最後の駅の向こう

何でもすぐ忘れる人の特に記憶に残しておきたいライブの簡易レポートと趣味のレビューの予定。あくまで予定。

20230708/凛として時雨“トキニ雨 #16”@Zepp Haneda

       

凛として時雨がゲストアーティストを迎えて行うイベントトキニ雨”7年振りの開催。

6月にアルバムリリースツアー“aurora is mine tour 2023”を終えたばかりの時雨。自分は4月のZepp DiverCity公演のみ観に行くことができて、言わずもがな大変いいライブで1公演しか観に行けないことを惜しんでいたので、ツアーが終わったばかりなのにまたツアーを開催してくれたのが本当に嬉しかった。

大阪公演のゲストは羊文学、名古屋公演はCrossfaith、そして東京公演のゲストは9mm Parabellum Bullet。時雨と9mmが対バンするのは201999日、9mm15周年ライブの六番勝負以来で4年ぶりとなる盟友同士の対バン。告知解禁時にはすべてのゲストが×で伏せ字になった状態で画像に掲載されていたが、東京公演のゲストの異常な文字数の多さに解禁前から9mmだと何となく予想がつく状態になっていたのが面白かった。

 

この日の座席は2階席の上手側3列目だった。Zepp Haneda2階席の2列目と3列目の間に通路がある珍しいつくりのためかなり見やすかった。時雨ワンマンの2階席は東京ではほとんどの人が着席したままライブを観ることが多く、この日は対バンだったのでどうかなと周りの様子を窺ったがやはり着席のままの人が多かったので自分も着席のままでライブを観ることにした。

 

 

9mm Parabellum Bullet

 

Discommunication

All We Need Is Summer Day

Living Dying Message

The Revolutionary

(teenage)Disaster

Psychopolis

カモメ

新しい光

One More Time

Black Market Blues

Talking Machine

Punishment

 

 

ほぼ定刻にフロアが暗転、SEが流れメンバーが登場。この日のサポートギターはfolcaの爲川裕也さんで、上から見ると前列に和彦さん、卓郎さん、滝さん、その後ろにかみじょうさんと爲川さんが並ぶという立ち位置。

9mmZeppで観る時は大体ワンマンやツアーなど主催ライブが多いため、Zeppクラスの会場でステージにバックドロップが掲げられていない9mmZeppで観るのが久々だった。そんな中1曲目のDiscommunicationからゲストバンドとは思えないほどフロアが盛り上がる。お馴染みの黄色の照明をベースにこの日は赤や青の差し色が入り心なしか普段より華やかな照明。続いてのAll We Need Is Summer Dayでもフロアから《All We Need Is Summer Day》の大合唱が巻き起こるなど9mmのワンマンか?と思うほどの盛り上がり。この日のうだるような暑さにもフロアの熱気にも合わせたかのように、1番のサビを歌い終えた卓郎さんがすかさず「暑いですねえええ!!!」と叫んでいた。

All We Need Is Summer Dayのアウトロから音を切らずにそのまま次の曲、Living Dying Messageへ!昨今9mmのライブでは曲と曲をシームレスに繋いで演奏することが多々ありそれを卓郎さん達が激繋ぎと呼んでいるものでこの2曲の激繋ぎは初披露だったのではないか、予想外の選曲につい驚きの声を漏らした。Living Dying Messageは時雨と9mmが初めて2マンライブを行ったニッポニア・ニッポン開催年と同じ2008年の曲なのでそれを意識した選曲だったりして?とライブの後にふと考えた。

「もういっちょ!!」と卓郎さんが叫んでからThe Revolutionaryへ。真っ白な眩い光にステージが包まれる中、間奏ではステージ中央で卓郎さんと滝さんが向かい合ってツインリードを弾き、その後ろに和彦さんと爲川さんも集まってくるというお馴染みのフォーメーションが決まると割れんばかりの大歓声が1階から聞こえてきた。アウトロでは和彦さんが曲のテンポに合わせ軽快にジャンプを繰り返していた。

 

ここで最初のMC。卓郎さんが時雨との対バンを如何に大切に思っているかを話し「ハッピーな轟音をぶつけようと思います!」と素敵な表現で意気込みを語った。9mmが今年19周年を迎えたことにも触れつつ、トキニ雨のゲストバンドが×の伏せ字で解禁された際に自分達のバンド名が長過ぎて数えてみた時に初めて9mm Parabellum Bullet19文字だということに気付いたという話から19周年を迎えた9mmが今年の919日、9年振りに武道館でライブをやるから来てくださいねと言っていたのはこのタイミングだったか。

 

話を続ける卓郎さん。「北嶋くんから夜中にメールがきて今回の対バンが決まったんですけど。折角だから何の曲を聴きたいか聞いたら、この中からやって欲しい、って3曲送られてきまして。」

 

「その3曲全部やります!!!!」

 

その言葉にフロアが沸く中TKリクエストパートへ、1曲目は9mm最初期のナンバーである(teenage)Disaster、続いての曲はライブで演奏されるのはなかなか珍しいPsychopolisという嬉し過ぎる選曲。TKがこの2曲をリクエストしたんだなと思いながら聴くといつもよりも余計嬉しい気持ちに。そして特にPsychopolisは定番曲というわけでもないのに、2曲ともフロアは9mmワンマンの時と遜色ないほど盛り上がっていた。

リクエス3曲の最後を飾ったのはカモメ。先ほどまで盛り上がっていたフロアをスッと落ち着かせるようなギターのクリーンな音が響いてから演奏へ。全ての音と卓郎さんの歌声がフロアに優しく響く中、ステージ壁に淡い青のライトを当て波の模様を壁に描くという演出が入り普段の9mmライブとは一味違った演出に時雨の照明を借りている感があって個人的にとてもいいなと思いながら見ていると、その波がスポットライト「9個」で作られていることに気付き静かに感動していた。最後のサビでは曲の盛り上がりに合わせるかのようにステージが朝焼けのようなオレンジに染まった。ただただ美しかった。

 

TKリクエストパートを終えると再びMCへ。卓郎さんが時雨との関係の近さについて「(CDショップの)試聴機のDisc19mmが入ってる時はDisc2に時雨、Disc1に時雨が入ってる時はDisc29mmが入っていることが多くて。」と言っていたのが的確過ぎたし何だか懐かしかった。ちなみにDisc3にはZAZEN BOYSthe band apartが入っていたよね、とのこと。先ほど演奏された(teenage)Disasterは試聴機で聴いた時のことを思い出してくれたらというようなことも言っていた。

「話が戻るけど、対バンが×で隠れてる時からバレバレだったよね。その時から(ゲストが9mmだと)察して来てくれた人もいるんじゃないか。だって今日おれたちのTシャツが売り切れたんだって!そんなことある!?」と嬉しそうに話を続けていた。この日から9mmは新作Tシャツの販売を始めており、この日のライブでは卓郎さんが白を、かみじょうさんが黒を着ていた。

 

「これからも時雨とはずぶずぶの関係でいきますので、よろしくお願いします!!」

 

眩い真っ白な照明の中で5人が演奏する光景が最高にかっこよかった新しい光、サビの後のキメで卓郎さん滝さんがステージ前方に来たり、和彦さん滝さんがそれぞれステージ端へ行ったりというフォーメーションが決まるたびにここでも大歓声。最後の《新しい光の中に君を連れて行くのさ》の部分、かみじょうさんが普段クレッシェンドをかけるようにスネアを叩く、というのが今回は無くその代わりアドリブっぽいフレーズを叩いているのが聞こえた。

One More Timeではサビに入るごとに卓郎さんがフロアを煽り大合唱が巻き起こり、そのたびに卓郎さんが楽しそうな笑顔を浮かべていた。滝さんは中盤あたりのギターを弾かなくていい部分でギター横に持ってまるで肩で風を切るような勢いでズンズンとステージ中央に向かって歩いて行ったり、ちょっと卓郎さんに近付くぐらいの位置で腕を大きく動かして踊ったりするなど大きな動きが多くこちらも楽しそうだった。

One More Timeから音を切らずにそのままBlack Market Bluesへという最近の9mmライブではお馴染みの激繋ぎを披露、卓郎さんが《Zepp Hanedaに辿り着いたなら!!》と歌詞を変えて歌う。最後のサビではかみじょうさんが普段より激しく頭を振っていた。ここまでの間もずっとワンマンのような大盛り上がり、と表現してきたがこの曲でより一層盛り上がる様は特に気持ちよかった。

そのままの流れでTalking Machineへ、熱狂し続けるフロアを更に躍らせる。《空を見上げてるだけ》で天井を指差す卓郎さんの動きは個人的に特に好きなところ。ステージ上の動きも更に大きくなり終盤では滝さんがお立ち台の上でめちゃくちゃに頭を振りながらもしっかりとメロディーを弾きこなすという職人技を見せた。最後の曲はPunishment、爆速カッティングで勢いをつけ序盤から寝転びながら演奏する滝さん、和彦さんはベースの速弾きにタッピングまで披露!間奏ではそれまでずっと後方から離れなかった爲川さんもステージ前方へ出てきて和彦さん、卓郎さん、滝さん、爲川さんが一列に並んだ。間奏後の最後のパートを滝さんが全部ファズかけっぱなしで弾き続けるなど、ライブど定番曲のPunishmentも普段と明らかに気合が違うといった様子だった。

 

ありったけの轟音を叩きつけ演奏が終わると滝さんは早々に上手の袖へ消えていき(滝さんはいつも退場するのが早い)、爲川さんも早めに退場。サポートということで爲川さんは後方からほぼ動かずに演奏していたが、2階席からもよく分かるほど華やかな立ち振る舞いや表情でフロアのあちこちに視線を遣り1階の人達を乱れ撃ちしていた。

和彦さんはフロア下手側から上手側へ順番に挨拶しながらピックを投げてから退場していった。ライブ中どの曲か失念してしまったほど、和彦さんもこの日は普段の1.5倍くらいぐるぐると回っていたりフロア下手側を煽ったり自分の胸をトントンと叩くようにしてフロアからの歓声に応えたりと気合が滲み出ていた瞬間が多かった。

卓郎さんもワンマンの時より短めながら丁寧にフロアに挨拶して退場。最後にかみじょうさんがゆっくりと下手の袖へ歩いて行ったがその際、フロアに向かって手を振りつつ一瞬だけ両腕を頭の上でクロスしたように見えた。たまたまそう見えただけかもしれないけれど、もし意識してやったのだとしたらそれは、あのジャンプじゃないですか!!

 

9mmを観終わった後の満足感があまりにも凄かったので、これからまだ時雨のライブが待っているというのはこんなにも幸せなことなのか、と余韻に浸りつつ時雨を楽しみに待っていたら転換時間もあっという間のように感じられた。フロアが再び暗転しいよいよ時雨の番。

 

 

 

凛として時雨

 

アレキシサイミアスペア

DIE meets HARD

nakano kill you

Marvelous Persona

DISCO FLIGHT

am3:45

〈ドラムソロ〉

想像のSecurity

Telecastic fake show

竜巻いて鮮脳

傍観

 

ツアーではセトリの一番最後の曲だったアレキシサイミアスペアから演奏が始まった。澄んだ水色の照明が美しくフロアが一瞬にして時雨ライブならではの心地よい緊張感に包まれたのが最初からもう最高だった。次の曲に入る瞬間TKが気合を入れるかのように叫んだのでびっくりしているとDIE meets HARDの演奏へ、この曲の入りでTKが叫ぶことなんて今まで無かったのでは!?この時点でこの日のTKの気合の入り方が伝わってくるようで凄いライブになりそうだとDIE meets HARDはライブでは意外と久し振りに聴けた気がしたので、蜂蜜のような甘い色の照明がステージを包む中どっしりとしたリズムに体を撃ち抜かれる感覚に久し振りに浸ることができた。

そのまま中野さんがドラムを叩き続け次の曲へと思いきや一旦演奏が止まる。一瞬で仕切り直しTKがもう1回やりますとひと言、それから「9mmからのリクエスト曲です。」と告げてから改めて演奏へ。その言葉にびっくりしていると演奏が始まったのはnakano kill you、イントロのツーバス連打の体感速度がいつもより早いように感じられたのは気のせいか、その勢いのままTK345が歌い出した際のステージをくっきりと二分するかのような赤と青の照明が目に焼き付いている。

 

このあたりでTKが話し始める。先程まで絶叫していた人とは思えない穏やかな話し声はやはり落ち着く。「凛として時雨です。9mmが最高のライブをしてくれてありがとうございます。僕達も本気でやっていきますので、よろしくお願いします。」

 

同期と思しき345の声が徐に聴こえてきてそれに演奏が重なるMarvelous Persona345の伸びやかなハイトーンにかっちりしたリズムが重なる後半の展開が大好きで、345の気高い歌声に気品ある淡い紫色を基調とした煌びやかな照明があまりにも似合い過ぎていて、リリースツアーで観た時から大好きな演出だったのでこの日また観られて嬉しかった。中野さんが煽るといつも以上にフロアが沸いたDISCO FLIGHT、ここでもTKのシャウトが心なしか多かったような演奏からも3人の気合いが溢れていたように思えてとにかく凄かった。

そんなキレッキレの2曲を経てここで一旦フロアが静まっただろうか、しんとした空間にクリーンなギターの音が響いて演奏が始まったのはまさかのam3:45。昨年開催の“DEAD IS ALIVE TOUR”で演奏されはいたがかなりのレア曲でワンマン以外でも演奏されることがあるのかとこの一番意外だった曲かもしれない。穏やかな照明の中345のやわらかい声が広い空間いっぱいに響き、間奏が終わった後に再び345が歌い出すとフロア天井のミラーボールに白い照明が当たりフロアの空間や壁が柔らかな光の粒でいっぱいになって、澄んだ歌声と合わさって本当に美しい雰囲気を作り出していた。この光景を2階席から、ステージとフロアをを上から観ることができて幸せだった。

 

中野さんにスポットライトが当たると何とドラムソロが!TKは上手袖へ消えていき、345はステージに残ったままで定位置から少し離れたところに立ちチューニングのような動きをした後にドラムを叩きまくる中野さんを見守っていた。ワンマンよりもだいぶ短めだったが、ワンマン以外でもドラムソロをやってくれるのかと驚きながら中野さんの凄まじいスティックさばきに釘付けになった。ドラムソロが終わる頃にTKがステージに戻ってきた。

 

「滝くんの一番好きな曲です。」とTKが紹介してから想像のSecurity、先ほど9mmのリクエストに応えnakano kill youを演奏したがここでも9mm側へ贈る選曲。思いがけず滝さんの好きな曲を知ることができ、お馴染みの想像のSecurityも滝さんの好きな曲なのかと思いながら聴くと普段よりもちょっと嬉しさが増した。そのままの勢いでTelecastic fake showへ続くと中盤ではTKが珍しくマイクスタンドから少し横に離れる場面があった。サビでは青とオレンジの照明を使いまるでマジックアワーのような色使いが綺麗で、スピーディーな曲調にも絶妙に合っていた。このあたりから2階席の自分の目の前にあった通路へカメラクルーの方が来て通路を何度も行ったり来たりしながら撮影を続けていた。ワンマンですら映像化されることが少ないのに1階だけでなく2階にもカメラを入れるなんて映像化を期待していいのだろうか、などとそわそわした気持ちになった。

ライブ終盤というタイミングで満を持して竜巻いて鮮脳。イントロのメロディーのワクワク&ゾクゾク感に乗せてフロアの方へ向いた複数のスポットライトがゆっくり回転し、フロアの客を全員ステージに引き摺り込むような効果を出していた演出が天才的な素晴らしさでこれも個人的にとても大好きな演出。中盤の親しみやすいテンポの曲展開ではそれに合わせ楽しく体を揺らし終盤で一気にテンポが速くなるというエクストリームな展開にもワクワク感を煽られる本当にどこを取っても良い曲。リリースツアーでは最後にテンポが速くなる部分もスポットライトがゆっくり回っていて曲と照明のテンポのギャップが逆に得体の知れない現象のようになっていて素晴らしかったし、この日はテンポが速くなるのに合わせて水色の照明が派手に点滅する演出に変わっていてこれもかなり良かった。短期間に同じ曲でも2パターンの演出を観られたのが嬉しかった。曲が終わっても中野さんが叩くのをやめずかなりの手数でしばらくの間ドラムを叩き続けていた。

 

ここで再びMCTKが「メンバーを紹介します。ベースボーカルの中村美代子さんです。」と穏やかな声で紹介。345も先程までのハイトーンボイスが嘘のような小さく穏やかな声でこんばんは、ありがとうございます、とフロアに丁寧に挨拶。「暑いですね……大丈夫ですか?」と続けてフロアへ優しく話しかけていた。

9mmと対バンできて本当に嬉しいです、と話しつつ「グッズの紹介をひとつだけ、グッズの紹介をします。靴下を作りました。今日の思い出に是非、是非、是非。」と話を続け、先ほどのドラムソロと同様短縮版ではあるがワンマンでもないのに物販紹介をやってくれた。

345が中野さんとTKの方を見ながら「(喋らなくて)大丈夫?」と聞くと次に口を開いたのは中野さん。9mmがとんでもないライブをしたので僕も今日は本気でやらないとなと思いまして、といった話をしていた。「あと1曲やるんですけど!地獄のような時間を過ごすと思いますけど、みなさん放心状態で帰ると思います!」と次の曲を察しつつそれに似合わない明るい紹介があまりにも愉快で楽しい気持ちになった。

最後に中野さんがTKに「TKもさすがにひと言あるよね?」という感じで話を振る。普段のワンマンならニコニコしながら発言を控える流れがお馴染みだけれど、珍しくTKも話し始めた。

 

「これからも卓郎くんに死ぬまで深夜にメールし続けます。」

「僕達と9mmは癒着しているんですけど。これからもお互いの場所で新しい音を見つけていって。」

 

9mmとは、死ぬまで、対バン、し続けます。」

 

この日最後の曲はもちろん、中野さんが地獄のような時間と何とも言い得て妙な表現をした傍観。今年開催の“aurora is mine tour 2023”でも昨年の“DEAD IS ALIVE TOUR”でも傍観が演奏されなかったので、この曲で終わるライブを久々に観た。ステージがどす黒い赤に包まれる光景、その中で絶唱するTK、この日一番激しい動きで演奏しながら長い髪を振り乱す345。それをただじっと見つめる長いようであっという間に終わってしまう時間。

TK345がまだ音を出す中、真っ先に中野さんが退場。次にステージを後にした345は退場時に僅かにフロアを見るとそちらへ手を振っていた。ひとり残ったTKがステージ中央あたりまで出てくるとギターを弾き狂いひとしきり弾くとギターをフロアへ投げ捨て、下手の袖に向かう途中でフロアを見て手を振るとそのまま袖に消えていった。この楽しい時間が終わるのを惜しむかのように、フロアには耳をつんざくようなノイズが長い時間響いていた。

 

 

まるで9mmと時雨のワンマンを続けて2本観たかのような満足感があった。時雨はTKが明らかに普段のライブより多く喋っていたり中野さんのドラムソロや345のグッズ紹介があったりと普段のワンマンライブの短縮版のような構成だった。リリースツアーの余韻を残しつつ定番曲や予想外のam3:45も披露されたものすごいセトリ。9mmはゲストということもあり定番曲多めではあったが、TKのリクエストのおかげでセトリに入れられたPsychopolisなどは対バンでは珍しい選曲だったし、9mmと時雨で持ち時間は同じだったと思うが9mmは曲が短いからか時雨よりも多い曲数で12曲も披露。何度も言及してしまったがフロアの盛り上がり方も含めゲストで呼ばれたとは思えないライブをやってみせた。時雨も9mmも大好きでこの2マンを4年振りに観られることを本当に楽しみにしていたが、その期待を遥かに上回る幸せな時間だった。

今年ツアーを開催したりPSYCHO-PASSのイベントにも出演したりと完全に仕上がっている状態の時雨、それにしてもこの日の3人の気合いの入りっぷりは凄かった。特にnakano kill youや竜巻いて鮮脳のアウトロなどでそれが顕著だった中野さん。シャウト2.5割増ぐらいに思えたTK。すさまじいライブをやってみせた9mmの気合いに返すように、お互い対バン相手として気のおけない仲間がいてこその気合の入れ方をしてライブをやっていたんだなと。

 

9mmTKからのリクエス3曲を全部セトリに入れ、時雨は9mmからのリクエストを1曲、滝さんが好きな曲も1曲セトリに入れ互いにリクエストに応えるというこれも予想外の特別なセトリだった。思いがけずお互いの好きな曲を知ることができたことも9mmと時雨両方のファンとしては本当に嬉しかった。

2010年、9mmと時雨、ミドリが対バンした新木場クライシスというイベントにて、9mmTalking Machineを演奏した際ライブアレンジのイントロ部分で滝さんが想像のSecurityの出だしのメロディーを弾いた。滝さんが時雨のフレーズを弾くのが珍しかったので今でもはっきりと覚えているが、それから13年も経った2023年に想像のSecurityが「滝くんが一番好きな曲」であることが明かされたので咄嗟に新木場クライシスのことを思い出し、13年の時を経て遂に伏線回収されたような気持ちになった。

 

「これからも時雨とはずぶずぶの関係でいきます」と話した卓郎さんと「9mmとは死ぬまで対バンし続けます」と宣言したTK。それを聞いて9mmと時雨が4年前に対バンした際にもTKが「9mmとは死ぬまで対バンしたいです」と言っていたのを思い出した。時雨は20年、9mm19年活動してきて、お互いにこの先もバンドの活動を続けることを疑わずにまた対バンしますと言ってくれたのが何よりも嬉しかった。いつまでもずぶずぶに癒着し続ける関係でいてください。