲げられていた。フロア前方あたりの天井にはロープが天井の照明機材の骨組みを利用してゆるい懸垂線を描くように結ばれていて、数えてみるとちゃんと9本あった。そのうち8本は黒いロープだったが真ん中の1本だけは赤色で、その赤色のロープだけはまるでフロアとステージを結ぶかのように天井からバックドロップの右側を通ってステージの床あたりまで垂らされていた。アルバムタイトルに合わせて本物のロープを飾るとは全く予想もつかなかったので会場に入った瞬間かなり驚いた。

 

ほぼ定刻に場内が暗転するとお馴染みのSEであるDigital Hardcore、ではなくこのツアーのために制作されたと思しきちょっとダークなサウンドアンビエント的インストが流れ、紫色のスポットライト数本がランダムに動いて場内を不穏な雰囲気が包む中卓郎さん、滝さん、和彦さん、武田さん、かみじょうさんがステージに登場。

 

 

Hourglass

All We Need Is Summer Day

名もなきヒーロー

Supernova

Psychopolis

悪いクスリ

白夜の日々

インフェルノ

夏が続くから

Spirit Explosion

Cold Edge

淡雪

Tear

タイトロープ

キャンドルの灯を

The World

One More Time

Black Market  Blues

Termination

泡沫

煙の街

 

Discommunication

Talking Machine

 

不穏な雰囲気の中演奏が始まったのはTIGHTROPEの1曲目でもあるHourglass。序盤から卓郎さんが鋭い眼差しで朗々と歌い上げていた。シャワーのように無数の細い光を描くスポットライトが曲の中盤あたりで天井に光の粒を描き、歌詞通りの〈こぼれ落ちる砂〉を表現しているようで息を吞んだ。間奏の滝さんのタッピングやアウトロの和彦さんのシャウトなど見所が次々と続き1曲目にしてぐいぐいと引き込まれる。続いての曲はAll We Need Is Summer Day、Hourglassとの対比もありそれまでの重い空気を一気に明るくするかのような開放的なメロディーと鮮やかな黄色の照明がステージを彩り、その開放感が聴いていてとにかく心地よかった。〈All We Need Is Summer Day〉のコーラス部分は客がまだ声を出せないものの、思い思いに体でリズムを取ったり元気に腕を上げたりという様子で盛り上がる。1番サビから2番へ入る間奏、ベースの速いフレーズが入る部分では和彦さんがちょっと前に出てきたようでその見せ場をしっかりと観ることができた。

続いては名もなきヒーロー、All We Need Is Summer Dayと並んだことで夏フェスの空気感を持ってきたような流れだなと勝手に感じた。この曲のイメージカラー的に使われる水色とピンクの配色やサビの〈また明日 生きのびて会いましょう〉で赤を挟む照明が個人的に好きなところ。サビなど一際盛り上がる部分ではいくつかのライトが高速で回転してステージをより華やかにしていた。名もなきヒーローのアウトロから流れるように演奏に入った次の曲はSupernova、いきなりの予想外の選曲に漏れそうになった歓声を慌ててこらえた。イントロは聞き間違いでなければ武田さんが滝さんと同じメロディーを弾いていたのか、ギター3人でツインリードのメロディーを息ぴったりに合わせていた。スポットライトの光がバックドロップの上で交差して大きな星にも見えるような模様を描いていた。最後のサビでは滝さんが上手の空間いっぱいに動き回っていて思わずそちらに目を奪われた。

 

ここで最初のMC。卓郎さんが開口一番「仙台、仙台!仙台!!」と立て続けに呼びかけていて、仙台で無事にライブできる嬉しさを爆発させるような様子だった。この日は9mmの他にPeople In The BoxDragon Ashも仙台でライブをしていることから卓郎さんが「仙台をロックシティに!」というコメントも。

 

9mmが今年メジャーデビュー15周年であることに触れ、メジャー1stアルバムが出た時の気持ちを思い出させます、というような話からの次の曲は9mmのメジャー1stアルバム「Termination」の1曲目、Psychopolis!9mmは結成から何年、には毎年言及しているがメジャーデビューから何年、というのにはそれほど触れてこなかった気がするのでレコ発の中で言及されるとは思わず、これも予想外の選曲。アウトロの最後の1小節を飛ばしそのまま次の曲、悪いクスリのイントロのベースへ繋がるという見事な流れ!以前何かで全く同じ繋ぎ方を聴いたことがあって、繋ぎ方のあまりの見事さでずっと記憶に残っていたものをまた観られるとは…と驚きと嬉しさでいっぱいになった。悪いクスリ、Aメロは武田さんにギターを任せて滝さんはギターでこれまで9mmでは聴いたことのないような、何となくコズミックな不思議な音を出していた。序盤は照明がバックドロップにネットのような模様を描き、サビでは歌詞に合わせるかのように三枚羽根のプロペラのような模様をフロア左右の壁に投影して曲の不思議な空気感を視覚でも表現していた。

白夜の日々では白い照明で、ちょっと見えづらくなるほど強く眩しい光がステージを包んだがこれも曲やMVのイメージにぴったりでいい演出だった。2番のサビで卓郎さんが〈君に「会いに来たぞー!!」〉と歌詞を変え、清々しい笑顔で歌っていた。次のインフェルノではステージが白から真っ赤へと移り変わった様子で曲の流れを視覚で楽しめた。

 

ここで短いMCが入ったが卓郎さんが何を言っていたか失念してしまった。卓郎さんはアコギに、滝さんがエレガットに持ち替えて次の曲のタイトルを匂わせるようなことを話したものだから次の曲を察して演奏前からそわそわしてしまった。その期待通りで次の曲は前作「DEEP BLUE」の中で自分が最も好きな曲、夏が続くから。卓郎さんのアコギから演奏に入るこの曲、卓郎さんが弾き始める直前かそれと同時に滝さんが卓郎さんの方に腕を伸ばしそちらに注目させるような仕草をしていた。照明はほぼ普通の白色のみというこの日最もシンプルな構成だったのもよかった。リズム隊の音と武田さんのエレキの音がしっかりと支えるような演奏にアコギのシャキッとした音とエレガットの繊細なメロディーが乗る組み合わせは相変わらず言葉を失うほど美しかった。本当に幸せな時間だった。

繊細な夏が続くからとの対比でイントロから一際力強さを感じさせたSpirit Explosion、武田さんがバッキングを担当し卓郎さんと滝さんがイントロからツインリードを弾くという割り振り。ただひたすらにかっこいいメロディーに血が滾る。Spirit Explosionの最後の音と同じ音から始まるCold Edgeというここも綺麗な流れ、Cold Edgeは定番曲のようで最近では意外とセトリに入らないので久し振りに聴けた気がする。間奏の入りでは和彦さんが「仙台!!!」とシャウト。ここまでの夏が続くから・Spirit Explosion・Cold Edgeと何となく「青」のイメージがある3曲が並んだ。

フロアが一旦静まりそれまでの熱い雰囲気からスッとクールダウンしたかのような空気の中での淡雪。音源ではたっぷりかけられているリバーブはライブではさほど強くなく、それでも卓郎さんのしなやかな歌声がフロアいっぱいに響き渡った。最後のサビでの滝さんの澄んだファルセットも美しかった。無数の細かい線を描く照明がステージを淡い白に染めていて、ふと後ろを向くとフロア後方2階席のあたり、ステージの向かい側の壁に光の粒が映っていてまるで雪景色のようだった。ステージにいる5人からは客の上に雪が降っているように見えていたのかもしれない。淡雪についてはこの後のMCで卓郎さんが荒吐でやったら季節的にちょうどよさそう、というようなことを話していた。荒吐で演奏される淡雪、いいなあとその様子を想像しながら話を聞いていた。これが必ず実現すると信じて来年を楽しみに待ちたい。

 

かなり変則的な拍子のTear、イントロではかみじょうさんがシンバルをミュートしながら滝さんのいるあたりを確認し息を合わせるかのように演奏に入ったのが印象的だった。サビがないような曲構成はインディーズ時代の曲に近いものがあるなと思いながら聴いていた。アルバムと同じ名前を冠したタイトロープは乗りやすいリズムにキャッチーな歌のメロディーが聴いていてひたすらに気持ちいいのに何とも言えないスリリングさを感じさせる不思議な曲。卓郎さんが歌いながら天井のロープをチラッと見るような瞬間もあった。全体的に赤い照明がスリリングさを煽り、〈嵐の中に羽を広げて〉からの転調するパートでは青い照明に変わり刹那の開放感を演出するという切り替えも見事だった。和彦さんがアップライトベースに持ち替えて…ときたら次の曲は、キャンドルの灯を。タイトロープからの対比であたたかみのあるメロディーやオレンジの照明がより際立っていた。5人編成の時に聴けるイントロのトリプルリードのアレンジは何度聴いても素敵過ぎる。

卓郎さんが再びアコギに持ち替えたので何の曲だろうかと考えていると次はまさかのThe World、9mmの通常編成で卓郎さんがこの曲をアコギで弾くのは多分、今までに観た記憶がないのでかなりレアだったのではないかと驚いた。アウトロでは滝さん・武田さん・和彦さんが同じタイミングでぴったりとリズムを取りながら演奏、その中でも和彦さんは途中からかなり頭を大きく振るなど段々と動きが大きくなっていた。最後はかみじょうさんが左右のシンバルの上にスッと手を置き静かに音を切った。

 

卓郎さんが「いけるか~~~!!」とフロアを煽り大いに盛り上げてからOne More Timeへ、All We Need Is Summer Dayとセットでライブ序盤にやるのかなと予想していたのでここまで出てこなかったのは意外だったが、温存してここで投下してきたのが雰囲気的にもぴったりだった、とにかく楽しかった!そのままBlack Market  Bluesに入ると卓郎さんが〈SENDAI GIGSに辿り着いたなら!!〉と歌詞を変えて歌い、更に盛り上げていた。Psychopolisと同様メジャー1stアルバムに収録されているのでセトリに入った?Terminationでは間奏のギターソロに入る直前に和彦さんが滝さんを指差してそちらに注目を集めるようにしていたり、ギターソロ中には卓郎さんと武田さんが向かい合って弾いていたりしたていて、特に卓郎さんと武田さんはふたりとも笑顔で本当に楽しそうな様子で演奏していたのでこちらも心の底から嬉しい気持ちになった。まだ客が声を出すことができないのでサビで大合唱が起こることはなかったが、その代わり思い思いに腕を上げて楽しむ客に向かって1番のサビでは卓郎さんが「ありがとう!!」と叫んで応え、次のサビでは和彦さんがフロアからよく見えるように自らの左胸をトントンと叩いて応えるような仕草を見せていたので、声は出せなくても今できる方法でこんなに楽しむことができるし、ステージ上のメンバーにもそれが十分に伝わっていることがよく分かってなんだか無性に泣きそうになってしまった。

 

ライブもそろそろ終盤の空気を漂わせつつここで泡沫。水の中を表すかのような淡い水色の光が空間を満たす。卓郎さんの歌声は全体的に柔靭ながら〈どこまでも沈めてくれ〉の部分はかなり感情を込めるような歌い方だった。それまでの水色が一変、〈どうして どうして どうして〉からのスローになる部分は演奏と卓郎さんの歌声に重みが増し込められた情念を表すかのようにステージが真っ赤に変わった部分は圧巻だった。

最後の曲はTIGHTROPEの最後の曲でもある、煙の街。ライブが始まる際にSEで使われたようなサウンドがしばし流れてから演奏へ入った。スモークが多めに焚かれる中ステージを斜めから照らすようなライトがスモークの中に長方形に近い光を作り出し、歌っている卓郎さん以外の4人はそれぞれ違う方向を向いて俯きがちな佇まいで演奏していて「煙の街に佇む5人」という光景を完璧に生み出していた。卓郎さんの歌声がゆらゆらと響き、演奏は徐々に重たさを増してゆき、陰鬱な空気と轟音に包まれるがそれが何とも言えず心地よかった。終盤の〈ああ 燃えた夢はいくつ〉からの部分はステージ中央のみを照らすスポットライトが卓郎さんのシルエットを生み出し、アウトロの一際轟音が増す部分は更に濃くなったスモークの中をフラッシュのような照明がいくつも光る怪しげな、この世のものとは思えない光景を生み出していた。最低限の照明とスモークだけで完璧に曲の雰囲気を作り上げていたのが圧巻だった。最後の一音が鳴ったと同時にステージが暗くなり、暗いままのステージから5人が静かに退場していった。

 

本編が終わりアンコールの手拍子がしばらく続くとステージが再び明るくなり、和彦さんが一人で登場。本編では黒の長袖シャツを着ていたが何と18周年デザインの白いロンTに着替えていた!和彦さんが白を着ている姿は相当レアではないだろうか…。いつも通り低くセッティングしているマイクスタンドをゆっくりと一般的なマイクの高さに直し、照れ笑いを浮かべながら話し始める。自らのMCについて「一部の人に人気の…一部ってのはここ(仙台)のことだけど」と話したり「珍しく物販の(Tシャツ)を着ました。今日はソールドしたらしいですね、ありがとうございます。グッズをお土産に是非」と宣伝を入れたり。

続けて客と会話するかのように「“さくら野”の跡って何になるか決まったんだっけ?あそこでライブやってみたいよね。」と話していた。アー写撮りたいとか、9mmは廃墟似合うから、とか。地元ネタだったようで自分はその場では何の話をしているのか分からなかったが、ライブ後に調べて仙台駅の近くに残っている、今営業していない「さくら野百貨店」という施設の話をしていたと把握した。一通り話し終わっても誰も出てこないため袖を見ながらまだみんな来ないんですかね、と和彦さんが困っていると卓郎さんがステージに登場。ステージ中央についた卓郎さんに和彦さんが「社長!」と呼びかけた。そのすぐ後だったか、卓郎さんが和彦さんに よっ、社長!と言っておどけて見せると和彦さんが社長はあなたでしょうという感じで反応するという微笑ましい場面があった。

全く気付かなかったが卓郎さんがグッズのロープを腰に付けていて、その理由が「ベルトを忘れた」からだそうでロープで代用したとのこと!和彦さんがそれを褒めると気分を良くした卓郎さんが「なんか飲む?」と話しかけ、和彦さんがあとで…という感じで返すという更に微笑ましい会話が。

それも終わると卓郎さんがそろそろみんなを呼び込もうかと袖に向かって「ちーちゃん」「滝くん」「武田くん」と呼びかけ、5人がステージ上に再び揃った。

 

アンコールの1曲目はDiscommunication、これも15年前のメジャーデビューシングルというメモリアルな曲、だからセトリに入ったのだろうか。蛍光イエローのような照明は近年ライブでこの曲を演奏する際のお馴染みになりつつある。この日最後の曲はTalking Machine、Punishmentではなくこの曲でアンコールを締めるのも結構珍しかったのではないか…。最後にこの日一番フロアを躍らせてライブを締めた。

演奏が終わると滝さんが退場、それに続くように武田さんも客席に向かって笑顔で親指を立てながら退場。卓郎さんと和彦さんはフロアの隅々まで見渡し、笑顔を向け、手を振っていた。下手に到着すると2人で譲り合うようなじゃれあうような様子も見せていた。ドラムセットの後ろからステージ前方上手側に出てきたかみじょうさんは下手の袖に消えるまでの間に声は聞こえなかったが何度もありがとう、ありがとうと口を動かしているのが見えた。最後に卓郎さんがステージ中央にやってくると万歳三唱をして(万歳のリズムに合わせて照明を若干点滅させていたのがよかった!)袖へ入るギリギリまで客席に笑顔を向けて退場していった。

 

TIGHTROPE収録曲は全10曲、35分ほどでワンマンのセトリでは持ち時間の半分弱ほどが埋まる長さ、アルバムが短いのでグレイテスト・ヒッツのようなセトリになると卓郎さんもMCで言っていたが、そのおかげでアルバム全曲はもちろん定番曲から最後にライブで聴いたのいつだ!?というほどのレア曲までたっぷり楽しめるセトリだった。メジャーデビュー15周年の節目も入れるとは思わなかったので嬉しかった。

曲中は悪いクスリで使われたのが印象的だったが、MCで卓郎さんが話しているときに滝さんがこれまで9mmでは聴いたことのないようなピュンピュンと不思議な音を出したり、どう表現したらよいのかシンセみたいに滑らかに上がっていく電子音のような音を出したりするので卓郎さんが「滝が仙台を持ち上げています」とコメントして笑いを取っていた。そういえば滝さんは久し振り?にキャップを被ってステージに登場したが、激しく動き回るのですぐにキャップを吹っ飛ばしていた。ライブ中に被り直しても気付くとまたキャップがなくなっている、という様子で僅かに楽しそうな笑顔を浮かべていることも多かったので絶好調だったのかなと。滝さんのそんな姿を見られたのも嬉しかったところ。

この公演があった3連休は台風が近づいてきたタイミングで仙台も雨はほぼ降っていなかったものの湿度高めの気候だった。そのため、卓郎さんが台風から逃げるようにして来たのに湿度が高いと話しながら自身の髪型を気にして、髪の毛の具合が湿気の指標になるとも話していた。その後のMCでは演奏後のまだ暗いステージで自らの髪を何度かわしゃわしゃと撫でて髪のボリュームを気にするような仕草をしていて微笑ましかった。

この公演の1週間前にもやはり台風が近づいてしまったせいで福岡公演が中止になったことにも触れ悔しい気持ちを露わにしていた。

 

今回の照明は変わった形のライトやLEDパネルやレーザーなど派手な機材はなかったが、普通の大きさながらグルグルと高速で回るライトや曲の雰囲気に合わせて模様を投影するものなどを駆使して曲の雰囲気を見事に表現していた。また、サビやギターソロに入る前といったタイミングでかみじょうさんにスポットライトを当てるという演出が多く使われていた。

 

中盤あたりのMCだったか、表現はうろ覚えだけれど卓郎さんがタイトロープの歌詞は歌入れ当日にできたので本当に綱渡り的な状態だったらしい、というような話が出てきた。9枚目のアルバムなのでタイトルに9を入れることも考えたが、最終的に「TIGHTROPE」になってよかったと。これでセルフタイトルをつける機会は永遠に失われましたね、と笑いながら言ってもいた。

またこれも中盤やアンコールのMCで出た話。卓郎さんが今まで9mmにも綱渡り状態の時があったが、落ちそうになった時にみんなが引き上げてくれた、とかみんな綱渡りのような日々を送ってきたから誰かが落ちそうな時は助け合おうとか、本当は綱渡りってみんなでやるようなものじゃないよね的なひと言もありつつ、みんなが落ちそうな時にはおれたちが引き上げます、というような話をしていた。

自分もそうだったが人生の中で相当しんどいことがあった時に9mmの音楽に助けてもらった経験がある人は少なくないだろうし、9mmが最大のピンチを乗り越えた直後、2018年の野音ワンマンで卓郎さんが「もうダメかもしれない。やめようと思った。その度にライブで見てきたみんなの顔が浮かんできて、考えるのをやめた。」と言っていたことがあった。そしてここ3年続いている正に綱渡りのような不安定な状況。ポジティブな意味もネガティブな意味も含んだ「TIGHTROPE」というタイトル。正直、発表時にはあまりピンとこなかったので不思議な気持ちで見ていたタイトルだけれどライブでTIGHTROPEの曲たちを聴き、卓郎さんの言葉一つひとつを聞いてこのタイトルの中には9mmがこれまで通ってきたことや積み重ねてきたものが確実に含まれていることを認識できたし、9枚目というこのバンドにとって記念すべきアルバムに相応しいものなんだなと実感することができた。